以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
本発明のトナーは、結着樹脂及びワックスを含有して、
毛細管吸引時間法により計測され、下記(1)式により算出される、45体積%メタノール水溶液に対する前記トナーの表面張力指数Xが1.0×10-1N/m以下であり、
45体積%メタノール水溶液に前記トナーを分散した分散液における温度25℃で測定した600nmの波長における透過率Yが20%以上であり、
前記表面張力指数Xと前記透過率Yが下記(2)式を満たすことを特徴とする。
トナーの表面張力指数X(N/m)=Pα/(A×B×103) ・・・(1)
Pα:45体積%メタノール水溶液に対するトナーの毛管圧力(kN/m2)
A:トナーの比表面積(m2/g)
B:トナーの真密度(g/cm3)
logX−3.2×10-2×Y+3.3≧0.0 ・・・(2)
本発明のトナーは、毛細管吸引時間法により計測され、下記(1)式により算出される、45体積%メタノール水溶液に対する前記トナーの表面張力指数が1.0×10-1N/m以下である。
トナーの表面張力指数X(N/m)=Pα/(A×B×103) ・・・(1)
Pα:45体積%メタノール水溶液に対するトナーの毛管圧力(kN/m2)
A:トナーの比表面積(m2/g)
B:トナーの真密度(g/cm3)
上記トナーの表面張力指数は、トナー表面近傍層の疎水化の程度を示したものであり、表面張力指数が大きいほど、トナー表面近傍層が疎水化されているということを意味する。
表面張力指数は、加圧下で測定される毛管圧力の値から計算される値である。常圧下での濡れ性測定は材料最表面の疎水化の程度を示すが、加圧下で測定される毛管圧力は材料表面だけではなく、材料表面からある程度の深さの範囲すなわちトナー表面近傍層の疎水化の程度を示していると考えられる。本発明における表面張力指数は、外添剤及びトナー粒子表面から200nm程度の範囲の疎水化度を示すと本発明者らは考えている。
上記トナーの表面張力指数が1.0×10-1N/m以下を満たすことで、現像剤の流動性が良好になり、長期に渡って良好な帯電性を得ることが可能となる。該トナーの表面張力指数は、7.5×10-2N/m以下であることが好ましい。
本発明においては、トナー粒子表面の疎水化度の程度、外添剤の添加部数及び疎水化処理の程度、ワックスの添加部数及び熱風などによるトナーの表面近傍層の疎水化などをすることにより、トナーの表面張力指数を上記範囲に調整することが可能である。
本発明のトナーは、45体積%メタノール水溶液に前記トナーを分散した分散液における温度25℃で測定した600nmの波長における透過率が20%以上である。
上記透過率は常圧下で測定された値であり、トナー最表面層の疎水化の程度を示す値であり、透過率が大きいほど、トナー最表面層が疎水化されていることを意味する。本発明におけるトナー最表面層とは、外添剤及びトナー粒子表面から10nm程度の深さの範囲であると本発明者らは考えている。
上記透過率は20%以上を満たすことで、高温高湿下での水分吸着を抑制することが可能となり、カブリを抑えることが可能となる。前記透過率は、30%以上であることが好ましい。
本発明においては、トナー粒子表面の疎水化度の程度、外添剤の添加部数及び疎水化処理の程度などにより、前記透過率を上記範囲に調整することが可能である。
本発明のトナーは、前記表面張力指数Xと前記透過率Yが下記(2)式を満たす。
logX−3.2×10-2×Y+3.3≧0.0 ・・・(2)
本発明者らは鋭意検討した結果、前記表面張力指数Xと前記透過率Yの関係をあらわす上記式(2)を満たすトナーは、転写部材から記録媒体への転写が良好で、面内均一性の高い良好な及び濃度安定性の高い画像を長期に渡って得られることがわかった。そのメカニズムは明確ではないが、本発明者らは以下のように推察している。
第一のメカニズムは下記のように考えている。トナーが転写部材に転写される際、トナーは転写部材に高圧下で押しつけられ圧密状態をとる。その後、記録媒体上に再転写される際、圧密状態のトナー同士の付着力が高く、転写部材とトナー間の付着力が低い場合、圧密されたトナー塊が内部で破壊されることなく転写部材より離れやすくなるため、転写部材上に残るトナーは少なくなる。記録媒体上に再転写される際は、トナー−トナー間は圧密状態が維持される一方で、転写部材−トナー間は圧力が緩和された状態になりやすい。ここで、圧力下での濡れ性をあらわす前記表面張力指数Xが高いほど圧密状態でのトナー同士の付着力が高くなり、また常圧下での濡れ性をあらわす前記透過率Yが低いほど転写部材とトナー間の付着力は弱くなる。よって、上記(2)式を満たす場合、転写部材−トナー間の付着力がトナー同士の付着力より優位に弱くなり、面内均一性の良い画像を得ることができると本発明者らは考えている。
第二のメカニズムは下記のように考えている。一般的にワックスは疎水化度が高く、トナー中の疎水化度が高い部位となじみやすく、トナー中の疎水化度が低い部分となじみが悪い。よって、トナー中のある部位において、疎水化度の距離に対する変化率が大きい場合、疎水化度の高い部位にワックスは留まりやすく移動が抑制される。上記(2)式の左辺は、前記表面張力指数Xが示すトナー表面近傍層の疎水化度が高い場合、前記透過率Yが示すトナー最表面層の疎水化度が低い場合に大きな値となる。上記(2)式を満たす場合、トナー表面近傍層の疎水化度はトナー最表面層の疎水化度はより優位に高く、両層の差となるトナー粒子表面から10乃至200nmの範囲にトナー最表面層より疎水化度の高い部位が存在する。すなわち、トナー粒子表面から0乃至200nmという狭い範囲で疎水化度が変化するすなわち疎水化度の距離に対する変化率が大きくなって、ワックスがトナー粒子表面から10乃至200nmの疎水化度の高い部位に留まりやすくなる。よって、長期に渡ってストレスを加えられる環境であっても、ワックスのトナー表面への染み出しを抑制して、転写部材とトナー間の付着力を弱い状態を維持して面内均一性の良い画像及び濃度安定性の高い画像を得ることができる。
上記式(2)の左辺が0.3以上であることが好ましい。
本発明においては、トナー粒子表面から10乃至200nmの範囲で疎水化度を高める疎水化処理を行うことで上記(2)式を満たすことが可能となる。
前記疎水化処理の具体例として、ビニル系樹脂成分と炭化水素化合物が反応した構造を有する重合体をトナー粒子に含有させ、疎水化処理された無機微粒子をトナー粒子の表面に熱風処理によって固着することがあげられる。前記重合体とは、ワックスと樹脂間に存在することでその界面エネルギーを下げてトナー中でのワックスの分散性を良好にするものである。前記熱風処理では、前記重合体が存在することでワックスのトナー粒子表面方向への移動速度をコントロールすることが可能で、前記トナー粒子表面に固着された疎水化処理無機微粒子と前記重合体の間にワックスを偏在させることができる。さらに、前記疎水化処理無機微粒子が固着されているトナー粒子表面の割合、熱風処理の処理条件などを変更することで、トナー粒子表面から10乃至200nmの範囲で疎水化度を高め、上記(2)式を満たすように調整することが可能である。
本発明において、ビニル系樹脂成分と炭化水素化合物が反応した構造を有する重合体及び疎水化処理された少なくとも一種類の無機微粒子を含有し、前記無機微粒子が前記トナー粒子の表面の20%以上に熱風処理によって固着されていると好ましい。その場合、熱風処理によるワックスのトナー最表面への染み出しを抑制して、トナー粒子表面から10乃至200nmの範囲に偏在させやすい。
結着樹脂、ワックス及びビニル系樹脂成分と炭化水素化合物が反応した構造を有する重合体の45体積%メタノール水溶液に分散した分散液における温度25℃で測定した600nmの波長における透過率が下記(4)及び(5)式を満たしていることが好ましい。下記式のY(B)、Y(W)、Y(P)はそれぞれ、結着樹脂、ワックス及びビニル系樹脂成分と炭化水素化合物が反応した構造を有する重合体の前記透過率である。下記(4)及び(5)式を満たす場合、結着樹脂と前記重合体、前記重合体とワックスとが適度になじみやすいことを示す。その場合、熱風処理によるワックスのトナー粒子表面方向への移動の速度をコントロールしやすく、トナー粒子表面から10乃至200nmの範囲で疎水化度を高め、上記(2)式を満たすように調整することが容易となる。
Y(B)−Y(P)≦35% ・・・(4)
Y(P)−Y(W)≦35% ・・・(5)
本発明で用いられる疎水化処理された無機微粒子としては、シラン化合物、シリコーンオイル又はそれらの混合物の如き疎水化剤で疎水化処理されたシリカ微粒子、酸化チタン微粒子、酸化アルミニウム微粒子の如き無機微粒子が好ましく用いられる。これらの無機微粒子を一種類使用しても、二種類以上使用してもよい。
該無機微粒子の比表面積としては、5m2/g以上80m2/g以下の無機微粒子が好ましく、更に好ましくは10m2/g以上60m2/g以下である。
該無機微粒子の比表面積として上記範囲のものを用いることにより、トナー粒子からの無機微粒子の脱離抑制を抑制できるため、耐久通じての摩擦帯電量の変化が小さくなる。また、低温定着性、画像の光沢性や耐定着巻きつき性が良化するために好ましい。
該無機微粒子の添加量としては、トナー粒子100質量部に対して0.5質量部以上20質量部以下であることが好ましい。0.5質量部以上では、所望の摩擦帯電量を得ることができる。20質量部以下では、無機微粒子の脱離が抑えられ、摩擦帯電量の変化が少なくなる。
トナー粒子表面に無機微粒子を分散させる手法としては、ヘンシェルミキサーの如き公知の混合機を用いることができ、トナー粒子表面に分散できるものであれば特に装置は限定されるものではない。
本発明では、トナーの[P1/P2]が1.20以上2.00以下であることが好ましい。該範囲に制御することにより、優れた画像の光沢性を得ることができる。
該(P1)は、トナー表面からトナー中心部に向かうトナーの深さ方向において、トナー表面から約0.3μmにおける結着樹脂に対するワックスの存在比率に係る指数であり、該(P2)は、トナー表面から約1.0μmにおける結着樹脂に対するワックスの存在比率に係る指数である。
本発明では、トナー表面から約0.3μmにおける結着樹脂に対するワックスの存在比率に係る指数(P1)を、トナー表面から約1.0μmにおける結着樹脂に対するワックスの存在比率に係る指数(P2)より大きくし、その存在比率に係る指数比[P1/P2](すなわち、トナー表面からトナー中心部に向かうトナーの深さ方向におけるワックスの偏在度合い)を制御することが好ましい。
[P1/P2]を上記範囲に制御することで、定着時に、トナー表面近傍に多く存在するワックスがトナー表面近傍より中心部にあるワックスの染み出しをさらに促進することができると考えている。
このメカニズムは以下の様に推測している。トナー表面近傍に存在するワックスが溶けることにより、トナー内部からトナー表面へのワックスの通り道が形成され、定着時に効果的にワックスが染み出すことができるためだと思われる。染み出したワックスは、離型性をより高められるため、定着器からの分離性を良化させることができる。
該トナーの[P1/P2]は、好ましくは1.25以上1.95以下でる。
該[P1/P2]が1.20以上の場合、定着時のワックスの染み出し速度が速く、高速なマシンの場合でも、画像の光沢性の良好な画像を得ることができる。また、[P1/P2]が2.00以下の場合には、トナー表面近傍に存在するワックス量が過剰にならず、長期にわたり良好な耐久性を得ることができる。
トナーの[P1/P2]を上記範囲に制御する手段としては、該P1と該P2を独立に制御する手段を用いて、上記範囲に制御できる。
トナーの[P1/P2]の算出方法は、下記の通りである。
ATR法を用い、ATR結晶としてGe、赤外光入射角として45°の条件で測定し得られたFT−IRスペクトルにおいて、2843cm-1以上2853cm-1以下の範囲の最大吸収ピーク強度をPa、1713cm-1以上1723cm-1以下の範囲の最大吸収ピーク強度をPbとし、ATR結晶としてKRS5、赤外光入射角として45°の条件で測定し得られたFT−IRスペクトルにおいて、2843cm-1以上2853cm-1以下の範囲の最大吸収ピーク強度をPc、1713cm-1以上1723cm-1以下の範囲の最大吸収ピーク強度をPdとしたときに、P1=Pa/Pb、P2=Pc/Pdで算出できる。
該最大吸収ピーク強度Paは、2843cm-1以上2853cm-1以下の範囲の吸収ピーク強度の最大値から3050cm-1と2600cm-1の吸収強度の平均値を差し引いた値である。該最大吸収ピーク強度Pbは、1713cm-1以上1723cm-1以下の範囲の吸収ピーク強度の最大値から1763cm-1と1630cm-1の吸収強度の平均値を差し引いた値である。該最大吸収ピーク強度Pcは、2843cm-1以上2853cm-1以下の範囲の吸収ピーク強度の最大値から3050cm-1と2600cm-1の吸収強度の平均値を差し引いた値である。該最大吸収ピーク強度Pdは、1713cm-1以上1723cm-1以下の範囲の吸収ピーク強度の最大値から1763cm-1と1630cm-1の吸収強度の平均値を差し引いた値である。
1713cm-1以上1723cm-1以下の範囲の吸収ピークは、主に結着樹脂由来の−CO−の伸縮振動に起因するピークである。
結着樹脂由来のピークとしては、該以外にも芳香環のCHの面外変角振動等様々なピークが検出されるが、1500cm-1以下の範囲には、ピークが数多く存在し、結着樹脂のピークだけを分離することが困難であり、正確な数値を算出できない。このため、他のピークとの分離が容易な1713cm-1以上1723cm-1以下の範囲の吸収ピークを結着樹脂由来のピークとして用いる。
また、2843cm-1以上2853cm-1以下の範囲の吸収ピークは、主にワックス由来の−CH2−の伸縮振動(対称)に起因するピークである。
ワックスのピークとしては、該以外にも1450cm-1以上1500cm-1以下にCH2の面内変角振動のピークが検出されるが、結着樹脂由来のピークとも重なり合ってしまい、ワックスのピークを分離することが困難である。このため、他のピークとの分離が容易な2843cm-1以上2853cm-1以下の範囲の吸収ピークをワックス由来のピークとして用いる。
ここで、Pa及びPcを求めるに当たり、2843cm-1以上2853cm-1以下の範囲の吸収ピーク強度の最大値から3050cm-1と2600cm-1の吸収強度の平均値を差し引く理由は、ベースラインの影響を排除し、真のピーク強度を算出するためである。3050cm-1と2600cm-1付近には吸収ピークがないため、この2点の平均値を算出することで、ベースライン強度を算出できる。
また、Pb及びPdを求めるに当たり、1713cm-1以上1723cm-1以下の範囲の吸収ピーク強度の最大値から1763cm-1と1630cm-1の吸収強度の平均値を差し引く理由も、ベースラインの影響を排除し、真のピーク強度を算出するためである。3050cm-1と2600cm-1付近には吸収ピークがないため、この2点の平均値を算出することで、ベースライン強度を算出できる。
本発明において、上記結着樹脂由来の最大吸収ピーク強度(Pb、Pd)及びワックス由来の最大吸収ピーク強度(Pa、Pc)が、結着樹脂及びワックスの存在量に相関することを見出した。そこで、ワックス由来の最大吸収ピーク強度を結着樹脂由来の最大吸収ピーク強度で割ることで、結着樹脂に対するワックスの存在比率を算出している。
ATR(Attenuated Total Reflection)法では、試料より高い屈折率を有する結晶(ATR結晶)に、試料を密着させ、臨界角以上の入射角で赤外光を結晶に入射させる。すると、入射光は密着した試料と結晶の界面で全反射を繰り返し出射する。この時、赤外光は試料と結晶の界面で反射するのではなく、試料側にわずかににじみこんでから全反射する。このにじみこみ深さは、波長、入射角及びATR結晶の屈折率に依存する。
dp=λ/(2πn1)×[sin2θ−(n1/n2)2]-1/2
dp:にじみ込み深さ
n1:試料の屈折率(本発明では1.5としている)
n2:ATR結晶の屈折率(ATR結晶がGeの場合の屈折率;4.0、ATR結晶がKRS5の場合の屈折率;2.4)
θ:入射角
このため、ATR結晶の屈折率や入射角を変えることで、にじみこみ深さの異なるFT−IRスペクトルを得ることができる。本発明では、その特性を利用し、トナー表面における結着樹脂に対するワックスの存在比率に係る指数を求め、トナー表面からトナー中心部に向かうトナーの深さ方向におけるワックスの偏在度合いを指数化している。
ATR法において、ATR結晶にGe(n2=4.0)を用い、2000cm-1(λ=5μm)の光を、入射角45°の条件で測定した場合、上記式を用いると、にじみこみ深さdpは0.3μmになる。一方、ATR結晶にKRS5<臭沃化タリウム[臭化タリウムTlBr(42モル%)+ヨウ化タリウム TlI(58モル%)]の組成をもつタリウムハライドの混晶>(n2=2.4)を用い入射角45°の条件で測定した場合、にじみこみ深さは1.0μmとなる。
トナー表面から深さ方向に約0.3μmにおける結着樹脂に対するワックスの存在比率(P1)は、上述のように、ATR法を用い、ATR結晶としてGe(n2=4.0)、赤外光入射角として45°の条件で測定し得られた該Pc及びPdから算出される(P2=Pc/Pd)。ここで(P1)は、トナーの表面近傍の、結着樹脂に対するワックスの存在比率を表すことが必要である。さらなる、(すなわち、トナー表面から約0.3μmより小さい距離)トナー表面近傍の結着樹脂に対するワックスの存在比率を測定する場合、ATR結晶への赤外光(IR)の入射角を大きくすることが考えられる。しかし、入射角を大きくしていくにつれてIRスペクトルの強度が低下してくる。その結果、数値の信頼性が低下してしまう。このため、発明者らはIRのスペクトルの強度が確保できる、入射角45°の条件で測定を行い、トナー表面から約0.3μmの間の結着樹脂に対するワックスの存在比率をトナー表面近傍の結着樹脂に対するワックスの存在比率(P1)とした。
(P1)は0.20以上1.50以下であることが好ましく、より好ましくは、0.30以上1.20以下である。
上記(P1)は、ワックスの種類及び結着樹脂に対するワックスの添加量の調整、トナーの製造工程における熱風を用いたトナーの改質処理の実施により、上記範囲に制御することが可能である。
トナー表面から深さ方向に約1.0μmにおける結着樹脂に対するワックスの存在比率(P2)は、上述のように、ATR法を用い、ATR結晶としてKRS5(n2=2.4)、赤外光入射角として45°の条件で測定し得られた該Pc及びPdから算出される(P2=Pc/Pd)。
上記(P2)は、ワックスの結着樹脂に対する添加量を調整することで上記範囲に制御することが可能である。
(P2)は0.10以上0.70以下であることが好ましく、より好ましくは、0.20以上0.60以下である。
本発明のトナーに用いられるワックスとしては、特に限定されないが、以下のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスの如き炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合物;カルナバワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの。さらに、以下のものが挙げられる。パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸の如き飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸の如き不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールの如き飽和アルコール類;ソルビトールの如き多価アルコール類;パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸の如き脂肪酸類と、ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールの如きアルコール類とのエステル類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドの如き脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドの如き飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’ジオレイルセバシン酸アミドの如き不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’ジステアリルイソフタル酸アミドの如き芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムの如き脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸の如きビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加によって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物。
これらのワックスの中でも、低温定着性、耐定着巻きつき性を向上させるという観点で、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き炭化水素系ワックスが好ましい。
該ワックスの含有量は、結着樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上20質量部以下で使用されることが好ましい。また、トナーの保存性と高温オフセット性の両立の観点から、示差走査熱量分析装置(DSC)で測定される昇温時の吸熱曲線において、温度30℃以上200℃以下の範囲に存在する最大吸熱ピークのピーク温度が50℃以上100℃以下であることが好ましい。
本発明のトナーは、ビニル系樹脂成分と炭化水素化合物が反応した構造を有する重合体をトナー粒子中に含有することが好ましい。
上記ビニル系樹脂成分と炭化水素化合物が反応した構造を有する重合体としては、ビニル系樹脂成分にポリオレフィンがグラフトした構造を有するグラフト重合体又はポリオレフィンにビニル系モノマーがグラフト重合したビニル系樹脂成分を有するグラフト重合体が特に好ましい。
上記ビニル系樹脂成分と炭化水素化合物が反応した構造を有する重合体は、トナー製造時の混練工程や表面平滑工程において溶融した結着樹脂とワックスに対し界面活性剤的な働きをする。従って、該重合体は、トナー粒子中のワックスの一次平均分散粒径のコントロールや、熱風により表面処理を行う際のワックスのトナー表面への移行速度のコントロールができるため好ましい。
上記ビニル系樹脂成分にポリオレフィンがグラフトした構造を有するグラフト重合体又はポリオレフィンにビニル系モノマーがグラフト重合したビニル系樹脂成分を有するグラフト重合体に関して、ポリオレフィンは二重結合を一つ有する不飽和炭化水素系モノマーの重合体または共重合体であれば特に限定されず、様々なポリオレフィンを用いることができる。特にポリエチレン系、ポリプロピレン系が好ましく用いられる。
一方、ビニル系モノマーとしては、以下のものが挙げられる。
スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンの如きスチレン及びその誘導体などのスチレン系モノマー。
メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きアミノ基含有α−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体などの窒素原子を含むビニル系モノマー。
マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステルの如き不飽和二塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和二塩基酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸;クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物の如きα,β−不飽和酸無水物、前記α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物、及びこれらのモノエステルなどのカルボキシル基を含むビニル系モノマー。
2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸エステル類、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルヘキシル)スチレンなどの水酸基を含むビニル系モノマー。
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸−2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類などのアクリル酸エステルからなるエステル単位。
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類などのメタクリル酸エステルからなるエステル単位。
ビニル系樹脂成分と炭化水素化合物が反応した構造を有する重合体は、前述したこれらのモノマー同士の反応や、一方の重合体のモノマーと他方の重合体との反応等、公知の方法によって得ることができる。
ビニル系樹脂成分の構成単位として、スチレン系単位、さらにはアクリロニトリル、またはメタアクリロニトリルを含むことが好ましい。
上記重合体中の炭化水素化合物とビニル系樹脂成分の質量比は1/99〜75/25であることが好ましい。炭化水素化合物とビニル系樹脂成分を上記範囲で用いることが、トナー粒子中へワックスを分散させるため及び熱風により表面処理を行う際のワックスのトナー表面への移行速度のコントロールができるために好ましい。
上記ビニル系樹脂成分と炭化水素化合物が反応した構造を有する重合体の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、0.2質量部以上、20質量部以下であることが好ましい。
上記重合体を上記範囲で用いることが、トナー粒子中へワックスを分散させるため及び熱風により表面処理を行う際のワックスのトナー表面への移行速度のコントロールができるため好ましい。
本発明のトナーに使用される結着樹脂としては、特に限定されず、下記の重合体又は樹脂を用いることが可能である。
例えば、ポリスチレン、ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体などのスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、石油系樹脂などが使用できる。
これらの中で、低温定着性、帯電性制御の観点で、ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。
本発明で好ましく用いられるポリエステル樹脂としては、「ポリエステルユニット」を結着樹脂鎖中に有している樹脂であり、該ポリエステルユニットを構成する成分としては、具体的には、2価以上のアルコールモノマー成分と、2価以上のカルボン酸、2価以上のカルボン酸無水物及び2価以上のカルボン酸エステル等の酸モノマー成分とが挙げられる。
例えば、該2価以上のアルコールモノマー成分として、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ソルビット、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
これらの中で好ましく用いられるアルコールモノマー成分としては、芳香族ジオールであり、ポリエステル樹脂を構成するアルコールモノマー成分において、芳香族ジオールは、80モル%以上の割合で含有することが好ましい。
一方、該2価以上のカルボン酸、2価以上のカルボン酸無水物及び2価以上のカルボン酸エステル等の酸モノマー成分としては、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸類又はその無水物;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類又はその無水物;炭素数6〜18のアルキル基又はアルケニル基で置換されたコハク酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸の如き不飽和ジカルボン酸類又はその無水物;が挙げられる。
これらの中で好ましく用いられる酸モノマー成分としては、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、フマル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸やその無水物等の多価カルボン酸である。
また、該ポリエステル樹脂の酸価は、1mgKOH/g以上20mgKOH/g以下であることがより摩擦帯電量の安定性の観点で好ましい。
なお、該酸価は、樹脂に用いるモノマーの種類や配合量を調整することにより、上記範囲とすることができる。具体的には、樹脂製造時のアルコールモノマー成分比/酸モノマー成分比、分子量を調整することにより制御できる。また、エステル縮重合後、末端アルコールを多価酸モノマー(例えば、トリメリット酸)で反応させることに制御できる。
本発明のトナーに含有できる着色剤としては、以下のものが挙げられる。
黒色着色剤としては、カーボンブラック;イエロー着色剤とマゼンタ着色剤及びシアン着色剤とを用いて黒色に調色したものが挙げられる。着色剤には、顔料を単独で使用してもかまわないが、染料と顔料とを併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。
マゼンタ着色顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48:2、48:3,48:4、49、50、51、52、53、54、55、57:1、58、60、63、64、68、81:1、83、87、88、89、90、112、114、122、123、146、147、150、163、184、202、206、207、209、238、269、282;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35。
マゼンタ着色染料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121;C.I.ディスパースレッド9;C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27;C.I.ディスパーバイオレット1の如き油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40;C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28の如き塩基性染料。
シアン着色顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー2、3、15:2、15:3、15:4、16、17;C.I.バットブルー6;C.I.アシッドブルー45、フタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料。
シアン着色染料としては、C.I.ソルベントブルー70がある。
イエロー着色顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、62、65、73、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、185;C.I.バットイエロー1、3、20。
イエロー着色染料としては、C.I.ソルベントイエロー162がある。
上記着色剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下で使用されることが好ましい。
本発明のトナーには、必要に応じて荷電制御剤を含有させることもできる。トナーに含有される荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、特に、無色でトナーの帯電スピードが速く且つ一定の帯電量を安定して保持できる芳香族カルボン酸の金属化合物が好ましい。
ネガ系荷電制御剤としては、サリチル酸金属化合物、ナフトエ酸金属化合物、ジカルボン酸金属化合物、スルホン酸又はカルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、スルホン酸塩或いはスルホン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、カルボン酸塩或いはカルボン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンが挙げられる。ポジ系荷電制御剤としては、四級アンモニウム塩、該四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物が挙げられる。荷電制御剤はトナー粒子に対して内添しても良いし外添しても良い。荷電制御剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対して、0.2質量部以上10質量部以下が好ましい。
本発明では、用いられる外添剤としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、チタン酸ストロンチウムの如き無機微粒子が好ましい。該無機微粒子は、シラン化合物、シリコーンオイル又はそれらの混合物の如き疎水化剤で疎水化処理されていることが好ましい。
用いられる外添剤の比表面積としては、比表面積が10m2/g以上50m2/g以下の無機微粒子が、外添剤の埋め込み抑制の観点で好ましい。
また、該外添剤は、トナー粒子100質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下使用されることが好ましい。
トナー粒子と外添剤との混合は、ヘンシェルミキサーの如き公知の混合機を用いることができるが、混合できればよく、特に装置は限定されるものではない。
本発明のトナーは、一成分系現像剤としても使用できるが、ドット再現性をより向上させるために、磁性キャリアと混合して、二成分系現像剤として用いることが、また長期にわたり安定した画像が得られるという点で好ましい。
磁性キャリアとしては、例えば、表面を酸化した鉄粉、或いは、未酸化の鉄粉や、鉄、リチウム、カルシウム、マグネシウム、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、希土類の如き金属粒子、それらの合金粒子、酸化物粒子、フェライト等の磁性体や、磁性体と、この磁性体を分散した状態で保持するバインダー樹脂とを含有する磁性体分散樹脂キャリア(いわゆる樹脂キャリア)等、一般に公知のものを使用できる。
本発明のトナーを磁性キャリアと混合して二成分系現像剤として使用する場合、磁性キャリアの混合比率は、現像剤中のトナー濃度として、2質量%以上15質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは4質量%以上13質量%以下にすると通常良好な結果が得られる。
本発明のトナーの製造方法は、特に限定されることなく、公知の製造方法を用いることができる。ここでは、粉砕法を用いたトナーの製造方法を例に挙げて説明する。
原料混合工程では、トナー粒子を構成する材料として、例えば、結着樹脂及びワックス、並びに必要に応じて着色剤、荷電制御剤等の他の成分を、所定量秤量して配合し、混合する。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、メカノハイブリッド(日本コークス工業株式会社製)などが挙げられる。
次に、混合した材料を溶融混練して、結着樹脂中にワックス等を分散させる。溶融混練工程では、加圧ニーダー、バンバリィミキサーの如きバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができ、連続生産できる優位性から、1軸又は2軸押出機が主流となっている。例えば、KTK型2軸押出機(神戸製鋼所社製)、TEM型2軸押出機(東芝機械社製)、PCM混練機(池貝鉄工製)、2軸押出機(ケイ・シー・ケイ社製)、コ・ニーダー(ブス社製)、ニーデックス(日本コークス工業株式会社製)などが挙げられる。更に、溶融混練することによって得られる樹脂組成物は、2本ロール等で圧延され、冷却工程で水などによって冷却してもよい。
ついで、樹脂組成物の冷却物は、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、例えば、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミルの如き粉砕機で粗粉砕した後、更に、例えば、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)、ターボ・ミル(ターボ工業製)やエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕する。
その後、必要に応じて慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業社製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン社製)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製)、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)の如き分級機や篩分機を用いて分級し、トナー粒子を得る。
また、必要に応じて、粉砕後に、ハイブリタイゼーションシステム(奈良機械製作所製)、メカノフージョンシステム(ホソカワミクロン社製)、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)、メテオレインボー MR Type(日本ニューマチック社製)を用いて、球形化処理の如きトナー粒子の表面処理を行うこともできる。
本発明においては、ビニル系樹脂成分と炭化水素化合物が反応した構造を有する重合体をトナー粒子に含有させ、粉砕後、または、分級後に、疎水化処理された無機微粒子Aをトナー粒子の表面に熱風処理によって固着させることが好ましい。
本発明では、例えば、図1で表される表面処理装置を用いて熱風により表面処理を行い、必要に応じて分級をすることによりトナーを得ることが好ましい。
該熱風による表面処理は、トナーを高圧エア供給ノズルからの噴射により噴出させ、該噴出させたトナーを、熱風中にさらすことでトナーの表面を処理し、該熱風の温度が、120℃以上400℃以下の範囲であることが特に好ましい。
ここで、上記熱風を用いた表面処理の方法の概略を、図1を用いて説明するが、これに限定されるものではない。図1は本発明で用いた表面処理装置の一例を示した断面図である。具体的には、上記トナー粒子表面に無機微粒子を分散させた後、当該表面処理装置に供給する。そして、トナー供給口(100)から供給されたトナー粒子(114)は、高圧エア供給ノズル(115)から噴射されるインジェクションエアにより加速され、その下方にある気流噴射部材(102)へ向かう。気流噴射部材(102)からは拡散エアが噴射され、この拡散エアによりトナー粒子が外側方向へ拡散する。この時、インジェクションエアの流量と拡散エアの流量とを調節することにより、トナーの拡散状態をコントロールすることができる。
また、トナー粒子の融着防止を目的として、トナー供給口(100)の外周、表面処理装置外周及び移送配管(116)の外周には冷却ジャケット(106)が設けられている。尚、該冷却ジャケットには冷却水(好ましくはエチレングリコール等の不凍液)を通水することが好ましい。一方、拡散エアにより拡散したトナー粒子は、熱風供給口(101)から供給された熱風により、トナー粒子の表面が処理される。この時、熱風温度C(℃)は120℃以上400℃以下であることが好ましい。更に好ましくは、130℃以上350℃以下であり、特に好ましくは、140℃以上300℃以下である。
熱風の温度が120℃未満の場合には、熱風処理中にワックスが移動しにくく、トナー粒子表面から10乃至200nmの範囲にワックスを偏在させることができず前記式(2)を満たすことができないことがある。また、400℃を超える場合には、熱風処理中にワックスが移動しやすくトナー粒子表面から0〜10nmの範囲にまでワックスが移動しやすくなり、前記式(2)を満たすことができないことがある。
熱風により表面が処理されたトナー粒子は、装置上部外周に設けた冷風供給口(103)から供給される冷風により冷却される。この時、装置内の温度分布の制御、トナーの表面状態をコントロールする目的で、装置の本体側面に設けた第二の冷風供給口(104)から冷風を導入しても良い。第二の冷風供給口(104)の出口はスリット形状、ルーバー形状、多孔板形状、メッシュ形状等を用いる事ができ、導入方向は中心方向へ水平、装置壁面に沿う方向が、目的に応じて選択可能である。この時、冷風の温度E(℃)は−40℃以上10℃以下であることが好ましい。更に好ましくは、−30℃以上10℃以下である。また、該冷風は除湿された冷風であることが好ましい。具体的には、冷風の絶対水分量が5g/m3以下であることが好ましい。更に好ましくは、3g/m3以下である。
冷風温度が−40℃以上の場合には装置内の温度低下が抑制され、本来の目的である熱による処理が十分に行われる。よって、熱風処理中にワックスが移動しにくく、トナー粒子表面から10乃至200nmの範囲にワックスを偏在させやすい。また、10℃以下の場合は、装置内における熱風ゾーンの制御が十分で、粒子同士の合一を抑制することができる。
その後、冷却されたトナー粒子は、ブロワーで吸引され、移送配管(116)を通じて、サイクロン等で回収される。
本発明におけるトナー及び原材料の各種物性の測定法について以下に説明する。
<(P1)及びP2の算出方法>
FT−IRスペクトルは、ユニバーサルATR測定アクセサリー(Universal ATR Sampling Accessory)を装着したフーリエ変換赤外分光分析装置(Spectrum One:PerkinElmer社製)を用い、ATR法で測定する。具体的な測定手順と、(P1)、P2及び(P1)をP2で除した[(P1)/P2]の算出方法は以下の通りである。
赤外光(λ=5μm)の入射角は45°に設定する。ATR結晶としては、GeのATR結晶(屈折率=4.0)、KRS5のATR結晶(屈折率=2.4)を用いる。その他の条件は以下の通りである。
Range
Start:4000cm-1
End :600cm-1(GeのATR結晶)
400cm-1(KRS5のATR結晶)
Duration
Scan number:16
Resolution :4.00cm-1
Advanced :CO2/H2O補正あり
[(P1)の算出方法]
(1)GeのATR結晶(屈折率=4.0)を装置に装着する。
(2)Scan typeをBackground、UnitsをEGYに設定し、バックグラウンドを測定する。
(3)Scan typeをSample、UnitsをAに設定する。
(4)トナーをATR結晶の上に、0.01g精秤する。
(5)圧力アームでサンプルを加圧する。(Force Gaugeは90)
(6)サンプルを測定する。
(7)3050cm-1と2600cm-1の吸収強度の平均値を算出する。(Pc2)
(8)Pc1−Pc2=Pcとする。当該Pcを2843cm-1以上2853cm-1以下の範囲の最大吸収ピーク強度と規定する。
(9)1713cm-1以上1723cm-1以下の範囲の吸収ピーク強度の最大値を算出する。(Pd1)
(10)1763cm-1と1630cm-1の吸収強度の平均値を算出する(Pd2)
(11)1713cm-1以上1723cm-1以下の範囲の吸収ピーク強度の最大値を算出する。(Pb1)
(12)1763cm-1と1630cm-1の吸収ピーク強度の平均値を算出する(Pb2)
(13)Pb1−Pb2=Pbとする。当該Pbを1713cm-1以上1723cm-1以下の範囲の最大吸収ピーク強度と規定する。
(14)Pa/Pb=(P1)とする。
[P2の算出方法]
(1)KRS5のATR結晶(屈折率=2.4)を装置に装着する。
(2)トナーをATR結晶の上に、0.01g精秤する。
(3)圧力アームでサンプルを加圧する。(Force Gaugeは90)
(4)サンプルを測定する。
(5)得られたFT−IRスペクトルを、Automatic Correctionでベースライン補正をする。
(6)2843cm-1以上2853cm-1以下の範囲の吸収ピーク強度の最大値を算出する。(Pc1)
(7)3050cm-1と2600cm-1の吸収強度の平均値を算出する。(Pc2)
(8)Pc1−Pc2=Pcとする。当該Pcを2843cm-1以上2853cm-1以下の範囲の最大吸収ピーク強度と規定する。
(9)1713cm-1以上1723cm-1以下の範囲の吸収ピーク強度の最大値を算出する。(Pd1)
(10)1763cm-1と1630cm-1の吸収強度の平均値を算出する(Pd2)
(11)Pd1−Pd2=Pdとする。当該Pdを1713cm-1以上1723cm-1以下の範囲の最大吸収ピーク強度と規定する。
(12)Pc/Pd=P2とする。
[(P1)/P2の算出方法]
上記のようにして求めた(P1)とP2を用い、(P1)/P2を算出する。
<トナーの平均円形度の測定方法>
トナーの平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス社製)によって、校正作業時の測定及び解析条件で測定する。
具体的な測定方法は、以下の通りである。まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水約20mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.2ml加える。更に測定試料を約0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(例えば「VS−150」(ヴェルヴォクリーア社製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に該コンタミノンNを約2ml添加する。
測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した該フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE−900A」(シスメックス社製)を使用した。該手順に従い調整した分散液を該フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー粒子を計測する。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を指定することにより、その範囲の粒子の個数割合(%)、平均円形度を算出することができる。トナーの平均円形度は、円相当径1.98μm以上、39.96μm以下とし、トナーの平均円形度を求めた。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えば、Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5200A」をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
なお、本願実施例では、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用した。解析粒子径を円相当径1.98μm以上、39.69μm未満に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行った。
<トナーの表面張力指数の測定方法>
トナーの表面張力指数は以下の方法を用いて測定した。
トナー約5.5gを測定セルに静かに投入し、タッピングマシンPTM−1型(三協パイオテク社製)を用いて、タッピングスピード30回/minにて1分間タッピング操作を行った。これを測定装置(三協パイオテク社製:WTMY−232A型ウェットテスタ)内にセットし測定を行った。毛管圧力Pα(kN/m2)の測定には毛細管吸引時間法を用いた。各測定の条件は下記の通りである。
溶媒 :45体積%メタノール水溶液
測定モード:定流量法(A2モード)
液体流量 :2.4ml/min
セル :Y型測定セル
トナーの表面張力指数(N/m)は、トナーの毛細管吸引時間法により測定された毛管圧力をPα(kN/m2)、トナーの比表面積をA(m2/g)、トナーの真密度をB(g/cm3)とした時に、下記式(1)より算出した。尚、トナーの比表面積、真密度は後述の方法により測定した。
式(1):トナー表面張力指数=Pα/(A×B×103)
<トナー及び無機微粒子の比表面積(BET法)の測定方法>
トナー及び無機微粒子のBET比表面積の測定は、JIS Z8830(2001年)に準じて行なった。具体的な測定方法は、以下の通りである。
測定装置としては、定容法によるガス吸着法を測定方式として採用している「自動比表面積・細孔分布測定装置 TriStar3000(島津製作所社製)」を用いた。測定条件の設定および測定データの解析は、本装置に付属の専用ソフト「TriStar3000 Version4.00」を用いて行い、また装置には真空ポンプ、窒素ガス配管、ヘリウムガス配管が接続される。窒素ガスを吸着ガスとして用い、BET多点法により算出した値を本発明におけるトナー及び無機微粒子のBET比表面積とした。
尚、BET比表面積は以下のようにして算出した。
まず、トナー及び無機微粒子といった測定サンプルに窒素ガスを吸着させ、その時の試料セル内の平衡圧力P(Pa)とサンプルの窒素吸着量Va(モル・g-1)を測定する。そして、試料セル内の平衡圧力P(Pa)を窒素の飽和蒸気圧Po(Pa)で除した値である相対圧Prを横軸とし、窒素吸着量Va(モル・g-1)を縦軸とした吸着等温線を得る。次いで、サンプルの表面に単分子層を形成するのに必要な吸着量である単分子層吸着量Vm(モル・g-1)を、下記のBET式を適用して求める。
Pr/Va(1−Pr)=1/(Vm×C)+(C−1)×Pr/(Vm×C)
(ここで、CはBETパラメーターであり、測定サンプル種、吸着ガス種、吸着温度により変動する変数である。)
BET式は、X軸をPr、Y軸をPr/Va(1−Pr)とすると、傾きが(C−1)/(Vm×C)、切片が1/(Vm×C)の直線と解釈できる(この直線をBETプロットという)。
直線の傾き=(C−1)/(Vm×C)
直線の切片=1/(Vm×C)
Prの実測値とPr/Va(1−Pr)の実測値をグラフ上にプロットして最小二乗法により直線を引くと、その直線の傾きと切片の値が算出できる。これらの値を用いて該の傾きと切片の連立方程式を解くと、VmとCが算出できる。
さらに、該で算出したVmと窒素分子の分子占有断面積(0.162nm2)から、下記の式に基づいて、サンプルのBET比表面積S(m2/g)を算出する。
S=Vm×N×0.162×10-18
(ここで、Nはアボガドロ数(モル-1)である。)
本装置を用いた測定は、装置に付属の「TriStar3000 取扱説明書V4.0」に従うが、具体的には、以下の手順で測定した。
充分に洗浄、乾燥した専用のガラス製試料セル(ステム直径3/8インチ、容積約5ml)の風袋を精秤する。そして、ロートを使ってこの試料セルの中に約2gのトナーまたは約0.1gの無機微粒子を入れる。
サンプルを入れた該試料セルを真空ポンプと窒素ガス配管を接続した「前処理装置 バキュプレップ061(島津製作所社製)」にセットし、23℃にて真空脱気を約10時間継続する。尚、真空脱気の際には、サンプルが真空ポンプに吸引されないよう、バルブを調整しながら徐々に脱気する。セル内の圧力は脱気とともに徐々に下がり、最終的には約0.4Pa(約3ミリトール)となる。真空脱気終了後、窒素ガスを徐々に注入して試料セル内を大気圧に戻し、試料セルを前処理装置から取り外す。そして、この試料セルの質量を精秤し、風袋との差から外添剤の正確な質量を算出する。尚、この際に、試料セル内の外添剤が大気中の水分等で汚染されないように、秤量中はゴム栓で試料セルに蓋をしておく。
次に、サンプルが入った該試料セルのステム部に専用の「等温ジャケット」を取り付ける。そして、この試料セル内に専用のフィラーロッドを挿入し、該装置の分析ポートに試料セルをセットする。尚、等温ジャケットとは、毛細管現象により液体窒素を一定レベルまで吸い上げることが可能な、内面が多孔性材料、外面が不浸透性材料で構成された筒状の部材である。
続いて、接続器具を含む試料セルのフリースペースの測定を行なう。フリースペースは、23℃においてヘリウムガスを用いて試料セルの容積を測定し、続いて液体窒素で試料セルを冷却した後の試料セルの容積を、同様にヘリウムガスを用いて測定して、これらの容積の差から換算して算出する。また、窒素の飽和蒸気圧Po(Pa)は、装置に内蔵されたPoチューブを使用して、別途に自動で測定される。
次に、試料セル内の真空脱気を行った後、真空脱気を継続しながら試料セルを液体窒素で冷却する。その後、窒素ガスを試料セル内に段階的に導入してトナーに窒素分子を吸着させる。この際、平衡圧力P(Pa)を随時計測することにより該吸着等温線が得られるので、この吸着等温線をBETプロットに変換する。尚、データを収集する相対圧Prのポイントは、0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30の合計6ポイントに設定する。得られた測定データに対して最小二乗法により直線を引き、その直線の傾きと切片からVmを算出する。さらに、このVmの値を用いて、上述したようにトナー及び無機微粒子のBET比表面積を算出した。
<トナーの真密度の測定>
トナーの真密度は、乾式自動密度計オートピクノメーター(ユアサアイオニクス社製)により測定した。条件は下記の通りである。
セル SMセル(10ml)
サンプル量 約2.0g
この測定方法は、気相置換法に基づいて、固体・液体の真密度を測定するものである。液相置換法と同様、アルキメデスの原理に基づいているが、置換媒体としてガス(アルゴンガス)を用いるため、微細孔への精度が高い。
<45体積%メタノール水溶液におけるトナー、結着樹脂、ワックス及びビニル系樹脂成分と炭化水素化合物が反応した構造を有する重合体の透過率の測定>
(1)分散液の調製
メタノールと水の体積混合比が45:55の水溶液を作製する。この水溶液10cm3を30cm3のサンプルビン(例えば、商品名「SV−30」、日電理化硝子社製)に入れ、測定するサンプル20mgを液面上に浸しビンのフタをする。その後、ヤヨイ式振とう器(モデル:YS−LD、ヤヨイ社製)により2.5S-1で5秒間振とうする。この時、振とうする角度は、振とう器の真上(垂直)を0度とすると、前方に15度、後方に20度、振とうする支柱が動くようにする。サンプルビンは支柱の先に取り付けた固定用ホルダー(サンプルビンの蓋が支柱中心の延長上に固定されたもの)に固定する。振とう終了時から30秒後の分散液を測定用分散液とした。
(2)透過率の測定
上記(1)で得た分散液を1cm角の石英セルに入れ、分光光度計MPS2000(島津製作所社製)を用いて10分後の分散液の波長600nmにおける透過率(%)を25℃の環境の下で測定した。
透過率(%)=I/I0×100
(上記式において、I0は入射光束、Iは透過光束を表す)
<樹脂のピーク分子量(Mp)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)の測定方法>
ピーク分子量(Mp)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
まず、室温で24時間かけて、試料(樹脂)をテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マエショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。尚、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が約0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置 :HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム :Shodex KF−801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液 :テトラヒドロフラン(THF)
流速 :1.0ml/min
オーブン温度:40.0℃
試料注入量 :0.10ml
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソ−社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
<樹脂の軟化点の測定方法>
樹脂の軟化点の測定は、定荷重押し出し方式の細管式レオメータ「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」(島津製作所社製)を用い、装置付属のマニュアルに従って行う。本装置では、測定試料の上部からピストンによって一定荷重を加えつつ、シリンダに充填した測定試料を昇温させて溶融し、シリンダ底部のダイから溶融された測定試料を押し出し、この際のピストン降下量と温度との関係を示す流動曲線を得ることができる。
本発明においては、「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」に付属のマニュアルに記載の「1/2法における溶融温度」を軟化点とする。尚、1/2法における溶融温度とは、次のようにして算出されたものである。まず、流出が終了した時点におけるピストンの降下量Smaxと、流出が開始した時点におけるピストンの降下量Sminとの差の1/2を求める(これをXとする。X=(Smax−Smin)/2)。そして、流動曲線においてピストンの降下量がXとなるときの流動曲線の温度が、1/2法における溶融温度である。
測定試料は、約1.0gの樹脂を、25℃の環境下で、錠剤成型圧縮機(例えば、NT−100H、エヌピーエーシステム社製)を用いて約10MPaで、約60秒間圧縮成型し、直径約8mmの円柱状としたものを用いる。
CFT−500Dの測定条件は、以下の通りである。
試験モード:昇温法
開始温度:50℃
到達温度:200℃
測定間隔:1.0℃
昇温速度:4.0℃/min
ピストン断面積:1.000cm2
試験荷重(ピストン荷重):10.0kgf(0.9807MPa)
予熱時間:300秒
ダイの穴の直径:1.0mm
ダイの長さ:1.0mm
<ワックスの最大吸熱ピークの測定>
ワックスの最大吸熱ピークのピーク温度は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、ワックス約10mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定温度範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。尚、測定においては、一度200℃まで昇温させ、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程での温度30〜200℃の範囲におけるDSC曲線の最大の吸熱ピークを示す温度を、ワックスの最大吸熱ピークのピーク温度とする。
<トナー粒子の重量平均粒径(D4)の測定方法>
トナー粒子の重量平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出する。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下に設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。尚、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
<無機微粒子がトナー粒子表面に固着された割合の測定方法>
本発明の無機微粒子がトナー粒子表面に固着された割合は、走査電子顕微鏡による反射電子像の観察と、続く画像処理により求めることができる。
本発明に用いられる無機微粒子がトナー粒子表面に固着された割合の測定は、走査電子顕微鏡(SEM)、S−4800(日立製作所社製)を用いて行った。無機微粒子に由来する部分の面積割合は、加速電圧2.0kVのときの、主に反射電子を可視化した像の画像処理から算出される。
具体的には、電子顕微鏡観察用の試料台上にカーボンテープでトナー粒子を一層になるように固定し、白金による蒸着は行わずに、以下の条件にて、走査電子顕微鏡S−4800(日立製作所社製)で観察した。フラッシング操作を行ってから観察を行う。
SignalName=SE(U,LA80)
AcceleratingVoltage=2000Volt
EmissionCurrent=10000nA
WorkingDistance=6000um
LensMode=High
Condencer1=5
ScanSpeed=Slow4(40秒)
Magnification=5000
DataSize=1280×960
ColorMode=Grayscale
反射電子像は、走査電子顕微鏡S−4800の制御ソフト上で‘コントラスト5、ブライトネス−5’に明るさを調整し、キャプチャスピード/積算枚数‘Slow4を40秒’、画像サイズ1280×960pixelsの8bitの256階調グレースケール画像としてトナー粒子の投影像を得た。
続いて、得られた反射電子による投影像を用いて、トナー粒子50個について無機微粒子の面積割合(面積%)を算出した。解析するトナー粒子50個の選択方法の詳細は後述する。無機微粒子に由来する部分の面積%は、画像処理ソフトImage−Pro Plus5.1J(MediaCybernetics社製)を使用した。
次に、トナー粒子の部分を抽出し、抽出されたトナー粒子のサイズをカウントした。具体的には、まず、解析するトナー粒子を抽出するため、トナー粒子と背景部分を分離する。Image−Pro Plus5.1Jの「測定」−「カウント/サイズ」を選択する。「カウント/サイズ」の「輝度レンジ選択」で、輝度レンジを50〜255の範囲に設定して、背景として写りこんでいる輝度の低いカーボンテープ部分を除外し、トナー粒子の抽出を行った。カーボンテープ以外の方法でトナー粒子を固定した際には、必ずしも背景が輝度の低い領域とならない、あるいは、部分的にトナー粒子と同じような輝度となる可能性は皆無ではない。しかし、トナー粒子と背景の境界については、反射電子観察像から容易に区別できる。抽出を行う際、「カウント/サイズ」の抽出オプションで、4連結を選択し、平滑度5を入力、穴埋めるにチェックを入れ、画像の全ての境界(外周)上に位置する粒子や他の粒子と重なっている粒子については、計算から除外するものとした。次に「カウント/サイズ」の測定項目で、面積とフェレ径(平均)を選択し、面積の選別レンジを最小300pixel、最大10000000pixelとした。また、フェレ径(平均)は、後述するトナー粒子の体積分布基準50%粒径(D50)の測定値の±25%径の範囲になるよう選別レンジを設定し、画像解析するトナー粒子を抽出した。抽出された粒子群から一粒子を選択し、その粒子に由来する部分の大きさ(pixel数)を(ja)を求めた。
次に、Image−Pro Plus5.1Jの「カウント/サイズ」の「輝度レンジ選択」で、輝度レンジを140乃至255の範囲に設定して、トナー粒子上の輝度の高い部分の抽出を行った。面積の選別レンジを最小10pixel、最大10000pixelとした。
そして、jaを求める際に選択した粒子について、トナー粒子表面の無機微粒子に由来する部分の大きさ(pixel数)(ma)を求めた。各トナー粒子においては、無機微粒子由来の抽出部分は、ある大きさをもって点在することになるが、maはその総面積である。そして、本発明に係る面積割合は、(ma/ja)×100で求められる。
次いで、抽出されたトナー粒子群の各粒子に対して、選択されるトナー粒子の数が50となるまで同様の処理を行った。一視野中の粒子の数が50に満たない場合には、別視野のトナー粒子投影像について同様の操作を繰り返した。トナー粒子50個に対して無機微粒子がトナー粒子表面に固着された割合を求め、その平均値を本発明における無機微粒子がトナー粒子表面に固着された割合とした。
以下、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、以下の配合における「部」、「%」は特に説明が無い場合は質量基準である。
<結着樹脂製造例1>
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン74.5質量部(0.162モル)、テレフタル酸24.3質量部(0.146モル)、及びチタンテトラブトキシド0.5質量部をガラス製4リットルの4つ口フラスコに入れ、温度計、撹拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取りつけマントルヒーター内においた。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、3.5時間反応させた。(第1反応工程)その後、無水トリメリット酸3.0質量部(0.015モル)を添加し、190℃で1時間反応させ(第2反応工程)、結着樹脂1を得た。
この結着樹脂1の酸価は5mgKOH/gであり、水酸基価は60mgKOH/gであった。また、GPCによる分子量は、重量平均分子量(Mw)8,900、数平均分子量(Mn)3,600、ピーク分子量(Mp)5,600、軟化点は90℃であった。さらに、45体積%メタノール水溶液に分散した分散液における温度25℃で測定した600nmの波長における透過率は40%であった。
<結着樹脂製造例2>
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン70.6質量部(0.153モル)、テレフタル酸24.3質量部(0.146モル)、及びチタンテトラブトキシド0.6質量部をガラス製4リットルの4つ口フラスコに入れ、温度計、撹拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取りつけマントルヒーター内においた。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、1.5時間反応させた。(第1反応工程)その後、無水トリメリット酸5.0質量部(0.026モル%)を添加し、180℃で8時間反応させ(第2反応工程)、結着樹脂2を得た。
この結着樹脂2の酸価は10mgKOH/gであり、水酸基価は5mgKOH/gである。また、GPCによる分子量は、重量平均分子量(Mw)250,000、数平均分子量(Mn)5,000、ピーク分子量(Mp)10,000、軟化点は130℃であった。さらに、45体積%メタノール水溶液に分散した分散液における温度25℃で測定した600nmの波長における透過率は48%であった。
<重合体製造例1>
・低密度ポリエチレン(Mw1400、Mn850、DSCによる最大吸熱ピークが100℃) 18質量部
・スチレン 66質量部
・n−ブチルアクリレート 13.5質量部
・アクリロニトリル 2.5質量部
をオートクレーブに仕込み、系内をN2置換後、昇温撹拌しながら180℃に保持した。系内に、2質量%のt−ブチルハイドロパーオキシドのキシレン溶液50質量部を5時間連続的に滴下し、冷却後溶媒を分離除去し、上記低密度ポリエチレンにビニル樹脂成分が反応した重合体Aを得た。重合体Aの分子量を測定したところ、重量平均分子量(Mw)7100、数平均分子量(Mn)3000であった。さらに、45体積%メタノール水溶液に分散した分散液における温度25℃で測定した600nmの波長における透過率は69%であった。
<重合体製造例2>
・低密度ポリエチレン(Mw1300、Mn800、DSCによる最大吸熱ピークが95℃) 20質量部
・o−メチルスチレン 65質量部
・n−ブチルアクリレート 11質量部
・メタアクリロニトリル 4.0質量部
をオートクレーブに仕込み、系内をN2置換後、昇温撹拌しながら170℃に保持した。系内に、2質量%のt−ブチルハイドロパーオキシドのキシレン溶液50質量部を5時間連続的に滴下し、冷却後溶媒を分離除去し、上記低密度ポリエチレンにビニル樹脂成分が反応した重合体Bを得た。重合体Bの分子量を測定したところ、重量平均分子量(Mw)6900、数平均分子量(Mn)2900であった。さらに、45体積%メタノール水溶液に分散した分散液における温度25℃で測定した600nmの波長における透過率は63%であった。
<トナー粒子製造例1>
・結着樹脂1 60質量部
・結着樹脂2 40質量部
・フィッシャートロプシュワックス(最大吸熱ピークのピーク温度90℃) 6質量部
・C.I.ピグメントブルー15:3 5質量部
・3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 0.2質量部
・重合体A 5質量部
該処方で示した原材料をヘンシェルミキサー(FM−75型、三井鉱山(株)製)を用いて、回転数20s-1、回転時間5minで混合した後、温度140℃に設定した二軸混練機(PCM−30型、株式会社池貝製)にて混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機(T−250、ターボ工業(株)製)にて微粉砕した。得られた微粉砕物100質量部に、ヘキサメチルジシラザン5質量%で表面処理したBET比表面積30m2/gの疎水性シリカ微粒子4.0質量部、イソブチルトリメトキシシラン10質量%で表面処理したBET比表面積180m2/gの酸化チタン微粒子0.5質量部を添加し、ヘンシェルミキサー(FM−10型、日本コークス鉱業(株)製)で、回転数65s-1、回転時間5minで混合し、図1で示す表面処理装置によって熱処理を行いトナー粒子1を得た。
図1において、気流噴射部材102の下端はトナー供給口100から100mmの位置に装備して熱処理を行った。
運転条件はフィード量=5kg/hr、熱風温度C=185℃、熱風流量=6m3/min.、冷風温度E=5℃、冷風流量=4m3/min.、冷風絶対水分量=3g/m3、ブロワー風量=20m3/min.、インジェクションエア流量=1m3/min.、拡散エア=0.3m3/min.とした。
このとき得られたトナー粒子1は、平均円形度が0.966、重量平均粒径(D4)が7.4μmで、無機微粒子がトナー粒子表面に固着された割合は32%であった。
<トナー粒子製造例2乃至27>
トナー粒子製造例1において、下記表1に示す処方、製造条件を変更する以外は同様にして、トナー粒子2乃至27を得た。表1には、無機微粒子がトナー粒子表面に固着された割合も示した。
<トナー製造例1>
トナー粒子1 100質量部に、ヘキサメチルジシラザン5質量%で表面処理したBET比表面積150m2/gの疎水性シリカ微粒子1.2質量部を添加し、ヘンシェルミキサー、(FM−10型、三井鉱山(株)製)で回転数65s-1、回転時間10min混合して、トナー1を得た。
<トナー製造例2乃至27>
トナー製造例1において、下記表2に示す処方を変更する以外は同様にして、トナー2乃至27を得た。
また、得られたトナー1乃至27の処方及び物性を表2に示す。
<磁性コア粒子の製造例1>
工程1(秤量・混合工程):
Fe2O3 60.2質量%
MnCO3 33.9質量%
Mg(OH)2 4.8質量%
SrCO3 1.1質量%
上記構成比となるようにフェライト原材料を秤量した。その後、直径10mmジルコニアのボールを用いた乾式ボールミルで2時間粉砕・混合した。
工程2(仮焼成工程):
粉砕・混合した後、バーナー式焼成炉を用い大気中で温度950℃で2時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。フェライトの組成は、下記の通りであった。
(MnO)0.387(MgO)0.108(SrO)0.010(Fe2O3)0.495
工程3(粉砕工程):
クラッシャーで0.5mm程度に粉砕した後に、直径10mmステンレスのボールのボールを用い、仮焼フェライト100質量部に対し、水を30質量部加え、湿式ボールミルで6時間粉砕した。
そのスラリーを、直径1.0mmジルコニアのビーズを用いた湿式ビーズミルで3時間粉砕し、フェライトスラリーを得た。
工程4(造粒工程):
フェライトスラリーに、バインダーとして仮焼フェライト100質量部に対してポリビニルアルコール2.0質量部を添加し、スプレードライヤー(製造元:大川原化工機)で、約36μmの球状粒子に造粒した。
工程5(本焼成工程):
焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度0.01体積%以下)で、温度1300℃で4時間焼成した。
工程6(選別工程):
凝集した粒子を解砕した後に、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、磁性コア粒子1を得た。
<磁性キャリア製造例1>
ストレートシリコーン樹脂(SR2411 東レダウコーニング) 20.0質量%
(20質量%トルエン溶液における動粘度 1.1×10-4m2/sec)
γ−アミノプロピルトリエトキシシラン 0.5質量%
トルエン 79.0質量%
上記材料を上記組成比になるように混合し、樹脂液1を得た。
樹脂液1を樹脂成分として1.0質量部になるようにナウターミキサーに投入した。減圧下で70℃に加熱し、1.7S-1(100rpm)で混合し、4時間かけて溶媒除去及び塗布操作を行った。その後、得られた試料をジュリアミキサーに移し、窒素雰囲気下、温度200℃で2時間熱処理した後、目開き70μmの篩で分級して磁性キャリア1を得た。得られた磁性キャリア1の体積分布基準50%粒径(D50)は、36.5μmであった。
(実施例1乃至15、比較例1乃至12)
次に、上記のように作製したトナーと磁性キャリアとを、表3の組み合わせで二成分系現像剤を作成した。該二成分系現像剤は、トナー濃度が8質量%になるようにV型混合機(V−10型:株式会社徳寿製作所)で0.5s-1、回転時間5minで混合した。図2として、実施例と比較例で用いたトナーにおける透過率と表面張力指数との関係を示す(図2中の番号はトナー番号)。
<二成分系現像剤の評価>
画像形成装置として、410mm/secにプロセススピードを変更したimage RUNNER ADVANCE C7065改造機を用い、画像形成し評価を行った。なお、前記二成分系現像剤1乃至27を画像形成装置のシアン用現像器に入れて評価を行った。印刷環境は温度23℃/湿度50%RH(以下「N/N」)の常温低湿環境下及び温度30℃/湿度80%RH(以下「H/H」)の高温高湿環境下で行った。
FFh画像とは、256階調を16進数で表示した値であり、00hを256階調の1階調目(白地部)、FFhを256階調の256階調目(ベタ部)とする。上記条件で、印字比率2%、FFh画像のオリジナル原稿(A4)を用いて、1枚目と同じ現像条件、転写条件(キャリブレーション無し)で通紙を行い20,000枚耐久試験を行い、以下の評価を行った。
紙:CS−814レーザープリンター用紙(坪量81.4g/m2、JIS P8119に準じて測定されたベック平滑度82秒)
(キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)
(1)耐久後の画像濃度の変化
N/N及びH/H環境下での耐久前後の画像濃度変化を評価した。
FFh画像のトナーの載り量を0.45mg/cm2となるように現像電圧を初期調整した。X−Riteカラー反射濃度計(500シリーズ:X−Rite社製)を使用し、評価紙CS−814に5cm×5cmの大きさのFFh画像を3枚出力し、3枚目の画像濃度を測定した。耐久初期及び耐久後の画像濃度の差を以下の基準で評価とした。
(評価基準)
A:0.00以上0.05未満(非常に良好)
B:0.05以上0.10未満(良好)
C:0.10以上0.20未満(本発明において許容レベル)
D:0.20以上 (本発明において許容できない)
(2)非画像部(白地部)へのカブリ
N/N及びH/H環境下での耐久前後の白地部カブリを測定した。
画出し前の評価紙の平均反射率Dr(%)をリフレクトメータ(東京電色株式会社製の「REFLECTOMETER MODEL TC−6DS」)によって測定した。
初期(1枚目)、耐久後(60000枚目)の、00H画像部;白地部の反射率Ds(%)を測定した。得られたDr及びDs(初期および耐久後)より、下記式を用いてカブリ(%)を算出した。得られたカブリを下記の評価基準に従って評価した。
カブリ(%)=Dr(%)−Ds(%)
(評価基準)
A:0.5%未満 (非常に良好)
B:0.5%以上1.0%未満(良好)
C:1.0%以上2.0%未満(本発明において許容レベル)
D:2.0%以上 (本発明において許容できない)
(3)画像の光沢性
N/N及びH/H環境下において、紙上のトナー載り量が1.2mg/cm2になるように調整し、評価紙CS−814にFFh画像を画像印字比率25%で画像を形成した。ハンディ光沢計(東京電色株式会社製の「PG−1M」)を用い、単角度60°での値を測定し、その測定値をグロス値として、耐久初期の光沢性を下記の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
A:15.0以上 (非常に良好)
B:13.0以上15.0未満(良好)
C:10.0以上13.0未満(本発明において許容レベル)
D:10.0未満 (本発明において許容できない)
(4)画像の面内均一性
N/N及びH/H環境下において、紙上のトナー載り量が0.40mg/cm2になるように調整した。次いで、15cm×25cmの大きさの二次色のFFh画像を1枚出力して、耐久初期及び耐久後の画像の面内均一性を下記の評価基準に従って目視にて評価した。なお、評価紙としてMulti Purpose Paper(JIS P8119に準じて測定されたベック平滑度23秒、Canon USAより販売)を使用した。
(評価基準)
A:面内均一性が特に優れている(非常に良好)
B:面内均一性が優れている (良好)
C:面内均一性が良好である (本発明において許容レベル)
D:面内が不均一である (本発明において許容できない)
上記N/N及びH/H環境下の評価結果まとめをそれぞれ表4及び表5に示す。