JP5978472B2 - 耳鳴患者の治療用の薬剤 - Google Patents
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Description
本発明は、耳鳴患者の治療用の薬剤に関する。
内耳障害は現代社会の大きな問題となっている。耳鳴は難聴とともに内耳障害の代表的疾患である。耳鳴は「外環境からの音響刺激の欠如した中での音を受容すること」、又は「身体の内部以外には音源がないにもかかわらず、何らかの音の感覚が生じる異常な聴覚現象」と定義される。耳鳴は外耳から中枢聴覚路に至るすべての聴覚路の障害によって生じうるが、一般には内耳性難聴により生じ、蝸牛障害による聴覚情報の入力減少によって中枢聴覚路での異常な神経活性の増加が耳鳴の病態と考えられている。個々の患者にとって、耳鳴は許容可能である場合もあれば、不安、抑うつ状態、不眠、就労不能又は精神的苦痛を生じる場合もある。
耳鳴には多数の要因が存在するが、例えば、特許文献1には、1−アミノアルキルシクロヘキサン誘導体(特にネラメキサン)又はその医薬的に許容可能な塩が蝸牛性耳鳴を患う患者の治療に有効であることが示されている。
ところで、蝸牛性耳鳴を患う患者の中でも、薬効がより期待できる患者群を見出すことができれば、より効果的な治療が可能となり得るが、特許文献1には、この点について十分な検討がされていない。
そこで本発明は、薬効がより期待できる患者群が特定された、より効果的な治療が可能となり得る耳鳴患者の治療用の薬剤を提供することを目的とする。
本発明は、以下の[1]〜[9]を提供する。
[1] ネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩を含有する、加齢性難聴を伴う耳鳴患者の治療用の薬剤。
[2] ネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩を含有する、25dB超の聴力閾値である会話音域の聴力障害を伴う耳鳴患者の治療用の薬剤。
[3] ネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩を含有する、25dB超の聴力閾値である会話音域の聴力障害を示す加齢性難聴を伴う耳鳴患者の治療用の薬剤。
[4] ネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩を含有する、2種類以上の耳鳴音を有する耳鳴患者の治療用の薬剤。
[5] ネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩を含有する、加齢性難聴を伴う2種類以上の耳鳴音を有する耳鳴患者の治療用の薬剤。
[6] ネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩を含有する、25dB超の聴力閾値である会話音域の聴力障害を示す加齢性難聴を伴う2種類以上の耳鳴音を有する耳鳴患者の治療用の薬剤。
[7] ネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩を含有する、高音のみではない耳鳴音を有する耳鳴患者の治療用の薬剤。
[8] ネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩を含有する、8000Hzにおいて両耳25dB以上の聴力閾値である加齢性難聴を伴う耳鳴患者の治療用の薬剤。
[9] ネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩を含有する、4000Hz及び8000Hzにおいて両耳25dB以上の聴力閾値である加齢性難聴を伴う耳鳴患者の治療用の薬剤。
[1] ネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩を含有する、加齢性難聴を伴う耳鳴患者の治療用の薬剤。
[2] ネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩を含有する、25dB超の聴力閾値である会話音域の聴力障害を伴う耳鳴患者の治療用の薬剤。
[3] ネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩を含有する、25dB超の聴力閾値である会話音域の聴力障害を示す加齢性難聴を伴う耳鳴患者の治療用の薬剤。
[4] ネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩を含有する、2種類以上の耳鳴音を有する耳鳴患者の治療用の薬剤。
[5] ネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩を含有する、加齢性難聴を伴う2種類以上の耳鳴音を有する耳鳴患者の治療用の薬剤。
[6] ネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩を含有する、25dB超の聴力閾値である会話音域の聴力障害を示す加齢性難聴を伴う2種類以上の耳鳴音を有する耳鳴患者の治療用の薬剤。
[7] ネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩を含有する、高音のみではない耳鳴音を有する耳鳴患者の治療用の薬剤。
[8] ネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩を含有する、8000Hzにおいて両耳25dB以上の聴力閾値である加齢性難聴を伴う耳鳴患者の治療用の薬剤。
[9] ネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩を含有する、4000Hz及び8000Hzにおいて両耳25dB以上の聴力閾値である加齢性難聴を伴う耳鳴患者の治療用の薬剤。
本発明によれば、薬効がより期待できる患者群が特定された、より効果的な治療が可能となり得る耳鳴患者の治療用の薬剤を提供することができる。
以下、本明細書において使用する用語及び記号の意味を説明し、本発明の内容をより詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものでない。
ネラメキサン、別名1−アミノ−1,3,3,5,5−ペンタメチルシクロヘキサンは、例えば米国特許第6,034,134号及び第6,071,966号に開示されている。この化合物は、種々の疾病の治療、特に一定の神経疾患に有用であることが見出されている。ネラメキサンの治療作用は、神経細胞のN−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)受容体での過剰グルタミン酸による効果の阻害に関連すると考えられている。斯かる理由から、この化合物はNMDA受容体拮抗薬にも分類されている。また、ネラメキサンは、α9/α10ニコチン性アセチルコリン受容体(Plazas, et al., Eur J Pharmacol., 2007 Jul. 2;566(1-3):11-19)及び5−HT3受容体に阻害活性を示すことも開示されている。
本実施形態において、ネラメキサンは、その医薬的に許容可能な塩、溶媒和化合物、異性体、接合体、プロドラッグ、多形、誘導体、及びそれらの混合物のいずれかの形態でも使用され得る。本明細書でネラメキサンに言及する場合、特に断らない限り、斯かる医薬的に許容可能な塩、溶媒和化合物、接合体、プロドラッグ、多形、誘導体、及びそれらの混合物をも指すものと理解すべきである。
本明細書の目的において、用語「医薬的に許容可能な塩」とは、無機又は有機酸との組み合わせにより得られる1−アミノ−1,3,3,5,5−ペンタメチルシクロヘキサンの塩形であって、投与後にヒトの安全性に影響を及ぼさない、及び/又は、ヒトによって十分に容認されるものを意味する。医薬的に許容可能な塩の例としては、限定されるものではないが、酸付加塩、例えば塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、過塩素酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、琥珀酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、炭酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸(メシル酸)、エタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、サリチル酸、p−アミノサリチル酸、2−フェノキシ安息香酸、及び2−アセトキシ安息香酸により製造される塩が挙げられ、メシル酸が好ましい。斯かる塩(又は他の類似する塩)はいずれも、従来の手段により調製することができる。塩の性質は、非毒性であり、所望の薬理学的活性を実質的に妨害しない限り、重要ではない。1−アミノ−1,3,3,5,5−ペンタメチルシクロヘキサンからその医薬的に許容可能な塩への転換は、従来法により、1−アミノ−1,3,3,5,5−ペンタメチルシクロヘキサンを不活性有機溶媒下で、少なくとも1分子当量の選択された酸と混合することにより、達成することができる。塩の単離は、当業界において公知の手法、例えば塩に対して限られた溶解性を示す非極性溶媒(例えばエーテル)による沈殿の誘発等により実施することができる。
成分(又は物質、又は化合物、又は剤)との関連における用語「医薬的に許容可能な」とは、投与後にヒトの安全性に影響を及ぼさない、及び/又は、ヒトによって十分に容認される成分(又は物質、又は化合物、又は剤)を包含する。典型的には、本明細書において使用される場合、用語「医薬的に許容可能な」とは、哺乳類、より具体的にはヒトへの使用に関して、規制機関により承認され、或いは一般に認められている薬局方に収載されていることを意味する。
用語「多形」及び「多形類」とは、異なる複数の結晶構造又は格子を形成するネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩を包含する。
用語「プロドラッグ」とは、生体内において、ネラメキサンから誘導される物質、或いはネラメキサンの調製源となる物質であって、ネラメキサン自体と比べてより不活性又は低活性の形態で投与される物質を包含する。
用語「溶媒和化合物」とは、1−アミノ−1,3,3,5,5−ペンタメチルシクロヘキサンが溶媒分子と結合し、或いは斯かる溶媒分子を引き付けることにより形成される物質を包含する。溶媒が水である溶媒和化合物は「水和物」と呼ぶ。
用語「接合体」とは、ネラメキサンが担体に共有結合又は非共有結合することにより形成される物質を包含する。
用語「誘導体」とは、アミノ基が1又は2個のアルキル基により誘導体化されているネラメキサンを指す。
用語「異性体」とは、可能性があるネラメキサンの立体異性体、例えば配座異性体及び鏡像異性体又はジアステレオマーを指す。
用語「約」又は「およそ」とは、通常、与えられる値又は範囲の20%以内、或いは10%以内、例えば5%以内を意味する。
本明細書において用語「治療する」及び「治療」とは、患者の疾病又は病状のうち少なくとも1つを緩和又は軽減するとの意味で使用される。また、本発明の意味において、用語「治療する」とは、発病(即ち、疾病が臨床的に顕在化する前の期間)を停止、遅延し、及び/又は、疾病の進行又は悪化の危険性を低下させることも意味する。
治療効果は、例えば、TRSw(Tinnitus Rating Scale one−week version)などの質問票を用いた問診により、評価することができる(Acta Otolaryngol., 2013, 133(5), 491−498)。
本明細書において、用語「耳鳴」とは、自覚的及び他覚的耳鳴のすべての症状を包含する。
本発明の一実施形態における薬剤の治療対象となる耳鳴は、加齢性難聴を伴うものである。耳鳴は、加齢性難聴の発症の前から発生していたものでも、加齢性難聴の発症と同時に発生したものでも、加齢性難聴の発症に続いて(その後に)発生したものであってもよい。
本明細書において、用語「加齢性難聴」とは、加齢に伴って進行する感音難聴を意味する。本発明においては、例えば、両耳同程度に認められる聴覚障害で、加齢とともに緩徐に進行する難聴を表す。
本明細書において、用語「加齢性難聴」は、用語「老人性難聴」、「老年性難聴」と同じ意味で使用される。
本明細書において、用語「感音難聴」とは、内耳又は内耳から聴覚中枢に至る部位に器質性の病変があると考えられる聴覚障害を指す。
本発明の一実施形態における薬剤の治療対象となる耳鳴は、25dB超(特に40dB超)の聴力閾値である会話音域の聴力障害を伴う耳鳴である。
また、本発明の一実施形態における薬剤の治療対象となる耳鳴は、25dB超(特に40dB超)の聴力閾値である会話音域の聴力障害を示す加齢性難聴を伴う耳鳴である。
本明細書において、用語「会話音域」とは、500Hz〜4000Hzの周波数帯域の音域を意味する。
本明細書において、「会話音域の聴力障害」の「聴力閾値」は、雑音のない環境で聴覚が検知できる最小の純音の音圧レベルを表し、例えばオージオメータにより測定することができる。
本明細書において、用語「聴力閾値」は、用語「聴覚閾値」、「最小可聴値」と同じ意味で使用される。
本明細書において、用語「聴力障害」は、用語「聴覚障害」、「聴力損失」、「難聴」と同じ意味で使用される。
本発明の一実施形態における薬剤の治療対象となる耳鳴は、8000Hzにおいて両耳25dB以上の聴力閾値である加齢性難聴を伴う耳鳴である。
本発明の一実施形態における薬剤の治療対象となる耳鳴は、4000Hz及び8000Hzにおいて両耳25dB以上の聴力閾値である加齢性難聴を伴う耳鳴である。
本明細書において、用語「2種類以上の耳鳴音を有する耳鳴」とは、2つ以上の異なる音色の耳鳴音を有する耳鳴を意味する。2種類以上の耳鳴音を有するか否かについては、例えば、患者への問診、アンケート等により評価することができる。
特定の実施形態では、標準耳鳴検査法1993(耳鳴研究会)における耳鳴の種類が「2種類」又は「3種類以上」であると特徴付けられる。
特定の実施形態では、標準耳鳴検査法1993(耳鳴研究会)における耳鳴の種類が「2種類」又は「3種類以上」であると特徴付けられる。
本明細書において、用語「高音のみではない耳鳴音を有する耳鳴」とは、高い耳鳴音の有無についての限定はないが、低い耳鳴音又は音の高さの特定できない耳鳴音を有する耳鳴を意味する。高音のみではない耳鳴音を有するか否かについては、例えば、患者への問診、アンケート等により評価することができる。
特定の実施形態では、標準耳鳴検査法1993(耳鳴研究会)における耳鳴音の高低が「低い音」又は「どちらともいえない」であると特徴付けられる。
特定の実施形態では、標準耳鳴検査法1993(耳鳴研究会)における耳鳴音の高低が「低い音」又は「どちらともいえない」であると特徴付けられる。
本明細書において、用語「高音」とは、例えば、4000Hz以上の周波数帯域を意味する。
本発明の薬剤は、ネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩のみを含有するものであっても、担体等とともにネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩を含有するものであってもよい。本発明の薬剤の剤形は、固形製剤、例えばカプセル、錠剤又は同様のものであり得る。
本発明の薬剤は、半固体又は液体製剤として経口投与され得る。
錠剤又はカプセルの形での固形製剤に関しては、ネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩は、例えば次のものと組み合わされ得る:非毒性の医薬的に許容可能な賦形剤、例えば結合剤(例えば、アルファー化トウモロコシ澱粉、ポリビニルピロリドン、又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、ソルビトール、及び他の還元及び非還元糖、微晶性セルロース、硫酸カルシウム、又はリン酸水素カルシウム);滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、又はシリカ、ステアリン酸、ステアリルフマル酸ナトリウム、ベヘン酸グリセリン、ステアリン酸カルシウム及び同様のもの);崩壊剤(例えば、ジャガイモ澱粉又は澱粉グリコール酸ナトリウム);又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、着色剤及び風味剤、セラチン、甘味剤、天然及び合成ゴム(例えば、アカシア、トラガカント又はアルギン酸)、緩衝塩、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックス及び同様のもの。
錠剤は、例えばアラビアゴム、ゼラチン、タルク、二酸化チタン、及び同様のものを含むことができる濃縮糖溶液により被覆され得る。他方では、錠剤は、容易に揮発する有機溶媒又は有機溶媒の混合物に溶解するポリマーにより被覆され得る。特定の態様によれば、ネラメキサンは、即時放出(IR)又は調節放出(MR)錠剤に配給される。即時放出固形剤形は、短時間、例えば60分又はそれ以下で活性成分のほとんど又はすべて(例えば、90%又はそれ以上)の放出を可能にし、そして薬剤の急速な吸収を可能にする。
調節放出固形経口剤形は、長期間にわたって治療的に効果的な血漿レベルを維持し、及び/又は活性成分の他の薬物動力学特性を調節するために、長期間にわたっての活性成分の徐放性を可能にする。例えば、メシル酸ネラメキサンは、50mgの用量のメシル酸ネラメキサンを供給するために調節放出剤形(例えば、調節放出錠剤)に配合され得る。
ソフトゼラチンカプセルの製剤に関しては、ネラメキサン又はその医薬的に許容できる塩が、例えば植物油又はポリエチレングリコールとともに混合され得る。ハードゼラチンカプセルは、錠剤のための上述の賦形剤、例えばラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉(例えば、ジャガイモ澱粉、トウモロコシ澱粉又はアミロペクチン)、セルロース誘導体又はゼラチンのいずれかを用いて、活性物質の顆粒を含むことができる。また、液体又は半固体の薬物がハードセラチンカプセル中に充填され得る。
ネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩はまた、ポリグリコール酸/乳酸(PGLA)から製造される小球体又はマイクロカプセルに導入され得る(例えば、米国特許第5,814,844号、第5,100,669号及び第4,849,222号;国際公開第95/11010号及び第93/07861号を参照のこと)。生体適合性ポリマー、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸及びポリグリコール酸のコポリマー、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、及びヒドロゲルの架橋された又は両親媒性ブロックコポリマーが、薬剤の調節放出を達成するために使用され得る。
半固形又は液体形でのネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩の製剤もまた、使用され得る。ネラメキサンは、製剤の0.1〜99重量%、より特定には、経口に投与のために適切な製剤については、0.2〜50重量%を構成することができる。
ネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩は、調節放出製剤として投与されてもよい。調節放出剤形は、副作用の発生率を低めることにより、患者のコンプライアンスを改善し、そして効果的且つ安全な治療を確保するための手段を提供する。即時放出剤形に比較して、調節放出剤形は、投与の後、薬理作用を延長し、そして投与間隔にわたって薬剤の血漿濃度を低め、それにより、鋭いピークを排除するか又は低めるために使用され得る。
調節放出剤形は、薬剤により被覆されるか又は薬剤を含むコアを含むことができる。次に、コアは、薬剤が分散されている放出調節ポリマーにより被覆される。放出調節ポリマーは徐々に崩壊し、経時的に薬剤を放出する。したがって、組成物の最も外側の層が効果的に減少し、そしてそれにより、組成物が水性環境、すなわち胃腸管に暴露される場合、被膜層を通しての薬剤の拡散を調節する。薬剤の正味拡散速度は主に、被膜層又はマトリックスを侵入する胃液の能力、及び薬剤自体の溶解性に依存する。
本発明の別の態様によれば、ネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩は、経口液体製剤に製剤化される。経口投与のための液体製剤は、例えば液体、シロップ、エマルジョン又は懸濁液の形を取ることができ、又はそれらは、使用の前、水又は他の適切なビヒクルによる再調製のための乾燥製品として提供され得る。経口投与のための製剤は、活性化合物の調節された又は延長された放出を与えるために適切に製剤化され得る。
液体形での経口投与に関しては、ネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩は、非毒性の医薬的に許容可能な不活性担体(例えば、エタノール、グリセロール、水)、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体又は水素化食用脂)、乳化剤(例えば、レシチン又はアカシア)、非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール又は分別植物油)、保存剤(例えば、メチル又はプロピル−p−ヒドロキシベンゾエート又はソルビン酸)、及び同様のものと組み合わされ得る。安定剤、例えば酸化防止剤(BHA、BHT、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、クエン酸)もまた、剤形を安定化するために添加され得る。例えば、溶液は、約0.2〜約20重量%のネラメキサン、糖、並びにエタノール、水、グリセロール、及びプロピレングリコールの混合物を含むことができる。任意には、そのような液体製剤は、着色剤、風味剤、サッカリン、及び増粘剤又は他の賦形剤としてのカルボキシメチル−セルロースを含むことができる。
別の態様によれば、治療的有効量のネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩は、保存剤、甘味剤、可溶化剤及び溶媒を含む経口溶液としても投与される。経口溶液は、1又は2以上の緩衝液、風味剤又は追加の賦形剤を含むことができる。さらなる態様によれば、ペパーミント又は他の風味剤が、ネラメキサン経口液体製剤に添加される。
吸入による投与に関しては、ネラメキサンは、適切な推進剤、例えばジクロロジフルオメタン、トリクロロフルオメタン、ジクロロテトラフルオロメタン、二酸化炭素又は他の適切なガスの使用により、加圧されたパック又はネブライザーからエアロゾル噴霧プレゼンテーションの形で便利に供給され得る。加圧されたエアロゾルの場合、投与単位は、計量された量を供給するためのバブルを提供することにより決定され得る。吸入器又は注入器への使用のためのゼラチンのカプセル及びカートリッジは、化合物及び適切な粉末基材、例えばラクトース又は澱粉の粉末混合物を含むよう配合され得る。
注射による非経口適用のための溶液は、約0.5〜約10重量%の濃度でのネラメキサンの医薬的許容可能な塩の水溶液で調製され得る。それらの溶液はまた、安定剤及び/又は緩衝剤を含むことができ、そして、種々の投与単位のアンプルで提供され得る。
例えば、本発明の薬剤は、直接的注射、例えばボーラス注射又は連続注入により、非経口的に、すなわち静脈内(i. v.)、脳室内(i. c. v.)、皮下(s. c.)、腹腔内(i. p.)、筋肉内(i. m.)、鼓室内(i.t.)、皮下(s. d.)又は皮内(i. d.)投与により供給され得る。注射用製剤は、単位剤形、例えばアンプル又は複数用量容器で、添加される保存剤を伴って提供され得る。他方では、ネラメキサンの医薬的に許容可能な塩は、使用の前、適切なビヒクル、例えば無菌の発熱物質を含まない水による再調製のために粉末形で存在することができる。
本発明の薬剤は、ネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩、及び任意には、製剤中の成分の多くを含む1又は2以上の容器を含む医薬パック又はキットの形で提供されてもよい。特定の態様によれば、ネラメキサンは、2小さじ用量の注射器(投薬KORC(登録商標))の使用による投与のために経口溶液(2mg/ml)として提供される。個々の経口注射器は、小さじ単位を表す注射器(先端が下がった)の右側にライン及びml単位を表す注射器の左側にそれらのラインを伴って、測定のためのブルーハッチマークを有する。
最適な治療的有効量は、薬剤の投与形態、被験者(例えば、体重、健康、年齢、性別、等)、及び担当の医師の好み及び経験を考慮して、決定され得る。
直腸投与のための投薬単位は、溶液又は懸濁液であり得るか、又は中性脂肪基材と混合してネラメキサンを含む坐剤又は保持浣腸、又は植物油又はパラフィン油と混合してネラメキサンを含むゼラチン直腸カプセルの形で調製され得る。
ネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩の毒性及び治療効果は、実験動物における標準の治療方法により、例えばLD50(群の50%の致死量)及びED50(群の50%に治療的有効な用量)を決定することにより測定され得る。治療効果と毒性効果との間の用量比は、治療指数であり、そしてそれは比LD50/ED50として表され得る。大きな治療指数を示すネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩/組成物が好ましい。
ヒトの治療におけるネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩の適切な一日用量は、経口投与に関しては、約0.01〜10mg/kg体重であり、非経口投与に関しては、0.001〜10mg/kg体重である。例えば、成人に関しては、メシル酸ネラメキサンの適切な一日用量は、25mg、50mg又は75mgの用量を包含する。別の医薬的に許容可能な塩、溶媒和化合物、異性体、接合体、プロドラッグ、多形又はその誘導体、例えばネラメキサン塩酸の等モル量がまた適切である。
一般的に、ネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩、例えばメシル酸ネラメキサンは、約5mg〜約150mg/日、又は約5mg〜約100mg/日、又は約5mg〜約75mg/日の範囲で、又は約50mg/日、又は約75mg/日で投与される。
本明細書に示される毎日の用量は、例えば一日一回、二回又は三回、一又は二投与単位として投与され得る。
治療期間は、短期間、例えば数週間(例えば、8−16週間)、又は主治医がさらなる投与がもはや必要でないと思うまでの長期間であり得る。
本発明の薬剤はまた、用量設定スキーム(タイトレーションスキーム)の形でも投与され得る。用語「用量設定スキーム」とは、本明細書の実施例に論じられるような治療方法を意味する。ここで患者はネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩の低用量を治療の初期で投与され、続いてその用量又は高い用量を治療週の間、投与される。
次に、本発明を実施例により説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。
国際公開第2009/033649号に開示されている方法に準じて、メシル酸ネラメキサン12.5mgフィルムコート錠を製造した。
24週間のプラセボ対照、無作為化、二重盲検比較試験において、加齢性難聴を伴う耳鳴、25dB超の聴力閾値である会話音域の聴力障害を伴う耳鳴、2種類以上の耳鳴音を有する耳鳴、又は高音のみではない耳鳴音を有する耳鳴を有する被験者に対するメシル酸ネラメキサンの効能を評価した。
メシル酸ネラメキサン12.5mgフィルムコート錠又はプラセボ錠を、耳鳴を有する被験者に、24週間、投与した。用量は12.5mg/日から開始し、4週間で50mg/日に順次増量し、その後同用量を維持した。
被験者に対するメシル酸ネラメキサンの治療効果は、TRSwのスコアを用いて評価した。その評価結果を表1に示す。統計解析は、メシル酸ネラメキサン錠又はプラセボ錠を投与する前(0週)から各評価時点までのTRSwのスコアの変化量を応答変数、投与薬剤群、評価時点、投与薬剤群と評価時点の交互作用、TRSwの0週スコア、性別及び体重を固定効果とし、被験者内誤差の共分散構造を考慮した反復測定混合モデル(MMRM)を用いた。表中の数値は、投与24週におけるTRSwのスコアの変化量の最小二乗平均を表す。なお、スコアの変化量が0よりも小さいほど、治療効果が高いことを表す。
加齢性難聴を伴う耳鳴に罹患している被験者、25dB超の聴力閾値である会話音域の聴力障害を伴う耳鳴に罹患している被験者、2種類以上の耳鳴音を有する耳鳴に罹患している被験者、及び高音のみではない耳鳴音を有する耳鳴に罹患している被験者に対して、プラセボと比較して、メシル酸ネラメキサンは優位な治療効果を示した。さらに、驚くべきことに、25dB超の聴力閾値である会話音域の聴力障害を示す加齢性難聴を伴う耳鳴に罹患している被験者、加齢性難聴を伴う2種類以上の耳鳴音を有する耳鳴に罹患している被験者、及び25dB超の聴力閾値である会話音域の聴力障害を示す加齢性難聴を伴う2種類以上の耳鳴音を有する耳鳴に罹患している被験者に対して、メシル酸ネラメキサンは予想外に優れた治療効果を示した。したがって、メシル酸ネラメキサンは、25dB超の聴力閾値である会話音域の聴力障害を示す加齢性難聴を伴う耳鳴患者、加齢性難聴を伴う2種類以上の耳鳴音を有する耳鳴患者、及び25dB超の聴力閾値である会話音域の聴力障害を示す加齢性難聴を伴う2種類以上の耳鳴音を有する耳鳴患者に対して、極めて有効な耳鳴の治療剤となることが見出された。
Claims (7)
- ネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩を含有する、25dB超の聴力閾値である会話音域の聴力障害を示す加齢性難聴を伴う耳鳴患者の治療用の薬剤。
- ネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩を含有する、2種類以上の耳鳴音を有する耳鳴患者の治療用の薬剤。
- ネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩を含有する、加齢性難聴を伴う2種類以上の耳鳴音を有する耳鳴患者の治療用の薬剤。
- ネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩を含有する、25dB超の聴力閾値である会話音域の聴力障害を示す加齢性難聴を伴う2種類以上の耳鳴音を有する耳鳴患者の治療用の薬剤。
- ネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩を含有する、高音のみではない耳鳴音を有する耳鳴患者の治療用の薬剤。
- ネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩を含有する、8000Hzにおいて両耳25dB以上の聴力閾値である加齢性難聴を伴う耳鳴患者の治療用の薬剤。
- ネラメキサン又はその医薬的に許容可能な塩を含有する、4000Hz及び8000Hzにおいて両耳25dB以上の聴力閾値である加齢性難聴を伴う耳鳴患者の治療用の薬剤。
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