JP2021021065A - ポリオレフィン系微多孔膜、積層体、及びそれを用いた非水電解液二次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】リチウムイオン二次電池をはじめとする非水電解液二次電池のセパレータとして適用した際に、強度に優れ、急速充放電条件での容量維持率を向上させることができるポリオレフィン系微多孔膜を提供することを目的とする。【解決手段】微多孔膜のFIB−SEM測定で得られる各断面像から作成された2.7μm角の三次元画像において、厚み方向のパス数が35本/μm2以上であり、厚み方向のパスの曲路率分布のピーク値が1.30以上1.80以下である、ポリオレフィン系微多孔膜。【選択図】なし
Description
本発明はポリオレフィン系微多孔膜、積層体、及びそれを用いた非水電解液二次電池に関する。
熱可塑性樹脂微多孔膜は物質の分離膜、選択透過膜、及び隔離膜等として広く用いられている。微多孔膜の具体的な用途は、例えば、リチウムイオン二次電池、ニッケル−水素電池、ニッケル−カドミウム電池、ポリマー電池などの非水電解液二次電池用セパレータや、電気二重層コンデンサ用セパレータ、逆浸透濾過膜、限外濾過膜、精密濾過膜等の各種フィルター、透湿防水衣料、医療用材料、燃料電池用支持体などである。
特にリチウムイオン二次電池用セパレータとして、ポリエチレン製微多孔膜が広く採用されている。その特徴として電池の安全性、生産性に大きく寄与する機械的強度に優れることに加え、電気絶縁性を担保しつつ、微細孔に浸透した電解液を通じたイオン透過性を併せ持ち、電池の外部/内部の異常反応時には120〜150℃程度において自動的にイオンの透過を遮断することにより、過度の温度上昇を抑制する孔閉塞機能を備えている点が挙げられる。
また、リチウムイオン二次電池は自動車用途や家電用途への採用が拡大しており、各用途において利便性の観点から急速充放電のニーズが強まってきている。リチウムイオン二次電池に急速充放電を行うと、リチウムイオン二次電池を構成する電極、セパレータ等の各部材や、各部材間の界面に存在する抵抗に起因して熱が発生し、電池部材の熱劣化が促進されてしまう課題があった。また、リチウムイオン二次電池に急速充放電を行う場合は、充放電時間が短くなることから、電極の微細部分にまでリチウムイオンが侵入する時間が少なく、リチウムイオンが有効に出し入れされるイオン数が減少し、電池容量が低下してしまうといった課題があった。
リチウムイオン二次電池の長期信頼性を改善するセパレータの取り組みとしては、膜の微小領域での長期耐圧縮性を向上させた技術(特許文献1)が提案されており、また、特定の延伸条件により急速充放電条件での電池容量(レート特性)を向上させた技術(特許文献2)、ポリオレフィン系微多孔膜のコート層についてFIB−SEMの画像解析によって得られるパラメータを特定範囲にすることにより、充電抵抗を低減させた技術(特許文献3)などが提案されている。
特許文献1、2には、原料組成や製造条件の調整により、突刺強度や空孔率、熱収縮率、突刺しクリープによる膜厚さ保持率などを調整し、リチウムイオン二次電池のセパレータに適用した際の長期信頼性を向上させる提案がされているが、微多孔膜の厚み方向の内部構造について十分に考慮されておらず、強度と急速充放電条件での容量維持率向上との両立が不十分な場合があった。また、特許文献3には、コーティングにより得られる絶縁性多孔質層のフラクタル次元を特定範囲とすることにより、充電抵抗を低減させる提案がされているが、被コーティング基材となる微多孔膜そのものの構造や、さらには微多孔膜の厚み方向の内部構造について十分に考慮されておらず、基材とコーティング層の全体での抵抗を鑑みた際に、強度と急速充放電条件での容量維持率向上との両立が不十分な場合があった。
そこで、本発明では上記の欠点を解消し、ポリオレフィン系微多孔膜の内部の孔構造を特定範囲とすることで、リチウムイオン二次電池をはじめとする非水電解液二次電池のセパレータとして適用した際に強度に優れ、急速充放電条件での容量維持率の向上が可能となるポリオレフィン系微多孔膜を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明は、以下の構成を有する。
(1) 微多孔膜のFIB−SEM測定で得られる各断面像から作成された2.7μm角の三次元画像において、厚み方向のパス数が35本/μm2以上であり、厚み方向のパスの曲路率分布のピーク値が1.30以上1.80以下である、ポリオレフィン系微多孔膜。
(2) 厚み方向のパスの曲路率分布のピーク値の頻度が6%以上30%以下である、(1)に記載のポリオレフィン系微多孔膜。
(3) 厚み方向のパスの曲路率分布の半値幅が、0.06以上0.25以下である、(1)または(2)に記載のポリオレフィン系微多孔膜。
(4) 突刺し強度が180gf以上700gf以下である、(1)から(3)のいずれか一つに記載のポリオレフィン系微多孔膜。
(5) 厚みが3μm以上14μm以下である、(1)から(4)のいずれか一つに記載のポリオレフィン系微多孔膜。
(6) 空孔率が35%以上50%以下である、(1)から(5)のいずれか一つに記載のポリオレフィン系微多孔膜。
(7) 熱機械分析装置(TMA)によるTD方向の最大収縮応力温度が143℃以上、かつ最大収縮応力が1.3MPa以下である、(1)から(6)のいずれか一つに記載のポリオレフィン系微多孔膜。
(8) (1)から(7)のいずれか一つに記載のポリオレフィン系微多孔膜に、さらに耐熱性樹脂層を積層した、積層体。
(9) (1)から(7)のいずれか一つに記載のポリオレフィン系微多孔膜、または(8)に記載の積層体を備える、非水電解液二次電池。
(1) 微多孔膜のFIB−SEM測定で得られる各断面像から作成された2.7μm角の三次元画像において、厚み方向のパス数が35本/μm2以上であり、厚み方向のパスの曲路率分布のピーク値が1.30以上1.80以下である、ポリオレフィン系微多孔膜。
(2) 厚み方向のパスの曲路率分布のピーク値の頻度が6%以上30%以下である、(1)に記載のポリオレフィン系微多孔膜。
(3) 厚み方向のパスの曲路率分布の半値幅が、0.06以上0.25以下である、(1)または(2)に記載のポリオレフィン系微多孔膜。
(4) 突刺し強度が180gf以上700gf以下である、(1)から(3)のいずれか一つに記載のポリオレフィン系微多孔膜。
(5) 厚みが3μm以上14μm以下である、(1)から(4)のいずれか一つに記載のポリオレフィン系微多孔膜。
(6) 空孔率が35%以上50%以下である、(1)から(5)のいずれか一つに記載のポリオレフィン系微多孔膜。
(7) 熱機械分析装置(TMA)によるTD方向の最大収縮応力温度が143℃以上、かつ最大収縮応力が1.3MPa以下である、(1)から(6)のいずれか一つに記載のポリオレフィン系微多孔膜。
(8) (1)から(7)のいずれか一つに記載のポリオレフィン系微多孔膜に、さらに耐熱性樹脂層を積層した、積層体。
(9) (1)から(7)のいずれか一つに記載のポリオレフィン系微多孔膜、または(8)に記載の積層体を備える、非水電解液二次電池。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン系微多孔膜は、リチウムイオン二次電池をはじめとする非水電解液二次電池のセパレータとして適用した際に、強度に優れ、急速充放電条件での容量維持率を向上させる効果を奏する。
以下、本発明の実施形態にかかるポリオレフィン系微多孔膜について詳細に説明する。なお、本明細書において、数値範囲を「A〜B」と記載した場合はA以上B以下の範囲を指すこととする。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン系微多孔膜は、微多孔膜のFIB−SEM測定で得られる各断面像から作成された2.7μm角の三次元画像において、厚み方向のパス数が35本/μm2以上であり、厚み方向のパスの曲路率分布のピーク値が1.30以上1.80以下であることが重要である。
厚み方向のパス数及び厚み方向のパスの曲路率分布のピーク値は、それぞれ、ポリオレフィン系微多孔膜の内部の孔構造を表す指標の一つとすることができる。
本発明の実施形態におけるポリオレフィン系微多孔膜は、ポリオレフィン系樹脂を主成分としており、ここで、主成分とは、ポリオレフィン系微多孔膜の全質量を100質量%とした際に、ポリオレフィン系樹脂を50質量%を超えて100質量%以下含有することを意味する。ここで、本発明の実施形態におけるポリオレフィン系樹脂としては、各種ポリエチレン系樹脂や各種ポリプロピレン系樹脂などが挙げられ、本発明の実施形態におけるポリエチレン系樹脂とは、ポリエチレン系樹脂の重合体の全質量を100質量%とした際に、エチレン由来成分の合計が50質量%を超えて100質量%以下である態様の重合体を意味する。
本明細書において、ポリオレフィン系微多孔膜を単に「微多孔膜」と称する場合がある。また、本発明の実施形態におけるポリプロピレン系樹脂とは、ポリプロピレン系樹脂の重合体の全質量を100質量%とした際に、プロピレン由来成分の合計が50質量%を超えて100質量%以下である態様の重合体を意味する。
本発明の実施形態におけるポリエチレン系樹脂は、エチレンのみからなるホモポリマー、またはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−へキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−へキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等などの鎖状オレフィン(α−オレフィン)が共重合されたコポリマーなどが挙げられる。
本発明の実施形態におけるポリプロピレン系樹脂は、プロピレンのみからなるホモポリマー、またはエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体といった、各種ポリプロピレン系樹脂などが挙げられる。
また、本発明の実施形態におけるポリオレフィン系樹脂は、単一物、または2種類以上の異なるポリオレフィン系樹脂の混合物のいずれであってもよい。
これらの各種ポリオレフィン系樹脂のなかでも、優れた孔閉塞性能の観点からポリエチレン系樹脂が特に好ましい。ポリエチレン系樹脂の融点(軟化点)は微多孔膜の孔閉塞性能の観点から70〜150℃が好ましい。
以下、本発明の実施形態で用いるポリオレフィン系樹脂としてポリエチレン系樹脂を例に詳述する。本発明での実施形態で用いられるポリエチレン系樹脂の種類としては、密度が0.94g/cm3を超えるような高密度ポリエチレン、密度が0.93〜0.94g/cm3の範囲の中密度ポリエチレン、密度が0.93g/cm3より低い低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、特定の分子量を有する超高分子量ポリエチレン等が挙げられるが、後述するポリオレフィン系微多孔膜の内部の孔構造を所望の範囲に制御する観点からは、ポリオレフィン系微多孔膜の全質量を100質量%とした際に、超高分子量ポリエチレンを80質量%以上含有する構成が好ましい。
本発明の実施形態に用いられる超高分子量ポリエチレンは、重量平均分子量が1.0×106以上、1.0×107以下が好ましい。重量平均分子量が1.0×106以上であれば、緩和時間が短くなりすぎず延伸温度や熱処理温度の増加を抑え微細なフィブリルが溶融し、微多孔膜の孔数が低減してしまうのを防ぐことができる。重量平均分子量が1.0×106以上の超高分子量ポリエチレンを用いることで、分子鎖の絡み合いが増加し、延伸工程においてポリエチレン系樹脂層に均一に応力が負荷されるため、後述する厚み方向の各種構造を所望の範囲に制御することが可能となる。そのため、超高分子量ポリエチレンの重量平均分子量は、好ましくは1.0×106以上、より好ましくは1.5×106以上、さらに好ましくは2.0×106以上、最も好ましくは3.0×106以上である。また、重量平均分子量の上限としては、好ましくは8.0×106以下、より好ましくは6.0×106以下、さらに好ましくは5.0×106以下、最も好ましくは4.0×106以下である。
超高分子量ポリエチレンの分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は3.0〜100の範囲内であることが好ましい。分子量分布が狭いほど系が単一化され均一な微細孔が得られやすいため、分子量分布が狭いほど好ましいが、分布が狭くなるほど成形加工性が低下する。そのため、分子量分布の下限は好ましくは4.0以上、更に好ましくは5.0以上、もっと好ましくは6.0以上である。分子量分布が増加すると低分子量成分が増加するため強度の低下や延伸・熱固定における微細なフィブリルの溶融・融着が起こりやすくなるため、上限は好ましくは80以下、より好ましくは50以下、もっと好ましくは20以下、最も好ましくは10以下である。上記範囲とすることで、良好な成形加工性が得られるとともに、系が単一化されるため均一な微細孔が得られる。
本発明の実施形態に用いられる高密度ポリエチレンは、重量平均分子量(Mw)が1.0×104以上1.0×106以下であることが好ましく、1.0×105以上1.0×106以下であることがより好ましく、5.0×105以上9.0×105以下であることが特に好ましい。重量平均分子量が上記の範囲内の高密度ポリエチレンを本発明の実施形態のポリオレフィン系微多孔膜に適用することで、押出機内の樹脂の圧力変動が起きづらくなり、品位を良好にできる場合がある。
その他、本発明の実施形態にかかるポリオレフィン系微多孔膜には、本発明の効果を損なわない範囲において、酸化防止剤、熱安定剤や帯電防止剤、紫外線吸収剤、さらにはブロッキング防止剤や充填材等の各種添加剤を含有させてもよい。特に、ポリオレフィン系樹脂の熱履歴による酸化劣化を抑制する目的で、酸化防止剤を添加することが好ましい。
酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT:分子量220.4)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等から選ばれる1種類以上を用いることが好ましい。
本発明の実施形態におけるFIB−SEM測定とは、集積イオンビーム(FIB)で微多孔膜の断面を一定間隔で削り取る操作(FIB切削)、ならびに削り取った面のSEM(走査型電子顕微鏡)画像の撮影を行う操作を繰り返すことで、奥行き方向の一定間隔の連続画像を測定する方法を指す。FIB−SEM測定のための試料作製方法としては、電子染色を施した樹脂を本発明の実施形態にかかる微多孔膜に含浸させ、空孔部の包埋処理を行ったのち、フィルムの断面が初期の観察面になるようにミクロトームを用いてフィルム断面の切片を作製する方法などが挙げられる。また、FIB−SEMの測定方法としては、測定用に作製した試料(フィルム断面の切片)を、奥行き方向に10nmずつ切削しながら、奥行き方向のSEM画像を順次撮影していく方法などが挙げられる。なお、各SEM画像の位置情報を特定させる方法としては、FIB切削を行う微多孔膜の観察画面の一部に金属成分を含んだマーキングを行っておき、マーキングした位置をもとに各画像の位置の相関を特定する方法などが用いられる。画像面積は3μm角から10μm角程度が好ましく、観察面が傾斜している場合は、傾斜を考慮して縮尺を換算してもよい。
また、各断面画像から三次元画像を作成する方法としては、例えば、日本ビジュアルサイエンス社製「ExFact(登録商標)Analysis for Porous/Particles」などの画像処理ソフトを用いて、微多孔膜のうち、包埋処理されている、電子染色を施した樹脂の部分(すなわち微多孔膜の空孔部に相当する部分)と微多孔膜を構成する樹脂の部分に二値化処理を行った後、二値化処理の情報を元にして三次元の立体画像化を行い、日本ビジュアルサイエンス社製「ExFact(登録商標)Analysis for Porous/Particles」などの画像処理ソフトで微多孔膜の空孔部分の細線化処理を行うことで微多孔膜内部の空孔部の三次元画像を作成する方法などが挙げられる。作成する三次元画像のサイズについては、解析時間や解析パラメータの再現性の観点から、本願発明では2.7μmの長さの辺で囲まれた立方体とすることとする。
本願における厚み方向のパス数とは、上記方法により作成した、2.7μmの長さの辺で囲まれた三次元画像の立方体について、厚み方向の始面から終面に至る、微多孔膜の空孔部分からなるすべての経路(パス)のうち、最短距離となるパスを1本として検出する。三次元画像の立方体のうち、2.7μm×2.7μmの面積の始面から2.7μm×2.7μmの終面に至るすべての厚み方向のパス数をカウントし、1μm2あたりの本数に換算した値を、本発明の実施形態における、厚み方向のパス数(本/μm2)とする。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン系微多孔膜は、微多孔膜のFIB−SEM測定で得られる各断面像から作成された2.7μm角の三次元画像において、厚み方向のパス数を35本/μm2以上とすることで、リチウムイオン二次電池のセパレータとして使用した際にリチウムイオンが移動する経路が多くなり、スムーズにリチウムイオンが移動可能となることから、セパレータの電気抵抗を低減し、電池の急速充放電時の容量維持率の向上が可能となる。電気抵抗を低減し、急速充放電時の容量維持率を向上させる観点からは、厚み方向のパス数は40本/μm2以上が好ましく、55本/μm2以上がより好ましく、65本/μm2以上がさらに好ましく、80本/μm2以上が特に好ましい。また、電気抵抗を低減する観点からは、微多孔膜のFIB−SEM測定で得られる各断面像から作成された2.7μm角の三次元画像における厚み方向のパス数は多いほど好ましいが、加工時の取扱性を維持する観点からは、厚み方向のパス数は250本/μm2以下が好ましく、より好ましくは200本/μm2以下である。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン系微多孔膜は、微多孔膜のFIB−SEM測定で得られる各断面像から作成された2.7μm角の三次元画像において、厚み方向のパスの曲路率分布のピーク値が1.30以上1.80以下であることが重要である。ここで、厚み方向のパスの曲路率分布のピーク値とは、上述した方法にて求めた厚み方向の各パスにおいて、「ExFact(登録商標)Analysis for Porous/Particles」などの画像処理ソフトを用いてそれぞれの曲路率を算出し、解析対象の厚み方向の全てのパスについて曲路率の頻度分布を作成し、スムージング処理を行った曲路率頻度分布のグラフで最も高い頻度を示す曲路率を指す。なお、曲路率のピーク値は、値が大きいほど微多孔膜の厚み方向のパスが迂回していることを示しており、値が小さいほど微多孔膜の厚み方向のパスが直線状に近い経路を有していることを示している。また、本願において、厚み方向のパスの曲路率のピーク値が2ヵ所以上観測される場合は、頻度が最も大きなピーク値を採用し、同一頻度のピークが2ヵ所以上観測される場合は、曲路率が最も低くなるピーク値を採用する。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン系微多孔膜は、微多孔膜のFIB−SEM測定で得られる各断面像から作成された2.7μm角の三次元画像において、厚み方向のパスの曲路率分布のピーク値を1.30以上1.80以下とすることで、リチウムイオン二次電池のセパレータとして使用した際にリチウムイオンが移動する経路が直線状に近くなり、スムーズにリチウムイオンが移動可能となることから、セパレータの電気抵抗を低減し、電池の急速充放電時の容量維持率向上が可能となる。電気抵抗を低減し、急速充放電時の容量維持率を向上させる観点からは、厚み方向のパスの曲路率分布のピーク値は1.75以下が好ましく、1.70以下がより好ましく、1.65以下がさらに好ましく、1.60以下が特に好ましい。また、電気抵抗を低減する観点からは、微多孔膜のFIB−SEM測定で得られる各断面像から作成された2.7μm角の三次元画像における厚み方向のパスの曲路率分布のピーク値は低いほど好ましいが、曲路率分布のピーク値が低くなりすぎると、リチウムイオン電池のセパレータとして使用した際にデンドライトと呼ばれる電極表面の樹枝状のリチウム金属性出物が生成されやすくなり、正極と負極の短絡を起こしやすくなる場合があることから、曲路率分布のピーク値は1.30以上が好ましい。
本発明の実施形態において、微多孔膜のFIB−SEM測定で得られる各断面像から作成された2.7μm角の三次元画像において、厚み方向のパス数を35本/μm2以上とし、かつ、厚み方向のパスの曲路率分布のピーク値を1.30以上1.80以下とする方法としては、ポリオレフィン系微多孔膜の構成樹脂の80質量%以上を、超高分子量ポリエチレンとし、かつ湿式延伸の面倍率を60倍以上とし、さらに製造時の樹脂濃度を30質量%未満とする方法が挙げられる。本発明の実施形態では、ポリオレフィン系微多孔膜の構成樹脂の80質量%以上を超高分子量ポリエチレンとし、かつ製造時の樹脂濃度を30質量%未満とすることで、延伸前のキャストシートでのポリエチレンの球晶成長が抑制でき、キャストシート構造を均一化できることを見出し、さらに湿面倍率を60倍以上とした湿式延伸と組み合わせることで、開孔が不十分な箇所を大幅に低減し、ポリオレフィン系微多孔膜の均一開孔が可能となる。また、ポリオレフィン系微多孔膜の均一開孔化により、開孔が不十分な箇所を低減することで、厚み方向のパス数増加が可能となるとともに、開孔が不十分な箇所を低減させることで厚み方向のパスの迂回を抑制し、曲路率分布のピーク値を低い特定範囲に制御することが可能となる。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン系微多孔膜は、厚み方向のパスの曲路率分布のピーク値の頻度が6%以上30%以下であることが、リチウムイオン二次電池のセパレータとして使用した際に電気抵抗を低減し、急速充放電時の容量維持率を向上させる観点から好ましい。ここで、曲路率分布のピーク値の頻度とは、前述した曲路率頻度分布のピーク値における頻度の値を示し、値が大きいほど曲路率のピーク値のパスの割合が多い、すなわち厚み方向の各パスの曲路率が均一であることを示す。
本発明の実施形態における、厚み方向のパスの曲路率分布のピーク値の頻度は、電気抵抗低減、および急速充放電時の容量維持率向上の効果をより高める観点からは、7%以上がより好ましく、9%以上がさらに好ましく、12%以上が特に好ましい。一方、強度等の機械特性を良好とする観点からは、厚み方向のパスの曲路率分布のピーク値の頻度は、30%以下が好ましい。
本発明の実施形態において、厚み方向のパスの曲路率分布のピーク値の頻度を6%以上30%以下とする方法としては、湿式延伸速度を低い特定範囲とし、延伸時の開孔性を均一化させる方法や、2段階以上の多段階延伸を適用し、徐々に開孔を進行させることで同一曲路率のパス数を増加させる方法などが挙げられる。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン系微多孔膜は、厚み方向のパスの曲路率分布の半値幅が、0.06以上0.25以下であることが、リチウムイオン二次電池のセパレータとして使用した際に電気抵抗を低減し、急速充放電時の容量維持率を向上させる観点から好ましい。ここで、曲路率分布の半値幅とは、前述した曲路率頻度分布のグラフの算術的な半値全幅を示し、数値が小さいほど曲路率の分布がシャープとなり、厚み方向のパスの曲路率が均一であることを示す。
本発明の実施形態における、厚み方向のパスの曲路率分布の半値幅は、電気抵抗低減、および急速充放電時の容量維持率向上の効果をより高める観点からは、0.20以下がより好ましく、0.15以下がさらに好ましく、0.11以下が特に好ましい。一方、強度等の機械特性を良好とする観点からは、厚み方向のパスの曲路率分布の半値幅は、0.06以上がより好ましく、0.07以上がさらに好ましい。
本発明の実施形態において、厚み方向のパスの曲路率分布の半値幅を0.06以上0.25以下とする方法としては、湿式延伸後の熱処理工程での弛緩の割合(リラックス率)を大きく設定し、面方向への収縮を進行させ、厚み方向の孔経路を直線方向に均一化させる方法などが挙げられる。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン系微多孔膜は、熱機械分析装置(TMA)によるTD方向の最大収縮応力温度が143℃以上、かつ最大収縮応力が1.3MPa以下であることが、リチウムイオン二次電池の安全性の観点から好ましい。リチウムイオン二次電池は急速充放電により高温状態となった際に、リチウムイオン二次電池に含まれるポリオレフィン系微多孔膜の収縮応力が大きくなり、特に捲回されていないTD方向の変形が起こりやすくなる。ポリオレフィン系微多孔膜のTD方向の変形によりリチウムイオン二次電池内の絶縁性が不十分となり、リチウムイオン電池が熱暴走し発火の原因となる場合があることから、リチウムイオン二次電池の安全性を高める観点からは、本発明の実施形態において、熱機械分析装置(TMA)によるTD方向の最大収縮応力温度は高く、かつ最大収縮応力は低い態様が好ましい。ただし、ポリオレフィン系微多孔膜のパス構造やフィブリル構造、強度などのバランスの観点からは、熱機械分析装置(TMA)によるTD方向の最大収縮応力温度は150℃以下が好ましく、かつ最大収縮応力は0.6MPa以上の範囲が好ましい。
本発明の実施形態において、熱機械分析装置(TMA)によるTD方向の最大収縮応力温度を143℃以上、かつ最大収縮応力を1.3MPa以下とする方法としては、超高分子量ポリエチレンを主成分とする構成にて、熱固定温度を130℃以上かつリラックス率を15%以上として、ポリオレフィン系微多孔膜の歪みの緩和を強化する方法が挙げられる。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン系微多孔膜は、リチウムイオン二次電池のセパレータとして使用した際の電池の耐衝撃性を向上させる観点から、突刺し強度が180gf以上700gf以下であることが好ましい。リチウムイオン二次電池のセパレータとして使用した際の電池の耐衝撃性をより高める観点からは、突刺し強度は250gf以上がより好ましく、350gf以上がさらに好ましく、500gf以上が特に好ましい。また、電池の耐衝撃性の観点からは、ポリオレフィン系微多孔膜の強度は高いほど好ましいが、熱収縮率など他物性とのバランスを良好とする観点からは、700gf以上が好ましい。なお、本発明の実施形態における突刺し強度は、厚みを10μmに換算した際の突刺し強度とする。
本発明の実施形態において、ポリオレフィン系微多孔膜の突刺し強度を180gf以上700gf以下とする方法としては、ポリオレフィン系微多孔膜の構成樹脂の70質量%以上を、超高分子量ポリエチレンとし、かつ湿式延伸の面倍率を60倍以上とし、かつポリオレフィン系微多孔膜の空孔率を35%以上55%以下とする方法が挙げられる。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン系微多孔膜は、厚みが3μm以上14μm以下であることが、リチウムイオン電池のセパレータとして使用した際に、電極間の距離を薄くすることができ、電池部材の積層数を増加することが可能になることから、電池の高容量化の観点で好ましい。厚みを3μm以上14μm以下とする方法としては、湿式延伸方式を採用し、延伸倍率や製造時のライン速度を高める方法などが用いられる。電池を高容量化させる観点からは、ポリオレフィン系微多孔膜の厚みは12μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましく、7μm以下が特に好ましい。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン系微多孔膜は、厚み方向のパスの各種構造を特定範囲としたり、突刺し強度、リチウムイオン二次電池のセパレータとして使用した際の安全性などを良好にする観点から、空孔率が35%以上50%以下であることが好ましい。
本発明の実施形態において、空孔率を35%以上50%以下とする方法としては、延伸倍率、延伸温度、熱処理温度、熱処理時間といった各種製造条件を調整する方法などが挙げられる。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン系微多孔膜は、リチウムイオン電池に搭載した際の耐熱性を向上させる観点から、さらに耐熱性樹脂層を積層した積層体としてもよい。
耐熱性樹脂層としては、各種フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂などの電池の電解液に不溶であり、かつ電池使用条件の範囲において電気的に安定な樹脂が好ましく用いられる。また、耐熱性樹脂層には、耐熱性を更に向上させる観点から、有機粉末、無機粉末、またはこれら混合物をフィラーとして含有してもよく、例えば有機粉末としては、フッ素系樹脂、メラミン系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂等が、無機粉末としては、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、炭酸塩、硫酸塩等、さらに具体的にはアルミナ、シリカ、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムなどを用いることができる。
次に、本発明の実施形態にかかるポリオレフィン系微多孔膜の製造方法例について以下に説明するが、本発明はかかる例に限定して解釈されるものではない。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン系微多孔膜の製造方法は、以下の(a)〜(e)の工程を有することが好ましい。
(a)1種又は2種以上のポリオレフィン系樹脂と、必要に応じて溶媒とを含むポリマー材料を溶融混練し、ポリオレフィン系樹脂溶液を調製する工程
(b)溶解物を押出し、シート状に成型して冷却固化する工程
(c)得られたシートをロール方式またはテンター方式により延伸を行う工程
(d)その後、得られた延伸フィルムから可塑剤を抽出しフィルムを乾燥する工程
(e)熱処理/再延伸を行う工程
(a)1種又は2種以上のポリオレフィン系樹脂と、必要に応じて溶媒とを含むポリマー材料を溶融混練し、ポリオレフィン系樹脂溶液を調製する工程
(b)溶解物を押出し、シート状に成型して冷却固化する工程
(c)得られたシートをロール方式またはテンター方式により延伸を行う工程
(d)その後、得られた延伸フィルムから可塑剤を抽出しフィルムを乾燥する工程
(e)熱処理/再延伸を行う工程
以下、各工程について説明する。
(a)ポリオレフィン系樹脂溶液の調製工程
本発明の実施形態に用いられるポリオレフィン系樹脂を、可塑剤に加熱溶解させ、ポリオレフィン系樹脂溶液を調製する。可塑剤としては、ポリオレフィン系樹脂を十分に溶解できる溶剤であれば特に限定されないが、比較的高倍率の延伸を可能とするため、溶剤は室温で液体であることが好ましい。
(a)ポリオレフィン系樹脂溶液の調製工程
本発明の実施形態に用いられるポリオレフィン系樹脂を、可塑剤に加熱溶解させ、ポリオレフィン系樹脂溶液を調製する。可塑剤としては、ポリオレフィン系樹脂を十分に溶解できる溶剤であれば特に限定されないが、比較的高倍率の延伸を可能とするため、溶剤は室温で液体であることが好ましい。
溶剤としては、ノナン、デカン、デカリン、パラキシレン、ウンデカン、ドデカン、流動パラフィン等の脂肪族、環式脂肪族又は芳香族の炭化水素、および沸点がこれらに対応する鉱油留分、並びにジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の室温では液状のフタル酸エステルが挙げられる。液体溶剤の含有量が安定なゲル状シートを得るために、流動パラフィンのような不揮発性の液体溶剤を用いるのが好ましい。
溶剤の比率としては、厚み方向のパスの構造を特定範囲に制御しやすくする観点から、ポリエチレン系樹脂の全質量100質量部に対し、溶剤を400質量部以上900質量部以下とするのが好ましい。
溶融混練状態では、ポリオレフィン系樹脂と混和するが室温では固体の溶剤を液体溶剤に混合してもよい。このような固体溶剤として、ステアリルアルコール、セリルアルコール、パラフィンワックス等が挙げられる。ただし、固体溶剤のみを使用すると、延伸ムラ等が発生する恐れがある。
液体溶剤の粘度は40℃において20〜200cStであることが好ましい。40℃における粘度を20cSt以上とすれば、ダイからポリオレフィン系樹脂溶液を押し出したシートが不均一になりにくい。一方、40℃における粘度を200cSt以下とすれば液体溶剤の除去が容易である。なお、液体溶剤の粘度は、ウベローデ粘度計を用いて40℃で測定した粘度である。
(b)押出物の形成およびゲル状シートの形成
ポリオレフィン系樹脂溶液の均一な溶融混練方法は、特に限定されないが、高濃度のポリオレフィン系樹脂溶液を調製したい場合、二軸押出機中で行うことが好ましい。必要に応じて、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸類、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤など公知の添加剤も、製膜性を損なうことなく、本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。特にポリオレフィン系樹脂の酸化を防止するために酸化防止剤を添加することが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂溶液の均一な溶融混練方法は、特に限定されないが、高濃度のポリオレフィン系樹脂溶液を調製したい場合、二軸押出機中で行うことが好ましい。必要に応じて、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸類、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤など公知の添加剤も、製膜性を損なうことなく、本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。特にポリオレフィン系樹脂の酸化を防止するために酸化防止剤を添加することが好ましい。
押出機中では、ポリオレフィン系樹脂が完全に溶融する温度で、ポリオレフィン系樹脂溶液を均一に混合する。溶融混練温度は、使用するポリオレフィン系樹脂によって異なるが、(ポリオレフィン系樹脂の融点+10℃)〜(ポリオレフィン系樹脂の融点+120℃)とするのが好ましい。さらに好ましくは(ポリオレフィン系樹脂の融点+20℃)〜(ポリオレフィン系樹脂の融点+100℃)である。
ここで、融点とは、JIS K7121(1987)に基づき、DSC(Differential scanning calorimetry)により測定した値をいう。例えば、ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂である場合、ポリエチレン系樹脂の溶融混練温度は140〜250℃の範囲が好ましい。さらに好ましくは、160〜230℃、最も好ましくは170〜200℃である。具体的には、ポリエチレン系樹脂は約130〜140℃の融点を有するので、溶融混練温度は140〜250℃が好ましく、180〜230℃が最も好ましい。
ポリオレフィン系樹脂の劣化を抑制する観点から溶融混練温度は低い方が好ましいが、上述の温度よりも低いとダイから押出された押出物に未溶融物が発生し、後の延伸工程で破膜等を引き起こす原因となる場合がある。また、上述の温度より高いと、ポリオレフィン系樹脂の熱分解が激しくなり、得られるポリオレフィン系微多孔膜の物性、例えば、強度や空孔率等が悪化する場合がある。また、分解物が冷却ロールや延伸工程上のロール等に析出し、シートに付着することで外観悪化につながる。そのため、溶融混練温度は上記範囲内で混練することが好ましい。
次に、得られた押出物を冷却することによりゲル状シートが得られ、冷却により、溶剤によって分離されたポリオレフィン系樹脂のミクロ相を固定化することができる。冷却工程においてゲル状シートを10〜50℃まで冷却するのが好ましい。これは、最終冷却温度を結晶化終了温度以下とするためで、高次構造を細かくすることで、その後の延伸において均一延伸が行いやすくなる。そのため、冷却は少なくともゲル化温度以下までは30℃/分以上の速度で行うのが好ましい。
一般に冷却速度が遅いと、比較的大きな結晶が形成されるため、ゲル状シートの高次構造が粗くなり、それを形成するゲル構造も大きなものとなる。対して冷却速度が速いと、小さく均一な結晶が形成されるため、ゲル状シートの高次構造が密となり、均一延伸に加え未開口部低減につながる。
冷却方法としては、冷風、冷却水、その他の冷却媒体に直接接触させる方法、冷媒で冷却したロールに接触させる方法、キャスティングドラム等を用いる方法等がある。
これまでポリオレフィン系微多孔膜が単層の場合を説明してきたが、本発明の実施形態にかかるポリオレフィン系微多孔膜は単層に限定されるものではなく、積層体にしてもよい。積層数は特に限定は無く、2層積層であっても3層以上の積層であってもよい。
ポリオレフィン系微多孔膜を積層体とする方法としては、例えば、所望の樹脂を必要に応じて調製し、これらの樹脂を別々に押出機に供給して所望の温度で溶融させ、ポリマー管あるいはダイ内で合流させて、目的とするそれぞれの層の厚みでスリット状ダイから押出しを行う等して、積層体を形成する方法などが挙げられる。
(c)延伸工程
得られたゲル状(積層シートを含む)シートを延伸する。用いられる延伸方法としては、ロール延伸機によるシート搬送方向(MD方向)への一軸延伸、テンターによるシート幅方向(TD方向)への一軸延伸、ロール延伸機とテンター、或いはテンターとテンターとの組み合わせによる逐次二軸延伸や同時二軸テンターによる同時二軸延伸等が挙げられる。
得られたゲル状(積層シートを含む)シートを延伸する。用いられる延伸方法としては、ロール延伸機によるシート搬送方向(MD方向)への一軸延伸、テンターによるシート幅方向(TD方向)への一軸延伸、ロール延伸機とテンター、或いはテンターとテンターとの組み合わせによる逐次二軸延伸や同時二軸テンターによる同時二軸延伸等が挙げられる。
延伸倍率は、膜の厚みの均一性の観点より、ゲル状シートの厚さによって異なるが、いずれの方向でも7倍以上に延伸することが好ましい。また、厚み方向の各種パス構造を所望の範囲とする観点から、面倍率は60倍以上が好ましく、80倍以上がより好ましく、100倍以上が特に好ましい。また、ポリオレフィン系微多孔膜の製造時の破れを抑制する観点からは、面倍率は150倍以下が好ましい。
延伸工程における延伸均一性向上の観点から延伸倍率と原料構成の好ましい形態は重量平均分子量(Mw)が100万以上の超高分子量ポリエチレンをゲル状シートに含まれる全ポリオレフィン系樹脂の全質量を100質量%とした際に80質量%以上含有する構成として、面倍率60倍以上に湿式のゲル状シートから延伸することであり、より好ましくは10×10倍以上に湿式で延伸することである。さらに好ましい形態は、重量平均分子量(Mw)が200万以上の超高分子量ポリエチレンを、ゲル状シートに含まれる全ポリオレフィン系樹脂の全質量を100質量%とした際に80質量%以上含有する構成として、面倍率60倍以上に湿式のゲル状シートから延伸することであり、最も好ましくは10×10倍以上に湿式で延伸することである。
延伸温度はゲル状シートの融点+10℃以下にすることが好ましく、(ポリオレフィン系樹脂の結晶分散温度Tcd)〜(ゲル状シートの融点+5℃)の範囲にするのがより好ましい。具体的には、ポリエチレン組成物の場合は約90〜110℃の結晶分散温度を有するので、延伸温度は好ましくは100〜130℃であり、より好ましくは115〜125℃であり、さらに好ましく117.5〜125℃である。結晶分散温度TcdはASTM D 4065(2012)に従って測定した動的粘弾性の温度特性から求める。
延伸温度が90℃未満であると低温延伸のため開孔が不十分となり膜厚の均一性が得られにくく、空孔率も低くなる。延伸温度は130℃より高いと、シートの融解が起こり、孔の閉塞が起こりやすくなる場合がある。
以上のような延伸によりゲルシートの高次構造の開裂が起こり、結晶相が微細化し、多数のフィブリルが形成される。フィブリルは三次元的に不規則に連結した網目構造を形成する。延伸により機械的強度が向上するとともに、細孔形成されるため本発明の実施形態にかかるポリオレフィン系微多孔膜が電池用セパレータに好適となる。
また、可塑剤を除去する前に延伸することにより、ポリオレフィン系樹脂が十分に可塑化し軟化した状態であるために、高次構造の開裂がスムーズになり、結晶相の微細化を均一に行うことができる。また、可塑剤を除去する前に延伸することで容易に高次構造が開裂するため、延伸時のひずみが残りにくく、可塑剤を除去した後に延伸する場合に比べて熱収縮率を低くすることができる。
(d)可塑剤抽出(洗浄)・乾燥工程
次に、ゲル状シート中に残留する可塑剤(溶剤)を、洗浄溶剤を用いて除去する。ポリオレフィン系樹脂相と溶媒相とは分離しているため、溶剤を除去することによりポリオレフィン系微多孔膜が得られる。
次に、ゲル状シート中に残留する可塑剤(溶剤)を、洗浄溶剤を用いて除去する。ポリオレフィン系樹脂相と溶媒相とは分離しているため、溶剤を除去することによりポリオレフィン系微多孔膜が得られる。
洗浄溶剤としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の飽和炭化水素、塩化メチレン、四塩化炭素等の塩素化炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類、メチルエチルケトン等のケトン類、三フッ化エタン等の鎖状フルオロカーボン等が挙げられる。
これらの洗浄溶剤は低い表面張力(例えば、25℃で24mN/m以下)を有する。低い表面張力の洗浄溶剤を用いることにより、微多孔を形成する網状構造が洗浄後の乾燥時に気−液界面の表面張力により収縮が抑制され、空孔率および透過性に優れたポリオレフィン系微多孔膜が得られる。これらの洗浄溶剤は可塑剤に応じて適宜選択し、単独または混合して用いる。
洗浄方法は、ゲル状シートを洗浄溶剤に浸漬し抽出する方法、ゲル状シートに洗浄溶剤をシャワーする方法、またはこれらの組み合わせによる方法等が挙げられる。洗浄溶剤の使用量は洗浄方法により異なるが、一般にゲル状シート100質量部に対して300質量部以上であるのが好ましい。
洗浄温度は15〜30℃でよく、必要に応じて80℃以下に加熱する。この時、洗浄溶剤の洗浄効果を高める観点、得られるリオレフィン系微多孔膜の物性(例えば、TD方向および/またはMD方向の物性)が不均一にならないようにする観点、ポリオレフィン系微多孔膜の機械的物性および電気的物性を向上させる観点から、ゲル状シートが洗浄溶剤に浸漬している時間は長ければ長いほど良い。
上述のような洗浄は、洗浄後のゲル状シート、すなわちポリオレフィン系微多孔膜中の残留溶剤が1質量%未満になるまで行うのが好ましい。
その後、乾燥工程でポリオレフィン系微多孔膜中の溶剤を乾燥させ除去する。乾燥方法としては、特に限定は無く、金属加熱ロールを用いる方法や熱風を用いる方法等を選択することができる。乾燥温度は40〜100℃であることが好ましく、40〜80℃がより好ましい。乾燥が不十分であると、後の熱処理でポリオレフィン系微多孔膜の空孔率が低下し、透過性が悪化する場合がある。
(e)熱処理/再延伸工程
乾燥したポリオレフィン系微多孔膜を少なくとも一軸方向に延伸(再延伸)してもよい。再延伸は、ポリオレフィン系微多孔膜を加熱しながら上述の延伸と同様にテンター法等により行うことができる。再延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよい。多段延伸の場合は、同時二軸または逐次延伸を組み合わせることにより行う。
乾燥したポリオレフィン系微多孔膜を少なくとも一軸方向に延伸(再延伸)してもよい。再延伸は、ポリオレフィン系微多孔膜を加熱しながら上述の延伸と同様にテンター法等により行うことができる。再延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよい。多段延伸の場合は、同時二軸または逐次延伸を組み合わせることにより行う。
再延伸の温度は、ポリオレフィン系樹脂の融点以下にすることが好ましく、(ポリオレフィン樹脂組成物のTcd−20℃)〜ポリオレフィン系樹脂の融点の範囲内にするのがより好ましい。具体的には、ポリエチレン系樹脂の場合、再延伸の温度は、70〜135℃が好ましく、110〜135℃がより好ましく、125〜135℃がさらに好ましく、130〜135℃がよりさらに好ましい。
再延伸の倍率は、一軸延伸の場合、1.01〜2.0倍が好ましく、特にTD方向の倍率は1.1〜1.6倍が好ましく、1.2〜1.4倍がより好ましい。二軸延伸を行う場合、MD方向およびTD方向にそれぞれ1.01〜2.0倍延伸するのが好ましい。なお、再延伸の倍率は、MD方向とTD方向で異なってもよい。上述の範囲内で再延伸することで、空孔率および透過性が上昇すると共に、収縮によるフィブリルの再凝集を抑制でき、ポリオレフィン系微多孔膜の均一開孔が可能となる。
熱収縮率及びしわやたるみの観点より、再延伸最大倍率からの緩和率は20%以下が好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下が更に好ましい。当該緩和率が20%以下であると、均一なフィブリル構造が得られる。
(f)その他の工程
さらに、その他用途に応じて、ポリオレフィン系微多孔膜に親水化処理を施すこともできる。親水化処理は、モノマーグラフト、界面活性剤処理、コロナ放電等により行うことができる。モノマーグラフトは架橋処理後に行うのが好ましい。
さらに、その他用途に応じて、ポリオレフィン系微多孔膜に親水化処理を施すこともできる。親水化処理は、モノマーグラフト、界面活性剤処理、コロナ放電等により行うことができる。モノマーグラフトは架橋処理後に行うのが好ましい。
本発明の実施形態における特性の測定方法、および効果の評価方法は次の通りである。ただし、本発明の実施態様は、これらの実施例に限定されるものではない。
(1)重量平均分子量(Mw)
ポリエチレン系樹脂の重量平均分子量は以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた。
・測定装置:WATERS CORPORATION製GPC−150C
・カラム:昭和電工株式会社製SHODEX UT806M
・カラム温度:135℃
・溶媒(移動相):O−ジクロルベンゼン
・溶媒流速:1.0mL/分
・試料濃度:0.1wt%(溶解条件:135℃/1H)
・インジェクション量:500μL
・検出器:WATERS CORPORATION製ディファレンシャルリフラクトメーター(RI検出器)
・検量線:単分散ポリスチレン標準試料を用いて得られた検量線から、所定の換算定数を用いて作成した。
ポリエチレン系樹脂の重量平均分子量は以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた。
・測定装置:WATERS CORPORATION製GPC−150C
・カラム:昭和電工株式会社製SHODEX UT806M
・カラム温度:135℃
・溶媒(移動相):O−ジクロルベンゼン
・溶媒流速:1.0mL/分
・試料濃度:0.1wt%(溶解条件:135℃/1H)
・インジェクション量:500μL
・検出器:WATERS CORPORATION製ディファレンシャルリフラクトメーター(RI検出器)
・検量線:単分散ポリスチレン標準試料を用いて得られた検量線から、所定の換算定数を用いて作成した。
(2)厚み
ポリオレフィン系微多孔膜を95mm×95mmのサイズに評価サンプルを切り取った後、40mm角の格子が縦横に各2個、合計4個連なるように印を記入した。なお、印を記入する際には、4個の格子が重なる中心の頂点が評価サンプルの中心位置と重なるようにして、縦横の格子の辺が評価サンプルの辺と並行になるようにして記入を行った。合計4個連なった格子の頂点に相当する合計9箇所について、接触厚み計(株式会社ミツトヨ製ライトマチック)により厚みを測定し、9点の膜厚の平均値を求めた。
ポリオレフィン系微多孔膜を95mm×95mmのサイズに評価サンプルを切り取った後、40mm角の格子が縦横に各2個、合計4個連なるように印を記入した。なお、印を記入する際には、4個の格子が重なる中心の頂点が評価サンプルの中心位置と重なるようにして、縦横の格子の辺が評価サンプルの辺と並行になるようにして記入を行った。合計4個連なった格子の頂点に相当する合計9箇所について、接触厚み計(株式会社ミツトヨ製ライトマチック)により厚みを測定し、9点の膜厚の平均値を求めた。
(3)空孔率
ポリオレフィン系微多孔膜から評価用の試料を5cm角のサイズで切り取り、その体積(cm3)と質量(g)を求め、それらと樹脂密度(g/cm3)より、次式を用いて計算した。以上の測定を同じポリオレフィン系微多孔膜中の異なる任意の無作為に抽出した箇所で5点行い、5点の空孔率の平均値を求めた。なお、樹脂密度については、ポリオレフィン系微多孔膜を加熱溶融させて無孔状態のシートにしたのち、JIS K6922−2−2010にて求めた。
空孔率=[(体積−質量/樹脂密度)/体積]×100
ポリオレフィン系微多孔膜から評価用の試料を5cm角のサイズで切り取り、その体積(cm3)と質量(g)を求め、それらと樹脂密度(g/cm3)より、次式を用いて計算した。以上の測定を同じポリオレフィン系微多孔膜中の異なる任意の無作為に抽出した箇所で5点行い、5点の空孔率の平均値を求めた。なお、樹脂密度については、ポリオレフィン系微多孔膜を加熱溶融させて無孔状態のシートにしたのち、JIS K6922−2−2010にて求めた。
空孔率=[(体積−質量/樹脂密度)/体積]×100
(4)突刺し強度
MARUBISHI社製の突刺計を用い、先端が球面(曲率半径R:0.5mm)の直径1mmの針で、厚みT1(μm)、ポリオレフィン系微多孔膜を2mm/秒の速度で突刺したときの最大荷重を測定した測定値を突刺強度L1(gf)とした。
突刺強度L1(gf)を、式:L2(gf)=L1(gf)/T1(μm)×10μmにより、厚みを10μmとしたときの最大荷重に換算し、厚み10μm換算突刺強度L2(gf)とした。
以上の測定を同じポリオレフィン系微多孔膜中の異なる任意の無作為に抽出した箇所で3点行い、3点の突刺強度L1(gf)及び膜厚10μm換算突刺強度L2(gf)の平均値をそれぞれ求め、膜厚10μm換算突刺強度L2(gf)の平均値を「突刺し強度(10μm換算)」として表に記載した。
MARUBISHI社製の突刺計を用い、先端が球面(曲率半径R:0.5mm)の直径1mmの針で、厚みT1(μm)、ポリオレフィン系微多孔膜を2mm/秒の速度で突刺したときの最大荷重を測定した測定値を突刺強度L1(gf)とした。
突刺強度L1(gf)を、式:L2(gf)=L1(gf)/T1(μm)×10μmにより、厚みを10μmとしたときの最大荷重に換算し、厚み10μm換算突刺強度L2(gf)とした。
以上の測定を同じポリオレフィン系微多孔膜中の異なる任意の無作為に抽出した箇所で3点行い、3点の突刺強度L1(gf)及び膜厚10μm換算突刺強度L2(gf)の平均値をそれぞれ求め、膜厚10μm換算突刺強度L2(gf)の平均値を「突刺し強度(10μm換算)」として表に記載した。
(5)FIB−SEM
以下の条件にてFIB−SEMによる連続画像を測定した。
・試料調製:エポキシ系樹脂にてポリオレフィン系微多孔膜の包埋処理を行ったのち、OsO4を用いて電子染色を行い、測定に供した。
・観察装置:FEI製Helios G4
・観察条件:加速電圧1kV
・試料傾斜:52°
・ピクセルサイズ:画像横方向:5.4nm、画像縦方向:6.8nm(傾斜補正後)
・FIBでのスライス間隔:10nm
・画像のアライメント方法:フィルム上部にPtを堆積させたマーキングを行い、各画像間の位置確認を実施した。
・傾斜補正:FIB−SEM観察は斜め52°から行っているため、SEM像は縦方向に縮んで観察されていることから、画像縦方向について正面から観察した像にするためには1.27倍(=/sin52°)とする必要があり、傾斜補正後の画像を用いて後述する三次元画像の作製を行った。
・測定サイズ:フィルム断面の5μm×5μmについてFIB加工を順次行い、奥行き方向に4μmになるまでスライスを行い、5μm×5μm×4μmの体積分(撮影画像400枚)について測定を行った。
以下の条件にてFIB−SEMによる連続画像を測定した。
・試料調製:エポキシ系樹脂にてポリオレフィン系微多孔膜の包埋処理を行ったのち、OsO4を用いて電子染色を行い、測定に供した。
・観察装置:FEI製Helios G4
・観察条件:加速電圧1kV
・試料傾斜:52°
・ピクセルサイズ:画像横方向:5.4nm、画像縦方向:6.8nm(傾斜補正後)
・FIBでのスライス間隔:10nm
・画像のアライメント方法:フィルム上部にPtを堆積させたマーキングを行い、各画像間の位置確認を実施した。
・傾斜補正:FIB−SEM観察は斜め52°から行っているため、SEM像は縦方向に縮んで観察されていることから、画像縦方向について正面から観察した像にするためには1.27倍(=/sin52°)とする必要があり、傾斜補正後の画像を用いて後述する三次元画像の作製を行った。
・測定サイズ:フィルム断面の5μm×5μmについてFIB加工を順次行い、奥行き方向に4μmになるまでスライスを行い、5μm×5μm×4μmの体積分(撮影画像400枚)について測定を行った。
(6)三次元画像の作成
(5)で得られたFIB−SEM像について、日本ビジュアルサイエンス社製「ExFact(登録商標)Analysis for Porous/Particles」の画像処理ソフトを用いて、微多孔膜のうち、包埋処理されている、電子染色を施した樹脂部分(すなわち微多孔膜の空孔部に相当する部分)と微多孔膜を構成する樹脂の部分に二値化処理を行った後、二値化処理の情報を元にして三次元の立体画像化を行った。その後、日本ビジュアルサイエンス社製「ExFact(登録商標)Analysis for Porous/Particles」の画像処理ソフトで微多孔膜の空孔部分の細線化処理を行うことで微多孔膜の内部の孔構造に関する三次元画像を作成した。作成する三次元画像のサイズについては、解析時間や解析パラメータの再現性の観点から、5μm×5μm×4μmのFIB−SEM測定サイズのうち、中心の2.7μmの長さの辺で囲まれた立方体とした。
(5)で得られたFIB−SEM像について、日本ビジュアルサイエンス社製「ExFact(登録商標)Analysis for Porous/Particles」の画像処理ソフトを用いて、微多孔膜のうち、包埋処理されている、電子染色を施した樹脂部分(すなわち微多孔膜の空孔部に相当する部分)と微多孔膜を構成する樹脂の部分に二値化処理を行った後、二値化処理の情報を元にして三次元の立体画像化を行った。その後、日本ビジュアルサイエンス社製「ExFact(登録商標)Analysis for Porous/Particles」の画像処理ソフトで微多孔膜の空孔部分の細線化処理を行うことで微多孔膜の内部の孔構造に関する三次元画像を作成した。作成する三次元画像のサイズについては、解析時間や解析パラメータの再現性の観点から、5μm×5μm×4μmのFIB−SEM測定サイズのうち、中心の2.7μmの長さの辺で囲まれた立方体とした。
(7)厚み方向のパス数
(6)で得られた三次元画像に対し、日本ビジュアルサイエンス社製「ExFact(登録商標)Analysis for Porous/Particles」の画像処理ソフトを用いて、ポリオレフィン系微多孔膜の厚み方向の始面から終面に至る、微多孔膜の空孔部分からなるすべての経路(パス)のうち、最短距離となるパスを1本として検出する作業を行った。2.7μmの長さの辺で囲まれた三次元画像の立方体のうち、2.7μm×2.7μmの面積の始面から2.7μm×2.7μmの終面に至るすべての厚み方向のパスをカウントし、1μm2あたりの本数に換算した値を、本発明における、厚み方向のパス数とした。
(6)で得られた三次元画像に対し、日本ビジュアルサイエンス社製「ExFact(登録商標)Analysis for Porous/Particles」の画像処理ソフトを用いて、ポリオレフィン系微多孔膜の厚み方向の始面から終面に至る、微多孔膜の空孔部分からなるすべての経路(パス)のうち、最短距離となるパスを1本として検出する作業を行った。2.7μmの長さの辺で囲まれた三次元画像の立方体のうち、2.7μm×2.7μmの面積の始面から2.7μm×2.7μmの終面に至るすべての厚み方向のパスをカウントし、1μm2あたりの本数に換算した値を、本発明における、厚み方向のパス数とした。
(8)厚み方向のパスの曲路率分布のピーク値
(7)で求めた厚み方向の各パスにおいて、「ExFact(登録商標)Analysis for Porous/Particles」などの画像処理ソフトを用いてそれぞれの曲路率を算出した後、解析対象の厚み方向の全てのパスについて曲路率の頻度分布を作成し、スムージング処理を行った曲路率頻度分布のグラフを作成した。得られたグラフについて、最も高い頻度を示す曲路率を、厚み方向のパスの曲路率分布のピーク値とした。厚み方向のパスの曲路率のピーク値が2ヵ所以上観測される場合は、頻度が最も大きなピーク値を採用し、頻度が最も大きなピークが同一頻度で2ヵ所以上観測される場合は、曲路率が最も低くなるピーク値を採用した。
(7)で求めた厚み方向の各パスにおいて、「ExFact(登録商標)Analysis for Porous/Particles」などの画像処理ソフトを用いてそれぞれの曲路率を算出した後、解析対象の厚み方向の全てのパスについて曲路率の頻度分布を作成し、スムージング処理を行った曲路率頻度分布のグラフを作成した。得られたグラフについて、最も高い頻度を示す曲路率を、厚み方向のパスの曲路率分布のピーク値とした。厚み方向のパスの曲路率のピーク値が2ヵ所以上観測される場合は、頻度が最も大きなピーク値を採用し、頻度が最も大きなピークが同一頻度で2ヵ所以上観測される場合は、曲路率が最も低くなるピーク値を採用した。
(9)厚み方向のパスの曲路率分布のピーク値の頻度
(8)で求めた曲路率分布のピーク値における頻度の値とした。
(8)で求めた曲路率分布のピーク値における頻度の値とした。
(10)厚み方向のパスの曲路率分布の半値幅
(8)と同様にして求めた曲路率頻度分布のグラフについて、数値解析ソフトを用いて関数のフィッティングを行い、算術的な半値全幅を求めた。
(8)と同様にして求めた曲路率頻度分布のグラフについて、数値解析ソフトを用いて関数のフィッティングを行い、算術的な半値全幅を求めた。
(11)急速充放電条件での容量維持率
リチウムイオン二次電池の構成とした際の急速充放電条件の容量維持率を評価するために、正極、負極、セパレータおよび電解質からなる非水電解液二次電池にポリオレフィン系微多孔膜をセパレータとして組み込んで、充放電試験を行った。
リチウムイオン二次電池の構成とした際の急速充放電条件の容量維持率を評価するために、正極、負極、セパレータおよび電解質からなる非水電解液二次電池にポリオレフィン系微多孔膜をセパレータとして組み込んで、充放電試験を行った。
幅38mm×長さ33mm×厚さ20μmのアルミニウム箔上に目付け9.5mg/cm2にてNMC532(リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物(Li1.05Ni0.50Mn0.29Co0.21O2))を積層したカソード、および、幅40mm×長さ35mm×厚さ10μmの銅箔上に密度1.45g/cm3の天然黒鉛を単位面積質量5.5mg/cm2で積層したアノードを用いた。正極および負極は120℃の真空オーブンで乾燥して使用した。
セパレータは、長さ50mm、幅50mmのポリオレフィン系微多孔膜を室温の真空オーブンで乾燥して使用した。電解液はエチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートの混合物(30/35/35、体積比)中に、ビニレンカーボネート(VC)及びLiPF6を溶解させ、VC濃度:0.5質量%、LiPF6濃度:1mol/Lの溶液を調製した。
正極、セパレータおよび負極を積み重ね、得られた積層体をラミネートパウチ内に配置し、ラミネートパウチ内に電解液を注液し、当該ラミネートパウチを真空シールすることにより、リチウムイオン二次電池を作製した。
作製したリチウムイオン二次電池を初回充電として、温度35℃、0.1Cにて10〜15%充電し、35℃にて1晩(12時間以上)放置し、ガス抜きを実施した。次に、温度35℃、電圧範囲;2.75〜4.2V、充電電流値0.1CのCC−CV充電(定電流定電圧充電(終止電流条件0.02C))、放電電流値0.1CのCC放電(定電流放電)を実施した。次に、温度35℃、電圧範囲;2.75〜4.2V、充電電流値0.2CのCC−CV充電(定電流定電圧充電)(終止電流条件0.05C))、放電電流値0.2CのCC放電(定電流放電)を3サイクル行った時点を非水電解液二次電池の初期とした。
次に、温度35℃、電圧範囲;2.75〜4.2V、充電電流値0.2CのCC−CV充電(定電流定電圧充電(終止電流条件0.05C))した後に15℃で0.2CのCC放電(定電流放電)をして、その時の放電容量を0.2C容量とした。次に、温度35℃、電圧範囲;2.75〜4.2V、充電電流値0.5CでCC−CV充電(定電流定電圧充電(終止電流条件0.05C))した後に、15℃で非水電解液二次電池の10C(180mA、14.4mA/cm2)におけるレート試験を行った。この結果より、0.2C容量に対する10C容量の割合{(10C容量/0.2C容量)×100}(%)を急速充放電条件での容量維持率(%)とした。55%以上を特性良好とした。
(12)熱機械分析装置(TMA)によるTD方向の最大収縮応力
ポリオレフィン系微多孔膜をMD方向に3mm、TD方向に15mmの矩形に切り出して評価用サンプルを作製した。日立ハイテクノロジー社製「TMA7100」を用いて、チャック間距離(TD方向)が10mmになるように評価用サンプルをチャックに固定し、定長モードで30℃から200℃まで5℃/分の速度で昇温させた。200℃まで昇温させた際の温度と収縮力を1秒間隔で測定し、最も大きな収縮力(gf)を評価用サンプルの断面積で除した値を、熱機械分析装置(TMA)によるTD方向の最大収縮応力(MPa)とした。
ポリオレフィン系微多孔膜をMD方向に3mm、TD方向に15mmの矩形に切り出して評価用サンプルを作製した。日立ハイテクノロジー社製「TMA7100」を用いて、チャック間距離(TD方向)が10mmになるように評価用サンプルをチャックに固定し、定長モードで30℃から200℃まで5℃/分の速度で昇温させた。200℃まで昇温させた際の温度と収縮力を1秒間隔で測定し、最も大きな収縮力(gf)を評価用サンプルの断面積で除した値を、熱機械分析装置(TMA)によるTD方向の最大収縮応力(MPa)とした。
(13)熱機械分析装置(TMA)によるTD方向の最大収縮応力温度
(12)において、熱機械分析装置(TMA)によるTD方向の最大収縮応力を示す温度を、熱機械分析装置(TMA)によるTD方向の最大収縮応力温度(℃)とした。
(12)において、熱機械分析装置(TMA)によるTD方向の最大収縮応力を示す温度を、熱機械分析装置(TMA)によるTD方向の最大収縮応力温度(℃)とした。
(14)安全性評価
(11)と同様にして作製したリチウムイオン二次電池について、0.2Cの電流値で電圧4.2Vまで定電流充電した後、4.2Vの定電圧充電を行い、その後1Cの電流で3.0Vの終止電圧まで放電を行った。次に0.2Cの電流値で4.2Vまで定電流充電した後、4.2Vの定電圧充電を実施した。その後、充電状態の電池をオーブンに投入し、室温から5℃/分で昇温した後、150℃で60分間放置し、下記基準で評価を実施した。
A:60分経過後に発火もしくは発煙が見られない。
B:150℃に到達後、30分を超え60分以内で発火もしくは発煙が見られた。
C:150℃に到達後、10分を超え30分以内で発火もしくは発煙が見られた。
D:150℃に到達後、10分以内で発火もしくは発煙が見られた。
(11)と同様にして作製したリチウムイオン二次電池について、0.2Cの電流値で電圧4.2Vまで定電流充電した後、4.2Vの定電圧充電を行い、その後1Cの電流で3.0Vの終止電圧まで放電を行った。次に0.2Cの電流値で4.2Vまで定電流充電した後、4.2Vの定電圧充電を実施した。その後、充電状態の電池をオーブンに投入し、室温から5℃/分で昇温した後、150℃で60分間放置し、下記基準で評価を実施した。
A:60分経過後に発火もしくは発煙が見られない。
B:150℃に到達後、30分を超え60分以内で発火もしくは発煙が見られた。
C:150℃に到達後、10分を超え30分以内で発火もしくは発煙が見られた。
D:150℃に到達後、10分以内で発火もしくは発煙が見られた。
(実施例1)
原料として重量平均分子量(Mw)が10×105の超高分子量ポリエチレンと重量平均分子量(Mw)が5×105の高密度ポリエチレンを用いた。超高分子量ポリエチレン16質量部と高密度ポリエチレン4質量部に流動パラフィン80質量部を加え、さらにポリエチレン系樹脂の合計の質量を基準として0.5質量部の2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールと0.7質量部のテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]メタンを酸化防止剤として加えて混合し、ポリエチレン系樹脂溶液を調製した。なお、全ポリエチレン系樹脂の質量を100質量%とした際の超高分子量ポリエチレンの比率は80質量%であった。流動パラフィンや酸化防止剤は製造工程でほぼ取り除かれることから、本発明においては、全ポリエチレン系樹脂の質量を100質量%とした際の超高分子量ポリエチレンの比率は、ポリオレフィン系微多孔膜中の超高分子量比率とした。
得られたポリエチレン系樹脂溶液を二軸押出機に投入し180℃で混練し、Tダイに供給し、押出物を15℃に制御された冷却ロールで冷却してゲル状シートを形成した。
得られたゲル状シートを、ロール延伸機で長手方向(MD方向)に118℃で8倍の縦延伸を行い(表では縦延伸(MD1)と記載)、冷却を行った後、テンター延伸機で幅方向(TD方向)に118℃で8倍に横延伸し(表では横延伸(TD)と記載)、そのままテンター延伸機内でシート幅を固定し、115℃の温度で10秒間保持した。なお、縦延伸(MD1)の倍率と横延伸(TD)の倍率の積である面倍率は64倍であった。
次いで延伸したゲル状シートを洗浄槽で塩化メチレン浴中に浸漬し、流動パラフィン除去後乾燥を行い、ポリオレフィン系微多孔膜を得た。最後にオーブンを使用し、幅方向に5%(表ではリラックス率と記載)縮めてリラックスさせた状態で130℃の温度で10分間、熱固定を実施し、ポリオレフィン系微多孔膜を得た。なお、表では熱固定の際に幅方向に縮めた割合をリラックス率、熱固定を行った時間を熱固定時間と記載している。
原料として重量平均分子量(Mw)が10×105の超高分子量ポリエチレンと重量平均分子量(Mw)が5×105の高密度ポリエチレンを用いた。超高分子量ポリエチレン16質量部と高密度ポリエチレン4質量部に流動パラフィン80質量部を加え、さらにポリエチレン系樹脂の合計の質量を基準として0.5質量部の2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールと0.7質量部のテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]メタンを酸化防止剤として加えて混合し、ポリエチレン系樹脂溶液を調製した。なお、全ポリエチレン系樹脂の質量を100質量%とした際の超高分子量ポリエチレンの比率は80質量%であった。流動パラフィンや酸化防止剤は製造工程でほぼ取り除かれることから、本発明においては、全ポリエチレン系樹脂の質量を100質量%とした際の超高分子量ポリエチレンの比率は、ポリオレフィン系微多孔膜中の超高分子量比率とした。
得られたポリエチレン系樹脂溶液を二軸押出機に投入し180℃で混練し、Tダイに供給し、押出物を15℃に制御された冷却ロールで冷却してゲル状シートを形成した。
得られたゲル状シートを、ロール延伸機で長手方向(MD方向)に118℃で8倍の縦延伸を行い(表では縦延伸(MD1)と記載)、冷却を行った後、テンター延伸機で幅方向(TD方向)に118℃で8倍に横延伸し(表では横延伸(TD)と記載)、そのままテンター延伸機内でシート幅を固定し、115℃の温度で10秒間保持した。なお、縦延伸(MD1)の倍率と横延伸(TD)の倍率の積である面倍率は64倍であった。
次いで延伸したゲル状シートを洗浄槽で塩化メチレン浴中に浸漬し、流動パラフィン除去後乾燥を行い、ポリオレフィン系微多孔膜を得た。最後にオーブンを使用し、幅方向に5%(表ではリラックス率と記載)縮めてリラックスさせた状態で130℃の温度で10分間、熱固定を実施し、ポリオレフィン系微多孔膜を得た。なお、表では熱固定の際に幅方向に縮めた割合をリラックス率、熱固定を行った時間を熱固定時間と記載している。
(実施例2)
ロール延伸機での長手方向(MD方向)の延伸について、第一段階(MD1)を118℃で4倍(表では縦延伸(MD1)と記載)、第2段階(MD2)を118℃で2倍(表では縦延伸(MD2)と記載)として、2段階で延伸を行った以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン系微多孔膜を得た。
ロール延伸機での長手方向(MD方向)の延伸について、第一段階(MD1)を118℃で4倍(表では縦延伸(MD1)と記載)、第2段階(MD2)を118℃で2倍(表では縦延伸(MD2)と記載)として、2段階で延伸を行った以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン系微多孔膜を得た。
(実施例3〜5、8〜19)
原料組成、製造条件を表の通りとした以外は、実施例2と同様にしてポリオレフィン系微多孔膜を得た。
原料組成、製造条件を表の通りとした以外は、実施例2と同様にしてポリオレフィン系微多孔膜を得た。
(実施例6、7)
原料組成、製造条件を表の通りとした以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン系微多孔膜を得た。
原料組成、製造条件を表の通りとした以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン系微多孔膜を得た。
(比較例1〜4)
原料組成、製造条件を表の通りとした以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン系微多孔膜を得た。
原料組成、製造条件を表の通りとした以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン系微多孔膜を得た。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン系微多孔膜は、リチウムイオン二次電池をはじめとする非水電解液二次電池のセパレータとして適用した際に、強度に優れ、急速充放電条件での容量維持率を向上させることができることから、急速充放電に対応した非水電解液二次電池のセパレータとして好適に用いられる。
Claims (9)
- 微多孔膜のFIB−SEM測定で得られる各断面像から作成された2.7μm角の三次元画像において、厚み方向のパス数が35本/μm2以上であり、厚み方向のパスの曲路率分布のピーク値が1.30以上1.80以下である、ポリオレフィン系微多孔膜。
- 厚み方向のパスの曲路率分布のピーク値の頻度が6%以上30%以下である、請求項1に記載のポリオレフィン系微多孔膜。
- 厚み方向のパスの曲路率分布の半値幅が、0.06以上0.25以下である、請求項1または請求項2に記載のポリオレフィン系微多孔膜。
- 突刺し強度が180gf以上700gf以下である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のポリオレフィン系微多孔膜。
- 厚みが3μm以上14μm以下である、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のポリオレフィン系微多孔膜。
- 空孔率が35%以上50%以下である、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のポリオレフィン系微多孔膜。
- 熱機械分析装置(TMA)によるTD方向の最大収縮応力温度が143℃以上、かつ最大収縮応力が1.3MPa以下である、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のポリオレフィン系微多孔膜。
- 請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のポリオレフィン系微多孔膜に、さらに耐熱性樹脂層を積層した積層体。
- 請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のポリオレフィン系微多孔膜、または請求項8に記載の積層体を備える、非水電解液二次電池。
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