JP6969090B2 - 積層体のスライス方法および複合シートの製造方法 - Google Patents

積層体のスライス方法および複合シートの製造方法 Download PDF

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本発明は、積層体のスライス方法および当該スライス方法を用いた複合シートの製造方法に関するものである。
近年、熱伝導性などの特性を有する、有機高分子化合物と無機材料との複合材料を用いたシート状の部材(複合シート)が種々の用途に用いられている。
ここで、複合シートは、例えば、熱伝導性などの所望の物性の異方性を付与するために、一旦一次シートを準備し、当該一次シートを積層してなる積層体を積層方向に平行な面でスライスすることにより製造されることがある。
例えば、特許文献1〜2では、アクリル酸エステル系高分子化合物および黒鉛を含む一次シートを積層させてなる樹脂成形体を、ナイフを用いて、当該成形体の積層面の法線に対して平行な面に沿ってスライスすることにより、樹脂シートを得ている。ここで、特許文献1〜2では、スライス時の加工速度を54mm/分に設定している。
特許第5696325号公報 特許第5621306号公報
しかしながら、本発明者らが検討したところ、特許文献1〜2に記載の従来の加工速度にて積層体をスライスすると、スライスされたシートの厚み方向の熱抵抗値が高く、当該シートが良好な熱伝導性を発揮できないことが明らかとなった。
そこで、本発明は、積層体がスライスされてなる複合シートが厚み方向に低い熱抵抗値を有し得る、積層体のスライス方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記積層体のスライス方法を用い、厚み方向に低い熱抵抗値を有する複合シートを製造可能な、複合シートの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、本発明者らは、有機高分子化合物および無機材料を含む一次複合シートの積層体を、刃を用いてスライスするに際し、スライス速度を所定以上の高速にして当該積層体の積層方向に平行な面でスライスすれば、厚み方向の熱抵抗値が低い複合シートが得られることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のスライス方法は、有機高分子化合物および無機材料を含む一次複合シートの積層体を、刃を用いて、積層方向に平行な面でスライスする方法であって、前記スライスの速度が5m/分以上であることを特徴とする。このように、有機高分子化合物および無機材料を含む一次複合シートの積層体を刃でスライスするに際し、スライス速度を上記所定以上に速めれば、当該スライスにより得られる複合シートの厚み方向の熱抵抗値を良好に低減することができる。従って、当該スライスにより得られる複合シートに、優れた厚み方向の熱伝導性を付与することができる。
また、本発明のスライス方法は、前記無機材料が粒子状炭素材料であることが好ましい。粒子状炭素材料を含む一次複合シートの積層体をスライスすれば、得られる複合シートの厚み方向の熱抵抗値をより低減することができるからである。
また、本発明のスライス方法は、前記積層体の積層方向と前記刃の延在方向とのなす角度(スライス角度)が0°超90°未満であることが好ましい。上記所定の範囲内のスライス角度で積層体をスライスすれば、厚みが均一な(厚み面精度に優れた)複合シートが得られるからである。
また、本発明のスライス方法は、前記スライスの速度が15m/分以上であることが好ましい。積層体を刃でスライスするに際し、スライス速度を上記所定以上に更に速めれば、当該スライスにより得られる複合シートの厚み方向の熱抵抗値を更に低減することができるからである。従って、当該スライスにより得られる複合シートに、更に優れた厚み方向の熱伝導性を付与することができるからである。
そして、本発明のスライス方法は、有機高分子化合物および無機材料を含む複合材料をシート状に加圧して一次複合シートを得る工程と、前記一次複合シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、前記一次複合シートを折畳または捲回して、積層体を得る工程とを更に有し、前記積層体を得る工程にて得られた積層体を、上述したいずれかのスライス方法に用いることが好ましい。このように、複合材料を加圧して形成した一次複合シートを用いてなる積層体をスライスすれば、厚み方向の熱抵抗値が更に低減された複合シートを得ることができるからである。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の複合シートの製造方法は、上述したいずれかのスライス方法に従って積層体をスライスすることにより複合シートを得ることを特徴とする。このように、少なくとも上述した所定以上のスライス速度にて、有機高分子化合物および無機材料を含む一次複合シートの積層体を、刃を用いて、積層方向に平行な面でスライスすれば、厚み方向の熱抵抗値が低減された複合シートを製造することができる。従って、得られる複合シートに、優れた厚み方向の熱伝導性を付与することができる。
本発明によれば、積層体がスライスされてなる複合シートが厚み方向に低い熱抵抗値を有し得る、積層体のスライス方法を提供することができる。
また、本発明によれば、上記積層体のスライス方法を用い、厚み方向に低い熱抵抗値を有する複合シートを製造可能な、複合シートの製造方法を提供することができる。
本発明に従うスライス方法により積層体をスライスする際の積層体と刃との位置関係の一例を示す斜視図である。 スライド角度αで積層体をスライスする様子を示す平面図であり、(a)はスライス角度αが0°である場合を示し、(b)はスライス角度αが15°である場合を示し、(c)はスライス角度αが45°である場合を示し、(d)はスライス角度αが75°である場合を示し、(e)はスライス角度αが90°である場合を示す。 カンナを用いて積層体をスライスする様子を示す側面図である。
以下、本発明の実施形態について図面に基づき詳細に説明する。なお、各図において同一の記号を付したものは、同一の構成要素を示すものとする。また、本発明は、以下に示す実施形態に限定されない。
(スライス方法)
本発明のスライス方法は、有機高分子化合物および無機材料を含む一次複合シートの積層体を、刃を用いて、積層方向に平行な面でスライスする方法であり、スライスの速度が5m/分以上であることを特徴とする。上記積層体をスライスするにあたり、スライス速度を上記下限以上に速めなければ、スライスされたシートの厚み方向の熱抵抗値を低めることができない。従って、例えば、本発明のスライス方法に従って複合シートを製造した場合に、当該複合シートの厚み方向に優れた熱伝導性を発揮させることができない。
このように、本発明のスライス方法に従えば、例えば、厚み方向の熱伝導性に優れた熱伝導シート等の複合シートを製造することができる。そして、上記厚み方向の熱伝導性に優れた複合シートは、例えば、電子部品などの発熱体に放熱体を取り付ける際に発熱体と放熱体との間に挟み込んで使用することができる。
なお、本発明のスライス方法に従って得られる複合シートの厚み方向の熱伝導性は、例えば、0.1MPa以下、好ましくは0.06MPa以下の比較的低圧な圧力を加えて使用する場合に、より効果的に向上させることができる。
本発明のスライス方法では、上記の通り積層体をスライスする工程に先立ち、例えば、有機高分子化合物および無機材料を含む一次複合シートを得る工程、当該一次複合シートを用いて積層体を得る工程等のその他の工程を更に行ってもよい。
<積層体>
積層体は、有機高分子化合物および無機材料を含む一次複合シートを積層させてなる。そして、積層体は、通常、任意の形状の一次複合シートが複数積層された、任意の形状の立体構造を有する。
なお、積層体は、市販品でもよいし、例えば、後述する積層体を得る工程に従って得られた積層体でもよい。
<<一次複合シート>>
ここで、一次複合シートは、有機高分子化合物および無機材料を含み、任意に添加剤を更に含んでいてもよい。また、一次複合シートの形状は特に制限されないが、一次複合シートの積層体をスライスし易い観点からは、シート状の多角形であることが好ましく、長方形であることがより好ましく、正方形であることが更に好ましい。
なお、一次複合シートは、市販品でもよいし、例えば、後述する一次複合シートを得る工程に従って得られた一次複合シートでもよい。
[有機高分子化合物]
ここで、有機高分子化合物としては、特に限定されることなく、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を用いることができる。
[[熱可塑性樹脂]]
中でも、本発明のスライス方法で使用する積層体には、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。熱可塑性樹脂を用いれば、例えば、スライスして得られる複合シートを、熱伝導シートとして発熱体および放熱体の間に挟んで使用した時に、使用時(放熱時)の高温環境下での複合シートの柔軟性を向上させ、複合シートと発熱体および/または放熱体とを良好に密着させることができるからである。
そして、熱可塑性樹脂としては、常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂、常温常圧下で液体の熱可塑性樹脂などが挙げられる。
−常温常圧下で液体の熱可塑性樹脂−
中でも、本発明のスライス方法で使用する積層体には、有機高分子化合物として、常温常圧下で液体の熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。常温常圧下で液体の熱可塑性樹脂を用いれば、例えば、スライスして得られる複合シートの粘着力を高めて被着体に密着させ易いと共に、柔軟性を高めて常温環境下におけるハンドリング性を高めることができるからである。
なお、本明細書において、「常温」とは23℃を指し、「常圧」とは、1atm(絶対圧)を指す。
また、常温常圧下で液体の熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、本発明のスライス方法で使用する積層体には、有機高分子化合物として、常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂を用いることが好ましい。常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂を用いれば、上記効果に加え、例えば、スライスして得られる複合シートの耐熱性、耐油性、および耐薬品性を向上させることができるからである。
常温常圧下で液体の熱可塑性樹脂の粘度は、特には限定されないが、混練性、流動性、架橋反応性が良好で、成形性にも優れるという点からは、温度105℃における粘度が、500mPa・s〜30000mPa・sであることが好ましく、550mPa・s〜25000mPa・sであることがより好ましい。
−常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂−
また、一次複合シートに含まれ得る常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)、アクリル酸とアクリル酸2−エチルヘキシルとの共重合体、ポリメタクリル酸またはそのエステル、ポリアクリル酸またはそのエステルなどのアクリル樹脂;シリコーン樹脂;フッ素樹脂;ポリエチレン;ポリプロピレン;エチレン−プロピレン共重合体;ポリメチルペンテン;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリ酢酸ビニル;エチレン−酢酸ビニル共重合体;ポリビニルアルコール;ポリアセタール;ポリエチレンテレフタレート;ポリブチレンテレフタレート;ポリエチレンナフタレート;ポリスチレン;ポリアクリロニトリル;スチレン−アクリロニトリル共重合体;アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(ニトリルゴム);アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂);スチレン−ブタジエンブロック共重合体またはその水素添加物;スチレン−イソプレンブロック共重合体またはその水素添加物;ポリフェニレンエーテル;変性ポリフェニレンエーテル;脂肪族ポリアミド類;芳香族ポリアミド類;ポリアミドイミド;ポリカーボネート;ポリフェニレンスルフィド;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリエーテルニトリル;ポリエーテルケトン;ポリケトン;ポリウレタン;液晶ポリマー;アイオノマー;などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、本発明において、ゴムは、「有機高分子化合物」に含まれるものとする。
[[熱硬化性樹脂]]
また、一次複合シートは熱硬化性樹脂を含み得る。熱硬化性樹脂としては、例えば、天然ゴム;ブタジエンゴム;イソプレンゴム;ニトリルゴム;水素化ニトリルゴム;クロロプレンゴム;エチレンプロピレンゴム;塩素化ポリエチレン;クロロスルホン化ポリエチレン;ブチルゴム;ハロゲン化ブチルゴム;ポリイソブチレンゴム;エポキシ樹脂;ポリイミド樹脂;ビスマレイミド樹脂;ベンゾシクロブテン樹脂;フェノール樹脂;不飽和ポリエステル;ジアリルフタレート樹脂;ポリイミドシリコーン樹脂;ポリウレタン;熱硬化型ポリフェニレンエーテル;熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
[[有機高分子化合物の含有割合]]
一次複合シート中の有機高分子化合物の含有割合は、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。有機高分子化合物の含有割合が上記下限以上であれば、例えば、スライスして得られる複合シートに適度な柔軟性を付与して常温環境下におけるハンドリング性をより高めることができるからである。また、有機高分子化合物の含有割合が上記上限以下であれば、例えば、スライスして得られる複合シートに、熱伝導性等の所望の特性をより発揮させることができるからである。
[無機材料]
また、無機材料としては、特に限定されることなく、例えば、積層体をスライスして得られる複合シートに付与したい所望の特性を発揮し得る任意の無機材料とすることができる。このような無機材料としては、例えば、炭素材料、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化チタン等が挙げられる。また、上記炭素材料としては、例えば、粒子状炭素材料、繊維状炭素材料等が挙げられる。
そして、例えば、複合シートに高い熱伝導性を付与して、複合シートを熱伝導シートとして使用する場合には、上述した中でも、無機材料が炭素材料であることが好ましく、少なくとも粒子状炭素材料を用いることがより好ましく、粒子状炭素材料および繊維状炭素材料を併用することが更に好ましい。
[[粒子状炭素材料]]
粒子状炭素材料としては、特に限定されることなく、例えば、人造黒鉛、鱗片状黒鉛、薄片化黒鉛、天然黒鉛、酸処理黒鉛、膨張性黒鉛、膨張化黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック;などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
中でも、粒子状炭素材料としては、膨張化黒鉛を用いることが好ましい。膨張化黒鉛を使用すれば、複合シートが厚み方向に更に低い熱抵抗値を有し得るからである。
−膨張化黒鉛−
ここで、粒子状炭素材料として好適に使用し得る膨張化黒鉛は、例えば、鱗片状黒鉛などの黒鉛を硫酸などで化学処理して得た膨張性黒鉛を、熱処理して膨張させた後、微細化することにより得ることができる。そして、膨張化黒鉛としては、例えば、伊藤黒鉛工業株式会社製のEC1500、EC1000、EC500、EC300、EC100、EC50(いずれも商品名)等が挙げられる。
なお、本発明において、「粒子状炭素材料」のアスペクト比(長径/短径)は、1以上10以下であることが好ましく、1以上5以下であることがより好ましい。ここで、本発明において、粒子状炭素材料の「アスペクト比」は、粒子状炭素材料をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、任意の50個の粒子状炭素材料について、最大径(長径)と、最大径に直交する方向の粒子径(短径)とを測定し、長径と短径との比(長径/短径)の平均値を算出することにより求めることができる。
[[繊維状炭素材料]]
繊維状炭素材料としては、特に限定されることなく、例えば、カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維、有機繊維を炭化して得られる炭素繊維、およびそれらの切断物などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、これらの繊維状炭素材料には、例えば、セルロースナノファイバー等の機能材が50質量%以下の含有割合で含まれていても良い。
例えば、一次複合シート中に上述の粒子状炭素材料に加えて繊維状炭素材料を更に含有させれば、積層体をスライスして得られる複合シートの熱伝導性を更に向上させることができると共に、粒子状炭素材料の粉落ちを防止することもできる。なお、繊維状炭素材料を配合することで粒子状炭素材料の粉落ちを防止することができる理由は、明らかではないが、繊維状炭素材料が三次元網目構造を形成することにより、熱伝導性や強度を高めつつ粒子状炭素材料の脱離を防止しているためであると推察される。
上述した中でも、繊維状炭素材料としては、カーボンナノチューブなどの繊維状炭素ナノ構造体を用いることが好ましく、カーボンナノチューブ(CNT)を含む繊維状炭素ナノ構造体を用いることがより好ましい。カーボンナノチューブなどの繊維状炭素ナノ構造体を使用すれば、積層体をスライスして得られる複合シートの熱伝導性および強度を更に向上させることができるからである。
なお、本発明において、「繊維状炭素材料」のアスペクト比(長径/短径)は、10を超えることが好ましい。ここで、本発明において、繊維状炭素材料の「アスペクト比」は、上述した粒子状炭素材料のアスペクト比の測定方法に従って求めることができる。
[添加剤]
一次複合シートが任意に含み得る添加剤としては、特に限定されることなく、例えば、脂肪酸エステルなどの可塑剤;赤リン系難燃剤、リン酸エステル系難燃剤などの難燃剤;フッ素オイル(ダイキン工業株式会社製のデムナムシリーズ)のように可塑剤と難燃剤とを兼ねる添加剤;ウレタンアクリレートなどの靭性改良剤;酸化カルシウム、酸化マグネシウムなどの吸湿剤;シランカップリング剤、チタンカップリング剤、酸無水物などの接着力向上剤;ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などの濡れ性向上剤;無機イオン交換体などのイオントラップ剤;等が挙げられる。
また、添加剤の含有割合は、添加剤の効果に応じて任意に選択することができる。
<<積層体の構造および性状>>
積層体の構造は、上述した通り、特に制限されることなく、例えば、台形、平行四辺形、長方形、正方形、円形、楕円形等のシート状のものが積層されてなる任意の角柱および円柱であってもよく、裁頭錐体などであってもよい。中でも、スライスを良好に行い易い観点からは、積層体は、角柱であることが好ましく、六面体であることがより好ましく、略直方体であることが更に好ましく、略立方体であることが一層好ましい。
以下、一例として、本発明のスライス方法で使用される積層体が略立方体である場合について詳細に記載するが、本発明の範囲はこれに限られない。
即ち、図1に図示されるように、積層体1は、積層方向Dの最外側に位置する一次複合シートの主面である天面11および底面12と;積層方向Dに積層された一次複合シートの側面で形成される4つの積層側面13〜16と;の合計6面を有する。ここで、天面11および底面12は同等の面であり、且つ、各積層側面13〜16はそれぞれ同等の面であるため、積層体1のスライスに際して刃2の刃先辺21と向かい合う面は、積層体1を積層方向Dに平行な面でスライスし得る限り任意に選択することができる。
従って、以下では、便宜上、天面および底面のうち、積層体1を刃2によってスライスする際に当該刃2の刃先辺21と向かい合う方の面を天面11とする。同様に、以下では、便宜上、4つの積層側面のうち、積層体1を刃2によってスライスする際に当該刃2の刃先辺21と向かい合う面を積層側面13とする。そして、図1の例では、積層体1を刃2でスライスする際には、刃2の刃先辺21が、まず、天面11と積層側面13とが成すスライス交線17と接触する。
<刃>
積層体をスライスする際に用いられる刃としては、特に限定されることなく、例えば、ブレードを有するナイフ、レーザー、水、超音波カッターなど、固体をスライスし得る任意の物質が挙げられる。そして、これらの刃を用いたスライス手法としては、例えば、マルチブレード法、レーザー加工法、ウォータージェット法、ナイフ加工法、超音波カッター法等が挙げられる。中でも、有機高分子化合物および無機材料を含む一次複合シートの積層体をより良好にスライスし易い観点からは、ナイフ加工法および超音波カッター法が好ましい。
例えば、ナイフ加工法によって積層体をスライスする際の具体的な切断具としては、カンナ、スライサー、押切り裁断具などのスライス部材が挙げられる。カンナの具体的な構造の一例は、図3に示すように、スリット部を有する平滑な盤面(スライド面24)と、当該スリット部より先端部が突出した刃部2とを有する構造である。積層体を更に良好にスライスし易い観点からは、ナイフ加工法としては、カンナを用いることがより好ましい。
<<刃の形状>>
ここで、例えば、カンナを利用する場合の刃の形状は、刃先の両側が切刃となっている「両刃」であってもよく、刃の表側のみが切刃となっている「片刃」であってもよい。また、刃の形状は、刃先の最先端を通る中心軸に対して非対称な断面を有する「非対称刃」であってもよく、対称な断面を有する「対称刃」であってもよい。
また、刃を構成する枚数は、特に限定されず、例えば、1枚の刃からなる「1枚刃」で構成されていてもよく、2枚の刃からなる「2枚刃」で構成されていてもよい。図3には、カンナを用いて積層体をスライスする際の一例を示す。図3に示すように、刃が2枚で構成される場合は、1枚の表刃22と1枚の裏刃23とで構成され、表刃22および裏刃23は切刃と反対側同士が接触して配置されている。また、表刃22および裏刃23は、スリット部から突出した刃先の最先端同士の高さが、同じでも異なってもよい。即ち、表刃22および裏刃23の先端部が揃っていても、図3に示すように上下にずれていてもよい。
また、刃2の刃角は、特に制限されることなく、例えば、10°〜45°とすることができる。例えば、図3に例示するように、刃2としては、当該表刃22の刃角βを上記範囲内とすることができる。
更に、刃2の逃げ角は、特に制限されることなく、例えば、1°〜10°とすることができる。例えば、図3に例示するように、刃2としては、当該表刃22の逃げ角γを上記範囲内とすることができる。
<スライス条件>
<<スライス速度>>
本発明のスライス方法は、積層体をスライスする速度(換言すれば、積層体と刃とを接触させる際の相対速度)が5m/分以上である必要がある。また、積層体をスライスする速度は、15m/分以上であることが好ましく、30m/分以上であることがより好ましく、50m/分以上であることが更に好ましく、100m/分以上であることが一層好ましい。また、積層体をスライスする速度は、特に制限されないが、例えば、360m/分以下とすることができる。上記下限以上の比較的早い速度で積層体をスライスしなければ、スライスにより得られる複合シートの厚み方向の熱抵抗値を良好に低減させることができない。また、上記下限以上の高速で積層体をスライスすれば、スライス時に刃と積層体とが接触することに伴う積層体の変形の影響が小さくなり、例えば、柔軟性の高い積層体であっても、上記変形の影響を極力抑えてスライスすることが可能となる。その結果、スライス面(刃と接触した切断面)の表面粗さを小さくして、スライス面の被着体に対する粘着性および光沢性を向上させ得るからである。
なお、積層体のスライス速度を5m/分以上の比較的高速にすることで、得られる複合シートの厚み方向の熱抵抗値が低減する理由は明らかではないが、以下の通りであると推察する。
即ち、積層体と刃とを比較的ゆっくりと接触させて積層方向に平行な面でスライスすると、刃が積層面と接触するたびに積層面が応力を受け、歪みが生じ易い。とりわけ、有機高分子化合物を含む一次複合シートの積層体は弾性を有するためスライスによる大きな応力を受けて歪みが生じ易く、結果として、スライス時に刃が直接接触したスライス面(切断面)が平滑性に劣る。
一方、積層体と刃とを比較的すばやく接触させて積層方向に平行な面でスライスすると、積層面が刃から受ける応力の影響を低減させて歪みが生じ難く、スライス面の平滑性に優れる。従って、例えば、スライスして得られた複合シートを発熱体および/または放熱体等の被着体に貼りつけて使用した際に、複合シートと被着体との接触面積が増大して粘着性が高まる。そして、複合シートが被着体と良好に密着することにより、熱抵抗値が低減される。
なお、上記スライス面の平滑性は、例えば、スライス面の光沢度を測定することによっても評価し得る。例えば、一般に、より高い光沢度を示すスライス面は、より平滑な表面を有していると言える。
そして、上記のように、スライスする速度を高めることで、スライス時に刃から受ける応力を低減させる効果は、例えば、シートが積層されることなく複数のシート主面を有さないブロック体の場合と比較して、特に、積層体の場合に顕著になると考えられる。
つまり、複数のシート主面を有さないブロック体では、スライス時に刃から受ける応力がブロック体内でキャンセルされずに、シート1枚分にスライス終了するまで蓄積されるため、スライス速度を上昇させたとしても、シートのスライス面の平滑性および厚み面精度は向上し難い。これに対して、積層方向に複数のシート主面を有する積層体では、スライス時に刃から受ける応力が一次複合シートを切断するたびにキャンセルされるため、スライス時にかかる応力が積層体内に蓄積されずに、得られる複合シートのスライス面の平滑性および厚み面精度が向上し、粘着性、熱抵抗性も顕著に向上し得る。
なお、スライス速度は、図3に示すように、固定した刃2に対して積層体1を進入させる(切り込ませる)速度Vを変更することで制御してもよく;固定した積層体に対して刃を進入させる(切り込ませる)速度を変更することで制御してもよく;刃および積層体を互いに進入させる(切り込ませる)相対速度を変更することで制御してもよい。また、作業性の観点からは、スライス速度の制御は機械制御で行うのが望ましい。
<<スライス方向>>
本発明のスライス方法では、積層体を積層方向に平行な面で(換言すれば、スライスして得られる複合シートの主面が積層断面を有するように)スライスする必要がある。積層体を積層方向に平行な面でスライスしなければ、例えば、スライスして得られる複合シートの厚み方向に所望の特性を発揮させることができない。
なお、本発明において、「積層方向に平行な面」には、積層方向と平行な方向に対して30°程度以内の傾きを有する面も含まれる。
ここで、一例として、図3に示すカンナを用いてスライスする場合を説明する。
まず、積層体1の積層側面16を、積層側面16とカンナのスライド面24とが平行となる方向に積層体1をスライド可能にするよう、スライド面24によって支持する。つまり、図3に従えば、水平に設置したカンナに対して積層方向Dも水平となり、積層側面14が上向きおよび積層側面16が下向きとなり、且つ、天面11および/または積層側面13が刃2と向かい合うように、積層体1をスライド面24に配置する。また、スライスするための刃2は、スライド面24から先端部が任意の程度突出している。図3の例示では、刃角βを有する表刃22の先端部が、逃げ角γをもってスライド面24から突出している。
そして、図3に従えば、スライド面24に支持された積層体1を、積層側面14側からスライド面24側へと任意の圧力で押圧しながら、所定のスライス速度V(スライド速度V)にて、スライド面24と平行方向(スライド方向S、スライス方向S)にスライドさせる。なお、このときスライドさせる速度Vは、上述した所定のスライド速度の通りである。
このように積層体1がスライドされることにより、所定のスライド速度Vにて、天面11および/または積層側面13が刃2に進入していき、積層体1が積層方向Dに平行な面でスライスされる。図2に従ってより具体的に説明すれば、図2(a)では、積層体1の積層方向Dと刃2の延在方向Eとが平行になるように、積層側面13と刃2とが接触する(スライス角度α=0°)。図2(b)〜(d)では、積層体1の積層方向Dと刃2の延在方向Eとが角度をなして、スライド交線17が刃2に進入するように接触する(スライス角度α=15°、45°および75°)。そして、図2(e)では、積層体1の積層方向Dと刃2の延在方向Eとが直角をなすように、天面11と刃2とが接触する(スライス角度α=90°)。
ここで、スライスする際の押圧の力は、特に限定されることなく、0.1MPa〜1.0MPaとすることができる。
また、積層体を容易にスライスする観点からは、スライスする際の積層体の温度は−20℃以上40℃以下とすることが好ましく、10℃以上30℃以下とすることがより好ましい。
<<スライス角度>>
ここで、積層体の積層方向と刃の延在方向とのなすスライス角度αは、図2に示すように、0°〜90°の範囲内とすることができる。
また、例えば、スライスされて得られる複合シートに均一な厚みを付与し(シート全体のうねりを低減させ)、厚み面精度を向上させる観点からは、スライス角度αは、0°超であることが好ましく、1°以上であることがより好ましく、5°以上であることが更に好ましく、30°以上であることが一層好ましく、40°以上であることが特に好ましい。同様に、上記観点からは、スライス角度αは、0°〜90°の範囲内において、90°未満であることが好ましく、89°以下であることがより好ましく、85°以下であることが更に好ましく、60°以下であることが一層好ましく、50°以下であることが特に好ましい。そして、スライス角度αは45°であることがなお一層好ましい。
上記所定範囲のスライス角度を設けて積層体をスライスすれば、厚み面精度の向上に加え、スライス時に刃と直接接触し得る部分(スライス交線17等)が潰れたり、積層間が剥離して崩れたりすることを抑制できるからである。つまり、スライス角度を上記所定以上(45°超90°以下の範囲内においては、上記所定以下)として積層体をスライスすれば、厚み面精度を向上させつつ、積層体を繰り返しスライスした場合であっても積層体の積層状態を良好に維持し、スライスの作業性を高めることができるからである。
また、例えば、スライスされて得られる複合シートについて、スライス面の粘着性を高め、シート転写等に有利な特性を与える観点からは、上記スライス角度αは、0°〜90°の範囲内において、40°以下であることが好ましく、30°以下であることがより好ましく、5°以下であることが更に好ましく、1°以下であることが一層好ましく、0°であることが特に好ましい。同様に、上記観点からは、スライス角度αは、0°〜90°の範囲内において、50°以上であることが好ましく、60°以上であることがより好ましく、85°以上であることが更に好ましく、89°以上であることが一層好ましく、90°であることが特に好ましい。
スライス角度を上記所定範囲に抑えて積層体をスライスすれば、粘着性の向上に加え、理由は明らかではないが、例えば、スライスして得られる複合シートのスライス面の微細な表面粗さを低下させ、複合シートに平滑な主面および高い光沢性を与えることができる。そして、複合シートの厚み方向の熱抵抗値を更に向上させることができる。
なお、スライス角度は、固定した刃に対して積層体を進入させる(切り込ませる)角度を変更することで制御してもよく、固定した積層体に対して刃を進入させる(切り込ませる)角度を変更することで制御してもよく、刃および積層体を互いに近付ける進入させる(切り込ませる)相対角度を変更することで制御してもよい。
<一次複合シートを得る工程>
本発明のスライス方法では、例えば、上述した積層体をスライスすること(工程)に先立ち、一次複合シートを得る工程を行ってもよい。そして、一次複合シートを得る工程では、有機高分子化合物、無機材料および任意の添加剤を含む複合材料を加圧して一次複合シートを得ることができる。
そして、本発明のスライス方法では、一次複合シートを得る工程で得られた一次シートを用いて積層体を形成し、当該積層体をスライス対象とすることができる。
<<複合材料>>
複合材料は、有機高分子化合物、無機材料および任意の添加剤を含む。ここで、複合材料に含まれる有機高分子化合物、無機材料および任意の添加剤としては、上述した一次複合シートに含まれる有機高分子化合物、無機材料および任意の添加剤と同様の成分を用いることができ、その好適な性状および配合量も同様とすることができる。また、有機高分子化合物および無機材料を含む複合材料としては、市販品を用いてもよい。
複合材料は、通常、上述した成分を任意の方法で混合して調製することができる。ここで、混合は、特に限定されることなく、ニーダー、ロール、ヘンシェルミキサー、ホバートミキサー、ハイスピードミキサー、二軸混錬機等の混合装置を用いて行うことができる。また、混合は、酢酸エチルやメチルエチルケトン等の溶媒の存在下で行ってもよい。混合温度は、例えば5℃以上150℃以下とすることができる。
<<加圧方法>>
また、複合材料の加圧は、複合材料に圧力が負荷されてシート状に成形し得る方法であれば特に限定されることなく、プレス成形、圧延成形または押し出し成形などの加圧方法により行うことができる。中でも、圧延成形により複合材料をシート状に成形することが好ましく、保護フィルムに複合材料を挟んだ状態でロール間を通過させてシート状に成形することがより好ましい。なお、保護フィルムとしては、特に限定されることなく、離型性に優れた離型ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムやサンドブラスト処理を施したPETフィルム等を用いることができる。また、ロール温度は5℃以上150℃とすることができ、ロール間隙は一次複合シートの所望の厚みに合わせればよい。
<<一次複合シート>>
そして、複合材料をシート状に加圧してなる一次複合シートでは、無機材料が主として面内方向に配列し、特に、一次複合シートの面内方向の所望の特性が向上すると推察される。特に、無機材料として粒子状炭素材料および/または繊維状炭素材料を用いる場合には、一次複合シート中において粒子状炭素材料および/または繊維状炭素材料同士が面内方向に接触して配向するため、一次複合シートの面内方向の熱伝導性が高まると推察される。
なお、一次複合シートの厚みは、特に限定されることなく、例えば0.05mm以上1mm未満とすることができる。
<積層体を得る工程>
また、本発明のスライス方法では、例えば、上述した積層体をスライスすること(工程)に先立ち、積層体を得る工程を行ってもよい。そして、積層体を得る工程では、例えば、上記一次複合シートを得る工程で得られた一次複合シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、上記一次複合シートを得る工程で得られた一次複合シートを折畳または捲回して、積層体を得ることができる。
そして、本発明のスライス方法では、例えば、当該積層体を得る工程で得られた積層体をスライス対象とすることができる。
<<積層体の形成方法>>
積層体の形成は、特に限定されることなく、折畳機を用いて、上述で得られた一次複合シートを一定幅で折り畳むことにより行うことができる。また、捲回による積層体の形成は、特に限定されることなく、一次複合シートの短手方向または長手方向に平行な軸の回りに上述で得られた一次複合シートを捲き回すことにより行うことができる。
ここで、通常、積層体において、一次複合シートの表面同士の接着力は、一次複合シートを積層する際の圧力や折畳または捲回する際の圧力により十分に得られる。しかし、接着力が不足する場合や、積層体の層間剥離を十分に抑制する必要がある場合には、一次複合シートの表面を溶剤で若干溶解させた状態で積層体を形成してもよいし、一次複合シートの表面に接着剤を塗布した状態または一次複合シートの表面に接着層を設けた状態で積層体を形成してもよい。
また、層間剥離を抑制する観点からは、得られた積層体は、積層方向に0.05MPa以上1.0MPa以下の圧力で押し付けながら、20℃以上200℃以下の温度下で30秒以上30分以下プレスしてもよい。
なお、一次複合シートを積層、折畳または捲回して得られる積層体においては、粒子状炭素材料および/または繊維状炭素材料等の無機材料が積層方向に略直交する方向に配列していると推察される。
(複合シートの製造方法)
そして、本発明の複合シートの製造方法では、上述したいずれかのスライス方法に従って積層体をスライスすることにより、複合シートを得ることを特徴とする。このように、少なくとも上述した所定以上のスライス速度にて、刃を用いて、有機高分子化合物および無機材料を含む一次複合シートの積層体を積層方向に平行な面でスライスすれば、厚み方向の熱抵抗値が良好に低減された複合シートを製造することができる。従って、得られる複合シートに、優れた厚み方向の熱伝導性を付与することができる。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
そして、実施例および比較例において、複合シートの厚み方向の熱抵抗値、厚み面精度、粘着性および光沢度は、それぞれ以下の方法に従って測定または評価した。
<熱抵抗値>
複合シートの厚み方向の熱抵抗値は、樹脂材料熱抵抗試験器(株式会社日立テクノロジーアンドサービス製、製品名「C47108」)を用いて測定した。ここで、1cm角の略正方形に切り出した複合シートを試料とし、厚み方向に0.05MPaを加えた際の熱抵抗値(℃/W)を測定した。なお、測定時の試料温度は50℃とした。
厚み方向の熱抵抗値が低いほど、複合シートの厚み方向における熱伝導性が優れている。
<厚み面精度>
複合シートの厚み面精度は、膜厚計(ミツトヨ製、製品名「デジマチックインジケーター ID−C112XBS」)を用いて測定した。ここで、略正方形の複合シートについて、シートの略中心点および4隅(4角)の計5点における厚みを測定し、測定した厚みの標準偏差の値(μm)を求めた。
標準偏差の値が小さいほど複合シートが厚み方向に均一で、厚み面精度に優れていることを示す。
<粘着性>
複合シートのスライス面の粘着性は、プローブタック試験機(株式会社レスカ製、商品名「TAC1000」)を使用して測定した。ここで、複合シートのスライス面の略中心箇所に対して、温度25℃、荷重0.5Nの条件で、直径5mmの平らなプローブを10秒間押し付けた。そして、スライス面に押しつけたプローブを複合シートから引き離す際に要する力(N/mm)を、複合シートのスライス面の粘着性として測定した。
引き離す際に要する力が大きいほど粘着性が高く、粘着性に優れる。
<光沢度>
複合シートのスライス面の光沢度は、ハンディー光沢度計(日本電子工業株式会社製、製品名「PG−II M」)を用いて、入射角度60度で測定した。具体的には、複合シートのスライス面における任意の3点における光沢度を測定し、平均値を60度光沢度として算出した。
60度光沢度の数値が大きいほど、複合シートのスライス面が、より光沢した(艶のある)外観を有することを示す。
(実施例1)
<CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体の調製>
国際公開第2006/011655号の記載に従って、スーパーグロース法によってCNTを含む繊維状炭素ナノ構造体を得た。
得られた繊維状炭素ナノ構造体は、BET法を用いて測定した窒素吸着比表面積(BET比表面積)が800m2/gであった。また、透過型電子顕微鏡を用い、無作為に選択した100本の繊維状炭素ナノ構造体の直径を測定した結果、平均直径(Av)が3.3nm、直径の標本標準偏差(σ)に3を乗じた値(3σ)が1.9nm、それらの比(3σ/Av)が0.58であった。また、得られた繊維状炭素ナノ構造体は、主に単層CNT(「SGCNT」とも称する)により構成されていた。
<繊維状炭素ナノ構造体の易分散性集合体の調製>
[分散液の調製]
繊維状炭素材料としての、上述で得られた繊維状炭素ナノ構造体を400mg量り取り、溶媒としてのメチルエチルケトン2L中に混ぜ、ホモジナイザーにより2分間撹拌し、粗分散液を得た。次に、湿式ジェットミル(株式会社常光製、製品名「JN−20」)を使用し、得られた粗分散液を湿式ジェットミルの0.5mmの流路に100MPaの圧力で2サイクル通過させて、繊維状炭素ナノ構造体をメチルエチルケトンに分散させた。そして、固形分濃度0.20質量%の分散液を得た。
[溶媒の除去]
その後、上述で得られた分散液をキリヤマろ紙(No.5A)を用いて減圧ろ過し、シート状の易分散性集合体を得た。
<組成物の調製>
有機高分子化合物としての常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂(ダイキン工業株式会社製、商品名「ダイエルG―101」)を100部と、無機材料のうち粒子状炭素材料としての膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製、商品名「EC−100」、体積平均粒子径:190μm)を50部と、無機材料のうち繊維状炭素材料としての繊維状炭素ナノ構造体の易分散性集合体を0.1部とを、ホバートミキサー(株式会社小平製作所製、製品名「ACM−5LVT型」、容量:5L)に投入した。そして、80℃に加温して30分間混合した。次に、得られた混合物をワンダークラッシュミル(大阪ケミカル株式会社製、商品名「D3V−10」)に投入し、1分間解砕することにより、有機高分子化合物および無機材料を含む複合材料を得た。
<一次複合シートの形成>
次いで、得られた複合材料5gを、サンドブラスト処理を施した厚み50μmのPETフィルム(保護フィルム)で挟み、ロール間隙550μm、ロール温度50℃、ロール線圧50kg/cm、ロール速度1m/分の条件にて圧延成形することにより、厚み0.5mmの一次複合シートを得た。
<積層体の形成>
続いて、得られた一次複合シートを約60mm×約60mm×厚み約0.5mmに裁断し、裁断した一次複合シートを厚み方向に120枚積層した。更に、積層した一次複合シート同士を、温度120℃、0.1MPaの力で3分間プレスして熱圧着させることにより、厚み約60mmの積層体を得た。
つまり、得られた積層体の天面、底面および4つの積層側面は、いずれも、約60mm×約60mmのサイズであった。
<積層体のスライス>
その後、得られた一次複合シートの積層体の積層側面を、木工用スライサー(株式会社丸仲鐵工所製、商品名「超仕上げかんな盤スーパーメカS」)を用いて、以下の条件にて積層方向に平行な面でスライスすることにより、厚み150μmの複合シートを得た。また、複合シートの厚みは、木工用スライサーのスライド面24から先端部が突出している刃2の突出量を調整することにより制御した。
積層体の支持:積層体1がスライド面24と平行方向にスライド可能となるように、積層側面16をスライド面24によって支持
積層体の温度:25℃
積層体の押圧:積層側面14からスライド面24への方向に0.3MPa
表刃22の刃角β:21°
表刃22の逃げ角γ:3°
スライス速度V:60m/分
スライス角度α:0°(図2(a))
そして、得られた複合シートについて、上述の方法に従って、熱抵抗値、厚み面精度、粘着性および表面粗さを測定した。結果を表1に示す。
(実施例2)
積層体のスライスにおいて、図2(b)に示すように、スライス角度αを15°に変更した以外は実施例1と同様にして、複合材料、一次複合シート、積層体および複合シートを製造した。
そして、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
(実施例3)
積層体のスライスにおいて、図2(c)に示すように、スライス角度αを45°に変更した以外は実施例1と同様にして、複合材料、一次複合シート、積層体および複合シートを製造した。
そして、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
(実施例4)
積層体のスライスにおいて、スライス速度Vを5m/分に変更した以外は実施例1と同様にして、複合材料、一次複合シート、積層体および複合シートを製造した。
そして、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
(実施例5)
積層体のスライスにおいて、図2(b)に示すように、スライス角度αを15°に変更した以外は実施例4と同様にして、複合材料、一次複合シート、積層体および複合シートを製造した。
そして、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
(実施例6)
積層体のスライスにおいて、図2(c)に示すように、スライス角度αを45°に変更した以外は実施例4と同様にして、複合材料、一次複合シート、積層体および複合シートを製造した。
そして、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
(実施例7)
積層体のスライスにおいて、スライス速度Vを120m/分に変更した以外は実施例1と同様にして、複合材料、一次複合シート、積層体および複合シートを製造した。
そして、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
(比較例1)
積層体のスライスにおいて、スライス速度Vを1m/分に変更した以外は実施例1と同様にして、複合材料、一次複合シート、積層体および複合シートを製造した。
そして、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
(比較例2)
積層体のスライスにおいて、図2(c)に示すように、スライス角度αを45°に変更した以外は比較例1と同様にして、複合材料、一次複合シート、積層体および複合シートを製造した。
そして、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
Figure 0006969090
表1より、有機高分子化合物および無機材料を含む一次複合シートの積層体を、刃を用いて、積層方向にスライスするに際し、スライス速度が5m/分以上である実施例1〜7では、スライス速度が5m/分未満である比較例1〜2と比べ、複合シートの厚み方向の熱抵抗値が低く、熱伝導性に優れる複合シートが得られることが分かる。
また、実施例および比較例を通じて、スライス速度が同じ場合には、スライス角度を45°に近付けるほど、厚み面精度に優れる複合シートが得られた。
一方、実施例および比較例を通じて、スライス速度が同じ場合には、スライス角度を0°に近付けるほど、熱抵抗性、粘着性および光沢性に優れる複合シートが得られた。
本発明によれば、積層体がスライスされてなる複合シートが厚み方向に低い熱抵抗値を有し得る、積層体のスライス方法を提供することができる。
また、本発明によれば、上記積層体のスライス方法を用い、厚み方向に低い熱抵抗値を有する複合シートを製造可能な、複合シートの製造方法を提供することができる。
1 積層体
11 天面
12 底面
13 積層側面
14 積層側面
15 積層側面
16 積層側面
17 スライス交線
2 刃
21 刃先辺
22 表刃
23 裏刃
24 スライド面
D 積層体の積層方向
E 刃の延在方向
S スライド方向、スライス方向
V スライド速度、スライス速度
α スライス角度
β 刃角
γ 逃げ角

Claims (6)

  1. 有機高分子化合物および無機材料を含む一次複合シートの積層体を、刃を用いて、積層方向に平行な面でスライスする方法であって、
    前記有機高分子化合物が、23℃、1atm(絶対圧)で液体の熱可塑性樹脂であり、
    前記スライスの速度が15m/分以上であることを特徴とする、積層体のスライス方法。
  2. 前記無機材料が粒子状炭素材料である、請求項1に記載のスライス方法。
  3. 前記積層体の積層方向と前記刃の延在方向とのなす角度が0°超90°未満である、請求項1又は2に記載のスライス方法。
  4. 前記液体の熱可塑性樹脂の105℃における粘度が500〜30000mPa・sである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のスライス方法。
  5. 有機高分子化合物および無機材料を含む複合材料をシート状に加圧して一次複合シートを得る工程と、
    前記一次複合シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、前記一次複合シートを折畳または捲回して、積層体を得る工程と、を更に有し、
    前記有機高分子化合物が、23℃、1atm(絶対圧)で液体の熱可塑性樹脂であり、
    前記積層体を得る工程にて得られた積層体を、請求項1〜のいずれか一項に記載のスライス方法に用いる、積層体のスライス方法。
  6. 請求項1〜のいずれか一項に記載のスライス方法に従って積層体をスライスすることにより複合シートを得る、複合シートの製造方法。
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