以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
[1.第1の実施の形態]
[1-1.現金自動預払機の構成]
図1に外観を示すように、現金取扱装置としての現金自動預払機1は、箱状の筐体2を中心に構成されており、例えば金融機関や各種商業施設等に設置され、使用者(すなわち金融機関や商業施設の顧客等)との間で、入金処理や出金処理等の現金に関する取引を行う。
筐体2は、その前側に使用者が対峙した状態で紙幣の投入やタッチパネルによる操作等をしやすい箇所に応対部3が設けられている。応対部3は、使用者との間で例えば現金やカード等を直接やり取りすると共に、取引に関する情報の通知や操作指示の受付を行うようになっており、通帳入出口4、カード入出口5、硬貨入出金口6、紙幣入出金口7及び操作表示部8等が設けられている。
通帳入出口4は、通帳が挿入され、また排出する部分である。通帳入出口4の奥側には、通帳の裏表紙等に設けられた磁気記録部から磁気情報を読み取り、また該通帳に取引の内容を記録する通帳処理部(図示せず)が設けられている。カード入出口5は、キャッシュカード等の各種カードが挿入または排出される部分である。カード入出口5の奥側には、各種カードに磁気記録された口座番号等の読み取りを行うカード処理部(図示せず)が設けられている。
硬貨入出金口6は、使用者によって入金される硬貨が投入されると共に、使用者へ出金する硬貨が排出される部分である。紙幣入出金口7は、使用者によって入金される紙幣が投入されると共に、使用者へ出金する紙幣が排出される部分である。この硬貨入出金口6及び紙幣入出金口7は、それぞれシャッタを駆動することにより開放又は閉塞するようになっている。操作部としての操作表示部8は、取引に際して操作画面や取引内容等を表示する液晶表示パネルと、使用者の入力操作を検知するタッチセンサとが一体化されたタッチパネルである。
以下では、現金自動預払機1のうち使用者が対峙する側を前側とし、その反対を後側とし、当該前側に対峙した使用者から見て左及び右をそれぞれ左側及び右側とし、さらに上側及び下側を定義して説明する。
筐体2の内部には、現金自動預払機1全体を統括制御する主制御部9や、取引対象である硬貨に関する種々の処理を行う硬貨処理装置10、及び紙幣に関する種々の処理を行う紙幣処理装置(図示せず)等が設けられている。主制御部9は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金処理や出金処理等の種々の処理を行う。また主制御部9は、内部にRAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
硬貨処理装置10は、全体として直方体に類似した形状に構成されており、図示しないスライドレールを介して筐体2に取り付けられている。また筐体2の前面側又は後面側には、開閉可能な扉(図示せず)が設けられている。このため現金自動預払機1は、保守作業等が行われる場合、筐体2の前面側又は後面側の扉を開放した上で、硬貨処理装置10を前方又は後方へスライドさせることにより、該硬貨処理装置10を該筐体2の外部に位置させ、また該筐体2の内部に収納させることができる。
[1-2.硬貨処理装置の構成]
硬貨処理装置10は、図2に模式的な右側面図を示すように、硬貨処理装置筐体11の内部に、硬貨に関する種々の処理を行う複数の部分が組み込まれている。この硬貨は、例えば銅及びニッケルの合金やアルミニウム等、十分な強度を有する非磁性体の材料でなり、薄い円板形状に形成されている。因みに硬貨処理装置10では、直径や厚さが異なる複数種類の硬貨を取り扱うことが想定されている。
硬貨処理装置筐体11の内部には、比較的上側ないし中央付近に、入出金部13、シュート部14、上分離部15、認識搬送部16、受渡部17、ピンベルト搬送部18、6個のスタッカ部21、出金搬送部22、及び一時保留部23が設けられている。また硬貨処理装置筐体11の内部には、比較的下側に、硬貨制御部12、補充回収庫24、第1補充リジェクト庫25、第2補充リジェクト庫26、リジェクト庫27、取忘取込庫28及び下分離部29が設けられている。
硬貨制御部12は、主制御部9と同様、図示しないCPUを中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金取引や出金取引等に関する種々の処理を行い、硬貨処理装置10を統括制御する。また硬貨制御部12は、内部にRAM及びフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
入出金部13は、使用者との間で硬貨を受け渡すことにより、該使用者に硬貨を入金させ、又は該使用者に硬貨を出金する。該入出金部13は、上側に開口部を有し硬貨を収容する収容器13A、該開口部を開閉するシャッタ13B等、及び収容器13A内における硬貨の有無等を検知するセンサ(図示せず)を有している。
入出金部13は、シャッタ13Bを開放した状態で使用者により硬貨が収容器13Aに投入されると、該シャッタ13Bを閉塞し、硬貨を収容器13A内からシュート部14に引き渡して該シュート部14内を下降させ、上分離部15内に到達させる。また入出金部13は、シャッタ13Bを閉塞した状態で、後述するピンベルト搬送部18から硬貨が搬送されてくると、該硬貨を収容器13A内に収容した後、シャッタ13Bを開放して使用者に受け取らせる。
上分離部15は、下側の比較的大きい容積を占める部分である集積分離部15Aと、該集積分離部15Aから上方に突出するように形成された分離搬送部15Bとにより構成されている。この上分離部15は、集積分離部15Aに硬貨を集積すると共に、この硬貨を1枚ずつに分離して分離搬送部15Bにより上方向へ搬送し、さらに搬送路に沿って後方向へ搬送して認識搬送部16に引き渡す。
認識搬送部16は、シュート部14の右側に位置しており、硬貨を搬送しながら撮像し、得られた画像信号を基に当該硬貨の金種や真偽、或いは損傷の程度等を基に当該硬貨が取扱可能であるか否かを判定する。そのうえで認識搬送部16は、得られた判定結果を当該硬貨の認識結果として硬貨制御部12に通知すると共に、当該硬貨を受渡部17に引き渡す。受渡部17は、認識搬送部16から受け取った硬貨をピンベルト搬送部18に引き渡す。
ピンベルト搬送部18は、スタッカ部21の前側下部、下側、後側及び上側をそれぞれ前ピンベルト搬送部18F、下ピンベルト搬送部18L、後ピンベルト搬送部18R及び上ピンベルト搬送部18Uにより取り囲み、硬貨を搬送する経路である搬送経路を形成している。ピンベルト搬送部18は、硬貨の盤面と当接し搬送経路に沿って進行するよう案内する搬送ガイドと、概ね該搬送経路に沿って走行するピンベルトとにより構成されている。このピンベルトには、硬貨の末尾側から搬送方向へ付勢するピンが設けられている。ピンベルト搬送部18は、ピンベルトを走行させることにより、受渡部17から受け取った硬貨を搬送経路に沿って搬送し、入出金部13の収容器13A内へ放出することができる。
またピンベルト搬送部18には、スタッカ部21の前側下部及び下側に配置された部分における複数箇所に、硬貨の搬送経路を分岐させる分岐部19がそれぞれ設けられている。各分岐部19の左側には、硬貨を案内する案内部30がそれぞれ設けられている。
各分岐部19は、それぞれ回動可能な案内板及びアクチュエータ等(何れも図示せず)を有しており、硬貨制御部12の制御に基づいて案内板を回動させることにより、硬貨を引き続きピンベルト搬送部18に沿って進行させるか、或いは各案内部30へ分岐させるかを切り替える。各案内部30は、それぞれ補充回収庫24、第1補充リジェクト庫25又は第2補充リジェクト庫26、一時保留部23、リジェクト庫27及び取忘取込庫28等へ硬貨を進行させる。
さらにピンベルト搬送部18には、6個のスタッカ部21のそれぞれ上側となる6箇所に、スタッカ分岐部20が設けられている。各スタッカ分岐部20の左側には、硬貨をスタッカ部21へ案内する案内部31が設けられている。各スタッカ分岐部20は、各分岐部19と同様に構成されており、硬貨制御部12の制御に基づいて案内板を回動させることにより、硬貨を引き続きピンベルト搬送部18に沿って進行させるか、或いは各スタッカ部21へ分岐させるかを切り替える。
スタッカ部21は、それぞれ所定の金種の硬貨と対応付けられており、上側に設けられた案内部31と、該案内部31の下側において硬貨を上下方向に沿って積み重ねるように集積する集積部32と、該集積部32の下側から硬貨を繰り出す繰出部33とを有している。このスタッカ部21は、ピンベルト搬送部18により搬送された硬貨をスタッカ分岐部20から受け取ると、該硬貨を案内部31により集積部32へ案内して集積させる。またスタッカ部21は、硬貨制御部12の制御に基づき、集積部32に集積している硬貨を繰出部33により1枚ずつ繰り出し、下方の出金搬送部22又は一時保留部23へ落下させる。
出金搬送部22は、ピンベルト搬送部18の右側、すなわち図2における紙面の手前側に位置しており、上側及び前側が開放された中空の直方体のように構成され、内部に硬貨を収容し得る空間を形成している。また出金搬送部22は、底部にベルトやプーリ等でなるベルト搬送機構が組み込まれており、スタッカ部21から繰り出された硬貨をベルト上に載置若しくは集積する。この出金搬送部22は、ベルトの上に硬貨が載置若しくは集積された状態で、該ベルトの上側部分を前方へ向けて走行させることにより、該硬貨を前側の一時保留部23へ落下させる。
一時保留部23は、出金搬送部22の後端を下げると共に前端を持ち上げ、さらに左右の側板を三角形状としたような構成となっており、その内部に硬貨を収容する空間を形成すると共に、底部にベルト搬送機構が組み込まれている。このため一時保留部23は、スタッカ部21から繰り出された硬貨や出金搬送部22から搬送されてきた硬貨を、内部空間のベルト上に載置若しくは集積させる。また一時保留部23は、ベルトの上に硬貨が載置若しくは集積された状態で、該ベルトの上側部分を前斜め上方へ向けて走行させることにより、該硬貨を前側の上分離部15へ繰り出し、その内部へ落下させる。
補充回収庫24は、内部に硬貨を集積する集積部や、該集積部に集積されている硬貨を搬送する搬送機構等を有している。この補充回収庫24は、案内部30により案内されてきた硬貨を集積し、また内部に集積している硬貨を後方へ繰り出して下分離部29に引き渡す。第1補充リジェクト庫25及び第2補充リジェクト庫26は、それぞれ内部に硬貨を集積する空間を有しており、案内部30により案内されてきた硬貨を集積する。リジェクト庫27及び取忘取込庫28は、それぞれ内部に硬貨を集積する空間を有しており、案内部30により案内されてきた硬貨をそれぞれ集積する。
下分離部29は、補充回収庫24の後側に隣接する位置に配置されている。この下分離部29は、上分離部15と類似した構成となっているものの、硬貨処理装置筐体11に対する取付方向が、該上分離部15とは相違している。この下分離部29は、補充回収庫24から硬貨を受け取って内部に集積し、また集積されている硬貨を1枚ずつに分離して1枚ずつ上方へ搬送し、一時保留部23内へ放出する。
[1-3.各種処理における硬貨の搬送]
次に、硬貨処理装置10において硬貨の搬送を伴う種々の処理、すなわち入金処理及び出金処理等における硬貨の搬送や集積等について説明する。ここでは、現金自動預払機1と顧客との間で入金取引及び出金取引を行う場合における硬貨処理装置10での各処理についてそれぞれ説明する。
現金自動預払機1(図1)において使用者との間で入金取引が行われる場合、硬貨処理装置10は、前段の入金計数処理により、使用者に入金された硬貨の金種等を認識しながら枚数を計数し、これに続く後段の入金収納処理により、各硬貨を適切な収納箇所へ搬送して収納する。具体的に硬貨処理装置10は、前段の入金計数処理において、使用者に入出金部13に硬貨を投入させると、シュート部14、上分離部15、認識搬送部16、受渡部17及びピンベルト搬送部18を順次介して一時保留部23に収容する。
このとき硬貨処理装置10は、認識搬送部16による各硬貨の認識結果を基に入金額を集計して操作表示部8(図1)に表示し、使用者に入金取引を継続するか、又は中止するかを選択させる。硬貨処理装置10は、使用者により継続が選択されると、後段の入金収納処理を行い、中止が選択されると、入金取引を中止し、後述する出金処理の場合と同様に硬貨を入出金部13へ搬送して返却する。
硬貨処理装置10は、後段の入金収納処理において、硬貨を一時保留部23から上分離部15、認識搬送部16、受渡部17、ピンベルト搬送部18及びスタッカ分岐部20を順次介してスタッカ部21へ搬送して集積させる。このとき硬貨処理装置10は、認識搬送部16による各硬貨の認識結果を基に、当該硬貨の金種に応じたスタッカ部21へ搬送する。
また、現金自動預払機1(図1)において使用者との間で出金取引が行われる場合、硬貨処理装置10は、出金処理により、使用者に指示された金額の硬貨を入出金部13へ搬送して出金する。具体的に硬貨処理装置10は、操作表示部8(図1)を介して使用者から出金取引を開始する旨や出金額の操作入力を受け付けると、出金処理を開始し、出金額に応じた硬貨の金種及び枚数を各スタッカ部21から出金させ、出金搬送部22を介して一時保留部23内に集積させる。続いて硬貨処理装置10は、一時保留部23、上分離部15、認識搬送部16、受渡部17及びピンベルト搬送部18を順次経由して硬貨を入出金部13へ搬送して収容させ、使用者に受け取らせる。
因みに硬貨処理装置10は、入金処理及び出金処理の他、補充回収庫24からスタッカ部21へ硬貨を補充する補充処理や、該スタッカ部21から補充回収庫24へ硬貨を回収する回収処理等も行い得るようになっている。
[1-4.上分離部の構成]
次に、上分離部15の構成について説明する。図3に斜視図を示すと共に図4(A)及び(B)に模式的な前側面図及び右側面図を示すように、上分離部15は、全体の中央乃至左側に位置する分離部フレーム40を中心として、下側の集積分離部15A及び上側の分離搬送部15Bが一体に構成されている。分離部フレーム40は、金属製の板状部材が適宜切削されると共に屈曲された構成となっており、その内部に複数のギアや軸、或いはモータ等の部品が組み込まれている。
[1-4-1.集積タンク及び傾斜円盤の構成]
この分離部フレーム40のうち集積分離部15Aに相当する部分には、集積タンク41及び傾斜円盤45等の種々の部品が取り付けられている。図4におけるA1-A2断面図及びB1-B2断面図を図5(A)及び(B)にそれぞれ示すように、傾斜円盤45は、全体として円盤状に形成されており、右側の表面である円盤面45Sが右上側を向くように傾斜し、且つ傾斜円盤中心軸45Xを回転中心として回転可能に支持されている。因みに図5(A)及び(B)では、説明の都合上、一部の部品を簡略化し、若しくは省略している。
カバーとしての集積タンク41は、傾斜円盤45の右側に位置しており、例えば所定の樹脂材料が成型された成型部品として構成されている。この集積タンク41は、全体として椀の中心軸を傾斜円盤中心軸45Xに一致させるように傾斜させたような立体形状となっており、外周部分において円盤面45Sの直近に位置し、傾斜円盤中心軸45Xに近づくに連れて該円盤面45Sから遠ざかるような曲面を形成している。
また集積タンク41は、傾斜円盤45の右側に、該円盤面45Sとの間に空間(以下これを硬貨集積空間50と呼ぶ)を形成しながら、該円盤面45Sを概ね全体的に覆っている。集積タンク41における後上側には、比較的大きく開口された受入開口部41Aが形成されており、シュート部14及び一時保留部23(図2)と接続される。上分離部15は、シュート部14又は一時保留部23から受入開口部41Aを介して硬貨CNが引き渡されると、この硬貨CNを硬貨集積空間50内に集積させる。
因みに上分離部15は、1回の取引において取り扱いが可能な最大枚数(例えば100枚)の硬貨CNが入出金部13に投入され、シュート部14を介して落下してきた場合、硬貨集積空間50の概ね下半分、すなわち円盤面45Sの中心よりも概ね下側となる範囲に硬貨CNを集積するように設計されている。また上分離部15には、図示しないセンサが設けられており、硬貨集積空間50内に1枚以上の硬貨CNが集積(収容)されているか否かを検出し、得られた検出結果を硬貨制御部12に通知するようになっている。
図4におけるC1-C2断面図を図6に示すように、集積タンク41における下側部分には、硬貨集積空間50と外部の空間とを連通させる排出口41Bが形成されている。また上分離部15には、この排出口41Bの近傍に、排出扉42、排出扉駆動部43及び排出ダクト44が設けられている。
排出扉42は、集積タンク41の排出口41Bを閉塞し得る板状の扉部42Aや、該扉部42Aの右側面(すなわち硬貨集積空間50の反対側)に立設された扉支持部42B等を有している。このうち扉支持部42Bは、上端近傍において前後方向に沿って貫通された丸孔でなる回動軸孔42BHが形成されると共に、その後側面に概ね前後方向に沿って形成された溝状の溝部42BDが形成されている。
また集積タンク41は、硬貨集積空間50の外側であって排出口41Bの右上側部分において、前後方向に沿った細長い円柱状の扉回動軸42Fを回転可能に支持している。この扉回動軸42Fは、排出扉42の回動軸孔42BHに挿通されている。このため排出扉42は、集積タンク41に対して扉回動軸42Fを回動中心として回動することにより、排出口41Bを閉塞した排出口閉塞状態(図5(B))、又は図7に示すように該排出口41Bを開放した排出口開放状態に遷移することができる。
排出扉駆動部43は、集積タンク41における硬貨集積空間50の外側であって排出口41Bの後側に位置しており、排出扉駆動モータ43Mや排出扉駆動円板43D、及び複数のギア等の組み合わせにより構成されている。排出扉駆動円板43Dは、中心軸を前後方向に沿わせた円板状に構成されると共に、その前面側における外周付近に連動ピン43Pが立設されている。図4におけるD1-D2断面図を図8(A)及び(B)に示すように、この連動ピン43Pは、排出扉42の扉支持部42Bに形成された溝部42BDに挿入されている。また排出ダクト44は、排出口41Bの概ね下側に設けられており、複数の板状部材等の組み合わせにより、該排出口41Bから右下方向へ硬貨CNを進行させるようになっている。
かかる構成により排出扉駆動部43は、硬貨制御部12の制御により排出扉駆動モータ43Mを駆動させると、図示しないギア等を介して駆動力を伝達し、排出扉駆動円板43Dを連動ピン43Pと一体に回転させる。このとき連動ピン43Pは、溝部42BD内で上下方向へ移動しながら、該溝部42BDの内側面に対して左方向又は右方向へ向かう力を作用させ、扉回動軸42Fを回動中心として、排出扉42を回動させることができる。
排出扉駆動部43は、排出扉駆動円板43Dを図5(B)における時計回りに回動させた場合、該排出扉42を排出口閉塞状態(図8(A))とする。このとき上分離部15では、硬貨集積空間50内に硬貨CNを集積することができる。また排出扉駆動部43は、排出扉駆動円板43Dを図5(B)における反時計回りに回動させた場合、該排出扉42を排出口開放状態(図7及び図8(B))とする。これにより上分離部15では、硬貨集積空間50内に集積されていた硬貨CN等を排出口41Bから下方へ排出することができる。このとき該排出口41Bから排出された硬貨CN等は、排出ダクト44に沿って下降し、筐体2の前面に設けられた前面排出口2H(図1)から外部へ排出される。
回転体としての傾斜円盤45は、図5(A)に示したように、硬貨CNと比較して十分に大きい直径でなる円盤状に形成されており、右側の表面である円盤面45Sが概ね平坦に形成されている。因みに傾斜円盤45は、例えば硬度が比較的高い金属板を切削加工することにより製造されている。この傾斜円盤45は、傾斜円盤中心軸45Xが水平方向に対して上方へ、具体的には右斜め上方を向くようにして、傾斜している。このため円盤面45Sは、上側部分を鉛直方向に対して左方向へやや倒したように傾いている。
さらに傾斜円盤45は、傾斜円盤中心軸45Xを回転中心として回転可能に支持されており、円盤駆動部46から駆動力が供給される。回転体駆動部としての円盤駆動部46は、モータやギア等の組み合わせにより構成されている。このため傾斜円盤45は、硬貨制御部12の制御に基づき円盤駆動部46から駆動力が供給されると、傾斜円盤中心軸45Xを回転中心として矢印R1方向(図5の時計回り、以下これを正転方向とも呼ぶ)又はその反対の矢印R2方向(以下これを逆転方向とも呼ぶ)に回転する。
傾斜円盤45の円盤面45Sには、法線方向である右斜め上方向に突出する複数の分離突起47が設けられている。分離突起47は、傾斜円盤45の外周をほぼ均等に複数に分割し、円盤面45Sにおける外周からやや内側に離れた箇所に取り付けられている。
この分離突起47は、全体として直方体に類似した形状に構成されており、詳細には、外周側よりも内周側の方が細い楔形に類似した形状となっている。すなわち分離突起47は、円盤面45Sにおける傾斜円盤中心軸45Xと外周45Tとを結ぶ放射方向に関して比較的長く、周方向に関して比較的短く、左右方向に十分に短く(すなわち薄く)なっている。また分離突起47における左右方向の長さ(すなわち厚さ)は、1枚の硬貨の厚さと同等以下となっている。
さらに傾斜円盤45は、外周のうち7個の各分離突起47の近傍となる7箇所に、外周から中心方向へ向かってえぐられるように切り欠かれた切欠部48が形成されている。切欠部48は、右方向から見て、傾斜円盤45の外周45Tを一辺とする三角形に類似した形状となっており、該傾斜円盤45の傾斜円盤中心軸45Xに近い頂点の近傍において、分離突起47とほぼ隣接している。
また、傾斜円盤45には、互いに隣接する分離突起47同士の間であって、外周45Tの内側となる部分に、合計7箇所の硬貨分離エリア45Aが形成されている。説明の都合上、図5(A)では、1箇所の硬貨分離エリア45Aのみを破線で囲っている。
傾斜円盤45では、1箇所の硬貨分離エリア45Aにおいて、1枚の硬貨CNがその板面(すなわち表面又は裏面)を傾斜円盤45の円盤面45Sと対向及び当接させた状態(以下これを表面当接状態と呼ぶ)で収まる一方、2枚以上の硬貨CNが表面当接状態とならないよう、各部の長さや間隔等が適切に設定されている。
これに加えて傾斜円盤45には、円盤面45Sにおける各切欠部48の周縁、すなわち外周の近傍部分に設けられている。残留攪拌突起49は、全体として円柱形状であり、その中心軸を傾斜円盤45の円盤面45Sから右斜め上方に向け、円盤面45Sの法線方向に沿わせている。また残留攪拌突起49は、円盤面45Sからの高さが分離突起47と同等となっている。
[1-4-2.搬送部及びピンベルトの構成並びに硬貨の分離処理]
また上分離部15には、傾斜円盤45における前側部分の上側に、分離搬送部15Bの一部である搬送部51が配置されている。この搬送部51は、前搬送ガイド52、左搬送ガイド53及び54、後搬送ガイド55及び右搬送ガイド56といった複数の搬送ガイドにより、傾斜円盤45の前端近傍から上方向へ向かい、やがて後方へ向かうように湾曲する搬送路Wを形成している。また搬送部51には、搬送路Wの左側における左搬送ガイド53及び54の間に、硬貨の搬送経路に沿った溝部59が形成されている。
一方、分離部フレーム40の内部における傾斜円盤45の左側には、ベルトプーリ61が配置されている(図5)。ベルトプーリ61は、全体として扁平な円盤状に形成されており、その直径が傾斜円盤45の直径よりも僅かに小さくなっている。このベルトプーリ61は、傾斜円盤45と一体に回転する。また上分離部15には、ベルトプーリ61の上側に、ベルトプーリ61と比較して十分に小さい直径でなる複数のプーリ(図示せず)も配置されている。
さらに上分離部15には、ベルト65が設けられている。ベルト65は、樹脂やゴム等の可撓性を有する材料で構成された無端ベルトであり、ベルトプーリ61や各プーリの周側面に当接するように張架されている。またベルト65は、搬送部51において、溝部59内を走行するようになっている。
ベルト65には、所定間隔ごとにピン66が取り付けられている。ピン66は、中心軸を傾斜円盤中心軸45Xとほぼ平行に向けた円柱状に形成されており、その右端(すなわち先端)が傾斜円盤45の円盤面45Sよりも右側に突出し、分離突起47の右面とほぼ同等の位置に到達している。以下では、ベルト65及び複数のピン66をまとめてピンベルトとも呼ぶ。
上分離部15では、ベルト65におけるピン66の取付間隔や取付位置が、傾斜円盤45における切欠部48の位置に合わせて設定されている。このためピン66は、ベルト65がベルトプーリ61の外周面に当接している場合、該ピン66の突出部が傾斜円盤45の切欠部48に入り込み、該切欠部48内で傾斜円盤中心軸45Xに近い箇所、すなわち分離突起47に近接した箇所に位置する。
ピン66は、傾斜円盤45が傾斜円盤中心軸45Xを中心に回転すると、切欠部48に入り込んだ状態を維持したまま、該傾斜円盤45及びベルトプーリ61の回転に伴って円弧状に移動する。またピン66は、搬送部51において、右端近傍を搬送路W内へ突出させた状態で、溝部59内を搬送路Wに沿って進行する。
かかる構成により、上分離部15は、硬貨制御部12の制御に基づき、硬貨集積空間50内に硬貨CNが集積された状態で、上流側の集積分離部15Aによりこの硬貨CNを1枚ずつに分離し、下流側の分離搬送部15Bに受け渡す分離処理を行う。
具体的に上分離部15は、まず円盤駆動部46(図5)から供給される駆動力によって傾斜円盤45を矢印R1方向(すなわち正回転方向)に回転させる。これにより上分離部15は、硬貨集積空間50内に集積された硬貨を分離突起47により適宜攪拌しながら、該分離突起47に硬貨CNを1枚ずつ引っ掛け、当該硬貨CNを硬貨分離エリア45A内に収める。このとき硬貨CNは、左側の盤面を傾斜円盤45の円盤面45Sに当接させると共に、周側面のうち末尾側(進行方向と反対側の部分、例えば硬貨CNが前方向へ進行している場合の後側)の一部を後側の分離突起47に当接させ、下側の一部を集積タンク41の内側面に当接させる。
さらに上分離部15は、傾斜円盤45を引き続き回転させることにより、硬貨CNにおける左側の盤面を該傾斜円盤45の円盤面45Sに当接させ、且つ該硬貨CNの周側面を分離突起47及び集積タンク41に当接させた状態を維持しながら、該集積タンク41の内側面に沿って摺動させ、前上方へ持ち上げていく。
やがて上分離部15は、硬貨CNが傾斜円盤45の前端付近に到達すると、該硬貨CNの前端部分を前搬送ガイド52の後側面に当接させ、分離突起47が該硬貨CNの後下側から前上方向へ力を加えるようになる。これにより上分離部15は、傾斜円盤45の回転に伴って硬貨CNの前端を左搬送ガイド53及び54に摺動させながら、該硬貨CNを上方向へ移動させる。
上分離部15は、引き続き傾斜円盤45を回転させると、該硬貨CNの左側面を傾斜円盤45の円盤面45Sに当接させた状態から、左搬送ガイド53及び54の右側面、すなわち当接させた状態となる。このとき上分離部15では、硬貨CNの中心が円盤面45Sと左搬送ガイド53及び54fとの境界部分を通過した段階で、当該硬貨CNを上流側である集積分離部15Aの傾斜円盤45上から、下流側である分離搬送部15Bの搬送部51に引き渡すことになる。
その後、上分離部15は、ベルト65をさらに走行させることにより、分離突起47から引き継いでピン66を硬貨CNの後下側に当接させて力を作用させ、さらに該ピン66を該分離突起47から引き離して溝部59に沿って上方向へ進行させる。これにより上分離部15は、硬貨CNを搬送路Wに沿って上方向へ進行させることができ、その後、該硬貨CNを後方向へ搬送してから認識搬送部16(図2)に引き渡す。
[1-4-3.手動操作部並びに吸着切替部及び異物吸着部の構成]
かかる構成に加えて、上分離部15には、集積タンク41や傾斜円盤45の前側ないし下側となる位置に、手動操作部70が設けられている(図3~図6)。手動操作部70は、図9に模式的な斜視図を示すように、手動操作部フレーム71、回転軸72、連動ギア73及び操作ノブ74等により構成されている。
手動操作部フレーム71は、例えば薄板状の鋼板が適宜切削及び屈曲されることによって製造されており、分離部フレーム40(図3等)に取り付けられている。この手動操作部フレーム71は、中央部71C、右側部71R及び左側部71Lを有している。中央部71Cは、上下方向に薄く左右方向に長い薄板状に構成されており、右端及び左端において、上方向に向けて右側部71R及び左側部71Lがそれぞれ垂設されている。
右側部71Rは、左右方向に薄く上下方向に長い薄板状に構成されており、前後方向の中央付近であって中央部71Cから所定の距離となる位置に、左右方向に貫通する丸孔でなる軸孔71RHが穿設されている。左側部71Lは、右側部71Rと同様、左右方向に薄く上下方向に長い薄板状に構成されており、前後方向の中央付近であって中央部71Cから所定の距離となる位置に、左右方向に貫通する丸孔でなる軸孔71LHが穿設されている。
回転軸72は、左右方向に沿った細長い円柱状に構成されており、右端近傍において右側部71Rの軸孔71RHに挿通され回転可能に支持されると共に、左端近傍において左側部71Lの軸孔71LHに挿通され回転可能に支持されている。すなわち回転軸72は、手動操作部フレーム71に対して自在に回転することができる。因みに回転軸72は、図示しない抜け止め部材が設けられており、軸孔71RH及び71LHからそれぞれ抜け落ちないようになっている。
連動ギア73は、中心軸を左右方向に沿わせた円柱を左右方向に複数連結させたような形状であり、その中心部分に穿設された孔部に回転軸72を貫通させ、且つ該回転軸72に固定されている。また連動ギア73は、周側面の一部にギア歯(歯車)が形成されている。
一方、円盤駆動部46は、図10に模式的な斜視図を示すように、円盤駆動モータ46Mの出力軸に取り付けられた円盤駆動ギア46Gを傾斜円盤45のギア45Gと噛み合わせている。また円盤駆動ギア46Gは、連動ギア73にも噛み合わされている。
操作ノブ74は、中心軸を左右方向に沿わせた円板を左右方向に複数連結させ、さらに小さな直方体状の立体形状を組み合わせたような形状に構成されており、右側部71Rの右側において、回転軸72の右端に取り付けられている。
かかる構成により上分離部15は、円盤駆動部46(図10)の円盤駆動モータ46Mを駆動して傾斜円盤45と一体にギア45Gを矢印R1方向(すなわち正転方向)へ回転させる場合、手動操作部70において回転軸72を矢印R1方向へ回転させる。また上分離部15は、円盤駆動モータ46Mを駆動して傾斜円盤45と一体にギア45Gを矢印R2方向(すなわち逆転方向)へ回転させる場合、手動操作部70において回転軸72を矢印R2方向へ回転させる。
因みに手動操作部70は、保守作業等において、作業者が傾斜円盤45を手動で回転させる際に使用される。例えば上分離部15は、硬貨CNの分離処理において、搬送部51の搬送路W内で複数の硬貨CNが重なるなどして詰まりが発生した場合、傾斜円盤45の回転を停止させる。このとき上分離部15は、保守作業者の操作により操作ノブ74が何れかの方向へ回転されて駆動力が発生すると、連動ギア73等を介してこの駆動力を傾斜円盤45に伝達し、該傾斜円盤45を何れかの方向へ回転させると共にベルト65を走行させる。これにより上分離部15では、分離突起47やピン66等を移動させることができ、詰まりの解消を図ることができる。
さらに手動操作部70には、トルクリミッタ75及び異物吸着部76が設けられている。トルクリミッタ75は、回転軸72に挿通されると共に異物吸着部76に取り付けられており、回転軸72から駆動力の一部を異物吸着部76に伝達する。
異物吸着部76(図9)は、可動ブラケット77、磁石78、磁石保持部材79により構成されている。可動ブラケット77は、例えばステンレスのような非磁性の金属材料でなり、板状の材料が適宜切削及び屈曲されることにより、右側部77R、左側部77L、連結部77C、及び磁石保持部77Dを相互に接続したような形状となっている。
右側部77R及び左側部77Lは、何れも板面を左右方向に向けており、それぞれに穿設された挿通孔77RH及び77LHに回転軸72を挿通させている。連結部77C(図10)は、板面を概ね前後方向に向けており、右側部77R及び左側部77Lとそれぞれ連結されている。磁石保持部77Dは、連結部77Cと同様に、板面を概ね前後方向に向けており、右側部77R及び左側部77Lとそれぞれ連結され、且つ磁石78の後側に位置している。
さらに可動ブラケット77(図9)には、右側部77Rの後下側及び前下側に、回動制限部77M1及び77M2がそれぞれ設けられている。この回動制限部77M1及び77M2は、右側部77Rの外周部分に形成されており、挿通孔77RHを中心とした場合に、外方への突出量が他の部分よりも大きくなっている。
磁石78は、例えばネオジム磁石であり、中心軸を概ね前後方向に沿わせた円柱状に形成されている。この磁石78は、前側面及び後側面(すなわち円板面)をそれぞれ磁極とするように着磁されており、前側面を可動ブラケット77の磁石保持部77Dと対向させている。
吸着部磁性体としての磁石保持部材79は、磁性を有する金属材料でなり、例えば鋼板が所定形状に切削され、適宜屈曲された構成となっている。この磁石保持部材79は、後側が開放された小さな直方体状の空間を形成しており、この空間内に磁石78を位置させることにより、該磁石78の前側、左側及び右側、並びに上側及び下側に磁性体を配置し、ヨークとして機能している。また磁石保持部材79は、可動ブラケット77に取り付けられており、該可動ブラケット77と共に磁石78を保持している。
一方、手動操作部フレーム71には、中央部71Cの上面に回動リミッタ71Mが設けられている。回動リミッタ71Mは、比較的小さい直方体状に構成されている。この回動リミッタ71Mは、異物吸着部76が回転軸72を中心に回動する際に、可動ブラケット77の回動制限部77M1又は77M2と当接することにより、該異物吸着部76の回動範囲を制限するようになっている。
具体的に異物吸着部76は、回転軸72が矢印R1方向へ回転する場合、該回転軸72からトルクリミッタ75を介して矢印R1方向に回転する駆動力が伝達される。このとき異物吸着部76は、図11(A)に模式図を示すように、回転軸72を中心として矢印R1方向へ回動し、回動制限部77M1を回動リミッタ71Mに当接させた段階で停止する。このとき異物吸着部76は、磁石78を回転軸72のほぼ真上に位置させている(以下これを吸着状態と呼ぶ)。
その後、異物吸着部76は、回転軸72が矢印R1方向へ回転している間、該回転軸72からトルクリミッタ75に対して矢印R1方向に回転する駆動力が伝達され続けるものの、回動制限部77M1を回動リミッタ71Mに当接させているため、トルクリミッタ75において「滑り」を発生させ、吸着状態を維持する。また異物吸着部76は、回転軸72の回転が停止した場合、やはり吸着状態を維持する。
一方、異物吸着部76は、回転軸72が矢印R2方向へ回転する場合、該回転軸72からトルクリミッタ75を介して矢印R2方向に回転する駆動力が伝達される。このとき異物吸着部76は、図11(B)に模式図を示すように、回転軸72を中心として矢印R2方向へ回動し、回動制限部77M2を回動リミッタ71Mに当接させた段階で停止する。このとき異物吸着部76は、磁石78を回転軸72よりも前方に位置させている(以下これを非吸着状態と呼ぶ)。
その後、異物吸着部76は、回転軸72が矢印R2方向へ回転している間、該回転軸72からトルクリミッタ75に対して矢印R2方向に回転する駆動力が伝達され続けるものの、回動制限部77M2を回動リミッタ71Mに当接させているため、トルクリミッタ75において「滑り」を発生させ、非吸着状態を維持する。また異物吸着部76は、回転軸72の回転が停止した場合、やはり非吸着状態を維持する。
このように手動操作部70、トルクリミッタ75及び異物吸着部76は、回転軸72の回転に伴い異物吸着部76を回動させ、該異物吸着部76を吸着状態又は非吸着状態に遷移させることができる。説明の都合上、以下では手動操作部70及びトルクリミッタ75をまとめて遷移部80とも呼ぶ。
[1-4-4.異物の吸着及び状態の遷移]
次に、上分離部15における異物吸着部76による異物の吸着、及び該異物吸着部76の状態の切替について説明する。上分離部15は、上述したように、硬貨集積空間50内に集積された硬貨CNを1枚ずつに分離しながら繰り出す分離処理を行う場合、硬貨制御部12の制御に基づき、傾斜円盤45を矢印R1方向(図5(A))、すなわち正転方向に回転させる。
このとき遷移部80は、円盤駆動部46の円盤駆動ギア46G(図10)から連動ギア73を介して駆動力が伝達され、回転軸72を矢印R1方向に回転させ、これに伴って異物吸着部76を該矢印R1方向に回動させる。この結果、上分離部15では、図12(A)に示すように、異物吸着部76が吸着状態となる。このとき磁石78は、集積タンク41に極めて近接した状態となっている。
これにより上分離部15では、例えばクリップのような磁性体でなる異物(以下これを異物Jと呼ぶ)が硬貨CNと共に硬貨集積空間50内に集積された状態で分離処理を行った場合、図12(B)に示すように、この異物Jを集積タンク41の内周面における磁石78の近傍に吸着させることができる。以下では、集積タンク41の内側面のうち磁石78が近接している箇所であり、異物Jが吸着される箇所を、吸着箇所41Pと呼ぶ。
この吸着箇所41Pは、上下方向に関して、硬貨集積空間50の下端と搬送部51との間に位置しており、さらに集積タンク41において硬貨集積空間50内に集積可能な最大枚数(例えば100枚)の硬貨CNが集積された場合の上端よりも上側に位置している。また吸着箇所41Pは、左右方向に関して、分離突起47により搬送部51に向けて運ばれる硬貨CNが通過する箇所の近傍であり、且つ傾斜円盤45の円盤面45Sから硬貨CN1枚分の厚さ以上の間隔を空けた位置に設定されている。
やがて上分離部15は、硬貨集積空間50内に集積されていた全ての硬貨CNを分離して繰り出すと、硬貨制御部12の制御に基づき、傾斜円盤45を矢印R2方向、すなわち逆転方向に回転させる。このとき遷移部80は、円盤駆動部46の円盤駆動ギア46G(図10)から連動ギア73を介して駆動力が伝達され、回転軸72を矢印R2方向に回転させ、これに伴って異物吸着部76を該矢印R2方向に回動させる。この結果、上分離部15では、図12(C)に示すように、異物吸着部76が非吸着状態となる。このとき磁石78は、を集積タンク41の吸着箇所41Pから離隔した状態となっている。
これにより上分離部15では、集積タンク41の吸着箇所41Pに吸着されていた異物Jに対して磁石78の磁力が殆ど及ばなくなり、該異物Jが重力の作用により該集積タンク41の内側面に沿って下降する。さらに上分離部15は、硬貨制御部12の制御に基づき、排出扉駆動部43(図3等)を駆動させて排出扉42を回動させ、排出口開放状態に遷移させる。これにより上分離部15は、吸着箇所41Pから下降してきた異物Jを排出口41Bから硬貨集積空間50外へ排出し、排出ダクト44に沿ってさらに下降させ、この異物Jを筐体2の前面排出口2H(図1)から外部へ排出させることができる。
[1-5.効果等]
以上の構成において、第1の実施の形態による現金自動預払機1の硬貨処理装置10は、上分離部15に異物吸着部76を設けると共に、円盤駆動部46から駆動力が伝達される手動操作部70及びトルクリミッタ75により、遷移部80を構成した(図9及び図10)。
このため上分離部15は、分離処理中に傾斜円盤45を正転方向に回転させるだけで、異物吸着部76を吸着状態に遷移させ、磁石78を吸着箇所41Pの近傍に位置させることができる(図12(A))。これにより上分離部15は、硬貨集積空間50内に存在し磁性を有する異物Jを該吸着箇所41Pに吸着させ得るため(図12(B))、この異物Jが搬送部51まで搬送され詰まりを発生させることや、認識搬送部16よりも下流側まで搬送され種々の障害を引き起こすことを、未然に防止できる。
また上分離部15では、吸着箇所41Pを、傾斜円盤45の前端近傍となる位置に、すなわち円盤面45S上で分離突起47に引っかかった硬貨CNが傾斜円盤45の回転に伴って搬送部51へ進行する際の経路に近接した位置に設けた(図12等)。これにより上分離部15では、分離突起47や硬貨CNに引っかかるなどして、硬貨CNと共に搬送部51へ向かおうとしている異物Jを、吸着箇所41Pへ良好に吸着させることができる。
さらに上分離部15では、集積タンク41において、硬貨集積空間50内に集積可能な最大枚数(例えば100枚)の硬貨CNが集積された場合の上端よりも上側に、吸着箇所41Pを設定した。これにより上分離部15では、吸着箇所41Pに異物Jが吸着された後に、硬貨集積空間50内に集積され傾斜円盤45の回転に伴って撹拌される硬貨CNと該異物Jとが衝突し、該異物Jが該吸着箇所41Pから引き離されることを、未然に防止できる。
そのうえ上分離部15では、吸着箇所41Pを、左右方向に関して傾斜円盤45の円盤面45Sから硬貨CN1枚分の厚さ以上の間隔を空けた位置に設定した(図5(B)等)。これにより上分離部15では、吸着箇所41Pに異物Jを吸着した場合に、傾斜円盤45の分離突起47により搬送部51へ進行する硬貨CNや該分離突起47等と該異物Jとが衝突することにより、該異物Jが落下することや搬送部51へ搬送されてしまうことを回避できる。
また上分離部15では、分離処理の終了後に、傾斜円盤45を逆転方向に回転させるだけで、異物吸着部76を非吸着状態に遷移させ、磁石78を吸着箇所41Pから離隔させることができる(図12(C))。これにより上分離部15は、吸着箇所41Pに吸着していた異物Jを、該吸着箇所41Pから離脱させ、集積タンク41の内側面に沿って下降させ、排出口41Bから硬貨集積空間50の外部へ排出させることができる。
換言すれば、上分離部15では、仮に磁石78の磁力により吸着箇所41Pに対して異物Jが強力に吸着されていたとしても、異物吸着部76を非吸着状態に遷移させるだけで、重力の作用により該異物Jを該吸着箇所41Pから極めて容易に離脱させることができ、該異物Jを該吸着箇所41Pに残す恐れが無い。
さらに上分離部15では、分離処理の終了後に傾斜円盤45を逆転方向に回転させるため、吸着箇所41Pから異物Jが下降する経路の近傍において、分離突起47や傾斜円盤45の円盤面45Sを排出口41Bへ向けて進行させることができる。このため上分離部15では、吸着箇所41Pから集積タンク41の内側面に沿って下降する異物Jが左方向に寄り、分離突起47や円盤面45Sと当接し、又は引っかかった場合、該異物Jを積極的に排出口41Bへ進行させることができる。
これに加えて上分離部15では、異物吸着部76の可動ブラケット77を手動操作部70の回転軸72に挿通させると共に、該回転軸72からトルクリミッタ75を介して該可動ブラケット77に駆動力を伝達させるようにした(図10等)。このため上分離部15では、異物吸着部76の状態を遷移するための専用のアクチュエータ等を設ける必要がなく、既存の円盤駆動部46から供給される駆動力を利用することができる。
また上分離部15では、トルクリミッタ75を用いたため、分離処理を開始して傾斜円盤45が正転方向に回転し始めるタイミングで異物吸着部76を吸着状態に遷移でき、また分離処理の終了時に傾斜円盤45を逆転方向へ回転させ始めるタイミングで該異物吸着部76を非吸着状態に遷移できる。すなわち上分離部15では、分離処理を行っている間、傾斜円盤45を逆転方向に回転させない限り、異物吸着部76を吸着状態に維持して吸着箇所41Pに異物を吸着させることができる。
さらに上分離部15では、操作ノブ74を傾斜円盤45と連動させるための回転軸72に、異物吸着部76の可動ブラケット77を挿通させた(図9及び図10)。このため上分離部15では、保守作業等において保守作業者等に操作ノブ74を正転方向又は逆転方向に回転させるだけで、他の操作を行わせることなく、異物吸着部76を吸着状態又は非吸着状態に遷移させることができる。
以上の構成によれば、第1の実施の形態による現金自動預払機1の硬貨処理装置10は、上分離部15に異物吸着部76を設けると共に、円盤駆動部46から駆動力が伝達される手動操作部70及びトルクリミッタ75により遷移部80を構成した。このため上分離部15は、分離処理中に傾斜円盤45を正転方向に回転させるだけで、異物吸着部76を吸着状態に遷移させて異物Jを吸着箇所41Pに吸着させることができる。また上分離部15は、分離処理の終了後に傾斜円盤45を逆転方向に回転させるだけで、異物吸着部76を非吸着状態に遷移させて異物Jを吸着箇所41Pから良好に離脱させて下降させ、排出口41Bから外部へ排出させることができる。
[2.第2の実施の形態]
第2の実施の形態による現金自動預払機201(図1)は、第1の実施の形態による現金自動預払機1と比較して、硬貨処理装置10に代わる硬貨処理装置210を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。硬貨処理装置210(図2)は、第1の実施の形態による硬貨処理装置10と比較して、硬貨制御部12及び上分離部15に代わる硬貨制御部212及び上分離部215を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
硬貨制御部212は、第1の実施の形態による硬貨制御部12と同様にCPU、ROM及びRAM等を有しており、硬貨処理装置210を統括制御する。ただし硬貨制御部212は、硬貨制御部12と一部異なる処理を行うようになっている。
上分離部215は、図9と対応する図13に示すように、第1の実施の形態による上分離部15と比較して、トルクリミッタ75及び異物吸着部76に代わるソレノイド275及び異物吸着部276を有する点、及び手動操作部フレーム71の回動リミッタ71Mが省略されている点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。異物吸着部276は、異物吸着部76と比較して、可動ブラケット77に代わる可動ブラケット277を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
ソレノイド275は、硬貨制御部212の制御に基づき、本体部275Aに対して出力軸275Bを前後方向へ移動させ得るようになっている。また出力軸275Bの前端近傍には、左右方向貫通する孔部275BHが形成されると共に、連動軸275Cが挿通されている。またこの第2の実施の形態では、手動操作部70及びソレノイド275をまとめて遷移部280と呼ぶ。
可動ブラケット277は、可動ブラケット77と比較して、回動制限部77M1及び77M2(図9)が省略される一方、連動部277Mが設けられている。この連動部277Mは、左右方向に貫通する孔部(図示せず)が穿設されており、ソレノイド275の連動軸275Cが挿通されている。
かかる構成により上分離部215は、遷移部280のソレノイド275を駆動することにより、異物吸着部276を第1の実施の形態と同様の吸着状態(図12(A)及び(B))又は非吸着状態(図12(C))に遷移させることができる。
すなわち上分離部215は、硬貨制御部212の制御に基づき、分離処理の開始時に遷移部280により異物吸着部276を吸着状態に遷移させることにより、吸着箇所41Pに異物Jを吸着させることができる。また上分離部215は、分離処理の終了時に遷移部280により異物吸着部276を非吸着状態に遷移させることにより、異物Jを吸着箇所41Pから下降させ、排出口41Bから排出させることができる。
また上分離部215では、硬貨制御部212の制御により、傾斜円盤45の回転と異物吸着部276における状態の遷移とを、互いに独立に制御することができる。このため上分離部215では、例えば硬貨CNの詰まりが発生した場合等に、異物吸着部276を吸着状態として吸着箇所41Pに異物を吸着させた状態のまま、傾斜円盤45を逆転方向に回転させることもできる。
その他の点においても、上分離部215では、傾斜円盤45の回転と連動して遷移部80により異物吸着部76の状態を遷移させる点を除き、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏し得る。
以上の構成によれば、第2の実施の形態による現金自動預払機201の硬貨処理装置210は、上分離部215に異物吸着部276を設けると共に、手動操作部70及びソレノイド275により遷移部280を構成した。このため上分離部215は、遷移部280のソレノイド275を駆動することにより、分離処理中に異物吸着部76を吸着状態に遷移させて異物Jを吸着箇所41Pに吸着させることができる。また上分離部215は、分離処理の終了後に異物吸着部76を非吸着状態に遷移させて異物Jを吸着箇所41Pから良好に離脱させて下降させ、排出口41Bから外部へ排出させることができる。
[3.第3の実施の形態]
第3の実施の形態による現金自動預払機301(図1)は、第1の実施の形態による現金自動預払機1と比較して、硬貨処理装置10に代わる硬貨処理装置310を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。硬貨処理装置310(図2)は、第1の実施の形態による硬貨処理装置10と比較して、上分離部15に代わる上分離部315を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
上分離部315は、図14(A)及び(B)に模式的な前側面図及び右側面図を示すように、第1の実施の形態による上分離部15と比較して、異物吸着部76に代わる異物吸着部376を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。異物吸着部376は、異物吸着部76と比較して、可動ブラケット77に代わる可動ブラケット377を有する点、及び磁気遮蔽部390が設けられている点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。因みに図14(A)及び(B)は、異物吸着部376が吸着状態に遷移された様子を表している。またこの第3の実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、手動操作部70及びトルクリミッタ75をまとめて遷移部80と呼ぶ。
可動ブラケット377は、第1の実施の形態による可動ブラケット77と比較して、連動突起377Pを有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。連動突起377Pは、左右方向に薄い板状であり、左右方向から見て上底よりも下底が短い逆台形状に形成され、その後辺が後上側と前下側とを結ぶように傾斜されている。この連動突起377Pは、可動ブラケット377における右側部377Rのうち後側の上寄りに設けられている。
磁気遮蔽部390は、異物吸着部376の後側、すなわち該異物吸着部376及び集積タンク41の間に配置されており、磁気遮蔽板391、回動軸392、スプリング393及びストッパ394により構成されている。
吸着部磁性体としての磁気遮蔽板391は、軟磁性材料により構成されており、前後方向に薄く左右方向に長い薄板状に形成されている。この磁気遮蔽板391は、右端近傍において前後方向に沿った回動軸392に挿通されており、該回動軸392を中心に回動し得るようになっている。スプリング393は、いわゆるコイルスプリングであり、上端が分離部フレーム40(図3等)に取り付けられ、下端が磁気遮蔽板391の左端近傍に穿設された取付孔391Hに取り付けられている。このスプリング393は、自然状態から伸張されており、復元力の作用によって磁気遮蔽板391の左端近傍を上方向へ付勢する。ストッパ394は、集積タンク41の前側面における所定箇所に取り付けられている。
かかる構成により上分離部315は、異物吸着部376が吸着状態である場合(図14)、可動ブラケット377の連動突起377Pにより磁気遮蔽板391を下方向へ押し下げるように回動させ、磁石78及び集積タンク41の間から離れた位置に該磁気遮蔽板391を退避させる。
一方、上分離部315は、図14(A)及び(B)と対応する図15(A)及び(B)に示すように、異物吸着部376が非吸着状態である場合、連動突起377Pを磁気遮蔽板391から引き離し、スプリング393の復元力により該磁気遮蔽板391を上方向へ回動させてストッパ394に当接させる。これにより磁気遮蔽部390は、磁気遮蔽板391を磁石78及び吸着箇所41Pの間に位置させて該磁石78の磁気を遮蔽し、該吸着箇所41Pに到達する該磁石78の磁力を減少させることができる。
これにより上分離部315では、仮に第1の実施の形態と比較して磁石78の磁力を高めたとしても、非吸着状態において吸着箇所41Pに対する異物Jの吸着を確実に解除でき、集積タンク41内で該異物Jを下降させて排出口41Bから排出させることができる。
また上分離部315では、大きさの制約等により、異物吸着部376を非吸着状態に遷移させた際に磁石78を集積タンク41から十分に引き離すことができなかったとしても、磁気遮蔽部390の磁気遮蔽板391により該磁石78の磁気を遮蔽でき、吸着箇所41Pにおける異物Jの吸着を解除できる。
その他の点においても、第3の実施の形態による上分離部315は、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏し得る。
以上の構成によれば、第3の実施の形態による現金自動預払機301の硬貨処理装置310は、上分離部315に異物吸着部376及び遷移部80を設けると共に、磁気遮蔽部390を設けた。このため上分離部315は、分離処理中に傾斜円盤45を正転方向に回転させるだけで、異物吸着部376を吸着状態に遷移させると共に磁気遮蔽板391を退避させ、異物Jを吸着箇所41Pに吸着させることができる。また上分離部315は、分離処理の終了後に傾斜円盤45を逆転方向に回転させるだけで、異物吸着部376を非吸着状態に遷移させると共に磁気遮蔽板391を磁石78及び吸着箇所41Pの間に位置させ、吸着箇所41Pにおける異物Jの吸着を解除して下降させ、排出口41Bから外部へ排出させることができる。
[4.第4の実施の形態]
第4の実施の形態による現金自動預払機401(図1)は、第1の実施の形態による現金自動預払機1と比較して、硬貨処理装置10に代わる硬貨処理装置410を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。硬貨処理装置410(図2)は、第1の実施の形態による硬貨処理装置10と比較して、上分離部15に代わる上分離部415を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
上分離部415は、図16(A)に模式的な斜視図を示すように、第1の実施の形態による上分離部15と比較して、トルクリミッタ75及び異物吸着部76に代わる連動ギア475及び異物吸着部476を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。なお図16(A)は、説明の都合上、各部品の形状を単純化し、模式的に表している。また図16(A)は、排出扉42が排出口閉塞状態である様子を表している。
連動ギア475は、中心軸を前後方向に沿わせた円板状に形成されており、扉回動軸42Fの前端近傍に固定されている。この連動ギア475の周側面には、ギア歯(歯車)が形成されている。このため連動ギア475は、排出扉駆動部43から駆動力の供給を受けた排出扉42が回動すると、該排出扉42及び扉回動軸42Fと一体に回動することができる。またこの第4の実施の形態では、扉回動軸42F及び連動ギア475をまとめて遷移部480と呼ぶ。
異物吸着部476は、ブラケット477、磁石78及び扇形ギア479により構成されている。扇形ギア479は、中心軸を前後方向に沿わせた円板から扇形の一部分を取り出したような形状となっている。また扇形ギア479は、円板の中心に相当する部分に軸孔479Hが穿設されると共に回動軸479Xが挿通されている。この回動軸479Xは、分離部フレーム40(図3等)に取り付けられている。このため扇形ギア479は、回動軸479Xを中心として回動することができる。さらに扇形ギア479は、周側面にギア歯が形成されており、連動ギア475と噛み合わされている。
扇形ギア479の前側面には、ブラケット477が取り付けられている。ブラケット477は、扇形ギア479における回動中心からの放射方向に沿った細長い直方体状に形成されている。またブラケット477の後側面における放射方向側(すなわち扇形ギア479における回動中心から遠い側)の端部近傍には、磁石78が取り付けられている。
かかる構成により上分離部415は、排出扉42が排出口閉塞状態である場合(図16(A))、磁石78を比較的左側に位置させ、集積タンク41の吸着箇所41P(図示せず)に近接させことにより、異物吸着部476を吸着状態とする。
一方、上分離部415は、図16(A)と対応する図16(B)に示すように、排出扉駆動部43から駆動力が供給されると、排出扉42が扉回動軸42Fを中心に回動して排出口開放状態に遷移する。このとき上分離部415は、排出扉42と一体に扉回動軸42F及び連動ギア475が回動することに伴い、異物吸着部476を回動させて磁石78を右方向へ移動させ、集積タンク41の吸着箇所41P(図示せず)から遠ざけた非吸着状態とする。
すなわち上分離部415は、遷移部480により、排出扉42の開閉と連動して異物吸着部476を吸着状態(図16(A))又は非吸着状態(図16(B))に遷移させることができる。
ところで上分離部415は、非吸着状態(図16(B))において、磁石78を吸着状態(図16(A))の位置から右方向へ移動させている。一方、集積タンク41は、図6等に示したように、右側へ進むに連れて傾斜円盤45の中心に近付くように傾斜されている。このため上分離部415は、非吸着状態において、磁石78を吸着状態から右方向へ移動させることにより、該磁石78を集積タンク41の内側面から大きく引き離すことができ、吸着箇所41Pに対する異物Jの吸着を確実に解除することができる。
その他の点においても、上分離部415では、傾斜円盤45の回転と連動して遷移部80により異物吸着部76の状態を遷移させる点を除き、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏し得る。
以上の構成によれば、第4の実施の形態による現金自動預払機401の硬貨処理装置410は、上分離部415に異物吸着部476を設けると共に、排出扉42の扉回動軸42F及び連動ギア475により遷移部480を構成した。このため上分離部415は、排出扉42を排出口閉塞状態とすることにより、分離処理中に異物吸着部476を吸着状態に遷移させ、異物Jを吸着箇所41Pに吸着させることができる。また上分離部415は、分離処理の終了後に排出扉42を回動させて排出口開放状態に遷移させることにより、異物吸着部476を非吸着状態に遷移させて吸着箇所41Pにおける異物Jの吸着を解除させ、排出口41Bから外部へ排出させることができる。
[5.第5の実施の形態]
第5の実施の形態による現金自動預払機501(図1)は、第1の実施の形態による現金自動預払機1と比較して、硬貨処理装置10に代わる硬貨処理装置510を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。硬貨処理装置510(図2)は、第1の実施の形態による硬貨処理装置10と比較して、上分離部15に代わる上分離部515を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
上分離部515は、図17(A)に模式的な斜視図を示すように、第1の実施の形態による上分離部15と比較して、トルクリミッタ75及び異物吸着部76に代わる連動円板575及び異物吸着部576を有し、さらにスプリング579及び角度規制部590を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。なお図17(A)は、図16(A)と対応しており、排出扉42が排出口閉塞状態である様子を表している。
連動円板575は、円板部575D及び連動軸575Pにより構成されている。円板部575Dは、中心軸を前後方向に沿わせた円板状に形成されており、扉回動軸42Fの前端近傍に固定されている。連動軸575Pは、中心軸を前後方向に沿わせた細長い円柱状に形成されており、円板部575Dにおける前側円板面の前端近傍に、前方向に向けて立設されている。
このため連動円板575は、排出扉駆動部43から駆動力の供給を受けた排出扉42が回動すると、該排出扉42及び扉回動軸42Fと一体に回動することができる。このとき連動円板575は、回動に伴い、連動軸575Pの上下方向の位置を変化させながら左右方向の位置を変化させることができる。
異物吸着部576は、ブラケット577及び磁石78により構成されている。ブラケット577は、概ね上下方向に沿った細長い直方体状若しくは四角柱状に構成されており、その下端近傍に左右方向に貫通する丸孔でなる挿通孔577Hが穿設されている。この挿通孔577Hは、手動操作部70の回転軸72に挿通されている。
このためブラケット577は、回転軸72に沿って(すなわち左右方向に沿って)自由に移動することができる。このときブラケット577は、回転軸72を中心として回動し、上端側を前側又は後側へ倒すように傾斜することもできる。因みに回転軸72は、ブラケット577に対して回転方向の力を殆ど作用させること無く、挿通孔577Hの内部で自由に回転できる。
またブラケット577の後側面における上端近傍には、磁石78が取り付けられている。さらにブラケット577の前側面における上下方向の中央付近には、中心軸を前後方向に沿わせた比較的小さい円柱形状でなる突起577Pが前方向へ向けて立設されている。
スプリング579は、コイルスプリングであり、右端をブラケット577の突起577Pに係合させ、左端を分離部フレーム40に設けられた所定の係合部(図示せず)に係合させている。このスプリング579は、自然状態から伸張されているため、突起577Pを介してブラケット577を左方向に付勢している。
このためブラケット577は、その左側面を、連動円板575の連動軸575Pにおける右端近傍に当接させる。またブラケット577は、連動円板575の回動に伴って連動軸575Pの左右方向に関する位置が変化した場合、該連動軸575Pと当接した状態を維持しながら、回転軸72に沿って左右方向に移動することができる。
角度規制部590は、カム板591及び軸体592により構成されている。カム板591は、上下方向に薄く左右方向に長い板状に構成されており、その中央付近に、上下方向に貫通するカム孔591Hが穿設されている。カム孔591Hは、概ね左右方向に沿って形成されているものの、その中央付近に概ね前後方向に傾斜した部分が局所的に形成されることにより、クランク状に屈曲されている。具体的にカム孔591Hは、左側端部から右方向へ進行した後、右斜め後方向に屈曲して僅かに進行した後、再び右方向に進行している。
軸体592は、概ね上下方向に沿った細長い円柱状に構成されており、ブラケット577の下端、すなわち挿通孔577Hの下側から下方に向けて立設され、カム板591のカム孔591Hに挿通されている。このためブラケット577は、カム孔591Hにおける軸体592が挿通されている箇所の前後方向に関する位置に応じて、回転軸72を中心とした傾斜角度が変化し、その上端近傍に取り付けられた磁石78の前後方向に関する位置を変化させる。この第5の実施の形態では、扉回動軸42F、回転軸72、連動円板575、スプリング579及び角度規制部590を、まとめて遷移部580と呼ぶ。
かかる構成により上分離部515は、排出扉42が排出口閉塞状態である場合(図17(A))、磁石78を比較的左側かつ後側に位置させ、集積タンク41の吸着箇所41P(図示せず)に近接させことにより、異物吸着部576を吸着状態とする。
一方、上分離部515は、図17(A)と対応する図17(B)に示すように、排出扉駆動部43から駆動力が供給されると、排出扉42が扉回動軸42Fを中心に回動して排出口開放状態に遷移する。このとき上分離部515は、排出扉42と一体に扉回動軸42F及び連動円板575が回動することに伴い、異物吸着部576を右方向へ移動させる。またこのとき上分離部515は、角度規制部590におけるカム孔591Hの形状に応じて軸体592の挿通箇所が後方向へ変位するため、異物吸着部576を矢印R2方向へ回動させる。これにより上分離部515は、異物吸着部476の磁石78を右方向及び前方向へ移動させ、集積タンク41の吸着箇所41P(図示せず)から遠ざけた非吸着状態とする。
すなわち上分離部515は、遷移部580により、排出扉42の開閉と連動して異物吸着部576を吸着状態(図17(A))又は非吸着状態(図17(B))に遷移させることができる。
また上分離部515は、非吸着状態において、第4の実施の形態と同様に磁石78を吸着状態から右方向へ移動させることに加えて、角度規制部590により前方向へも移動させる。このため上分離部515は、第4の実施の形態と比較して、磁石78を集積タンク41の内側面からさらに大きく引き離すことができ、吸着箇所41Pに対する異物Jの吸着を確実に解除することができる。
その他の点においても、上分離部515では、傾斜円盤45の回転と連動して遷移部80により異物吸着部76の状態を遷移させる点を除き、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏し得る。
以上の構成によれば、第5の実施の形態による現金自動預払機501の硬貨処理装置510は、上分離部515に異物吸着部576を設けると共に、排出扉42の扉回動軸42F、回転軸72、連動円板575、スプリング579及び角度規制部590により遷移部580を構成した。このため上分離部515は、排出扉42を排出口閉塞状態とすることにより、分離処理中に異物吸着部576を吸着状態に遷移させ、異物Jを吸着箇所41Pに吸着させることができる。また上分離部515は、分離処理の終了後に排出扉42を回動させて排出口開放状態に遷移させることにより、異物吸着部576を非吸着状態に遷移させて吸着箇所41Pにおける異物Jの吸着を解除させ、排出口41Bから外部へ排出させることができる。
[6.他の実施の形態]
なお上述した第1、第2及び第3の実施の形態においては、回転軸72を中心として可動ブラケット77等を回動させることにより、異物吸着部76等を吸着状態又は非吸着状態に遷移させる場合について述べた。また第4の実施の形態においては、回動軸479Xを中心として扇形ギア479と一体にブラケット477を回動させることにより、異物吸着部476を吸着状態又は非吸着状態に遷移させる場合について述べた。さらに第5の実施の形態においては、回転軸72に沿ってブラケット577を移動させると共に回動させることにより、異物吸着部576を吸着状態又は非吸着状態に遷移させる場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、種々の機構により異物吸着部76等を吸着状態又は非吸着状態に遷移させても良い。要は、吸着状態において吸着箇所41Pの近傍に磁石78を位置させる一方、非吸着状態において該吸着箇所41Pの遠方に磁石78を位置させることができれば良い。
また上述した第1の実施の形態においては、手動操作部70の回転軸72にトルクリミッタ75を取り付けて異物吸着部76の可動ブラケット77を挿通させる場合について述べた(図9及び図10)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば傾斜円盤45と連動して回転する他の種々の回転軸にトルクリミッタ75を取り付けて異物吸着部76の可動ブラケット77を挿通させても良い。第3の実施の形態についても同様である。また第2の実施の形態では、回転するか否かにかかわらず、異物吸着部76の回動軸として使用可能な種々の円柱状の部品に可動ブラケット77を挿通させても良い。
さらに上述した第1の実施の形態においては、円盤駆動ギア46Gに連動ギア73を直接噛み合わせることにより、円盤駆動部46の駆動力を直接的に回転軸72に伝達して回転させる場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば円盤駆動ギア46Gと噛み合っている傾斜円盤45のギア45Gに所定の中間ギア(図示せず)を噛み合わせ、この中間ギアに連動ギア73を噛み合わせても良い。この場合、円盤駆動ギア46Gに対して連動ギア73が間接的に噛み合わされているため、円盤駆動部46の駆動力を間接的に回転軸72に伝達して回転させることができる。第3の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第2の実施の形態においては、ソレノイド275の出力軸275Bを前後方向へ移動させることにより可動ブラケット277を回動させる場合について述べた(図13)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば所定のモータからギア等を介して可動ブラケット277に駆動力を伝達して回動させるなど、他の種々の手法により駆動力を発生させて可動ブラケットに伝達して回動させても良い。
さらに上述した第3の実施の形態においては、可動ブラケット377の回動と連動して磁気遮蔽板391を回動させることにより、磁石78の磁気を遮蔽するか否かを切り替える場合について述べた(図14及び図15)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば図18に示す上分離部615のように、磁気遮蔽部690の磁気遮蔽板691をソレノイド692によって左右方向へ移動させることにより、磁石78の磁気を遮蔽するか否かを切り替えるようにしても良い。
さらに上述した第3の実施の形態においては、異物吸着部376を吸着状態又は非吸着状態に遷移させる際に、磁石78の位置を変化させると共に磁気遮蔽板391の位置や姿勢を変化させる場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば磁石78の位置を固定したまま磁気遮蔽板391の位置や姿勢を変化させるようにしても良い。
さらに上述した第4の実施の形態においては、排出扉42の回動と連動してブラケット477を回動させることにより磁石78を移動させて異物吸着部476を吸着状態又は非吸着状態に遷移させる場合について述べた。また第5の実施の形態においては、排出扉42の回動と連動してブラケット577を左右方向へ移動させることにより磁石78を移動させて異物吸着部576を吸着状態又は非吸着状態に遷移させる場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばブラケット477等を上下方向へ移動させることにより磁石78を移動させる等、排出扉42の回動と連動してブラケット477等を種々の方向へ移動又は回動させ、異物吸着部476等を吸着状態又は非吸着状態に遷移させても良い。
さらに上述した第1の実施の形態においては、傾斜円盤45の前端近傍となる位置に吸着箇所41Pを設ける場合について述べた(図5、図12等)。しかしながら本発明はこれに限らず、集積タンク41における排出口41B及び搬送部51の間における種々の箇所に吸着箇所41Pを設けても良い。ただしこの場合、硬貨集積空間50内に収納可能な最大枚数の硬貨CNが集積された場合の上端よりも上側に吸着箇所41Pを設けることが望ましい。第2~第5の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、吸着箇所41Pを、左右方向に関して傾斜円盤45の円盤面45Sから硬貨CN1枚分の厚さ以上の間隔を空けた位置に設定する場合について述べた(図5(B)等)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば吸着箇所41Pを、円盤面45Sから硬貨CN2枚分の厚さ以上の間隔を空けた位置に設定する等、左右方向に関する種々の位置に設定しても良い。第2~第5の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、異物吸着部76(図9及び図10)において磁石78の後側以外を磁性材料でなる磁石保持部材79で覆い、且つ該磁石78の後側に非磁性材料でなる可動ブラケット77の磁石保持部77Dを位置させる場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば磁石保持部材79及び磁石保持部77Dの少なくとも一方を省略しても良く、また磁石保持部材79により磁石78における種々の箇所を覆うようにしても良い。第2~第5の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、集積タンク41を非磁性の樹脂材料により構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばステンレスやセラミックス等、非磁性の種々の材料により集積タンク41を構成しても良い。この場合、当該材料が十分な透磁性を有していれば良い。第2~第5の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、排出扉42を回動させることにより排出口閉塞状態又は排出口開放状態に遷移させる場合について述べた(図6)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば排出扉42を左右方向や前後方向へ移動(スライド)させ、又はこれらと回動等の他の動作とを組み合わせることにより、排出口閉塞状態又は排出口開放状態に遷移させるようにしても良い。第2~第5の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、現金自動預払機1において入金取引等の取引処理が行われる際に、硬貨処理装置10において入金処理を全て終了した後に上分離部15において傾斜円盤45を逆転方向に回転させて異物吸着部76を非吸着状態に遷移させる場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば硬貨処理装置10において入金計数処理が終了した段階等、硬貨集積空間50内に集積された硬貨CNを全て繰り出し終えた段階で、傾斜円盤45を逆転方向に回転させて異物吸着部76を非吸着状態に遷移させても良い。第2~第5の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、硬貨処理装置10(図2)の上分離部15に本発明を適用する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば下分離部29に本発明を適用しても良い。第2~第5の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、使用者との間で種々の取引を行う現金自動預払機1(図1)の硬貨処理装置10に組み込まれる上分離部15に本発明を適用する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば硬貨処理装置10(図2)の下分離部29に本発明を適用しても良い。或いは、例えば金融機関の店舗内等に設置され、当該金融機関の職員等の操作に従って硬貨の計数や分類等の処理を行う現金管理装置等、硬貨を取り扱う種々の装置に本発明を適用しても良い。第2~第5の実施の形態についても同様である。
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
さらに上述した第1の実施の形態においては、硬貨集積部及び分離繰出部としての集積分離部15Aと、異物吸着部としての異物吸着部76と、遷移部としての遷移部80とによって硬貨処理装置としての硬貨処理装置10を構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる硬貨集積部と、分離繰出部と、異物吸着部と、遷移部とによって硬貨処理装置を構成しても良い。