JP2020084027A - ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物及びその製造方法 - Google Patents

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良祐 立堀
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義紀 鈴木
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Abstract

【課題】耐ヒートショック性の向上を図ることができるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を提供する。【解決手段】末端にアミノ基を5〜100mmol/kg有する変性ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部と、α−オレフィン由来の構成単位及びα,β−不飽和酸のグリシジルエステル由来の構成単位を含有するオレフィン系共重合体1.0〜45.0質量部と、を含むポリアリーレンスルフィド樹脂組成物である。【選択図】なし

Description

本発明は、変性ポリアリーレンスルフィド樹脂を含むポリアリーレンスルフィド樹脂組成物及びその製造方法に関する。
ポリフェニレンサルファイド樹脂(以下「PPS樹脂」とも呼ぶ。)に代表されるポリアリーレンサルファイド樹脂(以下「PAS樹脂」とも呼ぶ。)は、高い耐熱性、機械的物性、耐化学薬品性、寸法安定性、難燃性を有していることから、電気・電子機器部品材料、自動車機器部品材料、化学機器部品材料等に広く使用されている。
PAS樹脂は上記のような優れた性質を有するものの、PAS樹脂単独では靱性に乏しく脆弱であり、例えばインサート成形品の高温と低温とに交互に晒される場合の耐久性、いわゆる耐ヒートショック性(耐高低温衝撃性)に劣ることが知られている。そこで、耐ヒートショック性の向上を図るために、エラストマー(オレフィン系共重合体)を併用することが一般的に行われている(例えば、特許文献1〜3参照)。これは、PAS樹脂の末端官能基とエラストマー中の官能基(エポキシ基等)とが反応することにより、PAS樹脂とエラストマーとの親和性が上昇(分散性が向上)し、その結果、耐ヒートショック性が向上すると考えられる。そのため、更なる耐ヒートショック性の向上を図るには、PAS樹脂を更に変性する、すなわちPAS樹脂の末端官能基を増やすことが考えられる。
末端に官能基が導入されたPAS樹脂を含む樹脂組成物としては、種々提案されている(特許文献4〜7参照)。当該官能基として、特許文献4及び7にはカルボキシル基又はアミノ基が、特許文献5及び6にはカルボキシル基が記載されている。
特開2002−129014号公報 特開2008−214383号公報 特開2005−161693号公報 特表2015−524510号公報 特表2015−524014号公報 特許第5831648号公報 特表2017−506686号公報
しかしながら、本発明者らの検討によると、PAS樹脂の末端へはカルボキシル基が効率良く導入されず、末端官能基を増加させることによる耐ヒートショック性の向上は不十分であることが判明した。また、特許文献4及び7には末端にアミノ基が導入されたPAS樹脂が記載されているが、耐ヒートショック性を向上させることについては何ら言及されていない。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その課題は、耐ヒートショック性の向上を図ることができるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物及びその製造方法を提供することにある。
前記課題を解決する本発明の一態様は以下の通りである。
(1)末端にアミノ基を5〜100mmol/kg有する変性ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部と、
α−オレフィン由来の構成単位及びα,β−不飽和酸のグリシジルエステル由来の構成単位を含有するオレフィン系共重合体1.0〜45.0質量部と、
を含むポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
(2)さらに無機フィラー5.5〜250質量部を含む前記(1)に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
(3)前記無機フィラーが、繊維状無機フィラーである前記(2)に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
(4)前記無機フィラーが、繊維状無機フィラーと、板状無機フィラー及び/又は粉粒状無機フィラーとの組合せからなる前記(2)に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
(5)前記オレフィン系共重合体が、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位をさらに含有する前記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
(6)前記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法であって、
ポリアリーレンスルフィド樹脂の重合に際し、アミノ基を有するチオール化合物を添加して末端にアミノ基を5〜100mmol/kg有する変性ポリアリーレンスルフィド樹脂を得る工程、及び
前記変性ポリアリーレンスルフィド樹脂と、α−オレフィン由来の構成単位及びα,β−不飽和酸のグリシジルエステル由来の構成単位を含有するオレフィン系共重合体とを少なくとも溶融混練する工程を含むポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
(7)前記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法であって、
ポリアリーレンスルフィド樹脂と、α−オレフィン由来の構成単位及びα,β−不飽和酸のグリシジルエステル由来の構成単位を含有するオレフィン系共重合体と、アミノ基を有するチオール化合物とを少なくとも溶融混練する工程を含み、
前記工程において、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂を、前記アミノ基を有するチオール化合物により、末端にアミノ基を5〜100mmol/kg有する変性ポリアリーレンスルフィド樹脂とするポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
(8)前記アミノ基を有するチオール化合物が、芳香族基にアミノ基とメルカプト基とが少なくとも結合した化合物である前記(6)又は(7)に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
本発明によれば、耐ヒートショック性の向上を図ることができるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物及びその製造方法を提供することができる。
変性PAS樹脂中におけるオレフィン系共重合体の分散状態を示すSEM−EDX写真である。 未変性のPAS樹脂中におけるオレフィン系共重合体の分散状態を示すSEM−EDX写真である。 耐ヒートショック性試験で用いた試験片を示す図であって、(a)は斜視図であり、(b)は平面図である。 図3に示す試験片のインサート部材を示す図であって、(a)は斜視図であり、(b)は鋭角形状部分の拡大平面図である。 図3に示す試験片の寸法についての説明図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
<ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物>
本実施形態のPAS樹脂組成物は、末端にアミノ基を5〜100mmol/kg有する変性ポリアリーレンスルフィド樹脂(以下、「変性PAS樹脂」とも呼ぶ。)100質量部と、α−オレフィン由来の構成単位及びα,β−不飽和酸のグリシジルエステル由来の構成単位を含有するオレフィン系共重合体1.0〜45.0質量部と、を含むことを特徴としている。
上述の通り、PAS樹脂の末端官能基と、オレフィン系共重合体(エラストマー)中のエポキシ基とが反応することにより、PAS樹脂とエラストマーとの親和性が上昇(分散性が向上)し、その結果、耐ヒートショック性が向上する。そして、本実施形態において、変性PAS樹脂の末端官能基を所定の比率のアミノ基としているが、そのような比率でアミノ基が存在すると、耐ヒートショック性を更に向上させることができる。また、後述するように、PAS樹脂の末端にアミノ基を導入するに当たり、所定の化合物を使用することで、PAS樹脂末端に上記比率でのアミノ基の導入を効率良く行うことができる。
ここで、変性PAS樹脂組成物中におけるオレフィン系共重合体(図1)、及び未変性のPAS樹脂中におけるオレフィン系共重合体(図2)のそれぞれの分散状態を図1及び図2にSEM−EDX写真で示す。図1及び図2に示す写真は、モノクロで表されているが、薄い部分がPAS樹脂を示し、濃い部分がオレフィン系共重合体を示す。すなわち、PAS樹脂を海部、オレフィン系共重合体を島部とする海島構造をなしている。図1においては、変性PAS樹脂中のオレフィン系重合体が均一に満遍なく分散していることが分かる。これに対して、図2においては、未変性のPAS樹脂中のオレフィン系共重合体は、不均一に散らばっており分散性が悪いことが分かる。なお、図1に示す組成物は、末端にアミノ基を30mmol/kg有する変性PPS樹脂100質量部と、エチレン−グリシジルジメタクリレート共重合体(GMA:6質量%、オレフィン系共重合体)11質量部とを含む変性PAS樹脂組成物である。また、図2に示す組成物は、未変性のPPS樹脂100質量部と、エチレン−グリシジルジメタクリレート共重合体(GMA:6質量%、オレフィン系共重合体)11質量部とを含む未変性PAS樹脂組成物である。
以下に、本実施形態のPAS樹脂組成物の各成分について説明する。
[変性ポリアリーレンスルフィド樹脂]
本実施形態のPAS樹脂組成物に含有する変性PAS樹脂は、末端にアミノ基を5〜100mmol/kg有するPAS樹脂である。上述の通り、当該変性PAS樹脂の末端のアミノ基と、オレフィン系共重合体のエポキシ基とが反応することでエラストマーとの親和性が向上し、その結果、耐ヒートショック性が向上する。また、PAS樹脂の末端へは、カルボキシル基よりもアミノ基の方が導入効率が良く、その結果、耐ヒートショック性の向上が容易となる。つまり、PAS樹脂の末端に、アミノ基、カルボキシル基を同じ条件で導入した場合、アミノ基の方が変性量が大きくなり、耐ヒートショック性に優れる。
本実施形態に係る変性PAS樹脂において、アミノ基は5〜100mmol/kg有するが、5mmol/kg未満であると、オレフィン系共重合体のとの反応が不十分となりやすく、耐ヒートショック性に劣る傾向があり、100mmol/kgを超えると反応が必要以上に起こりやすく、流動性に劣る傾向がある。当該アミノ基は、10〜70mmol/kgが好ましく、10〜40mmol/kgがより好ましい。なお、変性PAS樹脂中にアミノ基Xmmol/kg有するとは、1kgの変性PAS樹脂中にアミノ基をXmmol含むことを意味する。
本実施形態に係る変性PAS樹脂は、PAS樹脂の末端にアミノ基を導入して得られるが、以下に、当該変性PAS樹脂の末端にアミノ基を導入する前の状態、つまり未変性のPAS樹脂について説明する。なお、以下において、「変性PAS樹脂」と表記しない場合、未変性のPAS樹脂を示すものとする。
PAS樹脂は、機械的性質、電気的性質、耐熱性その他物理的・化学的特性に優れ、かつ、加工性が良好であるという特徴を有する。
PAS樹脂は、主として、繰返し単位として−(Ar−S)−(但しArはアリーレン基)で構成された高分子化合物であり、本実施形態では一般的に知られている分子構造のPAS樹脂を使用することができる。
上記アリーレン基としては、例えば、p−フェニレン基、m−フェニレン基、o−フェニレン基、置換フェニレン基、p,p’−ジフェニレンスルフォン基、p,p’−ビフェニレン基、p,p’−ジフェニレンエーテル基、p,p’−ジフェニレンカルボニル基、ナフタレン基などが挙げられる。PAS樹脂は、上記繰返し単位のみからなるホモポリマーでもよいし、下記の異種繰返し単位を含んだコポリマーが加工性等の点から好ましい場合もある。
ホモポリマーとしては、アリーレン基としてp−フェニレン基を用いた、p−フェニレンスルフィド基を繰返し単位とするポリフェニレンスルフィド樹脂が好ましく用いられる。また、コポリマーとしては、前記のアリーレン基からなるアリーレンスルフィド基の中で、相異なる2種以上の組み合わせが使用できるが、中でもp−フェニレンスルフィド基とm−フェニレンスルフィド基を含む組み合わせが特に好ましく用いられる。この中で、p−フェニレンスルフィド基を70モル%以上、好ましくは80モル%以上含むものが、耐熱性、成形性、機械的特性等の物性上の点から適当である。また、これらのPAS樹脂の中で、2官能性ハロゲン芳香族化合物を主体とするモノマーから縮重合によって得られる実質的に直鎖状構造の高分子量ポリマーが、特に好ましく使用できる。尚、本実施形態に用いるPAS樹脂は、異なる2種類以上の分子量のPAS樹脂を混合して用いてもよい。
尚、直鎖状構造のPAS樹脂以外にも、縮重合させるときに、3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物等のモノマーを少量用いて、部分的に分岐構造または架橋構造を形成させたポリマーや、低分子量の直鎖状構造ポリマーを酸素等の存在下、高温で加熱して酸化架橋または熱架橋により溶融粘度を上昇させ、成形加工性を改良したポリマーも挙げられる。
本実施形態に使用するPAS樹脂の溶融粘度(310℃・せん断速度1200sec−1)は、上記混合系の場合も含め600Pa・s以下が好ましく、中でも8〜300Pa・sの範囲にあるものは、機械的物性と流動性のバランスが優れており、特に好ましい。
なお、本実施形態のPAS樹脂組成物は、その効果を損なわない範囲で、樹脂成分として、上述のPAS樹脂、オレフィン系共重合体、及び繊維状無機フィラーに加えて、その他の樹脂成分を含んでもよい。その他の樹脂成分としては、特に限定はなく、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶樹脂、弗素樹脂、環状オレフィン系樹脂(環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマー等)、熱可塑性エラストマー、上述のシリコーン系ポリマー以外のシリコーン系ポリマー、各種の生分解性樹脂等が挙げられる。また、2種類以上の樹脂成分を併用してもよい。その中でも、機械的性質、電気的性質、物理的・化学的特性、加工性等の観点から、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、液晶樹脂等が好ましく用いられる。
[オレフィン系共重合体]
本実施形態において、オレフィン系共重合体は、耐ヒートショック性を向上させるために使用される。そして、上述のように、オレフィン系共重合体のエポキシ基と、変性PAS樹脂の末端のアミノ基とが反応することで耐ヒートショック性が向上する。オレフィン系共重合体は、共重合成分としてα−オレフィン由来の構成単位と、α,β−不飽和酸グリシジルエステル由来の構成単位とを含有する。中でも、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を含有することが好ましい。当該オレフィン系共重合体は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なお、以下、(メタ)アクリル酸エステルを(メタ)アクリレートともいう。例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルエステルをグリシジル(メタ)アクリレートともいう。また、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸とメタクリル酸との両方を意味し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートとの両方を意味する。
(α−オレフィン由来の構成単位)
α−オレフィンとしては、特に限定されないが、エチレン、プロピレン、ブチレン等を挙げることができる。中でも、エチレンが好ましい。α−オレフィンは、上記から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。α−オレフィンに由来する共重合成分の含有量は、特に限定されないが、例えば、全樹脂組成物中0.5〜20質量%とすることができる。
(α,β−不飽和酸のグリシジルエステル由来の構成単位)
α,β−不飽和酸のグリシジルエステルとしては、例えば、以下の一般式(1)に示される構造を有するものを挙げることができる。

(但し、Rは、水素又は炭素原子数1以上10以下のアルキル基を示す。)
上記一般式(1)で示される化合物としては、例えば、アクリル酸グリシジルエステル、メタクリル酸グリシジルエステル(GMA)、エタクリル酸グリシジルエステル等を挙げることができる。中でも、メタクリル酸グリシジルエステルが好ましい。α,β−不飽和酸のグリシジルエステルは、1種単独で使用することも、2種以上を併用することもできる。α,β−不飽和酸のグリシジルエステルに由来する構成単位の含有量は、好ましくは全樹脂組成物中0.02〜2.5質量%であり、更に好ましくは0.05〜1.5質量%であり、特に好ましくは0.08〜1.0である。α,β−不飽和酸のグリシジルエステルに由来する構成単位の含有量がこの範囲である場合、耐ヒートショック性を維持しつつモールドデポジットの析出をより抑制することができる。
((メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位)
(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−n−ヘキシル、アクリル酸−n−アミル、アクリル酸−n−オクチル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−ヘキシル、メタクリル酸−n−アミル、メタクリル酸−n−オクチル等のメタクリル酸エステルが挙げられる。中でも、特にアクリル酸メチルが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルは、1種単独で使用することもでき、2種以上を併用することもできる。(メタ)アクリル酸エステルに由来する共重合成分の含有量は、特に限定されないが、例えば、全樹脂組成物中0.2〜5.5質量%とすることができる。
α−オレフィン由来の構成単位と、α,β−不飽和酸グリシジルエステル由来の構成単位とを含有するオレフィン系共重合体、及び、更に(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を含有するオレフィン系共重合体は、従来公知の方法で共重合を行うことにより製造することができる。例えば、通常よく知られたラジカル重合反応により共重合を行うことによって、上記エポキシ基含有オレフィン系共重合体を得ることができる。オレフィン系共重合体の種類は、特に問われず、例えば、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。また、上記オレフィン系共重合体に、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリアクリル酸−2エチルヘキシル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリル酸ブチル−スチレン共重合体等が、分岐状に又は架橋構造的に化学結合したオレフィン系グラフト共重合体であってもよい。
本実施形態のPAS樹脂組成物において、オレフィン系共重合体は、変性PAS樹脂100質量部に対して、1.0〜45.0質量部含有する。当該オレフィン系共重合体が1.0質量部未満であると、耐ヒートショック性を十分に向上させることが難しい傾向があり、45.0質量部を超えると、流動性が低下したり、成形時のガス発生が多くなったりすることにより、成形不良が発生しやすくなる。当該オレフィン系共重合体は、2.0〜30.0質量部含有することが好ましく、3.5〜25.0質量部含有することがより好ましく、4.0〜20.0質量部含有することが更に好ましく、4.0〜15.0質量部含有することが特に好ましい。
本実施形態に用いるオレフィン系共重合体は、その効果を害さない範囲で、他の共重合成分由来の構成単位を含有することができる。
より具体的には、オレフィン系共重合体としては、例えば、グリシジルメタクリレート変性エチレン共重合体、グリシジルエーテル変性エチレン共重合体等が挙げられ、中でも、グリシジルメタクリレート変性エチレン共重合体が好ましい。
グリシジルメタクリレート変性エチレン共重合体としては、グリシジルメタクリレートグラフト変性エチレン共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−メチルアクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−エチルアクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−プロピルアクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−ブチルアクリレート共重合体等を挙げることができる。中でも、特に優れた金属樹脂複合成形体が得られることから、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体及びエチレン−グリシジルメタクリレート−メチルアクリレート共重合体が好ましく、エチレン−グリシジルメタクリレート−メチルアクリレート共重合体が特に好ましい。エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体及びエチレン−グリシジルメタクリレート−メチルアクリレート共重合体の具体例としては、「ボンドファースト」(住友化学(株)製)等が挙げられる。
グリシジルエーテル変性エチレン共重合体としては、例えば、グリシジルエーテルグラフト変性エチレン共重合体、グリシジルエーテル−エチレン共重合体を挙げることができる。
[無機フィラー]
本実施形態のPAS樹脂組成物は、無機フィラーを含んでいることが好ましい。中でも、無機フィラーは、機械的強度、耐ヒートショック性、耐熱性等をより向上させることができるため、繊維状無機フィラーを含んでいることが好ましい。特に、断面形状が丸型形状の繊維状無機フィラーと断面形状が扁平形状の繊維状無機フィラーとを併用すると、耐ヒートショック性をより向上させることができるため好ましい。
また、無機フィラーは、繊維状無機フィラーと板状無機フィラー及び/又は粉粒状無機フィラーとの組合せからなると、機械強度や平面度をより向上させることができるため好ましい。
本実施形態において、「繊維状」とは、異径比が1以上4以下、かつ、平均繊維長(カット長)が0.01〜3mmの形状をいい、「板状」とは、異径比が4より大きく、かつ、アスペクト比が1以上500以下の形状をいい、「粉粒状」とは、異径比が1以上4以下、かつ、アスペクト比が1以上2以下の形状(球状を含む。)をいう。いずれの形状も初期形状(溶融混練前の形状)である。異径比とは、「長手方向に直角の断面の長径(断面の最長の直線距離)/当該断面の短径(長径と直角方向の最長の直線距離)」であり、アスペクト比とは、「長手方向の最長の直線距離/長手方向に直角の断面の短径(当該断面における最長距離の直線と直角方向の最長の直線距離)」である。異径比及びアスペクト比は、いずれも、走査型電子顕微鏡及び画像処理ソフトを用いて算出することができる。また、平均繊維長(カット長)はメーカー値(メーカーがカタログなどにおいて公表している数値)を採用することができる。
繊維状無機フィラーの例としては、ガラス繊維、カーボン繊維、酸化亜鉛繊維、酸化チタン繊維、ウォラストナイト、シリカ繊維、シリカ−アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化ケイ素繊維、硼素繊維、チタン酸カリ繊維、等の鉱物繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維、チタン繊維、銅繊維、真鍮繊維等の金属繊維状物質、ポリアミド繊維、高分子量ポリエチレン繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、フッ素繊維等の合成繊維が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。中でも、ガラス繊維が好ましい。
ガラス繊維の上市品の例としては、日本電気硝子(株)製、チョップドガラス繊維(ECS03T−790DE、平均繊維径:6μm)、オーウェンスコーニング製造(株)製、チョップドガラス繊維(CS03DE 416A、平均繊維径:6μm)、日本電気硝子(株)製、チョップドガラス繊維(ECS03T−747H、平均繊維径:10.5μm)、日本電気硝子(株)製、チョップドガラス繊維(ECS03T−747、平均繊維径:13μm)、日東紡績(株)製、異形断面チョップドストランド CSG 3PA−830(長径28μm、短径7μm)、日東紡績(株)製、異形断面チョップドストランド CSG 3PL−962(長径20μm、短径10μm)等が挙げられる。
繊維状無機フィラーは、一般的に知られているエポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物、脂肪酸等の各種表面処理剤により表面処理されていてもよい。表面処理により、変性PAS樹脂との密着性を向上させることができる。表面処理剤は、材料調製の前に予め繊維状無機フィラーに適用して表面処理又は収束処理を施しておくか、または材料調製の際に同時に添加してもよい。
繊維状無機フィラーの繊維径は、特に限定されないが、初期形状(溶融混練前の形状)において、例えば5μm以上30μm以下とすることができる。ここで、繊維状無機フィラーの繊維径とは、繊維状無機フィラーの繊維断面の長径をいう。
繊維状無機フィラーの断面形状は、特に限定されないが丸型形状や扁平形状等を挙げることができる。また、断面形状の異なる繊維状無機フィラーを併用してもよい。断面形状が丸型形状の繊維状無機フィラーと断面形状が扁平形状の繊維状無機フィラーとを併用すると、耐ヒートショック性をより向上させることができるため好ましい。
板状無機フィラーとしては、例えば、ガラスフレーク、タルク(板状)、マイカ、カオリン、クレイ、アルミナ(板状)、各種の金属箔等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。中でも、ガラスフレーク、タルクが好ましい。
ガラスフレークの上市品の例としては、日本板硝子(株)製、REFG−108(平均粒子径(50%d):623μm)、(日本板硝子(株)製、ファインフレーク(平均粒子径(50%d):169μm)、日本板硝子(株)製、REFG−301(平均粒子径(50%d):155μm)、日本板硝子(株)製、REFG−401(平均粒子径(50%d):310μm)等が挙げられる。
タルクの上市品の例としては、松村産業(株)製 クラウンタルクPP、林化成(株)製 タルカンパウダーPKNN等が挙げられる。
板状無機フィラーは、繊維状無機フィラーと同様に表面処理されていてもよい。
粉粒状無機フィラーとしては、カーボンブラック、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、タルク(粒状)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、珪藻土等のケイ酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ(粒状)等の金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の金属硫酸塩、その他炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、各種金属粉末等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。中でも、炭酸カルシウム、ガラスビーズが好ましい。
炭酸カルシウムの上市品の例としては、東洋ファインケミカル(株)製、ホワイトンP−30(平均粒子径(50%d):5μm)等が挙げられる。また、ガラスビーズの上市品の例としては、ポッターズ・バロティーニ(株)製、EGB731A(平均粒子径(50%d):20μm)、ポッターズ・バロティーニ(株)製、EMB−10(平均粒子径(50%d):5μm)等が挙げられる。
粉粒状無機フィラーも、繊維状無機フィラーと同様に表面処理されていてもよい。
無機フィラーが、繊維状無機フィラーと板状無機フィラー及び/又は粉粒状無機フィラーとの組合せからなると、機械強度や平面度をより向上させることができるため好ましい。
繊維状無機フィラーと板状無機フィラー及び/又は粉粒状無機フィラーとの組合せの例としては、ガラス繊維とガラスフレーク、ガラス繊維と炭酸カルシウム、ガラス繊維とガラスビーズ、ガラス繊維とガラスフレークと炭酸カルシウム、ガラス繊維と異形断面(扁平形状)のガラス繊維と炭酸カルシウム、等の組合せが挙げられる。
本実施形態のPAS樹脂組成物において、無機フィラーは、変性PAS樹脂100質量部に対して、5.5〜250質量部含有していることが好ましい。当該無機フィラーが5.5質量部未満であると、機械的物性が不十分となりやすく、250質量部を超えると、流動性が低下しやすい。当該無機フィラーは、15〜150質量部含有することが好ましく、30〜110質量部含有することがより好ましく、25〜90質量部含有することが更に好ましい。
[他の成分]
本実施形態のPAS樹脂組成物は、その効果を妨げない範囲で、その目的に応じた所望の特性を付与するために、一般に熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂に添加される公知の添加剤、すなわちバリ抑制剤、滑剤、核剤、難燃剤、難燃助剤、酸化防止剤、金属不活性剤、その他老化防止剤、UV吸収剤、安定剤、可塑剤、顔料、染料、着色剤、帯電防止剤、発泡剤、腐食防止剤等を要求性能に応じ配合することが可能である。バリ抑制剤としては、例えば、国際公開第2006/068161号や国際公開第2006/068159号等に記載されているような、溶融粘度が非常に高い分岐型ポリフェニレンサルファイド系樹脂、シラン化合物等を挙げることができる。シラン化合物としては、ビニルシラン、メタクリロキシシラン、エポキシシラン、アミノシラン、メルカプトシラン等の各種タイプが含まれ、例えばビニルトリクロロシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトトリメトキシシラン等が例示されるが、これらに限定されるものではない。添加剤の含有量は、例えば、全樹脂組成物中5質量%以下にすることができる。
本実施形態のPAS樹脂組成物を用いて成形品を成形する方法としては特に限定はなく、当該技術分野で知られている各種方法を採用することができる。例えば、本実施形態のPAS樹脂組成物を押出機に投入して溶融混練してペレット化し、このペレットを所定の金型を装備した射出成形機に投入し、射出成形することで作製することができる。
PAS樹脂成形品の形状は特に限定されず用途に応じて適宜選択することができる。例えば、シート状、板状、筒状、被膜状等の他、所望の形状の三次元成形体に成形することができる。
<PAS樹脂組成物の製造方法>
第1の実施形態のPAS樹脂組成物の製造方法は、上述の本実施形態のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法であって、ポリアリーレンスルフィド樹脂の重合に際し、アミノ基を有するチオール化合物を添加して末端にアミノ基を5〜100mmol/kg有する変性ポリアリーレンスルフィド樹脂を得る工程、及び前記変性ポリアリーレンスルフィド樹脂と、α−オレフィン由来の構成単位及びα,β−不飽和酸のグリシジルエステル由来の構成単位を含有するオレフィン系共重合体とを少なくとも溶融混練する工程を含むことを特徴としている。
また、第2の実施形態のPAS樹脂組成物の製造方法は、上述の本実施形態のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法であって、ポリアリーレンスルフィド樹脂と、α−オレフィン由来の構成単位、及びα,β−不飽和酸のグリシジルエステル由来の構成単位を含有するオレフィン系共重合体と、アミノ基を有するチオール化合物とを少なくとも溶融混練する工程を含み、前記工程において、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂を、前記アミノ基を有するチオール化合物により、末端にアミノ基を5〜100mmol/kg有する変性ポリアリーレンスルフィド樹脂とすることを特徴としている。
第1及び第2のいずれの形態においても、上述の実施形態のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法であるが、それぞれの形態において、PAS樹脂をアミン変性するタイミングが異なる。第1の実施形態においては、PAS樹脂を重合する際にアミノ基を有するチオール化合物によりアミン変性する。つまり、PAS樹脂の重合と、アミン変性とを同時に行う。これに対して第2の実施形態においては、未変性のPAS樹脂を含む原料成分を溶融混練する際にアミノ基を有するチオール化合物によりアミン変性する。
以下にまず、第1及び第2の実施形態の双方において、PAS樹脂のアミン変性に用いるアミノ基を有するチオール化合物について説明する。
[アミノ基を有するチオール化合物]
第1及び第2のいずれの実施形態においても、アミノ基を有するチオール化合物によりPAS樹脂の末端にアミノ基を導入する。当該化合物は、アミノ基とメルカプト基とを有する化合物であるが、当該化合物によりPAS樹脂の主鎖の途中で切断され、切断部分のベンゼン環と当該化合物のメルカプト基の硫黄原子とが結合を形成することから、PAS樹脂の末端がアミノ基となる。
アミノ基を有するチオール化合物としては、脂肪族基又は芳香族基に、アミノ基とメルカプト基とが少なくとも結合した化合物であることが好ましく、芳香族基にアミノ基とメルカプト基とが結合した化合物であることが特に好ましい。脂肪族基にアミノ基とメルカプト基とが結合した化合物としては、2−アミノエタンチオール、D−システイン、L−システイン、D−ペニシラミン、L−ペニシラミン等が挙げられ、中でも、2−アミノエタンチオールが好ましい。芳香族基にアミノ基とメルカプト基とが結合した化合物としては、o−アミノベンゼンチオール、m−アミノベンゼンチオール、p−アミノベンゼンチオール等が挙げられ、中でも、o−アミノベンゼンチオール、p−アミノベンゼンチオールが好ましい。
アミノ基を有するチオール化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
次いで、以下に第1及び第2の実施形態それぞれについて順次説明する。
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、PAS樹脂を重合する際にアミン変性する形態である。すなわち、定法に従い、PAS樹脂を重合する際にアミノ基を有するチオール化合物によりPAS樹脂の末端にアミノ基を導入し、アミノ基を5〜100mmol/kg有する変性PAS樹脂とする。
PAS樹脂の重合は公知の重合方法を適用することができる。そして、PAS樹脂の重合反応において、原料となる硫黄源とジハロ芳香族化合物とを混合する際にアミノ基を有するチオール化合物を仕込んでもよいし、重合反応の途中で仕込んでもよい。ただし、 PAS樹脂の分子量やアミノ基による変性の割合を十分なものとするためには、アミノ基を有するチオール化合物を添加するタイミングを以下のようにすることが好ましい。
アミノ基を有するチオール化合物を重合反応の初期、例えば、仕込み工程で添加すると、生成するPAS樹脂が低分子量化(低溶融粘度化)して、高分子量のPAS樹脂を得ることが困難となりやすい。また、相分離重合工程の初期段階又は後期段階など、液相が相分離状態にあるときにアミノ基を有するチオール化合物を添加しても、変性できないか、変性の割合が不十分となりやすい。そこで、重合反応開始後、ジハロ芳香族化合物の転化率が80〜99%に達した段階であって、かつ、該液相が相分離状態となる前に、重合反応系内にアミノ基を有するチオール化合物を添加することが好ましい。そのようにすることで、アミノ基を有するチオール化合物と、生成するPAS樹脂(プレポリマー)とが反応し、次いで、重合反応系内の液相が相分離状態に転換して重合反応を継続することができる。ひいては、PAS樹脂の分子量及びアミノ基による変性の割合が十分となる。
また、アミノ基を有するチオール化合物としては、アミノ基を有するチオール化合物、そのチオール化合物の金属塩、アミノ基を有するジスルフィド化合物からなる群から選ばれる1種以上の化合物のいずれでもよいが、入手容易で安価なチオール化合物がより好ましい。
一方、アミノ基を有するチオール化合物のうち、芳香族基にアミノ基とメルカプト基とが結合した化合物としては、オルト(o−)、メタ(m−)、パラ(p−)の位置異性体のいずれを用いてもよいが、反応性の観点からオルト体、パラ体が好ましく、さらに立体障害の観点から、パラ体がより好ましい。
第1の実施形態において、変性PAS樹脂の末端のアミノ基が5〜100mmol/kgとなるようにするには、例えば以下のようにする。重合反応開始後、ジハロ芳香族化合物の転化率が80〜99%に達した段階であって、かつ、重合反応系内の液相が相分離状態となる前に、アミノ基を有するチオール化合物を重合反応系内に添加して生成PAS樹脂(プレポリマー)と反応させる。当該転化率は、好ましくは85〜98%であり、より好ましくは90〜97%である。アミノ基を有するチオール化合物の添加量は、仕込み硫黄源100モル当たり、0.05〜10モル、好ましくは0.1〜5モル、より好ましくは0.5〜1.5 モルとなる割合である。
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、樹脂組成物の成分(少なくとも、未変性のPAS樹脂、オレフィン系共重合体)と、アミノ基を有するチオール化合物とを溶融混練する時にPAS樹脂にアミノ基を導入する。このような溶融混練の工程は特に限定されず、当該技術分野で知られている各種方法を採用することができる。例えば、上述した各成分を混合した後、押出機に投入して、溶融混練し、ペレット化する方法が挙げられる。また、一旦組成の異なるペレットを調製し、そのペレットを所定量混合して成形に供し、成形後に目的組成の成形品を得る方法、成形機に各成分の1又は2以上を直接仕込む方法等を用いてもよい。さらに、1回の溶融混練の工程において、PAS樹脂の変性とペレット化とを1工程の中で行ってよいし、PAS樹脂の変性とペレット化とをそれぞれ別の溶融混練の工程として行ってもよい。後者は、一旦、未変性のPAS樹脂とアミノ基を有するチオール化合物との2成分で溶融混練して変性PAS樹脂としつつ、ペレットを調製した後で、その変性PAS樹脂ペレットと、残りの樹脂組成物の成分(少なくとも、オレフィン系共重合体)とを所定量混合して成形に供し、成形後に目的組成の成形品を得る方法としてもよい。
アミノ基を有するチオール化合物を用いてPAS樹脂の末端にアミノ基を導入するため、シリンダー温度280〜360℃の押出機で溶融混練することが好ましい。
PAS樹脂の末端にアミノ基を5〜100mmol/kg有する変性ポリアリーレンスルフィド樹脂とするには、PAS樹脂100重量部に対して、アミノ基を有するチオール化合物を0.1〜5.0質量部用いればよい。
以下に、実施例により本実施形態をさらに具体的に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
以下の実施例において、第1の実施形態を適用してPAS樹脂組成物を調製したのが実施例1であり、第2の実施形態を適用してPAS樹脂組成物を調製したのが実施例2〜10である。
[実施例1]
まず、以下のようにして、PAS樹脂を重合する際にアミノ基を有するチオール化合物としてp−アミノベンゼンチオールを用い、末端に30mmol/kgのアミノ基を有する変性PAS樹脂(変性PPS樹脂1)を得た。
(PAS樹脂の重合(変性PPS樹脂1の合成))
1.脱水工程:
硫黄源として、ヨードメトリー法による分析値61.55質量%の水硫化ナトリウム(NaSH)水溶液を用いた。この水溶液には、23.04モルの硫黄源(S)が含まれている。この硫黄源の中和滴定法によるNaSH分析値は、60.62質量%であり、硫化ナトリウム(NaS)が1.86質量%含まれている。
上記水硫化ナトリウム水溶液2098.9g、及び73.36質量%の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液1279.3gをN−メチル−ピロリドン(NMP)5999.0gと共にチタン製20リットルオートクレーブ(反応缶)に投入した。
反応缶内を窒素ガスで置換した後、約2時間かけて、撹拌しながら徐々に200℃まで昇温して、水985.3gとNMP772.8gを留出させた。この際、0.34モルの硫化水素(HS)が揮散した。したがって、脱水工程後の缶内の有効S量(すなわち、「仕込み硫黄源」の量)は、22.70モルとなった。HS揮散分は、反応缶に投入した硫黄源に対して、1.49モル%に相当した。
2.仕込み工程:
脱水工程の後、22.70モルの有効S(仕込み硫黄源)を含む反応缶を170℃まで冷却した。次いで、p−ジクロロベンゼン(以下、「pDCB」と略記)3420.5g〔pDCB/有効S=1.025(モル/モル)〕、NMP3286.7g、及び水62g〔缶内の合計水量/有効S=1.500(モル/モル)〕を加えた。さらに、缶内NaOH/有効S=1.000(モル/モル)になるように、純度97%のNaOH3.6gを加えた。反応缶内には、HSが揮散することにより生成したNaOH(0.69モル)が含まれている。
3.重合工程:
反応缶に備え付けた撹拌機を250rpmで回転して仕込み混合物を撹拌しながら、220℃で1時間反応させ、その後30分間で230℃に昇温し、そして230℃で1.5時間反応させた(前段重合工程)。
その後、撹拌機の回転数を400rpmに上げ、撹拌を続けながら、NMP567.5gとp−アミノベンゼンチオール31.3g〔変性剤/有効S=1.10(モル%/モル)〕を圧入し、つづいて水531.7gを圧入し〔缶内の合計水量/有効S=2.80(モル/モル)、260℃に昇温して、3.25時間反応させた(後段重合工程)。
4.後処理工程:
反応終了後、反応混合物を室温付近まで冷却してから、反応液を100メッシュのスクリーンに通して粒状ポリマーを篩分した。分離したポリマーについて、アセトンにより2回洗浄し、水洗を3回行った後、0.18%酢酸水洗を行い、さらに水洗を4回行って洗浄ポリマーを得た。洗浄ポリマーは、105℃で13時間乾燥した。以上のようにして、アミン末端の重合変性PAS樹脂(変性PPS樹脂1)を得た。
なお、得られた変性PPS樹脂1の末端のアミノ基の濃度は全窒素分析により測定した窒素量をベースに算出した。具体的には、変性PPS樹脂1の窒素量から比較例1の未変性PPS樹脂1の窒素量を差し引いた値をアミノ基の濃度として算出したところ、その値は30mmol/kgであった。
また、得られた変性PPS樹脂1の溶融粘度は20Pa・s(せん断速度:1200sec−1、310℃)であった。
(変性PPS樹脂1の溶融粘度の測定)
上記変性PPS樹脂1の溶融粘度は以下のようにして測定した。
東洋精機製作所製キャピログラフを用い、キャピラリーとして1mmφ×20mmLのフラットダイを使用し、バレル温度310℃、せん断速度1200sec−1での溶融粘度を測定した。
尚、比較例で用いた未変性PPS樹脂1および変性PPS樹脂2についても、上記と同様に溶融粘度を測定した。
次いで、表1に示す各原料成分を、シリンダー温度320℃の二軸押出機の原料供給部(ホッパー)より投入し(ガラス繊維は押出機のサイドフィード部より別添加)、押出量20kg/Hr、スクリュー回転数200rpmの条件で溶融混練し、ペレット化した。
表1に示す原料成分(変性PPS樹脂1を除く)の詳細を以下に記す。
・ガラス繊維1:日本電気硝子(株)製、ECS03T−747(断面が略円形、平均繊維径:13μm)
・ガラス繊維2:日東紡績(株)製、異形断面チョップドストランド CSG 3PA−830(断面が長円形、長径28μm、短径7μm)
・ガラスフレーク:日本板硝子(株)製、フレカREFG−108(平均粒子径(50%d)623μm、平均厚み5μm)
・炭酸カルシウム:旭鉱末(株)製、MC−35W(平均粒子径(50%d)25μm)
・オレフィン系共重合体:住友化学(株)製、ボンドファースト7M(エチレン−グリシジルジメタクリレート−メチルアクリレート共重合体、GMA:6質量%、MA:27質量%)
なお、表1中、ガラス繊維、ガラスフレーク、炭酸カルシウム及びオレフィン系共重合体の含有量は、PPS樹脂(または変性PPS樹脂)100質量部に対する質量部で表す。
[比較例1]
変性PPS樹脂1の代わりに、未変性PPS樹脂1:(株)クレハ製、フォートロンKPS(溶融粘度:20Pa・s(せん断速度:1200sec−1、310℃))を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてペレットを得た。すなわち、未変性のPAS樹脂を用いてPAS樹脂組成物のペレットを得た。
[比較例2]
PAS樹脂の重合において、p−アミノベンゼンチオールの代わりにo−メルカプト安息香酸74.6g〔変性剤/有効S=2.60(モル%/モル)〕を用い、カルボン酸変性PAS樹脂(変性PPS樹脂2)を合成したこと以外は実施例1と同様にしてペレットを得た。
なお、得られた変性PPS樹脂2の末端のカルボキシル基の濃度は、カルボジイミドで反応させ、全窒素分析により測定した窒素量をベースに算出した。具体的には、ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル) カルボジイミドで反応させた変性PPS樹脂2の窒素量から比較例1の未変性PPS樹脂1の窒素量を差し引いた値をカルボキシル基の濃度として算出したところ、その値は20mmol/kgであった。
また、得られた変性PPS樹脂2の溶融粘度は20Pa・s(せん断速度:1200sec−1、310℃)であった。
[実施例2、6〜10、比較例5]
未変性PPS樹脂2:(株)クレハ製、フォートロンKPS(溶融粘度:130Pa・s(せん断速度:1200sec−1、310℃))と未変性PPS樹脂3:(株)クレハ製、フォートロンKPS(溶融粘度:30Pa・s(せん断速度:1200sec−1、310℃))とをブレンドして、ブレンド後の溶融粘度を45Pa・s(せん断速度:1200sec−1、310℃)としたPPS樹脂100質量部と、o−アミノベンゼンチオール0.3質量部とを、シリンダー温度320℃の二軸押出機の原料供給部(ホッパー)より投入し、押出量20kg/Hr、スクリュー回転数200rpmの条件で溶融混練し、ペレット化し、変性PPS樹脂3を得た。なお、o−アミノベンゼンチオールによりPPS樹脂の末端にはアミノ基が導入されたが、当該変性PPS樹脂3のアミノ基は、実施例1と同様に測定したところ10mmol/kgであった。また、得られた変性PPS樹脂3の溶融粘度は、実施例1と同様に測定したところ30Pa・s(せん断速度:1200sec−1、310℃)であった。
次に、表2に示す各原料成分を、シリンダー温度320℃の二軸押出機の原料供給部(ホッパー)より投入し(ガラス繊維は押出機のサイドフィード部より別添加(ただし、ガラス繊維を添加しない実施例10を除く))、押出量20kg/Hr、スクリュー回転数200rpmの条件で溶融混練し、ペレット化した。
[実施例3]
未変性PPS樹脂2:(株)クレハ製、フォートロンKPS(溶融粘度:130Pa・s(せん断速度:1200sec−1、310℃))と未変性PPS樹脂3:(株)クレハ製、フォートロンKPS(溶融粘度:30Pa・s(せん断速度:1200sec−1、310℃))とをブレンドして、ブレンド後の溶融粘度を48Pa・s(せん断速度:1200sec−1、310℃)としたPPS樹脂100質量部と、o−アミノベンゼンチオール0.5質量部とを、シリンダー温度320℃の二軸押出機の原料供給部(ホッパー)より投入し、押出量20kg/Hr、スクリュー回転数200rpmの条件で溶融混練し、ペレット化し、変性PPS樹脂4を得た。なお、o−アミノベンゼンチオールによりPPS樹脂の末端にはアミノ基が導入されたが、当該変性PPS樹脂4のアミノ基は、実施例1と同様に測定したところ15mmol/kgであった。また、得られた変性PPS樹脂4の溶融粘度は、実施例1と同様に測定したところ22Pa・s(せん断速度:1200sec−1、310℃)であった。
次に、表2に示す各原料成分を、シリンダー温度320℃の二軸押出機の原料供給部(ホッパー)より投入し(ガラス繊維は押出機のサイドフィード部より別添加)、押出量20kg/Hr、スクリュー回転数200rpmの条件で溶融混練し、ペレット化した。
[実施例4]
未変性PPS樹脂2:(株)クレハ製、フォートロンKPS(溶融粘度:130Pa・s(せん断速度:1200sec−1、310℃))100質量部と、o−アミノベンゼンチオール1質量部とを、シリンダー温度320℃の二軸押出機の原料供給部(ホッパー)より投入し、押出量20kg/Hr、スクリュー回転数200rpmの条件で溶融混練し、ペレット化し、変性PPS樹脂5を得た。なお、o−アミノベンゼンチオールによりPPS樹脂の末端にはアミノ基が導入されたが、当該変性PPS樹脂5のアミノ基は、実施例1と同様に測定したところ30mmol/kgであった。また、得られた変性PPS樹脂5の溶融粘度は、実施例1と同様に測定したところ29Pa・s(せん断速度:1200sec−1、310℃)であった。
次に、表2に示す各原料成分を、シリンダー温度320℃の二軸押出機の原料供給部(ホッパー)より投入し(ガラス繊維は押出機のサイドフィード部より別添加)、押出量20kg/Hr、スクリュー回転数200rpmの条件で溶融混練し、ペレット化した。
[実施例5]
未変性PPS樹脂3:(株)クレハ製、フォートロンKPS(溶融粘度:30Pa・s(せん断速度:1200sec−1、310℃))100質量部と、o−アミノベンゼンチオール0.15質量部とを、シリンダー温度320℃の二軸押出機の原料供給部(ホッパー)より投入し、押出量20kg/Hr、スクリュー回転数200rpmの条件で溶融混練し、ペレット化し、変性PPS樹脂6を得た。なお、o−アミノベンゼンチオールによりPPS樹脂の末端にはアミノ基が導入されたが、当該変性PPS樹脂6のアミノ基は、実施例1と同様に測定したところ5mmol/kgであった。また、得られた変性PPS樹脂6の溶融粘度は、実施例1と同様に測定したところ25Pa・s(せん断速度:1200sec−1、310℃)であった。
次に、表2に示す各原料成分を、シリンダー温度320℃の二軸押出機の原料供給部(ホッパー)より投入し(ガラス繊維は押出機のサイドフィード部より別添加)、押出量20kg/Hr、スクリュー回転数200rpmの条件で溶融混練し、ペレット化した。
[比較例3、6〜10]
変性PPS樹脂3の代わりに、未変性PPS樹脂3:(株)クレハ製、フォートロンKPS(溶融粘度:30Pa・s(せん断速度:1200sec−1、310℃))を用いた以外は実施例2と同様にして(比較例10については実施例10と同様にして)ペレットを得た。すなわち、未変性のPAS樹脂を用いてPAS樹脂組成物のペレットを得た。
[比較例4]
未変性PPS樹脂2:(株)クレハ製、フォートロンKPS(溶融粘度:130Pa・s(せん断速度:1200sec−1、310℃))と未変性PPS樹脂3:(株)クレハ製、フォートロンKPS(溶融粘度:30Pa・s(せん断速度:1200sec−1、310℃))とをブレンドして、ブレンド後の溶融粘度を62Pa・s(せん断速度:1200sec−1、310℃)としたPPS樹脂100質量部と、o−メルカプト安息香酸0.37質量部とを、シリンダー温度320℃の二軸押出機の原料供給部(ホッパー)より投入し、押出量20kg/Hr、スクリュー回転数200rpmの条件で溶融混練し、ペレット化し、変性PPS樹脂7を得た。なお、o−メルカプト安息香酸によりPPS樹脂の末端にはカルボキシル基が導入されたが、当該変性PPS樹脂7のアミノ基は、比較例2と同様に測定したところ5mmol/kgであった。また、得られた変性PPS樹脂7の溶融粘度は、実施例1と同様に測定したところ28Pa・s(せん断速度:1200sec−1、310℃)であった。
次に、表2に示す各原料成分を、シリンダー温度320℃の二軸押出機の原料供給部(ホッパー)より投入し(ガラス繊維は押出機のサイドフィード部より別添加)、押出量20kg/Hr、スクリュー回転数200rpmの条件で溶融混練し、ペレット化した。
[評価]
得られた各実施例・比較例のペレットを用いて以下の評価を行った。
(耐ヒートショック性試験)
まず、各実施例・比較例で得たペレットと金属製のインサート部材を用い、図3〜図5に示す試験片をインサート成形した。図3は、インサート成形した試験片1を示す図であり、図4は、インサート部材11を示す図であり、図5は試験片1の寸法を示す図である。試験片1は、図3に示すように、樹脂組成物からなる円柱形の樹脂部材10に金属製のインサート部材11が埋入した状態で成形されている。円柱形の樹脂部材10は、上記のようにして得られたペレットを用いて成形されたものである。インサート部材11は、図4に示すように、柱状であって、その上面及び底面の形状が一側が円弧形状、他側が鋭角形状の涙型の形状をなす。鋭角形状部分は部分拡大図である図3(b)に示すように、先端が円弧状になっており、その曲率半径rは0.2mmである。また、インサート部材11は、円柱形の樹脂部材10の高さより高く、その一部が突出している(図3(a)参照)。さらに、図5(a)に示すように、インサート部材11の円弧を一部とする円の中心Oと、樹脂部材10の円の中心Oとは一致せず、インサート部材11の鋭角形状側が樹脂部材10の側面に近接するように配置されている。そして、インサート部材11の鋭角形状の先端と、樹脂部材10の側面との距離dwは1mmであり、樹脂部材10において、インサート部材11の鋭角形状の先端近傍が肉厚の薄いウェルド部となっている。なお、図5に試験片の寸法を示しているが、その単位はmmである。
上記試験片に対し、冷熱衝撃試験機(エスペック(株)製)を用い、−40℃にて1.5時間冷却後、180℃にて1.5時間加熱するというサイクルを繰り返し、20サイクル毎にウェルド部を観察した。ウェルド部にクラックが発生したときのサイクル数を耐ヒートショック性の指標として評価した。評価結果を表1、表2に示す。
なお、表1及び表2の耐ヒートショック性の項目における「倍」は、第1及び第2それぞれの実施形態において、各処方に対応する未変性のPPS樹脂を用いた比較例の耐ヒートショック性の結果に対して何倍かを示す。すなわち、表1(第1の実施形態)においては比較例1の耐ヒートショック性の結果に対して何倍かを示す。また、表2(第2の実施形態)においては、実施例2〜5および比較例3〜5については比較例3の耐ヒートショック性の結果に対して何倍かを示し、実施例6〜10については、それぞれ対応する同じ番号の比較例の耐ヒートショック性の結果に対して何倍かを示す。
表1及び表2の実施例1〜10より、第1及び第2の実施形態のいずれも、耐ヒートショック性の向上を図ることができたことが分かる。これら実施例1〜10においては、未変性のPPS樹脂は勿論のこと、カルボン酸変性のPPS樹脂を用いた場合よりも高い耐ヒートショック性が得られた。
アミン変性のPPS樹脂を用いたか、又は未変性のPPS樹脂を用いたかにおいてのみ異なる実施例と比較例との組合せ(実施例1と比較例1、実施例2〜5と比較例3、実施例6と比較例6、実施例7と比較例7、実施例8と比較例8、実施例9と比較例9、実施例10と比較例10)においては、いずれの組合せも比較例よりも実施例の方が耐ヒートショック性の評価に優れる。すなわち、アミン変性のPPS樹脂のみが耐ヒートショック性の向上に寄与したことが分かる。
一方、変性量は同じで、アミン変性のPPS樹脂を用いたか、又はカルボン酸変性のPPS樹脂を用いたかにおいてのみ異なる実施例5と比較例4とを比較すると、アミン変性のPPS樹脂を用いた実施例5は耐ヒートショック性が大きく向上した一方で、カルボン酸変性のPPS樹脂を用いた比較例4は、耐ヒートショック性の向上がほとんどみられなかった。このことからも、アミン変性のPPS樹脂のみが耐ヒートショック性の向上に寄与したことが分かる。
また、比較例2で用いたカルボン酸変性のPPS樹脂のカルボン酸変性量は、比較例4で用いたカルボン酸変性のPPS樹脂の4倍にまで増量されているにもかかわらず、耐ヒートショック性の向上効果は非常に低く、4分の1の変性量であるアミン変性のPPS樹脂を用いた実施例5にすら及ばない。
また、実施例6〜9の耐ヒートショック性は、それぞれ比較例6〜9の耐ヒートショック性を1.00とした場合、1.29〜1.33倍であり、他の実施例の方が、アミン変性のPPS樹脂を用いたことによる耐ヒートショック性向上効果に優れる。実施例6〜9は、他の実施例と比較して無機フィラーの含有比率が大きく、その分アミン変性のPPS樹脂の含有比率が小さくなる。そのため、アミン変性のPPS樹脂による耐ヒートショック性向上の寄与率が減少したものと推察される。
さらに、実施例6〜9において、アミン変性のPPS樹脂に代え、カルボン酸変性のPPS樹脂を用いた場合、実施例1と比較例2との関係及び実施例5と比較例4との関係と同様に、耐ヒートショック性向上効果が更に低下すると推察される。
なお、実施例5と実施例2〜4において、アミノ基による変性量は実施例2〜4の方が大きく、耐ヒートショック性の評価は実施例5と実施例2〜4とで同等である。これは実施例5の変性量でオレフィン共重合体中のエラストマーが全て反応したためと推定され、実施例2〜4におけるエラストマー添加量においては、これ以上の変性量では効果が薄れたためであると考えられる。
1 試験片
10 樹脂部材
11 インサート部材
100 成形品

Claims (8)

  1. 末端にアミノ基を5〜100mmol/kg有する変性ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部と、
    α−オレフィン由来の構成単位及びα,β−不飽和酸のグリシジルエステル由来の構成単位を含有するオレフィン系共重合体1.0〜45.0質量部と、
    を含むポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  2. さらに、無機フィラー5.5〜250質量部を含む請求項1に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  3. 前記無機フィラーが、繊維状無機フィラーである請求項2に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  4. 前記無機フィラーが、繊維状無機フィラーと、板状無機フィラー及び/又は粉粒状無機フィラーとの組合せからなる請求項2に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  5. 前記オレフィン系共重合体が、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位をさらに含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法であって、
    ポリアリーレンスルフィド樹脂の重合に際し、アミノ基を有するチオール化合物を添加して末端にアミノ基を5〜100mmol/kg有する変性ポリアリーレンスルフィド樹脂を得る工程、及び
    前記変性ポリアリーレンスルフィド樹脂と、α−オレフィン由来の構成単位及びα,β−不飽和酸のグリシジルエステル由来の構成単位を含有するオレフィン系共重合体とを少なくとも溶融混練する工程を含むポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
  7. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法であって、
    ポリアリーレンスルフィド樹脂と、α−オレフィン由来の構成単位及びα,β−不飽和酸のグリシジルエステル由来の構成単位を含有するオレフィン系共重合体と、アミノ基を有するチオール化合物とを少なくとも溶融混練する工程を含み、
    前記工程において、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂を、前記アミノ基を有するチオール化合物により、末端にアミノ基を5〜100mmol/kg有する変性ポリアリーレンスルフィド樹脂とするポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
  8. 前記アミノ基を有するチオール化合物が、芳香族基にアミノ基とメルカプト基とが少なくとも結合した化合物である請求項6又は7に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
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