JP2021119606A - 熱伝導シート - Google Patents

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Abstract

【課題】樹脂および粒子状炭素材料を含み、比較的低い挟持圧力での使用に際し優れた熱伝導性を発揮する熱伝導シート、および当該熱伝導シートの製造方法を提供する。【解決手段】樹脂および粒子状炭素材料を含み、少なくとも一方の主面の表面粗さSzが3.5μm以下であり、0.05MPa加圧下での熱抵抗値が0.25℃/W以下である、熱伝導シート。並びに、樹脂および粒子状炭素材料を含む一次熱伝導シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、前記一次熱伝導シートを折畳または捲回して、積層体を得る工程Aと、前記積層体を、積層方向に対して45°以下の角度でスライスし、二次熱伝導シートを得る工程Bと、前記二次熱伝導シートを加圧して熱伝導シートを得る工程Cとを含む、熱伝導シートの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、熱伝導シートおよび熱伝導シートの製造方法に関するものである。
近年、プラズマディスプレイパネル(PDP)や集積回路(IC)チップ等の電子部品は、高性能化に伴って発熱量が増大している。その結果、電子部品を用いた電子機器では、電子部品の温度上昇による機能障害対策を講じる必要が生じている。
電子部品の温度上昇による機能障害対策としては、一般に、電子部品等の発熱体に対し、金属製のヒートシンク、放熱板、放熱フィン等の放熱体を取り付けることによって、放熱を促進させる方法が採られている。そして、放熱体を使用する際には、発熱体から放熱体へと熱を効率的に伝えるために、通常、熱伝導率が高いシート状の部材(熱伝導シート)を介在させた状態で発熱体と放熱体とを密着させている。
従って、発熱体と放熱体との間に挟み込んで使用される熱伝導シートには、挟み込まれることによる加圧下において優れた熱伝導性を発揮することが求められてきた。
ここで、一般に、発熱体と放熱体との間に挟み込んで使用する場合の熱伝導シートの熱伝導性を高めるためには、挟み込まれることによる加圧下での熱伝導シートの熱抵抗値を低減させることが考えられる。
例えば、特許文献1では、シリコーン樹脂と、ピッチ系炭素繊維と、アルミナ粒子と、窒化アルミニウムとを混合したシリコーン樹脂組成物を、当該シリコーン樹脂を加熱硬化させながら金型成形し、スライスすることにより、シリコーン樹脂組成物をシート状に形成している。更に、特許文献1では、得られたシリコーン樹脂組成物のシートを、常温下、2kgf/cm〜8kgf/cmの荷重で30分間プレスすることにより熱伝導シートを製造している。そして、特許文献1では、シリコーン樹脂組成物のシートをプレスすることにより、得られる熱伝導シート表面の平滑性を向上させて密着性を高めると共に、熱伝導シート内部のピッチ系炭素繊維同士を良好に接触させて熱抵抗値を低下させている。
また、特許文献2では、アクリル酸ブチルに由来するポリアクリル酸エステル系高分子化合物と、鱗片状黒鉛と、リン酸エステル系難燃剤とを混練し、油圧プレスおよびメタルロールにかけることにより、一次シートを形成している。更に、特許文献2では、得られた一次シートを積層、スライスしてなるスライスシートを、メタルロールを使用して、80℃下にて30%圧縮することにより、熱伝導シートを製造している。そして、特許文献2の熱伝導シートでは、1.0MPa下での測定において、圧縮しなかったスライスシートと同様の熱抵抗値を維持しつつ強度等を高めている。
特許第5541400号公報 特開2015−084431号公報
ここで、熱伝導シートは、作業性の観点から、例えば、発熱体と放熱体との間に挟み込んだ際に熱伝導シートにかかる圧力(以下、「挟持圧力」と称することがある。)が0.08MPa以下の比較的低圧の状態で使用されることがある。しかしながら、特許文献1〜2に記載の従来の熱伝導シートについて、本発明者らが鋭意検討を行ったところ、従来技術のようにシートをプレスすると、低い挟持圧力での熱抵抗が高くなるという問題があることが明らかとなった。
そこで、本発明は、樹脂および粒子状炭素材料を含み、比較的低い挟持圧力での使用に際し優れた熱伝導性を発揮する熱伝導シート、および当該熱伝導シートの製造方法を提供することを目的とする。
ここで、本発明において、「比較的低い挟持圧力」とは、挟持圧力が0.08MPa以下(絶対圧)であることを指す。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、本発明者らは、樹脂および粒子状炭素材料を含む熱伝導シートにおいて、少なくとも一方の主面の表面粗さを所定以下とし、熱抵抗値を所定以下とすれば、得られた熱伝導シートに、比較的低い挟持圧力での使用に際して優れた熱伝導性を発揮させ得ることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の熱伝導シートは、樹脂および粒子状炭素材料を含み、少なくとも一方の主面の表面粗さSzが3.5μm以下であり、0.05MPa加圧下での熱抵抗値が0.25℃/W以下であることを特徴とする。このように、樹脂および粒子状炭素材料を含む熱伝導シートが、上記所定以下の表面粗さを有する平滑な主面、および上記所定以下の低い熱抵抗値を有すれば、比較的低い挟持圧力での使用に際して優れた熱伝導性を発揮することができる。従って、本発明の熱伝導シートを発熱体に取り付けた際に、発熱体から効率的に熱を放散することができる。
なお、本発明において、「表面粗さSz」とは、国際規格ISO 25178に規定される最大高さ(ある表面上における最も高い点と最も低い点とを結ぶ高さ方向の距離)であり、当該ある面の粗さ状態を評価する指標である。また、本発明において、「表面粗さSz」は、三次元形状測定機を用いて、本明細書の実施例に記載の方法で測定することができる。
また、本発明において、「熱抵抗値」は、熱抵抗測定装置を用いて、本明細書の実施例に記載の方法で定常法により測定することができる。
また、本発明の熱伝導シートは、ムーニー粘度(ML1+4、100℃)が50.0以下であることが好ましい。ムーニー粘度を上記上限以下にすれば、比較的低い挟持圧力において、熱伝導シートが更に優れた熱伝導性を発揮することができるからである。
なお、本発明において、「ムーニー粘度(ML1+4、100℃)」は、ムーニー粘度計を用いて、本明細書の実施例に記載の方法で、JIS K6300に準拠して温度100℃で測定することができる。
また、本発明の熱伝導シートは、前記樹脂が硬化されていないことが好ましい。架橋などにより硬化された樹脂を用いると、当該樹脂を含む組成物または成形体を加熱した際に、当該組成物および成形体が変形され難い。従って、例えば、硬化された樹脂を含む組成物または成形体を加熱しながら加圧(加熱プレス)して熱伝導シートを形成した場合に、得られる熱伝導シートの表面の平滑性に劣るからである。
そして、本発明の熱伝導シートは、前記樹脂がフッ素樹脂であることが好ましい。熱伝導シートがフッ素樹脂を含むことにより、良好な可撓性に加え、優れた耐熱性、耐油性および耐薬品性を与えることができるからである。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の熱伝導シートの製造方法は、樹脂および粒子状炭素材料を含む一次熱伝導シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、前記一次熱伝導シートを折畳または捲回して、積層体を得る工程Aと、前記積層体を、積層方向に対して45°以下の角度でスライスし、二次熱伝導シートを得る工程Bと、前記二次熱伝導シートを加圧して、上述したいずれかの所定の熱伝導シートを得る工程Cとを含むことを特徴とする。ここで、上述したいずれかの所定の熱伝導シートとは、少なくとも以下の条件を満たす熱伝導シートである。即ち、樹脂および粒子状炭素材料を含み、少なくとも一方の主面の表面粗さSzが3.5μm以下であり、0.05MPa加圧下での熱抵抗値が0.25℃/W以下である熱伝導シートである。このように、一次熱伝導シートを含む積層体をスライスして得られる二次熱伝導シートを加圧することにより製造される所定の熱伝導シートは、比較的低い挟持圧力において、優れた熱伝導性を発揮することができる。従って、本発明の製造方法に従って得られる熱伝導シートを発熱体に取り付ければ、発熱体から効率的に熱を放散することができる。
また、本発明の熱伝導シートの製造方法は、前記工程Aの前に、樹脂および粒子状炭素材料を含む組成物を準備する工程Dと、前記組成物を加圧してシート状に成形し、一次熱伝導シートを得る工程Eとを更に含み、前記工程Eにて得られた一次熱伝導シートを前記工程Aにおいて用いることが好ましい。つまり、本発明の熱伝導シートの製造方法では、前記組成物を準備する工程Dおよび一次熱伝導シートを得る工程Eを経て得られた一次熱伝導シートを、上述した積層体を得る工程Aにおいて、厚み方向に複数枚積層して、或いは、前記一次熱伝導シートを折畳または捲回して、積層体を得ることが好ましい。上記の通り、得られた積層体を所定の条件でスライスし、更に加圧すれば、比較的低い挟持圧力において、特に厚み方向の熱伝導性に優れた熱伝導シートを良好に製造することができるからである。
また、本発明の熱伝導シートの製造方法は、前記樹脂が熱可塑性樹脂であり、且つ、前記樹脂に硬化剤を用いないことが好ましい。架橋などにより硬化された樹脂を用いると、例えば、当該樹脂を含む二次熱伝導シートを加熱プレスして熱伝導シートを形成した場合に、得られる熱伝導シートの表面の平滑性に劣るからである。
また、本発明の熱伝導シートの製造方法は、前記二次熱伝導シートのムーニー粘度(ML1+4、100℃)が50.0以下であることが好ましい。ムーニー粘度を上記上限以下にすれば、二次熱伝導シートおよび熱伝導シートがより変形し易くなるため、表面平滑性および比較的低い挟持圧力での熱抵抗値がより良好になる。従って、熱伝導シートが、比較的低い挟持圧力において更に優れた熱伝導性を発揮することができるからである。
また、本発明の熱伝導シートの製造方法は、前記工程Cにおける加圧の圧力が0.8MPa以上5.0MPa以下であることが好ましい。二次熱伝導シートを上記下限以上で加圧すれば、シート表面がより平滑になり、比較的低い挟持圧力での使用であっても、熱伝導シートがより優れた熱伝導性を発揮できるからである。また、二次熱伝導シートを上記上限以下で加圧すれば、例えば、二次熱伝導シート中の粒子状炭素材料の良好な配向が崩れることを抑制し、比較的低い挟持圧力における熱伝導シートの優れた熱伝導性をより良好に維持できるからである。
そして、本発明の熱伝導シートの製造方法は、前記工程Cにおいて、前記二次熱伝導シートを圧縮して熱伝導シートとし、前記圧縮によるシート厚みの減少率が15%以上40%以下であることが好ましい。シート厚みの減少率が上記下限以上であれば、表面が更に平滑で、比較的低い挟持圧力での使用であっても熱伝導性が更に向上した熱伝導シートを得ることができるからである。また、シート厚みの減少率が上記上限以下であれば、例えば、熱伝導シート中での粒子状炭素材料の良好な配向を確保し、比較的低い挟持圧力における熱伝導シートの優れた熱伝導性を更に良好に維持できるからである。
なお、本発明において、「シート厚みの減少率」は、下記式(1):
シート厚みの減少率(%)=
(二次熱伝導シートの厚み(mm)−熱伝導シートの厚み(mm))
/二次熱伝導シートの厚み(mm)×100 ・・・(1)
に従って算出することができる。ここで、各シートの厚みは、本明細書の実施例に記載の方法により測定することができる。
本発明によれば、樹脂および粒子状炭素材料を含み、比較的低い挟持圧力での使用に際し優れた熱伝導性を発揮する熱伝導シートを提供することができる。
また、本発明によれば、樹脂および粒子状炭素材料を含み、比較的低い挟持圧力での使用に際し優れた熱伝導性を発揮する熱伝導シートを製造可能な、熱伝導シートの製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の熱伝導シートは、例えば、発熱体に放熱体を取り付ける際に発熱体と放熱体との間に挟み込んで使用することができる。即ち、本発明の熱伝導シートは、ヒートシンク、放熱板、放熱フィン等の放熱体と共に放熱装置を構成することができる。
そして、本発明の熱伝導シートは、例えば、本発明の熱伝導シートの製造方法に従って製造することができる。
(熱伝導シート)
本発明の熱伝導シートは、樹脂および粒子状炭素材料を含み、任意に繊維状炭素材料および添加剤を更に含み得る。また、本発明の熱伝導シートは、少なくとも一方の主面(熱伝導シートの厚さ方向に直交する面)の表面粗さSzが3.5μm以下である。更に、本発明の熱伝導シートは、0.05MPa加圧下での熱抵抗値が0.25℃/W以下である。そして、本発明の熱伝導シートは、樹脂および粒子状炭素材料を含み、少なくとも一方の主面の表面粗さSzが所定以下と平滑であり、且つ、0.05MPaの低圧下での熱抵抗値が所定以下と低いので、比較的低い挟持圧力での使用における熱伝導性に優れている。従って、本発明の熱伝導シートをヒートシンク、放熱板、放熱フィン等の放熱体と組み合わせて使用した場合には、熱伝導シートが発熱体と放熱体との間に比較的低い挟持圧力にて挟み込まれている場合であっても、当該熱伝導シートを介して発熱体から効果的に熱を放散することができる。
ここで、熱伝導シートの熱抵抗値は、熱伝導シート自体の熱抵抗であるバルク熱抵抗の値と、熱伝導シートおよび発熱体/放熱体の界面における界面熱抵抗の値との和であると考えられる。
例えば、熱伝導シートのバルク熱抵抗の値は、熱伝導シートの組成および性状に由来し、下記式(2):
バルク熱抵抗の値(K・m/W)
=厚み(m)/熱伝導率(W/m・K) ・・・(2)
の関係で示すことができる。
また、熱伝導シートの界面熱抵抗の値は、発熱体および放熱体と熱伝導シートとの界面における密着性(界面密着性)、発熱体および熱伝導シートのバルク熱抵抗の差、並びに、放熱体および熱伝導シートのバルク熱抵抗の差に由来する。
<樹脂>
本発明の熱伝導シートが含む樹脂としては、特に限定されることなく、熱伝導シートに使用され得る既知の樹脂、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を用いることができる。
ここで、樹脂は硬化されていないことが好ましい。つまり、樹脂は熱可塑性樹脂であることが好ましく、且つ、架橋剤および加硫剤等の硬化剤を併用しないことがより好ましい。硬化された樹脂を用いると、当該樹脂を含む組成物または成形体を加熱した際に、当該組成物および成形体が変形され難い。従って、例えば、硬化された樹脂を含む組成物または成形体(例えば、後述する二次熱伝導シート)を加熱プレスすることにより熱伝導シートを形成した場合に、得られる熱伝導シートの表面が変形され難く、平滑性に劣るからである。換言すれば、樹脂を硬化することなく用いれば、例えば、当該樹脂を含む組成物または成形体(例えば、後述する二次熱伝導シート)を加熱プレスすることにより熱伝導シートを形成した場合に、得られる熱伝導シートの表面平滑性をより良好にすることができるからである。
また、樹脂の種類は特に制限されないが、以下に一部詳述する通り、例えば、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などを挙げることができる。中でも、樹脂としては、フッ素樹脂およびシリコーン樹脂が好ましく、熱可塑性フッ素樹脂および熱可塑性シリコーン樹脂がより好ましく、熱可塑性フッ素樹脂が更に好ましい。フッ素樹脂およびシリコーン樹脂を用いれば、とりわけフッ素樹脂を用いれば、可撓性に加え、熱伝導シートの耐熱性、耐油性、および耐薬品性をより向上させることができるからである。
なお、本発明において、ゴムおよびエラストマーは、「樹脂」に含まれるものとする。
<<熱可塑性樹脂>>
ここで、熱可塑性樹脂としては、常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂、常温常圧下で液体の熱可塑性樹脂などが挙げられる。中でも、本発明の熱伝導シートには、熱可塑性樹脂として、少なくとも常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂を用いることが好ましく、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂および/または常温常圧下で固体の熱可塑性シリコーン樹脂を用いることがより好ましく、少なくとも常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂を用いることが更に好ましい。常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂を用いれば、使用時(放熱時)の高温環境下においては、当該複合粒子を用いて得られる熱伝導シートの可撓性をより向上させ、熱伝導シートと発熱体および放熱体とをより良好に密着させつつ、取り付け時などの常温環境下においては、熱伝導シートのハンドリング性を高めることができるからである。また、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂および常温常圧下で固体の熱可塑性シリコーン樹脂を用いれば、上記効果に加え、熱伝導シートの耐熱性、耐油性、および耐薬品性をより向上させることができるからである。
なお、本明細書において、「常温」とは23℃を指し、「常圧」とは、1atm(絶対圧)を指す。
[常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂]
ここで、常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)、アクリル酸とアクリル酸2−エチルヘキシルとの共重合体、ポリメタクリル酸またはそのエステル、ポリアクリル酸またはそのエステルなどのアクリル樹脂;シリコーン樹脂;フッ素樹脂;ポリエチレン;ポリプロピレン;エチレン−プロピレン共重合体;ポリメチルペンテン;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリ酢酸ビニル;エチレン−酢酸ビニル共重合体;ポリビニルアルコール;ポリアセタール;ポリエチレンテレフタレート;ポリブチレンテレフタレート;ポリエチレンナフタレート;ポリスチレン;ポリアクリロニトリル;スチレン−アクリロニトリル共重合体;アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(ニトリルゴム);アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂);スチレン−ブタジエンブロック共重合体またはその水素添加物;スチレン−イソプレンブロック共重合体またはその水素添加物;ポリフェニレンエーテル;変性ポリフェニレンエーテル;脂肪族ポリアミド類;芳香族ポリアミド類;ポリアミドイミド;ポリカーボネート;ポリフェニレンスルフィド;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリエーテルニトリル;ポリエーテルケトン;ポリケトン;ポリウレタン;液晶ポリマー;アイオノマー;などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
更に、本発明の熱伝導シートは、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂および常温常圧下で固体の熱可塑性シリコーン樹脂の少なくとも一方を用いることが好ましく、少なくとも常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂を用いることがより好ましく、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂および常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂を併用することが更に好ましい。常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂および常温常圧下で固体の熱可塑性シリコーン樹脂の少なくとも一方を用いれば、使用時(放熱時)の高温環境下においては、熱伝導シートの可撓性をより向上させて熱伝導シートと発熱体および放熱体とをより良好に密着させ、比較的低い挟持圧力での使用に際する界面熱抵抗をより低減できるからである。また、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂および常温常圧下で固体の熱可塑性シリコーン樹脂の少なくとも一方を用いれば、取り付け時などの常温環境下においては、熱伝導シートのハンドリング性を高めることができるからである。
<<常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂>>
常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂としては、例えば、フッ化ビニリデン系フッ素樹脂、テトラフルオロエチレン−プロピレン系フッ素樹脂、テトラフルオロエチレン−パープルオロビニルエーテル系フッ素樹脂等、フッ素含有モノマーを重合して得られるエラストマーなどが挙げられる。より具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレン−クロロフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロジオキソール共重合体、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレンのアクリル変性物、ポリテトラフルオロエチレンのエステル変性物、ポリテトラフルオロエチレンのエポキシ変性物およびポリテトラフルオロエチレンのシラン変性物等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、加工性の観点から、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体が好ましい。
なお、本発明において、ゴムおよびエラストマーは、「樹脂」に含まれるものとする。
また、市販されている、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂としては、例えば、ダイキン工業株式会社製のダイエル(登録商標)G−300シリーズ/G−700シリーズ/G−7000シリーズ(ポリオール加硫・ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン2元系共重合体)、ダイエルG−550シリーズ/G−600シリーズ(ポリオール加硫・ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン3元系共重合体)、ダイエルG−800シリーズ(パーオキサイド加硫・ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン2元系共重合体)、ダイエルG−900シリーズ(パーオキサイド加硫・ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン3元系共重合体);ALKEMA社製のKYNAR(登録商標)シリーズ(フッ化ビニリデン系フッ素樹脂)、KYNAR FLEX(登録商標)シリーズ(ビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン3元系共重合体);ケマーズ社製のA−100(ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン2元系共重合体);などが挙げられる。
<<常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂>>
常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂としては、例えば、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロペンテン−テトラフルオロエチレン3元共重合体、パーフルオロプロペンオキサイド重合体、テトラフルオロエチレン−プロピレン−フッ化ビニリデン共重合体などが挙げられる。
また、市販されている、常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂としては、例えば、デュポン株式会社製のバイトン(登録商標)LM、ダイキン工業株式会社製のダイエル(登録商標)G−101、スリーエム株式会社製のダイニオン(登録商標)FC2210、信越化学工業株式会社製のSIFELシリーズなどが挙げられる。
ここで、常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂の粘度は、特に制限されないが、流動性、混練性、成形性の観点からは、温度105℃において、500cP以上30000cP以下であることが好ましく、550cP以上25000cP以下であることがより好ましい。
<<常温常圧下で固体の熱可塑性シリコーン樹脂>>
更に、常温常圧下で固体の熱可塑性シリコーン樹脂としては、例えば、市販されている、信越化学工業製のKE−931−U、KE−941−U、KE−951−U、KE−961−U、KE−971−U、KE−981−U、KE−961T−U、KE−971T−Uなどを用いることができる。
<<配合量比>>
なお、樹脂として常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂および常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂を併用する場合の質量換算での配合比は、特に限定されることなく、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂:常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂を40:60〜70:30とすることができる。
<粒子状炭素材料>
本発明の熱伝導シートが含む粒子状炭素材料は、特に限定されることなく、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、鱗片状黒鉛、薄片化黒鉛、酸処理黒鉛、膨張性黒鉛、膨張化黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック;などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。熱伝導シートが粒子状炭素材料を含まなければ、比較的低い挟持圧力にて熱伝導シートに優れた熱伝導性を発揮させることができない。
中でも、粒子状炭素材料としては、膨張化黒鉛を用いることが好ましい。膨張化黒鉛を使用すれば、熱伝導シートの熱伝導性をより向上させることができるからである。
<<膨張化黒鉛>>
ここで、粒子状炭素材料として好適に使用し得る膨張化黒鉛は、例えば、鱗片状黒鉛などの黒鉛を硫酸などで化学処理して得た膨張性黒鉛を、熱処理して膨張させた後、微細化することにより得ることができる。そして、膨張化黒鉛としては、例えば、伊藤黒鉛工業株式会社製のEC1500、EC1000、EC500、EC300、EC100、EC50(いずれも商品名)等が挙げられる。
<<粒子状炭素材料の粒子径>>
また、粒子状炭素材料の粒子径は、体積平均粒子径で100μm以上であることが好ましく、150μm以上であることがより好ましく、300μm以下であることが好ましい。粒子状炭素材料の粒子径が上記下限以上であれば、熱伝導シート中で粒子状炭素材料が所望の方向に配向して良好な伝熱パスを形成し易い。従って、比較的低い挟持圧力であっても、熱伝導シートのバルク熱抵抗をより低め、より高い熱伝導性を発揮させることができるからである。また、粒子状炭素材料の粒子径が上記上限以下であれば、熱伝導シートの表面をより平滑にし、発熱体と接した際の発熱体から熱伝導シートへの伝熱をより良好にすることができるからである。
なお、本発明において「体積平均粒子径」は、JIS Z8825に準拠して測定することができ、レーザー回折法で測定された粒度分布(体積基準)において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径を表す。
<<粒子状炭素材料のアスペクト比>>
また、粒子状炭素材料のアスペクト比(長径/短径)は、1以上10以下であることが好ましく、1以上5以下であることがより好ましい。
なお、本発明において、「粒子状炭素材料のアスペクト比」は、粒子状炭素材料をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、任意の50個の粒子状炭素材料について、最大径(長径)と、最大径に直交する方向の粒子径(短径)とを測定し、長径と短径の比(長径/短径)の平均値を算出することにより求めることができる。
<<粒子状炭素材料の配合量>>
そして、粒子状炭素材料の配合量は、上述した樹脂100質量部に対して50質量部以上であることが好ましく、80質量部以上であることがより好ましく、300質量部以下であることが好ましく、200質量部以下であることがより好ましく、150質量部以下であることが更に好ましく、120質量部以下であることが一層好ましい。熱伝導シート中の粒子状炭素材料の配合量が上記下限以上であれば、比較的低い挟持圧力における熱伝導シートのバルク熱抵抗をより低下させることができる。また、熱伝導シート中の粒子状炭素材料の配合量が上記上限以下であれば、シートが必要以上に硬くなることを抑制し、例えば、加圧により二次熱伝導シートの表面を更に平滑にしたり、低い挟持圧力でも熱伝導シート表面を更に容易に変形させて発熱体および放熱体などへの追従性を更に高めたりし易くなる。その結果、比較的低い挟持圧力にて、熱伝導シートにより高い熱伝導性を発揮させることができるからである。
<繊維状炭素材料>
本発明の熱伝導シートは、任意に繊維状炭素材料を更に含有してもよい。任意に含有される繊維状炭素材料としては、特に限定されることなく、例えば、カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維、有機繊維を炭化して得られる炭素繊維、およびそれらの切断物などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
そして、本発明の熱伝導シートに繊維状炭素材料を更に含ませれば、比較的低い挟持圧力での使用に際する熱伝導シートの熱伝導性を更に向上させることができると共に、粒子状炭素材料の粉落ちを防止することもできる。なお、繊維状炭素材料を配合することで粒子状炭素材料の粉落ちを防止することができる理由は明らかではないが、繊維状炭素材料が三次元網目構造を形成することにより、熱伝導性や強度を高めつつ粒子状炭素材料の脱離を防止しているためであると推察される。
上述した中でも、繊維状炭素材料としては、カーボンナノチューブなどの繊維状の炭素ナノ構造体を用いることが好ましく、カーボンナノチューブを含む繊維状の炭素ナノ構造体を用いることがより好ましい。カーボンナノチューブなどの繊維状の炭素ナノ構造体を使用すれば、熱伝導シートの熱伝導性および強度を更に向上させることができるからである。
<<カーボンナノチューブを含む繊維状の炭素ナノ構造体>>
ここで、繊維状炭素材料として好適に使用し得る、カーボンナノチューブを含む繊維状の炭素ナノ構造体は、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と称することがある。)のみからなるものであってもよいし、CNTと、CNT以外の繊維状の炭素ナノ構造体との混合物であってもよい。
なお、繊維状の炭素ナノ構造体中のCNTとしては、特に限定されることなく、単層カーボンナノチューブおよび/または多層カーボンナノチューブを用いることができるが、CNTは、単層から5層までのカーボンナノチューブであることが好ましく、単層カーボンナノチューブであることがより好ましい。単層カーボンナノチューブを使用すれば、多層カーボンナノチューブを使用した場合と比較し、熱伝導シートの熱伝導性および強度を一層向上させることができるからである。
上記の点において、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体は、ラマン分光法を用いて評価した際に、Radial Breathing Mode(RBM)のピークを有することが好ましい。なお、三層以上の多層カーボンナノチューブのみからなる繊維状の炭素ナノ構造体のラマンスペクトルには、RBMが存在しない。
[CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体の平均直径(Av)]
CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体の平均直径(Av)は、0.5nm以上であることが好ましく、1nm以上であることがより好ましく、15nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましい。CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体の平均直径(Av)が上記下限以上であれば、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体の凝集を抑制して、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体の分散性を高めることができるからである。また、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体の平均直径(Av)が上記上限以下であれば、熱伝導シートの熱伝導性および強度を十分に高めることができるからである。
なお、「CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体の平均直径(Av)」は、透過型電子顕微鏡を用いて無作為に選択したCNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体100本の直径(外径)を測定して求めることができる。そして、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体の平均直径(Av)は、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体の製造方法や製造条件を変更することにより調整してもよいし、異なる製法で得られたCNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体を複数種類組み合わせることにより調整してもよい。
[3σ/Av]
また、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体としては、平均直径(Av)に対する、直径の標準偏差(σ)に3を乗じた値(3σ)の比(3σ/Av)が0.20超0.60未満の繊維状の炭素ナノ構造体を用いることが好ましく、3σ/Avが0.25超の繊維状の炭素ナノ構造体を用いることがより好ましく、3σ/Avが0.50超の繊維状の炭素ナノ構造体を用いることが更に好ましい。3σ/Avが0.20超0.60未満の繊維状の炭素ナノ構造体を使用すれば、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体の配合量が少量であっても、熱伝導シートの熱伝導性および強度を十分に高めることができるからである。従って、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体の配合により熱伝導シートの硬度が上昇する(即ち、可撓性が低下する)のを抑制して、熱伝導シートの熱伝導性および可撓性を十分に高いレベルで両立させることができるからである。
なお、「CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体の直径の標準偏差(σ:標本標準偏差)」は、上述した「CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体の平均直径(Av)」についてと同様の方法で求めることができる。そして、上記標準偏差(σ)は、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体の製造方法や製造条件を変更することにより調整してもよいし、異なる製法で得られたCNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体を複数種類組み合わせることにより調整してもよい。
そして、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体としては、前述のようにして測定した直径を横軸に、その頻度を縦軸に取ってプロットし、ガウシアンで近似した際に、正規分布を取るものが通常使用される。
[CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体の平均長さ]
また、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体の平均長さは100μm以上であることが好ましい。また、分散時にCNTに破断や切断などの損傷が発生することを抑制する観点からは、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体の平均長さは5000μm以下であることが好ましい。
[CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体の比表面積]
また、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体のBET比表面積は、600m/g以上であることが好ましく、800m/g以上であることがより好ましく、2500m/g以下であることが好ましく、1200m/g以下であることがより好ましい。CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体のBET比表面積が上記下限以上であれば、熱伝導シートの熱伝導性および強度を十分に高めることができるからである。また、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体のBET比表面積が上記上限以下であれば、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体の凝集を抑制して熱伝導シート中のCNT等の分散性を高めることができるからである。
なお、本発明において、「BET比表面積」とは、BET法を用いて測定した窒素吸着比表面積を指す。
[CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体の質量密度]
また、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体は、後述のスーパーグロース法によれば、CNT成長用の触媒層を表面に有する基材上に、基材に略垂直な方向に配向した集合体(配向集合体)として得られるが、当該集合体としての、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体の質量密度は、0.002g/cm以上0.2g/cm以下であることが好ましい。質量密度が上記上限以下であれば、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体同士の結びつきが弱くなるので、熱伝導シート中で、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体を均質に分散させることができるからである。また、質量密度が上記下限以上であれば、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体の一体性を向上させ、バラけることを抑制できるため取り扱いが容易になるからである。
[CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体のG/D比]
更に、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体は、ラマンスペクトルにおけるDバンドピーク強度に対するGバンドピーク強度の比(G/D比)が1以上20以下であることが好ましい。G/D比が上記範囲内であれば、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体の配合量が少量であっても、熱伝導シートの熱伝導性および強度を十分に高めることができるからである。従って、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体の配合により熱伝導シートの硬度が上昇するのを抑制して、熱伝導シートの熱伝導性および可撓性を十分に高いレベルで両立させることができるからである。
[CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体の調製]
そして、上述した性状を有するCNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体は、例えば、CNT製造用の触媒層を表面に有する基材上に、原料化合物およびキャリアガスを供給して、化学的気相成長法(CVD法)によりCNTを合成する際に、系内に微量の酸化剤(触媒賦活物質)を存在させることで、触媒層の触媒活性を飛躍的に向上させるという方法(スーパーグロース法;国際公開第2006/011655号参照)に準じて、効率的に製造することができる。なお、以下では、スーパーグロース法により得られるカーボンナノチューブを「SGCNT」と称することがある。
ここで、スーパーグロース法により製造したCNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体は、SGCNTのみから構成されていてもよいし、SGCNTに加え、例えば、非円筒形状の炭素ナノ構造体等の他の炭素ナノ構造体が含まれていてもよい。
<<繊維状炭素材料のアスペクト比>>
繊維状炭素材料のアスペクト比は10を超えることが好ましい。
なお、本発明において、「繊維状炭素材料のアスペクト比」は、熱伝導シート中の樹脂を溶媒中で溶解除去して得られる繊維状炭素材料をSEM(走査型電子顕微鏡)またはTEM(透過型電子顕微鏡)で観察し、任意の50本の繊維状炭素材料について、最大径(長径)と、最大径に直交する方向の繊維径(短径)とを測定し、長径と短径の比(長径/短径)の平均値を算出することにより求めることができる。特に、繊維径が小さい場合は、TEM(透過型電子顕微鏡)にて観察することが好適である。
<<繊維状炭素材料の配合量>>
そして、熱伝導シートが繊維状炭素材料を更に含む場合は、繊維状炭素材料の配合量は、上述した樹脂100質量部に対して0.05質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、5質量部以下であることが好ましく、2質量部以下であることがより好ましい。熱伝導シート中の繊維状炭素材料の配合量が上記下限以上であれば、比較的低い挟持圧力における熱伝導シートの熱伝導性および強度を十分に向上させることができると共に、粒子状炭素材料の粉落ちを十分に防止することができるからである。また、熱伝導シート中の繊維状炭素材料の含有割合が上記上限以下であれば、繊維状炭素材料の配合により熱伝導シートの硬度が上昇するのを抑制して、本発明の熱伝導シートの熱伝導性および可撓性を十分に高いレベルで両立させることができるからである。
<添加剤>
本発明の熱伝導シートには、必要に応じて、熱伝導シートの形成に使用され得る既知の添加剤を更に配合することができる。そして、熱伝導シートに配合し得る添加剤としては、特に限定されることなく、例えば、セバシン酸エステルといった脂肪酸エステルなどの可塑剤;赤リン系難燃剤、リン酸エステル系難燃剤などの難燃剤;ウレタンアクリレートなどの靭性改良剤;酸化カルシウム、酸化マグネシウムなどの吸湿剤;シランカップリング剤、チタンカップリング剤、酸無水物などの接着力向上剤;ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などの濡れ性向上剤;無機イオン交換体などのイオントラップ剤;等が挙げられる。
そして、熱伝導シートが添加剤を更に含む場合は、添加剤の配合量は、例えば、上述した樹脂100質量部に対して0.1質量部以上20質量部以下とすることができ、10質量部以下とすることが好ましい。
<表面粗さSz>
本発明の熱伝導シートは、少なくとも一方の主面の表面粗さSzが3.5μm以下であることを必要とする。熱伝導シートの少なくとも一方の主面の表面粗さSzが上記所定以下でなければ、比較的低い挟持圧力において熱伝導シートが優れた熱伝導性を発揮することができない。なお、熱伝導シートの表面粗さSzは、特に制限されることなく、例えば、二次熱伝導シートを加圧する方法、圧力、時間、温度などの加圧条件を調節することにより適宜調整できる。
また、比較的低い挟持圧力での熱伝導シートの熱伝導性を更に高める観点からは、熱伝導シートは、少なくとも一方の主面の表面粗さSzが3.0μm以下であることが好ましく、1.5μm以下であることがより好ましく、1.0μm以上であることが好ましく、1.1μm超であることがより好ましく、1.2μm以上であることが更に好ましい。熱伝導シートの少なくとも一方の主面の表面粗さSzが上記上限以下であれば、当該主面が十分に平滑であるため、熱伝導シートを発熱体および放熱体の間に比較的低い挟持圧力で挟み込んだ場合であっても、熱伝導シートと発熱体および/または放熱体との密着性がより高まり、界面熱抵抗がより低減されるからである。また、熱伝導シートの少なくとも一方の主面の表面粗さSzが上記下限以上であれば、例えば、後述する二次熱伝導シートを加圧して熱伝導シートを製造するに際し、二次熱伝導シートが過度に加圧されることなく、熱伝導シート中の粒子状炭素材料および任意の繊維状炭素材料の所望の配向を確保でき、低いバルク熱抵抗を確保し得るからである。
更に、比較的低い挟持圧力での熱伝導シートの熱伝導性を一層高める観点からは、熱伝導シートの両方の主面(表面および裏面)の表面粗さSzが上記好適範囲内であることが更に好ましい。
<熱抵抗値>
また、本発明の熱伝導シートは、0.05MPa加圧下での熱抵抗値が0.25℃/W以下であることを必要とする。熱伝導シートの熱抵抗値が上記所定以下でなければ、0.05MPa等の比較的低い挟持圧力での使用に際して、熱伝導シートが優れた熱伝導性を発揮することができない。
更に、比較的低い挟持圧力での熱伝導シートの熱伝導性を更に高める観点からは、熱伝導シートの熱抵抗値は、0.05MPa加圧下において0.24℃/W以下であることが好ましく、0.23℃/W以下であることがより好ましい。熱抵抗値が上記上限以下であれば、0.05MPa等の低い挟持圧力において、熱伝導シートがより優れた熱伝導性を発揮できるからである。
なお、比較的高い挟持圧力での使用に際しても熱伝導シートに優れた熱伝導性を発揮させる観点からは、本発明の熱伝導シートは、0.9MPa加圧下での熱抵抗値が0.1℃/W以下であることが好ましい。
<ムーニー粘度>
また、本発明の熱伝導シートは、ムーニー粘度(ML1+4、100℃)が10.0以上であることが好ましく、50.0以下であることが好ましく、40.0以下であることがより好ましく、20.0以下であることが更に好ましい。ムーニー粘度が上記上限以下であれば、熱伝導シート中の成分が、加圧された際に良好な流動性を有し、比較的低い挟持圧力であっても容易な変形が可能になり、発熱体および放熱体等に対する追従性が高まる。従って、比較的低い挟持圧力での使用に際する熱伝導シートの熱伝導性をより良好にすることができるからである。また、ムーニー粘度が上記下限以上であれば、熱伝導シートとして適度な強度を有しつつ、熱伝導シート中の成分が加圧された際に適度な力を受ける。従って、熱伝導シートを比較的低い挟持圧力で加圧しながら挟み込んで使用した場合であっても、挟持圧力の効果が十分に得られ、熱伝導シートの界面熱抵抗をより低減し、熱伝導シートの熱伝導性をより良好にすることができるからである。
なお、通常、上記熱伝導シートのムーニー粘度は、後述する二次熱伝導シートのムーニー粘度と同様の値及び効果を有する。
<アスカーC硬度>
また、本発明の熱伝導シートは、温度25℃でのアスカーC硬度を50以上90以下とすることができる。アスカーC硬度が上記範囲内であれば、室温環境下における熱伝導シートの可撓性およびハンドリング性を良好にすることができるからである。
なお、通常、上記熱伝導シートのアスカーC硬度は、後述する二次熱伝導シートのアスカーC硬度と同様の値及び効果を有する。
また、本発明において、「アスカーC硬度」は、日本ゴム協会規格(SRIS 0101)のアスカーC法に準拠し、硬度計を用いて所定の温度で測定することができる。
<厚み>
そして、本発明の熱伝導シートは、厚みが0.105mm以上であることが好ましく、0.120mm以上であることがより好ましく、0.145mm以下であることが好ましく、0.129mm以下であることがより好ましい。熱伝導シートの厚みが上記上限以下であれば、上述の式(2)に従い、バルク熱抵抗の値がより低下し得るからである。加えて、熱伝導シートの厚みが上記上限以下であれば、熱伝導シートを比較的低い挟持圧力で使用した場合であっても、薄膜化した熱伝導シートが発熱体および/または放熱体とより良好に密着できるため、界面熱抵抗の値がより低下し得るからである。また、熱伝導シートの厚みが上記下限以上であれば、熱伝導シートの強度、耐久性およびハンドリング性により優れるからである。
(熱伝導シートの製造方法)
本発明の熱伝導シートの製造方法は、上述した熱伝導シートを製造する方法であり、樹脂および粒子状炭素材料を含む一次熱伝導シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、前記一次熱伝導シートを折畳または捲回して、積層体を得る工程Aと、前記積層体を、積層方向に対して45°以下の角度でスライスし、二次熱伝導シートを得る工程Bと、前記二次熱伝導シートを加圧して、上述した熱伝導シートを得る工程Cとを含むことを特徴とする。つまり、本発明の製造方法で得られる熱伝導シートは、樹脂および粒子状炭素材料を含み、少なくとも一方の主面の表面粗さSzが3.5μm以下であり、且つ、0.05MPa加圧下での熱抵抗値が0.25℃/W以下である。また、本発明の熱伝導シートの製造方法は、上記工程A〜Cに加え、例えば、後述する工程D〜E等を更に含んでもよい。
ここで、本発明の製造方法で用いる樹脂および粒子状炭素材料、並びに、任意の繊維状炭素材料および添加剤の好適な組成、性状および配合量は、熱伝導シートについて上述した組成、性状および配合量と同様とすることができる。
<工程A>
本発明の熱伝導シートの製造方法は工程Aを含む。工程Aでは、例えば、後述する工程Eで得られた一次熱伝導シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、後述する工程Eで得られた一次熱伝導シートを折畳または捲回して、積層体を得る。また、樹脂および粒子状炭素材料を含む一次熱伝導シートとしては、市販品を購入してもよい。
<<積層体の形成>>
一次熱伝導シートの折畳による積層体の形成は、特に限定されることなく、折畳機を用いて一次熱伝導シートを一定幅で折り畳むことにより行うことができる。また、一次熱伝導シートの捲回による積層体の形成は、特に限定されることなく、一次熱伝導シートの短手方向または長手方向に平行な軸の回りに一次熱伝導シートを捲き回すことにより行うことができる。
ここで、通常、積層体において、一次熱伝導シートの表面同士の接着力は、一次熱伝導シートを積層する際の圧力や折畳または捲回する際の圧力により十分に得られる。しかし、接着力が不足する場合や、積層体の層間剥離を十分に抑制する必要がある場合には、一次熱伝導シートの表面を溶剤で若干溶解させた状態で積層体を形成してもよいし、一次熱伝導シートの表面に接着剤を塗布した状態または一次熱伝導シートの表面に接着層を設けた状態で積層体を形成してもよい。
なお、一次熱伝導シートの表面を溶解させる際に用いる溶剤としては、特に限定されることなく、一次熱伝導シート中に含まれている樹脂成分を溶解可能な既知の溶剤を用いることができる。
また、一次熱伝導シートの表面に塗布する接着剤としては、特に限定されることなく、市販の接着剤や粘着性の樹脂を用いることができる。中でも、接着剤としては、一次熱伝導シート中に含まれている樹脂成分と同じ組成の樹脂を用いることが好ましい。そして、一次熱伝導シートの表面に塗布する接着剤の厚みは、例えば、10μm以上1000μm以下とすることができる。
更に、一次熱伝導シートの表面に設ける接着層としては、特に限定されることなく、両面テープなどを用いることができる。
なお、層間剥離を抑制する観点からは、得られた積層体は、積層方向に0.05MPa以上1.0MPa以下の圧力で押し付けながら、20℃以上100℃以下の温度下で1分以上30分以下プレスすることが好ましい。
なお、一次熱伝導シートを積層、折畳または捲回して得られる積層体においては、粒子状炭素材料および任意の繊維状炭素材料が積層方向に略直交する方向に配列していると推察される。
<工程B>
また、本発明の熱伝導シートの製造方法は工程Bを更に含む。工程Bでは、上記工程Aで得られた積層体を、積層方向に対して45°以下の角度でスライスし、二次熱伝導シートを得る。
<<積層体のスライス>>
ここで、積層体をスライスする方法としては、特に限定されることなく、例えば、マルチブレード法、レーザー加工法、ウォータージェット法、ナイフ加工法等が挙げられる。中でも、熱伝導シートの厚みを均一にし易い点で、ナイフ加工法が好ましい。ナイフ加工法にて用いるナイフの形状は片刃、両刃、非対称刃いずれでもよいが、厚み精度を出す観点からは片刃が好ましい。また、積層体をスライスする際の切断具としては、特に限定されることなく、スリットを有する平滑な盤面と、このスリット部より突出した刃部とを有するスライス部材(例えば、鋭利な刃を備えたカンナやスライサー)を用いることができる。
なお、比較的低い挟持圧力で使用する場合の熱伝導シートの熱伝導性をより高める観点からは、積層体をスライスする角度は、積層方向に対して30°以下であることが好ましく、積層方向に対して15°以下であることがより好ましく、積層方向に対して略0°である(即ち、積層方向に沿う方向である)ことが好ましい。
また、積層体を容易にスライスする観点からは、スライスする際の積層体の温度は−20℃以上40℃以下とすることが好ましく、10℃以上30℃以下とすることがより好ましい。更に、同様の理由により、スライスする積層体は、積層方向とは垂直な方向(積層体の積層断面方向)に圧力を負荷しながらスライスすることが好ましく、積層方向とは垂直な方向に0.1MPa以上0.5MPa以下の圧力を負荷しながらスライスすることがより好ましい。このようにして得られた二次熱伝導シート内では、粒子状炭素材料および任意の繊維状炭素材料等が厚み方向に配列していると推察される。
<工程C>
また、本発明の熱伝導シートの製造方法は工程Cを更に含む。工程Cでは、上記工程Bで得られた二次熱伝導シートを加圧することにより、上述した所定の熱伝導シートを得る。そして、工程Cでは上記所定の工程を経て得られた二次熱伝導シートを加圧しているため、得られる熱伝導シートが平滑な表面を有し、且つ、比較的低い挟持圧力での使用に際して優れた熱伝導性を発揮する。
なお、工程Cでは、二次熱伝導シートを厚み方向に加圧することにより、通常、加圧前の二次熱伝導シートの表面粗さSzよりも、加圧後に得られる熱伝導シートの表面粗さSzが小さくなる。このように、工程Cでは、通常、二次熱伝導シートの表面粗さSzを変化させている。
<<二次熱伝導シート>>
二次熱伝導シートは、上記の通り、樹脂および粒子状炭素材料を含む一次熱伝導シートを有する積層体をスライスしてなり、任意に、繊維状炭素材料および添加剤を更に含み得る、シート状の成形体である。
なお、二次熱伝導シートは、上述した熱伝導シートについての好適なムーニー粘度および硬度と同様のムーニー粘度および硬度を有することが好ましい。
<<加圧方法>>
二次熱伝導シートを加圧する方法としては、二次熱伝導シートの厚み方向に圧力が負荷される方法であれば特に限定されることなく、プレス機、ロール機などの既知の加圧装置を用いる方法が挙げられる。中でも、作業性の観点からは、二次熱伝導シートをプレス機で加圧することが好ましい。
なお、熱伝導シートの熱伝導性を更に高める観点からは、加圧に際しては、二次熱伝導シートの両方の主面(表面および裏面)が上述した表面粗さSzとなるように加圧することが好ましい。
[圧力]
二次熱伝導シートを加圧する圧力は、絶対圧で、0.8MPa以上であることが好ましく、1.0MPa以上であることがより好ましく、2.0MPa以上であることが更に好ましく、5.0MPa以下であることが好ましく、3.5MPa以下であることがより好ましく、2.8MPa以下であることが更に好ましい。上記下限以上の圧力で二次熱伝導シートを加圧すれば、得られる熱伝導シートの表面をより平滑にし、熱伝導シートを比較的低い挟持圧力で挟み込んで使用する場合であっても、界面熱抵抗をより低減できる。その結果として、比較的低い挟持圧力で挟み込んで使用する場合であっても熱伝導シートの熱伝導性をより向上できるからである。また、上記上限以下の圧力で二次熱伝導シートを加圧すれば、得られる熱伝導シート中での粒子状炭素材料および任意の繊維状炭素材料の良好な配向を確保し、粒子状炭素材料および任意の繊維状炭素材料同士の接触による良好な伝熱パスが崩れることを抑制し、熱伝導シートを比較的低い挟持圧力で挟み込んで使用する場合においてバルク熱抵抗を低く維持できる。その結果として、比較的低い挟持圧力で挟み込んで使用する場合において熱伝導シートの高い熱伝導性を実現できるからである。つまり、二次熱伝導シートを上記範囲内の圧力で加圧すれば、比較的低い挟持圧力での使用において、より優れた熱伝導性を発揮する熱伝導シートを製造することができるからである。
また、二次熱伝導シートを加圧するプレス温度は、用いる樹脂の特性に応じて適宜調節することができるが、例えば、25℃〜200℃とすることができ、50℃〜80℃とすることが好ましい。
更に、二次熱伝導シートを加圧するプレス時間は、特に制限されることなく、例えば、5秒〜1分とすることができ、5秒〜30秒程度(30秒±5秒)とすることが好ましい。なお、プレス時間を30秒程度より長くしても、加圧による効果にはあまり差が生じないことが確認されている。
[シート厚みの減少率]
また、二次熱伝導シートを加圧して熱伝導シートを得るに際し、二次熱伝導シートから熱伝導シートへのシート厚みの減少率は、15%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、40%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましい。上記下限以上のシート厚みの減少率で二次熱伝導シートを加圧すれば、表面が更に平滑で、熱伝導シートを比較的低い挟持圧力で挟み込んで使用する場合であっても界面熱抵抗が更に低減される。その結果、比較的低い挟持圧力で挟み込んで使用する場合であっても熱伝導性を更に向上させた熱伝導シートを得ることができるからである。また、上記上限以下のシート厚みの減少率で二次熱伝導シートを加圧すれば、例えば、熱伝導シート中で所望の方向に配向している粒子状炭素材料および任意の繊維状炭素材料の当該配向を確保し、粒子状炭素材料および任意の繊維状炭素材料同士の接触による良好な伝熱パスが崩れることを抑制し、熱伝導シートを比較的低い挟持圧力で挟み込んで使用する場合において、バルク熱抵抗を更に低く維持できる。その結果、比較的低い挟持圧力で挟み込んで使用する場合において更に高い熱伝導性を実現する熱伝導シートを得ることができるからである。つまり、シート厚みの減少率を上記範囲内にすれば、比較的低い挟持圧力での使用において、更に優れた熱伝導性を発揮する熱伝導シートを製造することができるからである。
なお、シート厚みの減少率は、例えば、工程Cにおける加圧の方法、圧力、時間、温度などの加圧条件を調節することにより適宜調整できる。
<工程D>
本発明の熱伝導シートの製造方法は、上記工程A〜Cに加え、工程Dを更に含み得る。工程Dは、通常、上記工程Aの前に実施される。また、工程Dでは、樹脂および粒子状炭素材料を含む組成物を準備する。ここで、上記組成物の準備に際しては、樹脂が熱可塑性樹脂であり、且つ、硬化剤を用いないことが好ましい。
なお、樹脂を硬化させることなく用いる効果については、熱伝導シートの場合について上述した効果と同様である。
<<組成物の準備>>
組成物は、樹脂および粒子状炭素材料と、任意の繊維状炭素材料および/または添加剤とを、任意の方法で撹拌混合して調製することができる。そして、樹脂、粒子状炭素材料、任意の繊維状炭素材料および添加剤としては、本発明の熱伝導シートに含まれ得る樹脂、粒子状炭素材料、任意の繊維状炭素材料および添加剤として上述した成分を用いることができる。また、樹脂および粒子状炭素材料を含む組成物としては、市販品を購入してもよい。
なお、撹拌混合は、特に限定されることなく、ニーダー、ロール、ヘンシェルミキサー、ホバートミキサー、ハイスピードミキサー、二軸混錬機等の既知の混合装置を用いて行うことができる。また、撹拌混合は、酢酸エチルやメチルエチルケトン等の溶媒の存在下で行ってもよい。撹拌混合条件としては、例えば、後述の実施例を参照して適宜設定することができる。また、撹拌混合温度は、例えば5℃以上150℃以下とすることができる。
<工程E>
本発明の熱伝導シートの製造方法は、上記A〜Cおよび任意の上記工程Dに加え、工程Eを更に含み得る。工程Eは、通常、上記工程Aの前および上記工程Dの後に実施される。工程Eでは、上記工程Dで得られた組成物を加圧してシート状に成形し、一次熱伝導シートを得る。そして、工程Eにて得られた一次熱伝導シートは、通常、上記工程Aにおいて用いられる。ここで、組成物を加圧して一次熱伝導シートを形成する際には、組成物を任意に脱泡および解砕した後に、加圧してシート状に成形することができる。なお、混合時に溶媒を用いている場合には、溶媒を除去してからシート状に成形することが好ましく、例えば真空脱泡を用いて脱泡を行えば、脱泡時に溶媒の除去も同時に行うことができる。
<<一次熱伝導シートの加圧>>
ここで、一次熱伝導シートの加圧成形方法は、組成物に圧力が負荷されてシート状に成形し得る方法であれば特に限定されることなく、プレス成形、圧延成形または押し出し成形などの既知の加圧成形方法とすることができる。中でも、組成物は、圧延成形によりシート状に成形することが好ましく、保護フィルムに組成物を挟んだ状態でロール間を通過させてシート状に成形することがより好ましい。なお、保護フィルムとしては、特に限定されることなく、離型性に優れた離型ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムやサンドブラスト処理を施したPETフィルム等を用いることができる。また、ロール温度は5℃以上150℃とすることができる。
そして、組成物を加圧してシート状に成形してなる一次熱伝導シートでは、粒子状炭素材料が主として面内方向に配列し、特に、一次熱伝導シートの面内方向の熱伝導性が向上すると推察される。また、任意の繊維状炭素材料を併用する場合には、一次熱伝導シート中において繊維状炭素材料も配向するため、一次熱伝導シートの熱伝導性は一層向上すると推察される。
なお、一次熱伝導シートの厚みは、特に限定されることなく、例えば0.05mm以上2mm以下とすることができる。また、最終的に製造される熱伝導シートの、比較的低い挟持圧力での使用に際する熱伝導性を更に向上させる観点からは、一次熱伝導シートの厚みは、0.10mm以上であることが好ましく、0.80mm以下であることが好ましい。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
そして、実施例および比較例において、シート厚みの減少率の算出に用いる各シートの厚み、二次熱伝導シートのムーニー粘度およびアスカーC硬度、並びに、熱伝導シートの表面粗さSzおよび熱抵抗値は、それぞれ以下の方法に従って測定または評価した。
<厚み>
シート厚みの減少率の算出に用いる二次熱伝導シートおよび熱伝導シートの厚みは、膜厚計(ミツトヨ製、製品名「デジマチックインジケーター ID−C112XBS」)を用いて行った。そして、各シート表面上の任意の箇所5点について測定し、測定値の平均値(mm)を各シートの厚みとした。
<ムーニー粘度>
二次熱伝導シートのムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、ムーニー粘度計(島津製作所製、製品名「MOONEY VISCOMETER SMV−202」)を用いて、JIS−K6300に従って、温度100℃で測定した。一般に、ムーニー粘度が低いほどシート中の成分の流動性が高いことを示す。
<アスカーC硬度>
二次熱伝導シートのアスカーC硬度は、日本ゴム協会規格(SRIS 0101)のアスカーC法に準拠し、硬度計(高分子計器社製、製品名「ASKER CL−150LJ」)を使用して、温度25℃の環境下で行った。
具体的には、得られた二次熱伝導シートを20mm×50mmのサイズに切り取って、12mmの高さ(厚み)になるように積層した。そして、重ね合わせた二次熱伝導シートを温度25℃に保たれた恒温室内に48時間以上静置することにより試験体とした。次に、指針が95〜98となるようにダンパー高さを調整し、試験体とダンパーとを衝突させた。そして、当該衝突から60秒後の試験体のアスカーC硬度を、上記硬度計を用いて2回測定し、測定結果の平均値を採用した。一般に、アスカーC硬度が小さいほど柔軟性が高いことを示す。
<表面粗さSz>
熱伝導シートの表面粗さSzは、三次元形状測定機(株式会社キーエンス製、製品名「ワンショット3D測定マクロスコープ」)を用いて測定した。ここで、1cm角以上の任意の大きさの略正方形に切り取った熱伝導シートを試料とし、解析範囲は、1cm×1cmとし、当該試料の表面および裏面について、それぞれ三次元形状を測定した。そして、三次元形状の測定結果に対して更にソフトウェアでフィルター処理(2.5mm)を行い、うねり成分を取り除くことにより、表面粗さSz(?m)を自動計算した。
<熱抵抗値>
熱伝導シートの熱抵抗値は、熱抵抗測定装置(株式会社日立テクノロジーアンドサービス製、製品名「樹脂材料熱抵抗測定装置」)を用いて、定常法で測定した。ここで、1cm角の略正方形に切り取った熱伝導シートを試料とし、比較的低圧である0.05MPaと、比較的高圧である0.9MPaとを、それぞれ加えた時の熱抵抗値(℃/W)を測定した。なお、測定時の試料温度は50℃とした。熱抵抗値が小さいほど熱伝導シートが熱伝導性に優れ、発熱体と放熱体との間に介在させて放熱装置とした際の放熱特性に優れていることを示す。
(実施例1)
<CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体の調製>
国際公開第2006/011655号の記載に従って、スーパーグロース法によってSGCNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体を得た。
なお、得られた繊維状の炭素ナノ構造体は、G/D比が3.0、BET比表面積が800m2/g、質量密度が0.03g/cm3であった。また、透過型電子顕微鏡を用い、無作為に選択した100本の繊維状の炭素ナノ構造体の直径を測定した結果、平均直径(Av)が3.3nm、直径の標本標準偏差(σ)に3を乗じた値(3σ)が1.9nm、それらの比(3σ/Av)が0.58、平均長さが100μmであった。また、得られた繊維状の炭素ナノ構造体は、主に単層CNT(以下、「SGCNT」と称することがある。)により構成されていた。
<繊維状の炭素ナノ構造体の易分散性集合体の調製>
<<分散液の調製>>
繊維状炭素材料としての、上述で得られたSGCNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体を400mg量り取り、溶媒としてのメチルエチルケトン2L中に混ぜ、ホモジナイザーにより2分間撹拌し、粗分散液を得た。次に、湿式ジェットミル(株式会社常光製、製品名「JN−20」)を使用し、得られた粗分散液を湿式ジェットミルの0.5mmの流路に100MPaの圧力で2サイクル通過させて、繊維状炭素ナノ構造体をメチルエチルケトンに分散させた。そして、固形分濃度0.20質量%の分散液を得た。
<<溶媒の除去>>
その後、上述で得られた分散液をキリヤマろ紙(No.5A)を用いて減圧ろ過し、繊維状炭素材料としての、シート状の繊維状の炭素ナノ構造体の易分散性集合体を得た。
<組成物の調製>
樹脂としての常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂(ダイキン工業株式会社製、商品名「ダイエルG−704BP」)40部および常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂(ダイキン工業株式会社製、商品名「ダイエルG―101」)45部と、粒子状炭素材料としての膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製、商品名「EC−50」、体積平均粒子径:250μm)を85部と、繊維状炭素材料としての上述で得られた繊維状の炭素ナノ構造体の易分散性集合体を0.1部と、可塑剤としてのセバシン酸エステル(大八化学工業株式会社製、商品名「DOS」)5部とを、溶媒としての酢酸エチル100部の存在下において、ホバートミキサー(株式会社小平製作所製、製品名「ACM−5LVT型」)を用いて常温にて5分撹拌混合した。次に、得られた撹拌混合物を30分真空脱泡し、脱泡と同時に酢酸エチルの除去を行うことにより、樹脂、粒子状炭素材料および繊維状炭素材料を含む組成物を得た。そして、得られた組成物を解砕機に投入して、10秒間解砕した。
<一次熱伝導シートの形成>
次いで、解砕した組成物5gを、サンドブラスト処理を施した厚み50μmのPETフィルム(保護フィルム)で挟み、ロール間隙550μm、ロール温度50℃、ロール線圧50kg/cm、ロール速度1m/分の条件にて圧延成形し、厚み0.5mmの一次熱伝導シートを得た。
<積層体の形成>
続いて、得られた一次熱伝導シートを縦60mm×横60mm×厚み0.5mmに裁断し、一次熱伝導シートの厚み方向に120枚両面テープで積層し、厚み約60mmの積層体を得た。
<二次熱伝導シートの形成>
その後、得られた一次熱伝導シートの積層体の積層断面を、0.3MPaの圧力で押し付けながら、木工用スライサー(株式会社丸仲鐵工所製、商品名「超仕上げかんな盤スーパーメカS」)を用いて、積層方向に対して0度の角度でスライス(換言すれば、積層された一次熱伝導シートの主面の法線方向にスライス)することにより、縦60mm×横60mm×厚み0.5mmの二次熱伝導シートを得た。ここで、木工用スライサーのナイフとしては、2枚の片刃(表刃および裏刃)が、切刃側の反対側同士で接触し、表刃の刃先の最先端が裏刃の刃先の最先端よりも0.5mm高く、スリット部からの突出長さが0.11mmに配置され、且つ、表刃の刃角が21°である2枚刃のものを用いた。
なお、得られる二次熱伝導シートの主面のうち、スライス時に刃と直接接触する面を表面、刃と直接接触せずにスライド面と接触する面を裏面と定義した。
そして、得られた二次熱伝導シートについて、上述の方法に従って、ムーニー粘度およびアスカーC硬度を測定した、結果を表1に示す。
<熱伝導シートの製造>
続いて、得られた二次熱伝導シートを、精密ホットプレス機(新東工業株式会社製、製品名「CYPT−20」)を用いて、プレス板を50℃に加熱し、2.6MPaの圧力で30秒間プレスすることにより、熱伝導シートを得た。なお、得られた熱伝導シートの厚みは0.125mmであり、二次熱伝導シートから熱伝導シートへのシート厚みの減少率は26%であった。
そして、得られた熱伝導シートについて、上述の方法に従って、表面粗さSzおよび熱抵抗値を測定した。結果を表1に示す。
(実施例2)
熱伝導シートの製造において、プレス圧力を0.9MPaに変更してシート厚みの減少率を18%とした以外は実施例1と同様にして、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体、繊維状の炭素ナノ構造体の易分散性集合体、組成物、一次熱伝導シート、積層体、二次熱伝導シートおよび熱伝導シートを製造した。なお、得られた熱伝導シートの厚みは0.139mmであった。
そして、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
(実施例3)
熱伝導シートの製造において、プレス圧力を3.0MPaに変更してシート厚みの減少率を35%とした以外は実施例1と同様にして、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体、繊維状の炭素ナノ構造体の易分散性集合体、組成物、一次熱伝導シート、積層体、二次熱伝導シートおよび熱伝導シートを製造した。なお、得られた熱伝導シートの厚みは0.110mmであった。
そして、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
(実施例4)
組成物の調製において、樹脂としての常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂(ダイキン工業株式会社製、商品名「ダイエルG―101」)を用いず、且つ、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂(ダイキン工業株式会社製、商品名「ダイエルG−704BP」)の量を80部に変更した。また、繊維状炭素材料としての繊維状の炭素ナノ構造体の易分散性集合体を用いず、且つ、粒子状炭素材料としての膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製、商品名「EC−50」、体積平均粒子径:250μm)の量を130部に変更した。更に、可塑剤としてのセバシン酸エステル(大八化学工業株式会社製、商品名「DOS」)の量を10部に変更した。なお、膨張化黒鉛の量は、体積換算で実施例1と同様の量となるように調節した値である。
また、熱伝導シートの製造において、プレス圧力を3.2MPaに変更してシート厚みの減少率を19%とした。なお、得られた熱伝導シートの厚みは0.130mmであった。上記以外は実施例1と同様にして、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体、繊維状の炭素ナノ構造体の易分散性集合体、組成物、一次熱伝導シート、積層体、二次熱伝導シートおよび熱伝導シートを製造した。
そして、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
(実施例5)
組成物の調製において、フッ素樹脂に替えて、常温常圧下で固体の熱可塑性シリコーン樹脂(信越化学工業製、商品名「KE−931−U」)80部を用いた。また、粒子状炭素材料としての膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製、商品名「EC−50」、体積平均粒子径:250μm)の量を160部に変更した。更に、可塑剤としてのセバシン酸エステル(大八化学工業株式会社製、商品名「DOS」)の量を10部に変更した。なお、膨張化黒鉛の量は、体積換算で実施例1と同様の量となるように調節した値である。
また、熱伝導シートの製造において、プレス圧力を2.0MPaに変更してシート厚みの減少率を28%とした。なお、得られた熱伝導シートの厚みは0.135mmであった。上記以外は実施例1と同様にして、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体、繊維状の炭素ナノ構造体の易分散性集合体、組成物、一次熱伝導シート、積層体、二次熱伝導シートおよび熱伝導シートを製造した。
そして、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
(比較例1)
熱伝導シートの製造において、二次熱伝導シートをプレスすることなくそのまま熱伝導シートとした以外は実施例1と同様にして、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体、繊維状の炭素ナノ構造体の易分散性集合体、組成物、一次熱伝導シート、積層体、二次熱伝導シートおよび熱伝導シートを製造した。なお、得られた熱伝導シートの厚みは0.170mmであった。
そして、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
(比較例2)
熱伝導シートの製造において、プレス圧力を0.2MPaに変更してシート厚みの減少率を11%とした以外は実施例1と同様にして、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体、繊維状の炭素ナノ構造体の易分散性集合体、組成物、一次熱伝導シート、積層体、二次熱伝導シートおよび熱伝導シートを製造した。なお、得られた熱伝導シートの厚みは0.150mmであった。
そして、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
(比較例3)
熱伝導シートの製造において、プレス圧力を3.6MPaに変更してシート厚みの減少率を41%とした以外は実施例1と同様にして、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体、繊維状の炭素ナノ構造体の易分散性集合体、組成物、一次熱伝導シート、積層体、二次熱伝導シートおよび熱伝導シートを製造した。なお、得られた熱伝導シートの厚みは0.100mmであった。
そして、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
(比較例4)
熱伝導シートの製造において、二次熱伝導シートをプレスすることなくそのまま熱伝導シートとした以外は実施例4と同様にして、CNTを含む繊維状の炭素ナノ構造体、繊維状の炭素ナノ構造体の易分散性集合体、組成物、一次熱伝導シート、積層体、二次熱伝導シートおよび熱伝導シートを製造した。なお、得られた熱伝導シートの厚みは0.173mmであった。
そして、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
Figure 2021119606
表1より、樹脂および粒子状炭素材料を含み、少なくとも一方の主面の表面粗さSzが3.5μm以下であり、且つ、0.05MPa加圧下での熱抵抗値が0.25℃/W以下である実施例1〜5の熱伝導シートは、比較的低い挟持圧力にて使用した場合に、良好な熱伝導性を発揮し得ることが分かる。
一方、両面(表面および裏面)のいずれの表面粗さSzも3.5μm超である比較例1〜2および4の熱伝導シートは、0.05MPaの低圧下での熱抵抗値が0.25℃/W超であり、比較的低い挟持圧力にて使用した場合に、熱伝導性に劣ることが分かる。
更に、0.05MPaの低圧下での熱抵抗値が0.25℃/W超である比較例3の熱伝導シートについても、比較的低い挟持圧力にて使用した場合に、熱伝導性に劣ることが分かる。
本発明によれば、樹脂および粒子状炭素材料を含み、比較的低い挟持圧力での使用に際し優れた熱伝導性を発揮する熱伝導シートを提供することができる。
また、本発明によれば、樹脂および粒子状炭素材料を含み、比較的低い挟持圧力での使用に際し優れた熱伝導性を発揮する熱伝導シートを製造可能な、熱伝導シートの製造方法を提供することができる。

Claims (7)

  1. 樹脂および粒子状炭素材料を含み、
    前記樹脂は、常温常圧下で液体の熱可塑性樹脂を含み、
    少なくとも一方の主面の表面粗さSzが3.5μm以下であり、
    0.05MPa加圧下での熱抵抗値が0.25℃/W以下である、熱伝導シート。
  2. 樹脂および粒子状炭素材料を含む熱伝導シートであって、
    前記熱伝導シートは、シート状に成形したものをシート厚みの減少率が15%以上40%以下となるよう圧縮してなるシートであり、
    0.05MPa加圧下での熱抵抗値が0.25℃/W以下である、熱伝導シート。
  3. ムーニー粘度(ML1+4、100℃)が50.0以下である、請求項1または2に記載の熱伝導シート。
  4. 前記樹脂が硬化されていない、請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱伝導シート。
  5. 前記粒子状炭素材料の配合量が、前記樹脂100質量部に対して50質量部以上300質量部以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱伝導シート。
  6. 前記常温常圧下で液体の熱可塑性樹脂が、常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂であり、
    前記樹脂が更に常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂を含み、
    そして、前記常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂および前記常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂の質量換算での配合比(常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂:常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂)が40:60〜70:30である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱伝導シート。
  7. 少なくとも一方の主面の表面粗さSzが1.30μm以上3.0μm以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱伝導シート。
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