JP2021091713A - 心臓肥大および肺高血圧の治療用医薬の製造におけるカウラン化合物の使用 - Google Patents

心臓肥大および肺高血圧の治療用医薬の製造におけるカウラン化合物の使用 Download PDF

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Abstract

【課題】臓器組織の線維症リモデリングを治療または予防するための医薬組成物を提供する。【解決手段】TGF−β阻害、マイクロRNA変調、新規ホスホジエステラーゼ変調、反応性酸素種(ROS)の捕捉、またはそれらの組み合わせが関与するメカニズムによる臓器組織の線維症リモデリングを治療または予防するための医薬であって、前記医薬が、イソステビオールまたはその医薬的に許容される塩を有効成分として含む。前記臓器組織が、心臓、肝臓、肺および腎臓の組織である。【選択図】なし

Description

心臓肥大は、圧力過負荷に対する代償としての応答である(Hilfiker−Klemerら、JACC 2006;48(9):A56−A66)。それは、最終的に心機能の低下とともに心不全の状態となる。増加した圧力の刺激の下で、心不全の状態への代償からの移行プロセスは、しばしば、心臓リモデリングを含む(Konstamら、JACC心臓血管撮影2011;4(1):98−108)。心臓リモデリングは、心筋細胞の過剰増殖または死、血管希薄化、線維症、炎症、および、進行性心機能不全を含む複雑なプロセスである(Burchfieldら、Circulation.2013;128(4):388−400)。細胞外マトリックスおよび関連するコラーゲンネットワークに取り囲まれた各心筋細胞の増加は、心臓の硬度を高める。間質ネットワークおよび線維症の乱れは、収縮機能を損ない、高血圧性心疾患後の有害心筋リモデリングに寄与し、心臓中でもっとも多い細胞である(全細胞集団の三分の二を構成する)心臓線維芽細胞は、細胞外マトリックス(ECM)を沈着し、足場心筋細胞を作り出す役割がある。活性化筋線維芽細胞は、間質および血管周囲腔中の、主たるコラーゲンタイプIおよびIIIであるECMの過剰生成につながる。過剰なコラーゲン沈着は、心筋硬直、心臓弛緩充満障害(拡張機能障害)、および心臓の過負荷につながる。
研究が示す通り、間質コラーゲンおよび心筋線維化の増加は、肥大による心機能不全に寄与する唯一の原因ではないかもしれない。交感神経活動の増加と迷走神経活動の撤退を伴う、神経ホルモンの活性化、電気生理学的リモデリングおよび自律神経失調といった他のメカニズムも心機能不全に寄与しうる。病的心臓肥大や心臓リモデリングを防止することは、劣化から心機能を維持するための重要な治療目標である。
シルデナフィルとともにPDE−5を遮断することによるcGMPの増加は、心室と心筋細胞肥大の両方を抑制し、公表されている慢性横断大動脈狭窄マウス生体内の心機能を向上させることが報告されている(Yuan F.JMCC1997;29(10):2837−48)。シルデナフィルはまた、心室の機能を回復しながら、圧力負荷によって誘導される予め確立された肥大を好転させる。
また、TACラットにおける左心の劣化は、順番に、低酸素症および肺動脈内圧力増加を引き起こし、血管リモデリングの原因となる(Chenら、Hypertension.2012;59:1170−1178)。
肺動脈の狭窄は、抵抗の増加をもたらし、肺高血圧症につながる。肺高血圧症(PH)は、後に右心不全につながる、肺血管系の急速進行性疾患である。PHは、肺血管の構造的なリモデリングにつながる低酸素症に長期間さらされることによって誘発される。血管収縮および血管リモデリングの組み合わせは、内側の肥大、内膜増殖、および小筋性動脈の線維化、コラーゲンの合成および沈着、毛細血管前の筋肥大ならびに診断叢状病変によって特徴付けられるPHT 多因性肺動脈症につながる。肺は、豊富なPDE−5の発現を有する器官である(Burchfieldら Circulation.2013;128(4):388−400)。シルデナフィル、PDE−5阻害剤が、低酸素への慢性暴露前およびラットにおける低酸素誘導PHT進行中に与えられたとき、肺動脈圧および血管リモデリングの上昇を減衰させることが示されている(Kwongら Cell metabolism 2015;21(2):206−14)。PHTの患者の臨床試験はまた、シルデナフィル治療は、患者の状態を向上させることができることを示している。
PDE−5は、生細胞における多様な生物学的プロセスを調節する不可欠な細胞内セカンドメッセンジャーであるサイクリックGMP(環状グアノシンーリン酸)の加水分解の触媒作用を及ぼす酵素である。PDE−5−シルデナフィル、バルデナフィルおよびタダラフィルの三つの選択的阻害剤は、勃起不全の治療のために、世界中の何百万人の男性によって成功的に使用されている。上述したように、シルデナフィルおよびタダラフィルは、現在、心臓肥大、心筋症、肺高血圧症、他の循環障害の治療のために使用されている。最近の研究では、心臓肥大、心筋症、脳卒中、神経変性疾患を含む、PDE−5阻害剤の潜在的神経学的アプリケーションを示唆している。
PDE−5阻害剤はまた、脳卒中および他の神経変性疾患から脳を保護しうる。中大脳動脈閉塞の梗塞症2時間後または24時間後に開始する7日間連続のシルデナフィルの経口投与は、梗塞体積への影響なく神経学的回復を大幅に強化する。著者は、シルデナフィル投与後のcGMPの皮質レベルの増加は、神経発生を誘発し、神経障害を低減しうることを提案した。
しかし、シルデナフィルは、患者に有害な影響を与えうる。高効率かつ低毒性を伴う心臓と肺組織における予防線維症のための次世代PEDの医学的必要性を満たさない。
化合物Aは、その甘い味と、心臓血管系に効果のある南アメリカの伝統薬として知られているステビオサイド由来ベイエランジテルペンである(Geuns JMC Stevioside. Phytochemistry.2003;64(5):913−21)。従来技術として、研究では、化合物Aおよび化合物Bなどのカウラン様化合物は、急性虚血再かん流心臓損傷に心臓保護効果を有し、不整脈を減少させることが明らかにされている(Tan、米国特許11/596,514,2006)。またイソステビオール(化合物A)は、糖尿病に有益であり得ることが報告されている。しかしながら、血管肥大、血管筋肥大およびコラーゲン沈着によって特徴付けられる、心臓もしくは血管リモデリング、または、心臓肥大および肺高血圧症に対する化合物Aのようなカウラン化合物の効果は、全く報告されていない。心臓肥大または線維症に関連する要因として知られるcGMPまたはTGF−βに対する式(I)の化合物およびイソステビオール(化合物A)の効果は、従来技術において報告されている。
本発明において、化合物Aのような、式(I)のカウラン様化合物は、TAC誘発性肥大ラットにおける心臓肥大の治療に有用であることを、我々は、初めて発表した。また、線維症およびコラーゲン沈着ならびに心筋細胞の大きさを減らすことによって心臓リモデリングを防ぐことができる。加えて、化合物Aのようなカウラン様化合物は、TAC−誘発性肥大ラットにおける肺肥大も防止することができる。化合物Aのようなカウラン様化合物の役割は、強化されたcGMPシグナル経路およびROSの捕捉の両方を含むものである。さらに、本発明は、他の薬剤に対して化合物Aの優れた治療効果を開示するものであり、また、化合物Aは、他のホスホジエステラーゼまたは機構を含むものである。
本発明は、心臓肥大および肺高血圧症の治療における式(I)のカウラン化合物の効果を開示するものである。式(I)の化合物は、天然、合成または半合成の化合物のクラスを示す。これらの化合物の多くは、公衆に知られている(Kinghorn AD,2002,p86−137;Sinder BBら, 1998; Chang FRら,1998;Hsu, FLら,2002)。式(I)の化合物は、1以上の不斉中心を有していてもよく、異なる立体異性体で存在していてもよい。
Figure 2021091713
式(I)において、
(ii). Rは、水素、ヒドロキシルまたはアルコキシのいずれかであり、
(iii). Rは、カルボキシル、カルボキシレート、ハロゲン化アシル、アルデヒド、メチル‐ヒドロキシル、エステル、アシルアミド、カルボキシルに加水分解しうるアシルまたはエーテル基のいずれかであり、
(iv). R、R、R、R、および、Rは、独立して、酸素、ヒドロキシル、メチル‐ヒドロキシル、メチル‐ヒドロキシルに加水分解しうるエステルまたはアルコキシメチル、のいずれかであり、
(v). Rは、メチル、ヒドロキシル、メチル‐ヒドロキシルに加水分解しうるエステルまたはアルコキシメチル、のいずれかであり、
(vi). Rは、メチレンまたは酸素である。
好ましい化合物の群は、式(I‘)に示される。前記化合物は、炭素13に隣接する置換基および炭素17および炭素18に誘導体を伴って、カウラン構造を有する。これらの前記化合物は、複数の不斉中心を有していてもよいし、また、異なる立体異性体またはジアステレオ異性体として存在しうる。位置8および13に関する絶対配置は(8R、13S)または(8S、13R)である。
Figure 2021091713
ここで、
(vii). Rは、カルボキシル、カルボキシレート、アルデヒド、メチル‐ヒドロキシル、メチルエステル、アシルメチルまたはハロゲン化アシルのいずれかであり、
(viii). Rは、メチル、メチル‐ヒドロキシルまたはメチルエーテルのいずれかであり、
(ix). Rは、メチレンまたは酸素である。
化合物Aは、天然のステビオサイドを酸性加水分解することによって得ることができる。化合物Bは、グリコサイド化合物Bであるステビオサイドのアグリコンである。化合物AおよびBは、異性体である。化合物Bは、ステビオサイドの加水分解および酸化の化学反応によって、または、動物の腸内細菌のカタナリシス反応によって得ることができる。
Figure 2021091713
化合物Aは、分子式がC 2030 であり、化学名が(4α、8β、13β)−13−メチル−16−オキソ−17−ノルカウラン−18オイック酸である。化合物Aは、エント−16−ケトベイラン−18オイック酸とも名付けられている。前記化合物は、炭素13にメチル基が、炭素16にカルボニック基が、および、炭素18にカルボキシル基が置換基として配置され、不斉炭素の絶対配置が(4R、5S、8R、9R、10S、13S)である、カウラン構造を有する四環ジテルペンである(Rodriguesら、1988)。
化合物Bは、分子式がC2030であり、化学名がエント−13−ヒドロキシカウル−16−エン−18オイック酸であり、ステビオールとも名付けられており、前記化合物は、炭素13にヒドロキシル置換基を有し、炭素16に隣接する二重結合によりメチレン基が付加されており、炭素18はカルボキシル基であり、キラル炭素の絶対配置が(4R、5S、8R、9R、10S、13S)である、カウラン骨格を有する四環ジテルペンである(Rodriguesら、1993)。
化合物AまたはBは、位置18におけるカルボキシレートが、ナトリウム、および基本的な金属またはクロライドおよびハロゲンであるカルボキシレートとして存在してもよい。化合物AおよびBは、両方とも、カウラン構造を有し、カウラン化合物である。化合物Aは、本発明においてより好ましい化合物である。本発明は、化合物AまたはBが心臓肥大および肺高血圧症の治療および予防に同様の治療効果を有することを開示するものである。式(I)の他の全ての化合物もまた化合物Aが発揮した効果と同様の治療効果を有することが推測される。大量の化合物Bが生体外の条件下で変異原性であり得ることが報告され、それゆえ、製薬治療での使用において、化合物Bに比べて、化合物Aがより好ましい。
本発明に用いられる化合物のAは、より良好な可溶性を有する化合物Aのナトリウム塩である。
式(I)のカウラン化合物は、その生物学的および薬理学的効果の可能性について広く研究されている。代謝メカニズムにおけるカウラン化合物の役割が、ほとんどの研究の術的関心事項である(Kinghorn, AD. 2002, Stevia, by Taylor & Francis Inc.)。
例えば、前記化合物は、細胞代謝産物、腸および炭水化物代謝におけるグルコース吸収、肝細胞のミトコンドリアにおけるエネルギー代謝、および、腎細胞における炭水化物および酸素の代謝物に影響を与えることが報告されている。また、前記化合物は、血管拡張および低血圧を引き起こすことが報告されている。さらに最近では、心臓や脳虚血、不整脈、虚血心臓における心筋収縮機能に対する化合物Aの効果が明らかにされている。心臓肥大、線維症および肺高血圧についての式(I)のカウラン化合物または化合物Aの効果を文書化した技術の研究はない。さらに、ホスホジエステラーゼ阻害剤またはROSスカベンジャーとして作用する式(I)のカウラン化合物を開示した従来技術はない。
本発明は、TACがラットの心臓肥大および心筋リモデリングを誘発することを開示するものである。1)化合物Aは、TACの3週間後に、心臓肥大を有意に阻害することができ、2)化合物Aは、細胞質のCa2+が増加することなく、心機能を有意に改善することができ、電気生理学的リモデリングを有意に改善することができ、3)化合物Aは、生体内での心筋線維症および生体外でのTGF−β誘導線維芽細胞増殖を阻害することができ、4)化合物Aは、肺血管のメディア肥大およびコラーゲンの産生を有意に阻害することが示されるTACの結果として、肺高血圧症を防止することができ、5)化合物Aは、イソプロテレノールにより誘導される心筋の増加したサイズを有意に減少させることができ、6)化合物Aは、PEDの阻害によるcGMPの上昇を介して作用し、7)化合物Aの心臓保護作用は、追加の新規な機序を含むことが示されるPDE−5A阻害剤シルデナフィルより優れている。8)化合物Aはまた、繊維芽細胞または心筋細胞における2’3’サイクリックまたは3’5’サイクリック形成のいずれかでのcAMPおよびcGMPの両方を変調することが見出された。
本発明は、化合物AがTAC誘発性心肥大および心筋拡張ならびに筋線維芽細胞の増殖の影響を低減することを開示するものである。心臓肥大の指標の一つである、心臓と体重の比(HW/BW)の有意な増加は、3週間のTAC群で観察された。HW/BWの増加は、化合物Aの投与を伴うTACにおいて大幅に減少した。HW/BWの増加は、心筋細胞の断面において、3週間のTACラットがシャムラットと比較して76%パーセント増の増加を伴うものであった。これは、収縮または拡張のいずれかの心臓機能の有意な改善を伴う、化合物Aで処置した3週間のTACラットにおいて10%だけ増加するものであった。心臓および心筋細胞肥大は、化合物Aにより改善された。
肥大化と共通するのは、コラーゲン形成およびアクチンリモデリングである。TACラットにおける十分に特徴付けられた組織構造の変化は、そのアクチン細胞骨格の動態、すなわち、G−アクチンよりもF−アクチン含有率が高いということである。TACは、モノマー(G−アクチン)に対するポリマーの比(F−アクチン)を増加させるアクチンの極性形成を引き起こす。心室の圧力負荷もまた、間質性線維症、心臓のコラーゲン沈着の増加を引き起こす。
本発明は、化合物Aの投与がF−アクチンレベルとコラーゲンの沈着を減少させることを開示するものである。また、本発明は、化合物Aが上述したシルデナフィルの効果よりも効果的かつ強力であることを開示するものである。
線維症およびコラーゲン沈着の減少は、収縮と拡張の際に左心室の高い弾力性と低い硬度によって測定される血液ポンプとしての心臓の優れたパフォーマンスをもたらし、心筋コンプライアンスおよび収縮の増加をもたらすものである。
左心室の圧力と体積を同時に測定した。2つのパラメータは、前負荷または後負荷のいずれかの変化時の圧力と容積の関係を観察することにより導出することがでる。ESPVRは、収縮末期の圧力と容積の関係の勾配であり、収縮末期弾性体を表し、 EDPVRは、拡張末期の圧力と容積の関係の勾配であり、心臓の硬度を表す。TAC後3または9週間の心臓肥大において、心臓のポンプ機能障害が有意なESPVRの減少およびEDPVRの増加によって明らかとなった。本発明は、TACラットにおける化合物Aの投与がESPVRとEDPVRの双方とも並びにシャム対照群ラットと比較して収縮および拡張機能の劣化を防止することを開示するものである。そのため、化合物Aは、収縮時の正常な弾性を維持し、TACラットのように高圧負荷を伴う拡張時の心臓の硬度を減少させるのに有用である。
TGF−βシグナル伝達経路は、コラーゲン産生を仲介する、圧力負荷後の心筋線維症において重要な役割を果たしていることが実証されている。cGMPのシグナル伝達経路は、TGF−βによって誘導される心臓線維症に対する重要な調節的役割を果たしている。
本発明は、化合物Aが培養新生児ラット心臓線維芽細胞においてTGF−β誘導性増殖を防止することができることを開示するものである。さらに、本発明は、その抗肥大および抗線維化の役割に関連し、化合物Aが心臓線維芽細胞に投与され、cGMPレベルの有意な増加があったことを開示するものである。
さらに、本発明は、心臓線維症の促進剤として実証されているマイクロRNA21が、虚血心の半影領域において、化合物Aにより有意に減少したことを開示するものである。この変化は、マイクロRNA21が同じ領域での線維症の有意な改善と一致する。化合物Aのこの効果は、従来技術において報告されているものではない。
BNPは、肥大の重要な指標である。イソプロテレノール刺激に対する心筋細胞の肥大応答は、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)で実証されるようにBNPのmRNA発現、および、ウエスタンブロット法により示されるように、BNPタンパク質の増加を伴うものである。本発明は、化合物Aの投与がBNPの産生および心筋細胞におけるBNPのmRNA発現の両方の増加を大幅に減少させることができることを開示するものである。
cGMPの増加は、BNPの刺激またはホスホジエステラーゼ(PDE)の阻害のいずれかの結果である得る。BNPが化合物Aによって減少するため、化合物AによるcGMPの増強効果は、主としてPDEの阻害によるものである。
cAMPおよびcGMPの両方およびそれらの異性体が細胞内シグナル伝達経路における役割を果たしている可能性がある。HPLC−MS法を用いて、同時に異なる細胞によって産生されたcAMPおよびcGMPの異性体を検出することができる。本発明は、化合物Aの投与後、肥大心筋細胞、正常心筋細胞および線維芽細胞における3’5’cGMP、2’3’cGMP、3’5’cAMPおよび、3’5’cAMPレベルの有意な変化があったことを開示するものである。この変化は、化合物Aを伴う培養時間の相違によって異なるものである。これらは、異なるcAMPまたはcGMPおよび異性体が、線維症、肥大および他の死亡の処置における化合物Aの効果に関与することを示すものである。化合物Aのこれらの効果は、従来技術において報告されているものではない。
本発明はまた、肺高血圧症の治療における化合物Aの使用を開示するものである。TACによって誘発される圧力の過負荷は、ラットにおける肺高血圧を誘導するための確立された方法の一つである。本発明は、上述と同様のTAC動物における肺高血圧症の損傷を実証した。中小(内径<100um)肺動脈(直径<100um)のいずれかにおいて内壁が肥厚した肺高血圧症ラットにおいて、かなりの肺血管リモデリングが明らかであった。本発明は、化合物Aの投与が中小両方の動脈血管リモデリングを防止することを開示するものである。筋肥大の程度は、非筋肥大、部分的筋肥大、完全筋肥大に分類される。化合物Aの投与後、肺高血圧症の改善を示す、非筋肥大の血管の数が増加した。この点において、化合物Aは、シルデナフィルよりも効果的である。
本発明はまた、心臓肥大、線維症および心筋症および糖尿病における腎線維症の治療における化合物Aの使用を開示するものである。
また、ミトコンドリア由来ROSは、シグナル伝達経路心臓肥大を調節するために、細胞内メッセンジャーとして機能することができる。ダオフ・ダイは、ミトコンドリアで直接生成されたROSがGαq誘発性心臓肥大の中心的なメディエーターであるかもしれないことを報告した(DAI DF, Rabinovitch P. Autophagy 2011;7:917−918)。
本発明において、我々は、シルデナフィルのような古典的なPED阻害剤は従来技術ではそのような効果が報告されていないながら、化合物Aは、PEDの阻害に加えて、細胞質ゾルおよびミトコンドリアのいずれかでROS(活性酸素種)を減少させることにより、心筋細胞肥大を抑制することができることを開示するものである。これは、肥大症および他の疾患の抑制において、シルデナフィルに対する化合物Aの優位性を説明するものである。本発明は、従来技術で開示されているものとは異なる新規な機構を備えたPED阻害剤としての化合物Aの新しい使用を開示するものである。
本発明は、シルデナフィルが勃起不全のための第一線の製薬であるものの、化合物Aが心臓肥大およびコラーゲン沈着ならびにcGMP産生の刺激の抑制において、シルデナフィルよりも強力であることを示すものである。実施形態において、本発明は、化合物Aの相対的に高用量での投与後の雄ラットおよび犬における長期的な陰茎勃起を開示するものである。本発明はまた、化合物Aが勃起不全のために使用することができることを開示するものである。
本発明はまた、化合物Aがアルツハイマー病の治療のために使用することができることを開示するものである。従来技術において、シルデナフィルによるcGMPのシグナル伝達経路の増強が報告されている(RC Kukrejaら、exp clin cardiol 2011;16(4):e30−e35)。我々の発明は、化合物AがcGMPの刺激においてシルデナフィルよりも強力であることを示すものである。本発明は、脳損傷ラットにおける、化合物Aによる、化合物Aの抗アストログリオーシスおよび抗瘢痕形成の効果を示すものである。本発明は、化合物Aが神経変性疾患、アルツハイマー病などの認知症を予防するために用いることができることを開示するものである。
従来技術では、上述の化合物AまたはBの治療効果が複数のメカニズムに関与し得ることが開示されている。Jeppesen PBは、カリウムチャネルがインスリン分泌における化合物Aの刺激効果に関与しないことを示したものの(Jeppesen PBら、2000)、Wang KLは、化合物Aの血圧降下作用が平滑筋細胞膜のカリウムチャネルに関与しうることを示唆した(Wang KLら、2004)。タンは、化合物AおよびBが、カリウムATPチャンネルブロッカーである、5−OH−デクダノエートによって部分的にのみ遮断することができる虚血ミトコンドリアにおける保護の役割を果たしていることを開示した(Tan、米国特許、11/596,541,2006)。したがって、従来技術においては、化合物AがKATPチャネルと関連しているかどうか、およびどのように関連しているか、明らかにされていない。
本発明だけが、化合物Aそれ自体が筋線維鞘またはミトコンドリアKATPチャネルのいずれかに影響を及ぼさなかったことを開示するものである。代わりに、化合物Aは、例えばピナシジルなどの既知のK ATPチャネル開口薬およびATPの変化に対してより大きなKATPチャネル応答を与える増感剤としてのみ作用するものである。
従来技術では、化合物Aが、収縮性を強化し、および、虚血心筋を保護することができることが開示されている。しかし、すべての既知の心筋収縮力に影響を与える薬は、次には酸素の消費量を増やす、Ca++増加の拡大において心臓機能を強化するものである。したがって、心筋収縮力に影響を与える薬の使用は、ECGにおけるベースラインからのST波の下降または上昇によって示されるように、心臓の状態を悪化させうる。従来技術では、化合物Aの心筋収縮力に影響を与える効果のみが開示されている。
本発明は、細胞質ゾルCa++または酸素消費を増加させることなく、劣化し肥大した心臓における心機能を改善するために化合物Aを使用することができる、選択的な強心薬の新規使用を開示するものである。さらに、肥大した心臓におけるECGを改善させる代わりに、ECGを悪化させるものではない。これは、化合物Aが、心筋細胞の細胞質ゾルCa++レベルを減少させる一方で、肥大心筋細胞内の各収縮中のCa++過渡のピークのみを向上させることができることによるものである。この新しい発見は、化合物Aを他の既知の伝統的なジギタリスなどの強心薬やエピネフリンなどのβアゴニストとは異なるものとするものである。
本発明はまた、モルモットからの心筋細胞において、化合物のAが、QT延長セグメントおよびQTのばらつきの増加を低減することができ、さらに、長期の活動電位を防ぎ、静止電位を低減し、および、虚血および再灌流の結果としての抑制されたHerg(lkr)電流(suppressed Herg (lkr) currents)を開示するものである。化合物Aはまた、スカベンジャーとしてROS(活性酸素種)を低減することができる。したがって、上記を伴う診断をしたクリニックにおけるECG異常値の治療に使用すること、また、上述のメカニズムが関与しうる疾患または臨床診断法に使用することができる。
他の実施形態において、本発明は、化合物Aがアストログリオーシスの阻害による後期または長期の脳損傷に対して有効であることを開示するものである。従来技術では、化合物Aが阻害急性炎症およびアポトーシスによる24時間以内の虚血/再灌流(I/R)脳損傷を保護することができることが報告されている(Xuら、 Planta Medica, 2008, Vol. 74(8), pp. 816‐821)。
反応性アストログリオーシスは、さらなる神経の損傷を及ぼすI/R脳損傷の後期における一般的な病理学的プロセスである。また、それは、I/R脳損傷ラットに7日間連続して化合物Aを与えた本発明において、アルツハイマー病などの神経変性疾患においても見られる。結果は、梗塞容積の減少、神経学的挙動および細胞形態の改善、ニューロンの生存および反応性アストログリオーシスの増強によって示されるように、化合物Aが7日後の後期脳I/R脳損傷に対する保護効果を示したことを開示するものである。1回のまたは7回連続の化合物Aの処置のいずれかの治療効果を分析し、I/R損傷の7日後において比較した。7回連続の化合物Aの処置は、1回の処置と比較してI/R損傷を有意に改善した。活性化星状細胞の蓄積が、化合物Aの連続投与によってI/R損傷が有意に阻害された後、7日目に確認された。
後期I/R損傷に対する化合物Aの保護機構は、従来技術におけるその急性期とは異なるものである。後期における効用は、主に反応性アストログリオーシスの阻害を含むものである。上述したように、化合物Aは、PDEの阻害によりcGMPを増加させることができる。既知の通り、化合物Aの作用機序でありうる、cGMPは、脳損傷によって誘発されるアストログリオーシスを阻害する。
式(I)の化合物Bは、化合物Aと同様の効果を有するが、しばしば効力が弱い。
化合物AおよびBを含む式(I)の化合物はまた、皮膚創傷治癒、コーナー回復、網膜損傷、肺線維症、肺気腫および肝硬変における瘢痕組織の形成を低減するなどの線維症またはコラーゲンの過剰生成に関連する他の疾患の治療に使用することができる。
化合物AおよびBを含む式(I)の化合物は、塩基性金属(例えば、ナトリウム)およびハロゲンのような他の物質と医薬的に許容される塩を形成することができる。これらは、医薬組成物を構成するために医薬担体と結合させることができる。式(I)およびその医薬組成物の化合物は、経口、静脈注射、吸入、または他の経路により投与されることができるし、静脈および動脈へカテーテルを介して投与することができる。
他の実施形態において、ナトリウム化合物Aは、圧縮空気(PARIネブライザー装置)によって動力を与えられたエアロゾライザーに接続された容器中の滅菌生理食塩水に溶解した。より良い肺沈着のため、エアロゾル粒子の大きさが製薬基準(FDAまたはEU)を満たしていることを確認するために、生体内でインパクター(NGI)を用いてエアロゾル液滴を評価した。モルモットを麻酔し、化合物Aのエアロゾル噴霧液を、気管内チューブを経由して放出し、肺に吸入させた。肺機能、線維症または肺の炎症に対する化合物Aの治療効果は、動物の傷付処理の前後において調査された。従来技術では、化合物Aは、吸入薬として使用されていない。
さらに、本発明は、共溶媒技術を用いたナトリウム化合物Aの液体製剤である、医療に適したナトリウム化合物Aの静脈注射製剤を開示するものである。静脈内(i.v.)投与は、迅速な治療効果を発揮する。しかしながら、化合物Aのようなテルペンの静脈内投与は、疎水性の炭化水素骨格を含むそれらの化学構造のためにそれらの低い水溶解度によって非常に限定される。静脈内投与のための十分な安定性および許容される安全性を伴う化合物Aの液体医薬組成物は、従来技術において報告されていない。医療目的で、医薬注射製剤を、薬物当局の規制に従ったその毒性、過酷な条件下での溶解力および安定性を伴う適合性、ならびに、薬物動態に基づく厳格な試験に供するものである。化合物Aの医療用として適した注射可能な医薬製剤は、従来技術において、開発されていない。本発明は、初めて、生理学的に許容されるpH、希釈との相溶性、十分な物理的化学的安定性および生物学的安全性が証明されたプロファイルを有する化合物Aの医薬製剤を発明したものである。
界面活性剤の使用、ナノ粒子系における疎水性化合物の結合(例えば、リポソーム、ミセルおよびマイクロエマルジョン)およびシクロデキストリンを含む、疎水性化合物のための可溶化方法の種類がある。しかし、界面活性剤は、その毒性のため、静脈内投与において非常に制限されており、ナノ微粒子系は、臨床応用において難解であることが知られている。
本発明においては、静脈投与のためのナトリウム化合物Aの液体製剤は、pH値の調整および製薬業界や診療所において広く採用されている有機溶媒を少量使用することによって開発されたものである。
静脈内投与向けとしてFDAによってすでに承認された唯一の有機溶媒が、化合物Aの溶解度を増加させるために使用される。いくつかの溶媒の広範なスクリーニングの後、本発明は、pH10.0の生理食塩水において、25%のエタノールおよび20%のプロピレングリコール(2%、w/w)(ナトリウム化合物A)からなる化合物Aの最適化された溶媒系を開示するものである。ナトリウム化合物Aは、20mgまたは50mg/mLの最高濃度で、溶質の使用を最小限にし、副作用を避ける本発明の製剤によく可溶化されており、本発明のこの最適化された製剤は、高湿度および高温条件での加速試験中において結晶化または分解することなく、少なくとも90または30日間、物理化学的に安定であった。オートクレーブの滅菌は、静脈注射用製剤の安全性を確保するために行われ、ナトリウム化合物Aは滅菌工程において適合的かつ安定であった。
この注射可能な製剤は、低温および高温での貯蔵中に安定であることが示された。ごくわずかな量の不純物が過酷な条件を含む加速および長期試験中に生成され、そして、不純物とその内容は、FDAガイドラインによれば、許容される範囲内であった。化合物Aの溶血作用と細胞適合性は、本発明において検査されている。製剤は、9.1%(v/v)まで3時間、溶血作用を、また、H2C9細胞において50μg/mlまで、有意な細胞毒性のいずれも誘導しなかった。生体内研究では、有意な急性中毒は、製剤の過剰な量投与されたラットにおいて、観察されなかった。これらの試験は、本発明の注射可能な製剤が薬学的に許容される安全性を有することを示すものである。
本発明による式の化合物の薬学的に許容される塩は、従来の薬学的に許容される無機または有機酸と形成されるものを含み、例えば、ナトリウム、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸二水素、メタン、臭化物、メチル硫酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、グリコネート、グルコン酸、クエン酸塩、酒石酸塩、乳酸菌、ピルビンイセチオン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩またはp−トルエンスルホン酸塩である。
上記が本発明の一般的な説明である。これらは当業者により行うことができるように、本発明にかかる方法および技術は、以下の実施例により、より好ましく説明されるものである。
本発明の方法および実施形態は、以下の実施例において詳細に提供されるものである。

さらに、本発明の目的を達成するために使用される技術を説明するために、本発明における医薬およびカウラン化合物の治療上の有用性を測定および特定することに関する詳細な方法、技法、手順および特別な特徴を以下に記載する。
実施例は、本発明の実施可能性をサポートするため、および、本発明で使用される動物モデルを検証するための実施方法および結果を提供するものである。適切なコントロールと統計テストは、本発明のすべての実施に使用されるものである。以下の実施例は、本発明の説明であり、これに制限されるものではない。実施例は、式(I)の化合物におけるいくつかのカウラン化合物の治療的使用を選定および決定するために利用される方法および技法を説明するものである。式(I)の他の化合物の治療的使用もまた同様に決定することができる。

実施材料
動物:成体雄のウィスターラット、体重200グラム±20グラム、9週齢、両性別とも。各ラットは、一定の温度と湿度、厳格な暗光管理下および標準的な実験用食を自由に与えられる、標準的な条件下において、個々のケージに収容される。化学:化合物A(エント−17−ノルカウラン−16−オキソ−18−オイック酸、分子式はC 2040、分子量は318.5)を、ステビオサイドから酸加水分解、結晶化および精製を経て製造する。化合物Aのナトリウム塩は、水酸化ナトリウムまたは他のナトリウム含有塩基を添加することによって形成することができる。化合物Aの構造は、従来から公表されているデータと整合する、推論分析およびNMRによって確認される。化合物Aのナトリウム塩は、高速液体クロマトグラフィーによって99%以上の純度であると測定された化合物Aによって形成される。化合物B(エント−13−ヒドロキシカウル−16−エン−18‐オイック酸)は、ステビオサイドの酸化、加水分解、酸性化、抽出、精製および結晶化を含む一連の工程を経て製造される。化合物Bの構造は、従来から公表されているデータと整合する、推論分析およびNMRによって確認される(Mosettig E.ら、1963)。高速液体クロマトグラフィーによって測定された化合物Bの純度は99%以上である。試験化合物の投与:静脈内または腹腔内注射または経口。投与量:化合物A:0.5mg/kg から10mg/kg(またはそのナトリウム塩)、化合物B:2mg/kgから20mg/kg。

実験方法
心臓肥大(TAC)動物モデルおよび実験プロトコルの確立
腕頭動脈と左頸動脈の間にTACを、3週間(3週間TAC)または9週間(9週TAC)、圧力の過負荷を誘導するために行った。シャム対照群動物に同様の手術を行ったが、大動脈収縮はない。すべての外科的処置は、3%ペントバルビタールナトリウムの腹腔内注射(腹腔内40mg/kg)で麻酔した動物に行われた。手術期間中、ラットに、ローデントベンチレーター(ハーバード社製、ホリストン、MA、USA)を挿管し、換気した。
3週間および9週間のTAC下にある両方のラットをランダムに、TAC媒体対照群、化合物A、低い(TAC+化合物A(L)、1mg/kg/日)、中間(TAC+化合物A(M)、2mg/kg/日)、高い(TAC+化合物A(H)、8mg/kg/日)を含む、5グループ(n=8〜10匹)に分け、それぞれのグループに投薬し、および、陽性対照グループとして、シルデナフィル(TAC+シル、70mg/kg/日)を設けた。シャム対照群は、すべて媒体の処置がなされた。TAC処置による急性および慢性の死亡率は5%未満であった。治療グループは、生理食塩水および同量の有機溶媒(1:1、0.5ml)および蒸留水に溶解したシルデナフィルの混合物に溶解した化合物Aのナトリウム塩を胃内投与された。すべての薬および媒体の投与は、手術後3日間、計画通りに一日に二回与えられた。動物は手術後3週目および9週目に適切に検査された。観察期間の終了および生体内での血行動態測定後、全ての動物を犠牲にし、さらなる分析のために心臓を外植した。
心臓の動的パラメータの測定
心臓血行力学的分析は、圧力−容積(PV)カテーテルによって行われた。ラットに麻酔をかけ、温暖パッド(37℃)上に配置した。気管開口術を受けた、ラットを、その後、室内空気を使用して、一回の呼吸量が4〜6ミリリットル/200グラム、1分あたり70回の呼吸で、正圧を使用して呼吸させた。右内頸動脈を特定し、頭側連結した。4電極の圧力−容積カテーテル(モデルSPR−838、ミラーインスツルメンツ社)を開胸せずに右頸動脈内に進めた後、安定したPVループが得られるまで左心室内に進めた。10から15分間の信号の安定化の後、ベースラインPVループは、定常状態で記録された。腹部は、その後、下側の大静脈および門脈を特定するために開腹された。大静脈閉塞時の前負荷は、綿棒で下側の大静脈の圧迫により変化した。データ収集時において、小動物人工呼吸器は、肺の動きによる不自然な結果を避けるために、5秒間停止した。データが定常状態の条件下で前負荷減少中に記録された後、並列コンダクタンス値は、40μlの高張食塩水(30%)を右頸静脈に注入することにより得た。絶対容積に対する相対容積単位コンダクタンス信号からのキャリブレーションは、前記方法を用いて行った。生体内の左心室機能の測定時に、各動物の末梢抵抗の変化を調べた。縦鼠径部切開部を介して、圧力変換器に接続されたポリエチレン動脈カテーテル(PE10)を、逆行性大腿動脈を介して遠位腹大動脈に挿入した。データは、PowerLab(登録商標)システムの別々のチャネルに記録された。カテーテルに血液凝固を防ぐためにヘパリン生理食塩水(100U/ml)を充填した。
組織学研究
ラットの心臓の組織切片を10%の中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィンに包埋し、3mmの連続切片に切断し、次いでヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)、ピクロシリウスレッドまたはファロイジンで染色した。ニコンシステムおよびツァイスの共焦点顕微鏡が、デジタル画像を記録するために使用された。H&Eでの染色は、細胞の大きさを評価するためであり、ピクロシリウスレッド(シグマCA)での染色は、標準的な手順を用いて線維症を試験するためであり、F−アクチンの部分は、ファロイジンで染色された。観察者が組織起源に関して盲検で、我々は、コンピュータ支援画像解析(イメージプロプラスソフトウェア)を用いて断面セル領域および間質コラーゲン画分を測定ないし究明した。少なくとも4〜5の異なる心臓が、分析のために定量化された。
心臓線維芽細胞の単離および培養
前述のとおり、新生児ラット心臓線維芽細胞が、1−2日齢のSDラットから単離された。簡潔に言えば、新生児1−2日齢のSDラットからの心臓を氷上で細分化し、細胞を37℃でトリプシンでの培養により単離した。非心筋細胞は、差別的メッキ前処理により心筋細胞から分離した後、心筋細胞を培養皿に播種した線維芽細胞を用いて除去した。細胞は、0.05%トリプシン溶液を使用して、3日後に継代した。細胞を、37℃に維持し、5%のCO 条件下で、5%ウシ胎児血清を用いたDEME/F12培地中で培養した。
細胞増殖
培養中の心臓線維芽細胞の生存率を、3−(4,5ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム臭化物(MTT)法を用いて評価した。この評価は、生細胞におけるMTT基質(黄色から青)を低減する活性ミトコンドリア酵素の能力を測定する。単離された一次心臓線維芽細胞を96ウェルプレート上に無血清条件で播種した。培養の24時間後、0.5ミリグラム/mlのMTT基質を添加し、細胞をさらに4時間培養し、次いで、室温で10分間、DMSOで可溶化した。吸光度を460nmで測定した。
統計分析
全てのデータは、平均±SEMとして示される。複数グループ間の差は、フィッシャーテストの前に、分散分析(一元配置分散分析)により比較される。すべてのP値は、両側p値である。0.05未満のP値は、統計的に有意であると考えられる。
本実施例は、TAC誘発性心臓肥大および心筋細胞膨張の減少に対する化合物Aの効果を説明するものである。
成体ウィスターラットを3週間TACに付し、それぞれ、媒体、化合物Aまたはシルデナフィルが投与された。心臓肥大の指標である、心臓体重比(HW/BW)の有意な増加は、心臓の断面積の増加(81.6%の増加、P<0.001)を伴い、3週間TACグループ(34.6%の増加、P<0.001)で観察された。心臓および筋細胞肥大は、3週間TACグループ(表1)において、化合物Aまたはシルデナフィルによって改善した。心筋細胞の断面積の増加は、それぞれ、化合物Aによって15.1(1mg/kg)および4.1%(2mg/kg)、シルデナフィルによって16.3%(70mg/kg)、減少した。化合物Aは、シルデナフィルより強力かつ有効である。
表1.TACラットの体重に対する心臓重量における化合物Aの効果(n=8)
Figure 2021091713
本実施例では、アクチンリモデリングおよび線維形成を阻害する化合物Aの効果について説明する。
肥大に重要ないくつかの転写因子は、遊離G−アクチンおよびポリマーF−アクチンにより制御されるアクチンダイナミクスに影響を及ぼす。G−アクチンよりもF−アクチン含量が高いことは、肥大経路の活性化の重要な結果である。心筋F−アクチンのレベルはFITCファロイジン染色により測定された。TACの代表的な免疫蛍光画像は、化合物A(8mg/kg/日)またはシルデナフィル(70mg/kg/日)の投与によって対照条件に戻った、9週間後にFアクチンの増感緑色染色を示した。TACは、Fアクチンのレベルを増加させ、よって、アクチンダイナミクスを誘導した。化合物Aおよびシルデナフィルの両方は、Fアクチンの発現を減少し、F/Gアクチンのバランスを維持することができる。
化合物AがTAC誘発性心臓線維症を減衰させるかどうかの測定にあたり、左心室における間質コラーゲン分布を検出するため、心臓組織をピクロシリウスレッドで染色した。3週間および9週間のTACグループの両方に、TACは、有意な間質性線維症(P <0.05)を誘導した。コラーゲン含有量は、シャム対照グループと比較して、3週間および9週間TAC対照グループで、それぞれ、5.7倍および7.5倍、増加した。化合物A(8mg/kg/日)の投与は、3週間および9週間のTACグループにおける間質性線維症を、それぞれ、58.2%および80.8%、減少させた。シルデナフィルは、化合物Aと比較して、心臓線維症の阻害効果が少ないことが示された。
本実施例では、cGMPの生成における化合物Aの効果について説明する。
cGMPの測定
媒体、化合物Aまたはシルデナフィルの投与後の新生児ラットの線維芽細胞におけるcGMPレベルは、ELISAキットを用い、その製造者の指示書に従い測定した。
静止状態の細胞は、異なる用量の化合物A(1M、10M)またはシルデナフィル(100M)で3時間、培養された。処理後、細胞を0.1Nの塩化水素で溶解し、cGMP ELISA分析を実施した。結果は以下の表に記載の通りである。
表1.化合物AおよびシルデナフィルによるcGMPの刺激生成(対照のパーセント)
Figure 2021091713
本実施例では、化合物Aが交感神経活動を抑制することによりTACによって損なわれた心臓自律神経バランスを安定させることについて説明するものである。
心電図のモニタリング
TAC手術後3または9週間のラットをペントバルビタールナトリウム(腹腔、40mg/kg)で麻酔した。心電図(ECG)をIIアイントホーフェン誘導を用いて測定した。3つのステンレス22G針電極は、右前脚(G1)と左前脚(GND)、そして左後脚(G2)の差し込みに配置した。従って、10分のECGの記録は、他の手順の前に、2kHzでデジタルに取得した。心拍変動スペクトル解析は、高速フーリエ変換を用いて行われた。振動成分は、非常に低い周波数(VLF;<0.04Hz)、低周波(LF;0.04から0.6Hz)、または高周波(HF;0.6から2.5Hz)の帯域に分離した。HRV成分は、総電力パーセンテージとVLF成分の差分として正規化された単位(n.u.)で発現した。遠心性迷走副交感神経活性は、HF成分の主要な原因であり、交感神経と迷走神経の影響はLF成分の原因となっており、従って、LFのHFに対する比率は、通常、交感迷走神経バランスの尺度として用いられる。
心拍変動(HRV)のパラメータは、心臓自律神経バランスの指標である。RR変動のパワースペクトル解析では、9週間TACに曝されたラットは、HRVの相対スペクトル成分の分布において著しい変化を見せていることが示された。LF/HF比は、シャム対照と比較して際立って高かったが、化合物A投与(P<0.01)によりLF/HF比が正常に戻った。シルデナフィル投与では、LF/HF比が減少しなかった。本発明は、シルデナフィルでは効果がなかった交感神経活動の上昇抑制により心臓の自律神経バランスを回復するための新規な化合物Aの使用を開示するものである。
本実施例は、化合物AがTACにより誘導されたECGの変化を改善することについて説明するものである。
我々は、さらに心臓肥大における電気生理学的な変化における化合物Aの効果を研究した。9週間TACに曝されたラットは、より長いQRS期間およびより高いR振幅(P<0.05)を有した。化合物Aまたはシルデナフィル投与後、QRS期間とRの振幅が正常に推移した。9週間後、心臓の不整脈の高リスクを示す、TAC手術により誘導されたQT分散(P<0.01)およびQTc分散(P<0.01)の大幅な増加があった。化合物Aの投与ではこのような好転する効果があったが、シルデナフィルの投与は同様の保護効果を示さなかった。
本実施例は、化合物Aが心筋における心機能を改善し、心臓リモデリング、線維症および糖尿病損傷による炎症を防止することを説明するものである。
糖尿病の糖尿病性心筋症(DCM)は、心筋の損傷を誘発した。DCMは、炎症、酸化ストレスおよび線維症のマーカーの発生に関連する変化を伴い、ストレプトゾトシン(STZ)によって誘導される。ウィスターラットを、ランダムにグループA(正常対照)、グループB(糖尿病)、グループC(DM/STVNa)およびグループD(DM/TMZ、トリメタジディン投与)の4つのグループに分けた。12〜16週間後、左心室機能を、圧力−容積システムにより測定した。心臓組織を、ヘマトキシリンおよびエオシン、シリウスレッド染色によって、組織学研究ならびに酸化ストレス分析のために調製した。酸化ストレス、炎症、および線維化マーカーは、分子生物学的手法により評価した。すべてのデータは、形態計測的に測定して統計学的に分析した。投与されたすべてのグループは、対照群と比べて、血糖値の有意な増加およびインスリン値の減少を示した。糖尿病グループは、心筋細胞肥大、炎症、間質性線維症、コラーゲンの体積分率の有意な増加、TGFβおよび心臓組織における酸化ストレスを示し、正常対照群と比較してスーパーオキシドジスムターゼ2(SOD−2)の発現および活性が減少した。グループCおよびDにおける、化合物AならびにTMZの投与により有意に阻害された心臓肥大、相対心臓重量および抗酸化活性は、対照群と同様であった。しかし、糖尿病グループ(B)と比べると、グループBおよびDにおける血糖値およびインスリン値に有意な変化は見られなかった。心機能はグループBと比べ、グループBとDでは有意に改善された。
本発明は、化合物Aが糖尿病により誘導される心臓損傷、心臓リモデリングおよび線維症を防ぐとともに、糖尿病による心筋の心機能を改善することができ、これらの効果がグルコースまたはインスリンのいずれの変化にも関連しないことを開示するものである。
本実施例は、肺高血圧症の治療における化合物Aの効果を説明するものである。
圧力過負荷誘発性肺高血圧症は、雄のウィスターラット(200±20グラム体重)における横大動脈狭窄によって誘導される。シャムラットを対照として用意した。化合物Aの投与(毎日胃内洗浄し、2または4mg/kg体重)を、大動脈狭窄の3日後に開始し、9週間続けた。9週間後、動物を屠殺し、肺を固定し、パラフィン包埋し、分割し、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。平均肉厚の盲検立体的解析と肺動脈血管の血管筋肉化を行った。コラーゲンIは、免疫蛍光染色によって検証し、共焦点で可視化した。

結果
1)肺血管リモデリング
多量の肺血管リモデリングが、小(内径<100um)、中肺動脈(直径<100um)が内壁肥厚化した肺高血圧ラットにおいて明らかであった。化合物Aは、中小動脈の血管リモデリングを防いだのである。
表1.内径<100umの肺動脈の平均血管壁の厚さの比較(x±SD,n=3)
Figure 2021091713
注:**シャムグループと比較してP<0.01。 ## TACグループと比較してP<0.01。 && シルデナフィルグループと比較してP<0.01。
表2.内径>100um肺動脈の平均血管壁の厚さの比較(x±SD,n=3)
Figure 2021091713
注: シャムグループと比較してP<0.05。 ## TACグループと比較してP<0.01。 && シルデナフィルグループと比較してP<0.01。
2)血管筋肥大
肺血管の直径による、血管筋肥大、非筋肥大、部分的筋肥大および完全筋肥大の異なる程度がある。化合物Aの投与後、肺高血圧症の改善を示す、非筋肥大血管の数が増加した。化合物Aは、シルデナフィルグループに比べて、優位により強力で効果的である。
表3.ラットの5つのグループ内における血管筋肥大の異なる程度の割合(x±SD,n=3)
Figure 2021091713
注: シャムグループと比較してp<0.05。 TACグループと比較してp<0.05。 シルデナフィルグループと比較してp<0.05。
3)コラーゲンIの免疫蛍光染色
肺のコラーゲンIの発現は、シャムグループのそれと比較して、TACグループの肺組織の顕著な増加を識別するコラーゲンIの蛍光イメージングによって評価される。化合物治Aの投与により、コラーゲンIの生成は減少した。
表4.異なるグループにおけるコラーゲンIの蛍光強度
Figure 2021091713

Claims (18)

  1. TGF−β阻害、マイクロRNA変調、新規ホスホジエステラーゼ変調、反応性酸素種(ROS)の捕捉、またはそれらの組み合わせが関与するメカニズムによる臓器組織の線維症リモデリングを治療または予防するための医薬、
    前記医薬が、イソステビオールまたはその医薬的に許容される塩を有効成分として含む
    医薬。
  2. 請求項1に記載の医薬であって、
    前記臓器組織が、心臓、肝臓、肺および腎臓の組織である、
    医薬。
  3. 請求項1に記載の医薬であって、
    前記線維症リモデリングが、線維芽細胞の増加、細胞外マトリックスの過剰発現またはコラーゲンの過剰発現、および組織画像密度の増強である
    医薬。
  4. 請求項1に記載の医薬であって、
    前記線維症リモデリングが、肺、肝臓、腎臓、手術からの創傷治癒、外傷からの創傷治癒、血管形成術または冠状動脈形成術を含む
    医薬。
  5. 請求項4に記載の医薬であって、
    前記肺の線維症リモデリングが、気管支および肺胞組織に関与し、血管壁の厚さおよび肺動脈抵抗および気道抵抗を増加させ、かつ肺コンプライアンスを低下させる
    医薬。
  6. 請求項4に記載の医薬であって、
    前記肝臓の線維症リモデリングが、コラーゲンの沈着、TGF−β活性の増加、肝細胞中の脂質の蓄積、高脂質、糖尿病、代謝疾患または他の因子の結果としての肝臓線維症の増加により特徴付けられる
    医薬。
  7. 請求項4に記載の医薬であって、
    前記腎臓の線維症リモデリングが、腎臓組織中での線維芽細胞の増殖、腎間質空間中でのコラーゲンの沈着、糸球体の炎症性浸潤、および糖尿病、代謝性疾患または他の疾患による腎機能の損傷により特徴付けられる
    医薬。
  8. 請求項1に記載の医薬であって、
    前記治療または予防が、cGMPの活性化を含む、
    医薬。
  9. 請求項1に記載の医薬であって、
    前記治療が、cGMPおよび/またはマイクロRNA21変調の刺激を含む、
    医薬。
  10. 請求項1に記載の医薬であって、
    前記疾治療および予防が、新規ホスホジエステラーゼ阻害剤を含み、cGMPを増加させかつ細胞内のROSのレベルを減少させることを含む、
    医薬。
  11. 請求項1に記載の医薬であって、
    前記新規ホスホジエステラーゼの基質が、1’3’、2’3’または3‘5’サイクリックアデノシンホスフェートジエステラーゼ、サイクリックグアノシンホスフェートジエステラーゼ、およびそれらのイソ酵素である
    医薬。
  12. 請求項11に記載の医薬であって、
    前記サイクリックグアノシンホスフェートジエステラーゼおよびそれらのイソ酵素が、2−3−サイクリックヌクレオチド3−ホスホジエステラーゼ(CNPase)である
    医薬。
  13. 請求項1に記載の医薬であって、
    前記新規ホスホジエステラーゼモジュレータの機能が、2’3’−cGMP、3’5’−cGMP、2’3’−cAMPおよび3’5’−cGMPの産生量、または、それらの割合を変化させることである
    医薬。
  14. 請求項1に記載の医薬であって、
    前記医薬が、経口投与、経皮投与、経膣投与または直腸投与のための錠剤、カプセル剤、顆粒剤、坐剤、軟膏、ならびに徐放性製剤および放出制御製剤の形態であるか、あるいは肺吸入ネブライザーまたは経鼻吸入ネブライザー、定量吸入器または乾燥粉末吸入器による
    医薬。
  15. 請求項1に記載の医薬であって、
    医薬の調製が、水および有機溶媒、あるいは溶媒または可溶化剤として薬局方の基準を満たす混合溶媒を用いる
    医薬。
  16. 請求項15に記載の医薬であって、
    前記溶媒が、エタノール、1,2−プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコールまたはその他の医薬用有機溶媒であり、かつ、混合体積が5%以上90%以下である
    医薬。
  17. 請求項15に記載の医薬であって、
    前記可溶化剤が、アルコール類、ジオキソラン、エーテル、グリセロール、アミン類、エステル類、植物油、スルホキシド類、高分子化合物および他の薬局方の基準を満たす医薬用可溶化剤を含む
    医薬。
  18. 請求項15に記載の医薬であって、
    前記特定の医薬標準的な医薬液体注射剤が、米国、欧州連合、日本および中国の薬局方の関連要件を満たす注射剤の不純物含有量、長期安定性、溶血作用および細胞適合性により特徴付けられる
    医薬。
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