JP2020164860A - ポリオレフィン微多孔膜、電池用セパレータ、二次電池及びポリオレフィン微多孔膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 従来よりも優れた出力特性と強度を有するポリオレフィン微多孔膜を提供することである。【解決手段】本発明は、膜厚10μm換算の突刺強度Y(N)と、単位面積当たりの表面孔数Z(個/μm2)がY(N)≧−0.06×Z(個/μm2)+9.4の関係を満たす、ポリオレフィン微多孔膜に関する。【選択図】なし
Description
本発明は、物質の分離、選択透過等に用いられる分離膜、及びアルカリ電池、リチウム二次電池、燃料電池、コンデンサー等電気化学反応装置の隔離材等として広く使用されているポリオレフィン微多孔膜に関する。特に本発明は、リチウムイオン電池用セパレータとして好適に使用されるポリオレフィン微多孔膜であり、従来のポリオレフィン微多孔膜に比べ優れた電池特性を発揮するとともに、高い安全性を有するセパレータとして用いられる。
ポリオレフィン微多孔膜は、フィルター、燃料電池用セパレータ、コンデンサー用セパレータ等として用いられている。特にノート型パーソナルコンピュータや携帯電話、デジタルカメラ等に広く使用さるリチウムイオン電池用のセパレータとして好適に使用されている。その理由としては、ポリオレフィン微多孔膜が優れた機械強度やシャットダウン特性、リチウムイオンの透過性能を有していることが挙げられる。
特に、近年リチウムイオン二次電池は車載用途で使用されるため、充電時間の短縮や加速性の向上が必要であり、電池の特性として急速充電(大電流充電)や消費電力増加(大電流放電)が求められる。それに伴いセパレータに対してはさらなる出力特性の改善が求められるようになってきている。
また、自動車の航続距離増加に伴い電池の高容量化が進み、セパレータの薄膜化が一層求められている。しかし、セパレータを薄膜化すると強度が低下するため、電極や異物による短絡(耐異物性)や電池が衝撃を受けた際に破膜(耐衝撃性)が起こりやすく、電池の安全性が低下する。そのため、従来よりもさらなる高強度がセパレータに対して求められる。
出力特性を改善する手法として、特許文献1及び2では、ポリエチレン(PE)とポリプロピレン(PP)をブレンドし空孔率を増加させ孔数と孔径と曲路率を制御しイオン伝導性を改善している。
出力特性を改善する手法として、特許文献3及び4には、微多孔膜のフィブリル径、孔径、表面開口率を制御し、膜抵抗を低減することでイオン伝導性を改善する手法が記載されている。
特許文献5では、表面と内部の孔構造を制御し、電解液含浸性向上させ出力特性の改善を行っている。
高強度化の手法として、延伸倍率を上げるまたは樹脂濃度を増加する、高分子量の原料を用いるといった手法が通常とられる。特許文献6には、耐破膜性を改善するために分子量28万のポリエチレンと分子量200万のポリエチレンをブレンドし、樹脂濃度32wt%の条件でMD方向に7.0倍、TD方向に6.4倍延伸し洗浄乾燥後に1.2倍(面積倍率54倍)に延伸する手法が記載されている。
特許文献7、8には、ハイゼックスミリオン145Mを樹脂濃度18%の条件で6.4×6.0倍(面積倍率38.4倍)に延伸する手法が記載されている。比較的高い分子量のポリエチレンを38.4倍に延伸しているため空孔率30〜60%かつ突刺強度が6.0N/20μmであり、出力特性と安全性に優れた微多孔膜が得られている。
しかしながら、特許文献1及び2に記載されているような従来の微多孔膜は、出力特性を改善するために空孔率を増加し、孔数及び貫通孔を増加している。その結果、良好な強度が得られていない。
特許文献3及び4に記載の微多孔膜は、大孔径、高空孔率かつ比較的太いフィブリルを形成した微多孔膜となり良好な強度が得られていない。
特許文献5では、表面と内部の孔構造が異なるためリチウムイオンの透過経路が不均一となりやすいと考えられる。そのため、従来の微多孔膜は車載用途等に求められる高い出力特性と強度の両立に対して不十分であった。
特許文献6で得られる微多孔膜は5.5〜5.9N/20μmと比較的高い突刺強度を有し良好な耐破膜性が得られているが、空孔率が35〜40%と比較的低い値であり特許文献1及び2に示されるような高出力セパレータに近い空孔率は得られておらず、出力特性に改善の余地がある。
特許文献7、8では、電池の高容量化に伴いセパレータの薄膜化が求められているため、薄膜化に伴う安全性向上に改善の余地がある。
上記事情に鑑み、本発明は、従来よりも優れた出力特性と強度を有するポリオレフィン微多孔膜を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、延伸工程における開口性を向上することで孔が微細かつ均一になり、従来のポリオレフィン微多孔膜に比べ単位面積当たりの表面孔数を増加することによりイオンの透過経路が増加し出力特性が改善するとともに、樹脂層に均一に応力がかかり微細かつ均一なフィブリル構造を形成するため、強度と熱収縮率が改善され、従来技術では達成できなかった高い安全性と出力特性を実現できることを見出した。
すなわち、本発明は以下の構成を採用する。
<1>膜厚10μm換算の突刺強度Y(N)と、単位面積当たりの表面孔数Z(個/μm2)が下記式(1)の関係を満たし、かつMD方向の引張破断強度及びTD方向の引張破断強度がともに180MPa以上であるポリオレフィン微多孔膜。
<1>膜厚10μm換算の突刺強度Y(N)と、単位面積当たりの表面孔数Z(個/μm2)が下記式(1)の関係を満たし、かつMD方向の引張破断強度及びTD方向の引張破断強度がともに180MPa以上であるポリオレフィン微多孔膜。
Y(N)≧−0.06×Z(個/μm2)+9.4・・・式(1)
<2>前記表面孔数が40個/μm2以上135個/μm2以下である、<1>に記載のポリオレフィン微多孔膜。
<3>平均孔径が40nm未満である、<1>または<2>に記載のポリオレフィン微多孔膜。
<4>タフネスが35000(MPa×%)以上である、<1>〜<3>のいずれかに記載のポリオレフィン微多孔膜。
<5>前記突刺強度Yが3.0N以上である、<1>〜<4>のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
<6>熱機械分析によって測定されたMD方向の120℃における熱収縮率が15%以下である、<1>〜<5>のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
<7>空孔率が40%以上60%未満である、<1>〜<6>のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
<8>微多孔膜であるポリオレフィンがポリエチレンである、<1>〜<7>のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
<9><1>〜<8>のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜を含む、電池用セパレータ。
<10><9>に記載の電池用セパレータを含む、二次電池。
<11><1>〜<8>のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法であって、
溶媒とポリオレフィン樹脂の合計を100質量%としたとき、重量平均分子量100万以上の超高分子量ポリエチレンの含有割合が5〜30質量%であり、かつ前記ポリオレフィン樹脂の含有割合が30質量%未満である溶液を調製する工程、
前記溶液をダイより押出し、冷却固化することにより未延伸のゲル状シートを形成する工程、
前記ゲル状シートを、前記ゲル状シートの結晶分散温度〜前記ゲル状シートの融点+10℃の温度で、面積倍率が40倍以上となるように延伸し、延伸フィルムを得る工程、
前記延伸フィルムから可塑剤を抽出して前記延伸フィルムを乾燥する工程、並びに
乾燥後の延伸フィルムの熱処理及び乾燥後の延伸フィルムの再延伸の少なくとも一方を行う工程を有する、
ポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
<2>前記表面孔数が40個/μm2以上135個/μm2以下である、<1>に記載のポリオレフィン微多孔膜。
<3>平均孔径が40nm未満である、<1>または<2>に記載のポリオレフィン微多孔膜。
<4>タフネスが35000(MPa×%)以上である、<1>〜<3>のいずれかに記載のポリオレフィン微多孔膜。
<5>前記突刺強度Yが3.0N以上である、<1>〜<4>のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
<6>熱機械分析によって測定されたMD方向の120℃における熱収縮率が15%以下である、<1>〜<5>のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
<7>空孔率が40%以上60%未満である、<1>〜<6>のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
<8>微多孔膜であるポリオレフィンがポリエチレンである、<1>〜<7>のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
<9><1>〜<8>のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜を含む、電池用セパレータ。
<10><9>に記載の電池用セパレータを含む、二次電池。
<11><1>〜<8>のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法であって、
溶媒とポリオレフィン樹脂の合計を100質量%としたとき、重量平均分子量100万以上の超高分子量ポリエチレンの含有割合が5〜30質量%であり、かつ前記ポリオレフィン樹脂の含有割合が30質量%未満である溶液を調製する工程、
前記溶液をダイより押出し、冷却固化することにより未延伸のゲル状シートを形成する工程、
前記ゲル状シートを、前記ゲル状シートの結晶分散温度〜前記ゲル状シートの融点+10℃の温度で、面積倍率が40倍以上となるように延伸し、延伸フィルムを得る工程、
前記延伸フィルムから可塑剤を抽出して前記延伸フィルムを乾燥する工程、並びに
乾燥後の延伸フィルムの熱処理及び乾燥後の延伸フィルムの再延伸の少なくとも一方を行う工程を有する、
ポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
本発明は、従来のポリオレフィン微多孔膜と比較して安全性、出力特性、強度に優れたポリオレフィン微多孔膜を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について詳述するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものであり、本発明はこれらの内容に特定されるものではない。
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、膜厚10μm換算の突刺強度Y(N)と、単位面積当たりの表面孔数Z(個/μm2)が下記式(1)の関係式を満たし、かつMD方向の引張強度およびTD方向の引張強度がともに180MPa以上であることを
特徴とする。
特徴とする。
Y(N)≧−0.06×Z(個/μm2)+9.4・・・式(1)
以下、本発明についてさらに詳述する。
[1]ポリオレフィン樹脂
本発明のポリオレフィン微多孔膜における樹脂等の原料は単一組成である必要はなく、主原料と副原料を組み合わせた組成物であってよい。
以下、本発明についてさらに詳述する。
[1]ポリオレフィン樹脂
本発明のポリオレフィン微多孔膜における樹脂等の原料は単一組成である必要はなく、主原料と副原料を組み合わせた組成物であってよい。
樹脂としてはポリオレフィン樹脂であることが好ましく、2種以上のポリオレフィン樹脂からなるポリオレフィン樹脂混合物(ポリオレフィン樹脂組成物)であってもよい。
ポリオレフィン微多孔膜の原料形態は、ポリオレフィン樹脂であることが好ましく、ポリオレフィン樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられ、単一組成であることがより好ましい。
ポリオレフィン樹脂はエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン等の単独重合体が好ましく、エチレンの単独重合体(ポリエチレン)が特に好ましい。ポリエチレンはエチレンの単独重合体と他のα−オレフィンを含有する共重合体であってもよい。
他のα−オレフィンとしてはプロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン、またはそれ以上の炭素数を有するアルケン、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、スチレン等が挙げられる。
ポリオレフィン樹脂混合物としては、たとえば重量平均分子量(Mw)が互いに異なる2種類以上の超高分子量ポリエチレンの混合物、高密度ポリエチレンの混合物、中密度ポリエチレンの混合物、又は低密度ポリエチレンの混合物を用いてもよいし、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンからなる群から選ばれた2種以上ポリエチレンの混合物を用いてもよい。ポリオレフィン樹脂混合物としては、Mwが1×106以上の超高分子量ポリエチレンとMwが1×105以上9×105未満のポリエチレンからなる混合物であっても良い。
用いられる超高分子量ポリエチレンの重量平均分子量は、1.0×106以上、1.0×107以下が好ましい。重量平均分子量は、より好ましくは1.1×106以上、さらに好ましくは1.2×106以上、特に好ましくは1.4×106以上、もっと好ましくは1.7×106以上、最も好ましくは2.0×106以上である。また、重量平均分子量は、より好ましくは8.0×106以下、更に好ましくは6.0×106以下、よりさらに好ましくは5.0×106以下、最も好ましくは4.0×106以下である。重量平均分子量が1.0×106以上であることで、非晶部領域の絡み合い密度が上昇し、開口の均一性が向上し良好な出力特性と強度が得られる。
超高分子量ポリエチレンの分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は機械的強度の観点から3.0〜100の範囲内であることが好ましい。分子量分布の下限はより好ましくは4.0以上、更に好ましくは5.0以上、特に好ましくは6.0以上、最も好ましくは8.0以上である。また分子量分布の上限はより好ましくは80以下、さらに好ましくは50以下、特に好ましくは20以下、最も好ましくは17以下である。
超高分子量ポリエチレンは、上記ポリオレフィン樹脂混合物として用いられることもあるが、単独で用いた場合において分子量分布が3.0未満では加工性に劣り、また分子量分布が100を超えると低分子量成分の増加により加工時に欠点等を発生させやすくなる可能性が高い。
超高分子量ポリエチレン以外に、例えば1.0×105以上1.0×106未満、好ましくは2×105〜9.5×105の範囲といった、1.0×106未満の重量平均分子量を有するポリエチレンを副原料として用いてもよい。副原料を用いることで成形加工性が向上するとともに、ポリオレフィン樹脂と可塑剤との配合割合の選択が容易となり分子鎖の重なり密度の調整が可能となる。
ポリオレフィン樹脂の最も好ましい形態としては、重量平均分子量(Mw)が1.0×106以上のポリオレフィン樹脂が好ましく、Mwが1.4×106以上のポリオレフィン樹脂がより好ましく、Mwが2.0×106以上のポリオレフィン樹脂が更に好ましい。ポリオレフィン樹脂のMwが1.0×106以上であると分子鎖の絡み合い数が増加し、延伸工程における応力伝搬が均一化し開口性が向上する。その結果、微細かつ均一に開口しポリオレフィン微多孔膜の単位体積当たりの孔数、表面開口率及び単位面積当たりの表面孔数のうちの少なくとも一つが増加し、良好な出力特性が得られる。また、Mwが1.0×106以上のポリオレフィン樹脂を用いることでタイ分子数が増加し、フィブリルの強度が増加し、後述する単位体積当たりの孔数や単位面積あたりの表面孔数と強度バランスを改善できる。Mwが1.0×106未満であると延伸工程において応力伝搬しにくく、開口性が低下する場合がある。
ここで、ポリオレフィン樹脂の種類としては、密度が0.94g/cm3を越えるような高密度ポリエチレン、密度が0.93〜0.94g/cm3の範囲の中密度ポリエチレン、密度が0.93g/cm3より低い低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等が挙げられるが、開口の均一性と膜強度の観点からの重量平均分子量100万以上の超高分子量の高密度ポリエチレンを単独で使用することが好ましい。
なお、後述する本発明のポリオレフィン微多孔膜の製造工程において、成形加工性を向上させる目的で可塑剤を添加することが好ましい。
ポリオレフィン樹脂と可塑剤との配合割合は成形加工性を損ねない範囲で適宜選択してよいが、ポリオレフィン樹脂と可塑剤との合計を100質量%として、ポリオレフィン樹脂の割合が10〜50質量%であることが好ましい。ポリオレフィン樹脂の割合が10質量%以上(可塑剤の割合が90質量%以下)では、シート状に成形する際に、口金の出口でスウエルやネックインを抑制でき、シートの成形性及び製膜性が向上する。一方、ポリオレフィン樹脂の割合が50質量%未満(可塑剤の割合が50質量%を超える)では製膜工程の圧力上昇を抑制でき良好な成形加工性が得られる。
ポリオレフィン樹脂の割合は12質量%以上が好ましく、14質量%以上がより好ましく、16質量%以上が更に好ましく、20質量%以上がよりさらに好ましい。ポリオレフィン樹脂の割合が増加することで可塑剤存在下における分子鎖の重なり密度が増加し、延伸の均一性が向上する。その結果、微細かつ均一なフィブリル構造を形成しフィブリル本数増加に伴う高強度化と、開口の均一性向上に伴う孔数増加が可能となり、従来トレードオフの関係にあった安全性と出力特性の両立が可能となる。加えて、良好な成形加工性も得られる。また、ポリオレフィン樹脂の割合が増加することで、延伸倍率増加や洗浄乾燥工程における「孔のつぶれ」を抑制し、良好な空孔率が得られる。
用いる原料により粘度が異なるため、用いる原料により使用割合も異なるものの、Mwが100万以上のポリオレフィン樹脂を用いる場合、製膜工程の圧力や延伸応力の観点からポリオレフィン樹脂の割合は、ポリオレフィン樹脂と可塑剤との合計を100質量%として、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下がさらに好ましい。
その他、本発明のポリオレフィン微多孔膜には、本発明の効果を損なわない範囲において、酸化防止剤、熱安定剤や帯電防止剤、紫外線吸収剤、さらにはブロッキング防止剤や充填材等の各種添加剤を含有させてもよい。特に、ポリオレフィン樹脂の熱履歴による酸化劣化を抑制する目的で、酸化防止剤
を添加することが好ましい。
を添加することが好ましい。
酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT:分子量220.4)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(例えば、BASF社製“Irganox”(登録商標)1330:分子量775.2)、テトラキス[メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(例えば、BASF社製“Irganox”(登録商標)1010:分子量1177.7)等から選ばれる1種類以上を用いることが好ましい。
酸化防止剤や熱安定剤の種類及び添加量を適宜選択することはポリオレフィン微多孔膜の特性の調整又は増強として重要である。
本発明のポリオレフィン微多孔膜の層構成は単層でも積層でもよく、物性バランスの観点から積層が好ましい。原料及び原料比率、原料組成は上述の範囲とすればよい。上記原料処方を積層し高出力特性層として用いる場合、高出力特性層がトータル膜厚中に50質量%以上含有していることが好ましい。
[2]ポリオレフィン微多孔膜
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、単位面積当たりの表面孔数をZ(個/μm2)とし、膜厚10μm換算突刺強度をY(N)とした際のZとYが、下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする。
[2]ポリオレフィン微多孔膜
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、単位面積当たりの表面孔数をZ(個/μm2)とし、膜厚10μm換算突刺強度をY(N)とした際のZとYが、下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする。
Y(N)≧−0.06×Z(個/μm2)+9.4・・・式(1)
微多孔膜をリチウムイオン二次電池のセパレータとして用いた場合、充放電過程においてセパレータの膜抵抗が高いとLi+イオンの移動が制限され不均一反応が起こる。その結果、孔の目詰まりが起こり、出力特性が低下する。この膜抵抗を低下させるには、セパレータ表面の孔数(単位面積当たりの表面孔数)を上げることが好ましい。
微多孔膜をリチウムイオン二次電池のセパレータとして用いた場合、充放電過程においてセパレータの膜抵抗が高いとLi+イオンの移動が制限され不均一反応が起こる。その結果、孔の目詰まりが起こり、出力特性が低下する。この膜抵抗を低下させるには、セパレータ表面の孔数(単位面積当たりの表面孔数)を上げることが好ましい。
本発明者らは、以下のようにして、上記式(1)の関係を導き出した。
まず、膜厚10μm換算の突刺強度(N)をy軸、単位面積当たりの表面孔数(個/μm2)をx軸とし、後述の実施例及び比較例についてプロットした。そして、出力特性と安全性が両立しているポリオレフィン微多孔膜のプロットと、そうでないポリオレフィン微多孔膜のプロットとでは、存在範囲が異なることを見出した。
そして、当該存在範囲を分ける境界線は直線であることを見出し、当該直線を検討したところ、上記式(1)の関係が成立することが、重要であることを発見した。
通常、単位体積当たりの孔数や表面孔数は空孔率と相関があり、従来技術では、樹脂濃度を低下させ
空孔率を増加する方法などがとられている。しかし、空孔率の増加は単位体積当たりの樹脂量が低下につながるため強度が低下する。また、高強度化の手法として、樹脂濃度の増加や延伸倍率の増加、高分子量の原料を用いるといった手法が通常とられる。しかし樹脂濃度の増加は上述したように空孔率の低下につながり良好な孔数が得られない。また延伸倍率の増加は、フィルムが高度に配向した結果、製膜過程において破れが多発し生産性が低下するとともに、ボーイング等の影響により延伸の不均一性が起こり膜の均一性が損なわれるため、良好な開口性が得られず孔数や表面孔数が得られにくい。高分子量の原料を用いる手法は、一般に分子量の増加に伴い粘度が増加するため吐出安定性が得られにくい。そのため溶剤に溶解させ、樹脂濃度を低下し製膜する手法や分子量の低い原料と混合し製膜する手法がとられる。しかし、これらの手法は結晶構造の均一なゲルシートが得られにくく、不均一な状態での延伸となることが顕著になる。良好な開口性が得られず孔数や表面孔数が得られにくい。これに対し、本発明のポリオレフィン微多孔膜は、原料の分子量や樹脂濃度を上記範囲とし、分子鎖の絡み合い数を増加し、樹脂層に一様に応力を付加し延伸することで、延伸工程における応力伝搬が均一化し開口性が向上し均一かつ微細な孔構造が形成される。これにより、SEM観察により測定される表面孔数が増加するととともに(以下表面孔数は1μm2あたりの孔数とを表す)、単位面積当たりのフィブリル本数が増加するため、良好なイオン透過性と強度の両立が可能となる。従来トレードオフの関係にあった表面孔数と突刺強度の関係が改善されることを見出した。
空孔率を増加する方法などがとられている。しかし、空孔率の増加は単位体積当たりの樹脂量が低下につながるため強度が低下する。また、高強度化の手法として、樹脂濃度の増加や延伸倍率の増加、高分子量の原料を用いるといった手法が通常とられる。しかし樹脂濃度の増加は上述したように空孔率の低下につながり良好な孔数が得られない。また延伸倍率の増加は、フィルムが高度に配向した結果、製膜過程において破れが多発し生産性が低下するとともに、ボーイング等の影響により延伸の不均一性が起こり膜の均一性が損なわれるため、良好な開口性が得られず孔数や表面孔数が得られにくい。高分子量の原料を用いる手法は、一般に分子量の増加に伴い粘度が増加するため吐出安定性が得られにくい。そのため溶剤に溶解させ、樹脂濃度を低下し製膜する手法や分子量の低い原料と混合し製膜する手法がとられる。しかし、これらの手法は結晶構造の均一なゲルシートが得られにくく、不均一な状態での延伸となることが顕著になる。良好な開口性が得られず孔数や表面孔数が得られにくい。これに対し、本発明のポリオレフィン微多孔膜は、原料の分子量や樹脂濃度を上記範囲とし、分子鎖の絡み合い数を増加し、樹脂層に一様に応力を付加し延伸することで、延伸工程における応力伝搬が均一化し開口性が向上し均一かつ微細な孔構造が形成される。これにより、SEM観察により測定される表面孔数が増加するととともに(以下表面孔数は1μm2あたりの孔数とを表す)、単位面積当たりのフィブリル本数が増加するため、良好なイオン透過性と強度の両立が可能となる。従来トレードオフの関係にあった表面孔数と突刺強度の関係が改善されることを見出した。
その結果、上記式(1)の関係が満たされると、電池の安全性と出力特性の両立が可能となる。
微多孔膜の表面孔数はSEM(走査型電子顕微鏡)観察により測定できるが、その表面孔数は40個/μm2以上が好ましく、60個/μm2以上がより好ましく、80個/μm2以上がさらに好ましく、90個/μm2以上が最も好ましく、100個/μm2以上が著しく好ましい。
SEMで観察される表面孔数が多過ぎると微多孔膜における空隙部が増加し、微多孔膜の機械強度が低下する傾向にある。そのため表面孔数は135個/μm2以下が好ましく、120個/μm2以下がより好ましい。
また、電池の出力特性を改善するためにはポリオレフィン微多孔膜の空孔率を増加する必要がある。しかし、空孔率を増加した場合、ポリオレフィン微多孔膜中の樹脂量が減少するため膜の強度が低下し電池の安全性が低下する。そのため、電池の出力特性と安全性はトレードオフの関係にあり、出力特性と安全性の両立に課題があった。
空孔率を増加する手法としては、混練からシート化工程における可塑剤の割合を増加する手法、または、乾式再延伸工程における延伸倍率を増加する手法が挙げられる。可塑剤の割合を増加した場合(樹脂濃度が低下する)、シート中の可塑剤層が多くポリオレフィン樹脂層に延伸応力がかからず、開口の均一性が低下する。
また、上述したように、空孔率増加によって樹脂量が少なくなり、膜のコシが減少するため、延伸倍率増加や洗浄乾燥工程における「孔のつぶれ」が起こる。乾式再延伸工程における延伸倍率の増加が起こると、ポリオレフィン微多孔膜中にボイドができやすく膜の均一性が得られにくくなる。
Mwが100万以上のポリオレフィン樹脂を用いることで粘度が増加する。従来の処方は、Mw100万以上のポリオレフィン樹脂を用いた場合は、粘度が高く樹脂を均一に混練することが困難なため、Mw100万以上のポリオレフィン樹脂の割合が低く、低分子量のポリオレフィン樹脂を主体とすることが多かった。さらに均一な開口性に着目していないため、開口性が良くなく、出力特性と安全性の両立はできていなかった。本発明では、均一な開口性に着目し、Mw100万以上のポリオレフィン樹脂を用いると比較的低い樹脂濃度においても良好な製膜性が得られ、良好な空孔率が得られることを見いだした。これは、Mwが100万以上のポリオレフィン樹脂は長い分子鎖を有するため絡み合い数が増加し、延伸工程において樹脂層に掛る応力が伝搬しやすく開口性が向上するためであり、従来のポリオレフィン微多孔膜に比べポリオレフィン微多孔膜中の孔数、表面の開口率、及び単位面積当たりの表面孔数のうちの少なくとも一つが増加し、イオンの透過経路が増加する。
さらに、分子鎖長の増加に伴いタイ分子数が増加するため、ポリオレフィン微多孔膜中の強度が増加することを見出し、これまでトレードオフの関係にあった出力特性と安全性の両立が可能であることを見出した。
本発明のポリオレフィン微多孔膜の空孔率は、透過性能及び電解液含有量の観点から、好ましくは40%以上であり、より好ましくは41%以上であり、さらに好ましくは42%以上である。空孔率が40%以上であると透過性、強度及び電界液含有量のバランスが良くなり、電池反応の不均一性が解消される。その結果、デンドライトの発生が抑制され従来の電池性能を損ねることなく使用でき、二次電池用セパレータとして好適に用いることができる。
また、空孔率を増加することで良好な出力特性が得られるが、突刺強度が低下する。そのため空孔率は好ましくは60%未満であり、58%以下がより好ましく、55%以下がさらに好ましい。
電極活物質等による破膜防止の観点から、膜厚を10μmに換算したポリオレフィン微多孔膜の突刺強度は、3.0N以上が好ましく、3.2N以上がより好ましく、3.5N以上が更に好ましく、3.8N以上がより更に好ましく、4.0N以上が最も好ましい。
突刺強度が3.0N以上であると、電池内の異物等による短絡を抑制し、良好な電池の安全性が得られる。安全性向上の観点からは突刺強度は高いほど好ましく、突刺強度を増加するために樹脂濃度の増加または延伸倍率の増加といった手法がとられる。
しかし、樹脂濃度の増加は空孔率の低下を意味し、出力特性が低下する。また、延伸倍率の増加は膜厚方向にポリオレフィン微多孔膜が潰れるため「孔のつぶれ」や、ボイド(欠点)が形成されるため電池反応の均一性が低下し出力特性が悪化する。
突刺強度を上記範囲とするには、ポリオレフィン微多孔膜の原料組成を上述した範囲とし、また、ポリオレフィン微多孔膜製膜時の延伸条件を後述する範囲内とすることが好ましい。
膜厚を10μmと換算したときの突刺強度とは、膜厚T1(μm)のポリオレフィン微多孔膜において突刺強度がL1であったとき、式:L2=(L1×10)/T1によって算出される突刺強度L2のことを指す。なお、以下では、膜厚について特に記載がない限り、「突刺強度」という語句を「膜厚を10μmと換算したときの突刺強度」の意味で用いる。本発明のポリオレフィン微多孔膜を用いることにより、ピンホールや亀裂の発生を防止し、電池組み立て時の歩留まりを向上させる事が可能になる。
充放電過程において電池内部で電解液が電気化学的に分解し、有機物等の固体生成物やエチレン、水素といったガスが生成する。これらの生成物がポリオレフィン微多孔膜中の孔を閉塞するため電池特性が悪化する。また、イオンの透過経路に偏りが生じることで、分解反応が進行しやすくなるため、イオンの透過経路は多いほど好ましい。
そのため、後述する実施例で求められる単位体積あたりの孔数は40個/μm3以上が好ましく、50個/μm3以上がより好ましく、60個/μm3以上がさらに好ましく、70個/μm3以上がよりさらに好ましく、80個/μm3以上がよりもっと好ましく、100個/μm3以上が特に好ましく、120個/μm3以上が最も好ましい。
単位体積当たりの孔数や表面孔数は空孔率と相関があり、単位体積当たりの孔数や表面孔数の増加にともない強度が低下するが、本発明のポリオレフィン微多孔膜においては、例えばMwが1.0×106以上の大きな分子量のポリオレフィン樹脂を用いることで、分子鎖の絡み合い数が増加し、延伸工程における応力伝搬が均一化し開口性が向上しており、従来のポリオレフィン微多孔膜と同等の空孔率を維持したまま単位体積当たりの孔数や表面孔数が増加している。
また、本発明のポリオレフィン微多孔膜は、大きな分子量のポリオレフィン樹脂を用いタイ分子数が増加することで、優れた突刺強度を有しており、従来トレードオフの関係にあった出力特性と安全性を両立している点で優れている。
上述したように、突刺強度は電池の安全性の観点から高ければ高いほど好ましい。しかし、突刺強度は単位体積当たりの樹脂量に依存するため、突刺強度の増加は空孔率の低下につながる。そのため、突刺強度と出力特性はトレードオフの関係にある。上述の式(1)の関係が満たされることで、従来トレードオフの関係にあった安全性と出力特性を改善できる。
本発明においては、ポリオレフィン微多孔膜の製膜する方向に平行な方向を製膜方向、長手方向あるいはMD方向と称し、ポリオレフィン微多孔膜面内で製膜方向に直交する方向を幅方向あるいはTD方向と称する。
電池ではMD方向にテンションがかかっているため、MD方向のTMA(熱機械分析)で求めた収縮率は低い方が好ましい。TMAで測定される120℃のMD方向の熱収縮率は、15%以下であることが好ましく、12%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましく、8%以下であることが最も好ましい。
電池ではMD方向にテンションがかかっているため、MD方向のTMA(熱機械分析)で求めた収縮率は低い方が好ましい。TMAで測定される120℃のMD方向の熱収縮率は、15%以下であることが好ましく、12%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましく、8%以下であることが最も好ましい。
また、TMAで測定される120℃のTD方向の熱収縮率は、15%以下であることが好ましく、12%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましく、7%以下であることがもっとも好ましい。
熱収縮率が上記範囲内であると、局所的に異常発熱した場合にも、内部短絡の拡大を防止して影響を最小限に抑えることができる。熱収縮率は開口率や単位体積当たりの孔数、表面孔数、突刺強度とトレードオフの関係にあるが、本発明のポリオレフィン微多孔膜は開口率や単位体積あたりの孔数、表面孔数、突刺強度を改善するための処方として、上述のとおり、分子鎖の絡み合いに着目し、延伸工程における応力伝搬を均一化することで達成しているため、ポリオレフィン樹脂に掛る応力が均等である。そのため、ひずみが残りにくく、低い熱収縮率を達成し、優れた熱収縮率と強度バランスを有している。
MD方向及びTD方向の引張破断強度(以下、単に「MD強度」「TD強度」とも記す。)は、いずれも180MPa以上が好ましく、190MPa以上がより好ましく、200MPa以上がさらに好ましく、210MPa以上がよりさらに好ましく、250MPa以上がもっと好ましく、260MPa以上がもっとさらに好ましく、270MPa以上が最も好ましい。
MD強度及びTD強度が180MPa未満であると、電池内の異物等による短絡が生じやすくなり、電池の安全性が低下する場合がある。
安全性向上の観点からは引張破断強度は高いほど好ましいが、空孔率や開口率、単位体積当たりの孔数や表面孔数と引張破断強度の向上はトレードオフとなる場合が多く、MD強度及びTD強度は、いずれも350MPa以下が好ましく、300MPa以下がより好ましい。MD強度及びTD強度を上記範囲とするには、ポリオレフィン微多孔膜の原料組成を上述した範囲とし、また、ポリオレフィン微多孔膜製膜時の延伸条件を後述する範囲内とすることが好ましい。
なお、本発明においては、ポリオレフィン微多孔膜の製膜する方向に平行な方向を製膜方向、長手方向あるいはMD方向と称し、ポリオレフィン微多孔膜面内で製膜方向に直交する方向を幅方向あるいはTD方向と称する。
引張破断強度及び引張破断伸度から求める耐衝撃性の尺度であるタフネスは、MD方向及びTD方向の引張破断強度及び引張破断伸度それぞれを用いて下記計算式より算出する。
引張破断強度及び引張破断伸度から求める耐衝撃性の尺度であるタフネスは、MD方向及びTD方向の引張破断強度及び引張破断伸度それぞれを用いて下記計算式より算出する。
タフネス(MPa×%)=MD引張破断強度×MD引張破断伸度+TD引張破断強度×TD引張破断伸度
耐衝撃性の尺度であるタフネスは、耐衝撃性の観点から20000(MPa×%)以上が好ましく、より好ましくは25000(MPa×%)以上、更に好ましくは30000(MPa×%)以上、最も好ましくは35000(MPa×%)以上、特に好ましくは40000(MPa×%)以上である。他の物性、例えばイオン透過性が悪化することから、タフネスの上限は500000(MPa×%)以下が好ましく、より好ましくは400000(MPa×%)以下、更に好ましくは300000(MPa×%)以下、最も好ましくは200000(MPa×%)以下である。
耐衝撃性の尺度であるタフネスは、耐衝撃性の観点から20000(MPa×%)以上が好ましく、より好ましくは25000(MPa×%)以上、更に好ましくは30000(MPa×%)以上、最も好ましくは35000(MPa×%)以上、特に好ましくは40000(MPa×%)以上である。他の物性、例えばイオン透過性が悪化することから、タフネスの上限は500000(MPa×%)以下が好ましく、より好ましくは400000(MPa×%)以下、更に好ましくは300000(MPa×%)以下、最も好ましくは200000(MPa×%)以下である。
引張破断強度及び引張破断伸度から求める耐衝撃性の尺度であるタフネスは、MD方向及びTD方向の引張破断強度及び引張破断伸度それぞれを用いて下記計算式より算出する。
タフネス(MPa×%)=MD引張破断強度×MD引張破断伸度+TD引張破断強度×TD引張破断伸度
ポロメータで測定される平均孔径はイオン透過性の観点から10nm以上が好ましい。平均孔径が10nm以上であると良好な開口率及び単位体積当たりの孔数や表面孔数が得られ、優れた電池特性が得られる。また、電池特性の観点から好ましい空孔率が決まっているため、イオンの透過経路を増加には微細かつ均一な孔が有効である。
ポロメータで測定される平均孔径はイオン透過性の観点から10nm以上が好ましい。平均孔径が10nm以上であると良好な開口率及び単位体積当たりの孔数や表面孔数が得られ、優れた電池特性が得られる。また、電池特性の観点から好ましい空孔率が決まっているため、イオンの透過経路を増加には微細かつ均一な孔が有効である。
平均孔径が増加するとイオンの透過経路が低下するため、平均孔径は40nm未満が好ましく、35nm未満がより好ましく、30nm未満がさらに好ましく、28nm未満がよりさらに好ましく、25nm未満が最も好ましい。
実施例に記載の方法で撮影されるSEM画像から求められる表面孔径は突刺強度とイオン透過性の観点から20nm以上70nm以下が好ましく、より好ましくは20nm以上60nm以下、さらに好ましくは20nm以上50nm以下である。表面孔径が上記範囲内であると、単位体積当たりの孔数や表面孔数が上記範囲を取りやすく、良好な安全性と出力特性が得られる。
実施例に記載の方法で撮影されるSEM画像から求められる表面孔径は突刺強度とイオン透過性の観点から20nm以上70nm以下が好ましく、より好ましくは20nm以上60nm以下、さらに好ましくは20nm以上50nm以下である。表面孔径が上記範囲内であると、単位体積当たりの孔数や表面孔数が上記範囲を取りやすく、良好な安全性と出力特性が得られる。
本発明のポリオレフィン微多孔膜において、透気度はJIS P 8117(2009)に準拠して測定した値をいう。本明細書では膜厚について特に記載がない限り、「透気度」という語句を「膜厚を10μmとしたときの透気度」の意味で用いる。膜厚T1(μm)のポリオレフィン微多孔膜において測定した透気度がP1であったとき、式:P2=(P1×10)/T1によって算出される透気度P2を、膜厚を10μmとしたときの透気度とする。
透気度(ガーレー値)は1000sec/100cm3以下であることが好ましく、700sec/100cm3以下であることがより好ましく、500sec/100cm3以下であることが更に好ましく、350sec/100cm3以下であること最も好ましい。透気度が1000sec/100cm3以下であると良好なイオン透過性が得られ、電気抵抗を低下させることができる。
[3]ポリオレフィン微多孔膜の製造方法
次に、本発明のポリオレフィン微多孔膜の製造方法を具体的に説明する。本発明の製造方法は、以下の(a)〜(e)の工程を有することが好ましい。
次に、本発明のポリオレフィン微多孔膜の製造方法を具体的に説明する。本発明の製造方法は、以下の(a)〜(e)の工程を有することが好ましい。
(a)1種又は2種以上のポリオレフィン樹脂と、必要に応じて溶媒とを含むポリマー材料を溶融混練し、ポリオレフィン樹脂溶液を調製する工程
(b)溶解物を押出し、シート状に成型して冷却固化する工程
(c)得られたシートをロール方式またはテンター方式により延伸を行う工程
(d)その後、得られた延伸フィルムから可塑剤を抽出しフィルムを乾燥する工程
(e)熱処理/再延伸を行う工程
以下、各工程について説明する。
(b)溶解物を押出し、シート状に成型して冷却固化する工程
(c)得られたシートをロール方式またはテンター方式により延伸を行う工程
(d)その後、得られた延伸フィルムから可塑剤を抽出しフィルムを乾燥する工程
(e)熱処理/再延伸を行う工程
以下、各工程について説明する。
(a)ポリオレフィン樹脂溶液の調製工程
上記ポリマー材料を、可塑剤に加熱溶解させ、ポリオレフィン樹脂溶液を調製する。
上記ポリマー材料を、可塑剤に加熱溶解させ、ポリオレフィン樹脂溶液を調製する。
可塑剤としては、ポリオレフィン樹脂を十分に溶解できる溶媒であれば特に限定されないが、比較的高倍率の延伸を可能とするために、溶媒は室温で液体であることが好ましい。
当該溶液における、重量平均分子量100万以上の超高分子量ポリエチレンの含有割合は、溶媒とポリオレフィン樹脂の合計を100質量%としたとき、5〜30質量%であり、9〜30質量%が好ましく、16〜30質量%がより好ましく、17〜30質量%がより好ましく、19〜30質量%が特に好ましい。また、当該溶液における、ポリオレフィン樹脂の含有割合は、溶媒とポリオレフィン樹脂の合計を100質量%としたとき、30質量%未満であり、10〜29質量%が好ましく、15〜29質量%がより好ましく、17〜29質量%がさらに好ましい。
溶媒としては、ノナン、デカン、デカリン、パラキシレン、ウンデカン、ドデカン、流動パラフィン等の脂肪族、環式脂肪族又は芳香族の炭化水素、及び沸点がこれらに対応する鉱油留分、並びにジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の室温では液状のフタル酸エステルが挙げられる。
液体溶媒の含有量が安定なゲル状シートを得るために、流動パラフィンのような不揮発性の液体溶媒を用いるのが好ましい。
溶融混練状態では、ポリオレフィン樹脂と混和するが室温では固体の溶媒を液体溶媒に混合してもよい。このような固体溶媒として、ステアリルアルコール、セリルアルコール、パラフィンワックス等が挙げられる。ただし、固体溶媒のみを使用すると、延伸ムラ等が発生する恐れがある。
液体溶媒の粘度は40℃において20〜200cStであることが好ましい。40℃における粘度を20cSt以上とすれば、ダイからポリオレフィン樹脂溶液を押し出したシートが不均一になりにくい。一方、40℃における粘度を200cSt以下とすれば液体溶媒の除去が容易である。なお、液体溶媒の粘度は、ウベローデ粘度計を用いて40℃で測定した粘度である。
(b)押出物の形成及びゲル状シートの形成
ポリオレフィン樹脂溶液の均一な溶融混練方法は、特に限定されないが、高濃度のポリオレフィン樹脂溶液を調製したい場合、当該溶液をダイより押出す(例えば、二軸押出機を用いる)方法が好ましい。必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で酸化防止剤等の各種添加材を添加してもよい。特にポリオレフィン樹脂の酸化を防止するために酸化防止剤を添加することが好ましい。
ポリオレフィン樹脂溶液の均一な溶融混練方法は、特に限定されないが、高濃度のポリオレフィン樹脂溶液を調製したい場合、当該溶液をダイより押出す(例えば、二軸押出機を用いる)方法が好ましい。必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で酸化防止剤等の各種添加材を添加してもよい。特にポリオレフィン樹脂の酸化を防止するために酸化防止剤を添加することが好ましい。
押出機中では、ポリオレフィン樹脂が完全に溶融する温度で、ポリオレフィン樹脂溶液を均一に混合する。溶融混練温度は、使用するポリオレフィン樹脂によってことなるが、(ポリオレフィン樹脂の融点+10℃)〜(ポリオレフィン樹脂の融点+120℃)とするのが好ましい。さらに好ましくは(ポリオレフィン樹脂の融点+20℃)〜(ポリオレフィン樹脂の融点+100℃)である。
ここで、融点とは、JIS K7121(1987)に基づき、DSC(Differential scanning calorimetry)により測定した値をいう(以下、同じ)。例えば、ポリエチレンの場合の溶融混練温度は140〜250℃の範囲が好ましく、さらに好ましくは160〜230℃、最も好ましくは170〜200℃である。具体的には、ポリエチレン組成物は約130〜140℃の融点を有するので、溶融混練温度は140〜250℃が好ましく、180〜230℃が最も好ましい。
ポリオレフィン樹脂の劣化を抑制する観点から溶融混練温度は低い方が好ましいが、溶融混練温度が上述の温度よりも低いとダイから押出された押出物に未溶融物が発生し、後の延伸工程で破膜等を引き起こす原因となる場合がある。また、溶融混練温度が上述の温度より高いと、ポリオレフィン樹脂の熱分解が激しくなり、得られるポリオレフィン微多孔膜の物性、例えば、強度や空孔率等が悪化する場合がある。また、分解物がチルロールや延伸工程上のロール等に析出し、シートに付着することで外観悪化につながる。そのため、溶融混練温度は上記範囲内で混練することが好ましい。
次に、得られた押出物を冷却することによりゲル状シートが得られ、冷却により、溶媒によって分離されたポリオレフィン樹脂のミクロ相を固定化することができる。冷却工程においてゲル状シートを10〜50℃まで冷却するのが好ましい。これは、最終冷却温度を結晶化終了温度以下とするのが好ましいためで、高次構造を細かくすることで、その後の延伸において均一延伸が行いやすくなる。そのため、冷却は少なくともゲル化温度以下までは30℃/分以上の速度で行うのが好ましい。
一般に冷却速度が遅いと、比較的大きな結晶が形成されるため、ゲル状シートの高次構造が粗くなり、それを形成するゲル構造も大きなものとなる。対して冷却速度が速いと、比較的小さな結晶が形成されるため、ゲル状シートの高次構造が密となり、均一延伸に加え、フィルムの高タフネス化につながる。
冷却方法としては、冷風、冷却水、その他の冷却媒体に得られた押出物を直接接触させる方法、冷媒で冷却したロールに得られた押出物を接触させる方法、キャスティングドラム等を用いる方法等がある。
これまでポリオレフィン微多孔膜が単層の場合を説明してきたが、本発明のポリオレフィン微多孔膜は、単層に限定されるものではなく、積層体にしてもよい。積層数は特に限定は無く、2層積層であっても3層以上の積層であってもよい。積層部分は、上述したようにポリオレフィン樹脂の他に、本発明の効果を損なわない程度にそれぞれ所望の樹脂を含んでもよい。
ポリオレフィン微多孔膜を積層体とする方法としては、従来の方法を用いることができる。例えば、所望の樹脂を必要に応じて調製し、これらの樹脂を別々に押出機に供給して所望の温度で溶融させ、ポリマー管あるいはダイ内で合流させて、目的とするそれぞれの積層厚みでスリット状ダイから押出しを行う等して、積層体を形成する方法がある。
(c)延伸工程
得られたゲル状(積層シートを含む。)シートを延伸し、延伸フィルムを得る。
得られたゲル状(積層シートを含む。)シートを延伸し、延伸フィルムを得る。
用いられる延伸方法としては、ロール延伸機によるMD一軸延伸、テンターによるTD一軸延伸、ロール延伸機とテンター、或いはテンターとテンターとの組み合わせによる逐次二軸延伸、同時二軸テンターによる同時二軸延伸等が挙げられる。
延伸倍率は、膜厚の均一性の観点より、ゲル状シートの厚さによって異なるが、いずれの方向でも7倍以上に延伸することが好ましい。
面積倍率は、40倍以上とし、好ましくは49倍以上、より好ましくは60倍以上、さらに好ましくは80倍以上、特に好ましくは100倍以上である。面積倍率が40倍未満では、延伸が不十分で膜の均一性が損なわれ易く、良好な単位体積当たりの孔数や表面孔数が得られない。面積倍率は150倍以下が好ましい。面積倍率が大きくなるとポリオレフィン微多孔膜の製造中に破れが多発しやすくなり、生産性が低下する。
延伸工程における延伸均一性向上の観点から延伸倍率と原料構成の好ましい形態はMwが100万以上の原料を8×8倍以上に湿式で延伸することであり、より好ましくは10×10倍以上に湿式で延伸することである。さらに好ましい形態はMwが200万以上の原料を8×8倍以上に湿式で延伸することであり、最も好ましくは10×10倍以上に湿式で延伸することである。上記条件とすることで、従来の低分子量のポリオレフィン樹脂を高倍率延伸した場合とは異なり、分子鎖同士の絡み合いが強い状態で、分子鎖の長いMw100万以上のポリオレフィン樹脂を、高倍率にまで延伸するため、均一に延伸応力が伝搬した緻密な構造を有するポリオレフィン微多孔膜を得ることができる。その結果、高い安全性と優れた出力特性を両立させることで可能となる。
延伸温度は、(ゲル状シートの結晶分散温度Tcd)〜(ゲル状シートの融点+10℃)とし、(ゲル状シートの結晶分散温度Tcd)〜(ゲル状シートの融点+5℃)の範囲にするのが好ましい。具体的には、ポリエチレン組成物の場合は約90〜110℃の結晶分散温度を有するので、延伸温度は好ましくは90〜130℃であり、より好ましくは90〜120℃である。
結晶分散温度TcdはASTM D 4065(2012)に従って測定した動的粘弾性の温度特性から求める。
延伸温度が90℃未満であると低温延伸のため開口が不十分となり膜厚の均一性が得られにくく、空孔率も低くなる。延伸温度が130℃より高いと、シートの融解が起こり、孔の閉塞が起こりやすくなる。
以上のような延伸によりゲル状シートに形成された高次構造に開裂が起こり、結晶相が微細化し、多数のフィブリルが形成される。フィブリルは三次元的に不規則に連結した網目構造を形成する。延伸により機械的強度が向上するとともに、細孔形成されるため本発明のポリオレフィン微多孔膜が電池用セパレータに好適となる。
また、可塑剤を除去する前に延伸することにより、ポリオレフィン樹脂が十分に可塑化し軟化した状態となるために、高次構造の開裂がスムーズになり、結晶相の微細化を均一に行うことができる。また、可塑剤を除去する前に延伸することにより、開裂が容易になるために、延伸時のひずみが残りにくく、可塑剤を除去した後に延伸する場合に比べて熱収縮率を低くすることができる。
(d)可塑剤抽出(洗浄)・乾燥工程
次に、延伸フィルム中に残留する可塑剤(溶媒)を、洗浄溶媒を用いて除去する。ポリオレフィン樹脂相と溶媒相とは分離しているので、可塑剤(溶媒)の除去によりポリオレフィン微多孔膜が得られる。
次に、延伸フィルム中に残留する可塑剤(溶媒)を、洗浄溶媒を用いて除去する。ポリオレフィン樹脂相と溶媒相とは分離しているので、可塑剤(溶媒)の除去によりポリオレフィン微多孔膜が得られる。
洗浄溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の飽和炭化水素、塩化メチレン、四塩化炭素等の塩素化炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類、メチルエチルケトン等のケトン類、三フッ化エタン等の鎖状フルオロカーボン等が挙げられる。
これらの洗浄溶媒は低い表面張力(例えば、25℃で24mN/m以下)を有する。低い表面張力の洗浄溶媒を用いることにより、微多孔を形成する網状構造が洗浄後の乾燥時に気−液界面の表面張力により収縮が抑制され、空孔率及び透過性に優れたポリオレフィン微多孔膜が得られる。これらの洗浄溶媒は可塑剤に応じて適宜選択し、単独でまたは混合して用いる。
洗浄方法は、延伸フィルムを洗浄溶媒に浸漬し抽出する方法、延伸フィルムに洗浄溶媒をシャワーする方法、またはこれらの組み合わせによる方法等が挙げられる。洗浄溶媒の使用量は洗浄方法により異なるが、一般に延伸フィルム100質量部に対して300質量部以上であるのが好ましい。
洗浄温度は15〜30℃でよく、必要に応じて80℃以下に加熱する。この時、洗浄溶媒の洗浄効果を高める観点、得られるポリオレフィン微多孔膜の物性(例えば、TD方向及び/又はMD方向の物性)が不均一にならないようにする観点、ポリオレフィン微多孔膜の機械的物性及び電気的物性を向上させる観点から、延伸フィルムが洗浄溶媒に浸漬している時間は長ければ長いほど良い。
上述のような洗浄は、洗浄後の延伸フィルム、すなわちポリオレフィン微多孔膜中の残留溶媒が1質量%未満になるまで行うのが好ましい。
その後、乾燥工程で延伸フィルム中の溶媒を乾燥させ除去する。乾燥方法としては、特に限定は無く、金属加熱ロールを用いる方法や熱風を用いる方法等を選択することができる。乾燥温度は40〜100℃であることが好ましく、40〜80℃がより好ましい。乾燥が不十分であると、後の熱処理でポリオレフィン微多孔膜の空孔率が低下し、透過性が悪化する。
(e)熱処理/再延伸工程
乾燥した延伸フィルムに対して、熱処理及び再延伸(少なくとも一軸方向に延伸)の少なくとも一方を行う。
乾燥した延伸フィルムに対して、熱処理及び再延伸(少なくとも一軸方向に延伸)の少なくとも一方を行う。
熱処理は、例えば、ロールによるMD方向の熱処理、テンターによるTD方向の熱処理、ロールとテンター、或いはテンターとテンターとの組み合わせ等を用いて行うことができる。
熱処理の温度は、120〜140℃が好ましく、125〜135℃がより好ましい。
再延伸は、延伸フィルムを加熱しながら上述の延伸と同様にテンター法等により行うことができる。再延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよい。多段延伸の場合は、同時二軸または逐次延伸を組み合わせることにより行う。
再延伸の温度は、延伸フィルムの融点以下にすることが好ましく、(延伸フィルムのTcd−20℃)〜延伸フィルムの融点の範囲内にするのがより好ましい。具体的には、ポリエチレン組成物の場合、再延伸の温度は、70〜135℃が好ましく、110〜132℃がより好ましい。再延伸の温度は、最も好ましくは、120〜130℃である。
再延伸の倍率は、一軸延伸の場合、1.01〜2.0倍が好ましく、特にTD方向の倍率は1.1〜1.6倍が好ましく、1.2〜1.4倍がより好ましい。二軸延伸を行う場合、MD方向及びTD方向にそれぞれ1.01〜2.0倍延伸するのが好ましい。なお、再延伸の倍率は、MD方向とTD方向で異なってもよい。上述の範囲内で再延伸することで、空孔率及び透過性が上昇すると共に、ポリオレフィン微多孔膜の未開口部が減少し単位体積当たりの孔数や表面孔数が増加する。
熱収縮率及びしわやたるみの観点より、再延伸最大倍率からの緩和率は20%以下が好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下が更に好ましい。当該緩和率が20%以下であると、均一なフィブリル構造が得られる。
(f)その他の工程
さらに、その他用途に応じて、ポリオレフィン微多孔膜に親水化処理を施すこともできる。親水化処理は、モノマーグラフト、界面活性剤処理、コロナ放電等により行うことができる。モノマーグラフトは架橋処理後に行うのが好ましい。
さらに、その他用途に応じて、ポリオレフィン微多孔膜に親水化処理を施すこともできる。親水化処理は、モノマーグラフト、界面活性剤処理、コロナ放電等により行うことができる。モノマーグラフトは架橋処理後に行うのが好ましい。
ポリオレフィン微多孔膜に対して、α線、β線、γ線、電子線等の電離放射線の照射により架橋処理を施すのが好ましい。電子線の照射の場合、0.1〜100Mradの電子線量が好ましく、100〜300kVの加速電圧が好ましい。架橋処理によりポリオレフィン微多孔膜のメルトダウン温度が上昇する。
界面活性剤処理の場合、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤又は両イオン系界面活性剤のいずれも使用できるが、ノニオン系界面活性剤が好ましい。界面活性剤を水又はメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールに溶解してなる溶液中にポリオレフィン微多孔膜を浸漬するか、ポリオレフィン微多孔膜にドクターブレード法により溶液を塗布する。
本発明の多孔性ポリエチレンフィルムは、電池用セパレータとして用いた場合のメルトダウン特性や耐熱性を向上する目的で、ポリビニリデンフルオライド、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂多孔質体やポリイミド、ポリフェニレンスルフィド等の多孔質体等の表面コーティングやセラミック等の無機コーティング等を行ってもよい。
以上のようにして得られたポリオレフィン微多孔膜は、フィルター、燃料電池用セパレータ、コンデンサー用セパレータ等様々な用途で用いることができるが、特に電池用セパレータとして用いたとき安全性及び出力特性に優れる。よって、当該セパレータは、電気自動車等の高エネルギー密度化、高容量化、及び高出力化を必要とする二次電池用の電池用セパレータとして好ましく用いることができる。
本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明の実施態様は、これらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例で用いた評価方法、分析方法は、以下のとおりである。
(1)重量平均分子量(Mw)
超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン重量平均分子量は以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた。
超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン重量平均分子量は以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた。
・測定装置:WATERS CORPORATION製GPC−150C
・カラム:昭和電工株式会社製SHODEX UT806M
・カラム温度:135℃
・溶媒(移動相):O−ジクロルベンゼン
・溶媒流速:1.0mL/分
・試料濃度:0.1wt%(溶解条件:135℃/1H)
・インジェクション量:500μL
・検出器:WATERS CORPORATION製ディファレンシャルリフラクトメーター(RI検出器)
・検量線:単分散ポリスチレン標準試料を用いて得られた検量線から、所定の換算定数を用いて作成した。
・カラム:昭和電工株式会社製SHODEX UT806M
・カラム温度:135℃
・溶媒(移動相):O−ジクロルベンゼン
・溶媒流速:1.0mL/分
・試料濃度:0.1wt%(溶解条件:135℃/1H)
・インジェクション量:500μL
・検出器:WATERS CORPORATION製ディファレンシャルリフラクトメーター(RI検出器)
・検量線:単分散ポリスチレン標準試料を用いて得られた検量線から、所定の換算定数を用いて作成した。
(2)膜厚
ポリオレフィン微多孔膜の95mm×95mmの範囲内における任意の無作為に抽出した箇所で5点の膜厚を接触厚み計(株式会社ミツトヨ製ライトマチック)により測定し、5点の膜厚の平均値を求めた。
ポリオレフィン微多孔膜の95mm×95mmの範囲内における任意の無作為に抽出した箇所で5点の膜厚を接触厚み計(株式会社ミツトヨ製ライトマチック)により測定し、5点の膜厚の平均値を求めた。
(3)透気度(sec/100cm3)
膜厚T1のポリオレフィン微多孔膜に対して透気度計(旭精工株式会社製、EGO−1T)で気体を100cm3透過させるために必要な時間である透気度P1を測定し、式:P2=(P1×10)/T1により、膜厚を10μmとしたときの透気度P2を算出した。
膜厚T1のポリオレフィン微多孔膜に対して透気度計(旭精工株式会社製、EGO−1T)で気体を100cm3透過させるために必要な時間である透気度P1を測定し、式:P2=(P1×10)/T1により、膜厚を10μmとしたときの透気度P2を算出した。
なお、上記気体は空気を用いた。
(4)空孔率
5cm角の試料をポリオレフィン微多孔膜から切り取り、その体積(cm3)と質量(g)を求め、それらとポリマー密度(g/cm3)より、次式を用いて計算した。以上の測定を同じポリオレフィン微多孔膜中の異なる任意の無作為に抽出した箇所で3点行い、3点の空孔率の平均値を求めた。
5cm角の試料をポリオレフィン微多孔膜から切り取り、その体積(cm3)と質量(g)を求め、それらとポリマー密度(g/cm3)より、次式を用いて計算した。以上の測定を同じポリオレフィン微多孔膜中の異なる任意の無作為に抽出した箇所で3点行い、3点の空孔率の平均値を求めた。
空孔率=[(体積−質量/ポリマー密度)/体積]×100
(5)膜厚10μm換算突刺強度
MARUBISHI社製の突刺計を用い、先端が球面(曲率半径R:0.5mm)の直径1mmの針で、膜厚T1(μm)、ポリオレフィン微多孔膜を2mm/秒の速度で突刺したときの最大荷重を測定し、突刺強度とした。
(5)膜厚10μm換算突刺強度
MARUBISHI社製の突刺計を用い、先端が球面(曲率半径R:0.5mm)の直径1mmの針で、膜厚T1(μm)、ポリオレフィン微多孔膜を2mm/秒の速度で突刺したときの最大荷重を測定し、突刺強度とした。
最大荷重の測定値L1(N)を、式:L2=L1/T1×10により、膜厚を10μmとしたときの最大荷重L2に換算し、膜厚10μm換算突刺強度とした。以上の測定を同じポリオレフィン微多孔膜中の異なる任意の無作為に抽出した箇所で3点行い、3点の突刺強度及び膜厚10μm換算突刺強度の平均値を求めた。
(6)引張破断強度(MPa)、引張破断伸度(%)
幅10mmの短冊状試験片をポリオレフィン微多孔膜の幅方向の中心部分より3点取り、各々についてASTM D882(2012)により測定した測定結果の平均値を算出することによりMD方向及びTD方向それぞれの引張破断強度及び引張破断伸度を求めた。
幅10mmの短冊状試験片をポリオレフィン微多孔膜の幅方向の中心部分より3点取り、各々についてASTM D882(2012)により測定した測定結果の平均値を算出することによりMD方向及びTD方向それぞれの引張破断強度及び引張破断伸度を求めた。
(7)タフネス(MPa×%)
(6)より求めた引張破断強度及び引張破断伸度を用いて下式に従い、タフネスを求めた。
(6)より求めた引張破断強度及び引張破断伸度を用いて下式に従い、タフネスを求めた。
タフネス(MPa×%)=MD引張破断強度×MD引張破断伸度+TD引張破断強度×TD引張破断伸度
(8)TMAでの120℃における熱収縮率(%)
熱機械的分析装置(セイコー電子工業株式会社製、TMA/SS6600)を用い、長さ10mm(MD方向)、幅3mm(TD方向)の試験片を、一定の荷重(2gf)でMD方向に引っ張りながら、5℃/minの速度で室温から昇温して、120℃におけるサンプル長を測定し、その収縮率をTMAでの120℃におけるMD収縮率とした。また、長さ10mm(TD方向)、幅3mm(MD方向)の試験片を、一定の荷重(2gf)でTD方向に引っ張りながら、同様に収縮率を測定し、TMAでの120℃におけるTD収縮率とした。
(8)TMAでの120℃における熱収縮率(%)
熱機械的分析装置(セイコー電子工業株式会社製、TMA/SS6600)を用い、長さ10mm(MD方向)、幅3mm(TD方向)の試験片を、一定の荷重(2gf)でMD方向に引っ張りながら、5℃/minの速度で室温から昇温して、120℃におけるサンプル長を測定し、その収縮率をTMAでの120℃におけるMD収縮率とした。また、長さ10mm(TD方向)、幅3mm(MD方向)の試験片を、一定の荷重(2gf)でTD方向に引っ張りながら、同様に収縮率を測定し、TMAでの120℃におけるTD収縮率とした。
(9)最大孔径(BP径)及び平均孔径
パームポロメータ(PMI社製、CFP−1500A)を用いて、Dry−up、Wet−upの順で、最大孔径及び平均孔径を測定した。Wet−up測定は表面張力が15.6dynes/cmのPMI社製Galwick(商品名)を用いた。Galwickで十分に浸したポリオレフィン微多孔膜に圧力をかけ、空気が貫通し始める圧力から換算される孔径を最大孔径とした。
パームポロメータ(PMI社製、CFP−1500A)を用いて、Dry−up、Wet−upの順で、最大孔径及び平均孔径を測定した。Wet−up測定は表面張力が15.6dynes/cmのPMI社製Galwick(商品名)を用いた。Galwickで十分に浸したポリオレフィン微多孔膜に圧力をかけ、空気が貫通し始める圧力から換算される孔径を最大孔径とした。
Dry−up測定で圧力、流量曲線の1/2の傾きを示す曲線と、Wet−up測定の曲線が交わる点の圧力から平均孔径を換算した。圧力と平均孔径の換算は下記の数式を用いた。
d=C・γ/P
(上記式中、「d(μm)」はポリオレフィン微多孔膜の平均孔径、「γ(mN/m)」は液体の表面張力、「P(Pa)」は圧力、「C」は定数とした。)
(10)表面開口率、表面孔数、表面孔径の算出
蒸着したポリオレフィン微多孔膜を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて加速電圧2kVで観察した。撮影したSEM画像を二値化処理することで空孔を抽出し、単位面積当たりの表面孔数、表面開口率及び表面孔径を算出した。
(上記式中、「d(μm)」はポリオレフィン微多孔膜の平均孔径、「γ(mN/m)」は液体の表面張力、「P(Pa)」は圧力、「C」は定数とした。)
(10)表面開口率、表面孔数、表面孔径の算出
蒸着したポリオレフィン微多孔膜を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて加速電圧2kVで観察した。撮影したSEM画像を二値化処理することで空孔を抽出し、単位面積当たりの表面孔数、表面開口率及び表面孔径を算出した。
二値化処理は加速電圧2kV、倍率10000倍、11.7μm×9.4μm(1280画素×1024画素)、8bit(256階調)グレースケールの画像を用いて実施した。画像処理方法としては、上記SEM画像に対して、3画素×3画素平均にてノイズ除去を行った後に、21画素×21画素平均した画像から−30階調をしきい値として動的二値化処理をすることで、暗部を抽出し、二値化処理を行った。
元のSEM画像全体のうちの全暗部が占める面積の割合を表面開口率(SEM)(%)とした。また、抽出された独立した暗部より1μm2あたりに存在する表面孔数を算出して、表面孔数(SEM)(個/μm2)とした。
さらに、独立した孔の各面積から、下式に基づき、平均を算出して表面孔径(SEM)(nm)とした。
表面孔径(SEM)=(孔の全面積/表面孔数/3.14)0.5×2
また、式(1)の右辺である「−0.06×表面孔数Z(個/μm2)+9.4」の値を求めた。
また、式(1)の右辺である「−0.06×表面孔数Z(個/μm2)+9.4」の値を求めた。
(11)単位体積あたりの孔数
単位体積当たりの孔数X(個/μm3)は、下記式(1a)で算出することができる。
単位体積当たりの孔数X(個/μm3)は、下記式(1a)で算出することができる。
孔数X(個/μm3)=4×(ε/100)/(π×d2×τa/L)・・・式(1a)
[ε:空孔率(%)、d:平均孔径(μm)、τa:式(1b)で算出した曲路率、L:膜厚(μm)]
曲路率τa={d×(ε/100)×v/(3L×Ps×Rgas)}0.5・・・式(1b)
[d:平均孔径(μm)、ε:空孔率(%)、v:空気の分子速度(=500m/sec)、L:膜厚(μm)、Ps:標準圧力(=101325Pa)、Rgas:式(1c)で算出した気体透過定数(m3/(m2・sec・Pa)]
Rgas=0.0001/{透気度(sec/100cm3)×(6.424×10−4)×(0.01276×Ps)}・・・式(1c)
[Ps:標準圧力(=101325Pa)]
(12)耐異物性評価
引張試験機(AUTOGRAPH)《SHIMAZU製AGS−X》、1.5Vキャパシタ及びデータロガーを用いて、負極/ポリオレフィン微多孔膜/500μm径のクロム球/アルミ箔の順にセットした簡易電池に0.3mm/minの条件でプレスし電池がショートするまでの変移量を測定した。高い変移量でもショートしないサンプルほど耐異物性が良好であり、変移量と耐異物性の関係は下記5段階で評価した。
A:変移量(mm)/セパレータ厚み(μm)が0.030以上であった。
B:変移量(mm)/セパレータ厚み(μm)が0.025以上0.030未満であった。
C:変移量(mm)/セパレータ厚み(μm)が0.020以上0.025未満であった。
D:変移量(mm)/セパレータ厚み(μm)が0.015以上0.020未満であった。
E:変移量(mm)/セパレータ厚み(μm)が0.015未満であった。
[ε:空孔率(%)、d:平均孔径(μm)、τa:式(1b)で算出した曲路率、L:膜厚(μm)]
曲路率τa={d×(ε/100)×v/(3L×Ps×Rgas)}0.5・・・式(1b)
[d:平均孔径(μm)、ε:空孔率(%)、v:空気の分子速度(=500m/sec)、L:膜厚(μm)、Ps:標準圧力(=101325Pa)、Rgas:式(1c)で算出した気体透過定数(m3/(m2・sec・Pa)]
Rgas=0.0001/{透気度(sec/100cm3)×(6.424×10−4)×(0.01276×Ps)}・・・式(1c)
[Ps:標準圧力(=101325Pa)]
(12)耐異物性評価
引張試験機(AUTOGRAPH)《SHIMAZU製AGS−X》、1.5Vキャパシタ及びデータロガーを用いて、負極/ポリオレフィン微多孔膜/500μm径のクロム球/アルミ箔の順にセットした簡易電池に0.3mm/minの条件でプレスし電池がショートするまでの変移量を測定した。高い変移量でもショートしないサンプルほど耐異物性が良好であり、変移量と耐異物性の関係は下記5段階で評価した。
A:変移量(mm)/セパレータ厚み(μm)が0.030以上であった。
B:変移量(mm)/セパレータ厚み(μm)が0.025以上0.030未満であった。
C:変移量(mm)/セパレータ厚み(μm)が0.020以上0.025未満であった。
D:変移量(mm)/セパレータ厚み(μm)が0.015以上0.020未満であった。
E:変移量(mm)/セパレータ厚み(μm)が0.015未満であった。
(13)17Cにおける容量維持率測定
ポリオレフィン微多孔膜のレート特性を評価するために、正極、負極、セパレータ及び電解質からなる非水電解液二次電池にポリオレフィン微多孔膜をセパレータとして組み込んで、充放電試験を行った。
ポリオレフィン微多孔膜のレート特性を評価するために、正極、負極、セパレータ及び電解質からなる非水電解液二次電池にポリオレフィン微多孔膜をセパレータとして組み込んで、充放電試験を行った。
幅38mm×長さ33mm×厚さ20μmのアルミニウム箔上に目付け9.5mg/cm2にてNMC532(リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物(Li1.05Ni0.50Mn0.29Co0.21O2))を積層したカソード、及び、幅40mm×長さ35mm×厚さ10μmの銅箔上に密度1.45g/cm3の天然黒鉛を単位面積質量5.5mg/cm2で積層したアノードを用いた。正極及び負極は120℃の真空オーブンで乾燥して使用した。
セパレータは、長さ50mm、幅50mmのポリオレフィン微多孔膜を室温の真空オーブンで乾燥して使用した。電解液はエチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートの混合物(30/35/35、体積比)中に、ビニレンカーボネート(VC)及びLiPF6を溶解させ、VC濃度:0.5質量%、LiPF6濃度:1mol/Lの溶液を調製した。
正極、セパレータ及び負極を積み重ね、得られた積層体をラミネートパウチ内に配置し、ラミネートパウチ内に電解液を注液し、当該ラミネートパウチを真空シールすることにより、非水電解液二次電池を作製した。
作製した非水電解液二次電池を初回充電として、温度35℃、0.1Cにて10〜15%充電し、35℃にて1晩(12時間以上)放置し、ガス抜きを実施した。次に、温度35℃、電圧範囲:2.75〜4.2V、充電電流値0.1CのCC−CV充電(終止電流条件0.02C)、放電電流値0.1CのCC放電を実施した。次に、温度35℃、電圧範囲:2.75〜4.2V、充電電流値0.2CのCC−CV充電(終止電流条件0.05C)、放電電流値0.2CのCC放電を3サイクル行った時点を非水電解液二次電池の初期とした。
次に、温度35℃、電圧範囲:2.75〜4.2V、充電電流値0.2CのCC−CV充電(終止電流条件0.05C)、放電電流値0.2CのCC放電をして、その時の放電容量を0.2C容量とした。次に、温度35℃、電圧範囲:2.75〜4.2V、充電電流値0.5CでCC−CV充電(終止電流条件0.05C)した後に、35℃で非水電解液二次電池の17C(306mA、24.48mA/cm2)におけるレート試験を行った。この結果より、0.2C容量に対する17C容量の割合{(17C容量/0.2C容量)×100}(%)を容量維持率(%)とした。
[実施例1]
原料としてMwが20×105の超高分子量ポリエチレンを用いた。超高分子量ポリエチレン10質量部に流動パラフィン90質量部を加え、さらに超高分子量ポリエチレンの質量を基準として0.5質量部の2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールと0.7質量部のテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]メタンを酸化防止剤として加えて混合し、ポリエチレン樹脂溶液を調製した。
原料としてMwが20×105の超高分子量ポリエチレンを用いた。超高分子量ポリエチレン10質量部に流動パラフィン90質量部を加え、さらに超高分子量ポリエチレンの質量を基準として0.5質量部の2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールと0.7質量部のテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]メタンを酸化防止剤として加えて混合し、ポリエチレン樹脂溶液を調製した。
得られたポリエチレン樹脂溶液を二軸押出機に投入し180℃で混練し、Tダイに供給し、押出物を15℃に制御された冷却ロールで冷却してゲル状シートを形成した。
得られたゲル状シートを、テンター延伸機により115℃で長手方向及び幅方向ともに8倍に同時二軸延伸し、そのままテンター延伸機内でシート幅を固定し、115℃の温度で10秒間保持した。
次いで延伸したゲル状シートを洗浄槽で塩化メチレン浴中に浸漬し、流動パラフィン除去後乾燥を行い、ポリオレフィン微多孔膜を得た。最後にテンター延伸機のオーブンとして長手方向に区切られた複数のゾーンからなるオーブンを使用し、延伸は行わず120℃の温度で10分間、熱固定を実施した。
ポリオレフィン微多孔膜の原料処方及び製膜条件を表1、ポリオレフィン微多孔膜の評価結果を表3に記載する。
[実施例2〜11、比較例1〜11]
原料処方及び製膜条件を表1、表2のとおりに変更した以外は実施例1と同様にして、ポリオレフィン微多孔膜を作製した。
原料処方及び製膜条件を表1、表2のとおりに変更した以外は実施例1と同様にして、ポリオレフィン微多孔膜を作製した。
なお、表1〜2中、「UHPE」は超高分子量ポリエチレンを意味し、「HDPE」は高密度ポリエチレンを意味する。
得られたポリオレフィン微多孔膜の評価結果は表3、表4に記載のとおりである。なお、表3及び表4中の空欄は未測定であることを意味する。
さらに出力特性を改善する方法として、表面孔数を増やすため、超高分子量ポリエチレンの含有比率を調整し、超高分子量ポリエチレン単独にしても、表面孔数は増加するものの著しい効果は見られず、出力特性と強度の両立はできなかった(比較例5、10)。
実施例1−6は分子量200万のUHPEを用い高倍率に延伸した結果、延伸の均一性が改善され高い孔数と強度バランスを達成し、良好な出力特性と耐異物性が得られている。また、実施例2、4、5は実施例1に比べ高延伸倍率または、樹脂濃度が増加を増加した結果、さらなる高強度化を達成し、優れた安全性が得られている。実施例7−8は分子量100万のUHPEを比較的高い樹脂濃度(17%)で10×10倍に高倍率に延伸にした結果、実施例4や比較例5、6に比べ高い孔数と強度バランスを有しており、優れた電池特性と安全性が得られている。この表面孔数と強度のバランスは、従来処方では得ることのできなかった領域であり、その結果、耐異物性も出力特性も良好であった。さらには、通常、高強度化とはトレードオフの関係にある熱収縮率やタフネス、透気度も悪化しておらず、従来処方では得ることができなかった物性バランスを有するポリオレフィン微多孔膜を得た。
実施例1−6は分子量200万のUHPEを用い高倍率に延伸した結果、延伸の均一性が改善され高い孔数と強度バランスを達成し、良好な出力特性と耐異物性が得られている。また、実施例2、4、5は実施例1に比べ高延伸倍率または、樹脂濃度が増加を増加した結果、さらなる高強度化を達成し、優れた安全性が得られている。実施例7−8は分子量100万のUHPEを比較的高い樹脂濃度(17%)で10×10倍に高倍率に延伸にした結果、実施例4や比較例5、6に比べ高い孔数と強度バランスを有しており、優れた電池特性と安全性が得られている。この表面孔数と強度のバランスは、従来処方では得ることのできなかった領域であり、その結果、耐異物性も出力特性も良好であった。さらには、通常、高強度化とはトレードオフの関係にある熱収縮率やタフネス、透気度も悪化しておらず、従来処方では得ることができなかった物性バランスを有するポリオレフィン微多孔膜を得た。
Claims (11)
- 膜厚10μm換算の突刺強度Y(N)と、単位面積当たりの表面孔数Z(個/μm2)が下記式(1)の関係を満たし、かつMD方向の引張破断強度及びTD方向の引張破断強度がともに180MPa以上であるポリオレフィン微多孔膜。
Y(N)≧−0.06×Z(個/μm2)+9.4・・・式(1) - 前記表面孔数が40個/μm2以上135個/μm2以下である、請求項1に記載のポリオレフィン微多孔膜。
- 平均孔径が40nm未満である、請求項1または2に記載のポリオレフィン微多孔膜。
- タフネスが35000(MPa×%)以上である、請求項1〜3のいずれかに記載のポリオレフィン微多孔膜。
- 前記突刺強度Yが3.0N以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
- 熱機械分析によって測定されたMD方向の120℃における熱収縮率が15%以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
- 空孔率が40%以上60%未満である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
- 微多孔膜であるポリオレフィンがポリエチレンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜を含む、電池用セパレータ。
- 請求項9に記載の電池用セパレータを含む、二次電池。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法であって、
溶媒とポリオレフィン樹脂の合計を100質量%としたとき、重量平均分子量100万以上の超高分子量ポリエチレンの含有割合が5〜30質量%であり、かつ前記ポリオレフィン樹脂の含有割合が30質量%未満である溶液を調製する工程、
前記溶液をダイより押出し、冷却固化することにより未延伸のゲル状シートを形成する工程、
前記ゲル状シートを、前記ゲル状シートの結晶分散温度〜前記ゲル状シートの融点+10℃の温度で、面積倍率が40倍以上となるように延伸し、延伸フィルムを得る工程、
前記延伸フィルムから可塑剤を抽出して前記延伸フィルムを乾燥する工程、並びに
乾燥後の延伸フィルムの熱処理及び乾燥後の延伸フィルムの再延伸の少なくとも一方を行う工程を有する、
ポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
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Cited By (1)
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2020
- 2020-03-27 JP JP2020057220A patent/JP2020164860A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN112592500A (zh) * | 2020-12-15 | 2021-04-02 | 上海恩捷新材料科技有限公司 | 一种聚烯烃微多孔膜及其生产系统、电池隔膜、电化学装置 |
CN112592500B (zh) * | 2020-12-15 | 2023-06-20 | 上海恩捷新材料科技有限公司 | 一种聚烯烃微多孔膜及其生产系统、电池隔膜、电化学装置 |
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