以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
[1.第1の実施の形態]
[1-1.現金自動預払機の構成]
図1に示すように、現金取扱装置としての現金自動預払機1は、箱状の筐体2を中心に構成されており、例えば金融機関や各種商業施設等に設置され、使用者(すなわち金融機関や商業施設の顧客等)との間で、入金処理や出金処理等の現金に関する取引を行う。
筐体2は、その前側に使用者が対峙した状態で紙幣の投入やタッチパネルによる操作等をしやすい箇所に応対部3が設けられている。応対部3は、使用者との間で例えば現金やカード等を直接やり取りすると共に、取引に関する情報の通知や操作指示の受付を行うようになっており、通帳入出口4、カード入出口5、硬貨入出金口6、紙幣入出金口7及び操作表示部8等が設けられている。
通帳入出口4は、通帳が挿入され、また排出する部分である。通帳入出口4の奥側には、通帳の裏表紙等に設けられた磁気記録部から磁気情報を読み取り、また該通帳に取引の内容を記録する通帳処理部(図示せず)が設けられている。カード入出口5は、キャッシュカード等の各種カードが挿入又は排出される部分である。カード入出口5の奥側には、各種カードに磁気記録された口座番号等の読み取りを行うカード処理部(図示せず)が設けられている。
硬貨入出金口6は、使用者によって入金される硬貨が投入されると共に、使用者へ出金する硬貨が排出される部分である。紙幣入出金口7は、使用者によって入金される紙幣が投入されると共に、使用者へ出金する紙幣が排出される部分である。この硬貨入出金口6及び紙幣入出金口7は、それぞれシャッタを駆動することにより開放又は閉塞するようになっている。操作部としての操作表示部8は、取引に際して操作画面や取引内容等を表示する液晶表示パネルと、使用者の入力操作を検知するタッチセンサとが一体化されたタッチパネルである。
以下では、現金自動預払機1のうち使用者が対峙する側を前側とし、その反対を後側とし、該前側に対峙した使用者から見て左及び右をそれぞれ左側及び右側とし、さらに上側及び下側を定義して説明する。
筐体2の内部には、現金自動預払機1全体を統括制御する主制御部9や、取引対象である硬貨に関する種々の処理を行う硬貨処理装置10、及び紙幣に関する種々の処理を行う紙幣処理装置(図示せず)等が設けられている。主制御部9は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金処理や出金処理等の種々の処理を行う。また主制御部9は、内部にRAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
硬貨処理装置10は、全体として直方体に類似した形状に構成されており、図示しないスライドレールを介して筐体2に取り付けられている。また筐体2の前面側又は後面側には、開閉可能な扉(図示せず)が設けられている。このため現金自動預払機1は、保守作業等が行われる場合、筐体2の前面側又は後面側の扉を開放した上で、硬貨処理装置10を前方又は後方へスライドさせることにより、該硬貨処理装置10を該筐体2の外部に位置させ、また該筐体2の内部に収納させることができる。
[1-2.硬貨処理装置の構成]
図2に示すように硬貨処理装置10は、硬貨処理装置筐体11の内部に、硬貨に関する種々の処理を行う複数の部分が組み込まれている。この硬貨は、例えば銅及びニッケルの合金やアルミニウム等、十分な強度を有する種々の材料でなり、薄い円板状に形成されている。因みに硬貨処理装置10では、直径が異なる複数種類の硬貨を取り扱うことが想定されている。
硬貨処理装置筐体11の内部には、比較的上側ないし中央付近に、入出金部13、シュート部14、上分離部15、認識搬送部16、受渡部17、ピンベルト搬送部18、6個のスタッカ部21(21A、21B、21C、21D、21E及び21F)、出金搬送部22及び一時保留部23が設けられている。また硬貨処理装置筐体11の内部には、比較的下側に、硬貨制御部12、補充回収庫24、第1補充リジェクト庫25、第2補充リジェクト庫26、リジェクト庫27、取忘取込庫28及び下分離部29が設けられている。
硬貨制御部12は、主制御部9と同様、図示しないCPUを中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金取引や出金取引等に関する種々の処理を行い、硬貨処理装置10を統括制御する。また硬貨制御部12は、内部にRAM及びフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
[1-2-1.入出金部、シュート部及び上分離部の構成]
入出金部13は、使用者との間で硬貨を受け渡すことにより、該使用者に硬貨を入金させ、又は該使用者に硬貨を出金する。また入出金部13は、使用者により硬貨が投入されると、投入された硬貨をシュート部14に引き渡して該シュート部14内を下降させ、該シュート部14の下側に設けられた上分離部15内に到達させる。また入出金部13は、ピンベルト搬送部18から硬貨が搬送されてくると、該硬貨を集積した後、使用者に受け取らせる。
上分離部15は、下側の比較的大きい容積を占める部分である集積分離部15Aと、該集積分離部15Aから上方に突出するように形成された分離搬送部15Bとにより構成されている。この上分離部15は、集積分離部15Aに硬貨を集積すると共に、この硬貨を1枚ずつに分離して分離搬送部15Bにより上方向へ搬送し、さらに搬送路に沿って後方向へ搬送して認識搬送部16に引き渡す。
[1-2-2.認識搬送部及び受渡部の構成]
認識搬送部16は、シュート部14の右側に位置しており、硬貨を搬送しながら撮像し、得られた画像信号を基に該硬貨の金種や真偽、或いは損傷の程度等を基に該硬貨が取扱可能であるか否かを判定する。そのうえで認識搬送部16は、得られた判定結果を該硬貨の認識結果として硬貨制御部12に通知すると共に、該硬貨を受渡部17に引き渡す。受渡部17は、認識搬送部16から受け取った硬貨をピンベルト搬送部18に引き渡す。
[1-2-3.ピンベルト搬送部の構成]
ピンベルト搬送部18は、図2の一部を拡大した図3に示すように、スタッカ部21の前側下部、下側、後側及び上側を取り囲むように配置されている。説明の都合上、以下ではピンベルト搬送部18の前側下部、下側、後側及び上側をそれぞれ前ピンベルト搬送部18F、下ピンベルト搬送部18D、後ピンベルト搬送部18B及び上ピンベルト搬送部18Uと呼ぶ。このうち下ピンベルト搬送部18Dの大部分は、図2に示したように、出金搬送部22及び一時保留部23の左側に位置している。また上ピンベルト搬送部18Uは、前端近傍において、前斜め下方向へ屈曲し、上述したように入出金部13(図2)と接続されている。
ピンベルト搬送部18は、大きく分けて搬送ガイド40及びピンベルト50により構成されている。このうち搬送ガイド40は、図4に示すように、主ガイド板41、副ガイド板42及び溝部43により構成されている。ここでは、図3に示したように、上ピンベルト搬送部18Uを例に説明する。
主ガイド板41は、上ピンベルト搬送部18Uにおいて、前後方向に長く上下方向に短く左右方向に薄い板状に形成されており、その右側面である搬送面41Sが、上側をやや左方向へ傾けたような傾斜面となっている。この主ガイド板41は、搬送面41Sにより硬貨CNの盤面と当接する。
主ガイド板41の上側及び下側には、副ガイド板42が設けられている。副ガイド板42は、搬送面41Sよりも右方向へ突出しており、その内側面(搬送面41S側の面)により硬貨CNの上下方向への移動範囲を規制する。これにより搬送ガイド40は、上ピンベルト搬送部18Uにおいて、前後方向に沿って硬貨CNを案内することができる。また副ガイド板42の下端部には、右方向へ突出する硬貨周側面当接面42Sが形成されている。ピンベルト搬送部18は、硬貨CNの周側面を硬貨周側面当接面42Sに当接させつつ硬貨CNを転がすように搬送する。
ピンベルト搬送部18(図3)のうち下ピンベルト搬送部18Dは、上ピンベルト搬送部18Uと同様、前後方向に沿って硬貨を案内する。一方、ピンベルト搬送部18のうち前ピンベルト搬送部18F及び後ピンベルト搬送部18Bは、概ね上下方向に沿って硬貨を案内する。因みに前ピンベルト搬送部18F、後ピンベルト搬送部18B及び下ピンベルト搬送部18Dでは、それぞれにおける主ガイド板41の搬送面41Sが、上ピンベルト搬送部18Uにおける搬送面41S(図4)と同一の平面上に位置しており、何れも上側部分を左方向へ傾けたような傾斜面となっている。
ピンベルト50(図4及び図5)は、搬送ベルト51と複数の搬送ピン対54とにより構成されている。搬送ベルト51は、可撓性を有する材料によって円環状に形成されている。一方、硬貨処理装置筐体11(図2)には、主に搬送ガイド40が屈曲する箇所の近傍に、複数のプーリ55がそれぞれ回転可能に設けられている。搬送ベルト51は、各プーリ55を順次結ぶように張架されることにより、搬送面41S(図4)における上下方向のほぼ中央に対し、右側にやや離れた箇所に位置する。
搬送ベルト51は、横断面が長方形状であり、且つその短辺が主ガイド板41の搬送面41Sとほぼ平行となっている。この搬送ベルト51には、図5に示すように、搬送ピン対54が搬送方向に沿って等間隔に固定されている。1組の搬送ピン対54は、搬送方向上流側に位置する1本の押動ピン52Pと、該押動ピン52Pよりも搬送方向下流側に所定の押動ピン規制ピン間隔を空けて配置された1本の規制ピン52Rとにより構成されている。すなわち搬送ベルト51には、搬送方向上流側の搬送ピン対54の押動ピン52Pと、該搬送ピン対54の押動ピン52Pよりも搬送方向下流側に所定の間隔である押動ピン間隔Ipを空けて配置された搬送ピン対54の押動ピン52Pとが、搬送方向に沿って等間隔に固定されている。
押動ピン52Pは、左端部が概ね搬送面41Sの法線に沿った細長い円柱状に形成されており、搬送方向に沿って複数の押動ピン52Pが搬送ベルト51に固定されており、隣接する押動ピン52P同士の搬送方向に沿った間隔は等間隔となっている。また押動ピン52Pは、搬送面41Sに直交するように搬送ベルト51から搬送面41Sに向かって突出している。この押動ピン52Pは、左端部が搬送面41Sに入り込むことにより、搬送面41Sとオーバーラップしている。それぞれの押動ピン52Pは、搬送方向に沿った間隔である押動ピン間隔Ipが、認識搬送部16から一定速度で連続的に硬貨CNが搬送されても、受渡部17において該硬貨CNをピンベルト搬送部18に受け渡し可能な最小限の間隔となるように配置されている。この押動ピン52Pは、搬送面41Sに近接する左端部が硬貨CNの搬送方向上流側を搬送方向下流側に向かって押動することにより、硬貨CNを移動させる。
規制ピン52Rは、略円柱形状であり、搬送方向に沿って複数の規制ピン52Rが搬送ベルト51に固定されており、隣接する規制ピン52R同士の搬送方向に沿った間隔は等間隔となっている。また規制ピン52Rは、押動ピン52Pよりも長さが短くなっている。規制ピン52Rは、同一の搬送ピン対54内の押動ピン52Pとの搬送方向に沿った間隔である押動ピン規制ピン間隔が、硬貨処理装置10において取り扱われる硬貨のうち、最も直径が大きい硬貨である最大径硬貨の直径である最大硬貨径よりも僅かに広くなるように配置されている。規制ピン52Rは、搬送面41Sに近接する左端部が硬貨CNの搬送方向下流側に当接することにより、押動ピン52Pに押された硬貨CNの搬送方向下流側への飛び出しを規制する。
このようにピンベルト搬送部18は、押動ピン52Pと、該押動ピン52Pよりも長さが短い規制ピン52Rとの2種類の搬送ピンからなる1組の搬送ピン対54により、硬貨CNの前後を規制する。以下では、押動ピン52P及び規制ピン52Rをまとめて搬送ピン52とも呼ぶ。
主ガイド板41(図4)には、上下方向のほぼ中央に、搬送面41Sの一部が左側へ凹んでなる溝部43が形成されている。この溝部43は、ピンベルト50の走行経路に沿って形成されている。また溝部43は、搬送ピン52との間に十分な隙間を形成するよう、溝幅(すなわち上下方向の長さ)及び深さ(搬送面41Sから底面である溝部右側面43Sまでの長さ)が適切に設定されている。また主ガイド板41における溝部43には、搬送ピン52と左右方向に対向するように右方向を向く平面である溝部右側面43Sが形成されている。
このような構成により、ピンベルト搬送部18(図3)は、図示しないベルトモータから一部のプーリ55に駆動力が伝達されると、該プーリ55を右側面視で反時計回りに回転させ、これに伴ってピンベルト50を図3中反時計回りとなるように、すなわち矢印Eにより示す方向へ走行させる。これに伴いピンベルト搬送部18は、搬送ガイド40の搬送面41Sに硬貨CNの盤面(すなわち左側面)を寄りかからせた状態で、押動ピン52Pにより該硬貨CNに対し搬送方向へ力を加え、該搬送ガイド40に沿って進行させる、すなわち搬送する。以下では、ピンベルト搬送部18における硬貨の搬送方法をピン搬送とも呼ぶ。因みにピンベルト搬送部18は、図3中時計回りへはピンベルト50を走行し得ない構造になっている。
このピンベルト搬送部18は、受渡部17から硬貨を受け取ると、この硬貨を前ピンベルト搬送部18Fに沿って下方向へ進行させ、さらに下ピンベルト搬送部18Dに沿って後方向へ進行させる。続いてピンベルト搬送部18は、この硬貨を後ピンベルト搬送部18Bに沿って上方向へ進行させ、さらに上ピンベルト搬送部18Uに沿って前方向へ進行させた後、入出金部13へ進行させる。
すなわちピンベルト搬送部18は、認識搬送部16(図2)から受渡部17を介して受け渡された硬貨を、スタッカ部21の周囲を周回するようにして、概ね環状に形成された搬送経路Wに沿って入出金部13へ搬送する。
かかる構成に加えてピンベルト搬送部18(図3)には、6箇所の分岐部19(前補回分岐部19A、前リジェクト分岐部19B、一時保留分岐部19C、後第1リジェクト分岐部19D、後第2リジェクト分岐部19E及び後補回分岐部19F)が設けられている。具体的に前ピンベルト搬送部18Fには、前補回分岐部19Aが設けられている。下ピンベルト搬送部18Dには、前側から順に、前リジェクト分岐部19B、一時保留分岐部19C、後第1リジェクト分岐部19D、後第2リジェクト分岐部19E及び後補回分岐部19Fが設けられている。説明の都合上、以下では前補回分岐部19A、前リジェクト分岐部19B、一時保留分岐部19C、後第1リジェクト分岐部19D、後第2リジェクト分岐部19E及び後補回分岐部19Fをまとめて分岐部19とも呼ぶ。
前補回分岐部19Aは、搬送経路Wの方向に合わせて、後述するスタッカ分岐部20を右側面視で反時計回りに90度回転させたように構成されている。前補回分岐部19Aは、硬貨制御部12(図2)の制御に基づいてブレード45を回動させることにより、硬貨を引き続きピンベルト搬送部18に沿って進行させるか、或いは該硬貨をピンベルト搬送部18から分岐させて前補回案内部61に沿って進行させるかを、切り替える。
また前リジェクト分岐部19B、一時保留分岐部19C、後第1リジェクト分岐部19D、後第2リジェクト分岐部19E及び後補回分岐部19Fは、何れも搬送経路Wの方向に合わせて前補回分岐部19Aを右側面視で時計回りに90度回転させたように構成されている。
前リジェクト分岐部19Bの左側には、硬貨を第1補充リジェクト庫25の上面近傍へ進行させる前リジェクト案内部62が設けられている。因みに前リジェクト案内部62には、さらに前第2リジェクト分岐部19Gが設けられている。前第2リジェクト分岐部19Gは、前補回分岐部19A等と同様に構成されており、その左側には、硬貨を第2補充リジェクト庫26の上面近傍へ進行させる前第2リジェクト案内部67が設けられている。
また一時保留分岐部19Cの左側には、硬貨を一時保留部23へ進行させる一時保留案内部63が設けられている。後第1リジェクト分岐部19Dの左側には、硬貨をリジェクト庫27の上面近傍へ進行させる後第1リジェクト案内部64が設けられている。後第2リジェクト分岐部19Eの左側には、硬貨を取忘取込庫28の上面近傍へ進行させる後第2リジェクト案内部65が設けられている。後補回分岐部19Fの左側には、補充回収庫24が硬貨処理装置筐体11(図2)の後側に取り付けられた場合に、該補充回収庫24の上面近傍へ硬貨を進行させる後補回案内部66が設けられている。
このように各分岐部19は、ブレード45を回動させることにより、硬貨を引き続きピンベルト搬送部18に沿って進行させるか、或いは該硬貨をピンベルト搬送部18から分岐させて各搬送先へ進行させるかを、切り替える。
さらにピンベルト搬送部18(図3)には、6個のスタッカ部21(21A、21B、21C、21D、21E及び21F)のそれぞれ上側となる6箇所に、スタッカ分岐部20(20A、20B、20C、20D、20E及び20F)が設けられている。スタッカ分岐部20の左側には、硬貨をスタッカ部21へ案内する案内部31が設けられている。
図5に示すようにスタッカ分岐部20Fは、搬送ガイド40における主ガイド板41に、右方向から見て長方形状の角孔でなる分岐孔41Hが穿設されており、この分岐孔41Hを閉塞するようにブレード45が設けられている。因みに分岐孔41Hにおける前後方向の長さは、硬貨の直径よりも大きくなっている。以下ではスタッカ分岐部20Fを例に説明するものの、スタッカ分岐部20A、20B、20C、20D及び20Eは、何れもスタッカ分岐部20Fと同様に構成されている。但し案内部31は、それぞれ搬送先のスタッカ部21(21A、21B、21C、21D、21E及び21F)に集積すべき硬貨の金種に合わせた寸法で形成されており、下方向へ向かうに連れて右側へ湾曲した形状となっている。
ブレード45は、硬貨CNの搬送方向に関して下流側である前端側がブレード支持部34に固定されている。このブレード支持部34は、前端部に設けられたブレード支持部回動軸34Xを軸として図5中時計回りであるブレード閉鎖方向と図5中反時計回りあるブレード開放方向とに回動可能に構成されている。またブレード支持部34における左端部には、ソレノイド36の可動鉄芯36Aが後方から当接している。この可動鉄芯36Aにはスプリング38が巻回されており、ブレード支持部34をブレード閉鎖方向へ付勢している。またブレード45は、分岐孔41Hを閉鎖させる状態において図示しないストッパに当接することにより、それ以上のブレード閉鎖方向への回動が規制される。ソレノイド36は、硬貨制御部12の制御によりON状態となると可動鉄芯36Aを後方へ吸引する一方、OFF状態となると可動鉄芯36Aを吸引する力が消滅し可動鉄芯36Aが前方へ突出する。
このためブレード45は、ソレノイド36がON状態になると、ブレード支持部34と共にブレード開放状態へ回動し、図5(B)に示す搬送方向切替状態(後述する)となる。一方ブレード45は、ソレノイド36がOFF状態になると、スプリング38の付勢力によりブレード支持部34と共にブレード閉鎖状態へ回動し、図5(A)に示す搬送方向維持状態(後述する)となる。このようにブレード45は、硬貨制御部12(図2)の制御に基づき、アクチュエータであるソレノイド36により、搬送方向上流側である後端近傍を左側又は右側へ変位させるようにして回動する。
スタッカ分岐部20Fにおける分岐孔41Hの左側には、案内部31が設けられている。この案内部31は、傾斜面を形成する部材やその周囲を囲む部材により形成されており、図2に示したように、スタッカ分岐部20Fの左側から硬貨を落下若しくは滑降させながら、筒収納部72Yの上面近傍まで案内する。
ブレード45は、搬送方向上流側である後端近傍が左側へ回動される(図5(A))と、分岐孔41Hを閉塞し、その右側面である搬送継続面45sS1(後述する)により主ガイド板41の搬送面41Sとほぼ連続した平面を形成する。このときスタッカ分岐部20Fは、ピンベルト50により搬送されてきた硬貨CNを、引き続きピンベルト搬送部18の搬送ガイド40に沿って、さらに搬送方向下流側である前方向側へ進行させる。以下では、ブレード45の後端近傍が左側へ回動しており、硬貨CNを引き続きピンベルト搬送部18の搬送ガイド40に沿ってさらに下流側である前方向側へ進行させる状態を、搬送方向維持状態とも呼ぶ。
一方、ブレード45は、搬送方向上流側である後端近傍が右側へ回動される(図5(B))と、分岐孔41Hの上流側を開放すると共に、この後端近傍を主ガイド板41から右側へ十分に離れた位置に到達させる。このときスタッカ分岐部20Fは、ピンベルト50により搬送されてきた硬貨CNを、ブレード45の左側面である搬送切替面45sS2(後述する)によって分岐孔41Hの内部へ、すなわち主ガイド板41の搬送面41Sよりも左側へ進行させ、案内部31に沿って進行させる。因みにブレード45には、搬送ピン52との干渉を回避するための凹みや切欠等が適宜形成されている(後述する)。以下では、ブレード45の後端近傍が右側へ回動しており、硬貨CNを分岐孔41Hの内部へ進行させるよう進行方向を切り替える状態を、搬送方向切替状態とも呼ぶ。このようにスタッカ分岐部20は、搬送方向切替状態において、図5(B)に示すように、水平方向に沿って搬送方向上流側である後方向側から搬送方向下流側である前方向側へ向かって進行してきた硬貨CNを、下方向へ切り替える。
各スタッカ分岐部20(図3)は、ブレード45(図5)を回動させることにより、硬貨を引き続きピンベルト搬送部18に沿って進行させるか、或いは該硬貨をピンベルト搬送部18から分岐させて各スタッカ部21へ進行させるかを、切り替える。
このようにピンベルト搬送部18は、認識搬送部16から受渡部17を介して受け渡された硬貨を搬送経路Wに沿って搬送し、該硬貨の搬送経路を分岐部19又はスタッカ分岐部20により適宜分岐させて補充回収庫24やスタッカ部21等へ進行させ、或いは入出金部13へ進行させる。
[1-2-4.スタッカ部、出金搬送部及び一時保留部の構成]
硬貨処理装置10(図2)には、前後方向に沿って6個のスタッカ部21(21A、21B、21C、21D、21E及び21F)が整列配置されている。各スタッカ部21は、それぞれ所定の金種の硬貨と対応付けられている。このスタッカ部21は、案内部31の下側においてスタッカ部21の大部分を占める収納部72と、該収納部72の下側に設けられた繰出機構73とにより構成されている。
また図8に示すように、搬送監視センサSE1は、案内部31を挟んで、搬送監視センサ光軸L1に沿って検知光を発光する発光部と該検知光を受光する受光部とを左右に配置した光学式のセンサである。この搬送監視センサSE1は、検知光の受光結果を硬貨制御部12に通知する。硬貨制御部12は、この受光結果を基に、硬貨が案内部31を落下しているか否かを判断する。具体的に搬送監視センサSE1は、硬貨が搬送監視センサ光軸L1を横切ると、検知光が硬貨によって遮られ検知光を受光していないことを示す受光結果(すなわちON状態)を硬貨制御部12(図2)に通知する。硬貨制御部12は、搬送監視センサSE1から検知光を受光していないことを示す受光結果(すなわちON状態)を取得した場合、案内部31を硬貨が落下したと判断する。
収納部72は、硬貨の盤面をほぼ水平とした姿勢で順次積み上げるようにして、上下方向に沿って集積するための集積空間が形成された円筒状の筒収納部72Yを有している。因みに収納部72では、3つの筒収納部72Yが設けられており、これらを水平面内で移動させ得るようになっている。案内部31は、スタッカ分岐部20から引き渡される硬貨を筒収納部72Yの上端近傍へ案内し、該筒収納部72Y内に既に集積されている他の硬貨の上側に載置させる。
繰出機構73は、筒収納部72Yの下端近傍において、該筒収納部72Yに集積されている硬貨のうち最も下側の1枚を繰り出す。具体的に繰出機構73は、筒収納部72Yの真下から右側にかけてベルト及びプーリの組み合わせでなる繰出搬送部を構成しており、このベルトの上面を右方向へ向けて走行させることにより、筒収納部72Y内に集積されている最も下側の硬貨を右方向へ搬送して繰り出す。
ここで、スタッカ部21は下ピンベルト搬送部18Dのほぼ真上に位置している。またスタッカ部21における繰出機構73は、ベルトの右端を出金搬送部22の真上に、すなわち下ピンベルト搬送部18Dの右側に位置させている。このためスタッカ部21から繰り出された硬貨は、下ピンベルト搬送部18Dへ落下することなく、出金搬送部22又は一時保留部23へ落下する。
出金搬送部22は、ピンベルト搬送部18の右側に位置しており、上側及び前側が開放された中空の直方体のように構成され、内部に硬貨を収容し得る空間を形成している。また出金搬送部22は、底部にベルトやプーリ等でなるベルト搬送機構が組み込まれており、スタッカ部21から繰り出された硬貨をベルト上に載置若しくは集積する。この出金搬送部22は、ベルトの上に硬貨が載置若しくは集積された状態で、該ベルトの上側部分を前方へ向けて走行させることにより、該硬貨を前側の一時保留部23へ落下させる。
一時保留部23は、出金搬送部22の後端を下げると共に前端を持ち上げ、さらに左右の側板を三角形状としたような構成となっており、その内部に硬貨を収容する空間を形成すると共に、底部にベルト搬送機構が組み込まれている。このため一時保留部23は、スタッカ部21から繰り出された硬貨や出金搬送部22から搬送されてきた硬貨を、内部空間のベルト上に載置若しくは集積させる。また一時保留部23は、ベルトの上に硬貨が載置若しくは集積された状態で、該ベルトの上側部分を前斜め上方へ向けて走行させることにより、該硬貨を前側の上分離部15へ繰り出し、その内部へ落下させる。
[1-2-5.補充回収庫、リジェクト庫等及び下分離部の構成]
補充回収庫24は、内部に硬貨を集積する集積部や、該集積部に集積されている硬貨を搬送する搬送機構等を有している。この補充回収庫24は、ピンベルト搬送部18から前補回分岐部19Aを介して案内されてきた硬貨を集積し、また内部に集積している硬貨を後方へ繰り出して下分離部29に引き渡す。第1補充リジェクト庫25は、内部に硬貨を集積する空間を有しており、ピンベルト搬送部18から前リジェクト分岐部19Bを介して案内されてきた硬貨を集積する。第2補充リジェクト庫26は、内部に硬貨を集積する空間を有しており、ピンベルト搬送部18から前リジェクト分岐部19B及び前第2リジェクト分岐部19Gを順次介して案内されてきた硬貨を集積する。リジェクト庫27及び取忘取込庫28は、それぞれ内部に硬貨を集積する空間を有しており、それぞれ後第1リジェクト分岐部19D及び後第2リジェクト分岐部19Eを介して案内されてきた硬貨をそれぞれ集積する。
下分離部29は、補充回収庫24の後側に隣接する位置に配置されている。この下分離部29は、上分離部15と類似した構成となっているものの、硬貨処理装置筐体11に対する取付方向が、該上分離部15とは相違している。具体的に下分離部29は、上分離部15を真上から見て時計回りに90度回転させ、該上分離部15における右側面を前方に向けた姿勢となっている。
この下分離部29は、集積分離部15A及び分離搬送部15Bとそれぞれ対応する集積分離部29A及び分離搬送部29Bにより構成されている。集積分離部29Aは、補充回収庫24から硬貨を受け取って内部に集積し、また集積されている硬貨を1枚ずつに分離して分離搬送部29Bに引き渡す。分離搬送部29Bは、集積分離部29Aから受け取った硬貨を1枚ずつ上方へ持ち上げるように搬送し、一時保留部23の放出口から内部の空間へ放出する。
[1-3.ブレードの構成]
図6、図7及び図8に示すようにブレード45は、金属板が折り曲げられることにより構成されており、全体として右側面視が英大文字の「V」を90[°]時計回りに回転させた立体形状となっている。またブレード45は、前端近傍に接続されたブレード支持部34において上下方向に沿ったブレード支持部回動軸34X(図5)により回動可能に支持されている。さらにブレード45は、硬貨制御部12(図2)の制御に基づき、ソレノイド36により、搬送方向上流側である後端近傍を左側又は右側へ変位させるようにして回動する。このブレード45は、転がし部45d、搬送切替部45s及び案内部45gにより構成されている。
[1-3-1.転がし部の構成]
転がし部45dは、ブレード45の下端部に形成され、水平方向に沿って延設しており、転がし面45dSが上面側に形成されている。この転がし部45dは、搬送方向維持状態(図5(A))において、転がし面45dSにより副ガイド板42の硬貨周側面当接面42S(図4)とほぼ連続した平面を形成する。
[1-3-2.搬送切替部の構成]
搬送切替部45sは、転がし部45dの左端部から上方向へ直角に屈曲しており、上下方向に沿って延設している。この搬送切替部45sは、搬送継続面45sS1が右側面側に、搬送切替面45sS2が左側面側に、それぞれ形成されている。搬送切替部45sは、搬送方向維持状態(図5(A))において、搬送継続面45sS1により主ガイド板41の搬送面41S(図4)とほぼ連続した平面を形成する。また搬送切替部45sは、搬送方向切替状態(図5(B))において、搬送切替面45sS2を主ガイド板41の搬送面41Sよりも右側へ突出させ、該搬送切替面45sS2に硬貨を当接させることにより、硬貨の搬送経路を案内部31へ切り替える。
[1-3-3.案内部の構成]
案内部45gは、搬送切替部45sの前端部から左方向へ直角に屈曲しており、水平方向に対し後側を上方向へ傾けて転がし部45d及び搬送切替部45sの後端部の上方まで延設している。この案内部45gは、切欠部45nが形成されている。切欠部45nは、案内部45gの右端部よりも左方向へ切り欠かれた形状となっている。この切欠部45nは、ピンベルト50が搬送方向下流側へ硬貨を搬送する際に、ピンベルト50の搬送ピン52(図7)が通過する箇所であり、ピンベルト50の搬送ピン52の移動経路を避けるように形成されている。
[1-3-4.硬貨の進行方向の切り替え]
かかる構成において、硬貨CNが搬送方向へ向かってピンベルト50の押動ピン52Pに押されて搬送方向切替状態のスタッカ分岐部20に到達すると、該硬貨CNは、案内部45gに当接し下方向へ搬送方向が変化する。硬貨CNが引き続きピンベルト50の押動ピン52Pに押されると、該硬貨CNはさらに下方向へ向かって案内部31へ進行する。硬貨CNは、案内部45gにおける切欠部45nよりも下側に当接した時点で、上端部が搬送ピン52の移動経路よりも下方向へ移動することにより、以降は押動ピン52Pに押されない状態となり、案内部31を下方向へ向かって落下する。
[1-4.硬貨搬送処理]
次に、硬貨処理装置10による硬貨搬送処理の具体的な処理手順について、図9及び図10に示すフローチャートを用いて詳細に説明する。硬貨処理装置10は、硬貨搬送処理プログラムを実行することにより図9に示す硬貨搬送処理手順RT1を開始し、ステップSP1へ移る。ステップSP1において硬貨制御部12は、ベルトモータを回転させることによりピンベルト50を駆動して硬貨を搬送すると共に、複数のソレノイド36のうち所定のソレノイド36を適宜ON状態にすることによりブレード45を回動させて搬送方向切替状態とし所望の搬送先へピンベルト搬送部18から硬貨を分岐させて搬送し、ステップSP2へ移る。硬貨制御部12は、ベルトモータを回転させている間、硬貨処理装置10内の各種センサを監視し続けることにより、各硬貨がピンベルト搬送部18におけるどの位置を搬送されているかを認識する。
ステップSP2において硬貨制御部12は、ピンベルト50の駆動中に、硬貨の位置を監視する各種センサからの検出結果に基づき、硬貨の搬送エラーを検出したか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このことは、搬送エラーが発生していないため、硬貨の搬送を引き続き行うことを表し、このとき硬貨制御部12はステップSP1へ戻る。硬貨制御部12は、搬送エラーが発生しない限り、ステップSP1及びSP2の処理を繰り返し、所望の硬貨を全ての搬送先に搬送し終わると、硬貨搬送処理手順RT1を終了する。一方ステップSP2において肯定結果が得られると、このことは、搬送エラーが発生したため、硬貨の搬送処理を一時中断させることを表し、このとき硬貨制御部12はステップSP3へ移る。
ステップSP3において硬貨制御部12は、全ての分岐部19及びスタッカ分岐部20のソレノイド36をOFF状態にすることにより、搬送方向維持状態となるようにブレード45をブレード閉鎖方向へ回動させ、ステップSP4へ移る。
ステップSP4において硬貨制御部12は、搬送エラーが発生した瞬間にON状態であったソレノイド36が存在するか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このことは、搬送エラーが発生した瞬間は全てのソレノイド36がOFF状態であったため全てのブレード45は搬送方向維持状態であり、搬送面41Sとの間に硬貨を挟み込んでいるブレード45は存在しないことを表し、このとき硬貨制御部12はステップSP5へ移る。ステップSP5において硬貨制御部12は、ベルトモータの回転を直ちに停止させることによりピンベルト50の駆動を停止させ、ステップSP14(図10)へ移り硬貨搬送処理手順RT1を終了し、エラーが解消した場合、硬貨搬送処理手順RT1を再度開始する。
一方ステップSP4において肯定結果が得られると、このことは、搬送エラーが発生した瞬間にON状態であった(すなわち搬送方向切替状態であった)ソレノイド36が存在したため、そのソレノイド36により駆動されるブレード45は、図11に示すように搬送方向切替状態から搬送方向維持状態に向けてブレード閉鎖方向へ回動している最中に搬送面41Sとの間に硬貨CNを挟み込んでいる可能性があることを表し、このとき硬貨制御部12はステップSP6へ移る。
ステップSP6において硬貨制御部12は、搬送エラーが発生する前からベルトモータの回転を停止させず継続させることによりピンベルト50を駆動して硬貨CNを搬送してから、ベルトモータの回転を停止させることによりピンベルト50の駆動を停止させる、ブレード開放時搬送動作を行い、ステップSP7へ移る。このとき硬貨制御部12は、搬送方向切替状態から搬送方向維持状態までブレード45が回動する際に要する一定時間である所定時間としてのブレード閉鎖時必要時間の間だけ、ピンベルト50を駆動する。このブレード閉鎖時必要時間は、押動ピン間隔Ipの分だけ押動ピン52Pを移動させるのに必要な時間である、例えば143[ms]である。またこのブレード閉鎖時必要時間は、ブレード45に硬貨CNを入り込ませるように硬貨CNを押している押動ピン52Pが現在位置しているブレード45に、該押動ピン52Pの搬送方向上流側に隣接する押動ピン52Pが到来するまでよりも僅かに短い時間である。これにより硬貨制御部12は、ブレード45が搬送面41Sとの間に硬貨CNを挟み込んでいる場合、図12に示すように該硬貨CNを搬送させてブレード45の内部へ入りこませ、硬貨CNがブレード45と搬送面41Sとの間に挟み込まれていない状態にし、硬貨CNを落下させる。
ここで、搬送エラー発生後にブレード閉鎖時必要時間だけベルトモータの回転を継続させても、ブレード45と搬送面41Sとの間に挟み込まれていた硬貨CNが落下しないことがある。これは、例えば、硬貨CNとブレード45の搬送切替面45sS2との間に水分が存在し該水分により硬貨CNがブレード45の搬送切替面45sS2に張り付いてしまったり、硬貨CNにバリが存在し、該バリにより硬貨がブレード45の搬送切替面45sS2に引っ掛かったりする場合に発生する。このとき図7に示すように、硬貨CNの上端部が押動ピン52Pの移動経路よりも下方向に位置している状態の場合、ピンベルト50を駆動しても押動ピン52Pは硬貨CNに接触しないため、ブレード45から硬貨CNを剥がすことは困難である。またそもそも、ベルトモータを駆動してもピンベルト50が脱調しており硬貨CNを搬送していない可能性もある。
そこでステップSP7において硬貨制御部12は、復旧後のイニシャル動作として、ソレノイド36をON状態にしてからまたOFF状態にすることによりブレード45をブレード開放方向へ回動させてからブレード閉鎖方向へ回動させるブレード開閉動作を、例えば3回等の所定回数繰り返し、ステップSP8へ移る。これにより硬貨処理装置10は、ブレード45と搬送面41Sとの間に挟み込まれていた硬貨CNを落下させることができる。また、仮にブレード45に硬貨CNが張り付いていても、ブレード45の開閉に伴う振動や衝撃等により、硬貨処理装置10は、ブレード45から硬貨CNを剥がして落下させられる可能性がある。
ステップSP8において硬貨制御部12は、ステップSP2において搬送エラーを検出してから現在までの間に、搬送エラー時にON状態だったソレノイド36に対応したスタッカ部21の搬送監視センサSE1(図8)からON状態を取得したか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、このことは、ブレード開放時搬送動作(ステップSP6)又はブレード開閉動作(ステップSP7)により、ブレード45から分岐孔41Hを介して硬貨CNが落下したことを表し、このとき硬貨制御部12はステップSP14(図10)へ移り硬貨搬送処理手順RT1を終了する。
一方ステップSP8において否定結果が得られると、このことは、硬貨CNが正常に落下しなかったことを表し、このとき硬貨制御部12はステップSP9へ移る。この状態は、例えば、ステップSP6において正常にベルトモータやピンベルト50が駆動しなかったか、ステップSP7において正常にソレノイド36やブレード45が駆動しなかったか、又は、硬貨CNがブレード45に張り付いたり、引っ掛かったりした状態のままの場合に発生する。
そこでステップSP9において硬貨制御部12は、ソレノイド36をON状態にすることにより、搬送方向切替状態となるようにブレード45をブレード開放方向へ回動させ、ステップSP10(図10)へ移る。ステップSP10において硬貨制御部12は、ベルトモータを僅かに回転させることによりピンベルト50を僅かに駆動し、硬貨CNを例えば2~3[mm]程度の僅かな搬送量だけ搬送してから、ベルトモータの回転を停止させることによりピンベルト50の駆動を一時停止させる、短距離搬送動作を行い、ステップSP11へ移る。これにより硬貨処理装置10は、図13に示すように硬貨CNを押動ピン52Pにより押すことで、分岐孔41Hから硬貨CNを落下させられる可能性がある。この短距離搬送動作において硬貨処理装置10は、ブレード開放時搬送動作における上述した一定時間よりも短時間だけピンベルト50を動作させたあとに停止させる。
ステップSP11において硬貨制御部12は、搬送エラー時にON状態だったソレノイド36に対応したスタッカ部21の搬送監視センサSE1(図8)からON状態を取得したか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、このことは、押動ピン52Pに押された硬貨CNがブレード45から分岐孔41Hを介して落下したことを表し、このとき硬貨制御部12はステップSP14へ移り硬貨搬送処理手順RT1を終了する。また硬貨制御部12は、今回の処理により分岐孔41Hから硬貨CNが落下したスタッカ分岐部20以外にも、硬貨CNが分岐孔41Hから正常に落下していないスタッカ分岐部20が存在する場合、今回の処理により硬貨CNが落下したスタッカ分岐部20のブレード45は搬送方向維持状態にした上で、未だ硬貨CNが分岐孔41Hから正常に落下していないスタッカ分岐部20において、引き続き短距離搬送動作を行う。一方ステップSP11において否定結果が得られると、このことは、今回の短距離搬送動作では押動ピン52Pに押されて分岐孔41Hから硬貨CNが落下しなかったことを表し、このとき硬貨制御部12はステップSP12へ移る。
ステップSP12において硬貨制御部12は、短距離搬送動作を所定回数繰り返したか、すなわち短距離搬送動作の実施回数が、短距離搬送動作上限回数に到達したか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、硬貨制御部12はステップSP10へ戻り、短距離搬送動作上限回数に到達するまで上述した短距離搬送動作を繰り返す。より具体的には、硬貨制御部12は、押動ピン52Pが、所定距離である、硬貨CNの半径分程度だけ移動するまで短距離搬送動作を繰り返す。これにより硬貨制御部12は、仮に硬貨CNがブレード45に入り込み始める程度の位置に位置していたとしても、硬貨CNの重心を案内部31側へ移動させ、硬貨CNを落下させることができる。
ここで、ステップSP6のように、押動ピン52Pを大きく移動させてしまうと、現在硬貨CNを分岐孔41Hから落下させようとしているスタッカ分岐部20よりも搬送方向上流側に位置している後続の硬貨CNまでもが、該分岐孔41Hに入り込んで落下してしまう可能性がある。これに対し硬貨制御部12は、押動ピン52Pを短距離ずつ移動させつつ、硬貨CNが分岐孔41Hから落下したか確認するようにした。このため硬貨制御部12は、現在硬貨CNを分岐孔41Hから落下させようとしているスタッカ分岐部20よりも搬送方向上流側に位置している後続の硬貨CNまでもが分岐孔41Hに入り込んで落下してしまうことを防止しつつ、現在硬貨CNを分岐孔41Hから落下させようとしているスタッカ分岐部20において硬貨CNを落下させることができる。
一方ステップSP12において肯定結果が得られると、このことは、短距離搬送動作上限回数に到達するまで短距離搬送動作を実施したが、押動ピン52Pに押されて分岐孔41Hから硬貨CNが落下しなかったことを表し、このとき硬貨制御部12はステップSP13へ移る。ステップSP13において硬貨制御部12は、硬貨処理装置10の動作を停止させてエラー処理を行い、ステップSP14へ移り硬貨搬送処理手順RT1を終了する。
[1-5.動作及び効果等]
以上の構成において現金自動預払機1の硬貨処理装置10は、搬送エラーが発生した際、搬送エラーが発生した瞬間にブレード45を搬送方向切替状態にしていた場合、搬送エラーが発生する前からベルトモータの回転を停止させず継続させることによりピンベルト50を駆動して硬貨を搬送してから、ベルトモータの回転を停止させることによりピンベルト50の駆動を停止させる、ブレード開放時搬送動作を行うようにした。
このため硬貨処理装置10は、ブレード45が搬送面41Sとの間に硬貨を挟み込んでいる場合、該硬貨を搬送させてブレード45の内部へ入りこませて硬貨を落下させ、硬貨がブレード45と搬送面41Sとの間に挟み込まれていない状態にすることができる。これにより硬貨処理装置10は、ブレード45を搬送方向切替状態から搬送方向維持状態へ切り替えることができ、分岐孔41Hを閉鎖状態とし、装置復旧後の動作で後続から搬送されてくる後続硬貨が誤って分岐孔41H内に入り込まないようにできる。
また硬貨処理装置10は、復旧後のイニシャル動作として、ブレード45を開閉させるブレード開閉動作を所定回数繰り返すようにした。このため硬貨処理装置10は、上述したブレード開放時搬送動作によっても硬貨がブレード45から落下しなかった場合であっても、ブレード45から硬貨を剥がし落下させることができる。
さらに硬貨処理装置10は、ブレード開放時搬送動作及びブレード開閉動作を行っても分岐孔41Hから硬貨が落下しなかった場合、ピンベルト50を僅かに駆動して硬貨を僅かな搬送量だけ搬送してからベルトモータの回転を停止させることによりピンベルト50の駆動を一時停止させる、短距離搬送動作を、所定回数繰り返すようにした。このため硬貨処理装置10は、硬貨を分岐孔41Hから落下させられる可能性をより一層高めることができる。
また硬貨処理装置10は、硬貨の搬送に異常が発生したことを検出すると、該異常の検出時にブレード45が分岐孔41Hを開放した搬送方向切替状態であるか、分岐孔41Hを閉鎖した搬送方向維持状態であるかに応じて、硬貨の搬送を制御するようにした。このように硬貨処理装置10は、搬送エラー発生時における分岐孔41Hの開放状態又は閉鎖状態に応じて、ピンベルト50の搬送制御を切り替えるようにした。このため硬貨処理装置10は、分岐孔41Hが閉鎖されておらず後続の硬貨が誤って分岐孔41Hから落下してしまう可能性がある場合は、ピンベルト50を所定期間搬送させ、ピンベルト搬送部18から硬貨を除去できる一方、分岐孔41Hが閉鎖されており後続の硬貨が誤って分岐孔41Hから落下してしまう可能性がない場合は、ピンベルト50を直ちに停止させて次の処理に移行することができる。
以上の構成によれば硬貨処理装置10は、硬貨が搬送されるピンベルト搬送部18と、硬貨を搬送させるピンベルト50と、ピンベルト搬送部18に設けられ、硬貨を金種別に通過させる複数の分岐孔41Hと、分岐孔41Hを開放又は閉鎖することにより、硬貨の搬送先を切り替えるブレード45と、ブレード45を駆動するソレノイド36と、硬貨の搬送に異常が発生したことを検出すると、該異常の検出時にブレード45が分岐孔41Hを開放した開放状態としての搬送方向切替状態であるか、分岐孔41Hを閉鎖した閉鎖状態としての搬送方向維持状態であるかに応じて、硬貨の搬送制御を切り替える硬貨制御部12とを設けるようにした。
これにより硬貨処理装置10は、搬送エラー発生時に硬貨がブレード45により保持され搬送先へ搬送されない状態の場合、該硬貨を分岐孔41Hから搬送先へ向かわせてピンベルト搬送部18から除去し、分岐孔41Hをブレード45で閉鎖でき、該硬貨の後続の硬貨が誤って該分岐孔41Hへ入り込んでしまうことを防止できる。
[2.第2の実施の形態]
[2-1.現金自動預払機及び硬貨処理装置の構成]
第2の実施の形態による現金自動預払機101(図1)は、第1の実施の形態による現金自動預払機1と比較して、硬貨処理装置10に代わる硬貨処理装置110を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。硬貨処理装置110(図2)は、第1の実施の形態による硬貨処理装置10と比較して、スタッカ部21(21A、21B、21C、21D、21E及び21F)の配置が相違するものの、他の点については同様に構成されている。
ここで日本国内の硬貨の金種毎における直径と厚さとを図14の表TBに示すように、硬貨の直径は、500円硬貨、10円硬貨、100円硬貨、5円硬貨、50円硬貨、1円硬貨の順番で小さくなっている。
ここで、例えば1円硬貨を集積するスタッカ部21に対して500円硬貨が誤って入ってしまった等、本来集積される金種として設定されている硬貨よりも直径が大きい硬貨である大径硬貨が誤って所定のスタッカ部21内に入ってしまった場合、スタッカ部21内で大径硬貨が引っ掛かってしまう。このため、該スタッカ部21から硬貨を繰り出すように制御しても、該スタッカ部21内から大径硬貨が取り出せなくなってしまい、硬貨をスタッカ部21内部から除去するためには、スタッカ部21の分解が必要になり、装置を長時間休止させないといけなくなってしまう。
これに対し、例えば500円硬貨を集積するスタッカ部21に対して1円硬貨が誤って入ってしまった等、本来集積される金種として設定されている硬貨よりも直径が小さい硬貨である小径硬貨が誤って所定のスタッカ部21内に入ってしまった場合、スタッカ部21内で小径硬貨は引っ掛からない。このため、スタッカ部21から通常通り硬貨を繰り出すように制御すれば、スタッカ部21内から小径硬貨を取り出すことができる。このため、硬貨をスタッカ部21内部から除去するためにスタッカ部21の分解を行う必要がない。
そこで硬貨処理装置110においては、それぞれ、スタッカ部21Fは500円硬貨を、スタッカ部21Eは10円硬貨を、スタッカ部21Dは100円硬貨を、スタッカ部21Cは5円硬貨を、スタッカ部21Bは50円硬貨を、スタッカ部21Aは1円硬貨を集積させるように設定されている。すなわち硬貨処理装置110は、ピンベルト搬送部18(より具体的には上ピンベルト搬送部18U)における硬貨の搬送方向に関し、上流側から下流側に向かうにつれて、集積させる硬貨の直径が小さくなるようにスタッカ部21を配列させている。
このため、例えば500円硬貨は、スタッカ部21Eよりも搬送方向上流側のスタッカ部21Fにおいて集積されるため、スタッカ部21Fよりも搬送方向下流側へは搬送されない。よってスタッカ部21Fよりも搬送方向下流側へは、10円硬貨以下の直径の硬貨しか搬送されてこないこととなる。このため、搬送エラーが発生し、例えば10円硬貨がスタッカ部21Eのブレード45に入りかけの状態で停止したとしても、該10円硬貨よりも後続においてスタッカ部21Fよりも搬送方向下流側へ搬送される硬貨は、10円硬貨以下の直径の硬貨のみとなる。
よって、仮に誤ってスタッカ部21Eに10円硬貨以外の硬貨が入り込んでしまったとしても、その硬貨は10円硬貨よりも直径が小さい小径硬貨となるため、スタッカ部21E内で該小径硬貨は引っ掛からない。このため硬貨処理装置110は、スタッカ部21Eから通常通り硬貨を繰り出すように制御すれば、スタッカ部21E内から小径硬貨を取り出すことができる。このため硬貨処理装置110は、硬貨をスタッカ部21内部から除去するためにスタッカ部21の分解を行う必要をなくし、容易に硬貨を取り出すことができる。
その他の点においても、第2の実施の形態による硬貨処理装置110は、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏し得る。
[3.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態においては、ブレード開放時搬送動作、ブレード開閉動作、短距離搬送動作の順番に実行する場合について述べた。本発明はこれに限らず、ブレード開放時搬送動作、ブレード開閉動作、短距離搬送動作を任意の順番で実行したり、一回実行した任意の動作を再度実行したりしても良い。第2の実施の形態においても同様である。
また上述した第1の実施の形態においては、ブレード開放時搬送動作において、搬送方向切替状態から搬送方向維持状態までブレード45が回動する際に要する一定時間であるブレード閉鎖時必要時間だけピンベルト50を走行させる場合について述べた。本発明はこれに限らず、他の任意の時間だけピンベルト50を走行させても良い。第2の実施の形態においても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、ブレード開閉動作を3回繰り返す場合について述べた。本発明はこれに限らず、他の任意の回数だけブレード開閉動作を繰り返しても良い。第2の実施の形態においても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、ブレード開閉動作を3回繰り返してから、ON状態を搬送監視センサSE1から取得したか否かを判定する場合について述べた。本発明はこれに限らず、ブレード開閉動作を1回行う度にON状態を搬送監視センサSE1から取得したか否かを判定し、ON状態を搬送監視センサSE1から取得した場合、ブレード開閉動作を終了しても良い。
さらに上述した第1の実施の形態においては、短距離搬送動作において、押動ピン52Pを硬貨の半径分移動させる程度だけ短距離搬送動作を繰り返すようにピンベルト50を走行させる場合に述べた。本発明はこれに限らず、他の任意の距離だけピンベルト50を走行させても良い。第2の実施の形態においても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、本発明をスタッカ分岐部20に適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、本発明を分岐部19に適用しても良い。第2の実施の形態においても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、顧客との間で種々の取引を行う現金自動預払機1の硬貨処理装置10に設けられるスタッカ分岐部20に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば金融機関やスーパーマーケットの店舗内等に設置され、該店舗の職員や係員等の操作に従って硬貨の計数や分類等の処理を行う現金管理装置等、硬貨を取り扱う種々の装置に本発明を適用しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
さらに上述した第1の実施の形態においては、搬送路としてのピンベルト搬送部18と、搬送手段としてのピンベルト50と、開口部としての分岐孔41Hと、ブレードとしてのブレード45と、駆動部としてのソレノイド36と、制御部としての硬貨制御部12とによって、硬貨処理装置としての硬貨処理装置10を構成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる搬送路と、搬送手段と、開口部と、ブレードと、駆動部と、制御部によって、硬貨処理装置を構成しても良い。