JP3779336B2 - 官能基含有ポリアリーレンスルフィドの製造法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ポリアリーレンスルフィド(以下、PASと略すことがある)の製造法に関し、更に詳しくはアミノ基を有する高分子量のPASを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、PASに官能基を導入する方法としては、無水マレイン酸等と溶融混練する方法が知られている(特開平1‐213360号、特開平1‐230667号、特開平1‐259060号、特開平1‐266160号、特開平2‐169667号、特開平2‐182726号、特開平2‐208363号、特開平2‐214774号及び特開平2‐283763号公報)。しかし、上記方法では、PAS中に導入し得る官能基量は高々0.01重量%程度であり、PASを十分に官能基化することはできなかった。従って、該PASではポリマーアロイの相溶性や塗装性を十分に改善することができなかった。かかる欠点を改善すべく、ラジカル重合触媒の存在下、PASと無水マレイン酸等を反応させる方法が知られている(特開平4‐309513号公報)。しかし、該方法においても、無水マレイン酸等の反応率の増加は小さく、PASを官能基化するには十分ではなかった。また、未反応の無水マレイン酸等の除去に多大な付帯設備と技術と費用が必要であるという欠点があった。
【0003】
PASに官能基を導入する他の方法として、アミノ基、水酸基、カルボキシル基等の官能基を有するポリハロ芳香族化合物を反応系に存在させて共重合する方法(特公昭45‐3368号、特開昭48‐16078号、特開昭62‐95320号及び特開昭62‐185717号公報)が知られている。しかし、これら化合物の反応性は低く、PASを十分に官能基化することはできず、また反応後スラリー中に大量の未反応モノマーが残存し、上記同様、その除去に多大な付帯設備と技術と費用が必要であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、アミノ基により十分に官能基化された高分子量PASを、経済的に有利にかつ簡便に製造する方法を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題を解決し、アミノ基により十分に官能基化されたPASを製造すべく、重合メカニズムをつぶさに吟味した。その結果、アルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物との反応に先立って、予めアルカリ金属硫化物とアミノ基含有ハロ置換芳香族化合物とを混合加熱することにより、アミノ基により十分に官能基化されたPASを製造することができることを見出し、本発明に到達した。
【0006】
即ち、本発明は、有機アミド系溶媒中でアルカリ金属硫化物及びジハロ芳香族化合物を反応させてポリアリーレンスルフィドを製造する方法において、アルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物との反応に先立って、予めアルカリ金属硫化物とアミノ基含有ハロ置換芳香族化合物とを混合加熱することを特徴とするアミノ基含有ポリアリーレンスルフィドの製造法である。
【0007】
本質的に反応性の低いアミノ基含有ハロ置換芳香族化合物においても、大幅にその反応率を向上させることができ、アミノ基により十分にPASを官能基化することができる。従って、重合終了時に殆ど未反応モノマーはなく、この分離回収処理が不要であり、経済性にも優れている。このようにアミノ基含有ハロ置換芳香族化合物の反応率を大幅に向上することができるのは、予めアルカリ金属硫化物とアミノ基含有ハロ置換芳香族化合物とを混合加熱することによって、反応の律速となっているアミノ基含有ハロ置換芳香族化合物のハロゲン原子の置換を容易に生ぜしめることができるためと考えられる。従来法のようにアルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物及びアミノ基含有ハロ置換芳香族化合物を同時に重合系に存在させた場合には、これらの競争反応となる。アミノ基含有ハロ置換芳香族化合物の反応性が低いので、いかに反応条件をコントロールしてもアミノ基含有ハロ置換芳香族化合物の反応率を増加することはできない。
【0008】
本発明のアルカリ金属硫化物とアミノ基含有ハロ置換芳香族化合物との混合加熱にあたって、該アミノ基含有ハロ置換芳香族化合物は、アルカリ金属硫化物に対して好ましくは0.01〜8モル%、特に好ましくは0.05〜5モル%の量で使用される。0.01モル%未満では、十分な量のアミノ基をPASに導入することができず、相溶性改善等のアミノ基導入による効果が十分に発揮できない。8モル%を超えては、生成したPASが解重合を起す可能性があり好ましくない。また、溶融時の増粘が著しく、そのため、成形時にゲル状物が発生し、また成形性が極めて悪くなる。また、アミノ基含有ハロ置換芳香族化合物を上記量のアルカリ金属硫化物の存在下で混合加熱しても、PASの解重合あるいは分子量低下の傾向は全く見られない。
【0009】
アルカリ金属硫化物とアミノ基含有ハロ置換芳香族化合物との混合攪拌は、好ましくは200〜300℃、より好ましくは200〜250℃の温度で、好ましくは0.1〜30時間、より好ましくは1〜15時間行われる。温度が200℃未満では、十分な量のアミノ基をPASに導入することができず、相溶性改善等のアミノ基導入による効果が十分に発揮できないことがある。300℃を超えては、溶媒の劣化を招き、その後の重合に悪影響を与える。また、混合攪拌時間が0.1時間未満では、十分な量のアミノ基をPASに導入することができず、30時間を超えては、アミノ基導入量の増加に対する効果が殆どない。
【0010】
本発明で用いられるアミノ基含有ハロ置換芳香族化合物としては、少なくとも一の芳香族環を有し、芳香族環を形成する炭素原子のうち少なくとも一の炭素原子及び/又は芳香族環の側鎖を形成する炭素原子の少なくとも一の炭素原子にアミノ基を有しており、同時に芳香族環を形成する炭素原子のうち少なくとも二の炭素原子にハロゲン原子が結合している芳香族化合物を使用することができる。ここで芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等を挙げることができる。これらのうちベンゼン環が好ましい。
【0011】
アミノ基含有ハロ置換芳香族化合物が2個以上の芳香族環を有する場合には、それらの芳香族環は、直接単結合で結合していてもよく、二価の基を介在して結合していてもよい。該二価の基としては、例えば酸素原子、硫黄原子、スルフィニル基、スルホニル基、カルボニル基、オキシアルキレン基、カルボニルアルキレン基、及びポリメチレン基等の二価の炭化水素残基等を挙げることができる。
【0012】
アミノ基含有ハロ置換芳香族化合物のハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子が好ましく、塩素原子が特に好ましい。
【0013】
アミノ基含有ハロ置換芳香族化合物としては、特開昭62‐95320号又は特開昭62‐185717号公報に記載されているものを使用できる。アミノ基含有ハロ置換芳香族化合物としては、例えば2,5‐ジクロロアニリン、2,6‐ジクロロアニリン、2,4‐ジクロロアニリン、2,3‐ジクロロアニリン、2,4‐ジブロモアニリン、2,2´‐ジアミノ‐4,4´‐ジクロロジフェニルエーテル、2,4´‐ジアミノ‐2´,4‐ジクロロジフェニルエーテル、2,2´‐ジアミノ‐4,4´‐ジクロロジフェニルチオエーテル、2,4´‐ジアミノ‐2´,4‐ジクロロジフェニルチオエーテル、2,2´‐ジアミノ‐4,4´‐ジクロロジフェニルスルホキシド、2,4´‐ジアミノ‐2´,4‐ジクロロジフェニルスルホキシド、2,2´‐ジアミノ‐4,4´‐ジクロロジフェニルメタン、2,4´‐ジアミノ‐2´,4‐ジクロロジフェニルメタン、2,5‐ジクロロ‐4´‐アミノジフェニルエーテル、2,5‐ジブロモ‐4´‐アミノジフェニルエーテル、2,5‐ジクロロ‐4´‐アミノジフェニルチオエーテル、2,5‐ジブロモ‐4´‐アミノジフェニルチオエーテル、2,5‐ジクロロ‐4´‐アミノジフェニルスルホキシド、2,5‐ジブロモ‐4´‐アミノジフェニルスルホキシド、2,5‐ジクロロ‐4´‐アミノジフェニルメタン、2,5‐ジブロモ‐4´‐アミノジフェニルメタン等のジハロ芳香族化合物及び2,3,4‐トリクロロアニリン、2,3,5‐トリクロロアニリン、2,3,6‐トリクロロアニリン、2,4,5‐トリクロロアニリン、2,4,6‐トリクロロアニリン、3,4,5‐トリクロロアニリン、2,3,4‐トリブロモアニリン、2,3,5‐トリブロモアニリン、2,3,6‐トリブロモアニリン、2,4,5‐トリブロモアニリン、2,4,6‐トリブロモアニリン、3,4,5‐トリブロモアニリン、2,5‐ジクロロ‐4‐ブロモアニリン、2,2´‐ジアミノ‐3,4,4´‐トリクロロジフェニルエーテル、2,4´‐ジアミノ‐2´,5´,4‐トリクロロジフェニルエーテル、2,4,5‐トリクロロ‐4´‐アミノジフェニルエーテル、2,3,4‐トリクロロ‐4´‐アミノジフェニルエーテル、2,4,5‐トリブロモ‐4´‐アミノジフェニルエーテル、2,4,6‐トリブロモ‐4´‐アミノジフェニルエーテル、2,5‐ジクロロ‐6‐ブロモ‐4´‐アミノジフェニルエーテル、2,4,5‐トリクロロ‐2´‐アミノジフェニルエーテル、2,2´‐ジアミノ‐3,4,4´‐トリクロロジフェニルチオエーテル、2,4,5‐トリクロロ‐4´‐アミノチオエーテル、2,2´‐ジアミノ‐4,5,4´‐トリクロロジフェニルスルホキシド、2,4,5‐トリクロロ‐4´‐アミノジフェニルスルホキシド、2,2´‐ジアミノ‐3,4,4´‐トリクロロジフェニルメタン、2,4,5‐トリクロロ‐4´‐アミノジフェニルメタン、2,4,4´‐トリクロロ‐2´‐アミノジフェニルプロパン、3,4,4´‐トリクロロ‐3´‐アミノビフェニル等のトリハロ芳香族化合物及び2,3,4,5‐テトラクロロアニリン、2,3,5,6‐テトラクロロアニリン、テトラクロロアミノジフェニルエーテル、テトラクロロアミノジフェニルチオエーテル等のポリハロ芳香族化合物が挙げられる。
【0014】
本発明で用いられるアルカリ金属硫化物は公知であり、たとえば、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム及びこれらの混合物である。これらの水和物及び水溶液であっても良い。又、これらにそれぞれ対応する水硫化物及び水和物を、それぞれに対応する水酸化物で中和して用いることができる。安価な硫化ナトリウムが好ましい。
【0015】
アルカリ金属硫化物とアミノ基含有ハロ置換芳香族化合物との混合加熱は、重合溶媒である有機アミド系溶媒中で行うのが好ましい。有機アミド系溶媒は、PAS重合のために知られており、たとえばN‐メチルピロリドン(NMP)、N,N‐ジメチルホルムアミド、N,N‐ジメチルアセトアミド、N‐メチルカプロラクタム等、及びこれらの混合物を使用でき、NMPが好ましい。これらは全て、水よりも低い蒸気圧を持つ。
【0016】
アルカリ金属硫化物とアミノ基含有ハロ置換芳香族化合物との混合加熱に続いて、ジハロ芳香族化合物との反応を行う。ジハロ芳香族化合物は、たとえば特公昭45‐3368号公報記載のものから選ぶことができるが、好ましくはp‐ジクロロベンゼンである。又、少量(20モル%以下)のジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン又はビフェニルのパラ、メタ又はオルトジハロ物を1種類以上用いて共重合体を得ることができる。例えば、m‐ジクロロベンゼン、o‐ジクロロベンゼン、p,p´‐ジクロロジフェニルエーテル、m,p´‐ジクロロジフェニルエーテル、m,m´‐ジクロロジフェニルエーテル、p,p´‐ジクロロジフェニルスルホン、m,p´‐ジクロロジフェニルスルホン、m,m´‐ジクロロジフェニルスルホン、p,p´‐ジクロロビフェニル、m,p´‐ジクロロビフェニル、m,m´‐ジクロロビフェニルである。
【0017】
アルカリ金属硫化物とアミノ基含有ハロ置換芳香族化合物との混合加熱に次いで行われるアルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物との反応自体は、公知の通りに行うことができる。また、該反応の際に、反応缶の気相部分を冷却することにより反応缶内の気相の一部を凝縮させ、これを液相に還流せしめることが好ましい。これにより、生成したPASの解重合を回避できると共に、一層高分子量のPASを製造することが可能となる。
【0018】
還流される液体は、水とアミド系溶媒の蒸気圧差の故に、液相バルクに比較して水含有率が高い。この水含有率の高い還流液は、反応溶液上部に水含有率の高い層を形成する。その結果、残存のアルカリ金属硫化物(たとえばNa2 S)、ハロゲン化アルカリ金属(たとえばNaCl)、オリゴマー等が、その層に多く含有されるようになる。反応缶の気相部分の冷却を行わないPAS製造法においては230℃以上の高温下で、生成したPASとNa2 S等の原料及び副生成物とが均一に混じりあった状態では、高分子量のPASが得られないばかりでなく、せっかく生成したPASの解重合も生じ、チオフェノールの副生成が認められる。しかし、本発明では、反応缶の気相部分を積極的に冷却して、水分に富む還流液を多量に液相上部に戻してやることによって上記の不都合な現象が回避でき、反応を阻害するような因子を真に効率良く除外でき、高分子量PASを得ることができるものと思われる。但し、本発明は上記現象による効果のみにより限定されるものではなく、気相部分を冷却することによって生じる種々の影響によって、高分子量のPASが得られるのである。
【0019】
反応缶の気相部分の冷却は、外部冷却でも内部冷却でも可能であり、自体公知の冷却手段により行える。たとえば、反応缶内の上部に設置した内部コイルに冷媒体を流す方法、反応缶外部の上部に巻きつけた外部コイルまたはジャケットに冷媒体を流す方法、反応缶上部に設置したリフラックスコンデンサーを用いる方法、反応缶外部の上部に水をかける又は気体(空気、窒素等)を吹き付ける等の方法が考えられるが、結果的に缶内の還流量を増大させる効果があるものならば、いずれの方法を用いても良い。外気温度が比較的低いなら(たとえば常温)、反応缶上部に従来備えられている保温材を取外すことによって、適切な冷却を行うことも可能である。外部冷却の場合、反応缶壁面で凝縮した水/アミド系溶媒混合物は反応缶壁を伝わって液相中に入る。従って、該水分に富む混合物は、液相上部に溜り、そこの水分量を比較的高く保つ。内部冷却の場合には、冷却面で凝縮した混合物が同様に冷却装置表面又は反応缶壁を伝わって液相中に入る。
【0020】
一方、液相バルクの温度は、上記の反応缶の気相部分の冷却の有無にかかわらず、所定の一定温度に保たれ、あるいは所定の温度プロフィールに従ってコントロールされる。一定温度とする場合、230〜275℃の温度で0.1〜20時間反応を行うことが好ましい。より好ましくは、240〜265℃の温度で1〜6時間である。より高い分子量のPASを得るには、2段階以上の反応温度プロフィールを用いることが好ましい。第1段階は195〜240℃の温度で行うことが好ましい。温度が低いと反応速度が小さすぎ、実用的ではない。240℃より高いと反応速度が速すぎて、十分に高分子量なPASが得られないのみならず、副反応速度が著しく増大する。第1段階の終了は、重合反応系内ジハロ芳香族化合物残存率が1モル%〜40モル%、且つ分子量が3,000〜20,000の範囲内の時点で行うことが好ましい。より好ましくは、重合反応系内ジハロ芳香族化合物残存率が2モル%〜15モル%、且つ分子量が5,000〜15,000の範囲である。残存率が40モル%を越えると、第2段階の反応で解重合など副反応が生じやすく、一方、1モル%未満では、最終的に高分子量PASを得難い。その後昇温して、最終段階の反応は、反応温度240〜270℃の範囲で、1時間〜10時間行うことが好ましい。温度が低いと十分に高分子量化したPASを得ることができず、又270℃より高い温度では解重合等の副反応が生じやすくなり、安定的に高分子量物を得難くなる。
【0021】
実際の操作としては、先ず不活性ガス雰囲気下で、アミド系溶媒中のアルカリ金属硫化物中の水分量が所定の量となるよう、必要に応じて脱水又は水添加することによって、反応系内の総体的水分量を、好ましくは、アルカリ金属硫化物1モル当り1.7モル未満、特に0.8〜1.2モルとする。
【0022】
1.7モル以上では副反応の発生が著しくなり、系内水分量の増加と共に反応生成物中のフェノール等の副生成物量が増大する。また重合度も上がらない。0.8モル未満では、反応速度が速すぎ、十分な高分子量の物を得ることができない。
【0023】
反応時の気相部分の冷却は、一定温度での1段反応の場合では、反応開始時から行うことが望ましいが、少なくとも250℃以下の昇温途中から行わなければならない。多段階反応では、第1段階の反応から冷却を行うことが望ましいが、遅くとも第1段階反応の終了後の昇温途中から行うことが好ましい。冷却効果の度合いは、通常反応缶内圧力が最も適した指標である。圧力の絶対値については、反応缶の特性、攪拌状態、系内水分量、ジハロ芳香族化合物とアルカリ金属硫化物とのモル比等によって異なる。しかし、同一反応条件下で冷却しない場合に比べて、反応缶圧力が低下すれば、還流量が増加して、反応溶液気液界面における温度が低下していることを意味しており、その相対的な低下の度合いが水分含有量の多い層と、そうでない層との分離の度合いを示していると考えられる。そこで、冷却は反応缶内圧が、冷却をしない場合と比較して低くなる程度に行わなければならない。冷却の程度は、都度の使用する装置、運転条件などに応じて、当業者が適宜設定できる。
【0024】
上記本発明の方法によれば、本質的に反応性の低いアミノ基含有ハロ置換芳香族化合物においても、大幅にその反応率を向上させることができ、十分にPASをアミノ基により官能基化することができる。
【0025】
こうして得られた官能基化された高分子量PASは、当業者にとって公知の後処理法によって副生成物から分離され、乾燥される。それは、ポリマーアロイ用の相溶化剤として、あるいはPASにブレンドして接着性、塗装性に優れた樹脂製造のために最適な性状を有する。
【0026】
アルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物との反応に際して、PASの分子量をより大きくするために、例えば1,3,5‐トリクロロベンゼン、1,2,4‐トリクロロベンゼン等のポリハロ化合物をアルカリ金属硫化物に対して好ましくは0.005〜1.5モル%、特に好ましくは0.02〜0.75モル%の量で使用することもできる。
【0027】
また、他の少量添加物として、末端停止剤、修飾剤としてのモノハロ化物を併用することもできる。
【0028】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0029】
【実施例】
実施例及び比較例において、溶融粘度V6は、島津製作所製フローテスターCFT‐500Cを用いて300℃、荷重20kgf/cm2 、L/D=10で6分間保持した後に測定した粘度(ポイズ)である。
【0030】
2,5‐ジクロロアニリン(以下ではDCAと略すことがある)又は2,5‐ジクロロ安息香酸(以下ではDCBAと略すことがある)の反応率、及び生成したPPS中のアミノ基又はカルボキシル基重量はガスクロマトグラフィーによる測定結果から算出した。ここで、DCA及びDCBAの反応率は下記式により求めた。
【0031】
【実施例1】
150リットルオートクレーブに、フレーク状硫化ソーダ(60.253重量%Na2 S)19.253kgとN‐メチル‐2‐ピロリドン(以下ではNMPと略すことがある)45.0kgを仕込んだ。窒素気流下攪拌しながら206.5℃まで昇温して、水4.58kgを留出させた(残存する水分量は硫化ソーダ1モル当り1.14モル)。その後、オートクレーブを密閉して190℃まで冷却し、DCA0.486kg(硫化ソーダに対して約2.67モル%)とNMP5.63kgを仕込み、液温260℃まで昇温し、攪拌しつつ2時間保持した後、180℃まで降温した。次に、パラジクロロベンゼン(以下ではp‐DCBと略すことがある)21.760kgとNMP18.0kgを仕込み、液温150℃で窒素ガスを用いて1kg/cm2 Gに加圧し、再度昇温を開始した。液温260℃で、3時間保持した後に降温した。
【0032】
得られたスラリーを常法により濾過、温水洗を繰り返し、120℃で4.5時間熱風乾燥機を用いて乾燥し、白色粉末状の製品を得た。
【0033】
DCAの反応率は95.3重量%であり、ポリフェニレンスルフィド(以下ではPPSと略すことがある)中のアミノ基量は2.12重量%であった。また、得られたPPSの溶融粘度V6は8,500ポイズであった。
【0034】
【比較例1】
DCAに代えて、DCBA(硫化ソーダに対して約2.67モル%)を用いた以外は、実施例1と同一にして行った。
【0035】
DCBAの反応率は87.9重量%であり、PPS中のカルボキシル基は2.63重量%であった。また、得られたPPSの溶融粘度V6は1,500ポイズであった。
【0036】
【実施例2】
150リットルオートクレーブに、フレーク状硫化ソーダ(60.8重量%Na2 S)19.253kgとNMP45.0kgを仕込んだ。窒素気流下攪拌しながら204℃まで昇温して、水4.51kgを留出させた(残存する水分量は硫化ソーダ1モル当り1.12モル)。その後、オートクレーブを密閉して190℃まで冷却し、DCA0.972kg(硫化ソーダに対して約5.33モル%)とNMP5.63kgを仕込み、液温230℃まで昇温し、攪拌しつつ3時間保持した後、180℃まで冷却した。次に、p‐DCB21.763kgとNMP18.0kgを仕込み液温150℃で窒素ガスを用いて1kg/cm2 Gに加圧し、再度昇温を開始した。液温220℃で3時間攪拌しつつ、オートクレーブ上部の外側に巻き付けたコイルに80℃の冷媒を流し気相を冷却した。その後昇温して、液温260℃で3時間攪拌し、次に降温させると共にオートクレーブ上部の冷却を止めた。オートクレーブ上部を冷却中、液温が下がらないように一定に保持した。反応中の最高圧力は、9.12kg/cm2 Gであった。
【0037】
得られたスラリーを常法により濾過、温水洗を繰り返し、120℃で4.5時間熱風乾燥機を用いて乾燥し、白色粉末状の製品を得た。
【0038】
DCAの反応率は80.5重量%であり、PPS中のアミノ基は3.58重量%であった。また、得られたPPSの溶融粘度V6は15,400ポイズであった。
【0039】
【比較例2】
150リットルオートクレーブに、フレーク状硫化ソーダ(60.8重量%Na2 S)19.253kgとNMP45.0kgを仕込んだ。窒素気流下攪拌しながら204℃まで昇温して、水4.26kgを留出させた(残存する水分量は硫化ソーダ1モル当り1.22モル)。その後、オートクレーブを密閉して190℃まで冷却し、p‐DCB21.745kg、DCA0.481kg(硫化ソーダに対して約2.67モル%)とNMP18.0kgを同時に仕込み、液温150℃で窒素ガスを用いて1kg/cm2 Gに加圧して、再度昇温を開始した。液温260℃で、攪拌しつつ3時間保持した後に降温した。
【0040】
得られたスラリーを常法により濾過、温水洗を繰り返し、120℃で4.5時間熱風乾燥機を用いて乾燥し、白色粉末状の製品を得た。
【0041】
DCAの反応率は28.1重量%であり、PPS中のアミノ基は0.56重量%であった。また、得られたPPSの溶融粘度V6は2,500ポイズであった。
【0042】
【比較例3】
液温260℃で、攪拌しつつ6時間保持し反応した以外は、比較例2と同一にして実施した。
【0043】
DCAの反応率は29.5重量%であり、PPS中のアミノ基は0.66重量%であった。また、得られたPPSの溶融粘度V6は2,800ポイズであった。
【0044】
以上の結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
実施例1は、硫化ソーダとp‐DCBとの反応に先立って予め硫化ソーダをDCAと混合しなかった比較例2及び3と比べて、DCA反応率は著しく高く、生成したPPS中のアミノ基量も多く、かつ溶融粘度も高かった。従って、よりアミノ基で官能基化された、より高分子量のPPSが得られたことが分かった。比較例3は、硫化ソーダとp‐DCBとの反応時間を、比較例2及び実施例1よりも長くした場合であるが、実施例1のように高いDCA反応率を得ることはできなかった。つまり、硫化ソーダとp‐DCBとの反応時間を長くしても、硫化ソーダとp‐DCBとの反応に先立って予め硫化ソーダをDCAと混合しなければ、DCA反応率を向上させることはできないことが分かった。比較例1は、DCAに代えてDCBAを使用した場合である。実施例1に比べて溶融粘度V6が著しく低かった。実施例2は、DCA仕込量を増加し、かつ硫化ソーダとp‐DCBとの反応中、オートクレーブの気相部分を冷却したものである。生成したPPS中のアミノ基量は増加し、かつPPSの溶融粘度が著しく上昇し、更に高分子量のPPSが得られたことが分かった。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、十分に官能基化された高分子量PASを、経済的に有利にかつ簡便に製造することができる。本発明により得られたPASは、十分に官能基化されているため、他の樹脂との相溶性や金属等の無機基材との接着性に優れており、ポリマーアロイ用の相溶化剤として、あるいは接着性、塗装性に優れた樹脂製造用として、工業的に極めて有用である。
Claims (4)
- 有機アミド系溶媒中でアルカリ金属硫化物及びジハロ芳香族化合物を反応させてポリアリーレンスルフィドを製造する方法において、アルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物との反応に先立って、予めアルカリ金属硫化物とアミノ基含有ハロ置換芳香族化合物とを混合加熱することを特徴とするアミノ基含有ポリアリーレンスルフィドの製造法。
- アミノ基含有ハロ置換芳香族化合物を、アルカリ金属硫化物に対して0.01〜8モル%の量で混合する請求項1記載の方法。
- 混合加熱を200〜300℃で0.1〜30時間行う請求項1又は2記載の方法。
- アルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物との反応時に、反応缶の気相部分を冷却することにより反応缶内の気相の一部を凝縮させ、これを液相に還流せしめる請求項1〜3のいずれか一に記載の方法。
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