JP2021098849A - ポリオレフィン系微多孔膜、積層体、及びそれを用いた非水電解液二次電池 - Google Patents

ポリオレフィン系微多孔膜、積層体、及びそれを用いた非水電解液二次電池 Download PDF

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光隆 坂本
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Ryuta Nakajima
龍太 中嶋
聡士 藤原
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聡士 藤原
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Masatoshi Okura
正寿 大倉
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Abstract

【課題】リチウムイオン二次電池をはじめとする非水電解液二次電池のセパレータとして適用した際に、易滑性と平滑性に優れ、電池製造時の搬送性や巻取り時の外観、および電池の小型化、薄膜化を可能とするポリオレフィン系微多孔膜を提供することを目的とする。【解決手段】微多孔膜の一方の表面と他方の表面との動摩擦係数μkが0.2以上0.7以下であり、かつ、微多孔膜の一方の表面と他方の表面のうち二乗平方根高さSqが大きい面において、二乗平均平方根高さSqが10nm以上100nm以下である、ポリオレフィン系微多孔膜。【選択図】なし

Description

本発明はポリオレフィン系微多孔膜、積層体、及びそれを用いた非水電解液二次電池に関する。
熱可塑性樹脂微多孔膜は物質の分離膜、選択透過膜、及び隔離膜等として広く用いられている。微多孔膜の具体的な用途は、例えば、リチウムイオン二次電池、ニッケル−水素電池、ニッケル−カドミウム電池、ポリマー電池などの非水電解液二次電池用セパレータや、電気二重層コンデンサ用セパレータ、逆浸透濾過膜、限外濾過膜、精密濾過膜等の各種フィルター、透湿防水衣料、医療用材料、燃料電池用支持体などである。
特にリチウムイオン二次電池用セパレータとして、ポリオレフィン系微多孔膜が広く採用されている。その特徴として電池の安全性、生産性に大きく寄与する機械的強度に優れることに加え、電気絶縁性を担保しつつ、微細孔に浸透した電解液を通じたイオン透過性を併せ持ち、電池の外部/内部の異常反応時には120〜150℃程度において自動的にイオンの透過を遮断することにより、過度の温度上昇を抑制する孔閉塞機能を備えている点が挙げられる。
ポリオレフィン系微多孔膜をリチウムイオン二次電池に組み込む際には、耐熱性を向上させるための耐熱性樹脂層や電極層を積層するのが一般的である。積層する工程においては、金属ロールを回転させて、ポリオレフィン系微多孔膜を搬送させながら塗布やラミネート加工を行う方法が一般的に用いられる。また、ポリオレフィン系微多孔膜を製造する際には、ロール状態に巻き取った中間製品を作製した後、中間製品をスリットしてリールに巻取り製品化する方法が一般的に用いられる。
回転させた金属ロールでポリオレフィン系微多孔膜を搬送する際、微多孔膜表面に傷を付きにくくする観点や、ポリオレフィン系微多孔膜のロール状中間製品およびリール製品の製造時に皺を入りづらくする観点からは、微多孔膜の摩擦係数は低い、すなわち微多孔膜の表面が滑りやすいことが重要である。一方、近年ではリチウムイオン二次電池の小型化、薄膜化が進行しており、正極、セパレータ、負極を捲回させてリチウムイオン二次電池を製造する際に、同一積層数で電池の小型化、薄膜化が可能となる観点から、セパレータで使用されるポリオレフィン系微多孔膜は平滑であることが重要である。
ポリオレフィン系微多孔膜の摩擦係数に関して、特許文献1には、微多孔膜を構成するポリオレフィン組成物の分子量分布を広く特定の範囲とすることで膜表面の摩擦係数を低くする提案がされており、また、特許文献2には分子量の低いポリエチレン系樹脂を特定範囲の濃度で含有させることで当該ポリエチレン系樹脂を膜表面にブリードアウトさせて膜表面の摩擦係数を低くする提案がされている。
ポリオレフィン系微多孔膜の平滑性に関して、特許文献3には、ポリオレフィン系微多孔膜の表面粗さを特定範囲に大きくすることで電極との密着性を高くする提案がされている。
特開平8−311225号公報 特開2014−12857号公報 特開2009−91461号公報
摩擦係数が大きく滑り性が良好な微多孔膜の表面は、一般的に粗く、電池の小型化に必要な微多孔膜の平滑性が得られない。つまり、微多孔膜の表面の平滑性と易滑性は相反する特性であり、平滑性と易滑性を両立することは困難であった。特許文献1、2においては、平滑性に関して十分に考慮された設計とはなっておらず、リチウムイオン電池の小型化、薄膜化の観点で不十分であった。特許文献3においては平滑性に関して十分に考慮された設計とはなっておらず、リチウムイオン電池の小型化、薄膜化の観点で不十分であった。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、上記の欠点を解消し、相反する特性である、易滑性と平滑性を備えるポリオレフィン系微多孔膜を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明は、以下の構成を有する。
(1)微多孔膜の一方の表面と他方の表面との動摩擦係数μkが0.2以上0.7以下であり、かつ、微多孔膜の一方の表面と他方の表面のうち二乗平均平方根高さSqが大きい面において、二乗平均平方根高さSqが10nm以上100nm以下である、ポリオレフィン系微多孔膜である。
(2)微多孔膜の少なくとも一方の表面において、当該一方の表面と金属との動摩擦係数μmkが0.13以下である、(1)のポリオレフィン系微多孔膜である。
(3)下記測定法によって求められる一辺が2.7μmの立方体中のフィブリル本数が870本/μm以上2800本/μm以下であり、該フィブリルの平均直径が25nm以上60nm以下である、(1)または(2)のポリオレフィン系微多孔膜である。
工程(A):微多孔膜の断面において、切削して順次画像を得、3次元画像を作成する
工程(B):得られた3次元画像の樹脂部と空孔部とを判別し、構成樹脂部の3次元画像を作成する
工程(C):該構成樹脂部を、フィブリル単位に分割し、フィブリルの本数を計数する。
(4)微多孔膜の突刺強度が180gf以上700gf以下である、(1)〜(3)のいずれかに記載のポリオレフィン系微多孔膜である。
(5)微多孔膜の厚みが3μm以上14μm以下である、(1)〜(4)のいずれかに記載のポリオレフィン系微多孔膜である。
(6)130℃1時間での熱収縮率が長手方向、幅方向とも20%以下である、(1)〜(5)のいずれかに記載のポリオレフィン系微多孔膜。
(7)前記(1)〜(6)のいずれかに記載の微多孔膜を、捲回した微多孔膜ロールであって、動摩擦係数μkの変動係数が10%以下であるポリオレフィン系微多孔膜ロールである。
(8)微多孔膜の一方の表面について、二乗平均平方根高さSqの変動係数が10%以下である、(7)に記載のポリオレフィン系微多孔膜ロールである。
(9)前記(1)〜(6)のいずれかに記載のポリオレフィン系微多孔膜に、さらに耐熱性樹脂層を積層した、微多孔膜/耐熱性樹脂層積層体である。
(10)前記(1)〜(6)のいずれかに記載のポリオレフィン系微多孔膜、または、(9)に記載の微多孔膜/耐熱性樹脂層積層体を備える、非水解電解液二次電池。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン系微多孔膜は、リチウムイオン二次電池をはじめとする非水電解液二次電池のセパレータとして適用した際に、易滑性と平滑性のどちらにも優れ、搬送性や巻取り時の外観が良好であり、電池の小型化、薄膜化を可能とする効果を奏する。
以下、本発明の実施形態にかかるポリオレフィン系微多孔膜について詳細に説明する。本明細書において、ポリオレフィン系微多孔膜を単に「微多孔膜」と称する場合がある。
本発明のポリオレフィン系微多孔膜は、膜の一方の表面と他方の表面との動摩擦係数μkが0.2以上0.7以下であり、微多孔膜の一方の表面と他方の表面のうち二乗平均平方根高さSqが大きい面において、二乗平均平方根高さSqが10nm以上100nm以下である。動摩擦係数μkは膜同士を重ねた際の易滑性の指標の一つであり、白色干渉計で測定した二乗平均平方根高さSqは平滑性を表す指標の一つである。
本発明の実施形態におけるポリオレフィン系微多孔膜は、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする。ここで、ポリオレフィン系樹脂を主成分とするとは、微多孔膜の全質量を100質量%とした際に、50質量%を超えて100質量%以下のポリオレフィン系樹脂を含有することを意味する。ここで、本発明の実施形態におけるポリオレフィン系樹脂としては、各種ポリエチレン系樹脂や各種ポリプロピレン系樹脂などが挙げられる。本発明の実施形態におけるポリエチレン系樹脂とは、ポリエチレン系樹脂の重合体の全質量を100質量%とした際に、エチレン由来成分の合計が50質量%を超えて100質量%以下である態様の重合体を意味する。
また、本発明の実施形態におけるポリプロピレン系樹脂とは、ポリプロピレン系樹脂の重合体の全質量を100質量%とした際に、プロピレン由来成分の合計が50質量%を超えて100質量%以下である態様の重合体を意味する。
本発明の実施形態におけるポリエチレン系樹脂は、エチレンのみからなるホモポリマー、またはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−へキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−へキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等などの鎖状オレフィン(α−オレフィン)が共重合されたコポリマーなどが挙げられる。
本発明の実施形態におけるポリプロピレン系樹脂は、プロピレンのみからなるホモポリマー、またはエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体といった、各種ポリプロピレン系樹脂などが挙げられる。
また、本発明の実施形態におけるポリオレフィン系樹脂は、単一物、または2種類以上の異なるポリオレフィン系樹脂の混合物のいずれであってもよい。
これらの各種ポリオレフィン系樹脂のなかでも、優れた孔閉塞性能の観点からポリエチレン系樹脂が特に好ましい。ポリエチレン系樹脂の融点(軟化点)は微多孔膜の孔閉塞性能の観点から70〜150℃が好ましい。
以下、本発明の実施形態で用いるポリオレフィン系樹脂としてポリエチレン系樹脂を例に詳述する。本発明での実施形態用いられるポリエチレン系樹脂の種類としては、密度が0.94g/cmを越えるような高密度ポリエチレン、密度が0.93〜0.94g/cmの範囲の中密度ポリエチレン、密度が0.93g/cmより低い低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、特定の分子量を有する超高分子量ポリエチレン等が挙げられるが、後述するポリオレフィン系微多孔膜の内部の孔構造を所望の範囲に制御する観点からは、微多孔膜の全質量を100質量%とした際に、超高分子量ポリエチレンを80質量%以上含有する構成が好ましい。
本発明の実施形態に用いられる超高分子量ポリエチレンは、重量平均分子量が1.0×10以上、1.0×10以下が好ましい。重量平均分子量が1.0×10以上であれば、緩和時間が短くなりすぎず延伸温度や熱処理温度の増加を抑え微細なフィブリルが溶融し、微多孔膜の孔数が低減してしまうのを防ぐことができる。重量平均分子量が1.0×10以上の超高分子量ポリエチレンを用いることで、分子鎖の絡み合いが増加し、延伸工程においてポリエチレン系樹脂層に均一に応力が負荷されるため、後述する厚み方向の各種構造を所望の範囲に制御することが可能となる。そのため、超高分子量ポリエチレンの重量平均分子量は、1.0×10以上であり、好ましくは1.5×10以上、より好ましくは2.0×10以上、さらに好ましくは3.0×10以上である。また、重量平均分子量(Mw)の上限としては、好ましくは8.0×10以下、より好ましくは6.0×10以下、さらに好ましくは5.0×10以下、さらに好ましくは4.0×10以下である。
超高分子量ポリエチレンの分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は3.0〜100の範囲内であることが好ましい。分子量分布が狭いほど系が単一化され均一な微細孔が得られやすいため、分子量分布が狭いほど好ましいが、分布が狭くなるほど成形加工性が低下する。そのため、分子量分布の下限は好ましくは4.0以上、より好ましくは5.0以上、さらに好ましくは6.0以上である。分子量分布が増加すると低分子量成分が増加するため強度の低下や延伸・熱固定における微細なフィブリルの溶融・融着が起こりやすくなるため、上限は好ましくは80以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは20以下、さらに好ましくは10以下である。上記範囲とすることで、良好な成形加工性が得られるとともに、系が単一化されるため均一な微細孔が得られる。
本発明の実施形態に用いられる高密度ポリエチレンは、重量平均分子量(Mw)が1.0×10以上1.0×10以下であることが好ましく、1.0×10以上1.0×10以下であることがより好ましく、5.0×10以上9.0×10以下であることがさらに好ましい。重量平均分子量が上記の範囲内の高密度ポリエチレンを本発明の実施形態のポリオレフィン系微多孔膜に適用することで、押出機内の樹脂の圧力変動が起きづらくなり、品位を良好にできる場合がある。
その他、本発明の実施形態にかかるポリオレフィン系微多孔膜には、本発明の効果を損なわない範囲において、酸化防止剤、熱安定剤や帯電防止剤、紫外線吸収剤、さらにはブロッキング防止剤や充填材等の各種添加剤を含有させてもよい。特に、ポリオレフィン系樹脂の熱履歴による酸化劣化を抑制する目的で、酸化防止剤を添加することが好ましい。
酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT:分子量220.4)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等から選ばれる1種類以上を用いることが好ましい。
本発明において、膜の一方の表面と他方の表面の動摩擦係数μkとは、ASTM−D−1894に準じて、微多孔膜同士の動摩擦力を求めた後、微多孔膜の垂直抗力(すなわち膜に乗せたおもりの重力)で除して求めることができる。具体的な測定方法としては、微多孔膜を一方の表面と他方の表面が触れるような向きになるように膜を上下に重ねて設置し、上側の微多孔膜のさらに上側にすべり片と呼ばれる200g重、接触面が63mm角のおもりを乗せた状態で、上側の微多孔膜に水平に力を加え、接触面を滑らせることで動摩擦力を求めることができる。
本発明の実施形態における、膜の一方の表面と他方の表面の動摩擦係数μkは、易滑性を高め、巻取り時の外観を良好とする観点からは、0.7以下が必要である。また、易滑性をさらに高め、微多孔膜を搬送する際の巻取り時の外観をより良好とする観点からは、膜の一方の表面と他方の表面の動摩擦係数μkは0.65以下が好ましく、0.6以下がより好ましい。また、膜の一方の表面と他方の表面の動摩擦係数μkは、巻き取った後のずれを防止する観点から、0.2以上とすることが重要である。
本発明においての実施形態における、微多孔膜の一方の表面と他方の表面のうち二乗平均平方根高さSqが大きい面において、二乗平均平方根高さSqが10nm以上100nm以下であることが重要である。本発明の二乗平均平方根高さSqは、微多孔膜の表面を白色干渉計を用いて測定し得られる。種々の検討の結果、捲回後の電池の小型化、薄膜化に対しては、mm単位で囲まれた面積における非接触測定での二乗平均平方根高さSqが重要な指標となることがわかり、微多孔膜の一方の表面と他方の表面のうち二乗平方根高さSqが大きい面において、二乗平均平方根高さSqを100nm以下とすることが電池の小型化、薄膜化に重要となる。mm単位で囲まれた面積とは、例えば、2.5mm×2.5mmの測定面積等が挙げられる。電池の小型化、薄膜化をより進行させる観点からは、二乗平均平方根高さSqは90nm以下が好ましく、80nm以下がより好ましく、65nm以下が特に好ましい。また、微多孔膜の易滑性を維持する観点からは、二乗平均平方根高さは10nm以上、より好ましくは20nm以上とすることが重要である。
微多孔膜の一方の表面と他方の表面は、両面の二乗平均平方根高さSqが小さく、特定の範囲であれば、電池の薄膜化・小型化につながる。よって、二乗平均平方根高さSqの大きい面において、二乗平均平方根高さSqを特定範囲に規定すれば、反対の面の二乗平均平方根高さSqはより小さいことになるので、微多孔膜の両面ともが特定の範囲を超えることはない。
膜の平滑性と易滑性の関係については、一般的には膜の表面を粗くして平滑性を低下させると動摩擦係数が小さくなり易滑性が高くなり、膜の平滑性と易滑性が相反する場合が多い。そのため、これらの両立は容易ではなく、種々の検討を行った結果、ポリオレフィン系微多孔膜の構成樹脂の80質量%以上を超高分子量ポリエチレンとし、かつ湿式延伸の面倍率を60倍以上とし、延伸後の熱固定温度をポリエチレン系樹脂の融点より25℃以上低い温度に設定して15分以上とする方法などが有効であることがわかった。このような構成、製造方法とすることで、微多孔膜表面に多数の微細フィブリル(繊維状樹脂構成物)を形成して微多孔膜同士の接触面積を低減して易滑性を発現するとともに、低温で長時間の熱固定を行うことで加熱による微多孔膜表面のフィブリル形状は維持しながら、微多孔膜のmm単位で囲まれた面積における二乗平均平方根高さSq、すなわち平滑性を良好とすることができる。微細フィブリルとは、三次元的に不規則に連結した平均直径数nm以上数百nm以下の繊維状の樹脂構成物である。
本発明において、ポリオレフィン系微多孔膜は、回転させたロール等で搬送する際の耐傷付き性の観点から、膜の少なくとも片方の表面において、膜の表面と金属との動摩擦係数μmkが0.13以下であることが好ましい。耐傷付き性をより良好とする観点からは、膜の表面と金属との動摩擦係数μmkは0.08以下がより好ましく、0.04以下がさらに好ましい。膜の表面と金属との動摩擦係数μmkは、ASTM−D−1894に準じて、微多孔膜と金属箔(例えばSUS箔、アルミニウム箔)の動摩擦力を求めた後、微多孔膜の垂直抗力(すなわち膜に乗せたおもりの重力)で除して求めることができる。なお、具体的な測定方法としては、微多孔膜の一方の表面と金属箔の表面が触れるような向きになるように上下に重ねて設置し、上側に設置した微多孔膜のさらに上側にすべり片と呼ばれる200g重、接触面が63mm角のおもりを乗せた状態で、上側の微多孔膜に水平に力を加え、接触面を滑らせることで動摩擦力を求めることができる。
微多孔膜の表面と金属との動摩擦係数μmkを0.13以下とする方法としては、後述する湿式延伸において、幅方向の延伸倍率を長手方向よりも高い条件としつつ、かつ湿式延伸後の乾式延伸において長手方向の延伸倍率を幅方向よりも高い条件とする方法などが挙げられる。このような製造条件とすることで、微多孔膜の表面のフィブリルを長手方向に多く配向させて金属上で搬送方向に微多孔膜をずらした際の滑りやすさを向上させることができる。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン系微多孔膜は、易滑性と平滑性を両立させる観点から、微多孔膜のFIB−SEM測定で得られる各断面像から作成された一辺が2.7μmの立方体の三次元画像において、フィブリル本数が870本/μm以上2800本/μ以下であり、該フィブリル平均直径が25nm以上60nm以下であることが好ましい。
FIB−SEM測定とは、集積イオンビーム(FIB)で微多孔膜の断面を一定間隔で削り取る操作(FIB切削)、ならびに削り取った面のSEM(走査型電子顕微鏡)画像の撮影を行う操作を繰り返すことで奥行き方向の一定間隔の連続画像を測定する方法を指す。具体的な測定方法の例としては、電子染色を施した樹脂を微多孔膜に含浸させ、空孔部の包埋処理を行ったのち、フィルムの断面が初期の観察面になるようにミクロトームを用いてフィルム断面の切片を作製する。得られたフィルム断面の切片を、奥行き方向に10nmずつ切削しながら、奥行き方向のSEM画像を順次撮影していく方法などが挙げられる。なお、各SEM画像の位置情報を特定させる方法としては、FIB切削を行う微多孔膜の観察画面の一部に金属成分を含んだマーキングを行っておき、マーキングした位置をもとに各画像の位置の相関を特定する方法などが用いられる。画像面積は3μm角から10μm角程度が好ましく、観察面が傾斜している場合は、傾斜を考慮して縮尺を換算してもよい。
また、各断面画像から三次元画像を作成する方法としては、例えば、日本ビジュアルサイエンス社製「ExFact(登録商標)Analysis for Fiber」などの画像処理ソフトを用いて、ポリオレフィン系微多孔膜のうち、明部として観察される包埋処理された樹脂部分(明部樹脂部分、すなわち微多孔膜の空孔部に相当する部分)とポリオレフィン系微多孔膜を構成する樹脂の部分(構成樹脂部分)に二値化処理を行った後、二値化処理の情報を元にして三次元の立体画像化を行う。三次元の立体画像について、日本ビジュアルサイエンス社製「ExFact(登録商標)Analysis for Fiber」などの画像処理ソフトを用いてポリオレフィン系微多孔膜を構成する樹脂部分の細線化処理を行うことで、ポリオレフィン系微多孔膜内部の構成樹脂部分の三次元画像を作成する方法などが挙げられる。作成する三次元画像のサイズについては、解析時間や解析パラメータの再現性の観点から、本願発明では2.7μmの長さの辺で囲まれた立方体とすることとする。
フィブリル本数は、三次元画像で得られた構成樹脂部分について、日本ビジュアルサイエンス社製「ExFact(登録商標)Analysis for Fiber」などの画像処理ソフトを用いて、細線化処理を行った構成樹脂部分の線を、交差、分岐している部分で分割処理を行った後の細線の数を求めた後、1μmあたりの本数に換算した値とする。なお、具体的な分割処理の例としては、X字型の箇所については4本、Y字型の箇所については3本、T字型の箇所については3本に分割を行う処理方法とする。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン系微多孔膜は、易滑性と平滑性をともに良好とする観点からは、微多孔膜の上述のFIB−SEM測定で得られる各断面像から作成された2.7μm角の三次元画像におけるフィブリル本数は1000本/μm以上がより好ましく、1250本/μm以上がさらに好ましく、1400本/μm以上がさらに好ましい。
本発明において、微多孔膜のFIB−SEM測定で得られる各断面像から作成された2.7μm角の三次元画像において、フィブリル本数を870本/μmが2800本/μm以下とする方法としては、ポリオレフィン系微多孔膜を構成する樹脂の80質量%以上を、超高分子量ポリエチレンとし、かつ湿式延伸の面倍率を60倍以上とし、さらに製造時の樹脂濃度(ポリオレフィン系樹脂溶液全量を100質量%とした際のポリエチレン等の各樹脂の合計量の比率)を30質量%未満とする方法が挙げられる。本発明の実施形態においては、ポリオレフィン系微多孔膜を構成する樹脂の80質量%以上を高分子量ポリエチレン系樹脂とすることで、延伸前のキャストシートでのポリエチレンの球晶成長が抑制でき、キャストシート構造を均一化できるため、湿面倍率を60倍以上とした湿式延伸と組み合わせることで、均一な開孔が可能となり、微多孔膜の表面に微細なフィブリルを多数配置させることが可能となる。
本発明のポリオレフィン系微多孔膜は、リチウムイオン二次電池のセパレータとして使用した際の電池の耐衝撃性を向上させる観点から、突刺強度が180gf以上700gf以下であることが好ましい。リチウムイオン二次電池のセパレータとして使用した際の電池の耐衝撃性をより高める観点からは、突刺強度は250gf以上がより好ましく、350gf以上がさらに好ましく、500gf以上が特に好ましい。また、電池の耐衝撃性の観点からは、ポリオレフィン系微多孔膜の強度は高いほど好ましいが、熱収縮率など他物性とのバランスを良好とする観点からは、700gf以下が好ましい。なお、本発明における突刺強度は、厚みを10μmに換算した際の突刺強度とする。
ポリオレフィン系微多孔膜の突刺強度を180gf以上700gf以下とする方法としては、ポリオレフィン系微多孔膜の構成樹脂の80質量%以上を、超高分子量ポリエチレンとし、かつ湿式延伸の面倍率を60倍以上とし、かつポリオレフィン系微多孔膜の空孔率を35%以上55%以下とする方法が挙げられる。
本発明のポリオレフィン系微多孔膜は、厚みが3μm以上14μm以下であることが、リチウムイオン電池のセパレータとして使用した際に、電極間の距離を小さくすることができ、電池部材の積層数を増加することが可能になることから、電池の高容量化の観点で好ましい。厚みを3μm以上14μm以下とする方法としては、湿式延伸方式を採用し、延伸倍率や製造時のライン速度を高める方法などが用いられる。電池を高容量化させる観点からは、ポリオレフィン系微多孔膜の厚みは12μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましく、7μm以下がさらに好ましい。
本発明のポリオレフィン系微多孔膜は、130℃1時間での熱収縮率が長手方向、幅方向とも20%以下であることが、リチウムイオン電池のセパレータとして使用した際に高温状態で保持された際の寸法安定性が良好となり、セパレータ端部の変形を起因とした絶縁不良が生じにくくなるため好ましい。ポリオレフィン系微多孔膜のうち特にポリエチレン系樹脂を主成分とした微多孔膜については、一般的に120〜150℃付近に到達すると孔が閉塞するシャットダウン機能を有しており、リチウムイオン電池のセパレータとして使用した際にリチウムイオンの移動を停止させて電池の熱暴走を抑制させる機能を有する。そのため、シャットダウンが起こる直前の温度まではリチウムイオン電池が一定時間保持される場合があり、この温度領域(例えば130℃など)でセパレータの変形が大きいとリチウムイオン電池内での正極と負極の間で短絡が発生し、発火等の不具合につながる場合がある。
本発明のポリオレフィン系微多孔膜は、130℃1時間での熱収縮率が長手方向、幅方向とも18%以下であることが、高温での寸法安定性を良好とする観点からより好ましい。また、130℃1時間での熱収縮率はシャットダウン特性を維持する観点からは、長手方向、幅方向とも3%以上であることが好ましい。
130℃1時間での熱収縮率を長手方向、幅方向とも20%以下とする方法としては、後述する、乾燥したポリオレフィン系微多孔膜を少なくとも一軸方向に延伸(再延伸)する工程にて、再延伸温度を130℃以上とする方法などが挙げられる。
ポリオレフィン系微多孔膜を製造する際には、ロール状態に巻き取った中間製品を作製した後、中間製品をリール状にスリットして製品化する方法が一般的に用いられる。中間製品やスリット後の製品として見られるポリオレフィン系微多孔膜ロールは、長手方向に広範囲にわたり、良好で均一な易滑性と平滑性を有する。均一性を評価する指標の一つとして変動係数がある。変動係数とは、測定値(N個)の標準偏差を平均値で除した値である。
広範囲での平滑性を良好とする観点から、ロール状態から長手方向に10mの長さの微多孔膜を切り取り、微多孔膜の長手方向に等間隔で10点以上測定した際の二乗平均平方根高さSqの変動係数が10%以下であることが好ましい。ポリオレフィン系微多孔膜ロールは、平滑性をより良好とする観点から、二乗平均平方根高さSqの変動係数が8%以下となることがより好ましく、6%以下がさらに好ましい。
また、本発明のポリオレフィン系微多孔膜ロールは、広範囲での易滑性を良好とする観点から、ロール状態から長手方向に1mの長さの微多孔膜を、20カ所以上切り取り、任意の組合せで微多孔膜の一方の表面と他方の表面が触れるような向きになるように微多孔膜を上下に重ねて設置して、動摩擦力μkを10回以上測定した際に、動摩擦係数μkの変動係数が10%以下となることが好ましい。ポリオレフィン系微多孔膜ロールは、易平滑性をより良好とする観点から、動摩擦係数μkの変動係数が8%以下となることがより好ましく、6%以下が特に好ましい。
微多孔膜ロールの二乗平均平方根高さSqと動摩擦係数μkの変動係数を所望の範囲とするための方法としては、ポリオレフィン系微多孔膜の構成樹脂の80質量%以上を超高分子量ポリエチレンとし、かつ湿式延伸の面倍率を60倍以上とし、延伸後の熱固定温度をポリエチレン系樹脂の融点より25℃以上低い温度と設定して15分以上かけて、安定に連続生産することで、動摩擦係数μkや二乗平均平方根高さSqなどを所望の範囲とする方法などが挙げられる。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン系微多孔膜は、リチウムイオン電池に搭載した際の耐熱性を向上させる観点から、さらに耐熱性樹脂層を積層し、積層体としてもよい。耐熱性樹脂層としては、各種フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、芳香族ポリアミド径樹脂などの電池の電解液に不溶であり、かつ電池使用条件の範囲において電気的に安定な樹脂が好ましく用いられる。また、耐熱性樹脂層には、耐熱性を更に向上させる観点から、有機粉末、無機粉末、またはこれら混合物をフィラーとして含有してもよく、例えば有機粉末としては、フッ素系樹脂、メラミン系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂等が、無機粉末としては、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、炭酸塩、硫酸塩等、さらに具体的にはアルミナ、シリカ、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムなどを用いることができる。
次に、本発明の実施形態にかかるポリオレフィン系微多孔膜の製造方法例について以下に説明するが、本発明はかかる例に限定して解釈されるものではない。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン系微多孔膜の製造方法は、以下の(a)〜(e)の工程を有することが好ましい。
(a)1種又は2種以上のポリオレフィン系樹脂と、必要に応じて溶媒とを含むポリマー材料を溶融混練し、ポリオレフィン系樹脂溶液を調製する工程
(b)溶解物を押出し、シート状に成型して冷却固化する工程
(c)得られたシートをロール方式またはテンター方式により延伸を行う工程
(d)その後、得られた延伸フィルムから可塑剤を抽出しフィルムを乾燥する工程
(e)熱処理/再延伸を行う工程
以下、各工程について説明する。
(a)ポリオレフィン系樹脂溶液の調製工程
本発明の実施形態に用いられるポリオレフィン系樹脂を、可塑剤に加熱溶解させ、ポリオレフィン系樹脂溶液を調製する。可塑剤としては、ポリオレフィン系樹脂を十分に溶解できる溶剤であれば特に限定されないが、比較的高倍率の延伸を可能とするため、溶剤は室温で液体であることが好ましい。
溶剤としては、ノナン、デカン、デカリン、パラキシレン、ウンデカン、ドデカン、流動パラフィン等の脂肪族、環式脂肪族又は芳香族の炭化水素、および沸点がこれらに対応する鉱油留分、並びにジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の室温では液状のフタル酸エステルが挙げられる。液体溶剤の含有量が安定なゲル状シートを得るために、流動パラフィンのような不揮発性の液体溶剤を用いるのが好ましい。
溶剤の比率としては、微細なフィブリルの構造を特定範囲に制御しやすくする観点から、ポリオレフィン系樹脂溶液の全量を100質量%とした際の溶剤濃度が70質量%を超える範囲が好ましい。溶融混練状態では、ポリオレフィン系樹脂と混和するが室温では固体の溶剤を液体溶剤に混合してもよい。このような固体溶剤として、ステアリルアルコール、セリルアルコール、パラフィンワックス等が挙げられる。ただし、固体溶剤のみを使用すると、延伸ムラ等が発生する恐れがある。
液体溶剤の粘度は40℃において20〜200cStであることが好ましい。40℃における粘度を20cSt以上とすれば、ダイからポリオレフィン系樹脂溶液を押し出したシートが不均一になりにくい。一方、40℃における粘度を200cSt以下とすれば液体溶剤の除去が容易である。なお、液体溶剤の粘度は、ウベローデ粘度計を用いて40℃で測定した粘度である。
(b)押出物の形成およびゲル状シートの形成
ポリオレフィン系樹脂溶液の均一な溶融混練方法は、特に限定されないが、高濃度のポリオレフィン系樹脂溶液を調製したい場合、二軸押出機中で行うことが好ましい。必要に応じて、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸類、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤など公知の添加剤も、製膜性を損なうことなく、本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。特にポリオレフィン系樹脂の酸化を防止するために酸化防止剤を添加することが好ましい。
押出機中では、ポリオレフィン系樹脂が完全に溶融する温度で、ポリオレフィン系樹脂溶液を均一に混合する。溶融混練温度は、使用するポリオレフィン系樹脂によってことなるが、(ポリオレフィン系樹脂の融点+10℃)〜(ポリオレフィン系樹脂の融点+120℃)とするのが好ましい。さらに好ましくは(ポリオレフィン系樹脂の融点+20℃)〜(ポリオレフィン系樹脂の融点+100℃)である。
ここで、融点とは、JIS K7121(1987)に基づき、DSC(Differential scanning calorimetry)により測定した値をいう。例えば、ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂である場合、ポリエチレン系樹脂の溶融混練温度は140〜250℃の範囲が好ましい。さらに好ましくは、160〜230℃、さらに好ましくは170〜200℃である。具体的には、ポリエチレン系樹脂は約130〜140℃の融点を有するので、溶融混練温度は140〜250℃が好ましく、180〜230℃がさらに好ましい。
ポリオレフィン系樹脂の劣化を抑制する観点から溶融混練温度は低い方が好ましいが、上述の温度よりも低いとダイから押出された押出物に未溶融物が発生し、後の延伸工程で破膜等を引き起こす原因となる場合がある。また、上述の温度より高いと、ポリオレフィン系樹脂の熱分解が激しくなり、得られるポリオレフィン系微多孔膜の物性、例えば、強度や空孔率等が悪化する場合がある。また、分解物が冷却ロールや延伸工程上のロール等に析出し、シートに付着することで外観悪化につながる。そのため、溶融混練温度は上記範囲内で混練することが好ましい。
次に、得られた押出物を冷却することによりゲル状シートが得られ、冷却により、溶剤によって分離されたポリオレフィン系樹脂のミクロ相を固定化することができる。冷却工程においてゲル状シートを10〜50℃まで冷却するのが好ましい。これは、最終冷却温度を結晶化終了温度以下とするためで、高次構造を細かくすることで、その後の延伸において均一延伸が行いやすくなる。そのため、冷却は少なくともゲル化温度以下までは30℃/分以上の速度で行うのが好ましい。
一般に冷却速度が遅いと、比較的大きな結晶が形成されるため、ゲル状シートの高次構造が粗くなり、それを形成するゲル構造も大きなものとなる。対して冷却速度が速いと、小さく均一な結晶が形成されるため、ゲル状シートの高次構造が密となり、均一延伸に加え未開口部低減につながる。
冷却方法としては、冷風、冷却水、その他の冷却媒体に直接接触させる方法、冷媒で冷却したロールに接触させる方法、キャスティングドラム等を用いる方法等がある。
これまでポリオレフィン系微多孔膜が単層の場合を説明してきたが、本発明の実施形態にかかるポリオレフィン系微多孔膜は単層に限定されるものではなく、積層体にしてもよい。積層数は特に限定は無く、2層積層であっても3層以上の積層であってもよい。
ポリオレフィン系微多孔膜を積層体とする方法としては、例えば、所望の樹脂を必要に応じて調製し、これらの樹脂を別々に押出機に供給して所望の温度で溶融させ、ポリマー管あるいはダイ内で合流させて、目的とするそれぞれの層の厚みでスリット状ダイから押出しを行う等して、積層体を形成する方法などが挙げられる。
(c)湿式延伸工程
得られたゲル状(積層シートを含む)シートを延伸する。用いられる延伸方法としては、ロール延伸機によるシート搬送方向(MD方向)への一軸延伸、テンターによるシート幅方向(TD方向)への一軸延伸、ロール延伸機とテンター、或いはテンターとテンターとの組み合わせによる逐次二軸延伸や同時二軸テンターによる同時二軸延伸等が挙げられる。
延伸倍率は、膜厚の均一性の観点より、ゲル状シートの厚さによって異なるが、いずれの方向でも7倍以上に延伸することが好ましい。また、動摩擦係数μkや表面の二乗平均平方根高さSqなどを所望の範囲とする観点から、面倍率は60倍以上が好ましく、80倍以上がより好ましく、100倍以上が特に好ましい。また、ポリオレフィン系微多孔膜の製造時の破れを抑制する観点からは、面倍率は150倍以下が好ましい。また、搬送方向、幅方向のそれぞれの延伸倍率は、後述する乾式延伸との組み合わせにより金属との易滑性を良好とする観点からは、幅方向の延伸倍率が搬送方向よりも大きく設定することが好ましく、幅方向の延伸倍率は搬送方向の延伸倍率に対して好ましくは1.4倍以上、より好ましくは1.6倍以上とすることが好ましい。
延伸工程における延伸均一性向上の観点から、延伸倍率と原料構成の好ましい形態は重量平均分子量(Mw)が100万以上の超高分子量ポリエチレンをゲル状シートに含まれる全ポリオレフィン系樹脂量の全質量を100質量%とした際に80質量%以上含有する構成として、面倍率60倍以上に湿式のゲル状シートから延伸することであり、より好ましくは10×10倍以上に湿式で延伸することである。さらに好ましい形態は、Mw200万以上の超高分子量ポリエチレンを、キャストシート全質量を100質量%とした際に80質量%以上含有する構成として、面倍率60倍以上に湿式のゲル状シートから延伸することであり、より好ましくは10×10倍以上に湿式で延伸することである。
また、重量平均分子量(Mw)が100万以上の超高分子量ポリエチレンは、ゲル状シートに含まれる全ポリオレフィン系樹脂量の全質量を100質量%とした際に、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95%質量以上である。
延伸温度はゲル状シートの融点+10℃以下にすることが好ましく、(ポリオレフィン系樹脂の結晶分散温度)〜(ゲル状シートの融点+5℃)の範囲にするのがより好ましい。具体的には、ポリエチレン組成物の場合は約90〜110℃の結晶分散温度を有するので、延伸温度は好ましくは100〜130℃であり、より好ましくは115〜125℃であり、さらに好ましく117.5〜125℃である。結晶分散温度TcdはASTM D 4065(2012)に従って測定した動的粘弾性の温度特性から求める。
延伸温度が90℃未満であると低温延伸のため開孔が不十分となり膜厚の均一性が得られにくく、空孔率も低くなる。延伸温度は130℃より高いと、シートの融解が起こり、孔の閉塞が起こりやすくなる場合がある。
以上のような延伸によりゲルシートの高次構造の開裂が起こり、結晶相が微細化し、多数のフィブリルが形成される。フィブリルは三次元的に不規則に連結した網目構造を形成する。延伸により機械的強度が向上するとともに、細孔形成されるため本発明のポリオレフィン系微多孔膜は電池用セパレータに好適となる。
また、可塑剤を除去する前に延伸することにより、ポリオレフィン系樹脂が十分に可塑化し軟化した状態であるために、高次構造の開裂がスムーズになり、結晶相の微細化を均一に行うことができる。また、可塑剤を除去する前に延伸することで容易に高次構造が開裂するため、延伸時のひずみが残りにくく、可塑剤を除去した後に延伸する場合に比べて熱収縮率を低くすることができる。
(d)可塑剤抽出(洗浄)・乾燥工程
次に、ゲル状シート中に残留する可塑剤(溶剤)を、洗浄溶剤を用いて除去する。ポリオレフィン系樹脂相と溶媒相とは分離しているため、溶剤を除去することによりポリオレフィン系微多孔膜が得られる。
洗浄溶剤としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の飽和炭化水素、塩化メチレン、四塩化炭素等の塩素化炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類、メチルエチルケトン等のケトン類、三フッ化エタン等の鎖状フルオロカーボン等が挙げられる。
これらの洗浄溶剤は低い表面張力(例えば、25℃で24mN/m以下)を有する。低い表面張力の洗浄溶剤を用いることにより、微多孔を形成する網状構造が洗浄後の乾燥時に気−液界面の表面張力により収縮が抑制され、空孔率および透過性に優れたポリオレフィン系微多孔膜が得られる。これらの洗浄溶剤は可塑剤に応じて適宜選択し、単独または混合して用いる。
洗浄方法は、ゲル状シートを洗浄溶剤に浸漬し抽出する方法、ゲル状シートに洗浄溶剤をシャワーする方法、またはこれらの組み合わせによる方法等が挙げられる。洗浄溶剤の使用量は洗浄方法により異なるが、一般にゲル状シート100質量部に対して300質量部以上であるのが好ましい。
洗浄温度は15〜30℃でよく、必要に応じて80℃以下に加熱する。この時、洗浄溶剤の洗浄効果を高める観点、得られるリオレフィン系微多孔膜の物性(例えば、TD方向および/またはMD方向の物性)が不均一にならないようにする観点、多孔性ポリオレフィンフィルムの機械的物性および電気的物性を向上させる観点から、ゲル状シートが洗浄溶剤に浸漬している時間は長ければ長いほど良い。
上述のような洗浄は、洗浄後のゲル状シート、すなわちポリオレフィン系微多孔膜中の残留溶剤が1質量%未満になるまで行うのが好ましい。
その後、乾燥工程でポリオレフィン系微多孔膜中の溶剤を乾燥させ除去する。乾燥方法としては、特に限定は無く、金属加熱ロールを用いる方法や熱風を用いる方法等を選択することができる。乾燥温度は40〜100℃であることが好ましく、40〜80℃がより好ましい。乾燥が不十分であると、後の熱処理でポリオレフィン系微多孔膜の空孔率が低下し、透過性が悪化する場合がある。
(e)熱処理/再延伸工程
乾燥したポリオレフィン系微多孔膜を少なくとも一軸方向に延伸(再延伸)してもよい。再延伸は、多孔性ポリオレフィンフィルムを加熱しながら上述の延伸と同様にテンター法等により行うことができる。再延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよい。多段延伸の場合は、同時二軸または逐次延伸を組み合わせることにより行う。
再延伸の温度は、ポリオレフィン系樹脂の融点以下にすることが好ましく、(ポリオレフィン樹脂組成物のTcd−20℃)〜ポリオレフィン系樹脂の融点の範囲内にするのがより好ましい。具体的には、ポリエチレン系樹脂の場合、再延伸の温度は、70〜135℃が好ましく、110〜135℃がより好ましく、125〜135℃がさらに好ましく、130〜135℃がよりさらに好ましい。
再延伸の倍率は、一軸延伸、二軸延伸のいずれでもよいが、二軸延伸を行う場合、搬送方向および幅方向にそれぞれ1.01〜2.0倍延伸するのが好ましい。なお、金属との易滑性を良好とする観点からは、(c)湿式延伸において幅方向の延伸倍率を搬送方向の延伸倍率より大きく設定した後、再延伸では搬送方向の延伸倍率を幅方向の延伸倍率より大きく設定することが好ましい。このような延伸条件とすることで、湿式延伸にて形成された多数の微細フィブリルを乾式での再延伸後に搬送方向に配向させることが可能となり、かつ、湿式延伸と再延伸の高倍率方向を交互に設定することで、延伸時の破膜を抑制することが可能となる。
再延伸後はポリオレフィン系微多孔膜の熱寸法安定性や平滑性を向上させるために熱固定処理を行うことが好ましく、易滑性を維持しながら平滑性を良好とする観点から、熱固定温度はポリエチレン系樹脂の融点より25℃以上低い温度に設定し、かつ15分以上熱処理を行うことが好ましい。従来よりも低温で長時間の熱固定処理を行うことで、表面の微細なフィブリル形状を維持して易滑性を良好にしつつ、延伸時のうねりやひずみを緩和させ、平滑性を良好とすることが可能となる。熱処理は一旦巻取りを行った後、別の加工ラインを用いて低速で行う方法や、巻取ったロールの状態でオーブンに投入する方法などが用いられる。
(f)その他の工程
さらに、その他用途に応じて、ポリオレフィン系微多孔膜に親水化処理を施すこともできる。親水化処理は、モノマーグラフト、界面活性剤処理、コロナ放電等により行うことができる。モノマーグラフトは架橋処理後に行うのが好ましい。
本発明の実施形態における特性の測定方法、および効果の評価方法は次の通りである。ただし、本発明の実施態様は、これらの実施例に限定されるものではない。
(1)重量平均分子量(Mw)
高温ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリオレフィンの分子量分布測定(重量平均分子量、分子量分布、所定成分の含有量などの測定)を行った。測定条件は以下の通りであった。
装置:高温GPC装置(機器No. HT−GPC、Polymer Laboratories製、PL−220)
検出器:示差屈折率検出器RI
ガードカラム:Shodex G−HT
カラム:Shodex HT806M(2本) (φ7.8mm×30cm、昭和電工製)
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB、和光純薬製)(0.1% BHT添加)
流速:1.0mL/min
カラム温度:145℃
試料調製:試料5mgに測定溶媒5mLを添加し、160〜170℃で約30分加熱攪拌した後、得られた溶液を金属フィルター(孔径0.5um)にてろ過した。
注入量:0.200mL
標準試料:単分散ポリスチレン(東ソー製)(PS)
データ処理:TRC製GPCデータ処理システム
その後、得られたMwをポリエチレン(PE)に換算した。換算式は下記である。
Mw(PE換算)=Mw(PS換算測定値)×0.468
(2)膜厚
ポリオレフィン系微多孔膜の50mm×50mmの範囲内における5点の膜厚を接触厚み計、株式会社ミツトヨ製ライトマチックVL−50(10.5mmφ超硬球面測定子、測定荷重0.01N)により測定し、平均値を膜厚(μm)とした。
(3)空孔率
ポリオレフィン系微多孔膜から評価用の試料を5cm角の正方形に切り取り、室温(25℃)におけるその体積(cm)と質量(g)を求め、それらの値と樹脂密度(g/cm)より、次式を用いて計算した。なお、樹脂度は0.99g/cmの一定値とした。
空孔率=[(体積−質量/樹脂密度)/体積]×100 。
(4)突刺強度
試験速度を2mm/秒としたことを除いて、JIS Z 1707(2019)に準拠して測定した。フォースゲージ(株式会社イマダ製 DS2−20N)を用いて、先端が球面(曲率半径R:0.5mm)の直径1.0mmの針で、ポリオレフィン微多孔膜を25℃の雰囲気下で突刺したときの最大荷重(L1)を計測し、下記式から膜厚10μm換算の突刺強度(L2)を算出した。
L2(gf)=L1(gf)×10(μm)/ポリオレフィン微多孔膜の膜厚(μm) (5)微多孔膜の3次元構造の測定(FIB−SEM)
以下の条件にてFIB−SEMによる連続画像を測定した。
・試料調製:エポキシ系樹脂にてポリオレフィン系微多孔膜の包埋処理を行ったのち、OsOを用いて電子染色を行い、測定に供した。
・観察装置:FEI製Helios G4
・観察条件:加速電圧1kV
・試料傾斜:52°
・ピクセルサイズ:画像横方向:5.4nm、画像縦方向:6.8nm(傾斜補正後)
・FIBでのスライス間隔:10nm
・画像のアライメント方法:フィルム上部にPtを堆積させたマーキングを行い、各画像間の位置確認を実施した。
・傾斜補正:FIB−SEM観察は斜め52°から行っているため、SEM像は縦方向に縮んで観察されていることから、画像縦方向について正面から観察した造にするためには1.27倍(=/sin52°)とする必要があり、傾斜補正後の画像を用いて後述する三次元画像の作製を行った。
・測定サイズ:フィルム断面の5μm×5μmについてFIB加工を順次行い、奥行き方向に4μmになるまでスライスを行い、5μm×5μm×4μmの体積分(撮影画像400枚)について測定を行った。
(6)三次元画像の作成
(5)で得られたFIB−SEM像について、日本ビジュアルサイエンス社製「ExFact(登録商標)Analysis for Fiber」の画像処理ソフトを用いて、微多孔膜のうち、包埋処理された明部樹脂部分(すなわち微多孔膜の空孔部に相当する部分)と微多孔膜を構成する樹脂の部分に二値化処理を行った後、二値化処理の情報を元にして三次元の立体画像化を行った。なお、二値化処理においては、FIB−SEM画像に対して3画素×3画素平均にてノイズ除去を行った後、21画素×21画素平均した画像から−30階調をしきい値として動的二値化処理を行うことで、明部と暗部の二種類に分割処理を行った。その後、日本ビジュアルサイエンス社製「ExFact(登録商標)Analysis for Fiber」の画像処理ソフトで微多孔膜を構成する樹脂部分の細線化処理を行うことで微多孔膜内部の構成樹脂部分の三次元画像を作成した。なお、具体的な分割処理の例としては、X字型の箇所については4本、Y字型の箇所については3本、T字型の箇所については3本に分割を行う処理方法を採用した。作成する三次元画像のサイズについては、解析時間や解析パラメータの再現性の観点から、5μm×5μm×4μmのFIB−SEM測定サイズのうち、中心の2.7μmの長さの辺で囲まれた立方体とした。
(7)フィブリル本数の測定
(6)で得られた三次元画像に対し、日本ビジュアルサイエンス社製「ExFact(登録商標)Analysis for Fiber」の画像処理ソフトを用いて、細線化処理を行った構成樹脂部分の線を、交差、分岐している部分で分割処理を行った後の細線の数を求めた後、1μmあたりの本数に換算した値を、本発明におけるフィブリル本数とした。
(8)フィブリルの平均直径の測定
(6)で得られた、2.7μm角の三次元画像に含まれる全フィブリル径の平均値を、日本ビジュアルサイエンス社製「ExFact(登録商標)Analysis for Fiber」の画像処理ソフトから求め、フィブリルの平均直径とした。
(9)膜同士の動摩擦係数μk
ASTM−D−1894に準じ、微多孔膜を一方の表面と他方の表面が触れるような向きになるように膜を上下に重ねて設置し、上側の微多孔膜のさらに上側にすべり片と呼ばれる200g重、接触面が63mm角のおもりを乗せた状態で、上側の微多孔膜に水平に力を加えて接触面を滑らせることで動摩擦力を求め、動摩擦力をおもりの重力に相当する垂直抗力で除して、膜同士の動摩擦係数μkを求めた。
(10)膜と金属の動摩擦係数μmk
下側の微多孔膜を厚さ0.3μmのアルミニウム箔(アズワン社、品番3−2154−08)に変更した以外は(9)と同様にして膜と金属の動摩擦係数μmkを求めた。
(11)微多孔膜の二乗平均平方根高さSq
微多孔膜を30mm角に切り取り測定用サンプルを準備したのち、白色干渉計として三菱化学システム社製「VertScan3.0 R4300C」を使用し、2.5mm×2.5mmの測定面積の凹凸情報を測定後、ISO25178で定義される二乗平均平方根高さSqを求めた。なお、同一サンプル内で場所を変えて5回測定を行い、その平均値を二乗平均平方根高さSqとして採用した。また、サンプルの両面について測定を行い、Sqが大きい面の値を当該サンプルの二乗平均平方根高さSqとして採用した。
(12)動摩擦係数μkの変動係数
幅10cmポリオレフィン系微多孔膜のロールから長手方向10mの長さの膜を切り出し、切り出した膜の長手方向の端部から長手方向に50cm間隔となるとなるようにサンプルをさらに切り出した。切り出したサンプルの幅方向中心部分について、任意の2枚ずつを選定し合計10個の組合せとした後、それぞれ(9)と同様の方法でμkを求めた。10回の測定値の標準偏差を平均値で除して動摩擦係数μkの変動係数を求めた。
(13)二乗平方根高さSqの変動係数
サンプルを切り出した後、各サンプルについてそれぞれ(11)と同様の方法でSqを求め、10点の測定値の標準偏差を平均値で除して二乗平方根高さSqの変動係数を求めた。
(14)微多孔ロールの外観評価
100mm幅、200m長のフィルム(3インチ紙コア)を準備し、搬送張力30N/mの条件で別の3インチ紙コアに巻返しを行い、搬送速度を変化させながら巻き返し後の微多孔膜ロールの外観を目視で確認し、下記基準で評価を行った。
A:速度40m/分で巻き返しても皺が発生しなかった。
B:速度40m/分で巻き返すと皺が発生したが、速度30m/分では皺が発生しなかった。
C:速度30m/分で巻き返すと皺が発生したが、速度20m/分では皺が発生しなかった。
D:速度20m/分で巻き返すと皺が発生したが、速度10m/分では皺が発生しなかった。
E:速度10m/分で巻き返すと皺が発生した。
(15)耐傷付き性
おもりの荷重を400g重とし、接触面を滑らせる回数を同一箇所について5回繰り返した以外は、(9)と同様の方法にて微多孔膜をアルミ箔上で滑らせたのち、微多孔膜のアルミ箔接触面側についてAl蒸着を行い、微多孔膜が滑った方向に直線状に付いた傷の本数(すべり片長さの63mm幅に含まれる本数)を光学顕微鏡でカウントし、下記基準にて評価を行った。
A:1本以下。
B:2本以上4本以下。
C:5本以上7本以下。
D:8本以上10本以下。
E:11本以上。
(16)捲回後の小サイズ化特性
100mm幅の微多孔膜の長尺ロールを準備し、100mm角、厚み0.2mmの鉄板の一辺に長尺ロールの端部を粘着テープで仮留めしたあと、張力10N/mの条件で鉄板の周囲に100回分の巻き付けを行い、捲回体を作製した。得られた捲回体について面方向中心部の厚みをダイヤルゲージで測定し、0.2mmの鉄板分の厚みを除いたフィルム積層部分の厚みを求めた。得られたフィルム積層部分の厚みについて、1枚あたりの微多孔膜の厚みを200倍した厚みで除した値を求め、捲回後の厚み増加比率を電池作製時の小サイズ化特性の指標とした。本数値が小さいほど小サイズ化に適していることを示す。
A:捲回後の厚み増加比率が1.05倍以下。
B:捲回後の厚み増加比率が1.05倍を超えて1.07倍以下。
C:捲回後の厚み増加比率が1.07倍を超えて1.09倍以下。
D:捲回後の厚み増加比率が1.09倍を超えて1.1倍以下。
E:捲回後の厚み増加比率が1.1倍を超えた値。
(17)130℃1時間での熱収縮率
50mm角(長手方向×幅方向)の試料を切り出し、厚さ0.09mmの紙で両面を挟んだ状態で130℃に加熱したオーブンに1時間保管して熱処理を行い、熱処理前後の寸法を測定して収縮率を求めた。なお、寸法については、50mm角の試料の向かい合う各辺の中心位置を結んだ線の長さを測定箇所とした。5枚について熱処理、測定を行い、5枚の収縮率の平均値を130℃1時間での熱収縮率とした。
(18)高温での寸法安定性
(16)と同様にて微多孔膜のロールを捲回した後、巻き終わった微多孔膜の端部をポリイミドテープで固定して捲回体を作製した。その後、厚さ0.09mmの紙で捲回体の両面を挟んだ状態で130℃に加熱したオーブンに1時間加熱して熱処理を行い、熱処理後の捲回体について、ロールの捲回方向と直行する方向に微多孔膜が収縮して鉄板が最も露出した部分の鉄板端部からの長さを測定した。合計3回の測定を行い、3回の平均値を求めた後、下記基準にて評価を行った。
A:露出部の長さが3mm以下。
B:露出部の長さが3mmを超えて6mm以下。
C:露出部の長さが6mmを超えた値。
(19)融点
微多孔膜、もしくは原料を測定パンに封入し、PARKING ELMER製PYRIS DIAMOND DSCを用いて、10℃/分の速度で30℃から230℃まで昇温した(1回目の昇温)後、230℃で5分間保持し、10℃/分の速度で冷却し、再度10℃/分の昇温速度で30℃から230℃まで昇温した(2回目の昇温)。1回目の昇温、2回目の昇温のそれぞれの吸熱チャートから融解吸熱ピークを読み取り、微多孔膜の場合は1回目の昇温での融解吸熱ピークの温度を、原料の場合は2回目の昇温での融解吸熱ピークの温度をそれぞれ融点とした。
(実施例1)
原料として重量平均分子量Mwが10×10の超高分子量ポリエチレン(融点135℃)とMwが5×10の高密度ポリエチレン(融点135℃)を用いた。超高分子量ポリエチレン16質量部と高密度ポリエチレン4質量部に流動パラフィン80質量部を加え、さらにポリエチレン系樹脂の合計の質量を基準として0.5質量部の2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールと0.7質量部のテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]メタンを酸化防止剤として加えて混合し、ポリエチレン系樹脂溶液を調製した。
得られたポリエチレン系樹脂溶液を二軸押出機に投入し180℃で混練し、Tダイに供給し、押出物を15℃に制御された冷却ロールで冷却してゲル状シートを形成した。
得られたゲル状シートを、ロール延伸機で長手方向(MD方向)に118℃で8倍の延伸を行い、冷却を行った後、テンター延伸機で幅方向(TD方向)に8倍に延伸し、そのままテンター延伸機内でシート幅を固定し、118℃の温度で10秒間保持した。
次いで延伸したゲル状シートを洗浄槽で塩化メチレン浴中に浸漬し、流動パラフィン除去後80℃で乾燥を行った後、オーブンを使用して幅方向に3%縮めてリラックスさせた状態で110℃の温度で30分間熱固定を実施し、ポリオレフィン系微多孔膜を得た。得られた微多孔膜の特性を表1に示す。ポリオレフィン系微多孔膜は、易滑性と平滑性のどちらも良好であった。搬送性や巻取り時の外観が良好であり、電池の小型化(捲回体の小サイズ化)が良好であった。
(実施例2)
原料としてMwが10×10の超高分子量ポリエチレン(融点135℃)とMwが5×10の高密度ポリエチレン(融点135℃)を用いた。超高分子量ポリエチレン16質量部と高密度ポリエチレン4質量部に流動パラフィン80質量部を加え、さらにポリエチレン系樹脂の合計の質量を基準として0.5質量部の2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールと0.7質量部のテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]メタンを酸化防止剤として加えて混合し、ポリエチレン系樹脂溶液を調製した。
得られたポリエチレン系樹脂溶液を二軸押出機に投入し180℃で混練し、Tダイに供給し、押出物を15℃に制御された冷却ロールで冷却してゲル状シートを形成した。
得られたゲル状シートを、ロール延伸機で長手方向(MD方向)に118℃で8倍の延伸を行い、冷却を行った後、テンター延伸機で幅方向(TD方向)に8倍に延伸し、そのままテンター延伸機内でシート幅を固定し、118℃の温度で10秒間保持した。
次いで延伸したゲル状シートを洗浄槽で塩化メチレン浴中に浸漬し、流動パラフィン除去後80℃で乾燥を行った後、ロール延伸機で長手方向(MD方向)に120℃で1.2倍の延伸を行い、室温冷却後にテンター延伸機で幅方向(TD方向)に120℃で1.2倍の延伸を行った。その後、オーブンを使用して幅方向に3%縮めてリラックスさせた状態で115℃の温度で30分間熱固定を実施し、ポリオレフィン系微多孔膜を得た。
得られた微多孔膜の特性を表1に示す。ポリオレフィン系微多孔膜は、易滑性と平滑性のどちらも良好であった。搬送性や巻取り時の外観が良好であった。
(実施例3)
製造条件を表1の通りとした以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン系微多孔膜を得た。得られた微多孔膜の特性を表1に示す。ポリオレフィン系微多孔膜は、易滑性と平滑性のどちらも良好であった。搬送性や巻取り時の外観が良好であった。
(実施例4〜9、12〜14)
製造条件を表1、表2または表3の通りとした以外は、実施例2と同様にしてポリオレフィン系微多孔膜を得た。得られた微多孔膜の特性を表1、表2または表3に示す。ポリオレフィン系微多孔膜は、易滑性と平滑性のどちらも良好であった。搬送性や巻取り時の外観が良好であった。
(実施例10、11)
原料構成を表2または表3の通りとした以外は、実施例6と同様にしてポリオレフィン系微多孔膜を得た。得られた微多孔膜の特性を表2または表3に示す。ポリオレフィン系微多孔膜は、易滑性と平滑性のどちらも良好であった。搬送性や巻取り時の外観が良好であった。
(比較例1〜3)
原料組成、製造条件を表3または表4の通りとした以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン系微多孔膜を得た。得られたポリオレフィン系微多孔膜は、易滑性、平滑性の少なくとも一方が特性不十分であり、搬送性もしくは巻取り時の外観が劣る結果となった。
Figure 2021098849
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Figure 2021098849
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本発明の実施形態にかかるポリオレフィン系微多孔膜は、リチウムイオン二次電池をはじめとする非水電解液二次電池のセパレータとして適用した際に、易滑性と平滑性に優れることから、電池製造時の搬送性や巻取り時の外観、および電池の小型化、薄膜化が可能なセパレータとして好適に用いられる。
また、逆浸透濾過膜、限外濾過膜、精密濾過膜等の各種フィルター、透湿防水衣料、医療用材料、燃料電池用支持体などにも利用可能である。

Claims (10)

  1. 微多孔膜の一方の表面と他方の表面との動摩擦係数μkが0.2以上0.7以下であり、かつ、微多孔膜の一方の表面と他方の表面のうち二乗平均平方根高さSqが大きい面において、二乗平均平方根高さSqが10nm以上100nm以下である、ポリオレフィン系微多孔膜。
  2. 微多孔膜の少なくとも一方の表面において、当該一方の表面と金属との動摩擦係数μmkが0.13以下である、請求項1に記載のポリオレフィン系微多孔膜。
  3. 下記測定法によって求められる一辺が2.7μmの立方体中のフィブリル本数が870本/μm以上2800本/μm以下であり、該フィブリルの平均直径が25nm以上60nm以下である、請求項1または請求項2に記載のポリオレフィン系微多孔膜。
    工程(A):微多孔膜の断面において、切削しながら画像を得て、3次元画像を得る。
    工程(B):得られた3次元画像について、樹脂部と空孔部とを判別し、構成樹脂部の3次元画像を作成する。
    工程(C):該構成樹脂部を、フィブリルに分割し、フィブリルの本数を計数する。
  4. 微多孔膜の突刺強度が180gf以上700gf以下である、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のポリオレフィン系微多孔膜。
  5. 微多孔膜の厚みが3μm以上14μm以下である、請求項1〜請求項4のいずれかに記載のポリオレフィン系微多孔膜。
  6. 130℃1時間での熱収縮率が長手方向、幅方向とも20%以下である、請求項1〜請求項5のいずれかに記載のポリオレフィン系微多孔膜。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の微多孔膜を捲回した微多孔膜ロールであって、動摩擦係数μkの変動係数が10%以下であるポリオレフィン系微多孔膜ロール。
  8. 微多孔膜の一方の表面について、二乗平均平方根高さSqの変動係数が10%以下である、請求項7に記載のポリオレフィン系微多孔膜ロール。
  9. 請求項1〜請求項6のいずれかに記載のポリオレフィン系微多孔膜に、さらに耐熱性樹脂層を積層した、微多孔膜/耐熱性樹脂層積層体。
  10. 請求項1〜請求項6のいずれかに記載のポリオレフィン系微多孔膜、または、請求項9に記載の微多孔膜/耐熱性樹脂層積層体を備える、非水解電解液二次電池。
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