JP2021098333A - ヘッドチップの製造方法および液体噴射ヘッドのヘッドチップ - Google Patents

ヘッドチップの製造方法および液体噴射ヘッドのヘッドチップ Download PDF

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祐樹 山村
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Abstract

【課題】電極間の絶縁を確保し、液体に対する耐性を向上させる。【解決手段】アクチュエータプレートの作製に際し、一端およびその反対側の他端を有する圧電基板であって、一端側から他端側に向かう溝延在方向に延設されるとともに、噴射孔と連通する第1溝と、溝延在方向に交差する方向における第1溝の少なくとも一側に、溝延在方向に延設された第2溝と、を有する圧電基板を準備し、圧電基板の表面に導電膜を形成し、第1溝と第2溝との間で、導電膜に対して溝延在方向にレーザ加工を行って、第1溝と第2溝との間の圧電基板の表面に、導電膜を除去したレーザ加工領域を形成する。レーザ加工領域を形成することにおいて、レーザの照射範囲に、第1溝または第2溝に近い圧電基板の角部を内在させる。【選択図】図17

Description

本開示は、ヘッドチップの製造方法および液体噴射ヘッドのヘッドチップに関する。
記録紙等の被記録媒体に画像または文字等を記録する記録装置として、液体噴射ヘッドを備えた液体噴射記録装置が知られている。この液体噴射ヘッドには、ヘッドチップが設けられており、液体噴射ヘッドを備える液体噴射記録装置では、被記録媒体に向けてヘッドチップを介して液体が噴射され、画像または文字等が被記録媒体に記録される。
液体噴射ヘッドのヘッドチップは、液体の噴射に際して電気的に駆動されるアクチュエータプレートを備えており、このアクチュエータプレートには、噴射対象である液体に対する圧力の付与を目的とした複数の溝が形成されるとともに、これら複数の溝の内側面に電極が設けられている。
特許文献1には、アクチュエータプレートの作製に関し、導電膜から絶縁された電極パターンの形成に、レーザ加工を適用することが開示されている。
特開平11−078001号公報
アクチュエータプレートの作製では、電極形成後の基板表面に保護膜が形成されたり、他のヘッドチップ部材(例えば、ノズルプレート)との接合のための接着剤が塗布されたりする。これらの保護膜または接着剤は、噴射の回数、つまり、アクチュエータプレートの駆動回数が増えるほどに剥離を生じまたは破損を生じ易くなる傾向にある。保護膜等に剥離または破損が生じると、液体が保護膜等に浸透していき、これが架け橋となって電極同士の間に短絡を生じさせる原因となり得ることから、液体噴射記録装置ないし液体噴射ヘッドの使用期間に亘り、保護膜等にこれらの欠陥が生じるのが抑制されることが望まれる。
本開示の一形態では、アクチュエータプレートを有し、アクチュエータプレートにより液体に圧力を印加して、液体を噴射するヘッドチップの製造方法が提供される。本形態に係る製造方法は、アクチュエータプレートを作製することと、アクチュエータプレートの表面に、液体の噴射孔を有するノズルプレートを接合することと、を含み、アクチュエータプレートを作製することは、一端およびその反対側の他端を有する圧電基板であって、一端側から他端側に向かう溝延在方向に延設されるとともに、噴射孔と連通する第1溝と、溝延在方向に交差する方向における第1溝の少なくとも一側に、溝延在方向に延設された第2溝と、を有する圧電基板を準備することと、圧電基板の表面に導電膜を形成することと、第1溝と第2溝との間で、導電膜に対して溝延在方向にレーザ加工を行って、第1溝と第2溝との間の圧電基板の表面に、導電膜を除去したレーザ加工領域を形成することと、を含み、レーザ加工領域を形成することにおいて、レーザの照射範囲に、第1溝または第2溝に近い圧電基板の角部を内在させる。
他の形態では、液体に圧力を印可するアクチュエータプレートと、アクチュエータプレートの表面に接合され、圧力が印可された液体の噴射孔を有するノズルプレートと、を備え、アクチュエータプレートは、一端およびその反対側の他端を有する圧電基板を備え、圧電基板は、一端側から他端側に向かう溝延在方向に延設されるとともに、噴射孔と連通する第1溝と、溝延在方向に交差する方向における第1溝の少なくとも一側に、溝延在方向に延設された第2溝と、を有し、圧電基板の表面は、第1溝と第2溝との間で、当該表面に形成された導電膜をレーザの照射により除去した、溝延在方向に延びるレーザ加工部で露出するとともに、レーザ加工部以外の部分で導電膜により覆われ、レーザ加工部は、第1溝または第2溝に近い圧電基板の角部を含む、液体噴射ヘッドのヘッドチップが提供される。
本開示では、アクチュエータプレートの表面に形成される保護膜等の基板表面からの剥離を抑制することが可能となる。これにより、保護膜等への液体の浸透を抑制し、電極同士の間で液体が架け橋となって短絡が生じるのを抑制することができる。
図1は、本開示の一実施形態に係る液体噴射記録装置の概略的な構成を示す模式図である。 図2は、図1に示した液体噴射記録装置に備わる液体噴射ヘッドの全体的な構成を示す斜視図である。 図3は、図2に示した液体噴射ヘッドの備えるヘッドチップの概略的な構成を示す破断斜視図である。 図4は、図3に示したヘッドチップの分解図である。 図5は、図3に示したヘッドチップの、同図中A−A線による断面図であり、アクチュエータプレートおよびカバープレートの構成を示す。 図6は、本開示の一実施形態に係る液体噴射ヘッドの製造工程の全体的な流れを示すフローチャートである。 図7は、図6に示した導電膜形成工程を説明する平面図である。 図8は、図6に示したレーザ加工工程を説明する平面図である。 図9は、図6に示した表面除去工程を説明する平面図である。 図10は、図6に示した圧電基板切断工程を説明する平面図である。 図11は、本開示の第1実施形態に係るアクチュエータプレートに形成されるレーザ加工領域を模式的に示す平面図である。 図12は、同上レーザ加工領域を形成する際に照射されるレーザの照射順の一例を示す説明図である。 図13は、同上レーザ加工領域を形成する際に照射されるレーザの照射順の他の例を示す説明図である。 図14は、同上レーザ加工領域を形成する際に照射されるレーザの照射順の更に別の例を示す説明図である。 図15は、同上レーザ加工領域を形成する際に照射されるレーザの照射順の更に別の例を示す説明図である。 図16は、本開示の第2実施形態に係るアクチュエータプレートに形成されるレーザ加工領域を模式的に示す平面図である。 図17は、同上レーザ加工領域を有するアクチュエータプレートの表面近傍の構成を示す拡大断面図である。 図18は、本開示の第2実施形態に係るアクチュエータプレートに形成されるレーザ加工領域の変形例を模式的に示す平面図である。 図19は、本開示の第3実施形態に係るアクチュエータプレートに形成されるレーザ加工領域を模式的に示す平面図である。 図20は、図19に示したアクチュエータプレート(レーザ加工領域)の、同図中B−B線による断面図であり、残渣物の堆積部の構成を示す。
本開示の実施の形態について、図面を参照して以下に詳細に説明する。
<第1実施形態>
[プリンタ1の全体構成]
図1は、本開示の第1実施形態に係る液体噴射記録装置であるプリンタ(以下、単に「プリンタ」という)1の概略的な構成を示す模式図である。図1は、プリンタ1の筐体10の外縁(輪郭)を、破線により模式的に示している。第1実施形態に係る液体噴射ヘッドおよびそのヘッドチップは、プリンタ1に、その一部として備わる。プリンタ1は、被記録媒体に画像または文字等を記録する記録装置であり、プリンタ1により記録可能な被記録媒体として、紙、フィルム、布およびタイル等を例示することができる。
プリンタ1は、被記録媒体である記録紙Pに、液体であるインク9(図2)により画像または文字等を記録するインクジェット式のプリンタである。プリンタ1は、図1に示すように、筐体10の内部に、一対の搬送機構2a,2bと、インクタンク3と、インクジェットヘッド4と、供給チューブ50と、走査機構6と、を備える。ここで、以下に参照される各図では、部品または部材の大きさを図示の便宜上適宜変更しており、それらの部品等の相互またはプリンタ1全体に対する比率は、実際の縮尺を正確に示すものではない。
インクジェットヘッド4は、第1実施形態に係る「液体噴射ヘッド」に相当し、後に述べるインクジェットヘッドチップ41は、第1実施形態に係る「ヘッドチップ」に相当する。
(搬送機構2a,2b)
搬送機構2a,2bは、プリンタ1に投入された記録紙Pを搬送方向d(図1では、X方向)に搬送する。搬送機構2a,2bはそれぞれ、グリッドローラ21およびピンチローラ22を備えるとともに、図示しない駆動機構を備える。グリッドローラ21およびピンチローラ22は、いずれもその回転軸がY方向(記録紙Pをその幅方向に横断する方向であり、記録紙Pの搬送方向dに対して垂直な方向)に沿うように配設されている。駆動機構は、グリッドローラ21に動力を伝達し、これを軸周りに、つまり、Z−X面内で回転させる機構であり、動力源として、例えば、電気モータを備える。第1実施形態では、電気モータとグリッドローラ21とが、適宜の動力伝達媒体を介して接続されている。
(インクタンク3)
インクタンク3は、インク9を色別に収容する。第1実施形態では、インクタンク3として、複数の色、例えば、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の4色のインクを個別に収容する、4種類のインクタンク3(3Y,3M,3C,3K)が設けられる。インクタンク3Y,3M,3C,3Kのそれぞれは、筐体10の内部において、例えば、X方向に並べて配置される。インクタンク3Y,3M,3C,3Kは、いずれも収容するインクの色以外については同一の構成である。
(インクジェットヘッド4)
インクジェットヘッド4は、インクタンク3から供給チューブ5を介して受容したインク9を、記録紙Pに向けて液滴として噴射する。インクジェットヘッド4は、後に述べるように、Z方向に開口する複数の噴射孔H2を有し、これら複数の噴射孔H2のそれぞれからインク9が噴射される(図3)。第1実施形態では、インクジェットヘッド4は、エッジシュートタイプのインクジェットヘッドであり、噴射孔H2の向きと同方向に延びるチャネルC1を備え、このチャネルC1を通じてインク9が噴射孔H2に供給される。つまり、第1実施形態では、チャネルC1が延びる方向と噴射孔H2からインク9が噴射される方向とが、互いに一致する。
(走査機構6)
走査機構6は、搬送方向dと交差する方向、換言すれば、記録紙Pの幅方向であり、Y方向にインクジェットヘッド4を走査させる。走査機構6は、Y方向に延設された一対のガイドレール61a,61bと、ガイドレール61a,61b上を移動可能に支持されたキャリッジ62と、キャリッジ62をY方向に移動させる駆動機構63と、を備える。駆動機構63は、動力源として電気モータ633を備えるとともに、図示しない一対のプーリに掛け渡された無端状のベルト632と、を備える。キャリッジ33が無端ベルト632に取付けられており、電気モータ633の動力が無端ベルト632を介してキャリッジ62に伝達されることで、キャリッジ62がガイドレール61a,61b上をY方向に移動する。
このように、第1実施形態では、走査機構6と先に述べた搬送機構2a,2bとにより、インクジェットヘッド4と記録紙PとをX−Y面内で互いに相対的に移動させる。
[液体噴射ヘッドの構成]
図2は、図1に示したプリンタ1に備わるインクジェットヘッド4(4Y,4M,4C,4K)の全体的な構成を示す斜視図である。
インクジェットヘッド4は、固定板40と、インクジェットヘッドチップ41と、供給機構42と、制御機構43と、ベースプレート44と、を備えている。固定板40の一面に、インクジェットヘッドチップ41、供給機構42(具体的には、後に述べる流路部材42a)およびベースプレート44が固定されている。インクジェットヘッドチップ41は、第1実施形態に係る「ヘッドチップ」に相当する。
(インクジェットヘッドチップ41)
インクジェットヘッドチップ41は、インク9を噴射するインクジェットヘッド4の主要部を構成する。インクジェットヘッドチップ41の構成については下に詳しく説明する。
(供給機構42)
供給機構42は、供給チューブ5を介して供給されたインク9をインクジェットヘッドチップ41に供給する。供給機構42は、流路部材42aおよび圧力緩衝器42bを備え、流路部材42aと圧力緩衝器42bとは、インク連結管42cを介して互いに連結されている。流路部材42aは、インク9が流れる流路を有し、圧力緩衝器42bは、インク9の貯留室が形成されるとともに、供給チューブ5が取り付けられている。
(制御機構43)
制御機構43は、回路基板43aと、駆動回路43bと、フレキシブル基板43cと、を備える。駆動回路43bは、インクジェットヘッドチップ41を駆動させる回路であり、集積回路等を備え、回路基板43aに組み込まれている。フレキシブル基板43cは、駆動回路43bとインクジェットヘッドチップ41(具体的には、後に述べるアクト電極Eact)とを互いに電気的に接続する。フレキシブル基板43cは、駆動回路43bおよび複数のアクト電極Eactのそれぞれに接続された複数の端子を備える。
[インクジェットヘッドチップ41の詳細構成]
図3は、インクジェットヘッド4に備わるインクジェットヘッドチップ41の概略的な構成を示す破断斜視図であり、インクジェットヘッドチップ41を構成する各要素が組み合わされた状態を示す。図4は、インクジェットヘッドチップ41の分解図であり、インクジェットヘッドチップ41を構成要素毎に分解し、互いに離間させた状態を示す。図5は、インクジェットヘッドチップ41の、図3に示すA−A線による断面図であり、複数の噴射孔H2を破線で示す。図3は、フレキシブル基板43cを、その一部の輪郭を破線により示す。
インクジェットヘッドチップ41は、図3および図4に示すように、カバープレート410と、アクチュエータプレート411と、ノズルプレート412と、ベースプレート413と、を備える。カバープレート410とアクチュエータプレート411とは、互いに重ね合わされている。ベースプレート413は、カバープレート410およびアクチュエータプレート411がその嵌合孔413a(図4)に嵌め込まれた状態で、ノズルプレート412に当接させられている。
カバープレート410は、接着剤によりアクチュエータプレート411に貼り付けられている。ノズルプレート412は、Z方向におけるカバープレート410およびアクチュエータプレート411の端部に、接着剤により接合されている。
(アクチュエータプレート)
アクチュエータプレート411は、ノズルプレート412に備わる複数の噴射孔H2からインク9を噴射させる際に電気的に駆動される部材である。
アクチュエータプレート411は、互いに平行な複数の溝C1を画定する複数の駆動壁Wdを備える。
アクチュエータプレート411は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電材料により構成されたプレートである。アクチュエータプレート411は、矩形の平面形状を有し、その一辺に、アクチュエータプレート411の端部411E1が設けられ、端部411E1が設けられた辺に対向する辺に端部411E3が設けられている(図4)。そして、端部411E1の近傍に、フレキシブル基板43cが接続され、端部411E3がノズルプレート412に接着されている。端部411E1は、第1実施形態に係る「一端」に相当し、端部411E3は、第1実施形態に係る「他端」に相当する。
アクチュエータプレート411は、図4に示すように、分極方向が互いに異なる2つの圧電基板を厚み方向(Z方向)に沿って積層して構成された、いわゆるシェブロンタイプのアクチュエータプレートである。アクチュエータプレート411は、これに限らず、分極方向が厚み方向(Z方向)に沿って一方向に設定された1つの圧電基板により構成された、いわゆるカンチレバータイプまたはモノポールタイプのアクチュエータプレートであってもよい。溝C1は、非貫通溝であって、底面を有し、複数の吐出溝C1eと複数の非吐出溝C1dとを含む。吐出溝C1eと非吐出溝C1dとは、X方向に互いに交互に配列されている。吐出溝C1eと非吐出溝C1dとのうち、吐出溝C1eのみが噴射孔H2に連通し(図5は、噴射孔H2を点線で示す)、噴射に際してインク9に圧力を付与する圧力室として機能する。つまり、アクチュエータプレート411は、吐出チャネルC1eにはインク9が充填される一方、ダミーチャネルC1dにはインク9が充填されない構造にある。そして、図5に示すように、吐出溝C1eは、カバープレート410のインク導入孔410aと連通する一方、非吐出溝C1dは、インク導入孔410aと連通しておらず、カバープレート410により上方から覆われ、閉塞されている。
複数の溝C1はそれぞれ、Z方向において、アクチュエータプレート411の端部411E3から端部411E1に向かう溝延在方向に沿って延在する。ただし、非吐出溝C1eが、端部411E3から端部411E1に至るまで、溝延在方向にアクチュエータプレート411の全体に亘って延在するのに対し、吐出溝C1dは、端部411E3に達するものの、端部411E1にまでは達しておらず、端部411E3と端部411E1との間で終結している。つまり、吐出溝C1eの溝延在方向(第1実施形態では、Z方向)の長さは、非吐出溝C1dの同方向における長さよりも短い。ここで、吐出溝C1eが第1実施形態に係る「第1溝」に相当し、非吐出溝C1dが第1実施形態に係る「第2溝」に相当する。
さらに、吐出溝C1eのZ方向の終端を画定する内壁面C1mは、底面から開口部に近付くのに従ってノズルプレート412から離れるように切り上がっている。
そして、第1実施形態において、アクチュエータプレート411は、端部411E3に近い部位に、吐出溝C1eと非吐出溝C1dとの双方が設けられた第1チャネル形成部分411aを有する。他方で、端部411E1に近い部位に、吐出溝C1eと非吐出溝C1dとのうち、非吐出溝C1dのみが設けられた第2チャネル形成部分411bを有する。先に述べた複数の駆動壁Wdは、吐出溝C1eと非吐出溝C1dとの双方を画定するものであり、第1チャネル形成部分411aに設けられている。
図5に示すように、駆動壁Wdのそれぞれの内側面には、Z方向に延在する駆動電極Edが設けられている。駆動電極Edは、吐出溝C1eを圧力室として機能させるため、駆動壁Wdを電気的に変形させる電極である。
駆動電極Edは、吐出溝C1eを画定する駆動壁Wdの内側面に設けられた一対のコモン電極Edcと、非吐出溝C1dを画定する駆動壁Wdの内側面に設けられた一対のアクティブ電極Edaと、を含む。アクティブ電極Edaおよびコモン電極Edcのそれぞれは、カバープレート410とアクチュエータプレート411との界面、換言すれば、アクチュエータプレート411の表面から溝C1の底部に向け、内壁面の途中まで延在している。アクティブ電極Edaおよびコモン電極Edcは、分極方向が互いに異なる2つの圧電基板の境界(接合面)よりもさらに深い位置(つまり、図5に示すY方向に、境界よりも先の位置)にまで延在している。図3および図4は、便宜上、駆動電極Edの図示を省略している。
アクチュエータプレート411の、カバープレート410との対向面(以下、アクチュエータプレート411の表面という)には、コモン電極Edcに電気的に接続されたコモン電極パッドPcと、アクティブ電極Edaに電気的に接続されたアクティブ電極パッドPaとが各々複数設けられている。なお、複数のコモン電極パッドPcおよび複数のアクティブ電極パッドPaは、後述の図9に図示している。図3および図4のそれぞれでは、複数のコモン電極パッドPcおよび複数のアクティブ電極パッドPaの図示を省略している。
コモン電極パッドPc(図9)は、同一の吐出溝C1e内で対向する一対のコモン電極Edc,Edc同士を電気的に接続するものであり、アクチュエータプレート411の表面において、吐出溝C1eの周囲に設けられている。
同一の非吐出溝C1d内で対向する一対のアクティブ電極Eda,Eda同士は、互いに電気的に分離されている。アクティブ電極パッドPaは、吐出溝C1eを挟んでその両側に位置する一対のアクティブ電極Eda同士を電気的に接続するものである。アクティブ電極パッドPaは、吐出溝C1eを間にして隣り合う非吐出溝C1d,C1dの間に配置されており、コモン電極パッドPcとは電気的に分離して設けられ、コモン電極パッドPcよりも端部411E1に近い位置に配置されている。
図3から分かるように、コモン電極パッドPcおよびアクティブ電極パッドPaは、カバープレート410から露出されており、コモン電極パッドPcおよびアクティブ電極パッドPaに、フレキシブル基板43cが接続されている。第1実施形態では、フレキシブル基板43cに形成された配線パターンが、コモン電極パッドPcおよびアクティブ電極パッドPaのそれぞれに電気的に接続されている。これにより、駆動回路43bから駆動電極Edに対し、フレキシブル基板43cを介して駆動電圧を印加することが可能である。
第1実施形態では、コモン電極Edcおよびアクティブ電極Edaのそれぞれに対し、互いに極性が異なる駆動電圧が印加される。例えば、コモン電極Edcに、接地電圧が印可され、アクティブ電極Edaに、正の電位が印可される。コモン電極Edcには、負の電圧が印可されてもよい。
(カバープレート)
カバープレート410は、アクチュエータプレート411に対向して配置され、アクチュエータプレート411を被覆する部材である。具体的には、カバープレート410は、図3から図5に示すように、複数のスリット410bが設けられるとともに、これら複数のスリット410bのそれぞれと連通する窪み状のインク導入孔410aを有する。スリット410bは、溝延在方向(Z方向)と平行な方向に延在するとともに、カバープレート410の厚み方向に貫通している。スリット410bの位置は、吐出溝C1eの位置に対応しており、インク導入孔410aは、スリット410bを介して吐出溝C1eと連通している。これにより、インク導入孔410aから吐出溝C1eにスリット410bを介してインク9が供給され、吐出溝C1eのそれぞれにインク9が充填される。
(ノズルプレート)
ノズルプレート412は、複数の噴射孔H2を有し、アクチュエータプレート411の端部411E3と当接する。複数の噴射孔H2は、X方向に互いに間隔を空けて配列されており、噴射孔H2の開口形状、つまり、噴射孔H2を噴射方向の前方からZ方向に見た形状は、例えば、円形である。さらに、噴射孔H2には、先窄まりのテーパが付され、その内径は、インク9が噴射される方向に徐々に減少させられている。ノズルプレート412は、例えば、ポリイミドなどの絶縁性材料のうち、いずれか1種類または2種類以上を含んで構成することが可能である。さらに、ノズルプレート412は、ステンレス鋼(SUS)等の導電性材料のうち、いずれか1種類または2種類以上を含んでもよい。
(ベースプレート)
ベースプレート413は、X方向に延在する嵌合孔413aを有しており、この嵌合孔413aに、カバープレート410およびアクチュエータプレート411が互いに重ね合わされた状態で嵌め込まれる。
[インクジェットヘッド4(インクジェットヘッドチップ41)の製造工程]
図6から図15を参照し、第1実施形態に係るインクジェットヘッド4の製造工程について説明する。図6は、第1実施形態に係るインクジェットヘッド4の製造工程を、工程順に示す。図7から図10は、図6に示したフローチャートのステップS2からS5を工程別に説明する模式図である。図11から図15は、図6に示すステップS3のレーザ加工工程に関し、レーザ加工領域およびレーザ加工領域を形成する際のレーザの照射順を示す。
初めに、PZT等の圧電材料からなる圧電基板(図7および図8に示す圧電基板411Z)を準備する。圧電基板411Zは、分極方向が互いに異なる2つの圧電基板の積層体として構成され、矩形の平面形状を有する。圧電基板411Zの一辺が、アクチュエータプレート411の端部411E1を構成する。端部411E1に当たる辺に対向する辺が、端部411E2を構成する。端部411E1と端部411E2との間に、アクチュエータプレート411の端部411E3(図4)が形成される。
次いで、ステップS1では、圧電基板411Zの表面に、溝C1(吐出溝C1eおよび非吐出溝C1d)を形成する。溝C1の形成は、ダイサーを用いて圧電基板411Zの表面に溝加工を行うことにより可能である。溝C1はそれぞれ、端部411E1側から端部411E2側へ向かう溝延在方向に沿って形成する。
続いて、ステップS2では、圧電基板411Zの表面および溝C1の内側面に、斜方蒸着法等により、金(Au)等の導電性材料の薄膜を形成する。これにより、溝C1の内側面の駆動電極Edと、圧電基板411Zの表面の導電膜Fと、が形成される。導電膜Fは、インクジェットヘッドチップ41において、コモン電極パッドPcおよびアクティブ電極パッドPaを形成する。図7に示すように、導電膜Fは、隣り合う吐出溝C1eと非吐出溝C1dとの間の領域を含む圧電基板411Zの表面全体に亘って形成される。導電膜Fと溝C1内の駆動電極Edとは、互いに連続し、両者の間で、電気的な導通状態が確保される。
続いて、ステップS3では、導電膜Fが形成された圧電基板411Zの表面に、レーザ加工を施し、圧電基板411Zの表面のうち、吐出溝C1eと非吐出溝C1dとの間の部分に、レーザ加工領域LAを形成する。レーザ加工領域LAの形成については後に詳細に述べる。
さらに、ステップS4では、レーザ加工領域LAが形成された圧電基板411Zの表面に、表面除去加工を行う。具体的には、ダイサーを用い、圧電基板411Zの表面を、レーザ加工領域LAが延びる方向(溝延在方向に対して垂直である)に交差する方向に、溝状に切削する。第1実施形態では、レーザを照射する際の始点Psを含み、溝延在方向に対して垂直な方向(X方向)に延びる第1表面除去領域RAと、レーザを照射する際の終点Peを含み、溝延在方向に対して垂直な方向に延びる第2表面除去領域RBと、を形成する。表面除去領域RA,RBでは、導電膜Fが除去される。表面除去領域RA,RBの形成は、ダイサーによる切削のほか、研磨またはフライス加工等によることも可能である。
ステップS5では、レーザ加工領域LAと表面除去領域RA,RBとが形成された圧電基板411Zを、端部411E1と端部411E2との間の所定位置(切断線L)で切断する。これにより、図10に示すように、切断線Lに沿って端部411E3が形成され、2つのアクチュエータプレート411が形成される。
このようにしてアクチュエータプレート411を完成させた後、ステップS6では、アクチュエータプレート411と他のプレート(例えば、カバープレート410およびノズルプレート412)とを組み立て、図2から図5等に示したインクジェットヘッド4を完成させる。
[レーザ加工領域の形成]
レーザ加工工程では、図8に示すように、隣り合う吐出溝C1eと非吐出溝C1dとの間の導電膜Fにレーザを照射して、導電膜Fを除去し、圧電基板411Zの表面が露出されたレーザ加工領域LAを形成する。第1実施形態では、レーザ加工領域LAは、吐出溝C1eと非吐出溝C1dとに挟まれたいずれの領域についても形成する。端部411E1に近い始点Psから端部411E2に向かう途中に設定された終点Peに至るまで、溝延在方向(Z方向)に直線状にレーザを照射する。このようにして、圧電基板411Zの表面に、溝C1が延びる溝延在方向と平行な直線状のレーザ加工領域LAを形成する。第1実施形態では、レーザを照射する際の始点Psおよび終点Peを、いずれも吐出溝C1eよりも端部411E1,411E2に近い位置に設定しており、これにより、吐出溝C1eよりも長いレーザ加工領域LAを形成する。
第1実施形態では、レーザ加工に、紫外光、例えば、波長266nmの紫外光を採用する。紫外光の採用により、より長い波長の光を照射する場合に比べ、導電膜Fを構成する導電性材料(例えば、金(Au))を蒸散させ易いことから、レーザの照射により堆積されるデブリ(残渣物)の高さを低く抑えることが可能となる。
図11は、図8に二点鎖線の枠により示す領域Wの拡大図であり、第1実施形態に係るアクチュエータプレート411に形成されるレーザ加工領域LAを模式的に示す。
第1実施形態では、レーザの照射に際してレーザを走査させる線として、溝延在方向に延びる複数のレーザ加工線L1,L2,L3を設定する。これにより、第1実施形態では、1本のレーザ加工線に沿ってレーザを照射した場合に形成されるものよりも幅の広いレーザ加工領域LAを形成する。さらに、第1実施形態では、複数のレーザ加工線L1からL3のそれぞれについて、複数回(例えば、2回)に亘ってレーザを照射する。
以上に加え、第1実施形態では、隣り合う2つのレーザ加工線の間で、レーザの照射範囲R1,R2,R3を所定範囲OLで互いに重複させる。ここに、レーザの照射範囲とは、レーザが照射される領域のうち、一定以上の強度が得られる中心部分の範囲をいい、この照射領域で導電膜Fが除去される。図11中、照射範囲R1は、レーザ加工線L1に沿って走査させるレーザの照射範囲であり、照射範囲R2は、レーザ加工線L2に沿って走査させるレーザの照射範囲であり、照射範囲R3は、レーザ加工線L3に沿って走査させるレーザの照射範囲である。レーザの照射範囲R1,R2,R3を所定範囲OLで重複させることにより、レーザ加工領域LAを、その幅の方向、換言すれば、レーザを走査させる方向に対して垂直な方向に、一続きに形成する。
図12から図15は、第1実施形態に係るアクチュエータプレート411のレーザ加工領域LAを形成する際に照射されるレーザの照射順の幾つかの例を示す。第1実施形態では、同一のレーザ加工線に沿って行うレーザの照射について、先行するレーザの照射を終了してから後のレーザの照射を開始するまでに、時間を空ける。例えば、図12に示すレーザ加工線L1に沿ったレーザの照射を終了してから同一のレーザ加工線L1に沿った後のレーザの照射を開始するまでに、時間を空ける。この時間は、後に述べる説明から理解されるように、金属膜(具体的には、Ti膜)に対してレーザ加工により加えられた熱が完全に散逸するのに要する時間よりも短く、圧電基板411Zに対して熱応力がかかることによる欠落または亀裂等の予期しない欠陥(以下「欠落等の欠陥」または単に「欠陥」という)が発生する時間よりも長い時間とする。
図12は、複数のレーザ加工線L1からL3のそれぞれについて、レーザを往復させて照射するとともに、吐出溝Cle側から非吐出溝Cld側へ、レーザの照射に用いるレーザ加工線を逐次ずらしていく場合の照射順を示す。先に述べたように、同一のレーザ加工線に沿って行うレーザの走査を折り返す際に、つまり、矢印a1,a3,a5により示す往路でのレーザの照射を終了してから矢印a2,a4,a6により示す復路でのレーザの照射を開始するまでに、時間を空ける。
図13は、レーザの照射に際して走査させる方向を一方向(矢印a1からa6により示す)とするとともに、同一のレーザ加工線に沿って行うレーザの照射の間に、異なるレーザ加工線に沿ったレーザの照射を行う場合の加工順を示す。レーザを走査させる方向は、端部411E1側から端部411E2側へ向かう方向であってもよいし(例えば、図8)、これとは逆の方向であってもよい。そして、第1実施形態では、先行するレーザの照射を吐出溝Cle側のレーザ加工線L1から非吐出溝Cld側のレーザ加工線L2,L3へ逐次ずらして行うとともに、全てのレーザ加工線L1からL3に沿った先行するレーザの照射を終了した後、吐出溝Cle側のレーザ加工線L1から非吐出溝Cld側のレーザ加工線L2,L3へ逐次ずらして行うレーザの照射を繰り返す。ここで、例えば、レーザ加工線L1に沿って行う2回のレーザの照射の間に、異なるレーザ加工線L2,L3に沿ったレーザの照射が行われる。
図14は、図13に示す例と同様に、同一のレーザ加工線に沿って行うレーザの照射の間に、異なるレーザ加工線に沿ったレーザの照射を行う場合の加工順を示す。ただし、図14に示す例では、先行するレーザの照射を吐出溝Cle側のレーザ加工線L1から非吐出溝Cld側のレーザ加工線L2,L3へ逐次ずらして行うとともに、隣り合うレーザ加工線の間で、レーザの照射に際してレーザを走査させる方向を互いに逆方向に設定する。ここで、例えば、レーザ加工線L1に沿って行う2回のレーザの照射の間に、異なるレーザ加工線L2,L3に沿ったレーザの照射が行われる。
以上に示した例では、レーザを照射する際のレーザ加工線を、吐出溝Cle側のレーザ加工線L1から非吐出溝Cld側のレーザ加工線L2,L3へずらしたが、レーザ加工線L1からL3をずらす順序は、これに限らず、どのようであっても構わない。例えば、非吐出溝Cld側のレーザ加工線L3から吐出溝Cle側のレーザ加工線L2,L1へずらすことも可能である。
図15は、レーザの照射順に関する更に別の例を示す。図15に示す例では、レーザ加工線L1からL3のうち、中央のレーザ加工線L2に沿ってレーザを照射した後、中央よりも吐出溝Cleまたは非吐出溝Cldに近い一方のレーザ加工線L1,L3に沿ってレーザを照射し、その後、他方のレーザ加工線L3,L1に沿ってレーザを照射する。ここで、例えば、レーザ加工線L2に沿って行う2回のレーザの照射の間に、異なるレーザ加工線L1,L3に沿ったレーザの照射が行われる。
[動作]
(プリンタ1の動作)
プリンタ1の作動時に、搬送方向dに記録紙Pを搬送するととともに、搬送方向dと交差する方向に、インクジェットヘッド4を往復移動させながら記録紙Pにインク9を噴射する。これにより、記録紙Pに画像が記録される。
(インクジェットヘッド4の動作)
以下の手順に従って記録紙Pにインク9を噴射する。駆動回路43bによりアクチュエータプレート411のアクティブ電極Edaに駆動電圧を印加する際に、駆動回路43bがノズルプレート412に対応電圧を印加する。圧電厚み滑り効果による屈曲変形が駆動壁Wdに生じ、吐出溝C1eの容積が増大するため、インク導入孔410aから吐出溝C1eにインク9が誘導される。その後、駆動電圧がゼロ(0V)になるとともに、対応電圧もゼロ(0V)になると、駆動壁Wdに元の状態に復帰する変形が生じる。これにより、吐出溝C1eの容積が減少し、吐出溝C1eに誘導されたインク9が加圧されることで、吐出溝Cleから噴射孔H2を介して記録紙Pにインク9が噴射される。
[作用および効果]
第1実施形態に係るインクジェットヘッドチップ41、インクジェットヘッド4およびインクジェットプリンタ1は、以上のように構成され、第1実施形態により得られる効果について、以下に述べる。
第1に、複数のレーザ加工線L1からL3に沿ってレーザを照射することで、レーザ加工領域LAの幅を拡大させ、吐出溝C1e内のコモン電極Edcと非吐出溝C1d内のアクティブ電極Edaとの間に、充分な距離を確保することが可能となる。第1実施形態では、インク9の噴射回数、換言すれば、アクチュエータプレート411の駆動回数が増えると、アクチュエータプレート411または圧電基板411Zの表面に形成された保護膜等に剥離または破損が生じ、噴射回数の更なる増大とともに、これが進行する。この剥離等の進行に伴い、インク9が保護膜等に浸透していき、隣り合う電極Edc,Eda同士の間で、インク9が架け橋となって短絡を生じさせる場合がある。本実施形態によれば、電極Edc,Eda同士の間に充分な距離が確保されることで、保護膜等に剥離または破損が生じ、これが進行したとしても、吐出溝C1eに貯留されているインク9、特に水性インクが保護膜等に浸透し、非吐出溝C1d側の電極Edaに到達して、電極Edc,Eda間に短絡を生じさせるのを抑制することができる。
さらに、電極Edc,Eda間の短絡は、保護膜等に剥離または破損が生じ、保護膜等に浸透したインク9が架け橋となって生じるばかりでなく、インク9が保護膜等を透過可能な状態(例えば、ミスト状)となることによっても生じる場合がある。本実施形態によれば、電極Edc,Eda同士の間に充分な距離が確保されることで、ミスト状となったインク9が保護膜等を透過して、電極Edc,Eda間に架け橋を形成することが抑制されるので、保護膜等に剥離も破損も生じていない場合についても電極Edc,Eda間における短絡の抑制に資する。
ここで、同一のレーザ加工線(例えば、レーザ加工線R1)に沿って行うレーザの照射を時間を空けずに行うと、光分解を起こし難い金属膜(例えば、Ti膜)を除去する際に、レーザ加工熱による金属分子振動状態が保たれ易いことから、金属膜をより確実に除去することが可能である。しかし、一方で、レーザの連続照射により、同一のレーザ加工線について定められる照射範囲(例えば、照射範囲R1)に熱影響が及び続けるため、金属膜と同時に除去される部材(つまり、圧電基板411Z)に対して大きな熱応力がかかり、圧電基板411Zに欠落等の欠陥が生じることにより、アクチュエータプレート411における静電容量のばらつきを増大させるおそれがある。このように静電容量のばらつきが増大すると、インクの吐出を不安定化させることが懸念される。さらに、圧電基板411Zに欠落等の欠陥が発生すること自体により、この欠陥を通じた設計外のインク侵入路が形成されたり、圧電基板411Zに対する接着剤または保護膜等の密着性を低下させたりすることも懸念される。これに対し、第1実施形態では、複数のレーザ加工線L1からL3のそれぞれについて、複数回に亘ってレーザを照射するとともに、同一のレーザ加工線に沿って行うレーザの照射を、時間を空けて行うことで、圧電基板411Zに対して過度に大きな熱応力がかかるのを抑制することが可能となる。これにより、圧電基板411Zにおける欠落等の欠陥の発生を抑制することができるため、アクチュエータプレート411における静電容量のばらつきを抑制することができる。
第2に、同一のレーザ加工線に沿って行うレーザの照射の間に、異なるレーザ加工線に沿ったレーザの照射を行うことで、同一のレーザ加工線に沿って行うレーザの照射の間の時間を確保しながら、効率よく加工を進めることができる。
さらに、圧電基板411Zの表面からの導電膜Fのより一様に近い除去を可能とし、レーザ加工後の表面に残る残渣物を減少させることができるので、アクチュエータプレート411における静電容量のばらつきを抑制し、インク9の噴射特性を向上させることができる。
第3に、異なるレーザ加工線に沿って照射されるレーザの間で、それらの照射範囲同士を重複させることで、導電膜Fのより確実な除去を可能とし、レーザによる加工品質の更なる向上を図ることができる。さらに、溝延在方向に対して垂直な方向に幅の広い、一続きのレーザ加工領域LAを形成することが可能となるので、コモン電極Edcとアクティブ電極Edaとをこの一続きのレーザ加工領域LAを介して充分に離間させ、これらの電極Edc,Eda同士の間で、インク9を架け橋とした短絡が生じるのをより確実に抑制することができる。
[第2実施形態]
図16は、本開示の第2実施形態に係るアクチュエータプレート411に形成されるレーザ加工領域LAを模式的に示す平面図である。図17は、図16に示すアクチュエータプレート411(圧電基板411Z)の、同図中B−B線による断面図であり、レーザ加工領域LAを有するアクチュエータプレート411の表面近傍の構成を拡大して示す。
第2実施形態では、レーザ加工領域LAを形成する際に、溝延在方向(Z方向)に互いに平行に延びる複数のレーザ加工線L1からL3に沿ってレーザを照射して、幅の広いレーザ加工領域LAを形成するとともに、複数のレーザ加工線L1からL3のうち、少なくとも1本のレーザ加工線に沿って照射されるレーザの照射範囲に、非吐出溝C1dに近い圧電基板411Zの角部、換言すれば、非吐出溝C1dを画定する駆動壁Wd(図17)の角部Cw1を内在させる。
具体的には、3本のレーザ加工線L1からL3を設定するとともに、これら3本のレーザ加工線L1からL3のうち、非吐出溝C1dに最も近いレーザ加工線L3に沿って照射されるレーザの照射範囲R3に、非吐出溝C1dを画定する駆動壁Wdの角部Cw1を内在させ、図17(a)に示すように、駆動壁Wdの角部Cw1を、導電膜Fから露出させる。
さらに、異なるレーザ加工線同士の間で、レーザの照射範囲を互いに重複させること、レーザを照射する際の照射順等は、先に述べた実施形態におけるものと同様である。ただし、第2実施形態では、駆動壁Wdの角部Cw1を内在させるレーザの照射範囲を定めるレーザ加工線L3を、1つのレーザ加工領域LAの形成に用いられる複数のレーザ加工線L1からL3のうち、最後にレーザが照射されるレーザ加工線とする。
ここで、駆動壁Wdを覆う導電性材料は、駆動壁Wdのうち、圧電基板411Zの表面に当たる部位および角部Cw1を覆う部分だけでなく、図17(b)に示すように、露出させられた角部Cw1を終端とする内側面に沿った所定範囲D1に亘って除去することも可能である。つまり、非吐出溝C1dに面しかつ角部Cw1を終端とする圧電基板411Zの内側面を、角部Cw1から所定範囲D1に亘って露出させるのである。
このように、第2実施形態によれば、複数のレーザ加工線L1からL3のうち、少なくとも1本のレーザ加工線L3に沿って照射されるレーザの照射範囲R3に、非吐出溝C1dに近い圧電基板411Zの角部Cw1を内在させることで、この角部Cw1を含むレーザ加工領域LAで圧電基板411Zの表面が露出する。よって、当該表面上に設けられる接着剤または保護膜fの圧電基板411Zに対する密着性を高め、保護膜f等に角部Cw1を起点とする剥離が生じることを抑制して、インク9が保護膜f等に浸透するのを抑制することが可能である。つまり、第1実施形態では、保護膜f等への液体の浸透に対し、電極Edc,Eda同士の間の距離を確保することにより、電極Edc,Eda間に短絡が生じることを抑制した。これに対し、第2実施形態では、基板表面に対する保護膜f等の密着性および接合力の増強を通じて剥離が生じること自体を抑制し、もって、短絡の発生を抑制するものである。
さらに、レーザ加工線L1からL3のそれぞれに沿って行うレーザの照射のうち、角部Cw1を内在させるレーザの照射を最後に行うことで、角部Cw1およびその近傍の基板表面に導電性材料の残渣物(デブリ)が残ることを抑制して、この基板表面を綺麗に露出させることが可能となるので、角部Cw1の表面上に設けられる接着剤または保護膜fの密着性をさらに高め、インク9の浸透をより確実に抑制することができる。
さらに、非吐出溝C1dに面しかつ角部Cw1を終端とする圧電基板411Zの内側面を、この角部Cw1から所定範囲D1に亘って露出させることで、接着剤または保護膜fにより角部Cw1を覆うことが可能となるので、基板表面に対する保護膜f等の密着性をさらに高め、インク9の浸透をより確実に抑制することができる。
以上に加え、第2実施形態によれば、レーザ加工領域LAを形成する際に、複数のレーザ加工線L1からL3に沿ってレーザを照射することで、レーザ加工領域LAの幅を拡大し、異なる電極(吐出溝C1e内のコモン電極Edcおよび非吐出溝C1d内のアクティブ電極Eda)同士の間で、充分な距離を確保することが可能となる。そして、複数のレーザ加工線のそれぞれについて、複数回に亘ってレーザを照射するとともに、同一のレーザ加工線に沿って行うレーザの照射を、時間を空けて行うことで、導電膜の良好な除去を可能とし、レーザによる加工品質の向上を図ることができる。
第2実施形態では、複数のレーザ加工線を設定し、これら複数のレーザ加工線のそれぞれについて、複数回に亘ってレーザを照射したが、本開示の適用は、これに限らず、1本のみのレーザ加工線を設定してもよいし、複数のレーザ加工線を設定しながらも、各レーザ加工線につき、1回だけレーザを照射するようにしてもよい。
さらに、同一のレーザ加工線に沿って行うレーザの照射の間に、異なるレーザ加工線に沿ったレーザの照射を行うことで、同一のレーザ加工線に沿って行うレーザの照射の間の時間を確保しながら、効率よく加工を進めることができる。
さらに、異なるレーザ加工線に沿って照射されるレーザの間で、それらの照射範囲を重複させることで、導電膜のより確実な除去を可能とし、レーザによる加工品質の更なる向上を図ることができる。
図18は、第2実施形態に係るアクチュエータプレート411に形成されるレーザ加工領域LAの変形例を模式的に示す平面図である。このように、図18に示す例では、レーザ加工領域LAを形成する際に、溝延在方向(Z方向)に互いに平行に延びる複数のレーザ加工線L1からL3に沿ってレーザを照射して、幅の広いレーザ加工領域LAを形成するとともに、複数のレーザ加工線L1からL3のうち、少なくとも1本のレーザ加工線(この変形例では、レーザ加工線L1)に沿って照射されるレーザの照射範囲R1に、吐出溝C1eに近い圧電基板411Zの角部、換言すれば、吐出溝C1eを画定する駆動壁Wdの角部Cw2を内在させる。
レーザ加工領域LAを形成する際に用いるレーザ加工線の数は、3本に限らず、これより多くてもよいし(例えば、4本)、少なくてもよい(例えば、1本)。
[第3実施形態]
図19は、本開示の第3実施形態に係るアクチュエータプレート411に形成されるレーザ加工領域LA1,LA2を模式的に示す平面図である。
第3実施形態では、レーザ加工領域LA(LA1,LA2)を形成する際に、複数回のレーザの照射を、複数のレーザ加工線L1,L2のうち、第1加工線L1に沿ったレーザの照射範囲R1と、これとは異なる第2加工線L2に沿ったレーザの照射範囲R2と、の間に、レーザ加工線L1,L2に対して垂直な方向に間隔を空けて行う。これにより、第1加工線L1に沿ったレーザの照射により露出させられる圧電基板411Zの表面(「第1表面」に相当し、以下「第1レーザ加工領域」という)LA1と、第2加工線L1に沿ったレーザの照射により露出させられる圧電基板411Zの表面(「第2表面」に相当し、以下「第2レーザ加工領域」という)LA2と、の間に、レーザの照射後の残渣物が堆積した堆積部DBを形成する。
ここで、レーザを照射する際の照射順および同一のレーザ加工線L1,L2に沿って行うレーザの照射の間に、先行する照射の終了から後の照射の開始までに時間を空けること等は、先に述べた実施形態と同様である。第3実施形態では、2本のレーザ加工線L1,L2に沿ったレーザの照射を行い、レーザの照射順は、例えば、第1加工線L1に沿ってレーザを照射した後、第2加工線L2に沿ってレーザを照射し、さらに、第1加工線L1に沿ったレーザの照射およびこれに続く第2加工線L2に沿ったレーザの照射を繰り返す。
図20は、図19に示す圧電基板411Zの、同図中C−C線による断面図であり、残渣物の堆積部DBが形成されている様子を模式的に示す。このように、第3実施形態では、レーザ加工領域LA1,LA2に対して溝C1(吐出溝C1e、非吐出溝C1d)側の導電膜F上に残る残渣物DBa,DBbよりも高い堆積部DBが形成される。
第3実施形態によれば、第1加工線L1に沿った圧電基板411Zの露出表面(第1レーザ加工領域LA1)と第2加工線L2に沿った圧電基板411Zの露出表面(第2レーザ加工領域LA2)との間に、レーザの照射後の残渣物(つまり、デブリ)が堆積した堆積部DBを形成することで、レーザ加工領域LA1,LA2を跨ぐ液体の移動を阻害することが可能となる。よって、液体の浸透を阻害し、液体に対する耐性の向上を図ることができる。
第3実施形態では、吐出溝C1eと非吐出溝C1dとの間に形成された導電膜Fに対してレーザの照射を行うことで、吐出溝C1eとこれに近いレーザ加工領域LA1との間に導電膜Fを残すとともに、非吐出溝C1dとこれに近いレーザ加工領域LA2との間にも導電膜Fを残すこととした。しかし、第3実施形態の適用は、これに限らず、レーザの照射範囲に、吐出溝C1eまたは非吐出溝C1dに近い圧電基板411Zの角部Cw1,Cw2を含めることで、レーザ加工領域を吐出溝C1eか非吐出溝C1dかに近付け、吐出溝C1eまたは非吐出溝C1dに近い圧電基板411Zの角部Cw1,Cw2を、導電膜Fから露出させるようにしてもよい。これにより、堆積部DBの形成による効果に併せ、角部Cw1,Cw2を露出させることによる効果(例えば、角部Cw1,Cw2を覆うことによる保護膜fの剥離の抑制および接合力の増強)を得ることができる。
さらに、図17(b)の参照により理解可能なように、圧電基板411Zにおいて、露出させられた角部Cw1,Cw2を終端とする内側面に沿った所定範囲(例えば、図17(b)に示す範囲D1)に亘って導電性材料を除去してもよいことは、いうまでもない。
以上の説明から抽出することのできる主な概念について、以下に纏める。
(1)アクチュエータプレートを有し、前記アクチュエータプレートにより液体に圧力を印加して、前記液体を噴射するヘッドチップの製造方法であって、
前記アクチュエータプレートを作製することと、
前記アクチュエータプレートの表面に、前記液体の噴射孔を有するノズルプレートを接合することと、
を含み、
前記アクチュエータプレートを作製することは、
一端およびその反対側の他端を有する圧電基板であって、前記一端側から前記他端側に向かう溝延在方向に延設されるとともに、前記噴射孔と連通する第1溝と、前記溝延在方向に交差する方向における前記第1溝の少なくとも一側に、前記溝延在方向に延設された第2溝と、を有する圧電基板を準備することと、
前記圧電基板の表面に導電膜を形成することと、
前記第1溝と前記第2溝との間で、前記導電膜に対して前記溝延在方向にレーザ加工を行って、前記第1溝と前記第2溝との間の前記圧電基板の表面に、前記導電膜を除去したレーザ加工領域を形成することと、
を含み、
前記レーザ加工領域を形成することにおいて、前記レーザの照射範囲に、前記第1溝または前記第2溝に近い前記圧電基板の角部を内在させる、
ヘッドチップの製造方法である。
(2)前記レーザ加工領域を形成することにおいて、前記溝延在方向に延びる複数のレーザ加工線に沿ってレーザを照射するとともに、前記複数のレーザ加工線のうち、少なくとも1本のレーザ加工線に沿って照射される前記レーザの照射範囲に、前記圧電基板の角部を内在させる、
上記(1)のヘッドチップの製造方法である。
(3)前記レーザ加工領域を形成することにおいて、前記複数のレーザ加工線のそれぞれについて、複数回に亘って前記レーザを照射する、
上記(2)のヘッドチップの製造方法である。
(4)前記レーザ加工領域を形成することにおいて、前記複数のレーザ加工線のうち、同一のレーザ加工線に沿って行う前記レーザの照射は、先行する前記レーザの照射を終了してから後の前記レーザの照射を開始するまでに、時間を空けて行う、
上記(3)のヘッドチップの製造方法である。
(5)前記レーザ加工領域を形成することにおいて、同一のレーザ加工線に沿って行う前記レーザの照射の間に、異なるレーザ加工線に沿った前記レーザの照射を行う、
上記(4)のヘッドチップの製造方法である。
(6)前記レーザ加工領域を形成することにおいて、前記角部を内在させる前記レーザの照射範囲を定める前記レーザ加工線が、前記複数のレーザ加工線のうち、最後に前記レーザが照射されるレーザ加工線である、
上記(2)から(5)のいずれかのヘッドチップの製造方法である。
(7)前記レーザ加工領域を形成することにおいて、異なるレーザ加工線に沿って照射される前記レーザの間で、前記レーザの照射範囲同士を重複させる、
上記(2)から(6)のいずれかのヘッドチップの製造方法である。
(8)前記レーザ加工領域を形成することにおいて、
前記複数回のレーザの照射は、前記複数のレーザ加工線のうち、第1加工線に沿った前記レーザの照射範囲と、前記第1加工線とは異なる第2加工線に沿った前記レーザの照射範囲と、の間に間隔を空けて行い、
前記第1加工線に沿った前記レーザの照射により露出させられる前記圧電基板の第1表面と前記第2加工線に沿った前記レーザの照射により露出させられる前記圧電基板の第2表面との間に、前記レーザの照射後の残渣物が堆積した堆積部を形成する、
上記(2)から(7)のいずれかのヘッドチップの製造方法である。
(9)前記レーザ加工領域を形成することにおいて、前記第1溝または前記第2溝に面しかつ前記角部を終端とする前記圧電基板の内側面を、前記角部から所定範囲に亘って露出させる、
上記(1)から(8)のいずれかのヘッドチップの製造方法である。
(10)液体に圧力を印可するアクチュエータプレートと、
前記アクチュエータプレートの表面に接合され、前記圧力が印可された液体の噴射孔を有するノズルプレートと、
を備え、
前記アクチュエータプレートは、一端およびその反対側の他端を有する圧電基板を備え、
前記圧電基板は、前記一端側から前記他端側に向かう溝延在方向に延設されるとともに、前記噴射孔と連通する第1溝と、前記溝延在方向に交差する方向における前記第1溝の少なくとも一側に、前記溝延在方向に延設された第2溝と、を有し、
前記圧電基板の表面は、前記第1溝と前記第2溝との間で、当該表面に形成された導電膜をレーザの照射により除去した、前記溝延在方向に延びるレーザ加工部で露出するとともに、前記レーザ加工部以外の部分で前記導電膜により覆われ、
前記レーザ加工部は、前記第1溝または前記第2溝に近い前記圧電基板の角部を含む、
液体噴射ヘッドのヘッドチップである。
1…プリンタ、3…インクタンク、4…インクジェットヘッド、9…インク、41…インクジェットヘッドチップ、42…供給機構、410…カバープレート、411…アクチュエータプレート、411E…パッド電極、412…ノズルプレート、413…支持プレート、C1…溝、C1d…非吐出溝、C1e…吐出溝、P…記録紙、d…搬送方向、H2…噴射孔、Wd…駆動壁、Ed…駆動電極、Edc…コモン電極、Eda…アクティブ電極、F…導電膜、LA…レーザ加工領域、Pa…アクティブ電極パッド、Pc…コモン電極パッド。

Claims (10)

  1. アクチュエータプレートを有し、前記アクチュエータプレートにより液体に圧力を印加して、前記液体を噴射するヘッドチップの製造方法であって、
    前記アクチュエータプレートを作製することと、
    前記アクチュエータプレートの表面に、前記液体の噴射孔を有するノズルプレートを接合することと、
    を含み、
    前記アクチュエータプレートを作製することは、
    一端およびその反対側の他端を有する圧電基板であって、前記一端側から前記他端側に向かう溝延在方向に延設されるとともに、前記噴射孔と連通する第1溝と、前記溝延在方向に交差する方向における前記第1溝の少なくとも一側に、前記溝延在方向に延設された第2溝と、を有する圧電基板を準備することと、
    前記圧電基板の表面に導電膜を形成することと、
    前記第1溝と前記第2溝との間で、前記導電膜に対して前記溝延在方向にレーザ加工を行って、前記第1溝と前記第2溝との間の前記圧電基板の表面に、前記導電膜を除去したレーザ加工領域を形成することと、
    を含み、
    前記レーザ加工領域を形成することにおいて、前記レーザの照射範囲に、前記第1溝または前記第2溝に近い前記圧電基板の角部を内在させる、
    ヘッドチップの製造方法。
  2. 前記レーザ加工領域を形成することにおいて、前記溝延在方向に延びる複数のレーザ加工線に沿ってレーザを照射するとともに、前記複数のレーザ加工線のうち、少なくとも1本のレーザ加工線に沿って照射される前記レーザの照射範囲に、前記圧電基板の角部を内在させる、
    請求項1に記載のヘッドチップの製造方法。
  3. 前記レーザ加工領域を形成することにおいて、前記複数のレーザ加工線のそれぞれについて、複数回に亘って前記レーザを照射する、
    請求項2に記載のヘッドチップの製造方法。
  4. 前記レーザ加工領域を形成することにおいて、前記複数のレーザ加工線のうち、同一のレーザ加工線に沿って行う前記レーザの照射は、先行する前記レーザの照射を終了してから後の前記レーザの照射を開始するまでに、時間を空けて行う、
    請求項3に記載のヘッドチップの製造方法。
  5. 前記レーザ加工領域を形成することにおいて、同一のレーザ加工線に沿って行う前記レーザの照射の間に、異なるレーザ加工線に沿った前記レーザの照射を行う、
    請求項4に記載のヘッドチップの製造方法。
  6. 前記レーザ加工領域を形成することにおいて、前記角部を内在させる前記レーザの照射範囲を定める前記レーザ加工線が、前記複数のレーザ加工線のうち、最後に前記レーザが照射されるレーザ加工線である、
    請求項2から請求項5のいずれか一項に記載のヘッドチップの製造方法。
  7. 前記レーザ加工領域を形成することにおいて、異なるレーザ加工線に沿って照射される前記レーザの間で、前記レーザの照射範囲同士を重複させる、
    請求項2から請求項6のいずれか一項に記載のヘッドチップの製造方法。
  8. 前記レーザ加工領域を形成することにおいて、
    前記複数回のレーザの照射は、前記複数のレーザ加工線のうち、第1加工線に沿った前記レーザの照射範囲と、前記第1加工線とは異なる第2加工線に沿った前記レーザの照射範囲と、の間に間隔を空けて行い、
    前記第1加工線に沿った前記レーザの照射により露出させられる前記圧電基板の第1表面と前記第2加工線に沿った前記レーザの照射により露出させられる前記圧電基板の第2表面との間に、前記レーザの照射後の残渣物が堆積した堆積部を形成する、
    請求項2から請求項7のいずれか一項に記載のヘッドチップの製造方法。
  9. 前記レーザ加工領域を形成することにおいて、前記第1溝または前記第2溝に面しかつ前記角部を終端とする前記圧電基板の内側面を、前記角部から所定範囲に亘って露出させる、
    請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のヘッドチップの製造方法。
  10. 液体に圧力を印可するアクチュエータプレートと、
    前記アクチュエータプレートの表面に接合され、前記圧力が印可された液体の噴射孔を有するノズルプレートと、
    を備え、
    前記アクチュエータプレートは、一端およびその反対側の他端を有する圧電基板を備え、
    前記圧電基板は、前記一端側から前記他端側に向かう溝延在方向に延設されるとともに、前記噴射孔と連通する第1溝と、前記溝延在方向に交差する方向における前記第1溝の少なくとも一側に、前記溝延在方向に延設された第2溝と、を有し、
    前記圧電基板の表面は、前記第1溝と前記第2溝との間で、当該表面に形成された導電膜をレーザの照射により除去した、前記溝延在方向に延びるレーザ加工部で露出するとともに、前記レーザ加工部以外の部分で前記導電膜により覆われ、
    前記レーザ加工部は、前記第1溝または前記第2溝に近い前記圧電基板の角部を含む、
    液体噴射ヘッドのヘッドチップ。
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