JP2021123645A - ガスバリア性コーティング液及びガスバリア性積層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】一回の塗工により得られる単層において高い酸素バリア性及び水蒸気バリア性を付与させることが可能であり、塗工時のハジキやクレーターの形成等の塗布欠陥を抑制し均一な塗膜(層)を容易に得ることができるガスバリア性コーティング液及び該コーティング液より形成されたガスバリア層を有するガスバリア性積層体を提供する。【解決手段】カルボキシル基含有水分散性ポリエステル樹脂(A)と、多価金属化合物(B)と、揮発性塩基(C)と、炭酸塩(D)と、炭素数12〜18の高級脂肪族カルボン酸又は高級脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(E)の少なくとも一種と、溶媒とを含み、カルボキシル基含有水分散性ポリエステル樹脂(A)の酸価が30mgKOH/g以上であり、多価金属化合物(B)100質量部に対して、カルボキシル基含有水分散性ポリエステル樹脂(A)が0.1〜35質量部添加されてなる。【選択図】なし

Description

本発明は、ガスバリア性コーティング液及びガスバリア性積層体に関する。
フィルムやシートに酸素や水蒸気を遮断するいわゆるガスバリア性が付与されたガスバリア性積層体は、食品や飲料、医薬品、電子材料及び精密部材等の包装材料として広く使用されている。
該ガスバリア性積層体に用いられるガスバリア性の高い重合体として、ポリビニルアルコール(PVA)やエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)が知られている。しかし、PVAやEVOHは親水性が高く、湿度の高い環境下では水分に対するバリア性が著しく低下するきらいがある。
この問題を解決するために、基材にポリカルボン酸系重合体からなる層と多価金属化合物からなる層を互いに隣接させて積層し、2つの層間で反応させることで、高湿度下でも高い酸素バリア性能を有するフィルムが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。しかしながら、酸素バリア性能には優れるものの、水蒸気バリア性は低い。また、製造時には塗工を複数回行って、それぞれの層を積層し、多湿環境下に長時間さらすことによる反応が必要であるため、製造に際して手間が多い。
また、ポリカルボン酸系重合体と多価金属イオンと揮発性の塩基と炭酸イオンと溶媒とを含む塗液を、基材に塗工し乾燥し、塗膜から揮発性の塩基が除去されることによってポリカルボン酸系重合体と多価金属イオンとの反応が促進されて、1回の塗工で高い酸素バリア性能を有する層を得る方法が提案されている(例えば、特許文献3及び4参照。)。しかしながら、これらによっても水蒸気バリア性は低く、水蒸気バリア性を付与するために無機蒸着層を形成したりする必要があり、手間とコストがかかってしまう問題がある。
さらには、上述の塗液は表面張力が高いため、基材への塗工時にはハジキやクレーターが生じやすく、塗布欠陥が生じる可能性が高く取り扱いがよくない。そのため、外観不良やガスバリア性が低下する等の問題が生じていた。この問題を解決するためには、多量の有機溶剤(例えば、イソプロピルアルコール等)や界面活性剤等を添加することが挙げられる。これによって表面張力を低下させて塗布欠陥を抑制することができるものの、多量の有機溶剤の使用は環境負荷の観点から好ましくなく、界面活性剤の添加によれば耐水性が低下するため、高湿度下でのガスバリア性が低下してしまう問題が新たに生ずることとなる。
特許第4373797号公報 特許第5012895号公報 特許第6497053号公報 特許第4729249号公報
本発明は、前記の点に鑑みなされたものであり、一回の塗工により得られる単層において高い酸素バリア性及び水蒸気バリア性を付与させることが可能であり、塗工時のハジキやクレーター等の塗布欠陥を抑制し均一な塗膜(層)を容易に得ることができるガスバリア性コーティング液及び該コーティング液より形成されたガスバリア層を有するガスバリア性積層体を提供するものである。
すなわち、第1の発明は、カルボキシル基含有水分散性ポリエステル樹脂(A)と、多価金属化合物(B)と、揮発性塩基(C)と、炭酸塩(D)と、炭素数12〜18の高級脂肪族カルボン酸又は高級脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(E)の少なくとも一種と、溶媒とを含み、前記カルボキシル基含有水分散性ポリエステル樹脂(A)の酸価が30mgKOH/g以上であり、前記多価金属化合物(B)100質量部に対して、前記カルボキシル基含有水分散性ポリエステル樹脂(A)が0.1〜35質量部添加されてなることを特徴とするガスバリア性コーティング液に係る。
第2の発明は、第1の発明において、ポリアクリル酸系重合体又はポリアクリル酸系重合体のアンモニウム塩(F)の少なくとも一種を含むガスバリア性コーティング液に係る。
第3の発明は、第1または2の発明において、前記多価金属化合物(B)が酸化亜鉛又は酸化銅のどちらか一方又は両方であるガスバリア性コーティング液に係る。
第4の発明は、第1ないし3の発明のいずれかのガスバリア性コーティング液が基材表面に塗工されて乾燥されてなるガスバリア層を備えることを特徴とするガスバリア性積層体に係る。
第1の発明に係るガスバリア性コーティング液によると、カルボキシル基含有水分散性ポリエステル樹脂(A)と、多価金属化合物(B)と、揮発性塩基(C)と、炭酸塩(D)と、炭素数12〜18の高級脂肪族カルボン酸又は高級脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(E)の少なくとも一種と、溶媒とを含み、前記カルボキシル基含有水分散性ポリエステル樹脂(A)の酸価が30mgKOH/g以上であり、前記多価金属化合物(B)100質量部に対して、前記カルボキシル基含有水分散性ポリエステル樹脂(A)が0.1〜35質量部添加されてなることから、一回の塗工により得られる単層において高い酸素バリア性及び水蒸気バリア性を付与させることが可能であり、塗工時のハジキやクレーターの形成等の塗布欠陥を抑制し均一な塗膜(層)を容易に得ることができる。
第2の発明に係るガスバリア性コーティング液によると、第1の発明において、ポリアクリル酸系重合体又はポリアクリル酸系重合体のアンモニウム塩(F)の少なくとも一種を含むことから、塗膜の白化を防ぐことができるとともに、耐水性を向上させることができる。
第3の発明に係るガスバリア性コーティング液によると、第1または2の発明において、前記多価金属化合物(B)が酸化亜鉛又は酸化銅のどちらか一方又は両方であることから、液の性状の安定化を図ることができ、またガスバリア性能を向上させることができる。
第4の発明に係るガスバリア性積層体によると、第1ないし3の発明のいずれかのガスバリア性コーティング液が基材表面に塗工されて乾燥されてなるガスバリア層を備えることから、容易に高度なガスバリア性能を有する積層体を得ることができる。
本発明のガスバリア性コーティング液は、フィルム等の基材表面に塗工され、ガスバリア層が形成されることにより、フィルム等の基材に酸素バリア性及び水蒸気バリア性を付与させるものである。本発明のガスバリア性コーティング液は、(A)成分と、(B)成分と、(C)成分と、(D)成分と、(E)成分及び溶媒とを含む。
(A)成分は、カルボキシル基含有水分散性ポリエステル樹脂であり、コーティング液に(A)成分が含まれないと、基材への塗工時に液が弾かれてしまい塗膜の形成ができない。(B)成分は多価金属化合物であり、コーティング液に(B)成分が含まれないと、ガスバリア性能を付与することができない。(C)成分は、揮発性塩基であり、コーティング液に(C)成分が含まれないと、(B)成分を溶解することができなくなるため、塗工後には外観悪化が生じたりガスバリア性能が発現しにくくなるとともに(A)成分と(B)成分の早期反応によるゲル化や凝集化を防ぐことが困難となる。(D)成分は、炭酸塩であり、コーティング液に(D)成分が含まれないと、コーティング液の安定性が低下し、経時により凝集物が生ずる原因となる。また、凝集物が生ずることになれば、コーティング液中に未溶解物が残存し、塗膜欠陥が生じたり、十分なガスバリア性能が得られない。(E)成分は、炭素数12〜18の高級脂肪族カルボン酸又は高級脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩であり、(E)成分が含まれないと、塗布欠陥や白化等の外観悪化が生じやすくなる。
(A)成分のカルボキシル基含有水分散性ポリエステル樹脂は、ポリオール成分及び多価カルボン酸成分又は多価カルボン酸無水物成分のいずれか一方又は両方を共重合させてなるポリエステル樹脂が水中に分散ないし溶解が可能なポリエステル樹脂である。なお、水中に分散するために塩基性化合物、親水性有機溶媒や界面活性剤等を含んでもよい。
ポリオール成分としては特に限定されるものではなく、ジオール成分を用いてもよく、トリオール以上の成分を用いてもよい。例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ヘプタエチレングリコール、オクタエチレングリコール等のポリエチレングリコールや、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール等のポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル2−ブチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール等が挙げられる。ビスフェノール類のエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加体におけるビスフェノール類としては、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビスフェノールA、ビスフェノールS等が挙げられる。トリオール以上のポリオールとしては、例えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
多価カルボン酸の例としては、特に限定はなく、例えば芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸等が挙げられる。芳香族ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ベンゼンジカルボン酸等が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。脂環式ジカルボン酸としては、例えば1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸等が挙げられる。三価以上のカルボン酸としては、例えばトリメリット酸、ヘミメリット酸、トリメシン酸、エチレンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、ベンゼンペンタカルボン酸、メリト酸等が挙げられる。多価カルボン酸無水物としては、特に限定はなく、例えば前述の二価のカルボン酸の酸無水物、三価以上のカルボン酸の酸無水物が挙げられる。二価のカルボン酸の酸無水物としては、例えば無水フタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、テトラヒドロフタル酸無水物等が挙げられる。三価以上のカルボン酸の酸無水物としては、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。
ポリエステル樹脂は、上記の多価カルボン酸又は多価カルボン酸無水物成分とポリオール成分と重縮合する方法や、重縮合後に多価カルボン酸成分、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、無水トリメリット酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等で解重合する方法、また、重縮合後に酸無水物、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸等を開環付加させる等、公知の方法によって製造することができる。重合の際に使用する多価カルボン酸又は多価カルボン酸無水物成分は、三価以上の多価カルボン酸又は多価カルボン酸無水物であることが好ましい。多価カルボン酸成分に対する三価以上の多価カルボン酸成分の含有量を調製することによって、ポリエステル樹脂の所望の酸価を付与することが可能である。
ポリエステル樹脂を水中に分散ないし溶解するには、例えば、水と親水性溶媒(エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル)とを任意の割合で混合した水系溶媒中にポリエステル樹脂を添加して分散ないし溶解する方法等、公知の方法により行うことができる。
(A)成分のカルボキシル基含有水分散性ポリエステル樹脂の酸価は、後述の実施例により、30mgKOH/g以上である。(A)成分の酸価が30mgKOH/g以上であると、コーティング液中のポリエステル樹脂のカルボキシル基と多価金属イオンとのイオン結合により、層形成後に優れた耐水性やガスバリア性能を備えることとなる。(A)成分の酸価は、40mgKOH/g以上であることが好ましく、60mgKOH/g以上であることがさらに好ましく、より優れた耐水性やガスバリア性能を付与することができると考えられる。
(A)成分の酸価が30mgKOH/g未満の場合には、酸価が低下することで液安定性が低下し、コーティング液の調製が困難となる。このとき、(A)成分のカルボキシル基含有水分散性ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸として金属スルホネート基を有するジカルボン酸を含有させることにより、液安定性の向上を図ることができるものの、ガスバリア性能、耐水性の低下を招くとともにコーティング液の調合でゲルや凝集物等を発生させやすくなるきらいがある。なお、金属スルホネート基を有するジカルボン酸としては、例えば5−スルホイソフタル酸、2−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4−スルホナフタレン−2,6−ジカルボン酸等が挙げられる。
(A)成分の酸価の上限は、特に限定はないが、200mgKOH/g以下であることが好ましく、150mgKOH/g以下であることがより好ましく、120mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。200mgKOH/gを超えると液の安定性が低下し、経時で凝集物の発生などが生じ、コーティング液を調製することが困難となる場合がある。ポリエステル樹脂の酸価は、JIS K 0070(1992)に準拠して測定される。
(A)成分はコーティング液から形成される層の耐水性、ガスバリア性を損なわない範囲で、水酸基が含まれていてもよい。その場合、(A)成分の水酸基価は、30mgKOH/g以下であることが好ましく、15mgKOH/g以下であることがより好ましい。さらに、ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、2000以上であることが好ましい。この場合、コーティング液から形成される層は十分な材料強度を有し、ポリエステルフィルム等の基材への良好な密着性を有する。
また、(A)成分のガラス転移温度(Tg)は、−20℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましい。ポリエステル樹脂のガラス転移温度が−20℃以上であることで、コーティング液から形成される層の耐水性がより優れる。
(B)成分の多価金属化合物の種類としては、金属イオンの価数が2以上の多価金属原子単体及びその化合物である。多価金属としては、例えばカルシウム、マグネシウム、ベリリウム等のアルカリ土類金属、チタン、クロム、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛等の遷移金属、アルミニウム等が挙げられる。これら(B)成分は、1種を単独で用いても、2種以上を併用しても良い。これらの中でも、多価金属化合物としては、液安定性、ガスバリア性の観点から、銅、亜鉛の酸化物、水酸化物、炭酸塩や前記金属のアンモニウム錯体とその錯体の炭酸塩が好ましい。
コーティング液中に含まれる(B)成分の多価金属化合物の形態は特に限定されない。しかしながら、後述するように、ガスバリア性積層体のガスバリア層中では、多価金属化合物の一部がカルボキシル基含有水分散性ポリエステル樹脂のカルボキシル基と塩を形成している。
そして、(A)成分のカルボキシル基含有水分散性ポリエステル樹脂は、(B)成分の多価金属化合物100質量部に対して、0.1〜35質量部添加される。(B)成分が(A)成分に対して過剰に添加されることにより、層形成後のガスバリア性能が向上する。(A)成分の添加量が(B)成分の多価金属化合物100質量部に対して、0.1質量部未満であると、液の高い表面張力によって基材への塗布時にハジキが生じ、均一な塗膜を得ることができない。また、35重量部よりも多くなると、層形成後に十分なガスバリア性能を備えることができず、層に白化が生じ外観悪化のおそれがある。
(C)成分の揮発性塩基は、例えばアンモニア、エチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン等が挙げられる。これらの中でも、液安定性及びガスバリア性の観点から、アンモニアが望ましい。
(D)成分の炭酸塩は、CO3 2-とHCO3 2-を含む化合物であって、炭酸イオンはどちらか一方又は両方でもよい。(D)成分の炭酸塩としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。上記の中でも、安価で取り扱いが容易な点から炭酸アンモニウム又は炭酸水素アンモニウムが好ましい。
(E)成分は、脂肪族カルボン酸または脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩のうち少なくとも1種を含む成分であって、これらの中でも炭素数12〜18の高級脂肪族カルボン酸又はそのアルカリ金属塩とするのがよい。炭素数12〜18の高級脂肪族カルボン酸としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等が挙げられる。中でもラウリン酸、ミリスチン酸が好ましい。炭素数12〜18の高級脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩としては、例えばラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸リチウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、リノール酸ナトリウム等が挙げられる。これらの中でも、ラウリン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、オレイン酸カリウムが好ましい。
(E)成分を添加することによって、塗布欠陥を減らすことができ、さらには層形成後のガスバリア性能、液安定性を向上させることができる。液安定性が不十分であると、基材へコーティング液を塗工し、乾燥させる際に層に白化が生じやすく、外観悪化やガスバリア性能の低下に繋がる。さらに液の保管時に沈殿物が生じ、均一な塗膜を形成することが困難となる。
また、ガスバリア性、液安定性、耐水性等を損なわない範囲で炭素数12未満の脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸塩等を混合しても良い。炭素数12未満の脂肪族カルボン酸としては、例えば酢酸、酪酸、吉草酸、アクリル酸、メタクリル酸、カプリン酸等が挙げられる。炭素数12未満の脂肪族カルボン酸塩としては、例えば酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸カリウム、酪酸ナトリウム、酪酸カリウム、酢酸亜鉛、酢酸銅、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム等が挙げられる。
溶媒は特に限定されず、例えば、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合溶媒等が挙げられる。有機溶媒としては、炭素数1〜5の低級アルコールを用いることが好ましい。例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール(IPA)、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール等である。作業環境負荷低減の観点から、多量の有機溶媒を含むことは好ましくない。そのため、水と有機溶媒との合計を100質量部とした時、有機溶媒の割合は10質量部以下とするのがよい。さらに好ましくは有機溶媒の割合は5質量部以下とするのがよい。
(A)〜(E)成分及び溶媒以外に、(F)成分として、ポリアクリル酸系重合体又はそのアンモニウム塩のうちの少なくとも1種をさらに添加することができる。ポリアクリル酸系重合体とは、アクリル酸に由来する構造単位を含む重合体をいう。上記アクリル酸に由来する構造単位とは、アクリル酸が重合して形成される構造の構造単位をいい、例えば、アクリル酸『CH2=CH−COOH』の場合、アクリル酸に由来する構造単位は、『−CH2−CH(COOH)−』で表される。ポリアクリル酸系重合体のアンモニウム塩とは、アクリル酸塩をいう。アクリル酸塩における塩はアンモニウム塩である。
アクリル酸系重合体は、アクリル酸(塩)以外の単量体(以下、「その他の単量体」とも言う。)に由来する構造単位を有していてもよい。その他の単量体としては、アクリル酸(塩)以外の単量体であれば、特に制限はないが、具体的には、メタアクリル酸、クロトン酸、αーヒドロキシアクリル酸、α−ヒドロキシメチルアクリル酸及びその誘導体等の、不飽和モノカルボン酸及びこれらの塩等;フマル酸、マレイン酸、メチレングルタル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸及びこれらの塩等である。上記ポリアクリル酸系重合体又はそのアンモニウム塩を混合することによって、塗膜の白化をさらに抑制させる効果があり、さらに耐水性の向上を図ることができる。(A)成分を100質量部とした時、ポリアクリル酸系重合体又はそのアンモニウム塩は合計で50質量部以下が好ましい。ポリアクリル酸系重合体又はそのアンモニウム塩が50質量部よりも多い場合には、塗工時のハジキやクレーター等の塗布欠陥が生じやすくなるおそれがある。
その他成分として、層形成時のガスバリア性、液安定性、耐水性等を損なわない範囲でポリアクリル酸系重合体又はそのアンモニウム塩以外の重合体、無機層状化合物(合成マイカ、モンモリロナイト等)、架橋剤(オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、シランカップリング剤)等を添加しても良い。
コーティング液が塗工される基材は、熱可塑性樹脂ないし熱硬化性樹脂からなるシート状物やフィルム等が好ましい。本発明のコーティング液は、基材への1回の塗工によって単層で良好な酸素バリア性及び水蒸気バリア性を付与することが可能であるとともに、塗工時のハジキやクレーター等の塗布欠陥を抑制し均一な塗膜(層)を得ることを可能とする。
熱可塑性樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂、例えば、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ4−メチルペンテン、ポリブテン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66等)、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体もしくはその鹸化物、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、天然高分子化合物(セルロース、澱粉、プルラン、ゼラチン等)等が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、公知の熱硬化性樹脂、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド、シリコーン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
また、基材の表面に、金属又は無機化合物等の蒸着層が形成されていても良い。さらに、ガスバリア性塗膜との密着性の観点から、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンカーコート処理、プライマーコート処理等の表面活性化処理を行っても良い。基材の厚さは5〜1500μmのうち用途により適宜決定され、好ましくは5〜500μm、より好ましくは9〜100μmである。
<コーティング液の調整方法>
カルボキシル基含有水分散性ポリエステル樹脂(A)、多価金属化合物(B)、揮発性塩基(C)、炭酸塩(D)、脂肪族カルボン酸又は脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩(E)のうち少なくとも1種と、溶媒とを混合して溶液ないし分散液(塗工液)を得る。ここで、カルボキシル基含有水分散性ポリエステル樹脂(A)と多価金属化合物(B)は水溶液中で容易に反応し、ゲル化したり沈殿物が生じる為、揮発性塩基(C)を混合することによって早期反応によるゲル化を抑制する。
本発明のコーティング液では、多価金属化合物(B)は揮発性塩基(C)の一部又は炭酸塩(D)の一部と錯体を形成している(金属錯体)。金属錯体は、カルボキシル基含有水分散性ポリエステル樹脂(A)の金属錯体塩を形成していても良い。塗工後、乾燥によって塗膜から揮発性塩基(C)又は炭酸塩(D)の炭酸イオンが除去されることで、カルボキシル基含有水分散性ポリエステル樹脂(A)と多価金属化合物(B)の反応が進行する。
多価金属化合物(B)100質量部に対してカルボキシル基含有水分散性ポリエステル樹脂(A)を0.1〜35質量部混合することで、該コーティング液を基材へ塗工、乾燥、熱処理の工程後にはカルボキシル基含有水分散性ポリエステル樹脂(A)のカルボキシル基と多価の金属錯体が反応しイオン架橋された状態となる。しかし上記の配合によると、カルボン酸塩の形成に関与していない余剰の金属錯体がコーティング液中に存在することとなる。金属錯体を塗膜中に余剰に存在させることで、酸素及び水蒸気の透過をさらに抑制することができるのである。
また、金属錯体がイオン結合による塩形成に関与せず、塗膜中に多く残存した場合、塗膜を乾燥させると白化が生じやすく、外観悪化、ガスバリア性能の低下に繋がる。この時、(E)成分を添加することで塗膜の乾燥時における白化を抑制し、さらにはガスバリア性能を向上させることができる。この白化の抑制は(E)成分を添加すると液の安定性が向上するためであると考えられる。
ガスバリア性能の向上には、塗膜中に(E)成分のアルキル鎖が均一に分布することによって、カルボキシル基含有水分散性ポリエステル樹脂(A)の分子鎖の広がりを抑制し、自由体積が小さくなること、ないし(E)成分のカルボキシル基と金属錯体によるイオン架橋によってさらに自由体積が小さくなることに起因すると推測される。
<ガスバリア積層体の製造方法>
ガスバリア性コーティング液の基材等への塗工方法は、例えば、グラビアコート法、リバースコート法、ロールコート法、バーコート法、スプレーコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、ディッピング法等、特に限定されず公知のコーティング方法を採用することができる。基材表面に上記コーティング方法によってガスバリア性コーティング液を塗布した後、乾燥工程で溶媒を除去して製膜することでガスバリア層を形成し、ガスバリア性積層体を得ることができる。
ガスバリア層の単位面積当たりの質量は、0.1〜10g/m2が好ましく、特に0.1〜5g/m2、さらには0.1〜2g/m2がより好ましい。上記範囲とするとガスバリア性、外観が良好となる。ガスバリア層の厚さは、0.05〜5μmが好ましく、特に0.1〜3μmがより好ましい。上記範囲であるとガスバリア性、外観が良好となる。
乾燥方法としては、例えば、熱風乾燥法、赤外線加熱法、マイクロ波加熱法、熱ロール加熱法、過熱水蒸気による加熱法等の方法が挙げられ、特に限定されない。これらの乾燥方法は、単独または組み合わせて行っても良い。乾燥温度は特に限定されないが、溶媒として水、水と有機溶媒との混合溶媒を用いる場合は、通常、50〜160℃が好ましい。
続いて、乾燥後に得た積層体を、基材とともに、又は基材から剥がしてフィルムを60〜300℃、好ましくは100〜250℃の範囲の温度で熱処理を行う。熱処理により、ガスバリア層の塗膜中に残存する水分や揮発性塩基(C)の除去を行うことで、ガスバリア層のガスバリア性能が向上する。熱処理方法は、特に限定されず、熱処理温度を高温で行ったり、段階的に昇温して熱履歴を与えたりしても良い。
[使用材料]
発明者は、ガスバリア性コーティング液を作成するため、下記の材料を用いた。
<(A)成分>
・カルボキシル基含有水分散性ポリエステル樹脂(a1):三菱ケミカル株式会社製、「ポリエスター W−1031」、固形分濃度30%、酸価80mgKOH/g
・カルボキシル基含有水分散性ポリエステル樹脂(a2):互応化学工業株式会社製、「プラスコート Z−760」、固形分濃度25%、酸価40mgKOH/g
・水分散性ポリエステル樹脂(a3):互応化学工業株式会社製、「プラスコート RZ−570」、固形分濃度25%、酸価5mgKOH/g未満
<(B)成分>
・金属多価化合物(b1):富士フィルム和光純薬株式会社製、「酸化亜鉛」
・金属多価化合物(b2):富士フィルム和光純薬株式会社製、「酸化銅(和光一級)」
<(C)成分>
・揮発性塩基(c):富士フィルム和光純薬株式会社製、「アンモニア水」、固形分濃度25%
<(D)成分>
・炭酸塩(d):富士フィルム和光純薬株式会社製、「炭酸水素アンモニウム(和光一級)」
<(E)成分>
・脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩(e1):富士フィルム和光純薬株式会社製、「ラウリン酸カリウム」
・脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩(e2):富士フィルム和光純薬株式会社製、「オレイン酸カリウム溶液」、固形分濃度19%
・脂肪族カルボン酸(e3):富士フィルム和光純薬株式会社製、「ラウリン酸」
<(F)成分>
・ポリアクリル酸系重合体(f1):富士フィルム和光純薬株式会社製、「ポリアクリル酸溶液」、固形分濃度25%
・ポリアクリル酸アンモニウム(f2):東亜合成株式会社製、「アロン A−30SL」、固形分濃度40%
[コーティング液の調製]
発明者らは、上記材料を用い、試作例のコーティング液を得るため、下記の調製液(α)〜調製液(δ)を調整した。
・調製液(α1):カルボキシル基含有水分散性ポリエステル樹脂(a1)1.7gに蒸留水8.3gを加えて、スターラーにて充分攪拌し、調整液(α1)(固形分濃度5質量部)を得た。
・調製液(α2):カルボキシル基含有水分散性ポリエステル樹脂(a2)2.0gに蒸留水8.0gを加えて、スターラーにて充分攪拌し、調整液(α2)(固形分濃度5質量部)を得た。
・調製液(α3):水分散性ポリエステル樹脂(a3)2.0gに蒸留水8.0gを加えて、スターラーにて充分攪拌し、調整液(α3)(固形分濃度5質量部)を得た。
・調製液(β1):金属多価化合物(b1)3.0gに揮発性塩基(c)9.0g、炭酸塩(d)9.0g、蒸留水39.0gを加え、スターラーにて充分攪拌し、調整液(β1)(固形分濃度5質量部)を得た。
・調製液(β2):金属多価化合物(b2)2.0gに揮発性塩基(c)10.0g、炭酸塩(d)6.0g、蒸留水22.0gを加え、スターラーにて充分攪拌し、調整液(β2)(固形分濃度5質量部)を得た。
・調製液(γ1):脂肪族アルカリ金属塩(e1)0.5gに蒸留水9.5gを加えて、スターラーにて充分攪拌し、調製液(γ1)(固形分濃度5%)を得た。
・調製液(γ2):脂肪族アルカリ金属塩(e2)2.6gに蒸留水7.4gを加えて、スターラーにて充分攪拌し、調製液(γ2)(固形分濃度5%)を得た。
・調製液(γ3):脂肪族アルカリ金属塩(e3)0.5gに熱水9.5gを加えて、スターラーにて充分攪拌し、調製液(γ3)(固形分濃度5%)を得た。
・調製液(δ1):ポリアクリル酸系重合体(f1)2.0gにIPA1.0g、蒸留水7.0gを加えて、スターラーにて充分攪拌し、調製液(δ1)(固形分濃度5%)を得た。
・調製液(δ2):ポリアクリル酸系重合体のアンモニウム塩(f2)1.3gに蒸留水8.7gを加えて、スターラーにて充分攪拌し、調製液(δ2)(固形分濃度5%)を得た。
上記調製液(α)〜調製液(δ)をそれぞれ混合し、以下の試作例及び比較例のコーティング液を得た。
[試作例1]
調製液(β1)16.0gに調製液(α1)0.4g、調製液(γ1)0.1g、イソプロピルアルコール(IPA)0.2gを加えて、スターラーにて充分攪拌し、試作例1のコーティング液(固形分濃度約5%)を得た。
[試作例2]
調製液(β1)16.0gに調製液(α1)0.4g、調製液(γ2)0.1g、IPA0.2gを加えて、スターラーにて充分攪拌し、試作例2のコーティング液(固形分濃度約5%)を得た。
[試作例3]
調製液(β1)16.0gに調製液(α1)0.4g、調製液(γ3)0.1g、IPA0.2gを加えて、スターラーにて充分攪拌し、試作例3のコーティング液(固形分濃度約5%)を得た。
[試作例4]
調製液(β1)16.0gに調製液(α1)1.6g、調製液(γ1)0.1g、調製液(δ1)0.4g、IPA0.2gを加えて、スターラーにて充分攪拌し、試作例4のコーティング液(固形分濃度約5%)を得た。
[試作例5]
調製液(β1)16.0gに調製液(α1)1.6g、調製液(γ1)0.1g、調製液(δ2)0.4g、IPA0.2gを加えて、スターラーにて充分攪拌し、試作例5のコーティング液(固形分濃度約5%)を得た。
[試作例6]
調製液(β1)16.0gに調製液(α1)5.0g、調製液(γ1)0.1g、調製液(δ2)2.0g、IPA0.2gを加えて、スターラーにて充分攪拌し、試作例6のコーティング液(固形分濃度約5%)を得た。
[試作例7]
調製液(β2)16.0gに調製液(α1)0.4g、調製液(γ1)0.1g、IPA0.2gを加えて、スターラーにて充分攪拌し、試作例7のコーティング液(固形分濃度約5%)を得た。
[試作例8]
調製液(β1)16.0gに調製液(α2)0.6g、調製液(γ1)0.1g、調製液(δ2)0.1g、IPA0.2gを加えて、スターラーにて充分攪拌し、試作例8のコーティング液(固形分濃度約5%)を得た。
[試作例9]
調製液(β1)16.0gに調製液(α1)8.0g、調製液(γ1)0.1g、調製液(δ2)2.0gを加えて、スターラーにて充分攪拌し、試作例9のコーティング液(固形分濃度約5%)を得た。
[比較例1]
調製液(β1)16.0gに調製液(α1)0.4g、IPA0.2gを加えて、スターラーにて充分攪拌し、比較例1のコーティング液(固形分濃度約5%)を得た。
[比較例2]
調製液(β1)32.0gに調製液(α1)0.12g、IPA1.0gを加えて、スターラーにて充分攪拌し、比較例2のコーティング液(固形分濃度約5%)を得た。
[比較例3]
調製液(β1)16.0gに調製液(α1)1.6gを加えて、スターラーにて充分攪拌し、比較例3のコーティング液(固形分濃度約5%)を得た。
[比較例4]
調製液(β1)16.0gに調製液(α1)4.0gを加えて、スターラーにて充分攪拌し、比較例4のコーティング液(固形分濃度約5%)を得た。
[比較例5]
調製液(β2)16.0gに調製液(α1)0.4g、IPA0.2gを加えて、スターラーにて充分攪拌し、比較例5のコーティング液(固形分濃度約5%)を得た。
[比較例6]
調製液(β1)16.0gに調製液(α2)0.15gを加えて、スターラーにて充分攪拌し、比較例6のコーティング液(固形分濃度約5%)を得た。
[比較例7]
調製液(β1)16.0gに調製液(α1)8.0gを加えて、スターラーにて充分攪拌し、比較例7のコーティング液(固形分濃度約5%)を得た。
[比較例8]
調製液(β1)16.0gに調製液(α3)1.2gを加えて、スターラーにて充分攪拌し、比較例8のコーティング液(固形分濃度約5%)を得たが、凝集物が発生した。
[比較例9]
調製液(β1)16.0gに調製液(δ1)8.0g、IPA5.0gを加えて、スターラーにて充分攪拌し、比較例9のコーティング液(固形分濃度約4%)を得た。
[比較例10]
調製液(β1)16.0gに調製液(δ2)8.0g、IPA5.0gを加えて、スターラーにて充分攪拌し、比較例10のコーティング液(固形分濃度約4%)を得た。
各試作例及び比較例に添加された(A)成分、(B)成分、(E)成分及び(F)成分の種類と、(A)成分の酸価(mgKOH/g)、(B)成分100重量部に対する(A)成分の添加量(質量部)、(A)成分の固形分重量(質量部)、(B)成分の種類、(B)成分の固形分重量(質量部)を表1及び表2にまとめた。
Figure 2021123645
Figure 2021123645
[ガスバリア積層体の性能及び生産性の評価]
次に、基材(フタムラ化学株式会社製、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム「FE2001」、厚み25μm)のコロナ処理面に、ワイヤーバーによって各試作例及び比較例のコーティング液を乾燥後の重量(塗布量)が0.4g/m2となるように塗工し、120℃のオーブンで1分間の乾燥を行い、次いで170℃のオーブンで3分間の熱処理を行い、ガスバリア性積層体を得た。
[コーティング液の安定性の評価]
各試作例及び比較例のガスバリア積層体の作成にあたり、各試作例及び比較例のコーティング液の安定性を評価することとした。コーティング液調製直後と室温で1日保管した後に目視により観察を行った。1日経過後も沈殿物が生じていないものは「〇」、調製直後には沈殿物が生じていないが一日経過後には沈殿物が生じているものは「△」、調製直後に沈殿物が生じたものは「×」とした。
[ガスバリア積層体の生産性の評価]
連続生産性の評価として、各試作例及び比較例のガスバリア積層体の作成に関し、乾燥時ないし熱処理時に、熱風の当たり方や熱量の偏り等によっても部分的な白化等の変化が生じなかったものを「〇」、乾燥温度の管理等の一定の制御を行うことにより白化を抑制し透明なガスバリア層を形成できたものを「△」、乾燥温度の管理等を行っても白化等が生じるものを「×」とした。
[塗布欠陥の評価]
均一で良好なガスバリア積層体が作成可能かどうかの評価として、各試作例及び比較例のガスバリア積層体を目視で確認し、ハジキやクレーターが生じていないものは「〇」、生じたものは「×」とした。
[ガスバリア層の外観の評価]
各試作例及び比較例のガスバリア積層体を目視で確認し、ガスバリア層が白化していないものは「〇」、白化しているものを「×」とした。なお、コーティング液を基材に塗工する際に液を弾いて均一な塗膜を形成できなかったものは「−(不可)」とした。
[酸素透過度の測定]
各試作例及び比較例のガスバリア積層体の酸素透過度の測定は、JIS K 7126(2006)に準拠し、酸素透過率測定装置(モコン社製、「OX−TRAN(登録商標) 2/20 MH」)を使用して温度20℃、相対湿度80%の条件下で測定した。なお、外観評価において「×」又は「−(不可)」のものについては測定することができないため「−(測定不可)」とした。
[水蒸気透過度の測定]
各試作例及び比較例のガスバリア積層体の水蒸気透過度は、JIS K 7129(2008)に準拠し、水蒸気透過率測定装置(モコン社製、「PERMATRAN−W(登録商標) 3/33」)を使用して温度40℃、相対湿度90%の条件下で測定した。なお、酸素透過度及び水蒸気透過度は、参考例としてコーティング液の塗工前の基材に対しても測定を行った。また、酸素透過度の測定と同様に、外観評価において「×」又は「−(不可)」のものについては測定することができないため「−(測定不可)」とした。
Figure 2021123645
Figure 2021123645
[結果と考察]
表3及び表4に示されるように、試作例1〜8はすべての評価項目について良好な結果が得られた。試作例1〜3は、比較例1と(A)成分及び(B)成分の種類及び配合割合を共通し、(E)成分の種類を変更して作成した例である。比較例1は、液の安定性に劣り、ガスバリア層形成時の乾燥工程において白化が生じたのに対して、試作例1〜3は(E)成分をコーティング液に付与したため、コーティング液の安定性が向上するとともに、高温短時間での乾燥でも白化が生じることなく連続生産性に優れることがわかった。さらに、酸素透過や水蒸気透過を非常に抑制し、良好なガスバリア性を付与することが可能であることがわかった。
ガスバリア層を形成できるように(A)成分の添加量を調整して作成した比較例2は、酸素透過度及び水蒸気透過度は比較的良好であるが、ガスバリア層形成時の乾燥工程において、熱風の当たり方や熱量の偏りによって部分的な白化が生じてしまうため、連続生産性に劣る。また、酸素透過度や水蒸気透過度の観点から比較しても、試作例1〜3は比較例2よりも優れていることが理解された。
試作例4及び試作例5は、比較例3と(A)成分及び(B)成分の種類及び配合割合を共通し、(F)成分の種類別に添加して作成した例である。試作例4及び試作例5は、前述の試作例1〜3と同様に液安定性、連続生産性に優れるとともに、さらに良好なガスバリア性を示した。(F)成分をさらに添加すると、より良好なガスバリア性を示すとともに、白化の発生をより抑制しつつ基材への均一な塗工をより容易にすることができた。また、(E)成分ないし(F)成分が添加されていない比較例3は、やはりガスバリア層形成時の乾燥工程において、乾燥温度の管理等の一定の制御を行わなければ白化が生じ、連続生産性に劣った。(A)成分の配合量を増加させた比較例4についても同様のことがいえる。
(A)成分の配合量を増加させた試作例6についても、液安定性及び連続生産性に優れつつ、非常に良好なガスバリア性を示した。試作例1及び比較例1における(B)成分を(b2)に変更した試作例7と比較例5とを対比すると、比較例5では液安定性に劣り、均一な製膜ができずガスバリア層の形成が不可能であったのに対して、(E)成分を添加することにより、各評価で良好な結果を示し、基材に対し良好なガスバリア性を付与することが可能であることがわかった。
酸価の小さい(A)成分を使用した試作例8と比較例6とを比較すると、前述の試作例と比較例との対比と同様の結果を得た。試作例5及び6と、試作例8とを対比すると、試作例8は十分に良好なガスバリア性を示したものの、酸価の大きい(A)成分を使用した試作例5及び6の方がさらに良好なガスバリア性を示したため、(A)成分の酸価が大きいものを使用した方がよいことが理解される。
試作例9では、液安定性や塗布欠陥、外観は良好であったものの、(A)成分の添加量を増加したことによりガスバリア性能に劣る結果となった。比較例7は、試作例9の(E)成分としての(e1)、(F)成分としての(f2)が添加されていない例であって、液安定性に劣り、ガスバリア層を形成したときに白化が生じ、均一な製膜ができずガスバリア層の形成が不可能であった。
比較例8においては、(A)成分の代替として酸価が5未満の水分散性ポリエステル樹脂を使用した例であって、コーティング液の調製時に凝集物が生じ、基材への塗工ができなかった。比較例9は、(A)成分の代替としてポリアクリル酸を使用した例であって、コーティング液の調製直後には沈殿物が生じていなかったものの、一日経過後には沈殿物が生じた。さらに、基材への塗工時には塗布欠陥(クレーター)が多数発生して均一なガスバリア層を形成することができず、ガスバリア性も劣る結果となった。比較例10は、(A)成分の代替としてポリアクリル酸アンモニウムを使用した例であって、基材への塗工時にハジキが生じ、均一な塗膜の形成ができなかった。
本発明のガスバリア性コーティング液は、基材に対する塗工時のハジキやクレーターの形成等の塗布欠陥を抑制し均一な塗膜(層)を得ることができ、乾燥工程においても特別な温度管理を要せず、連続生産性に優れる。そして、該コーティング液より形成されたガスバリア層を有するガスバリア性積層体は、高い酸素バリア性及び水蒸気バリア性を備える。つまり、本発明のガスバリア性コーティング液によれば、複雑な工程を経ることなしに基材に優れたガスバリア性を付与することが可能である。

Claims (4)

  1. カルボキシル基含有水分散性ポリエステル樹脂(A)と、
    多価金属化合物(B)と、
    揮発性塩基(C)と、
    炭酸塩(D)と、
    炭素数12〜18の高級脂肪族カルボン酸又は高級脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(E)の少なくとも一種と、
    溶媒とを含み、
    前記カルボキシル基含有水分散性ポリエステル樹脂(A)の酸価が30mgKOH/g以上であり、
    前記多価金属化合物(B)100質量部に対して、前記カルボキシル基含有水分散性ポリエステル樹脂(A)が0.1〜35質量部添加されてなる
    ことを特徴とするガスバリア性コーティング液。
  2. ポリアクリル酸系重合体又はポリアクリル酸系重合体のアンモニウム塩(F)の少なくとも一種を含む請求項1に記載のガスバリア性コーティング液。
  3. 前記多価金属化合物(B)が酸化亜鉛又は酸化銅のどちらか一方又は両方である請求項1又は2に記載のガスバリア性コーティング液。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項に記載のガスバリア性コーティング液が基材表面に塗工されて乾燥されてなるガスバリア層を備えることを特徴とするガスバリア性積層体。
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