JP2021124518A - トナー、及び二成分現像剤 - Google Patents

トナー、及び二成分現像剤 Download PDF

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Abstract

【課題】 優れた離型性持つトナーの提供。【解決手段】 重合体A、重合体B、及び炭化水素ワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、前記重合体Aは、式(4)で示されるモノマーユニットX1を有するビニル系ポリマー部位Aを有し、前記重合体Bは、式(1)で示されるモノマーユニットY1、並びに式(2)で示されるモノマーユニット及び式(3)で示されるモノマーユニットからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーユニットY2、を有するビニル系ポリマー部位Bを有することを特徴とするトナー。【選択図】 なし

Description

本発明は、電子写真方式の画像形成装置に用いられるトナーに関する。
近年、電子写真方式の画像形成装置に対する省エネルギー対応への要求が高まっている。省エネルギーへの対応策として、定着工程での消費電力を低下させるために、トナーを低い温度で定着させる技術が検討されている。
トナーの低温定着性を向上させるために、トナーの結着樹脂のガラス転移点を下げる手法が挙げられる。しかしながら、ガラス転移点を低下させることはトナーの耐熱保存性を低下させることにつながるため、この手法では、トナーの低温定着性と耐熱保存性を両立させることは難しい。
そこで、トナーの低温定着性と耐熱保存性を両立させるために、結着樹脂として結晶性の樹脂を使用する方法が検討されている。トナー用の結着樹脂として一般的に用いられる非晶性の樹脂は、示差走査熱量計(DSC)測定において明確な吸熱ピークを示さない。一方、結晶性の樹脂は、DSC測定において吸熱ピークを示す。結晶性の樹脂は、分子内の側鎖が規則的に配列することにより、融点まではほとんど軟化しないといった性質を有する。このような性質を持つことから、結晶性の樹脂は、融点を境に結晶が急激に融解(シャープメルト)し、それに伴った急激な粘度の低下が起こる。
このため、シャープメルト性に優れ、低温定着性と耐熱保存性を両立する材料として、結晶性の樹脂が注目されている。結晶性の樹脂の一種として、結晶性のビニル樹脂が知られている。結晶性のビニル樹脂は、長鎖アルキル基を有するモノマーユニットを有するビニル重合体である。つまり、結晶性のビニル樹脂は、主鎖骨格と、側鎖としての長鎖アルキル基と、を有している。そして、側鎖の長鎖アルキル基同士が結晶化することで、樹脂として結晶性を示す。
特許文献1では、長鎖アルキル基を有する重合性単量体(モノマー)と、非晶性の重合性単量体(モノマー)と、を共重合させて得られた結晶性のビニル樹脂をコアに使用したトナーが提案されている。それにより、低温定着性と耐熱保存性の両立が図られるとしている。また、トナーへの離型性付与のために、トナーに離型剤を含有させてもよい旨の記載がある。
特開2014−130243号公報
しかしながら、本発明者らの検討の結果、長鎖アルキル基を有するモノマーユニットを有する重合体を含有させたトナー粒子に、さらに離型剤として炭化水素ワックスを含有させた構成のトナーであると、トナーの離型性が十分に発揮されないことが分かった。具体的には、トナーの離型性が十分に発揮されず、高印字率の印刷を行うと、転写材(紙など)の定着器への巻きつきや、高温オフセットが起こりやすいことが分かった。また、これらの課題は、該重合体が結晶性樹脂か非晶性樹脂かに関わらず、長鎖アルキル基を有するモノマーユニットを有することで起こりうることが分かった。これらの課題が起こる理由は、該重合体の長鎖アルキル基の部分は疎水性が高く、同じく疎水性が高い炭化水素ワックスと相溶することで、定着時にトナーから炭化水素ワックスが十分に染み出さず、離型性を十分に発揮できないためであると推察される。
本発明は、離型性に優れたトナーを提供することにある。
本発明は、重合体A、重合体B、及び炭化水素ワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、
前記重合体Aは、
下記式(4)で示されるモノマーユニットX1を有するビニル系ポリマー部位Aを有し、
前記重合体Bは、
下記式(1)で示されるモノマーユニットY1と、
下記式(2)で示されるモノマーユニット及び下記式(3)で示されるモノマーユニットからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーユニットY2と、
を有するビニル系ポリマー部位Bを有することを特徴とするトナーである。
Figure 2021124518

(式(1)中、RはH又はCHを示す。式(2)中、RはH又はCHを示し、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示す。式(3)中、RはH又はCHを示し、RはH又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。式(4)中、R16はH又はCHを示し、R17は炭素数18〜36のアルキル基を示す。)
本発明によれば、離型性に優れたトナーを提供できる。
熱処理装置の概略図である。
本発明において、数値範囲を示す「XX以上YY以下」や「XX〜YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限(XX)及び上限(YY)を含む数値範囲を意味する。
(メタ)アクリル酸・・・とは、アクリル酸・・・及び/又はメタクリル酸・・・を意味する。
数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
モノマーユニットとは、ポリマー(重合体)を構成するユニット(単位)であり、モノマー(重合性単量体)の反応した形態をいう。例えば、ポリマー中のビニル系モノマーが重合した主鎖中の炭素−炭素結合1区間を1モノマーユニットとする。ビニル系モノマーは、下記式(Z)で示すことができ、ビニル系モノマーユニットは、重合体の構成単位であり、下記式(Z)で示されるモノマーが反応した形態である。また、モノマーユニットを、単に「ユニット」と表記する場合もある。
Figure 2021124518

(式(Z)中、RZ1は、水素原子、又はアルキル基(好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基)を示し、RZ2は、任意の置換基を示す。)
ポリマー部位とは、重合体の全部又は一部である。
ビニル系ポリマー部位とは、上記ビニル系モノマーユニットで構成されているポリマー部位を意味する。
結晶性樹脂とは、樹脂、トナー粒子、又はトナーを測定試料とする示差走査熱量計(DSC)測定において、明確な吸熱ピークを示す樹脂を指す。
本発明のトナーは、
重合体A、重合体B、及び炭化水素ワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、
前記重合体Aは、
下記式(4)で示されるモノマーユニットX1を有するビニル系ポリマー部位Aを有し、
前記重合体Bは、
下記式(1)で示されるモノマーユニットY1と、
下記式(2)で示されるモノマーユニット及び下記式(3)で示されるモノマーユニットからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーユニットY2と、
を有するビニル系ポリマー部位Bを有するトナーである。
Figure 2021124518

(式(1)中、RはH又はCHを示す。式(2)中、RはH又はCHを示し、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示す。式(3)中、RはH又はCHを示し、RはH又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。式(4)中、R16はH又はCHを示し、R17は炭素数18〜36のアルキル基を示す。)
まず、前記した課題が生じる理由について、本発明者らは以下のように推測している。
すなわち、重合体Aは、炭素数18〜36のアルキル基(長鎖アルキル基)を有する上記モノマーユニットX1を有するビニル系ポリマー部位Aを有する重合体である。炭化水素ワックスの長鎖アルカンの部分は、重合体Aの長鎖アルキル基の部分に入り込むことで、重合体Aと相溶しやすいと考えられる。トナー粒子中で重合体Aと相溶した炭化水素ワックスは、定着時にトナーから染み出しにくいと考えられ、そのため、離型性を十分に発揮できないと推測している。
そして、本発明者らは、上記推測に基づき、重合体Aの長鎖アルキル基の部分と炭化水素ワックスとの相溶を阻害することができれば、離型性を改善することができると考えた。そこで、本発明者らは、重合体A及び炭化水素ワックスの双方に作用することで、重合体Aと炭化水素ワックスとの相溶を低減できる特性を備えた化合物を得るべく検討した結果、上記モノマーユニットY2を有するビニル系ポリマー部位Bを有する重合体(以下、重合体Bとする。)が、上記の特性を備えていること、そして、前記した課題を解決できることを本発明者らは見出した。
また、本発明者らの検討によれば、重合体Bの添加は、炭化水素ワックスと重合体Aとの併用によるトナーの耐熱保存性の低下をも抑制し得ることを見出した。この耐熱保存性の低下は、炭化水素ワックスが重合体Aの長鎖アルキル基の部分との相溶により、トナー粒子における、重合体Aの長鎖アルキル基に由来する結晶構造が乱されることに起因するものと推測される。しかしながら、重合体Bは、炭化水素ワックスと重合体Aの長鎖アルキル基の部分との相溶を阻害するため、重合体Aの長鎖アルキル基に由来する結晶構造が乱されにくく、その結果、トナーの耐熱保存性の低下が抑制されるものと考えられる。
重合体Aは、長鎖アルキル基を有するモノマーユニットX1を有するビニル系ポリマー部位Aを有する。そのため、長鎖アルキル基がビニル系ポリマー部位Aの側鎖に存在する構造をとっている。ビニル系ポリマー部位Aの側鎖に存在する長鎖アルキル基は、隣接又は近傍して存在する同じ主鎖上の長鎖アルキル基や、近接して存在する異なる主鎖上の長鎖アルキル基と相互作用すると、結晶部を形成することが可能である。炭化水素ワックスの炭素鎖(長鎖アルカン)は、構造が似ている重合体Aの長鎖アルキル基と相互作用することで、重合体Aと相溶すると考えられる。
一方、本発明に係る重合体Bは、
上記式(1)で示されるモノマーユニットY1、並びに
上記式(2)で示されるモノマーユニット及び上記式(3)で示されるモノマーユニットからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーユニットY2と、
を有するビニル系ポリマー部位Bを有する。
モノマーユニットY1は、炭素原子及び水素原子のみからなる構造であるため、極性が低く、重合体Aや炭化水素ワックスと相互作用しやすい。
そのため、炭化水素ワックスは、重合体Aだけでなく、重合体Bとも相互作用する。炭化水素ワックスは、重合体Bと相互作用した分、重合体Aの長鎖アルキル基との相互作用が減り、重合体Aとの相溶が抑えられる。
一方、モノマーユニットY2は、エステル構造を有するため、炭化水素ワックスの炭素鎖(長鎖アルカン)と比較して極性が高く、炭化水素ワックスと相互作用しづらい。そのため、炭化水素ワックスと重合体Bの間の相互作用は、炭化水素ワックスのトナーからの染み出しやすさに悪影響を与えるほど大きくならない。そのため、重合体Bと相互作用している炭化水素ワックスは、定着時にトナーから十分に染み出すことができ、十分な離形性を発揮できる。
上記のメカニズムによって、離型性を向上させる効果をもたらしていると本発明者らは推察している。
本発明のトナーは結着樹脂を含有するトナー粒子を有し、該結着樹脂が重合体A及び重合体Bを含有することが好ましい。
また、本発明のトナーは、トナー粒子又はトナーを測定試料とする示差走査熱量計(DSC)測定における昇温時の吸熱曲線において、重合体Aに由来する吸熱ピークを45℃以上80℃以下に持つことが好ましい。好ましくは47℃以上75℃以下である。重合体Aに由来する吸熱ピークが上記範囲内であると、低温定着性と耐熱保存性の両立を図りやすい。
トナー粒子が、重合体A、重合体B、炭化水素ワックスを含有しているかの判断をする際には、一般的な分析手法を用いることができる。例えば、核磁気共鳴法(NMR)、熱分解ガスクロマトグラフィー法、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)、示差走査熱量計(DSC)測定などの手法が適用できる。
重合体Aは、上記式(4)で示されるモノマーユニットX1を有するビニル系ポリマー部位Aを有する。
重合体Aが有するモノマーユニットX1が、ビニル系ポリマー部位Aの側鎖として長鎖アルキル基(炭素数18〜36のアルキル基)を有し、さらに、長鎖アルキル基が重合体Aの分子内や分子間で結晶部を形成することにより、重合体Aの結晶性が高まる。その結果、トナーの低温定着性と耐熱保存性の両立を図りやすい。
トナーの低温定着性と耐熱保存性の両立の観点から、重合体Aは、示差走査熱量計(DSC)測定において明確な吸熱ピークを示す結晶性樹脂であることが好ましい。
モノマーユニットX1は、炭素数18〜36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを重合性単量体として重合(ビニル重合)させることで、ビニル系ポリマー部位Aのモノマーユニットとして組み込むことが可能である。
炭素数18〜36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、炭素数18〜36の直鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ヘンエイコサニル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸リグノセリル、(メタ)アクリル酸セリル、(メタ)アクリル酸オクタコサ、(メタ)アクリル酸ミリシル、(メタ)アクリル酸ドドリアコンタ等]及び炭素数18〜36の分岐のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸2−デシルテトラデシル等]が挙げられる。
これらの内、トナーの保存安定性の観点から、炭素数18〜36の直鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。より好ましくは炭素数18〜30の直鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルである。さらに好ましいのは直鎖の(メタ)アクリル酸ステアリル及び/又は(メタ)アクリル酸ベヘニルである。上記式(4)中、R17は炭素数18〜36のアルキル基であり、より好ましくは炭素数18〜30のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数18及び22のアルキル基である。また、R17は直鎖のアルキル基であることが好ましい。
モノマーユニットX1を形成する重合性単量体(以下、第一の重合性単量体とも言う)及びモノマーユニットX1は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また、ビニル系ポリマー部位Aは、モノマーユニットX1に加え、他のモノマーユニットX2を有することが好ましい。
モノマーユニットX2は、モノマーユニットX2に対応するモノマー(詳細は後述する。)を重合性単量体として重合(ビニル重合)させることで、ビニル系ポリマー部位Aのモノマーユニットとして組み込むことが可能である。
モノマーユニットX1のSP値をSP11(J/cm0.5とし、モノマーユニットX2のSP値をSP21(J/cm0.5としたとき、下記式(A)及び(B)を満足することが好ましい。下記式(A)’及び(B)’を満たすことがさらに好ましい。
3.00≦(SP21−SP11)≦25.00 ・・・(A)
21.00≦SP21 ・・・(B)
3.00≦(SP21−SP11)≦20.00 ・・・(A)’
21.00≦SP21≦40.00 ・・・(B)’
本発明におけるSP値の単位は、(J/m0.5であるが、1(cal/cm0.5=2.045×10(J/m0.5によって(cal/cm0.5の単位に換算することができる。
上記SP値差を満足するモノマーユニットX2を用いることで、重合体Aの結晶性を低下させることなく、融点やその他の物性が制御することができる。それにより、低温定着性と耐熱保存性の両立を図りやすくなるため好ましい。
このメカニズムについて、以下のように推察している。
モノマーユニットX1は、ビニル系ポリマー部位Aに組み込まれ、モノマーユニットX1同士が集合(ブロック化)することで、重合体Aの結晶性が高くなる。しかし、通常の場合、他のモノマーユニットが組み込まれていると結晶化を阻害するため、他のモノマーユニットが組み込まれていない場合と比較して重合体の結晶性が低下する。この傾向は、ビニル系ポリマー部位A中に、モノマーユニットX1と他のモノマーユニットがランダムに組み込まれていると顕著になる。
一方、SP21−SP11が上記式(A)の範囲のモノマーユニットX2を与えるような重合性単量体を使用することで、重合時に第一の重合性単量体とモノマーユニットX2に対応する重合性単量体(以下、第二の重合性単量体とも言う。具体例は後述する。)がランダムに結合するのではなく、第一の重合性単量体同士がある程度連続して結合できると考えられる。
それにより、ビニル系ポリマー部位A中で、モノマーユニットX1同士が集合(ブロック化)しやすくなり、モノマーユニットX2が組み込まれていても優れた結晶性が得られやすくなると考えられる。また、モノマーユニットX2による融点やその他の物性の制御もしやすくなると考えられる。即ち、重合体Aは、モノマーユニットX1を含む結晶性部位を有することが好ましい。また、重合体Aは、モノマーユニットX2を含む非晶性部位を有することが好ましい。
SP21−SP11が3.00以上であれば、重合体Aの結晶性を十分に維持させやすい。また、25.00以下であれば、重合体Aを得る際の共重合性に優れる。そのため、SP21−SP11の下限は、3.00以上であることが好ましい。また上限は、25.00以下であることが好ましく、20.00以下であることがより好ましい。
なお、ビニル系ポリマー部位A中に、上記式(4)で示されるモノマーユニットX1の要件を満たすモノマーユニットが複数種類存在する場合、上記式(A)及び(A)’におけるSP11の値は、それぞれのモノマーユニットのSP値を加重平均した値とする。
例えば、
SP値がSP111のモノマーユニットAをモノマーユニットX1の要件を満たすモノマーユニット全体のモル数を基準としてAモル%含み、
SP値がSP112のモノマーユニットBをモノマーユニットX1の要件を満たすモノマーユニット全体のモル数を基準として(100−A)モル%含む、
場合のSP値(SP11)は、
SP11=(SP111×A+SP112×(100−A))/100
である。モノマーユニットX1の要件を満たすモノマーユニットが3以上含まれる場合も同様に計算する。
また、モノマーユニットX2には、上記方法で算出したSP11に対して上記式(A)を満たし、なおかつ上記式(B)を満たすSP21を有するモノマーユニット全てが該当する。
即ち、第二の重合性単量体が2種類以上の重合性単量体である場合、SP21はそれぞれの重合性単量体に由来するモノマーユニットのSP値を表し、SP21−SP11はそれぞれの第二の重合性単量体に由来するモノマーユニットに対して決定される。
また、モノマーユニットX2の含有割合は、上記条件を満たすモノマーユニット全ての含有割合の和とする。第二の重合性単量体が複数存在する場合も同様である。
トナーの低温定着性と耐熱保存性の両立、及び転写性の観点から、重合体A中のモノマーユニットX1の含有割合が、30.0質量%以上99.9質量%以下であることが好ましい。
重合体A中のモノマーユニットX1の含有割合が、30.0質量%以上であれば、モノマーユニットX1同士の集合(ブロック化)による結晶性部位が得られやすく、重合体Aの結晶性が高まる。そのため、30.0質量%以上が好ましく、40.0質量%以上がより好ましく、45.0質量%以上がより好ましい。反対に、重合体A中のモノマーユニットX1の含有割合が、99.9質量%以下であれば、電荷のリークを抑えやすく、優れた転写性が得られやすい。そのため、99.9質量%以下がより好ましく、85.0質量%以下がより好ましく、75.0質量%以下がさらに好ましい。
また、重合体A中のモノマーユニットX2の含有割合が、1.0質量%以上70.0質量%以下であることが好ましい。
重合体A中のモノマーユニットX2の含有割合が1.0質量%以上であれば、重合体Aの弾性が低下しにくく、トナーの耐久性が低下しにくい。そのため、1.0質量%以上が好ましく、10.0質量%以上がさらに好ましい。また、重合体A中のモノマーユニットX2の含有割合が70.0質量%以下であれば、重合体Aの結晶性が低下しにくく、低温定着性と耐熱保存性の両立を図りやすい。そのため、70.0質量%以下が好ましく、60.0質量%以下がより好ましい。
モノマーユニットX2を形成する第二の重合性単量体としては、例えば以下のうち、上記式(A)及び上記式(B)を満たす重合性単量体を用いることができる。第二の重合性単量体は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
ニトリル基を有する重合性単量体:例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
ヒドロキシ基を有する重合性単量体:例えば、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル等。
アミド基を有する重合性単量体:例えば、アクリルアミド、炭素数1〜30のアミンとエチレン性不飽和結合を有する炭素数2〜30のカルボン酸(アクリル酸及びメタクリル酸等)を公知の方法で反応させた重合性単量体。
ウレタン基を有する重合性単量体:例えば、エチレン性不飽和結合を有する炭素数2〜22のアルコール(メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、ビニルアルコール等)と、炭素数1〜30のイソシアネート[モノイソシアネート化合物(ベンゼンスルフォニルイソシアネート、トシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、p−クロロフェニルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、t−ブチルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、オクチルイソシアネート、2−エチルヘキシルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、アダマンチルイソシアネート、2,6−ジメチルフェニルイソシアネート、3,5−ジメチルフェニルイソシアネート及び2,6−ジプロピルフェニルイソシアネート等)、脂肪族ジイソシアネート化合物(トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート及び2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等)、脂環族ジイソシアネート化合物(1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート及び水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート等)、及び芳香族ジイソシアネート化合物(フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネート等)等]とを公知の方法で反応させた重合性単量体、及び
炭素数1〜26のアルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、t−ブチルアルコール、ペンタノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、ノナノール、デカノール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セタノール、ヘプタデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、エライジルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、ノナデシルアルコール、ヘンエイコサノール、ベヘニルアルコール、エルシルアルコール等)と、エチレン性不飽和結合を有する炭素数2〜30のイソシアネート[2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2−(0−[1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、2−[(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチル(メタ)アクリレート及び1,1−(ビス(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等]とを公知の方法で反応させた重合性単量体等。
ウレア基を有する重合性単量体:例えば炭素数3〜22のアミン[1級アミン(ノルマルブチルアミン、t−ブチルアミン、プロピルアミン及びイソプロピルアミン等)、2級アミン(ジノルマルエチルアミン、ジノルマルプロピルアミン、ジノルマルブチルアミン等)、アニリン及びシクロキシルアミン等]と、エチレン性不飽和結合を有する炭素数2〜30のイソシアネートとを公知の方法で反応させた重合性単量体等。
カルボキシ基を有する重合性単量体:例えば、メタクリル酸、アクリル酸、(メタ)アクリル酸−2−カルボキシエチル。
中でも、ニトリル基、アミド基、ウレタン基、ヒドロキシ基、又はウレア基を有する重合性単量体を使用することが好ましい。より好ましくは、ニトリル基、アミド基、ウレタン基、ヒドロキシ基、及びウレア基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基とエチレン性不飽和結合とを有する重合性単量体である。これらの重合性単量体を用いると、低温定着性と耐熱保存性の両立を図りやすいため好ましい。中でも、ニトリル基は電子吸引性が高く、重合体Aにおいて、モノマーユニットX1の長鎖アルキル基同士の集合(ブロック化)による結晶性部位が得られやすく、重合体Aの結晶性がより高まるため好ましい。
第二の重合性単量体として、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニルといったビニルエステル類も好ましく用いられる。
ビニルエステル類は、非共役モノマーであり、第一の重合性単量体との反応性が適度に保たれやすいため、重合体Aの結晶性を向上させやすく、低温定着性と耐熱保存性の両立を図りやすいため好ましい。中でも、酢酸ビニルは低温定着性と高湿環境における耐熱保存性をより高いレベルで両立できるため特に好ましい。
また、第二の重合性単量体としてビニルエステル類を用いる場合、SP値差に加えて、反応性が、モノマーユニットX1の集合(ブロック化)による結晶性部位の得られやすさに寄与する。そのため、SP21−SP11及びモノマーユニットX1の含有割合が上記範囲内であると、重合体Aの結晶性を向上させやすく、優れた転写性、低温定着性、耐熱保存性を有するトナーを得やすくなる。
また、重合体Aの結晶性を向上させるため、モノマーユニットX2が、下記式(5)及び(6)からなる群から選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。
Figure 2021124518

(式(5)、式(6)中、Xは単結合又は炭素数1〜6のアルキレン基を示し、
は、ニトリル基(−C≡N)、
アミド基(−C(=O)NHR10(R10は水素原子、若しくは炭素数1〜4のアルキル基))、
ヒドロキシ基、
−COOR11(R11は炭素数1〜6のアルキル基若しくは炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基)、
ウレタン基(−NHCOOR12(R12は炭素数1〜4のアルキル基))、
ウレア基(−NH−C(=O)−NH(R13)2(R13はそれぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1〜6のアルキル基))、
−COO(CHNHCOOR14(R14は炭素数1〜4のアルキル基)、又は
−COO(CH−NH−C(=O)−NH(R15(R15はそれぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1〜6のアルキル基)であり、Rは、炭素数1〜4のアルキル基であり、R、Rは、それぞれ独立して水素原子又はメチル基である。)
モノマーユニットX2が、上記式(5)及び(6)からなる群から選ばれる少なくとも一つであることで、重合体Aの結晶性を向上させやすくなるため好ましい。
モノマーユニットX2は、1種を単独で組み込んでも、2種以上を併用してもよい。
重合体Aは、ポリエステル等の他の樹脂が結合した、ハイブリッド樹脂であってもよい。結合とは、例えば、共有結合が挙げられる。
重合体A中のビニル系ポリマー部位Aの含有割合は、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることがさらに好ましい。重合体A中のビニル系ポリマー部位Aの含有割合が100質量%であるということは、重合体Aが、ビニル系モノマーユニットで構成されている重合体(即ちビニル系重合体)であるということを意味する。
重合体Aの結晶性維持の観点から、重合体Aの酸価Avは、30.0mgKOH/g以下であることが好ましく、20.0mgKOH/g以下であることがより好ましい。下限は特に制限されないが、好ましくは0mgKOH/g以上である。酸価が30.0mgKOH/g以下であると、重合体Aの結晶化を阻害しにくい。
また、重合体Aは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるテトラヒドロフラン(THF)可溶分の重量平均分子量(Mw)が、10000以上200000以下であることが好ましい。より好ましくは、20000以上150000以下である。Mwが上記範囲内であることで、室温付近での弾性を維持させやすくなる。
また、低温定着性と耐熱保存性の観点から、重合体Aの融点は、50℃以上80℃以下であることが好ましく、53℃以上70℃以下であることがより好ましい。融点が50℃以上であると、耐熱保存性が良好になり、80℃以下であると、低温定着性が良好になる。重合体Aの融点は、組み込まれるモノマーユニットX1の種類や量、組み込まれるモノマーユニットX2の種類や量などによって調整可能である。
重合体Aが有するビニル系ポリマー部位Aには、上述したモノマーユニットX1、モノマーユニットX2の含有割合を損ねない範囲で、上記式(A)及び(B)のいずれの範囲に含まれないモノマーユニットX3が含まれていてもよい。
重合体A中のモノマーユニットX3の含有割合が、1.0質量%以上60.0質量%以下であることが好ましい。
重合体A中のモノマーユニットX3の含有割合が1.0質量%以上であれば、重合体Aの弾性及びトナーの離型性を向上させやすく、優れた耐久性、離型性を有するトナーが得られやすい。そのため、1.0質量%以上が好ましく、5.0質量%以上がより好ましい。また、重合体A中のモノマーユニットX3の含有割合が60.0質量%以下であれば、重合体Aの結晶性が低下しにくく、低温定着性と耐熱保存性の両立を図りやすい。そのため、60.0質量%以下が好ましく、45.0質量%以下がより好ましく、20.0質量%以下がさらに好ましい。
モノマーユニットX3は、モノマーユニットX3に対応するモノマー(以下、第三の重合性単量体と言う。具体例は後述する。)を重合性単量体として重合(ビニル重合)させることで、重合体のモノマーユニットとして組み込むことが可能である。
第三の重合性単量体としては、上記第二の重合性単量体の項に挙げた重合性単量体のうち、上記式(A)及び(B)を満たさない重合性単量体を用いることができる。
また、上記ニトリル基、アミド基、ウレタン基、ヒドロキシ基、ウレア基、又はカルボキシ基を有さない、以下の重合性単量体も用いることができる。
例えば、スチレン、o−メチルスチレン等のスチレン及びその誘導体、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−t−ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシルのような(メタ)アクリル酸エステル類。
なお、これらが、上記式(A)及び(B)を満たす場合には、第二の重合性単量体として用いることができる。
その中でもモノマーユニットX3は、下記式(7)、(8)で示されるモノマーユニットであることが好ましい。これらのモノマーユニットは、重合体Aを製造する共重合反応の際に、対応するモノマーを添加することで導入することができる。また、高分子反応により、対応するモノマーを用いて重合体Aを変性させることで導入することもできる。その中でもモノマーユニットX3は、下記式(8)で示されるモノマーユニットであることがより好ましい。
Figure 2021124518

(式(7)中、R18はH又はCHを示す。)
また、ビニル系ポリマー部位Aは、モノマーユニットX1、X2、X3以外の他のモノマーユニットを含んでいてもよい。
ビニル系ポリマー部位Aは重合体中に、1種又は複数種含有されてもよい。
重合体Aの含有割合は、トナーの全質量を基準として、30.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。重合体Aの含有割合が、トナーの全質量を基準として30.0質量%以上である場合、トナー中に好適量の重合体Aが含有されていることを示している。そのため、30.0質量%以上が好ましく、50.0質量%以上がより好ましく、70.0質量%以上がより好ましく、80.0質量%以上がさらに好ましい。反対に、重合体Aの含有割合が、トナーの全質量を基準として、95.0質量%以下であれば、トナーにおける炭化水素ワックス及び重合体Bが占める割合が十分になり、十分な離形性が発揮されやすい。そのため、95.0質量%以下が好ましく、93.0質量%以下がより好ましく、90.0質量%以下がさらに好ましい。
また、結着樹脂中の重合体Aの含有割合は、30.0質量%以上が好ましく、50.0質量%以上がより好ましく、70.0質量%以上がより好ましく、80.0質量%以上がさらに好ましい。上限は特に制限されないが、好ましくは97.0質量%以下であり、より好ましくは95.0質量%以下である。上記範囲内であると、結着樹脂中に好適量の重合体Aが含有されていることを示している。
また、重合体Aはトナー粒子中に、1種又は複数種含有されてもよい。
重合体Bは、モノマーユニットY1とモノマーユニットY2を有するビニル系ポリマー部位Bを有する。
上記式(1)のRはH又はCHであることが必須である。この中でも、RがHであることが重合体Aとの相互作用及び炭化水素ワックスとの相互作用が大きいと考えられるため好ましい。
また、ビニル系ポリマー部位Bが、上記式(2)や上記式(3)で示されるモノマーユニットY2を有することで、重合体Bと炭化水素ワックスとの相溶性を制御することができる。
以下、上記式(2)で示されるモノマーユニット、並びに上記式(3)で示されるモノマーユニットの群から選択される少なくとも1種のモノマーユニットY2に関して、具体的に説明する。
重合体Bの好適例としては、上記式(1)で示され、上記式(1)中のRがHであるモノマーユニット、及び、上記式(2)で示され、上記式(2)中のRがHであり、RがCHであるモノマーユニットを有する共重合体が挙げられる。この共重合体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体と呼ばれる。
また、重合体Bの別の好適例を以下に記す。
上記式(1)で示され、上記式(1)中のRがHであるモノマーユニット、及び、上記式(3)で示され、上記式(3)中のRがHであり、RがCHであるモノマーユニットを有する共重合体である。この共重合体は、エチレン−アクリル酸メチル共重合体と呼ばれる。
また、重合体Bのさらに別の好適例を以下に記す。
上記式(1)で示され、RがHであるモノマーユニット、及び、上記式(3)で示され、上記式(3)中のRがHであり、RがCであるモノマーユニットを有する共重合体である。この共重合体は、エチレン−アクリル酸エチル共重合体と呼ばれる。
また、重合体Bのさらに別の好適例を以下に記す。
上記式(1)で示され、上記式(1)中のRがHであるモノマーユニット、及び、上記式(3)で示され、上記式(3)中のRがCHであり、RがCHであるモノマーユニットを有する共重合体である。この共重合体は、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体と呼ばれる。
また、重合体Bのさらに別の好適例を以下に記す。
上記式(1)で示され、上記式(1)中のRがHであるモノマーユニット、及び、上記式(3)で示され、上記式(3)中のRがHであり、RがHであるモノマーユニットを有する共重合体である。この共重合体は、エチレン−アクリル酸共重合体と呼ばれる。
また、重合体Bのさらに別の好適例を以下に記す。
上記式(1)で示され、上記式(1)中のRがHであるモノマーユニット、及び、上記式(3)で示され、上記式(3)中のRがCHであり、RがHであるモノマーユニットを有する共重合体である。この共重合体は、エチレン−メタクリル酸共重合体と呼ばれる。
上記式(2)においてRがCH又はCであることが好ましい。上記式(3)においてRがH又はCH又はCであることが好ましい。モノマーユニットY2が上記の置換基を有することで、重合体Bと炭化水素ワックスとの相互作用を小さくさせやすいため好ましい。上記式(2)においてはRがCHであることがより好ましい。上記式(3)においてはRがCH又はCであることがより好ましい。さらに、上記式(3)においてRがCHであると、炭化水素ワックスが十分に離型性を発揮することができ、巻き付きや高温オフセットを抑制する効果が顕著に表れるため好ましい。
また、重合体Bはトナー粒子中に、1種又は複数種含有されてもよい。
また、重合体Bは、トナーの低温定着性と耐熱保存性の両立の観点から、メルトフローレートが5g/10分以上30g/10分以下であることが好ましい。さらに好ましくは20g/10分以下であると耐熱保存性を向上させやすいため好ましい。
メルトフローレートは、JIS K 7210に基づき、温度190℃、荷重2160gの条件で測定した。樹脂成分中に重合体Bを複数種含有する場合は、溶融混合後に上記条件にて測定を行う。
メルトフローレートは、重合体Bの分子量を変えることで制御することが可能である。分子量を大きくすることで、メルトフローレートを下げることができる。
重合体Bの分子量は、重合体Aとの相互作用が起こりやすくさせる点で、重量平均分子量(Mw)で50000以上であることが好ましく、100000以上がより好ましい。また、重合体Bの分子量は、炭化水素ワックスとの相溶性制御の観点から、重量平均分子量(Mw)で500000以下であることが好ましい。
重合体Bの破断伸度は、300%以上であることが好ましく、500%以上であることがより好ましい。破断伸度が300%以上になることによって定着物の折り曲げ耐性が良好になる。なお、該破断伸度の上限は、1000%以下程度である。
破断伸度は、JIS K 7162に基づいた条件で測定した。樹脂成分中に複数種の重合体Bを含有する場合は、溶融混合した後に上記条件により測定を行った。
また、ビニル系ポリマー部位Bは、モノマーユニットY1及びモノマーユニットY2以外のモノマーユニットを含んでいてもよい。
モノマーユニットY1及びモノマーユニットY2以外で、ビニル系ポリマー部位B中に含まれてもよいモノマーユニットの好適例としては、例えば、上記式(7)、(8)で示されるモノマーユニットが挙げられる。これらは、重合体Bを製造する共重合反応の際これらのモノマーユニットに対応するモノマーを添加することで導入することができる。また、高分子反応により、これらのモノマーユニットに対応するモノマーを用いて重合体Bを変性させることで導入することもできる。その中でも上記式(8)で示されるモノマーユニットであることがより好ましい。
ビニル系ポリマー部位Bは重合体B中に、1種又は複数種含有されてもよい。
重合体Bの質量の総和をWとし、上記式(1)で示されるモノマーユニット、上記式(2)で示されるモノマーユニット及び上記式(3)で示されるモノマーユニットの質量をそれぞれl、m及びnとする。
l/Wの値は、0.70〜0.96であることが好ましい。l/Wの値が、0.70〜0.96であると、重合体Bと重合体Aとの相互作用が適切に保たれ、優れた耐熱保存性が得られる。そのため、l/Wの値は、0.70〜0.96であることが好ましく、0.80〜0.96であることがより好ましい。
(m+n)/Wの値は、0.03〜0.28であることが好ましい。(m+n)/Wの値が、0.03〜0.28であると、重合体Bと炭化水素ワックスとの相互作用が適切に保たれるため、優れた離形性が得られ、巻き付きや高温オフセットを抑制できる。そのため、(m+n)/Wの値は、0.03〜0.28であることが好ましく、0.03〜0.20であることがより好ましく、0.05〜0.20であることがさらに好ましい。
(l+m+n)/Wの値は、低温定着性や帯電保持性の観点から、0.80以上であることが好ましく、0.95以上であることがより好ましく、0.99以上であることがさらに好ましい。
上記質量l、m、nの比率は一般的な分析手法を用いて測定することができ、例えば、核磁気共鳴法(NMR)や熱分解ガスクロマトグラフィー法などの手法が適用できる。
重合体B中に、重合体Aの特徴的なモノマーユニットであり上記式(4)で示される、炭素数18〜36のアルキル基を有するモノマーユニットX1が含まれてもよい。その場合、重合体B中のモノマーユニットX1の含有割合は、(i)29.9質量%以下であることが好ましい。重合体B中のモノマーユニットX1の含有割合が、29.9質量%以下であると、重合体Aと炭化水素ワックスとの相溶性の制御が十分に行われる。その結果、炭化水素ワックスの離型性が十分に発揮されやすく、トナーの低温定着性、耐熱保存性が低下しにくい。そのため、29.9質量%以下であることが好ましく、15.0質量%以下であることがより好ましく、0.0質量%であることがさらに好ましい。重合体B中のモノマーユニットX1の含有割合が0.0質量%であるということは、(ii)重合体BがモノマーユニットX1を含まない重合体であるということを意味する。
重合体Bは、ポリエステル等の他の樹脂が結合した、ハイブリッド樹脂であってもよい。結合とは、例えば、共有結合が挙げられる。
重合体B中のビニル系ポリマー部位Bの含有割合は、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることがさらに好ましい。重合体B中のビニル系ポリマー部位Bの含有割合が100質量%であるということは、重合体Bが、ビニル系モノマーユニットで構成されている重合体(ビニル系重合体)であるということを意味する。
また、帯電保持性の観点から、重合体Bの酸価は、40mgKOH/g以下であることが好ましい。より好ましくは30mgKOH/g以下であり、20mgKOH/g以下であることが好ましく、10mgKOH/g以下であることが好ましく、5mgKOH/g以下であることがより好ましく、実質的に0mgKOH/gであることがさらに好ましい。
重合体Bの含有割合は、トナーの全質量を基準として、1.0質量%以上40.0質量%以下であること好ましい。重合体Bの含有割合が、トナーの全質量を基準として、1.0質量%以上であると、炭化水素ワックスの離型性が十分に発揮されやすい。そのため1.0質量%以上が好ましく、2.0質量%以上がより好ましく、4.0質量%以上がより好ましい。また、重合体Bの含有割合が、トナーの全質量を基準として、40.0質量%以下であると、低温定着性と耐熱保存性の両立を図りやすい。そのため、40.0質量%以下が好ましく、20.0質量%以下がより好ましく、18.0質量%以下がより好ましく、15.0質量%以下がより好ましく、10.0質量%以下がさらに好ましい。
本発明のトナー粒子は、炭化水素ワックスを含有する。
炭化水素ワックスは、炭素原子と水素原子のみで構成されているため極性が低い。そのため、重合体BのモノマーユニットY1のように炭素原子と水素原子のみで構成されている部分との相互作用が強い。その一方、C―O結合やC=O結合といった極性の高い部分との相互作用が弱い。
炭化水素ワックスとしては、例えば以下のものが挙げられる。
石油ワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス。
炭化水素ワックスは、トナー粒子中に、1種又は複数種含有されてもよい。
また、トナー粒子、トナー、又は炭化水素ワックスを測定試料とする示差走査熱量計(DSC)測定における昇温時の吸熱曲線において、炭化水素ワックスの最大吸熱ピークのピーク温度が70℃〜120℃であることが好ましい。さらに好ましくは75〜110℃である。炭化水素ワックスの最大吸熱ピークのピーク温度が上記範囲であると、低温定着性と耐熱保存性の両立を図りやすい。
炭化水素ワックスの分子量は、重量平均分子量(Mw)で990以下であることが好ましい。より好ましくは900以下であり、さらに好ましくは800以下である。炭化水素ワックスの重量平均分子量(Mw)が上記範囲であると、トナー定着時における炭化水素ワックスの粘度が低くなりやすく、その結果、優れた離形性が発揮されやすいため好ましい。一方、下限は特に制限されないが、重量平均分子量(Mw)で400以上が好ましく、より好ましくは500以上である。
炭化水素ワックスの含有割合は、トナーの全質量を基準として、1.0質量%〜20.0質量%であることが好ましい。さらに好ましくは2.0質量%〜10.0質量%である。
また、ATR法を用い、ATR結晶としてGe、赤外光入射角として45°の条件で測定し得られたFT−IRスペクトルにおいて、
2843cm−1以上2853cm−1以下の範囲の最大吸収ピーク強度をPa、
1713cm−1以上1723cm−1以下の範囲の最大吸収ピーク強度をPbとし、
ATR法を用い、ATR結晶としてKRS5、赤外光入射角として45°の条件で測定し得られたFT−IRスペクトルにおいて、
2843cm−1以上2853cm−1以下の範囲の最大吸収ピーク強度をPc、
1713cm−1以上1723cm−1以下の範囲の最大吸収ピーク強度をPd、
としたときに、下記式(C)の関係を満たしていることが好ましい。
1.05≦P1/P2≦2.00 ・・・ 式(C)
[上記式(C)において、
上記最大吸収ピーク強度Paは、2843cm−1以上2853cm−1以下の範囲の吸収ピーク強度の最大値から3050cm−1と2600cm−1の吸収ピーク強度の平均値を差し引いた値であり、
上記最大吸収ピーク強度Pbは、1713cm−1以上1723cm−1以下の範囲の吸収ピーク強度の最大値から1763cm−1と1630cm−1の吸収ピーク強度の平均値を差し引いた値であり、
上記最大吸収ピーク強度Pcは、2843cm−1以上2853cm−1以下の範囲の吸収ピーク強度の最大値から3050cm−1と2600cm−1の吸収ピーク強度の平均値を差し引いた値であり、
上記最大吸収ピーク強度Pdは、1713cm−1以上1723cm−1以下の範囲の吸収ピーク強度の最大値から1763cm−1と1630cm−1の吸収ピーク強度の平均値を差し引いた値であり、P1=Pa/Pb、P2=Pc/Pdである。]
上記ATR(Attenuated Total Reflection)法について説明する。試料より高い屈折率を有する結晶(ATR結晶)に、試料を密着させ、臨界角以上の入射角で赤外光を結晶に入射させると、光は密着した試料と結晶の界面で全反射を繰り返し出射する。このとき、赤外光は試料と結晶の界面で反射するのではなく、試料側にわずかににじみこんでから全反射する。このにじみこみ深さは、波長、入射角及びATR結晶の屈折率に依存する。
dp=λ/(2πn)×[sin2θ−(n/n−1/2
dp:にじみ込み深さ
:試料の屈折率(本発明では1.5としている)
:ATR結晶の屈折率(ATR結晶がGeの場合の屈折率:4.0、ATR結晶がKRS5の場合の屈折率:2.4)
θ:入射角
このため、ATR結晶の屈折率や入射角を変えることでにじみこみ深さの異なるFT−IRスペクトルを得ることができる。
例えば、ATR法において、ATR結晶にGe(n=4.0)を用い、2000cm−1(λ=5μm)の光を、入射角45°の条件で測定した場合、上記式を用いると、にじみこみ深さdpは0.3μmになる。一方、ATR結晶にKRS5<臭沃化タリウム[臭化タリウムTlBr(42モル%)+ヨウ化タリウム Tll(58モル%)]の組成をもつタリウムハライドの混晶>(n=2.4)を用い入射角45°の条件で測定した場合、にじみこみ深さは1.0μmとなる。
重合体A及び重合体Bは、ともに−CO−で表される結合(カルボニル基)を有する。
結着樹脂の主成分が重合体A、及び重合体Bである場合、1713cm−1以上1723cm−1以下の範囲の吸収ピークは、重合体A及び重合体B由来の−CO−の伸縮振動に起因するピークである。
結着樹脂由来のピークとしては、上記以外にも芳香環のCHの面外変角振動等様々なピークが検出されるが、1500cm−1以下の範囲には、ピークが数多く存在し、結着樹脂のピークだけを分離することが困難であり、正確な数値を算出できない。このため、他のピークとの分離が容易な1713cm−1以上1723cm−1以下の範囲の吸収ピークを結着樹脂由来のピークとして用いる。
また、2843cm−1以上2853cm−1以下の範囲の吸収ピークは、主に炭化水素ワックスの−CH−の伸縮振動(対称)に起因するピークである。
炭化水素ワックスのピークとしては、上記以外にも1450cm−1以上1500cm−1以下にCHの面内変角振動のピークが検出されるが、その他の樹脂由来のピークとも重なり合ってしまい、炭化水素ワックスのピークを分離することが困難である。このため、他のピークとの分離が容易な2843cm−1以上2853cm−1以下の範囲の吸収ピークを炭化水素ワックス由来のピークとして用いる。
本発明者らは、重合体A及び重合体B由来の最大吸収ピーク強度(Pb、Pd)及び炭化水素ワックス由来の最大吸収ピーク強度(Pa、Pc)が、重合体A及び重合体Bを主成分とする結着樹脂及び炭化水素ワックスの存在量に相関することを見出した。そこで、炭化水素ワックス由来の最大吸収ピーク強度を結着樹脂由来の最大吸収ピーク強度で割ることで、結着樹脂に対する炭化水素ワックスの存在比率を算出している。
ここで、Pa及びPcを求めるに当たり、2843cm−1以上2853cm−1以下の範囲の吸収ピーク強度の最大値から3050cm−1と2600cm−1の吸収ピーク強度の平均値を差し引く。その理由は、ベースラインの影響を排除し、真のピーク強度を算出するためである。3050cm−1と2600cm−1付近には吸収ピークがないため、この2点の平均値を算出することで、ベースライン強度を算出できる。
上記と同様の理由で、Pb及びPdを求めるに当たり、1713cm−1以上1723cm−1以下の範囲の吸収ピーク強度の最大値から1763cm−1と1630cm−1の吸収ピーク強度の平均値を差し引く。
トナー表面から約0.3μmの間の結着樹脂に対する炭化水素ワックスの存在比率(P1)は、ATR法を用い、ATR結晶としてGe(n=4.0)、赤外光入射角が45°の条件で測定し得られた、上記Pa及びPbから算出される(P1=Pa/Pb)。
ここでP1は、トナーの表面近傍の、結着樹脂に対する炭化水素ワックスの存在比率を表すことが必要である。さらなる、(即ち、トナー表面から約0.3μmより小さい距離)トナー表面近傍の結着樹脂に対する炭化水素ワックスの存在比率を測定する場合、ATR結晶への赤外光(IR)の入射角を大きくすることが考えられる。しかし、入射角を大きくしていくにつれてIRスペクトルの強度が低下してくる。その結果、数値の信頼性が低下してしまう。
このため、発明者らはIRのスペクトルの強度が確保できる、入射角45°の条件で測定を行い、トナー表面から約0.3μmの間の結着樹脂に対する炭化水素ワックスの存在比率をトナー表面近傍の結着樹脂に対する炭化水素ワックスの存在比率(P1)とした。
P1は、炭化水素ワックスの種類や添加量の調整、トナー粒子における炭化水素ワックスの分散状態又は偏在状態を制御することができる樹脂の添加、トナーの製造工程における熱風を用いたトナーの改質処理等により、上記範囲に制御することが可能である。これらの具体例は後述する。
一方、トナー表面から約1.0μmの間の結着樹脂に対する炭化水素ワックスの存在比率(P2)は、ATR法を用い、ATR結晶としてKRS5(n2=2.4)、赤外光入射角が45°の条件で測定し得られた上記Pc及びPdから算出される(P2=Pc/Pd)。先に述べたとおり、P2をコントロールすることで、耐久時の画像濃度の低下を抑制することができる。具体的には、P2は0.10以上0.70以下であることが好ましく、より好ましくは、0.20以上0.60以下である。
P2は、炭化水素ワックスの添加量を調整することで上記範囲に制御することが可能である。
P1/P2が上記範囲内であるということは、トナー表面に存在する炭化水素ワックスの割合が大きいということを示している。そのため定着工程において、素早く炭化水素ワックスが離型効果を発現することができ、巻き付きや高温オフセットをより抑制することができるため好ましい。さらに好ましくは1.10≦P1/P2≦1.90である。
また、トナー粒子中に含有される炭化水素ワックスに対する重合体Bの質量比が、0.05〜20.0の範囲であると、巻き付きや高温オフセットを抑制しやすくなるため好ましい。より好ましくは0.2〜5.0である。
また、本発明のトナーの効果を阻害しない範囲で、エステルワックスなどの他のワックスを含有することもできる。例えば以下のものが挙げられる。
酸化ポリエチレンワックスのような炭化水素ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合物:カルナバワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス類:脱酸カルナバワックスのような脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの。
さらに、以下のものが挙げられる。パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸のような飽和直鎖脂肪酸類:ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸のような不飽和脂肪酸類:ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールの如き飽和アルコール類:ソルビトールのような多価アルコール類:パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸のような脂肪酸類と、ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールのようなアルコール類とのエステル類:リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドのような脂肪酸アミド類:メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドのような飽和脂肪酸ビスアミド類:エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’ジオレイルセバシン酸アミドのような不飽和脂肪酸アミド類:m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’ジステアリルイソフタル酸アミドのような芳香族系ビスアミド類:ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムのような脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの):脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸のようなビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類:ベヘニン酸モノグリセリドのような脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物:植物性油脂の水素添加によって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物。エステルワックスなどの他のワックスは、トナー粒子中に、1種又は複数種含有されてもよい。
また、本発明のトナー粒子は、顔料分散性を向上させるなどの目的により必要に応じて、本発明のトナーの効果を阻害しない範囲において重合体A・重合体B以外のその他の樹脂も含有することができる。
その他の樹脂としては、例えば以下の樹脂が挙げられる。
ポリスチレン、ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体:スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体などのスチレン系共重合体:ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然樹脂変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、石油系樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、その他の樹脂が、スチレン系共重合体などのビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、及びビニル系樹脂とポリエステル樹脂が結合したハイブリッド樹脂からなる群から選択される少なくとも一を含むことが帯電立ち上がり性の観点で好ましい。結合とは、例えば、共有結合が挙げられる。また、非晶性であることが好ましい。
また、その他の樹脂を含有する場合、トナー全質量を基準として、0.0質量%以上40.0質量%以下であることが好ましい。その他の樹脂の含有割合が、トナー全質量を基準として、0.0質量%以上40.0質量%以下であると、トナーの離型性が十分に発揮され、巻き付き・高温オフセット等を抑制する効果が得られやすいため好ましい。そのため0.0質量%以上40.0質量%以下が好ましく、より好ましくは0.5質量%以上40.0質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上20.0質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上10.0質量%以下である。さらに好ましくは0.5質量%以上5.0質量%以下である。
<着色剤>
トナーには着色剤を用いてもよい。着色剤としては、以下のものが挙げられる。
黒色着色剤としては、カーボンブラック;イエロー着色剤とマゼンタ着色剤及びシアン着色剤とを用いて黒色に調色したものが挙げられる。着色剤には、顔料を単独で使用してもかまわないが、染料と顔料とを併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。
マゼンタトナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48:2、48:3,48:4、49、50、51、52、53、54、55、57:1、58、60、63、64、68、81:1、83、87、88、89、90、112、114、122、123、146、147、150、163、184、202、206、207、209、238、269、282;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35。
マゼンタトナー用染料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121;C.I.ディスパースレッド9;C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27;C.I.ディスパーバイオレット1のような油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40;C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28のような塩基性染料。
シアントナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー2、3、15:2、15:3、15:4、16、17;C.I.バットブルー6;C.I.アシッドブルー45、フタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料。
シアントナー用染料としては、C.I.ソルベントブルー70がある。
イエロートナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、62、65、73、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、185;C.I.バットイエロー1、3、20。
イエロートナー用染料としては、C.I.ソルベントイエロー162がある。
着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.1質量部以上30質量部以下であることが好ましい。
<荷電制御剤>
トナーには、必要に応じて荷電制御剤を含有させることもできる。トナーに含有される荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、特に、無色でトナーの帯電スピードが速く且つ一定の帯電量を安定して保持できる芳香族カルボン酸の金属化合物が好ましい。
ネガ系荷電制御剤としては、サリチル酸金属化合物、ナフトエ酸金属化合物、ジカルボン酸金属化合物、スルホン酸又はカルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、スルホン酸塩又はスルホン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、カルボン酸塩又はカルボン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンが挙げられる。荷電制御剤はトナー粒子に対して内添してもよいし外添してもよい。
荷電制御剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対し0.2質量部〜10質量部が好ましい。
<無機微粒子>
トナーには、必要に応じて無機微粒子を含有させることもできる。無機微粒子は、トナー粒子に内添してもよく、外添剤としてトナー粒子と混合してもよい。外添剤としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウムなどの無機微粒子(無機微粉体)が好ましい。無機微粒子は、シラン化合物、シリコーンオイル又はそれらの混合物などの疎水化剤で疎水化されていることが好ましい。
流動性向上のための外添剤としては、比表面積が50m/g以上、400m/g以下の無機微粒子が好ましく、耐久性安定化のためには、比表面積が10m/g以上、50m/g以下の無機微粒子であることが好ましい。トナーの流動性向上と耐久性安定化の両立を図るために、比表面積が上記範囲内の無機微粒子を併用してもよい。
外添剤は、トナー粒子100質量部に対して0.1質量部以上10.0質量部以下使用されることが好ましい。トナー粒子と外添剤との混合は、ヘンシェルミキサーなどの公知の混合機を用いることができる。
<現像剤>
トナーは、一成分現像剤としても使用できるが、ドット再現性をより向上させるために、磁性キャリアと混合して、二成分現像剤として用いることが、長期にわたり安定した画像が得られるという点で好ましい。即ち、トナー及び磁性キャリアを含有する二成分現像剤であって、該トナーが本発明のトナーであることが好ましい。
磁性キャリアとしては、例えば、表面を酸化した鉄粉、あるいは、未酸化の鉄粉や、鉄、リチウム、カルシウム、マグネシウム、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、希土類のような金属粒子、それらの合金粒子、酸化物粒子、フェライト等の磁性体や、磁性体と、この磁性体を分散した状態で保持するバインダー樹脂とを含有する磁性体分散樹脂キャリア(いわゆる樹脂キャリア)等、一般に公知のものを使用できる。
トナーを磁性キャリアと混合して二成分現像剤として使用する場合、その際のキャリア混合比率は、二成分現像剤全質量を基準として、トナーの含有割合が2質量%以上15質量%以下であることが好ましい。より好ましくは4質量%以上13質量%以下である。上記範囲内であると通常良好な結果が得られる。
<トナー粒子の製造方法>
トナー粒子を製造する方法としては、特に制限されず、懸濁重合法、乳化凝集法、溶融混練法、溶解懸濁法など従来公知の製造方法を採用できる。
得られたトナー粒子はそのままトナーとして用いてもよい。得られたトナー粒子に対し、無機微粒子、及び必要に応じて他の外添剤を混合して、トナーを得てもよい。トナー粒子と無機微粒子、及びその他の外添剤との混合は、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、メカノハイブリッド(日本コークス工業株式会社製)、ノビルタ(ホソカワミクロン株式会社製)等の混合装置を用いることができる。
外添剤は、トナー粒子100質量部に対して0.1質量部以上10.0質量部以下使用されることが好ましい。
以下、粉砕法でのトナー製造手順の一例について説明する。
原料混合工程では、トナー粒子を構成する材料として、例えば、非晶性ポリエステル樹脂を含む結着樹脂、ワックス、着色剤、及び必要に応じて荷電制御剤等の他の成分を所定量秤量して配合し、混合する。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、メカノハイブリッド(日本コークス工業株式会社製)などが挙げられる。
次に、混合した材料を溶融混練して、結着樹脂中にワックス等を分散させる。その溶融混練工程では、加圧ニーダー、バンバリィミキサーなどのバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができ、連続生産できる優位性から、1軸又は2軸押出機が主流となっている。例えば、KTK型2軸押出機(神戸製鋼所社製)、TEM型2軸押出機(東芝機械社製)、PCM混練機(池貝鉄工社製)、2軸押出機(ケイ・シー・ケイ社製)、コ・ニーダー(ブス社製)、ニーデックス(日本コークス工業株式会社製)などが挙げられる。さらに、溶融混練することによって得られる樹脂組成物は、2本ロール等で圧延され、冷却工程で水などによって冷却してもよい。
ついで、樹脂組成物の冷却物は、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、例えば、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミルなどの粉砕機で粗粉砕した後、さらに、例えば、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)、ターボ・ミル(ターボ工業製)やエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕する。
その後、必要に応じて慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業社製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン社製)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製)、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)などの分級機や篩分機を用いて分級し、分級品(トナー粒子)を得る。中でも、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)は、分級と同時にトナー粒子の球形化処理を行うことができ、転写効率の向上という点で好ましい。
また、必要に応じて、粉砕後に、ハイブリタイゼーションシステム(奈良機械製作所製)、メカノフージョンシステム(ホソカワミクロン社製)、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)、メテオレインボー MR Type(日本ニューマチック社製)を用いて、球形化処理などのトナー粒子の表面処理を行うこともできる。
特に、加熱によるトナー粒子の表面処理は、トナーの円形度を増加させることが容易で、転写効率を向上させるため好ましい。また、前述したように加熱によりP1/P2の値を制御することができトナーの定着工程においてワックスがより速く離型効果を発揮し、耐ホットオフセット性をさらに向上させるため好ましい。例えば、図1で表される熱処理装置を用いて、熱風により表面処理を行うこともできる。
図1において、原料定量供給手段1により定量供給された混合物は、圧縮気体調整手段2により調整された圧縮気体によって、処理室6の中心軸上に設置された導入管3に導かれる。導入管を通過した混合物は、原料供給手段の中央部に設けられた円錐状の突起状部材4により均一に分散され、放射状に広がる8方向の供給管5に導かれ、粉体粒子供給口14から、熱処理が行われる処理室6に導かれる。
このとき、処理室6に供給された混合物は、処理室6内に設けられた混合物の流れを規制するための規制手段9によって、その流れが規制される。このため処理室6に供給された混合物は、処理室6内を旋回しながら熱処理された後、冷却される。
供給された混合物を熱処理するための熱風は、熱風供給手段(熱風入口部)7から供給され、熱風を旋回させるための旋回部材13により、処理室6内に熱風を螺旋状に旋回させて導入される。その構成としては、熱風を旋回させるための旋回部材13が、複数のブレードを有しており、その枚数や角度により、熱風の旋回を制御することができる。このとき、略円錐状の分配部材12により、旋回される熱風の偏りを少なくすることができる。
処理室6内に供給される熱風は、熱風供給手段(熱風出口部)11における温度が100℃〜300℃であることが好ましい。熱風供給手段(熱風出口部)11における温度が上記の範囲内であれば、混合物を加熱しすぎることによるトナー粒子の融着や合一を防止しつつ、トナー粒子を均一に球形化処理することが可能となり、さらに、耐ホットオフセット性を向上させるため好ましい。
さらに、熱処理された熱処理トナー粒子は冷風供給手段8(8−1、8−2、8−3)から供給される冷風によって冷却される。冷風供給手段8から供給される冷風の温度は−20℃〜30℃であることが好ましい。冷風の温度が上記の範囲内であれば、熱処理トナー粒子を効率的に冷却することができ、混合物の均一な球形化処理を阻害することなく、熱処理トナー粒子の融着や合一を防止することができる。冷風の絶対水分量は、0.5g/m以上15.0g/m以下であることが好ましい。
次に、冷却された熱処理トナー粒子は、処理室6の下端にある回収手段10によって回収される。なお、回収手段10の先にはブロワー(不図示)が設けられ、それにより吸引搬送される構成となっている。
また、粉体粒子供給口14は、供給された混合物の旋回方向と熱風の旋回方向が同方向になるように設けられており、回収手段10は、旋回された粉体粒子の旋回方向を維持するように、処理室6の外周部に設けられている。さらに、冷風供給手段8から供給される冷風は、装置外周部から処理室6内周面に、水平かつ接線方向から供給されるよう構成されている。粉体粒子供給口14から供給されるトナー粒子の旋回方向、冷風供給手段8から供給された冷風の旋回方向、熱風供給手段7から供給された熱風の旋回方向がすべて同方向である。そのため、処理室6内で乱流が起こらず、装置内の旋回流が強化され、トナー粒子に強力な遠心力がかかり、トナー粒子の分散性をさらに向上させるため、合一粒子の少ない、形状の揃ったトナー粒子を得ることができる。
トナーの平均円形度は、0.930以上0.985以下であることが好ましい。また、トナー粒子に球形化処理などの表面処理や熱処理による表面処理を行う場合、0.950以上0.980以下であると、転写性の向上とクリーニング性を両立できるため好ましい。さらに好ましくは0.955以上0.980以下である。
さらに、必要に応じて、トナー粒子の表面に無機微粒子などの外添剤が外添処理される。外添処理する方法としては、トナー粒子と公知の各種外添剤を所定量配合し、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、メカノハイブリッド(日本コークス工業株式会社製)、ノビルタ(ホソカワミクロン株式会社製)等の混合装置を用いて、撹拌・混合する方法が挙げられる。
トナー、トナー粒子及び原材料の各種物性の測定法について以下に説明する。
<重合体A中の各種モノマーユニットの含有割合の測定方法>
重合体A中の各種モノマーユニットの含有割合の測定は、1H−NMRにより以下の条件にて行う。
測定装置 :FT NMR装置 JNM−EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数 :64回
測定温度 :30℃
試料 :測定試料50mgを内径5mmのサンプルチューブに入れ、溶媒として重クロロホルム(CDCl3)を添加し、これを40℃の恒温槽内で溶解させて調製する。
重合体A中の各種モノマーユニットの含有割合は以下のように算出する。
得られたH−NMRチャートより、モノマーユニットX1の構成要素に帰属されるピークの中から、他のモノマーユニットの構成要素に帰属されるピークとは独立したピークを選択し、このピークの積分値S1を算出する。同様に、モノマーユニットX2の構成要素に帰属されるピークの中から、他のモノマーユニットの構成要素に帰属されるピークとは独立したピークを選択し、このピークの積分値S2を算出する。
さらに、モノマーユニットX3が組み込まれる場合は、モノマーユニットX3の構成要素に帰属されるピークから、他のモノマーユニットの構成要素に帰属されるピークとは独立したピークを選択し、このピークの積分値S3を算出する。
モノマーユニットX1の含有割合は、上記積分値S1、S2、及びS3を用いて、以下のようにして求める。なお、n1、n2、n3はそれぞれの部位について着眼したピークが帰属される構成要素における水素の数である。
モノマーユニットX1の含有割合(モル%)=
{(S1/n1)/((S1/n1)+(S2/n2)+(S3/n3))}×100
同様に、モノマーユニットX2、モノマーユニットX3の含有割合は以下のように求める。
モノマーユニットX2の含有割合(モル%)=
{(S2/n2)/((S1/n1)+(S2/n2)+(S3/n3))}×100
モノマーユニットX3の含有割合(モル%)=
{(S3/n3)/((S1/n1)+(S2/n2)+(S3/n3))}×100
なお、重合体Aにおいて、ビニル基以外の構成要素に水素原子が含まれない重合性単量体が使用されている場合は、13C−NMRを用いて測定原子核を13Cとし、シングルパルスモードにて測定を行い、H−NMRにて同様にして算出する。
また、トナー及びトナー粒子を測定試料とする場合、離型剤やその他の樹脂のピークが重なることによって、重合体Aにおける各種モノマーユニットの独立したピークが観測されないことがある。それにより、重合体A中の各種モノマーユニットの含有割合が算出できない場合が生じる。その場合、離型剤やその他の樹脂を使用しないで同様の懸濁重合を行うことで、重合体A’を製造し、重合体A’を重合体Aとみなして分析することができる。
<重合体B中の各種モノマーユニットの含有割合の測定方法>
重合体B中の各種モノマーユニットの含有割合の測定は、H−NMRにより以下の条件にて行う。
測定装置 :FT NMR装置 JNM−EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数 :64回
測定温度 :30℃
試料 :測定試料50mgを内径5mmのサンプルチューブに入れ、溶媒としてテトラメチルシランが0.00ppmの内部標準として含まれる重アセトンを添加し、これを40℃の恒温槽内で溶解させて調製する。
重合体B中の各種モノマーユニットの含有割合は以下のように算出する。
得られたH−NMRチャートより、
上記式(1)で示されるモノマーユニット中の水素原子、
上記式(2)で示されるモノマーユニット中のR中の水素原子、
上記式(3)で示されるモノマーユニット中のR中の水素原子
の積分値をそれぞれ比較することで、それぞれのモノマーユニット比率が算出できる。
エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニルに由来するモノマーユニット比率:15質量%)のモノマーユニット比率の算出例を以下に示す。試料約5mgをテトラメチルシランが化学シフト0.00ppmの内部標準として含まれる重アセトン0.5mlに溶解させた溶液を試料管に入れ、繰り返し時間を2.7秒、積算回数を16回の条件で1H NMRを測定することができる。この測定条件において、1.14〜1.36ppmのピークが、エチレンに由来するモノマーユニット中のCH−CH2に相当し、2.04ppm付近のピークが、酢酸ビニルに由来するモノマーユニット中のCHに相当する。それらのピークの積分値からモノマーユニット比率を算出することができる。
<SP値の算出方法>
SP11、SP21は、Fedorsによって提案された算出方法に従い、以下のようにして求める。
それぞれの重合性単量体の二重結合が重合によって開裂した状態の分子構造の原子又は原子団(モノマーユニット)に対して、「polym.Eng.Sci.,14(2),147−154(1974)」に記載の表から蒸発エネルギー(Δei)(cal/mol)及びモル体積(Δvi)(cm/mol)を求め、(4.184×ΣΔei/ΣΔvi)0.5をSP値(J/cm0.5とする。
<P1及びP2の算出方法>
FT−IRスペクトルは、ユニバーサルATR測定アクセサリー(Universal ATR Sampling Accessory)を装着したフーリエ変換赤外分光分析装置(Spectrum One:PerkinElmer社製)を用い、ATR法で測定する。具体的な測定手順と、P1、P2及びP1をP2で除した[P1/P2]の算出方法は以下の通りである。
赤外光の入射角は45°に設定する。ATR結晶としては、GeのATR結晶(屈折率=4.0)、KRS5のATR結晶(屈折率=2.4)を用いる。その他の条件は以下の通りである。
Range
Start :4000cm−1
End:600cm−1(GeのATR結晶)
400cm−1(KRS5のATR結晶)
Duration
Scan number:16
Resolution:4.00cm−1
Advanced :CO/HO補正あり
[P1の算出方法]
(1)GeのATR結晶(屈折率=4.0)を装置に装着する。
(2)Scan typeをBackground、UnitsをEGYに設定し、バックグラウンドを測定する。
(3)Scan typeをSample、UnitsをAに設定する。
(4)トナーをATR結晶の上に、0.01g精秤する。
(5)圧力アームでサンプルを加圧する。(Force Gaugeは90)
(6)サンプルを測定する。
(7)得られたFT−IRスペクトルを、Automatic Correctionでベースライン補正をする。
(8)2843cm−1以上2853cm−1以下の範囲の吸収ピーク強度の最大値を算出する。(Pa1)
(9)3050cm−1と2600cm−1の吸収ピーク強度の平均値を算出する。(Pa2)
(10)Pa1−Pa2=Paとする。当該Paを2843cm−1以上2853cm−1以下の範囲の最大吸収ピーク強度と規定する。
(11)1713cm−1以上1723cm−1以下の範囲の吸収ピーク強度の最大値を算出する。(Pb1)
(12)1763cm−1と1630cm−1の吸収ピーク強度の平均値を算出する(Pb2)
(13)Pb1−Pb2=Pbとする。当該Pbを1713cm−1以上1723cm−1以下の範囲の最大吸収ピーク強度と規定する。
(14)Pa/Pb=P1とする。
図2にATR結晶としてGeを用い測定したFT−IRスペクトルの一例を示す。
[P2の算出方法]
(1)KRS5のATR結晶(屈折率=2.4)を装置に装着する。
(2)トナーをATR結晶の上に、0.01g精秤する。
(3)圧力アームでサンプルを加圧する。(Force Gaugeは90)
(4)サンプルを測定する。
(5)得られたFT−IRスペクトルを、Automatic Correctionでベースライン補正をする。
(6)2843cm−1以上2853cm−1以下の範囲の吸収ピーク強度の最大値を算出する。(Pc1)
(7)3050cm−1と2600cm−1の吸収ピーク強度の平均値を算出する。(Pc2)
(8)Pc1−Pc2=Pcとする。当該Pcを2843cm−1以上2853cm−1以下の範囲の最大吸収ピーク強度と規定する。
(9)1713cm−1以上1723cm−1以下の範囲の吸収ピーク強度の最大値を算出する。(Pd1)
(10)1763cm−1と1630cm−1の吸収ピーク強度の平均値を算出する(Pd2)
(11)Pd1−Pd2=Pdとする。当該Pdを1713cm−1以上1723cm−1以下の範囲の最大吸収ピーク強度と規定する。
(12)Pc/Pd=P2とする。
[P1/P2の算出方法]
上記のようにして求めたP1とP2を用い、P1/P2を算出する。
<樹脂の軟化点の測定方法>
樹脂の軟化点の測定は、定荷重押し出し方式の細管式レオメータ「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」(島津製作所社製)を用い、装置付属のマニュアルに従って行う。本装置では、測定試料の上部からピストンによって一定荷重を加えつつ、シリンダに充填した測定試料を昇温させて溶融し、シリンダ底部のダイから溶融された測定試料を押し出し、この際のピストン降下量と温度との関係を示す流動曲線を得ることができる。
本発明においては、「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」に付属のマニュアルに記載の「1/2法における溶融温度」を軟化点とする。
なお、1/2法における溶融温度とは、次のようにして算出されたものである。
まず、流出が終了した時点におけるピストンの降下量(流出終了点、Smaxとする)と、流出が開始した時点におけるピストンの降下量(最低点、Sminとする)との差の1/2を求める(これをXとする。X=(Smax−Smin)/2)。そして、ピストンの降下量がXとSminの和となるときの流動曲線の温度が、1/2法における溶融温度である。
測定試料は、約1.0gの樹脂を、25℃の環境下で、錠剤成型圧縮機(例えば、NT−100H、エヌピーエーシステム社製)を用いて約10MPaで、約60秒間圧縮成型し、直径約8mmの円柱状としたものを用いる。
測定における具体的な操作は、装置に付属のマニュアルに従って行う。
CFT−500Dの測定条件は、以下の通りである。
試験モード:昇温法
開始温度:50℃
到達温度:200℃
測定間隔:1.0℃
昇温速度:4.0℃/min
ピストン断面積:1.000cm
試験荷重(ピストン荷重):10.0kgf(0.9807MPa)
予熱時間:300秒
ダイの穴の直径:1.0mm
ダイの長さ:1.0mm
<樹脂のガラス転移温度(Tg)の測定>
ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量分析装置「Q2000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料3mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用いて、以下の条件で測定する。
昇温速度 :10℃/min
測定開始温度:30℃
測定終了温度:180℃
なお、測定においては、一度180℃まで昇温させて10分間保持し、続いて10℃/minの降温速度で30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程で、温度30℃〜100℃の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、ガラス転移温度(Tg)とする。
<吸熱ピークの吸熱量の測定方法>
融解に由来する吸熱ピークの吸熱量は、DSC Q1000(TA Instruments社製)を使用して以下の条件にて測定を行う。
昇温速度:10℃/min
測定開始温度:20℃
測定終了温度:180℃
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料5mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、示差走査熱量測定を行う。リファレンスとしては銀製の空パンを用いる。
一回目の昇温過程における試料の融解に由来する吸熱ピークの吸熱量を、測定試料の吸熱量とする。重合体Aとワックスとを有する、トナー又はトナー粒子を測定する場合において、重合体Aの融解に由来する吸熱ピークとワックスの融解に由来する吸熱ピークとが重なって観察される場合がある。その場合は、別途ワックスのみを測定試料とした測定を行い、ワックスの融解に由来する吸熱ピークの吸熱量を決定する。そして、重なって観察された吸熱ピークの吸熱量から、ワックスの融解に由来する吸熱ピークの吸熱量を減じた値を、重合体Aの融解に由来する吸熱ピークの吸熱量とする。
<融点の測定方法>
樹脂やワックスなどの融点は、DSC Q1000(TA Instruments社製)を使用して以下の条件にて測定を行う。
昇温速度:10℃/min
測定開始温度:20℃
測定終了温度:180℃
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料約5mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、示差走査熱量計で測定を行う。リファレンスとしては銀製の空パンを用いる。
1回目の昇温過程における最大吸熱ピークのピーク温度を、融点とする。
なお、最大吸熱ピークとは、ピークが複数あった場合に、吸熱量が最大となるピークのことである。
<樹脂の分子量測定>
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
まず、室温で24時間かけて、試料をテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。なお、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が約0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム:Shodex KF−801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0ml/min
オーブン温度:40.0℃
試料注入量:0.10ml
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソー社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
<ワックスの分子量測定>
ワックスの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
ゲルクロマトグラフ用のo−ジクロロベンゼンに、特級2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)を濃度が0.10質量/体積%となるように添加し、室温で溶解する。サンプルビンに、ワックスと上記のBHTを添加したo−ジクロロベンゼンとを入れ、150℃に設定したホットプレート上で加熱し、ワックスを溶解する。ワックスが溶解した後、予め加熱しておいたフィルターユニットに入れ、本体に設置する。フィルターユニットを通過させたものをGPCサンプルとする。なお、サンプル溶液は、濃度が0.15質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。装置:HLC−8121GPC/HT(東ソー社製)
検出器:高温用RI
カラム:TSKgel GMHHR−H HT 2連(東ソー社製)
温度:135.0℃
溶媒:ゲルクロマトグラフ用o−ジクロロベンゼン(BHT0.10質量/体積%添加)
流速:1.0ml/min
注入量:0.4ml
ワックスの分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソー社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
<酸価の測定方法>
酸価は試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。酸価はJIS K 0070−1992に準じ、以下のように測定する。
(1)試薬の準備
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95体積%)90mLに溶かし、イオン交換水を加えて100mLとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
特級水酸化カリウム7gを5mLの水に溶かし、エチルアルコール(95体積%)を加えて1Lとする。炭酸ガス等に触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、濾過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。上記水酸化カリウム溶液のファクターは、0.1モル/L塩酸25mLを三角フラスコに取り、上記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、上記水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した上記水酸化カリウム溶液の量から求める。上記0.1モル/L塩酸は、JIS K 8001−1998に準じて作成されたものを用いる。
(2)操作
(A)本試験
粉砕した試料2.0gを200mLの三角フラスコに精秤し、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液100mLを加え、5時間かけて溶解する。次いで、指示薬として上記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、上記水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。なお、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
試料を用いない(即ちトルエン/エタノール(2:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
(3)得られた結果を下記式に代入して、酸価を算出する。
A=[(C−B)×f×5.61]/S
ここで、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料の質量(g)である。
<無機微粒子のBET比表面積の測定>
無機微粒子のBET比表面積の測定は、JIS Z8830(2001年)に準じて行う。具体的な測定方法は、以下の通りである。
測定装置としては、定容法によるガス吸着法を測定方式として採用している「自動比表面積・細孔分布測定装置 TriStar3000(島津製作所社製)」を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、本装置に付属の専用ソフト「TriStar3000 Version4.00」を用いて行う。本装置には真空ポンプ、窒素ガス配管、ヘリウムガス配管が接続される。窒素ガスを吸着ガスとして用い、BET多点法により算出した値を本発明における無機微粒子のBET比表面積とする。
なお、BET比表面積は以下のようにして算出する。
まず、無機微粒子に窒素ガスを吸着させ、その状態の試料セル内の平衡圧力P(Pa)と外添剤の窒素吸着量Va(モル/g)を測定する。そして、試料セル内の平衡圧力P(Pa)を窒素の飽和蒸気圧Po(Pa)で除した値である相対圧Prを横軸とし、窒素吸着量Va(モル/g)を縦軸とした吸着等温線を得る。次いで、外添剤の表面に単分子層を形成するのに必要な吸着量である単分子層吸着量Vm(モル/g)を、下記のBET式を適用して求める。
Pr/Va(1−Pr)=1/(Vm×C)+(C−1)×Pr/(Vm×C)
ここで、CはBETパラメーターであり、測定サンプル種、吸着ガス種、吸着温度により変動する変数である。
BET式は、X軸をPr、Y軸をPr/Va(1−Pr)とすると、傾きが(C−1)/(Vm×C)、切片が1/(Vm×C)の直線と解釈できる。この直線をBETプロットという。
直線の傾き=(C−1)/(Vm×C)
直線の切片=1/(Vm×C)
Prの実測値とPr/Va(1−Pr)の実測値をグラフ上にプロットして最小二乗法により直線を引くと、その直線の傾きの値と切片の値が算出できる。これらの値を上記の数式に代入して、得られた連立方程式を解くと、VmとCが算出できる。
さらに、ここで算出したVmと窒素分子の分子占有断面積(0.162nm)から、下記の式に基づいて、無機微粒子のBET比表面積S(m/g)を算出する。
S=Vm×N×0.162×10−18
ここで、Nはアボガドロ数(モル−1)である。
本装置を用いた測定は、装置に付属の「TriStar3000 取扱説明書V4.0」に従うが、具体的には、以下の手順で測定する。
十分に洗浄、乾燥した専用のガラス製試料セル(ステム直径3/8インチ、容積約5ml)の風袋の質量を精秤する。そして、ロートを使ってこの試料セルの中に約0.1gの外添剤を入れる。
無機微粒子を入れた該試料セルを真空ポンプと窒素ガス配管を接続した「前処理装置バキュプレップ061(島津製作所社製)」にセットし、23℃にて真空脱気を約10時間継続する。なお、真空脱気の際には、無機微粒子が真空ポンプに吸引されないよう、バルブを調整しながら徐々に脱気する。試料セル内の圧力は脱気とともに徐々に下がり、最終的には約0.4Pa(約3ミリトール)となる。真空脱気終了後、試料セル内に窒素ガスを徐々に注入して試料セル内を大気圧に戻し、試料セルを前処理装置から取り外す。そして、この試料セルの質量を精秤し、風袋の質量との差から外添剤の正確な質量を算出する。尚なお、この際に、試料セル内の外添剤が大気中の水分等で汚染されないように、秤量中はゴム栓で試料セルに蓋をしておく。
次に、無機微粒子が入った該試料セルのステム部に専用の「等温ジャケット」を取り付ける。そして、この試料セル内に専用のフィラーロッドを挿入し、本装置の分析ポートに試料セルをセットする。なお、等温ジャケットとは、毛細管現象により液体窒素を一定レベルまで吸い上げることが可能な、内面が多孔性材料、外面が不浸透性材料で構成された筒状の部材である。
続いて、接続器具を含む試料セルのフリースペースの測定を行う。フリースペースは、23℃においてヘリウムガスを用いて試料セルの容積を測定し、続いて液体窒素で試料セルを冷却した後の試料セルの容積を、同様にヘリウムガスを用いて測定して、これらの容積の差から換算して算出する。また、窒素の飽和蒸気圧Po(Pa)は、本装置に内蔵されたPoチューブを使用して、別途に自動で測定される。
次に、試料セル内の真空脱気を行った後、真空脱気を継続しながら試料セルを液体窒素で冷却する。その後、窒素ガスを試料セル内に段階的に導入して無機微粒子に窒素分子を吸着させる。この際、平衡圧力P(Pa)を随時計測することにより上記吸着等温線が得られるので、この吸着等温線をBETプロットに変換する。なお、データを収集する相対圧Prのポイントは、0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30の合計6ポイントに設定する。得られた測定データに対して最小二乗法により直線を引き、その直線の傾きと切片からVmを算出する。さらに、このVmの値を用いて、上述したように無機微粒子のBET比表面積を算出する。
<トナー粒子の重量平均粒径(D4)の測定>
トナー粒子の重量平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出する。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムを脱イオン水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように上記専用ソフトの設定を行う。
上記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下に設定する。
具体的な測定法は以下の(1)〜(7)の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに上記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去する。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに上記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を脱イオン水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量の脱イオン水を入れ、この水槽中に上記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)上記(2)のビーカーを上記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)上記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー粒子約10mgを少量ずつ上記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した上記(1)の丸底ビーカー内に、ピペットを用いてトナー粒子を分散した上記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の上記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
<トナーの平均円形度の測定>
トナーの平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス社製)によって、校正作業時の測定及び解析条件で測定する。
フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス社製)の測定原理は、流れている粒子を静止画像として撮像し、画像解析を行うものである。試料チャンバーへ加えられた試料は、試料吸引シリンジによって、フラットシースフローセルに送り込まれる。フラットシースフローセルに送り込まれた試料は、シース液に挟まれて扁平な流れを形成する。フラットシースフローセル内を通過する試料に対しては、1/60秒間隔でストロボ光が照射されており、流れている粒子を静止画像として撮影することが可能である。また、扁平な流れであるため、焦点の合った状態で撮像される。粒子像はCCDカメラで撮像され、撮像された画像は512×512画素の画像処理解像度(1画素あたり0.37×0.37μm)で画像処理され、各粒子像の輪郭抽出を行い、粒子像の投影面積Sや周囲長L等が計測される。
次に、上記面積Sと周囲長Lを用いて円相当径と円形度を求める。円相当径とは、粒子像の投影面積と同じ面積を持つ円の直径のことであり、円形度Cは、円相当径から求めた円の周囲長を粒子投影像の周囲長で割った値として定義され、次式で算出される。
円形度C=2×(π×S)1/2/L
粒子像が円形の場合に円形度は1.000になり、粒子像外周の凹凸の程度が大きくなればなるほど円形度は小さい値になる。各粒子の円形度を算出後、円形度0.200〜1.000の範囲を800分割し、得られた円形度の相加平均値を算出し、その値を平均円形度とする。
具体的な測定方法は、以下の通りである。まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水約20mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」を脱イオン水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.2ml加える。さらに測定試料を約0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(例えば「VS−150」(ヴェルヴォクリーア社製))を用い、水槽内には所定量の脱イオン水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した上記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE−900A」(シスメックス社製)を使用する。該手順に従い調製した分散液を該フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナーを計測する。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を指定することにより、その範囲内の粒子の個数割合(%)、平均円形度を算出することができる。トナーの平均円形度は、円相当径1.98μm以上39.96μm以下とし、トナーの平均円形度を求める。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えば、Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5200A」を脱イオン水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
なお、本実施例では、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用した。解析粒子径を円相当径1.98μm以上39.69μm未満に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行った。
<トナーからの各材料の分離方法>
トナーに含まれる各材料の溶剤への溶解度の差を利用して、トナーから各材料を分離することができる。
第一分離:60℃のメチルエチルケトン(MEK)にトナーを溶解させ、可溶分(重合体A)と不溶分(重合体B、離型剤、着色剤、無機微粒子など)を分離する。
第二分離:100℃のメチルエチルケトン(MEK)にトナーを溶解させ、可溶分(重合体B、離型剤)と不溶分(着色剤、無機微粒子など)を分離する。
第三分離:23℃のクロロホルムに、第二分離で得られた可溶分(重合体B、離型剤)を溶解させ、可溶分(重合体B)と不溶分(離型剤)を分離する。
(その他の樹脂を含む場合)
第一分離:23℃のメチルエチルケトン(MEK)にトナーを溶解させ、可溶分(その他の樹脂)と不溶分(重合体A、重合体B、離型剤、着色剤、無機微粒子など)を分離する。
第二分離:60℃のメチルエチルケトン(MEK)にトナーを溶解させ、可溶分(重合体A)と不溶分(重合体B、離型剤、着色剤、無機微粒子など)を分離する。
第三分離:100℃のメチルエチルケトン(MEK)にトナーを溶解させ、可溶分(重合体B、離型剤)と不溶分(着色剤、無機微粒子など)を分離する。
第四分離:23℃のクロロホルムに、第二分離で得られた可溶分(重合体B、離型剤)を溶解させ、可溶分(重合体B)と不溶分(離型剤)を分離する。
(トナー中、及び結着樹脂中の重合体A、重合体B、その他の樹脂の含有量の測定)
上記分離で得られた各分離工程において、可溶分及び不溶分の質量を測定することで、トナー中、及び結着樹脂中の各材料の含有量を算出する。
本発明を以下に示す実施例により具体的に説明する。しかし、これらは本発明をなんら限定するものではない。以下の処方の「部」は特に断りがない場合、全て質量基準である。
<重合体の製造例A1>
・溶媒:トルエン 100.0部
・重合性単量体組成物 100.0部
(重合性単量体組成物は以下のアクリル酸ベヘニル、酢酸ビニル、及びスチレンを以下に示す割合で混合したものである)
・アクリル酸ベヘニル(第一の重合性単量体) 60.0部(26.2モル%)
・酢酸ビニル(第二の重合性単量体) 30.0部(57.9モル%)
・スチレン(第三の重合性単量体) 10.0部(15.9モル%)
・重合開始剤t−ブチルパーオキシピバレート(日油社製:パーブチルPV) 0.5部
還流冷却管、攪拌機、温度計、及び窒素導入管を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、上記材料を投入した。反応容器内を200rpmで撹拌しながら、70℃に加熱して12時間重合反応を行い、重合性単量体組成物の重合体がトルエンに溶解した溶解液を得た。続いて、上記溶解液を25℃まで降温した後、1000.0部のメタノール中に上記溶解液を撹拌しながら投入し、メタノール不溶分を沈殿させた。得られたメタノール不溶分を濾別し、更にメタノールで洗浄後、40℃で24時間真空乾燥して重合体A1を得た。重合体A1の重量平均分子量(Mw)は64600、融点は56℃、酸価0.0mgKOH/gであった。また、重合体A1は、DSC測定において明確な吸熱ピークを有する結晶性樹脂であった。
上記重合体A1をNMRで分析したところ、アクリル酸ベヘニル由来のモノマーユニットが26.2モル%、酢酸ビニル由来のモノマーユニットが57.9モル%、スチレン由来のモノマーユニットが15.9モル%含まれていた。
<重合体の製造例A2〜A11>
重合体A1の製造例において、それぞれの重合性単量体及び質量部数を表1となるように変更した以外は同様にして反応を行い、重合体A2〜A11を得た。物性を表3に示す。重合体A2〜A11は、DSC測定において明確な吸熱ピークを有する結晶性樹脂であった。
また、重合体A1〜A11を構成する、重合性単量体由来のモノマーユニットのSP値と、対応する重合性単量体をまとめたものを表2に示す。
Figure 2021124518
表1中の略号は以下の通り。
BEA:ベヘニルアクリレート
SA:ステアリルアクリレート
MYA:ミリシルアクリレート
OA:オクタコサアクリレート
HA:ヘキサデシルアクリレート
MN:メタクリロニトリル
AN:アクリロニトリル
HPMA:メタクリル酸2ヒドロキシプロピル
AM:アクリルアミド
VA:酢酸ビニル
MA:アクリル酸メチル
St:スチレン
MM:メタクリル酸メチル
Figure 2021124518
表2中の略号は以下の通り。
BEA:ベヘニルアクリレートに由来するモノマーユニット
SA:ステアリルアクリレートに由来するモノマーユニット
MYA:ミリシルアクリレートに由来するモノマーユニット
OA:オクタコサアクリレートに由来するモノマーユニット
HA:ヘキサデシルアクリレートに由来するモノマーユニット
MN:メタクリロニトリルに由来するモノマーユニット
AN:アクリロニトリルに由来するモノマーユニット
HPMA:メタクリル酸2ヒドロキシプロピルに由来するモノマーユニット
AM:アクリルアミドに由来するモノマーユニット
VA:酢酸ビニルに由来するモノマーユニット
MA:アクリル酸メチルに由来するモノマーユニット
St:スチレンに由来するモノマーユニット
MM:メタクリル酸メチルに由来するモノマーユニット
Figure 2021124518
<重合体Aや重合体Bではない非晶性樹脂の合成例C1>
オートクレーブにキシレン50部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で185℃まで昇温した。スチレン98部、n−ブチルアクリレート2部、ジ−t−ブチルパーオキサイド5部、及びキシレン20部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を185℃にコントロールしながら、3時間連続的に滴下し重合させた。更に同温度で1時間保ち重合を完了させ、溶媒を除去し、重合体Aや重合体Bではない非晶性樹脂C1を得た。得られた樹脂の重量平均分子量(Mw)は4000で、軟化点(Tm)は101℃、ガラス転移温度(Tg)は61℃であった。
<トナーの製造例1>
・重合体A1 82部
・重合体B1 5部
(重合体B1:上記式(1)及び(3)中、R=H、R=H、R=CH、であるモノマーユニットから構成される重合体。上記式(3)で示されるモノマーユニットの含有量が、重合体B1の全質量に対して14質量%。ビニル系ポリマー部位Bの含有割合が、重合体B1の全質量に対して100質量%。酸価が0mgKOH/g。重量平均分子量(Mw)が108000。メルトフローレートが14g/10分。融点が87℃。破断伸度が900%。(l+m+n)/Wの値が、1.00)
・非晶性樹脂C1 2部
・ワックス1 5部
(フィッシャートロプシュワックス:最大吸熱ピークのピーク温度90℃、重量平均分子量(Mw)720)
・C.I.ピグメントブルー15:3 5部
上記材料をヘンシェルミキサー(FM−75型、日本コークス工業株式会社製)を用いて、回転数20s−1、回転時間5minで混合した後、温度110℃に設定した二軸混練機(PCM−30型、株式会社池貝製)にて吐出温度120℃にて混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機(T−250、フロイントターボ(株)製)にて微粉砕した。さらにファカルティF−300(ホソカワミクロン社製)を用い、分級を行い、トナー粒子1を得た。運転条件は、分級ローター回転数を130s−1、分散ローター回転数を120s−1とした。
得られたトナー粒子を、図1で示す熱処理装置によって熱処理を行い、熱処理トナー粒子を得た。運転条件はフィード量=3kg/hrとし、また、熱風温度=130℃、熱風流量=6m/min.、冷風温度=−5℃、冷風流量=4m/min.、ブロワー風量=20m/min.、インジェクションエア流量=1m/min.とした。
得られた熱処理トナー粒子1(99部)に、ヘキサメチルジシラザン4質量%で表面処理したBET比表面積25m/gの疎水性シリカ微粒子0.5部、ポリジメチルシロキサン10質量%で表面処理したBET比表面積100m/gの疎水性シリカ微粒子0.5部を添加し、ヘンシェルミキサー(FM−75型、日本コークス工業株式会社製)で回転数30s−1、回転時間10min混合して、トナー1を得た。トナー1の重量平均粒径(D4)は6.2μmであった。平均円形度は0.965であった。P1/P2は1.25であった。トナー1の分析結果を表4に示す。
<トナーの製造例2、3>
トナーの製造例1において、熱処理する際の熱風温度を表4のように変更したこと以外はトナーの製造例1と同様にして製造を行い、トナー2、3を得た。分析結果を表4に示す。
<トナーの製造例4>
トナーの製造例1において、熱処理を行わなかったこと以外はトナーの製造例1と同様にして製造を行い、トナー4を得た。分析結果を表4に示す。
<トナーの製造例6〜33>
トナーの製造例4において、使用した材料、質量部を表4に示したものに変更したこと以外は同様にして製造を行い、トナー6〜33を得た。分析結果を表4に示す。なお、表4中のワックス2〜5、重合体B2は以下のものを用いた。
ワックス2:フィッシャートロプシュワックス(最大吸熱ピークのピーク温度が78℃、重量平均分子量(Mw)が530)
ワックス3:フィッシャートロプシュワックス(最大吸熱ピークのピーク温度が74℃、重量平均分子量(Mw)が480)
ワックス4:フィッシャートロプシュワックス(最大吸熱ピークのピーク温度が105℃、重量平均分子量(Mw)が1080)
ワックス5:カルナバワックス(エステルワックス)(最大吸熱ピークのピーク温度が80℃)
重合体B2:上記式(1)及び(2)中、R=H、R=H、R=CH、であるモノマーユニットから構成される重合体。上記式(2)で示されるモノマーユニットの含有量が、重合体B2の全質量に対して15質量%。ビニル系ポリマー部位Bの含有割合が重合体B2の全質量に対して100質量%。酸価が0mgKOH/g。重量平均分子量(Mw)が110000。メルトフローレートが12g/10分。融点が86℃。破断伸度が700%。(l+m+n)/Wの値が、1.00。
<トナーの製造例5>
[着色剤分散液の調製]
C.I.ピグメントブルー15:3 100.0部
酢酸エチル 150.0部
ガラスビーズ(1mm) 200.0部
上記材料を耐熱性のガラス容器に投入し、ペイントシェーカーにて5時間分散を行い、ナイロンメッシュでガラスビーズを取り除き、着色剤分散液1を得た。
[ワックス分散液1の調製]
ワックス1 20.0部
酢酸エチル 80.0部
上記を密閉できる反応容器に投入し、80℃で加熱攪拌した。ついで、系内を50rpmで緩やかに攪拌しながら3時間かけて25℃にまで冷却し、乳白色の液体を得た。
この溶液を直径1mmのガラスビーズ30.0質量部とともに耐熱性の容器に投入し、ペイントシェーカー(東洋精機製)にて3時間分散を行い、ナイロンメッシュでガラスビーズを取り除き、ワックス分散液1を得た。
[油相1の調製]
重合体A1 164.0部
重合体B1 10.0部
非晶性樹脂C1 4.0部
酢酸エチル 178.0部
上記材料をビーカーに入れ、ディスパー(特殊機化社製)を用い3000rpmで1分間攪拌した。
ワックス分散液1(固形分20%) 25.0部
着色剤分散液1(固形分40%) 12.5部
酢酸エチル 5.0部
さらに上記材料をビーカーに入れ、ディスパー(特殊機化社製)を用い6000rpmで3分間攪拌し、油相1を調製した。
[水相1の調製]
ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム水溶液(エレミノールMON7、三洋化成工業社製) 30.0部
イオン交換水 955.0部
上記材料をビーカーに入れ、ディスパー(特殊機化社製)を用い3000rpmで3分間撹拌し、水相1を調製した。
[トナー粒子5の製造]
水相1に油相1を投入し、TKホモミキサー(特殊機化社製)にて回転数10000rpmで10分間分散した。その後、30℃、50mmHgの減圧下にて30分間脱溶剤した。次いで、濾過を行い、濾別とイオン交換水への再分散の操作をスラリーの電導度が100μSとなるまで繰り返すことで、界面活性剤の除去を行い、濾過ケーキを得た。
上記濾過ケーキを真空乾燥した後、風力分級を実施することで、トナー粒子5を得た。
得られたトナー粒子5(99部)に、ヘキサメチルジシラザン4質量%で表面処理したBET比表面積25m/gの疎水性シリカ微粒子0.5部、ポリジメチルシロキサン10質量%で表面処理したBET比表面積100m/gの疎水性シリカ微粒子0.5部を添加し、ヘンシェルミキサー(FM−75型、日本コークス工業株式会社製)で回転数30s−1、回転時間10min混合して、トナー5を得た。分析結果を表4に示す。
表4及び表5に示すトナー1〜33において、それぞれの結着樹脂は、それぞれに対応する重合体A、重合体B及びその他樹脂(非晶性樹脂C1)から構成されるように製造した。
Figure 2021124518
<磁性キャリア1の製造例>
・個数平均粒径0.30μm、(1000/4π(kA/m)の磁界下における磁化の強さ65Am/kg)のマグネタイト
・個数平均粒径0.50μm、(1000/4π(kA/m)の磁界下における磁化の強さ65Am/kg)のマグネタイト
上記の材料それぞれ100部に対し、4.0部のシラン化合物(3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン)を加え、容器内にて100℃以上で高速混合撹拌し、それぞれの微粒子を処理した。
・フェノール:10質量%
・ホルムアルデヒド溶液:6質量%(ホルムアルデヒド40質量%、メタノール10質量%、水50質量%)
・上記シラン化合物で処理したマグネタイト:58質量%
・上記シラン化合物で処理したマグネタイト:26質量%
上記材料100部と、28質量%アンモニア水溶液5部、水20部をフラスコに入れ、攪拌、混合しながら30分間で85℃まで昇温・保持し、3時間重合反応させて、生成するフェノール樹脂を硬化させた。その後、硬化したフェノール樹脂を30℃まで冷却し、さらに水を添加した後、上澄み液を除去し、沈殿物を水洗した後、風乾した。次いで、これを減圧下(5mmHg以下)、60℃の温度で乾燥して、磁性体分散型の球状の磁性キャリア1を得た。体積基準の50%粒径(D50)は、34.2μmであった。
<二成分現像剤1の製造例>
磁性キャリア1を92.0部に対し、トナー1を8.0部加え、V型混合機(V−20、セイシン企業製)により混合し、二成分現像剤1を得た。
<二成分現像剤2〜33の製造例>
二成分現像剤1の製造例において、トナーを表5のように変更する以外は同様にして製造を行い、二成分現像剤2〜33を得た。
Figure 2021124518
<1.トナーの低温定着性評価>
電子写真方式の画像形成装置としてキヤノン製フルカラーPOD機(imagePress C800)を用いて、評価する二成分現像剤1〜33を、それぞれ画像形成装置のシアン用現像器に入れ、後述の評価を行った。
改造点は、現像器内部で過剰になった磁性キャリアを現像器から排出する機構を取り外したこと、定着温度を自由に変更できるようにしたことである。
紙:GFC−081(81.0g/m)(キヤノンマーケティングジャパン株式会社)
紙上のトナーの載り量:0.55mg/cm
(現像剤担持体の直流電圧VDC、電子写真感光体の帯電電圧VD、及びレーザーパワーにより調整)
評価画像:上記A4用紙の中心に2cm×5cmの画像を配置
試験環境:低温低湿環境:温度15℃/湿度10%RH(以下「L/L」)
プロセススピード:450mm/sec
定着温度を100℃から順に5℃ずつ上げ、オフセットが生じない下限温度を低温定着温度とした。C以上を良好と判断した。結果を表6に示す。
(低温定着温度の評価基準)
A:115℃未満
B:115℃以上125℃未満
C:125℃以上140℃未満
D:140℃以上
<2.耐巻き付き性評価>
上記低温定着性評価で用いた画像形成装置を用いて、上記二成分現像剤1〜33について、それぞれ耐高温オフセット性の試験を行った。
紙:CS−068(A4、坪量68.0g/m、キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)
紙上のトナーの載り量:0.50mg/cm
(現像剤担持体の直流電圧VDC、電子写真感光体の帯電電圧VD、及びレーザーパワーにより調整)
評価画像:上記A4用紙の通紙方向先端から余白5mmの箇所に2cm×5cmの画像を配置
試験環境:高温高湿環境:温度30℃/湿度80%RH(以下「H/H」)
プロセススピード:450mm/sec
定着温度を120℃から順に5℃ずつ上げ、巻き付きが生じない上限温度を耐ホットオフセット温度とした。
耐巻き付き温度を以下の基準でランク付けした。評価結果を表6に示す。C以上を良好と判断した。
(耐巻き付き温度の評価基準)
A:160℃以上
B:140℃以上160℃未満
C:130℃以上140℃未満
D:130℃未満
<3.耐ホットオフセット性評価>
上記低温定着性評価で用いた画像形成装置を用いて、上記二成分現像剤1〜33について、それぞれ耐高温オフセット性の試験を行った。
紙:CS−068(A4、坪量68.0g/m、キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)
紙上のトナーの載り量:0.10mg/cm
(現像剤担持体の直流電圧VDC、電子写真感光体の帯電電圧VD、及びレーザーパワーにより調整)
評価画像:上記A4用紙の中心に2cm×5cmの画像を配置
試験環境:低温低湿環境:温度23℃/湿度5%RH(以下「N/L」)
プロセススピード:450mm/sec
定着温度を120℃から順に5℃ずつ上げ、オフセットが生じない上限温度を耐ホットオフセット温度とした。
耐ホットオフセット温度を以下の基準でランク付けした。評価結果を表6に示す。C以上を良好と判断した。
(耐ホットオフセット温度の評価基準)
A:160℃以上
B:140℃以上160℃未満
C:130℃以上140℃未満
D:130℃未満
<4.耐熱保存性評価>
上記二成分現像剤1〜33用のトナー1〜33 5gをそれぞれ100mLの樹脂製カップに入れ、温度及び湿度可変型の恒温槽に72時間放置し、放置後にトナーの凝集性を評価した。凝集性は、ホソカワミクロン社製パウダーテスタPT−Xにて0.5mmの振幅にて10秒間、目開き150μmのメッシュで振るった際に、残ったトナーの残存率を評価指標とした。C以上を良好と判断した。放置環境は、温度55℃/湿度10%RH(低湿環境)及び温度50℃/湿度54%RH環境(高湿環境)にて行った。結果を表6に示す。
(低湿環境ブロッキング、及び高湿環境ブロッキングの評価基準)
A:残存率2.0%未満
B:残存率2.0%以上5.0%未満
C:残存率5.0%以上10.0%未満
D:残存率10.0%以上
Figure 2021124518
1 原料定量供給手段
2 圧縮気体調整手段
3 導入管
4 突起状部材
5 供給管
6 処理室
7 熱風供給手段(熱風入口部)
8 冷風供給手段(8−1、8−2、8−3)
9 規制手段
10 回収手段
11 熱風供給手段(熱風出口部)
12 分配部材
13 旋回部材
14 粉体粒子供給口

Claims (12)

  1. 重合体A、重合体B、及び炭化水素ワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、
    前記重合体Aは、
    下記式(4)で示されるモノマーユニットX1
    を有するビニル系ポリマー部位Aを有し、
    前記重合体Bは、
    下記式(1)で示されるモノマーユニットY1、並びに
    下記式(2)で示されるモノマーユニット及び下記式(3)で示されるモノマーユニットからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーユニットY2、
    を有するビニル系ポリマー部位Bを有する
    ことを特徴とするトナー。
    Figure 2021124518

    (式(1)中、RはH又はCHを示す。式(2)中、RはH又はCHを示し、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示す。式(3)中、RはH又はCHを示し、RはH又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。式(4)中、R16はH又はCHを示し、R17は炭素数18〜36のアルキル基を示す。)
  2. 前記重合体A中の前記モノマーユニットX1の含有割合が、30.0質量%以上99.9質量%以下である請求項1に記載のトナー。
  3. 前記重合体Bが、下記(i)又は(ii)を満たす請求項2に記載のトナー。
    (i)前記重合体Bが、前記モノマーユニットX1をさらに有し、かつ前記重合体B中の前記モノマーユニットX1の含有割合が、29.9質量%以下である。
    (ii)前記重合体Bが、前記モノマーユニットX1を有しない。
  4. 前記モノマーユニットY1が、前記式(1)で示され、かつ前記式(1)中のRがHであるモノマーユニットであり、
    前記モノマーユニットY2が、前記式(3)で示され、かつ前記式(3)中のRがH又はCHであり、RがCH又はCであるモノマーユニットである
    請求項1〜3の何れか一項に記載のトナー。
  5. 前記ビニル系ポリマー部位Aが、モノマーユニットX2をさらに有し、
    前記モノマーユニットX2は、
    前記モノマーユニットX1のSP値をSP11(J/cm0.5とし、
    前記モノマーユニットX2のSP値をSP21(J/cm0.5としたとき、
    下記式(A)及び(B)を満たすモノマーユニットである
    請求項1〜4の何れか一項に記載のトナー。
    3.00≦(SP21−SP11)≦25.00 ・・・(A)
    21.00≦SP21 ・・・(B)
  6. 前記ビニル系ポリマー部位Aが、モノマーユニットX2をさらに有し、
    前記モノマーユニットX2が、下記式(5)で示されるモノマーユニット及び下記式(6)で示されるモノマーユニットからなる群から選ばれる少なくとも一つのモノマーユニットである
    請求項1〜5の何れか一項に記載のトナー。
    Figure 2021124518
    (式(5)及び(6)中、
    Xは、単結合又は炭素数1〜6のアルキレン基を示し、
    は、ニトリル基(−C≡N)、アミド基(−C(=O)NHR10(R10は水素原子、若しくは炭素数1〜4のアルキル基))、ヒドロキシ基、−COOR11(R11は炭素数1〜6のアルキル基、若しくは炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基)、ウレタン基(−NHCOOR12(R12は炭素数1〜4のアルキル基))、ウレア基(−NH−C(=O)−NH(R13(R13はそれぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1〜6のアルキル基))、−COO(CHNHCOOR14(R14は炭素数1〜4のアルキル基)、又は−COO(CH−NH−C(=O)−NH(R15(R15はそれぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1〜6のアルキル基)を示し、
    は、炭素数1〜4のアルキル基を示し、
    及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はCHを示す。)
  7. 前記重合体A中の前記モノマーユニットX2の含有割合が、1.0質量%以上70.0質量%以下である請求項5又は6に記載のトナー。
  8. 前記ビニル系ポリマー部位Aが、モノマーユニットX3をさらに有し、
    前記モノマーユニットX3は、下記式(7)で示されるモノマーユニット及び下記式(8)で示されるモノマーユニットからなる群から選ばれる少なくとも一つのモノマーユニットである
    請求項1〜7の何れか一項に記載のトナー。
    Figure 2021124518

    (式(7)中、R18はH又はCHを示す。)
  9. 前記重合体Aの含有割合は、前記トナーの全質量を基準として、30.0質量%以上95.0質量%以下である請求項1〜8の何れか一項に記載のトナー。
  10. 前記重合体Bの含有割合は、前記トナーの全質量を基準として、1.0質量%以上40.0質量%以下である請求項1〜9の何れか一項に記載のトナー。
  11. 前記炭化水素ワックスの重量平均分子量(Mw)が990以下である請求項1〜10の何れか一項に記載のトナー。
  12. トナー及び磁性キャリアを含有する二成分現像剤であって、
    前記トナーが請求項1〜11の何れか一項に記載のトナーである二成分現像剤。
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