JP2021147513A - 変性ポリアリーレンスルフィドの製造方法 - Google Patents

変性ポリアリーレンスルフィドの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】熱安定性に優れる変性PASを高収率で製造し得る変性PASの製造方法を提供すること。【解決手段】有機極性溶媒、硫黄源、ジハロ芳香族化合物、及び変性剤を含有する混合物を調製した後に、調製された混合物を加熱して重合反応を行うことを含む変性PASの製造方法において、変性剤としてアミノ基、及びカルボキシ基から選択される1以上の変性基と、1以上のメルカプト基とを有するチオール化合物を用い、重合反応に供される混合物に、芳香族基に結合するハロゲン原子を3つ以上有するポリハロ芳香族化合物を重合助剤として含有させる。【選択図】なし

Description

本発明は、変性ポリアリーレンスルフィドの製造方法に関する。
ポリフェニレンスルフィド(以下、「PPS」とも称する。)に代表されるポリアリーレンスルフィド(以下、「PAS」とも称する。)は、耐熱性、耐薬品性、難燃性、機械的強度、電気特性、寸法安定性等に優れたエンジニアリングプラスチックである。PASは、押出成形、射出成形、圧縮成形等の一般的溶融加工法により、各種成形品、フィルム、シート、繊維等に成形可能である。このため、PASは、電気機器、電子機器、自動車機器、包装材料等の広範な技術分野において汎用されている。かかるPASについて、近年、接着性や耐ヒートショック性の改良の目的で、末端基がアミノ基(−NH)やカルボキシ基に変性された変性PASが提案されている。
かかる変性PASの製造方法としては、例えば、特許文献1に、有機極性溶媒中、200℃以上280℃未満の温度範囲内でスルフィド化剤、ジハロゲン化芳香族化合物、及び反応性官能基を有する特定の構造のモノハロゲン化芳香族化合物をアルカリ金属水酸化物の存在下で反応させて変性PASを製造する方法が提案されている。
特開2018−009148号公報
しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献1等に開示される従来の製造方法では、高収率で変性PASを製造しにくい場合があり、また、得られる変性PASの熱安定性が低く、溶融状態の変性PASの粘度が低下しやすいことが分かった。
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであって、熱安定性に優れる変性PASを高収率で製造し得る変性PASの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、有機極性溶媒、硫黄源、ジハロ芳香族化合物、及び変性剤を含有する混合物を調製した後に、調製された混合物を加熱して重合反応を行うことを含む変性PASの製造方法において、変性剤としてアミノ基、及びカルボキシ基から選択される1以上の変性基と、1以上のメルカプト基とを有するチオール化合物を用い、重合反応に供される混合物に、芳香族基に結合するハロゲン原子を3つ以上有するポリハロ芳香族化合物を重合助剤として含有させることにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明に係る変性PASの製造方法は、
有機極性溶媒、硫黄源、及びジハロ芳香族化合物を含有する混合物を調製する仕込み工程と、
前記混合物を重合反応に供する重合工程と、を含む変性ポリアリーレンスルフィドの製造方法であって、
前記混合物に、変性剤、及び重合助剤を含有させ、
前記変性剤が、アミノ基、及びカルボキシ基から選択される1以上の変性基と、1以上のメルカプト基とを有するチオール化合物であり、
前記重合助剤が、芳香族基に結合するハロゲン原子を3つ以上有するポリハロ芳香族化合物である、製造方法である。
本発明にかかる変性PASの製造方法では、チオール化合物において、少なくとも1つの変性基と、少なくとも1つのメルカプト基とが、同一の芳香環上に結合していてもよい。
本発明にかかる変性PASの製造方法では、チオール化合物が、メルカプトアニリン、又はメルカプト安息香酸であってもよい。
本発明にかかる変性PASの製造方法では、変性PASにおける、末端カルボキシ基量と末端アミノ基量との合計が5〜100mmol/kgであってもよい。
本発明にかかる変性PASの製造方法において、混合物において、硫黄源のモル数に対して0.1〜5モル%の変性剤を含有させてもよい。
本発明にかかる変性PASの製造方法において、混合物において、硫黄源のモル数に対して0.01〜2モル%の重合助剤を含有させてもよい。
本発明によれば、熱安定性に優れる変性PASを高収率で製造し得る変性PASの製造方法を提供することができる。
本発明に係る変性PASの製造方法の一実施形態について以下に説明する。本実施形態における変性PASの製造方法は、必須の工程として、仕込み工程及び重合工程を含む。本実施形態における変性PASの製造方法は、所望により、脱水工程、冷却工程、後処理工程等を含んでもよい。以下、本発明に用いられる各材料について詳細に説明するとともに、各工程について詳細に説明する。
(有機極性溶媒、硫黄源、及びジハロ芳香族化合物)
有機極性溶媒、硫黄源、及びジハロ芳香族化合物としては、特に限定されず、変性PAS、又は未変性PASの製造において通常用いられるものを用いることができる。有機極性溶媒、硫黄源、及びジハロ芳香族化合物の各々は、単独で用いてもよいし、所望する化学構造を有する変性PASの製造が可能である組み合わせであれば、2種類以上を混合して用いてもよい。
有機極性溶媒としては、例えば、有機アミド溶媒;有機硫黄化合物からなる非プロトン性有機極性溶媒;環式有機リン化合物からなる非プロトン性有機極性溶媒が挙げられる。有機アミド溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド化合物;N−メチル−ε−カプロラクタム等のN−アルキルカプロラクタム化合物;N−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」とも称する。)、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン等のN−アルキルピロリドン化合物又はN−シクロアルキルピロリドン化合物;1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノン等のN,N−ジアルキルイミダゾリジノン化合物;テトラメチル尿素等のテトラアルキル尿素化合物;ヘキサメチルリン酸トリアミド等のヘキサアルキルリン酸トリアミド化合物等が挙げられる。有機硫黄化合物からなる非プロトン性有機極性溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン等が挙げられる。環式有機リン化合物からなる非プロトン性有機極性溶媒としては、1−メチル−1−オキソホスホラン等が挙げられる。中でも、入手性、取り扱い性等の点で、有機アミド溶媒が好ましく、N−アルキルピロリドン化合物、N−シクロアルキルピロリドン化合物、N−アルキルカプロラクタム化合物、及びN,N−ジアルキルイミダゾリジノン化合物がより好ましく、NMP、N−メチル−ε−カプロラクタム、及び1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンが更により好ましく、NMPが特に好ましい。
有機極性溶媒の使用量は、重合反応の効率等の観点から、上記硫黄源1モルに対し、1〜30モルが好ましく、3〜15モルがより好ましい。
硫黄源としては、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、硫化水素を挙げることができ、アルカリ金属硫化物及びアルカリ金属水硫化物であることが好ましい。硫黄源は、例えば、水性スラリー及び水溶液のいずれかの状態で扱うことができ、計量性、搬送性等のハンドリング性の観点から、水溶液の状態であることが好ましい。アルカリ金属硫化物としては、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムが挙げられる。アルカリ金属水硫化物としては、水硫化リチウム、水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウムが挙げられる。
ジハロ芳香族化合物とは、芳香環に直結した2個の水素原子がハロゲン原子で置換された芳香族化合物を指す。
ジハロ芳香族化合物としては、例えば、o−ジハロベンゼン、m−ジハロベンゼン、p−ジハロベンゼン、ジハロトルエン、ジハロナフタレン、メトキシ−ジハロベンゼン、ジハロビフェニル、ジハロ安息香酸、ジハロジフェニルエーテル、ジハロジフェニルスルホン、ジハロジフェニルスルホキシド、ジハロジフェニルケトン等のジハロ芳香族化合物が挙げられる。ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素の各原子を指し、ジハロ芳香族化合物における2個以上のハロゲン原子は、同じでも異なっていてもよい。中でも、入手性、反応性等の点で、p−ジハロベンゼン、m−ジハロベンゼン、及びこれら両者の混合物が好ましく、p−ジハロベンゼンがより好ましく、p−ジクロロベンゼン(以下、「pDCB」とも称する。)が特に好ましい。
ジハロ芳香族化合物の使用量は、硫黄源の仕込み量1モルに対し、好ましくは0.90〜1.50モルであり、より好ましくは0.92〜1.10モルであり、更により好ましくは0.95〜1.05モルである。上記使用量が上記範囲内であると、分解反応が生じにくく、安定的な重合反応の実施が容易であり、高分子量ポリマーを生成させやすい。
(変性剤、及び重合助剤)
仕込み工程で調製される、有機極性溶媒、硫黄源、及びジハロ芳香族化合物を含む混合物には、PAS分子に変性基を導入する変性剤と、所望する性質の変性PASを製造するための重合反応を良好に進行させる重合助剤とが加えられる。
変性剤は、アミノ基、及びカルボキシ基から選択される1以上の変性基と、1以上のメルカプト基とを有するチオール化合物である。
変性剤は、混合物の調製や脱水時に分解や揮散しにくいこと等から、芳香族基を含む芳香族化合物であるのが好ましい。かかる芳香族化合物としては、変性基とメルカプト基とがともに芳香族基に結合している化合物が好ましい。
芳香族化合物に含まれる芳香環は、芳香族炭化水素環であっても、芳香族複素環であってもよい。高沸点や高耐熱性である点から、高い重合温度で製造されるポリアリーレンスルフィドの変性剤としての芳香族化合物に含まれる芳香環としては、芳香族炭化水素環が好ましい。
変性剤としての芳香族化合物に含まれる芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、及びビフェニル環等が好ましい。
変性剤は、本発明の目的を阻害しない範囲で、変性基、及びメルカプト基以外の置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、例えば、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数2以上6以下の脂肪族アシル基、及びベンゾイル基等が挙げられる。
変性剤が有する、変性基、及びメルカプト基以外の置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。変性剤が変性基、及びメルカプト基以外の置換基を有する場合、置換基の数は、1以上4以下が好ましく、1又は2がより好ましく、1が特に好ましい。
ただし、所望の変性効果を得るための変性剤の使用量が少量でよい点から、変性剤は、変性基、及びメルカプト基以外の置換基を持たないのが好ましい。
変性剤としてのチオール化合物は、前述の通り、アミノ基、及びカルボキシ基から選択される1以上の変性基を有する。チオール化合物は、アミノ基とカルボキシ基とを組み合わせて有してもよく、アミノ基のみ、又はカルボキシ基のみを変性基として有するのが好ましい。
変性剤としてのチオール化合物が有する変性基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、例えば、1以上4以下が好ましく、1又は2がより好ましく、1が特に好ましい。
変性剤としてのチオール化合物は、前述の通り、1以上のメルカプト基を有する。変性剤としてのチオール化合物が有するメルカプト基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、例えば、1以上4以下が好ましく、1又は2がより好ましく、1が特に好ましい。
限定されず、例えば、1以上4以下が好ましく、1又は2がより好ましく、1が特に好ましい。
変性剤としてのチオール化合物において、少なくとも1つの変性基と、少なくとも1つのメルカプト基とが、同一の芳香環上に結合しているのが好ましい。このようなチオール化合物の好適な例としては、メルカプトアニリン、又はメルカプト安息香酸が挙げられる。メルカプトアニリンは、2−メルカプトアニリン、3−メルカプトアニリン、及び4−メルカプトアニリンのいずれでもよい。メルカプト安息香酸は、2−メルカプト安息香酸、3−メルカプト安息香酸、及び4−メルカプト安息香酸のいずれでもよい。
変性による所望する効果を適度な範囲内で得やすいことから、変性剤は、得られる変性PASにおける末端カルボキシ基量と末端アミノ基量との合計が、5〜100mmol/kgであるように用いられるのが好ましい。得られる変性PASにおける、末端カルボキシ基量と末端アミノ基量との合計は、10〜90mmol/kgであるのがより好ましく、30〜70mmol/kgであるのが特に好ましい。得られる変性PASにおける、末端カルボキシ基量と末端アミノ基量との合計が上述の範囲内であると、変性PAS中に十分な量の変性部位が存在するため、接着性や耐ヒートショック性についての所望する改良効果を得やすく、変性部位が変性PASの分解の起点となりにくいため、所望の物性を得やすい。
変性PASの末端アミノ基量は、変性PASの窒素量と、変性剤、及び重合助剤を用いないことを除いて変性PASと同様の方法で製造された未変性PASの窒素量とを、それぞれ全窒素分析により測定し、両者の窒素量の差分に基づいて算出される。
変性PASにおける末端カルボキシ基量を測定する際、まず、変性PASと、変性PASが有する末端カルボキシ基の量に対して過剰量のカルボジイミドとを反応させて、窒素化処理変性PASを得る。得られた窒素化処理変性PASの窒素量と、変性剤、及び重合助剤を用いないことを除いて変性PASと同様の方法で製造された未変性PASの窒素量とを、それぞれ全窒素分析により測定し、両者の窒素量の差分に基づいて変性PASの末端カルボキシ量が算出される。
なお、未反応のカルボジイミドを溶剤等による洗浄により除去した後に、変性PASの窒素量の測定が行われる。
仕込み工程で得られる混合物における変性剤の含有量は、変性による所望する効果を適度な範囲内で得やすいことから、有効硫黄源のモル数に対して、0.1〜5モル%が好ましく、0.2〜3モル%がより好ましく、0.5〜2モル%が特に好ましい。
前述の通り、重合助剤は、芳香環に結合するハロゲン原子を3つ以上有するポリハロ芳香族化合物である。芳香環は、芳香族炭化水素環であっても、芳香族複素環であってもよく、芳香族炭化水素環であるのが好ましい。芳香族環は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、ベンゼン環、ナフタレン環、及びビフェニル環が好ましい。
ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素の各原子を指し、塩素原子、及び臭素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。ポリハロ芳香族化合物における3つ以上のハロゲン原子は、同じでも異なっていてもよい。
ポリハロ芳香族化合物について、芳香環に結合するハロゲン原子の数は特に限定されないが、3又は4が好ましく、3がより好ましい。
かかる重合助剤は、得られる変性PASの優れた熱安定性や、溶融粘度の低下のしにくさに寄与する。
重合助剤としてのポリハロ芳香族化合物の好適な具体例としては、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、1,2,3,4−テトラクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロ−2,4,6−トリメチルベンゼン、2,4,6−トリクロロトルエン、1,2,3−トリクロロナフタレン、1,2,4−トリクロロナフタレン、1,2,3,4−テトラクロロナフタレン、2,2’,4,4’−テトラクロロビフェニル、2,2’,4,4’−テトラクロロベンゾフェノン、及び2,4,2’−トリクロロベンゾフェノン等が挙げられる。
これらの中では、少量の使用でも良好に反応し、重合助剤としての所望する効果を得やすい点から、1,2,4−トリクロロベンゼン、及び1,3,5−トリクロロベンゼンが好ましく、反応し易さとコスト面の観点から1,2,4−トリクロロベンゼンが最も好ましい。例えば変性PPSのように主にベンゼン骨格からなる変性PASを製造する場合、変性PASの主骨格と同じくベンゼン骨格を有することから、これらのトリクロロベンゼン類は特に好ましい。
仕込み工程で得られる混合物における重合助剤の含有量は、重合助剤の使用による所望する効果を適度な範囲内で得やすいことから、有効硫黄源のモル数に対して、0.01〜2モル%が好ましく、0.05〜1.5モル%がより好ましく、0.1〜1モル%が特に好ましい。
(脱水工程)
脱水工程は、仕込み工程の前に、有機極性溶媒、及び硫黄源を含有する混合物を含む系内から、水を含む留出物の少なくとも一部を系外に排出する工程である。脱水工程に供される混合物は、必要に応じて、アルカリ金属水酸化物を含んでいてもよい。硫黄源とジハロ芳香族化合物との重合反応は、重合反応系に存在する水分量によって促進又は阻害される等の影響を受ける。したがって、上記水分量が重合反応を阻害しないように、重合の前に脱水処理を行うことにより、重合反応系内の水分量を減らすことが好ましい。
脱水工程では、不活性ガス雰囲気下での加熱により脱水を行うことが好ましい。脱水工程で脱水されるべき水分とは、脱水工程で仕込んだ各原料が含有する水、水性混合物の水媒体、各原料間の反応により副生する水等である。
脱水工程における加熱温度は、300℃以下であれば特に限定されず、好ましくは100〜250℃である。加熱時間は、15分〜24時間であることが好ましく、30分〜10時間であることがより好ましい。
脱水工程では、水分量が所定の範囲内になるまで脱水する。即ち、脱水工程では、仕込み混合物(後述)における水分量が、硫黄源(以下、「仕込み硫黄源」又は「有効硫黄源」とも称する)1.0モルに対して、好ましくは0.5〜2.4モルになるまで脱水することが望ましい。脱水工程で水分量が少なくなり過ぎた場合は、重合工程に先立つ仕込み工程において水を添加して所望の水分量に調節すればよい。
(仕込み工程)
仕込み工程は、有機極性溶媒、硫黄源、ジハロ芳香族化合物、変性剤、及び重合助剤を含有する混合物を調製する工程である。仕込み工程において仕込まれる混合物を、「仕込み混合物」とも称する。
変性PASを生産するうえで、低収率の要因の1つとして、変性基がジハロ芳香族化合物の末端を1つ以上封止してしまい分子鎖の成長を阻害することが、変性PASの低い収率の一因であると考えられる。
また、分子成長が阻害されるため,モノマー比(pDCB/仕込み硫黄源)を小さくして、溶融粘度(分子量)を増加させる必要がある。しかし,モノマー比を小さくする場合、熱によって分解する硫黄末端の増加により、重合中に生成するオリゴマー又はポリマーの熱安定性が損なわれる。
この課題を解決する方法について本発明者らが鋭意検討したところ、重合助剤として、ジハロベンゼンではなく、トリハロベンゼンのようなポリハロ芳香族化合物を変性剤と選択的に反応させる方法を見出した。理論上、この方法によれば、分子鎖の成長が阻害されずに変性PASを生産できる。
理想的には、トリハロベンゼンのようなポリハロ芳香族化合物が有するハロゲン原子のうち、2つがハロゲン原子のままであるようにハロゲン原子と変性剤とが反応すれば、分子鎖成長はジハロベンゼンを重合する場合と同様である。
PASの重合反応は,芳香族求核置換反応と推測されている(1991年、Darryl R. FaheyとCarlton E. Ash(Darry R. Fahey, Carlton E. Ash. Mechanism of Poly(p−phenylene sulfide) Growth from p−Dichlorobenzene and Sodium Sulfide. Macromolecules,1991,24,4242−4249))。
例えば、ポリハロ芳香族化合物においては、ハロゲンの電子吸引性による誘起効果によって、芳香環中に電子不足の炭素が生じやすい。このため、ポリハロ芳香族化合物は、ジハロ芳香族化合物よりも芳香族求核置換反応性に優れる傾向にある。よって、変性剤と、ポリハロ芳香族化合物である重合助剤とを仕込み工程時に仕込み混合物に含有させると、変性剤が重合助剤と反応しやすく、分子鎖の成長を阻害することなく変性剤に由来する変性基が良好に分子鎖中に取り込まれる。
重合助剤として1,2,4−トリクロロベンゼンのような1,2,4−トリハロベンゼンではベンゼン環中の2位及び4位の炭素が電子不足となるため、1,2,4−トリハロベンゼンは、パラジハロベンゼンよりも芳香族求核置換反応性において顕著に優位である。この点からも、1,2,4−トリクロロベンゼンのような1,2,4−トリハロベンゼンは、重合助剤として好ましい。
脱水工程を行う場合、仕込み混合物における硫黄源の量(以下、「仕込み硫黄源の量」又は「有効硫黄源の量」とも称する。)は、原料として投入した硫黄源のモル量から、脱水工程で揮散した硫化水素のモル量を引くことによって、算出することができる。
脱水工程を行う場合、仕込み工程では脱水工程後に系内に残存する混合物に、必要に応じてアルカリ金属水酸化物及び水を添加することが出来る。特に、脱水時に生成した硫化水素の量と脱水時に生成したアルカリ金属水酸化物の量とを考慮したうえで、アルカリ金属水酸化物を添加することが出来る。アルカリ金属水酸化物としては、未変性PAS又は変性PASの製造において通常用いられるものを用いることができる。アルカリ金属水酸化物は、単独で用いてもよいし、変性PASの製造が可能である組み合わせであれば、2種類以上を混合して用いてもよい。アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムが挙げられる。なお、アルカリ金属水酸化物のモル数は、仕込み工程で必要に応じて添加するアルカリ金属水酸化物のモル数、並びに、脱水工程を行う場合には、脱水工程において必要に応じて添加したアルカリ金属水酸化物のモル数、及び、脱水工程において硫化水素の生成に伴い生成するアルカリ金属水酸化物のモル数に基づいて算出される。硫黄源がアルカリ金属硫化物を含む場合には、硫黄源(仕込み硫黄源)1モル当たりのアルカリ金属水酸化物のモル数は、アルカリ金属硫化物のモル数を含めて算出するものとする。硫黄源に硫化水素を使用する場合には、生成するアルカリ金属硫化物のモル数を含めて、硫黄源(仕込み硫黄源)1モル当たりのアルカリ金属水酸化物のモル数を算出するものとする。ただし、他の目的で添加されるアルカリ金属水酸化物のモル数、例えば、相分離剤として有機カルボン酸金属塩を有機カルボン酸とアルカリ金属水酸化物との組み合わせの態様で使用する場合には、中和等の反応で消費したアルカリ金属水酸化物のモル数は、硫黄源(仕込み硫黄源)1モル当たりのアルカリ金属水酸化物のモル数に含めないものとする。更に、何らかの理由で、例えば、カルボキシ基を有する変性剤のような無機酸及び有機酸からなる群より選択される少なくとも1種の酸が使用される場合等は、上記少なくとも1種の酸を中和するに必要なアルカリ金属水酸化物のモル数は、硫黄源(仕込み硫黄源)1モル当たりのアルカリ金属水酸化物のモル数に含めないものとする。
仕込み混合物において、有機極性溶媒及びジハロ芳香族化合物の各々の使用量は、例えば、硫黄源の仕込み量1モルに対し、有機極性溶媒及びジハロ芳香族化合物に関する上記説明中で示す範囲に設定される。また、変性剤、及び重合助剤も、例えば、前述の範囲内の量で使用される。
(重合工程)
重合工程は、仕込み混合物を重合反応に供する工程である。重合工程では、有機極性溶媒中で硫黄源と、ジハロ芳香族化合物、変性剤、及び重合助剤とを重合させて変性PASを生成させる。仕込み混合物に、前述の変性剤、及び前述の重合助剤を含有させることにより、熱安定性に優れる変性PASを高収率で製造し得る。
より高分子量の変性PASを得るために、重合反応を2段階以上に分けて行ってもよい。例えば、前記重合工程は、前記混合物を加熱して重合反応を開始させ、ジハロ芳香族化合物の転化率が50モル%以上のプレポリマーを生成させる第1重合工程と、前記第1重合工程後に、相分離剤の存在下で重合反応を継続する第2重合工程と、を含んでもよい。相分離剤は、第2重合工程中で添加してもよいし、第1重合工程と第2重合工程との間に、相分離剤を添加する相分離剤添加工程を設けてもよい。
第1重合工程において、ジハロ芳香族化合物の転化率は、好ましくは50〜98モル%、より好ましくは60〜97モル%、更に好ましくは65〜96モル%、特に好ましくは70〜95モル%である。ジハロ芳香族化合物の転化率は、反応混合物中に残存するジハロ芳香族化合物の量をガスクロマトグラフィにより求め、その残存量とジハロ芳香族化合物の仕込み量と硫黄源の仕込み量に基づいて算出することができる。
第1重合工程に続く第2重合工程においては、前記プレポリマーの重合度が上昇する。相分離剤としては、特に限定されず、例えば、水、有機カルボン酸金属塩(例えば、酢酸ナトリウムのような脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩や、芳香族カルボン酸のアルカリ土類金属塩等)、有機スルホン酸金属塩、アルカリ金属ハライド、アルカリ土類金属ハライド、リン酸アルカリ金属塩、アルコール類、及び無極性溶媒からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。なお、上記の塩類は、対応する酸と塩基を別々に添加する態様であっても差しつかえない。有機極性溶媒として、N−シクロヘキシルピロリドン等の水との相溶性が低い溶媒を用いる場合、相分離剤と有機極性溶媒との相溶性の観点から、相分離剤として、無極性溶媒を使用することが好ましい。一方、NMP等の有機アミド溶媒を有機極性溶媒として用いる場合、前述と同様に相分離剤と有機極性溶媒との相溶性の観点から、相分離剤として、水及び有機カルボン酸金属塩等を使用することが好ましい。
無極性溶媒としては、例えば、炭化水素が挙げられ、プレポリマー同士の反応を促すために、無極性溶媒はプレポリマーを溶解しない方がより高分子量の変性PASを得やすいことから、脂肪族炭化水素が好ましく、アルカン(パラフィン系炭化水素類)がより好ましく、直鎖状アルカンが更により好ましい。炭化水素、脂肪族炭化水素、アルカン、及び直鎖状アルカンの炭素数としては、第2重合工程において炭化水素、脂肪族炭化水素、アルカン、及び直鎖状アルカンを溶媒として使用できる限り、特に限定されず、例えば、6〜24が挙げられ、取り扱い性等の観点から、7〜20が好ましく、8〜18がより好ましく、9〜16が更により好ましく、10〜14が特に好ましい。無極性溶媒の具体例としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ドデカン、n−テトラデカン、n−ヘキサデカン、n−オクタデカン、n−エイコサン、n−テトラコサン等が挙げられ、より高分子量の変性PASを得やすく、取り扱い性、入手性等に優れることから、イソオクタン、n−デカン、及びn−テトラデカンが好ましく、n−デカン及びn−テトラデカンがより好ましい。
相分離剤の使用量は、用いる化合物の種類によって異なるが、有機極性溶媒1kgに対し、0.01〜20モルの範囲内でよい。特に、相分離剤として水を添加する場合、反応系内の水分量は、有機極性溶媒1kg当たり、4モル超過20モル以下でよく、4.1〜14モルでもよく、4.2〜10モルでもよい。
第2重合工程において、アルカリ金属水酸化物の量は、硫黄源1モルに対し、好ましくは1.00〜1.10モル、より好ましくは1.01〜1.08モル、更により好ましくは1.02〜1.07モルである。アルカリ金属水酸化物の量が上記範囲内であると、得られるPASの分子量がより上昇しやすく、より高分子量のPASをより得やすい。第2重合工程では、第1重合工程後の反応混合物中に存在するアルカリ金属水酸化物の量に基づき、最終的なアルカリ金属水酸化物の量が上記範囲内となるように、該反応混合物にアルカリ金属水酸化物が添加されるのが好ましい。
前記重合工程では、重合反応の効率等の観点から、温度170〜300℃の加熱下で重合反応を行うことが好ましい。前記重合工程における重合温度は、180〜280℃の範囲であることが、副反応及び分解反応を抑制する上でより好ましい。特に、第1重合工程では、重合反応の効率等の観点から、温度170〜270℃の加熱下で重合反応を開始させ、ジハロ芳香族化合物の転化率が50%モル以上のプレポリマーを生成させることが好ましい。第1重合工程における重合温度は、180〜265℃の範囲から選択することが、副反応及び分解反応を抑制する上で好ましい。
本重合工程における重合反応は、バッチ式で行ってもよいし、連続的に行ってもよい。例えば、少なくとも、有機極性溶媒、硫黄源、ジハロ芳香族化合物、変性剤、及び重合助剤の供給と、有機極性溶媒中での硫黄源とジハロ芳香族化合物と変性剤との反応による変性PASの生成と、変性PASを含む反応混合物の回収と、を同時並行で行うことにより、重合反応を連続的に行うことができる。
(冷却工程)
冷却工程は、重合工程後に、前記反応混合物を冷却する工程である。冷却工程における具体的な操作は、例えば、特許第6062924号公報に記載の通りである。
(後処理工程(分離工程、洗浄工程、回収工程等))
本実施形態における変性PASの製造方法においては、重合反応後の後処理工程を、常法によって、例えば、特開2016−056232号公報に記載の方法によって、行うことができる。
(得られる変性PAS)
本実施形態における変性PASの製造方法によって得られる変性PASは、熱安定性に優れる。より具体的には、上記の変性PASの製造方法によって得られる変性PASは、高温での溶融時に溶融粘度が低下しにくい。例えば、上記の変性PASの製造方法によれば、変性PASを310℃に加熱して溶融させることにより測定される以下のMV1及びMV2から下記式に基づき算出される溶融粘度保持率(10分)が、86%以上、好ましくは87%以上、より好ましくは88%以上である変性PASが得られる。
また、上記の変性PASの製造方法によれば、変性PASを310℃に加熱して溶融させることにより測定される以下のMV1及びMV3から下記式に基づき算出される溶融粘度保持率(25分)が、75%以上、好ましくは78%以上、より好ましくは82%以上である変性PASが得られる。
溶融粘度保持率(10分)(%)=MV2/MV1×100
溶融粘度保持率(25分)(%)=MV3/MV1×100
MV1:310℃に到達してから5分経過後の溶融粘度(Pa・s)
MV2:310℃に到達してから15分経過後の溶融粘度(Pa・s)
MV3:310℃に到達してから30分経過後の溶融粘度(Pa・s)
なお、上記の溶融粘度は、乾燥された変性PAS約20gを試料とし、キャピログラフを用いて温度310℃及び剪断速度1,216sec−1での条件で測定された値である。
本実施形態における変性PASの製造方法により得られる変性PASは、そのまま、又は酸化架橋させた後、単独で、又は所望により各種無機充填剤、繊維状充填剤、各種合成樹脂を配合し、種々の射出成形品又はシート、フィルム、繊維、及びパイプ等の押出成形品に成形することができる。
本実施形態における変性PASの製造方法において、変性PASは、特に限定されず、変性PPSであることが好ましい。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、本発明は、実施例に限られるものではない。以下に記す溶融粘度について、測定方法は前述の通りである。
[実施例1]
(脱水工程)
20リットルのオートクレーブに、NMP5,999g、水硫化ナトリウム水溶液(NaSH:純度61.35質量%)2,100g、及び水酸化ナトリウム(NaOH:純度73.39質量%)1,274gを仕込んだ。該オートクレーブ内を窒素ガスで置換後、約4時間かけて、撹拌機により回転数250rpmで撹拌しながら、徐々に200℃まで昇温し、水(HO)943g、NMP856g、及び硫化水素(HS)12gを留出させた。
(仕込み工程)
脱水工程後、オートクレーブの内容物を150℃まで冷却し、pDCB3,610g、NMP3,344g、水酸化ナトリウム6g、水12g、変性剤であるp−メルカプトアニリン34g(有効硫黄源のモル数に対して1.2モル%)、及び重合助剤である1,2,4−トリクロロベンゼン14g(有効硫黄源のモル数に対して0.3モル%)をオートクレーブ内に加えて第1重合工程に供する混合物を調製した。
(第1重合工程)
仕込み工程で調製された混合物を撹拌しながら、220℃の温度で1時間、230℃の温度で1.5時間反応させて、第1重合工程を行った。缶内のNMP/仕込み硫黄源(以下、「仕込みS」と略記する。)の比率(g/モル)は375、pDCB/仕込みS(モル/モル)は1.100、HO/仕込みS(モル/モル)は1.50であった。第1重合工程でのpDCBの転化率は、93%であった。
(相分離剤添加工程)
第1重合工程終了後、撹拌機の回転数を400rpmに上げ、オートクレーブの内容物を撹拌しながらイオン交換水530g、NMP565.8gを圧入した。HO/NMP(モル/モル)は0.69であった。
(第2重合工程)
イオン交換水の圧入後、260℃まで昇温し、3.5時間反応させて第2重合工程を行った。
(冷却工程)
重合終了後、冷却を開始し、255℃から230℃まで125分かけて冷却し、その後、速やかに室温まで冷却を行った。
(後処理工程)
オートクレーブの内容物を目開き径150μm(100メッシュ)のスクリーンで篩分けし、アセトン、及びイオン交換水で洗浄後、酢酸水溶液で洗浄し、再度イオン交換水で洗浄した後、120℃4時間で乾燥を行い、粒状の変性PPSを得た。得られた変性PPSの収率は85.3%であり、末端変性基量は50mmol/kgであった。
末端変性基量については、前述の方法に従って求められた値である。
得られた粒状の変性PPSについて、前述の方法に従って、310℃到達後から5分後の310℃での溶融粘度であるMV1と、310℃到達後から15分後の310℃での溶融粘度であるMV2と、310℃到達後から30分後の310℃での溶融粘度であるMV3とを測定した。MV1及びMV2から、前述の式に従い、310℃での溶融粘度保持率(10分)(%)を算出した。また、MV1及びMV3から、前述の式に従い、310℃での溶融粘度保持率(25分)(%)を算出した。
〔実施例2〕
変性剤を、o−メルカプト安息香酸に変えること、及び変性剤の使用量と、重合助剤の使用量とを、それぞれ表1に記載の量に変更することを除いて、実施例1と同様にして変性PASを得た。得られた変性PASの末端変性基量を表1に記し、溶融粘度保持率(10分)(%)、及び溶融粘度保持率(25分)(%)を表2に記す。
〔実施例3〕
変性剤を、o−メルカプト安息香酸に変えること、及び変性剤の使用量と、重合助剤の使用量とを、それぞれ表1に記載の量に変更することを除いて、実施例1と同様にして変性PASを得た。得られた変性PASの末端変性基量を表1に記し、溶融粘度保持率(10分)(%)、及び溶融粘度保持率(25分)(%)を表2に記す。
〔比較例1〕
重合助剤を用いないこと、及び溶融粘度を実施例に近づける目的でpDCB/仕込みS(モル/モル)を1.025としたことの他は、実施例1と同様にして変性PASを得た。得られた変性PASの末端変性基量を表1に記し、溶融粘度保持率(10分)(%)、及び溶融粘度保持率(25分)(%)を表2に記す。
〔比較例2〕
変性剤を、o−メルカプト安息香酸に変えること、変性剤の使用量を表1に記載の量に変えること、及び重合助剤を用いないこと、及び溶融粘度を実施例に近づける目的でpDCB/仕込みS(モル/モル)を1.025としたことの他は、実施例1と同様にして変性PASを得た。得られた変性PASの末端変性基量を表1に記し、溶融粘度保持率(10分)(%)、及び溶融粘度保持率(25分)(%)を表2に記す。
〔比較例3〕
重合助剤を第2重合工程中に混合物に添加することの他は、実施例3と同様にして変性PASを得た。得られた変性PASの末端変性基量を表1に記し、溶融粘度保持率(10分)(%)、及び溶融粘度保持率(25分)(%)を表2に記す。
〔比較例4〕
変性剤を相分離剤添加工程中に混合物に添加することの他は、比較例3と同様にして変性PASを得た。得られた変性PASの末端変性基量を表1に記し、溶融粘度保持率(10分)(%)、及び溶融粘度保持率(25分)(%)を表2に記す。
Figure 2021147513
Figure 2021147513
表1及び表2から、仕込み工程において、有機極性溶媒、硫黄源、ジハロ芳香族化合物、所定の構造の変性剤、及び所定の構造の重合助剤を含む混合物を調製し、その混合物を重合して変性PPSを得た実施例1〜3によれば、変性基量が多く、熱安定性に優れる変性PPSを高収率で製造できることが分かる。
他方、比較例1〜4によれば、重合助剤を用いなかったり、仕込み工程において、変性剤と重合助剤との双方を混合物に加えない場合、得られる変性PPSについて、収率が低かったり、変性基量が少なかったり、熱安定性に劣っていたりすることが分かる。

Claims (6)

  1. 有機極性溶媒、硫黄源、及びジハロ芳香族化合物を含有する混合物を調製する仕込み工程と、
    前記混合物を重合反応に供する重合工程と、を含む変性ポリアリーレンスルフィドの製造方法であって、
    前記混合物に、変性剤、及び重合助剤を含有させ、
    前記変性剤が、アミノ基、及びカルボキシ基から選択される1以上の変性基と、1以上のメルカプト基とを有するチオール化合物であり、
    前記重合助剤が、芳香族基に結合するハロゲン原子を3つ以上有するポリハロ芳香族化合物である、製造方法。
  2. 前記チオール化合物において、少なくとも1つの前記変性基と、少なくとも1つの前記メルカプト基とが、同一の芳香環上に結合している、請求項1に記載の変性ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  3. 前記チオール化合物が、メルカプトアニリン、又はメルカプト安息香酸である、請求項1又は2に記載の変性ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  4. 得られる前記変性ポリアリーレンスルフィドにおける、末端カルボキシ基量と末端アミノ基量との合計が5〜100mmol/kgである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の変性ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  5. 前記混合物において、硫黄源のモル数に対して、0.1〜5モル%の変性剤を含有させる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  6. 前記混合物において、硫黄源のモル数に対して、0.01〜2モル%の重合助剤を含有させる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
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