JP2021085086A - 溶融めっき鋼板 - Google Patents

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Abstract

【課題】めっき層の表面に文字やデザイン等を意図的に現すことができ、それらの耐久性に優れ、また、耐食性にも優れた溶融めっき鋼板を提供する。【解決手段】鋼板と、鋼板の表面に形成された溶融めっき層と、を備え、溶融めっき層は、平均組成で、Al:0〜90質量%、Mg:0〜10質量%を含有し、残部がZnおよび不純物を含み、溶融めっき層に、所定の形状となるように配置されたパターン部と、非パターン部とが形成され、パターン部及び非パターン部は、それぞれ、第1領域、第2領域のうちの1種または2種を含み、パターン部における第1領域の面積率と、非パターン部における第1領域の面積率との差の絶対値が、30%以上であり、第1領域は、配向率が3.5以上の領域であり、第2領域は、配向率が3.5未満の領域である溶融めっき鋼板を採用する。【選択図】なし

Description

本発明は、溶融めっき鋼板に関する。
溶融めっき鋼板は、耐食性に優れており、その中でもZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板は、特に優れた耐食性を備えている。このような溶融めっき鋼板は、建材、家電、自動車分野等種々の製造業において広く使用されており、近年、その使用量が増加している。
ところで、溶融めっき鋼板の溶融めっき層の表面に、文字、模様、デザイン画などを現すことを目的として、溶融めっき層に印刷や塗装などの工程を施すことにより、文字、模様、デザイン画などを溶融めっき層の表面に現す場合がある。
しかし、溶融めっき層に印刷や塗装などの工程を行うと、文字やデザイン等を施すためのコストや時間が増大する問題がある。更に、印刷や塗装によって文字やデザイン等をめっき層の表面に現す場合は、需要者から高い支持を得ている金属光沢外観が失われるだけでなく、塗膜自体の経時劣化や塗膜の密着性の経時劣化の問題から、耐久性が劣り、時間とともに文字やデザイン等が消失してしまう恐れがある。また、インクをスタンプすることで文字やデザイン等をめっき層の表面に現す場合は、コストや時間は比較的抑えられるものの、インクによって、溶融めっき層の耐食性が低下する懸念がある。更に、溶融めっき層の研削によって意匠等を現す場合は、意匠等の耐久性は優れるものの、研削箇所の溶融めっき層の厚みが大幅に減少することから耐食性低下が必然であり、めっき特性の低下が懸念される。
下記特許文献に示されるように、Zn−Al−Mg系溶融めっき鋼板に対する様々な技術開発がなされているが、めっき層の表面に文字やデザイン等を現した場合にその耐久性を向上させる技術は知られていない。
Zn−Al−Mg系溶融めっき鋼板に関し、Zn−Al−Mg系溶融めっき鋼板にみられる梨地状のめっき外観をより美麗とすることを目的とする従来技術は存在する。
例えば、特許文献1は、キメが細かく、かつ平滑な光沢部が多い梨地状の外観を有するZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板、すなわち、単位面積当たりの白色部の個数が多く、そして、光沢部の面積の割合が大きいという良好な梨地状の外観を有するZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板が記載されている。また、特許文献1においては、好ましくない梨地の状態を、不定形な白色部と円形状の光沢部とが混在して表面に点在した表面外観を呈している状態であることが記載されている。
また、特許文献4は、Al/MgZn/Znの三元共晶組織を微細化させることで、全体的にめっき層の光沢度が増し、外観均一性が向上した高耐食性溶融亜鉛めっき鋼板が記載されている。
しかしながら、めっき層の表面に文字等を現した場合に、その耐久性を向上させ、かつ、耐食性を低下させないようにする技術は、従来から知られていなかった。
特許第5043234号公報 特許第5141899号公報 特許第3600804号公報 国際公開第2013/002358号
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、めっき層の表面に文字やデザイン等を現すことができ、それらの耐久性に優れ、また、耐食性にも優れた溶融めっき鋼板を提供することを課題とする。
本発明の要旨は以下の通りである。
[1] 鋼板と、前記鋼板の表面に形成された溶融めっき層と、を備え、
前記溶融めっき層は、平均組成で、Al:0〜90質量%、Mg:0〜10質量%を含有し、残部がZnおよび不純物を含み、
前記溶融めっき層に、所定の形状となるように配置されたパターン部と、非パターン部とが形成され、
前記パターン部及び前記非パターン部は、それぞれ、第1領域、第2領域のうちの1種または2種を含み、
前記パターン部における前記第1領域の面積率と、前記非パターン部における前記第1領域の面積率との差の絶対値が、30%以上であり、
前記第1領域は、下記の測定方法で得られる配向率が3.5以上の領域であり、
前記第2領域は、下記の測定方法で得られる配向率が3.5未満の領域であることを特徴とする、溶融めっき鋼板。
[測定方法] 前記溶融めっき層の表面に1mm間隔または10mm間隔で仮想格子線を描き、前記仮想格子線によって区画される複数の領域にそれぞれX線を入射させるX線回折法により、前記領域毎に、Zn相の(0002)面の回折ピーク強度I0002と、Zn相の(10−11)面の回折ピーク強度I10−11とを測定し、これらの強度比(I0002/I10−11)を前記配向率とする。
[2] 前記溶融めっき層が、平均組成で、Al:4〜22質量%、Mg:0〜10質量%を含有し、残部がZnおよび不純物を含むことを特徴とする[1]に記載の溶融めっき鋼板。
[3] 前記溶融めっき層が、更に、平均組成で、Si:0.0001〜2質量%を含有することを特徴とする[1]または[2]に記載の溶融めっき鋼板。
[4] 前記溶融めっき層が、更に、平均組成で、Ni、Ti、Zr、Sr、Fe、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hf、Cのいずれか1種または2種以上を、合計で0.001〜2質量%含有することを特徴とする[1]乃至[3]の何れか一項に記載の溶融めっき鋼板。
[5] 前記パターン部が、直線部、曲線部、ドット部、図形、数字、記号、模様若しくは文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状となるように配置されていることを特徴とする[1]乃至[4]の何れか一項に記載の溶融めっき鋼板。
[6] 前記パターン部が、意図的に形成されたものであることを特徴とする請求項1乃至[5]の何れか一項に記載の溶融めっき鋼板。
[7] 前記溶融めっき層の付着量が前記鋼板両面合計で30〜600g/mであることを特徴とする[1]乃至[6]のいずれか一項に記載の溶融めっき鋼板。
本発明によれば、パターン部における第1領域の面積率と、非パターン部における第1領域の面積率との差の絶対値を30%以上とすることで、パターン部と非パターン部とを識別できるようになる。これにより、溶融めっき層の表面に文字やデザイン等を現した場合に、それらの耐久性に優れ、また、耐食性にも優れた溶融めっき鋼板を提供できる。
図1は、実施例のNo.1のパターン部の走査型電子顕微鏡による拡大写真である。 図2は、実施例のNo.1の非パターン部の走査型電子顕微鏡による拡大写真である。 図3は、本実施形態の一例である溶融めっき鋼板の表面を示す拡大平面図。
以下、本発明の実施形態である溶融めっき鋼板について説明する。
本実施形態の溶融めっき鋼板は、鋼板と、鋼板の表面に形成された溶融めっき層と、を備え、溶融めっき層は、平均組成で、Al:0〜90質量%、Mg:0〜10質量%を含有し、残部がZnおよび不純物を含み、溶融めっき層に、所定の形状となるように配置されたパターン部と、非パターン部とが形成され、パターン部及び非パターン部は、それぞれ、第1領域、第2領域のうちの1種または2種を含み、パターン部における第1領域の面積率と、非パターン部における第1領域の面積率との差の絶対値が、30%以上であり、第1領域は、下記の測定方法で得られる配向率が3.5以上の領域であり、第2領域は、下記の測定方法で得られる配向率が3.5未満の領域である溶融めっき鋼板である。
測定方法は、次の通りである。溶融めっき層の表面に1mm間隔または10mm間隔で仮想格子線を描き、仮想格子線によって区画される複数の領域にそれぞれX線を入射させるX線回折法により、領域毎に、Zn相の(0002)面の回折ピーク強度I0002と、Zn相の(10−11)面の回折ピーク強度I10−11とを測定し、これらの強度比(I0002/I10−11)を配向率とする。なお、(10−11)の「−1」は、「1」の上にバーを付与したことを意味する。
本実施形態の溶融めっき鋼板では、溶融めっき層の表面に1mm間隔または10mm間隔で仮想格子線を描いた場合、仮想格子線によって区画される複数の領域はそれぞれ、配向率(I0002/I10−11)に応じて、第1領域、第2領域のいずれかに区分される。
本発明者らは、仮想格子線によって区画された領域毎に、X線回折測定を行って配向率を測定し、各領域の外観と配向率との関係を調べたところ、配向率が高いほど領域の外観が白色になり、配向率が低いほど領域の外観が金属光沢を呈することを見出した。このような配向率と外観の関係は、Al相やMgZn相では確認されず、Zn相の場合に確認できることを見出した。
第1領域は、配向率が3.5以上の領域である。第1領域は配向率が高いため、溶融めっき層において第1領域が多く含まれる箇所は、肉眼または顕微鏡下で観察した際に、白色もしくは白色に近い色に見える。一方、第2領域は、配向率が3.5未満の領域である。第2領域は配向率が低いため、溶融めっき層において第2領域が多く含まれて第1領域が少なくなる箇所は、肉眼または顕微鏡下で金属光沢があるように見える。更に、第1領域と第2領域とが混在し、第1領域の面積率が30〜70%である箇所は、外観が梨地状に見える。
このように、第1領域の面積率によって、溶融めっき層の表面は、白色もしくは白色に近い色、金属光沢または梨地状のいずれかに見える。ここで、溶融めっき層の表面に、文字、図形、線、ドット、模様などを視認できるようにするためには、これらの文字等を構成するパターン部と、それ以外の非パターン部とが、識別できるようになればよい。そのためには、パターン部における第1領域の面積割合と、非パターン部における第1領域の面積割合とが、異なっていればよい。
具体的には、パターン部における第1領域の面積率と、非パターン部における第1領域の面積率との差が、絶対値で30%以上であるとよい。これにより、パターン部と非パターン部とが識別可能になる。
例えば、パターン部の第1領域の面積割合が75%である場合、パターン部は白色若しくは白色に近い色に見える。また、非パターン部における第1領域の面積割合が45%以下である場合、梨地状または金属光沢があるように見える。そして、パターン部、非パターン部のおける第1領域の面積率の差が30%以上の場合に、このような外観の違いにより、パターン部と非パターン部を識別可能になる。
また、パターン部の第1領域の面積割合が65%程度であり、非パターン部の第1領域の面積割合が35%程度である場合、パターン部及び非パターン部はともに梨地状に見えるが、パターン部における第1領域の面積割合が大きいため、パターン部は非パターン部に対してより白い外観を呈する。そして、パターン部、非パターン部のおける第1領域の面積率の差が30%以上の場合に、このような外観の違いにより、パターン部と非パターン部を識別可能になる。
更に、パターン部の第1領域が50%である場合、パターン部は梨地状に見える。また、非パターン部における第1領域の面積割合が20%以下である場合、金属光沢に見える。そして、パターン部、非パターン部のおける第1領域の面積率の差が30%以上の場合に、このような外観の違いにより、パターン部と非パターン部を識別可能になる。
このように、パターン部における第1領域の面積率と非パターン部における第1領域の面積率との差が絶対値で30%以上になると、パターン部と非パターン部の外観が異なるようになるため、パターン部を明確に識別できるようになる。すなわち、めっき層表面の可視光像において、パターン部及び非パターン部の色相、明度、彩度等の差が大きくなるため、パターン部と非パターン部が識別可能になる。
一方、パターン部における第1領域の面積率と非パターン部における第1領域の面積率との差が絶対値で30%未満になると、パターン部と非パターン部の外観の差がなくなり、パターン部を明確に識別できなくなる。すなわち、めっき層表面の可視光像において、パターン部及び非パターン部の色相、明度、彩度等の差が小さくなるため、パターン部と非パターン部を識別できなくなる。
以上のように、パターン部及び非パターン部における第1領域の存在割合の一例を示したが、パターン部における第1領域の面積率と非パターン部における第1領域の面積率との差が絶対値で30%以上であればよく、パターン部及び非パターン部のそれぞれにおける第1領域の存在割合を限定する必要はない。
以下、本発明の実施形態を溶融めっき鋼板について説明する。
溶融めっき層の下地となる鋼板は、材質に特に制限はない。詳細は後述するが、材質として、一般鋼などを特に制限はなく用いることができ、Alキルド鋼や一部の高合金鋼も適用することも可能であり、形状にも特に制限はない。鋼板に対して後述する溶融めっき法を適用することで、本実施形態に係る溶融めっき層が形成される。
次に、溶融めっき層の化学成分について説明する。
溶融めっき層は、平均組成で、Al:0〜90質量%、Mg:0〜10質量%を含有し、残部としてZnおよび不純物を含む。より好ましくは、平均組成で、Al:4〜22質量%、Mg:1〜10質量%を含有し、残部としてZnおよび不純物を含む。更に好ましくは、平均組成で、Al:4〜22質量%、Mg:1〜10質量%を含有し、残部としてZnおよび不純物からなる。また、溶融めっき層は、平均組成で、Si:0.0001〜2質量%を含有していてもよい。更に、溶融めっき層は、平均組成で、Ni、Ti、Zr、Sr、Fe、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hf、Cのいずれか1種または2種以上を合計で、0.001〜2質量%含有していてもよい。
Alの含有量は、平均組成で0〜90質量%、好ましくは4〜22質量%の範囲である。Alは、耐食性を確保するために含有させるとよい。溶融めっき層中のAlの含有量が4質量%以上であれば、耐食性を向上させる効果がより高まる。90%を超えるとZnの存在量が少なくなり、第1領域と第2領域が明確に識別できなくなる。22質量%を超えると耐食性を向上させる効果が飽和する。耐食性の観点から、好ましくは5〜18質量%とする。より好ましくは6〜16質量%とする。
Mgの含有量は、平均組成で0〜10質量%、好ましくは1〜10質量%の範囲である。Mgは、耐食性を向上させるために含有させるとよい。溶融めっき層中のMgの含有量が1質量%以上であれば、耐食性を向上させる効果がより高まる。10質量%を超えるとめっき浴でのドロス発生が著しくなり、安定的に溶融めっき鋼板を製造するのが困難となる。耐食性とドロス発生のバランスの観点から、好ましくは1.5〜6質量%とする。より好ましくは2〜5質量%の範囲とする。
Al及びMgはそれぞれ0%であってもよい。すなわち、本実施形態の溶融めっき鋼板の溶融めっき層は、Zn−Al−Mg系溶融めっき層に限定されるものではなく、Zn−Al系溶融めっき層であってもよく、溶融亜鉛めっき層であってもよく、合金化溶融亜鉛めっき層であってもよい。
また、溶融めっき層は、Siを0.0001〜2質量%の範囲で含有していてもよい。
Siは、溶融めっき層の密着性を向上させる場合があるので、含有させてもよい。Siを0.0001質量%以上含有させることで密着性を向上させる効果が発現するため、Siを0.0001質量%以上含有させることが好ましい。一方、2質量%を超えて含有させてもめっき密着性を向上させる効果が飽和するため、Siの含有量は2質量%以下とする。めっき密着性の観点からは、0.0010〜1質量%の範囲としてもよく、0.0100〜0.8質量%の範囲としてもよい。
溶融めっき層中には、平均組成で、Ni、Ti、Zr、Sr、Fe、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hf、Cの1種又は2種以上を合計で0.001〜2質量%を含有していてもよい。これらの元素を含有することで、さらに耐食性を改善することができる。REMは、周期律表における原子番号57〜71の希土類元素の1種または2種以上である。
溶融めっき層の化学成分の残部は、亜鉛及び不純物である。不純物には、亜鉛ほかの地金中に不可避的に含まれるもの、めっき浴中で、鋼が溶解することによって含まれるものがある。
なお、溶融めっき層の平均組成は、次のような方法で測定できる。まず、めっきを浸食しない塗膜剥離剤(例えば、三彩化工社製ネオリバーSP−751)で表層塗膜を除去した後に、インヒビター(例えば、スギムラ化学工業社製ヒビロン)入りの塩酸で溶融めっき層を溶解し、得られた溶液を誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析に供することで求めることができる。また、表層塗膜を有しない場合は、表層塗膜の除去作業を省略できる。
次に、溶融めっき層の組織について説明する。以下に説明する組織は、溶融めっき層が平均組成で、Al:4〜22質量%、Mg:1〜10質量%、Siを0〜2質量%を含有する場合の組織である。
Al、Mg及びZnを含有する溶融めっき層は、〔Al相〕と、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕とを含んでいる。〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に、〔Al相〕が包含された形態を有している。更に、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に、〔MgZn相〕や〔Zn相〕が含まれていてもよい。また、Siを添加した場合には、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に、〔MgSi相〕が含まれていても良い。
ここで、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕とは、Al相と、Zn相と金属間化合物MgZn相との三元共晶組織であり、この三元共晶組織を形成しているAl相は例えばAl−Zn−Mgの三元系平衡状態図における高温での「Al″相」(Znを固溶するAl固溶体であり、少量のMgを含む)に相当するものである。この高温でのAl″相は常温では通常は微細なAl相と微細なZn相に分離して現れる。また、該三元共晶組織中のZn相は少量のAlを固溶し、場合によってはさらに少量のMgを固溶したZn固溶体である。該三元共晶組織中のMgZn相は、Zn−Mgの二元系平衡状態図のZn:約84質量%の付近に存在する金属間化合物相である。状態図で見る限りそれぞれの相にはその他の添加元素を固溶していないか、固溶していても極微量であると考えられるがその量は通常の分析では明確に区別できないため、この3つの相からなる三元共晶組織を本明細書では〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕と表す。
また、〔Al相〕とは、前記の三元共晶組織の素地中に明瞭な境界をもって島状に見える相であり、これは例えばAl−Zn−Mgの三元系平衡状態図における高温での「Al″相」(Znを固溶するAl固溶体であり、少量のMgを含む)に相当するものである。この高温でのAl″相はめっき浴のAlやMg濃度に応じて固溶するZn量やMg量が相違する。この高温でのAl″相は常温では通常は微細なAl相と微細なZn相に分離するが、常温で見られる島状の形状は高温でのAl″相の形骸を留めたものであると見てよい。状態図で見る限りこの相にはその他の添加元素を固溶していないか、固溶していても極微量であると考えられるが通常の分析では明確に区別できないため、この高温でのAl″相に由来し且つ形状的にはAl″相の形骸を留めている相を本明細書では〔Al相〕と呼ぶ。この〔Al相〕は前記の三元共晶組織を形成しているAl相とは顕微鏡観察において明瞭に区別できる。
また、〔Zn相〕とは、前記の三元共晶組織の素地中に明瞭な境界をもって島状に見える相であり、実際には少量のAlさらには少量のMgを固溶していることもある。状態図で見る限りこの相にはその他の添加元素を固溶していないか、固溶していても極微量であると考えられる。この〔Zn相〕は前記の三元共晶組織を形成しているZn相とは顕微鏡観察において明瞭に区別できる。本発明のめっき層には、製造条件により〔Zn相〕が含まれる場合も有るが、実験では加工部耐食性向上に与える影響はほとんど見られなかったため、めっき層に〔Zn相〕が含まれても特に問題はない。
また、〔MgZn相〕とは、前記の三元共晶組織の素地中に明瞭な境界をもって島状に見える相であり、実際には少量のAlを固溶していることもある。状態図で見る限りこの相にはその他の添加元素を固溶していないか、固溶していても極微量であると考えられる。この〔MgZn相〕は前記の三元共晶組織を形成しているMgZn相とは顕微鏡観察において明瞭に区別できる。本発明のめっき層には、製造条件により〔MgZn相〕が含まれない場合も有るが、ほとんどの製造条件ではめっき層中に含まれる。
また、〔MgSi相〕とは、Siを添加した場合のめっき層の凝固組織中に明瞭な境界をもって島状に見える相である。状態図で見る限りZn、Al、その他の添加元素は固溶していないか、固溶していても極微量であると考えられる。この〔MgSi相〕はめっき中では顕微鏡観察において明瞭に区別できる。
次に、溶融めっき層の表層におけるパターン部、非パターン部、第1領域及び第2領域について説明する。
本実施形態の溶融めっき層の表面には、所定の形状となるように配置されたパターン部と、非パターン部とが形成される。パターン部は、直線部、曲線部、ドット部、図形、数字、記号、模様若しくは文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状となるように配置されていることが好ましい。また、非パターン部は、パターン部以外の領域である。また、パターン部の形状は、ドット抜けのように一部が欠けていても、全体として認識できれば許容される。また、非パターン部は、パターン部の境界を縁取るような形状であってもよい。
溶融めっき層表面に、直線部、曲線部、ドット部、図形、数字、記号、模様若しくは文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状が配置されている場合に、これらの領域をパターン部とし、それ以外の領域を非パターン部とすることができる。パターン部と非パターン部の境界は、肉眼で把握することができる。パターン部と非パターン部の境界は、光学顕微鏡や拡大鏡などによる拡大像から把握してもよい。
パターン部は、肉眼、拡大鏡下または顕微鏡下でパターン部の存在を判別可能な程度の大きさに形成されるとよい。また、非パターン部は、溶融めっき層(溶融めっき層の表面)の大部分を占める領域であり、非パターン部内にパターン部が配置される場合がある。パターン部は、非パターン部内において所定の形状に配置されている。具体的には、パターン部は、非パターン部内おいて、直線部、曲線部、図形、ドット部、図形、数字、記号、模様若しくは文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状となるように配置されている。パターン部の形状を調整することによって、溶融めっき層の表面に、直線部、曲線部、図形、ドット部、図形、数字、記号、模様若しくは文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状が現される。例えば、溶融めっき層の表面には、パターン部からなる文字列、数字列、記号、マーク、線図、デザイン画あるいはこれらの組合せ等が現される。この形状は、後述する製造方法によって意図的若しくは人工的に形成された形状であり、自然に形成されたものではない。
このように、パターン部及び非パターン部は、溶融めっき層の表層に形成された領域である。また、パターン部及び非パターン部には、それぞれ、第1領域、第2領域の1種または2種が含まれる。
第1領域は、配向率が3.5以上の領域である。溶融めっき層において第1領域が多い箇所は、白色もしくは白色に近い色に見える。一方、第2領域は、配向率が3.5未満の領域である。溶融めっき層において第2領域が多い箇所は、肉眼で金属光沢があるように見える。また、第1領域と第2領域が分散して集まり、第1領域の面積率が30〜70%である箇所は、外観が梨地状に見える。
次に、配向率の測定方法について説明する。
まず、溶融めっき層の表面に1mm間隔または10mm間隔で仮想格子線を描く。次に、仮想格子線によって区画される複数の領域における重心点を中心に狙い、それぞれX線を入射させるX線回折法により、領域毎に、Zn相の(0002)面の回折ピーク強度I0002と、Zn相の(10−11)面の回折ピーク強度I10−11とを測定する。そして、これらの強度比(I0002/I10−11)を配向率とする。
なお、X線回折法によって測定されるZn相の強度は〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕を構成するZn相、[Zn相]を構成するZn相、および、[Al相]を構成する微細なZn相の強度の総和である。これらのうち、配向率への寄与は〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕を構成するZn相、[Zn相]を構成するZn相が支配的である。
X線回折測定は、X線光源としてCo管球を用いる。Zn相の(0002)面の回折ピーク強度I0002は、2θ範囲で42.41°±0.5°の範囲に現れるZn相の(0002)面回折ピークの強度とする。Zn相の(10−11)面の回折ピーク強度I10−11は、2θ範囲で50.66°±0.5°の範囲に現れるZn相の(10−11)面の回折ピークの強度とする。ステップは0.02°、走査速度は5°/minが好ましく、検出器は高速半導体2次元検出器を用いるのが好ましい。
仮想格子線の間隔を1mmにする場合は、X線光源から出射されるX線を、ポリキャピラリによって集光することが好ましい。集光後のX線の照射範囲は、長径1mm、短径0.75mmの楕円形範囲内とすることが好ましい。このように照射範囲を狭めたX線を、1mm間隔の仮想格子線によって区画された領域毎に照射することで、領域毎にX線回折測定を行うことができる。この場合のX線回折測定は、微小領域測定用のX線回折装置を用いることが好ましい。
仮想格子線の間隔を10mmにする場合は、X線光源から出射されるX線を、通常の手段によって集光することが好ましい。集光後のX線の照射範囲は、縦10mm、横10mmの矩形の範囲内とすることが好ましい。このように照射範囲を狭めたX線を、10mm間隔の仮想格子線によって区画された領域毎に照射することで、領域毎にX線回折測定を行うことができる。この場合のX線回折測定は、通常のX線回折装置を用いることが好ましい。
仮想格子線の間隔は、パターン部のサイズ及び溶融めっき層のサイズに応じて適宜設定すればよい。直線部や文字等を表すパターン部が比較的小さい場合に、仮想格子線の間隔を10mmにすると、仮想格子線によって区画される領域が、パターン部と非パターン部の両方にまたがって位置することが起こり得る。従って、パターン部の最小幅が10mm未満の場合は、仮想格子線の間隔を1mm以下にすることが好ましい。一方、パターン部の最小幅が10mmを超える場合は、仮想格子線の間隔を10mmにしてもよく、1mmにしてもよい。
パターン部には、仮想格子線によって区画された複数の領域が含まれており、各領域は、第1領域、第2領域の何れかに分類される。また、非パターン部にも、仮想格子線によって区画された複数の領域が含まれており、各領域は、第1領域、第2領域のいずれかに分類される。すなわち、パターン部は、第1領域、第2領域のいずれかのみを含んでいてもよく、第1領域、第2領域の2種を含んでいてもよい。同様に、非パターン部は、第1領域、第2領域のいずれかのみを含んでいてもよく、第1領域、第2領域の2種を含んでいてもよい。
ここで、パターン部においては、第1領域及び第2領域のそれぞれの面積割合を求めることができる。そして、第1領域の面積分率が70%を超える場合は、パターン部が白色もしくは白色に近い色に見える。第1領域の面積分率が30%以上70%以下である場合は、パターン部が梨地状に見える。また、第1領域の面積分率が30%未満である場合、パターン部は金属光沢があるように見える。このように、パターン部の外観は、第1領域の面積分率に依存する。
一方、非パターン部においても、第1領域及び第2領域のそれぞれの面積割合を求めることができる。パターン部と同様、非パターン部の外観は、第1領域の面積分率に依存する。
そして、パターン部における第1領域の面積割合と、非パターン部における第1領域の面積割合との差が、絶対値で30%以上の場合に、パターン部と非パターン部とを識別できるようになる。面積割合の差が30%未満では、パターン部における第1領域の面積割合と、非パターン部における第1領域の面積割合との差が小さく、パターン部及び非パターン部の外観が似たような外観になり、パターン部を識別することが困難になる。面積割合の差は、大きければ大きいほどよく、40%以上であることがより好ましく、60%以上であることが更に好ましい。
パターン部及び非パターン部は、肉眼で識別可能であってもよく、拡大鏡下または顕微鏡下で識別可能であってもよい。拡大鏡下または顕微鏡下で識別可能とは、例えば、パターン部で構成される形状が50倍以下の視野で識別可能であればよい。50倍以下の視野であれば、パターン部と非パターン部は、その外観の違いにより、識別可能である。パターン部と非パターン部は、好ましくは20倍以下、さらに好ましくは10倍以下、より好ましくは5倍以下で識別可能である。
本実施形態に係る溶融めっき鋼板は、溶融めっき層の表面に化成処理皮膜層や塗膜層を有してもよい。ここで、化成処理皮膜層や塗膜層の種類は特に限定されず、公知の化成処理皮膜層や塗膜層を用いることができる。
次に、本実施形態の溶融めっき鋼板の製造方法を説明する。
本実施形態の溶融めっき鋼板は、製鋼、鋳造、熱間圧延を経て製造された鋼板に対して、溶融めっきを行う。鋼板を製造する際には、更に、酸洗、熱延板焼鈍、冷間圧延、冷延板焼鈍を行ってもよい。溶融めっきは、鋼板を溶融めっき浴に連続通板させる連続式溶融めっき法でもよく、鋼板を所定の形状に加工した鋼材または鋼板自体を、溶融めっき浴に浸漬してから引き上げるどぶ付け式めっき法でもよい。
溶融めっき浴は、Al:0〜90質量%、Mg:0〜10質量%を含有し、残部としてZnおよび不純物を含むことが好ましい。また、溶融めっき浴は、Al:4〜22質量%、Mg:1〜10質量%を含有し、残部がZnおよび不純物を含むものでもよい。更に、溶融めっき浴は、Si:0.0001〜2質量%を含有してもよい。更にまた、溶融めっき浴は、Ni、Ti、Zr、Sr、Fe、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hf、Cのいずれか1種または2種以上を、合計で0.001〜2質量%含有してもよい。なお、本実施形態の溶融めっき層の平均組成は、溶融めっき浴の組成とほぼ同じである。
溶融めっき浴の温度は、組成によって異なるが、例えば、400〜500℃の範囲が好ましい。溶融めっき浴の温度がこの範囲であれば、所望の溶融めっき層を形成できるためである。
また、溶融めっき層の付着量は、溶融めっき浴から引き上げられた鋼板に対してガスワイピング等の手段で調整すればよい。溶融めっき層の付着量は、鋼板両面の合計の付着量が30〜600g/mの範囲になるように調整することが好ましい。付着量が30g/m未満の場合、溶融めっき鋼板の耐食性が低下するので好ましくない。付着量が600g/m超の場合、鋼板に付着した溶融金属の垂れが発生して、溶融めっき層の表面を平滑にすることができなくなるため好ましくない。
溶融めっき浴から引き上げた直後の鋼板または鋼材に対して、非酸化性ガスを溶融状態の金属にガスノズルによって局所的に吹き付ける。非酸化性ガスとしては、窒素やアルゴンを用いるとよい。また、また、組成によって最適な温度域は異なるが、溶融金属の温度が(最終凝固温度−5)℃〜(最終凝固温度+5)℃の範囲にあるときに、非酸化性ガスの吹き付けを行うとよい。更に、非酸化性ガスの温度は、最終凝固温度未満とする。溶融めっき層が上記の温度範囲にあるときに非酸化性ガスが吹き付けられた箇所では、溶融金属の冷却速度が増加し、これにより、凝固後の溶融めっき層の配向率が高くなる。一方、非酸化性ガスが吹き付けられなかった箇所では、溶融金属の冷却速度が低下し、これにより、凝固後の溶融めっき層の配向率が低くなる。従って、非酸化性ガスの吹き付け範囲を調整することによって、配向率が高い領域、配向率の低い領域のそれぞれの出現箇所を意図的あるいは任意に調整できるようになる。これにより、パターン部及び非パターン部の形状を任意に調整でき、かつ、パターン部及び非パターン部を識別できるようになる。吹き付けるガスの温度が低いほど配向率が高まるため、吹き付けるガスの温度によって配向率を調整可能である。ガス温度は、最終凝固温度未満とすることが好ましく、例えば、ガス温度を25〜250℃に調整してもよい。
溶融めっき層の表面に化成処理層を形成する場合には、溶融めっき層を形成した後の溶融めっき鋼板に対して、化成処理を行う。化成処理の種類は特に限定されず、公知の化成処理を用いることができる。
また、溶融めっき層の表面や化成処理層の表面に塗膜層を形成する場合には、溶融めっき層を形成した後、又は、化成処理層を形成した後の溶融めっき鋼板に対して、塗装処理を行う。塗装処理の種類は特に限定されず、公知の塗装処理を用いることができる。
本実施形態の溶融めっき鋼板は、第1領域及び第2領域のうち、パターン部における第1領域の面積率と、非パターン部における第1領域の面積率との差の絶対値を30%以上とすることで、パターン部と非パターン部とを識別できるようになる。形成されたパターン部及び非パターン部は、印刷や塗装によって形成されたものではないため、耐久性が高くなっている。また、パターン部及び非パターン部が印刷や塗装によって形成されたものではないため、溶融めっき層の耐食性への影響もない。更に、パターン部及び非パターン部は、溶融めっき層の表面を研削等によって形成したものではない。従って、パターン部における溶融めっき層の厚みは、非パターン部における溶融めっき層の厚みに比べて、耐食性が劣化するほどのめっき層の厚みの減少はみられない。よって、本実施形態の溶融めっき鋼板は、耐食性に優れたものとなる。
本実施形態によれば、所定の形状に成形したパターン部の耐久性が高く、耐食性等の好適なめっき特性を有する溶融めっき鋼板を提供できる。特に本実施形態では、めっき浴から引き上げ後の溶融金属の温度が(最終凝固温度−5)℃〜(最終凝固温度+5)℃の範囲にあるときに、溶融めっき層の表面に非酸化性ガスをガスノズルによって局所的に吹き付けることで、凝固後の溶融めっき層の配向率を高くして、パターン部または非パターン部の範囲を意図的若しくは人工的な形状にすることができ、直線部、曲線部、ドット部、図形、数字、記号、模様若しくは文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状となるようにパターン部を配置できる。これにより、溶融めっき層の表面に、印刷、塗装または研削を行うことなく様々な意匠、商標、その他の識別マークを表すことができ、鋼板の出所の識別性やデザイン性等を高めることができる。また、パターン部によって、工程管理や在庫管理などに必要な情報や需要者が求める任意の情報を、溶融めっき鋼板に付与することもできる。これにより、溶融めっき鋼板の生産性の向上にも寄与することができる。
次に、本発明の実施例を説明する。鋼板を脱脂、水洗した後に、還元焼鈍、めっき浴浸漬、付着量制御、冷却を行うことで、表2A及び表2Bに示すNo.1〜32の溶融めっき鋼板を製造した。めっき浴から鋼板を引き上げた際に、溶融金属の温度が(最終凝固温度−5)℃〜(最終凝固温度+5)℃の範囲にあるときに、鋼板表面の溶融金属に、非酸化性ガスの一種である窒素ガスをガスノズルによって吹き付けた。窒素ガスの吹き付け条件は表1に示す通りとした。表1に示すガス温度は、いずれも、最終凝固温度未満であった。その後、冷却して溶融金属を完全に凝固させた。窒素ガスの吹き付けによって、一辺が50mmの正方形パターンが現れるように制御した。ただし、No.30については、溶融金属の温度が(最終凝固温度−5)℃〜(最終凝固温度+5)℃の範囲よりも低い温度にあるときに、窒素ガスをガスノズルによって吹き付けた。
また、上記と同様にしてZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板を製造した。その後、溶融めっき層の表面に、インクジェット法により、一辺が50mmの正方形パターンを印刷した。この結果をNo.33として表2A及び表2Bに示す。
更に、上記と同様にしてZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板を製造した。その後、溶融めっき層の表面を研削して、一辺が50mmの正方形パターンを形成した。この結果をNo.34として表2A及び表2Bに示す。
得られた溶融めっき鋼板について、パターン部及び非パターン部に含まれる第1領域、第2領域の面積率を求めた。まず、パターン部及び非パターン部の境界は、溶融めっき層の表面を肉眼で観察することにより特定した。肉眼での境界の特定が難しい場合は、拡大鏡や光学顕微鏡の拡大像を利用した。境界の判別が難しい例では、窒素ガスの吹き付け範囲に基づき境界を設定し、第1領域及び第2領域の面積率を評価した。
次に、正方形のパターン(表2ではパターン部と表記)及びそれ以外の領域(表2では非パターン部と表記)に含まれる各領域の配向率は、次に説明する測定方法により求めた。すなわち、溶融めっき層の表面に1mm間隔で仮想格子線を描いた。次に、仮想格子線によって区画される複数の領域にそれぞれX線を入射させるX線回折法により、領域毎に、Zn相の(0002)面の回折ピーク強度I0002と、Zn相の(10−11)面の回折ピーク強度I10−11とを測定した。そして、これらの強度比(I0002/I10−11)を求め、配向率とした。
X線回折測定は、X線光源としてCo管球を用いた。Zn相の(0002)面の回折ピーク強度I0002は、2θ範囲で42.41°±0.5°の範囲に現れるZn相の(0002)面回折ピークの強度とした。Zn相の(10−11)面の回折ピーク強度I10−11は、2θ範囲で50.66°±0.5°の範囲に現れるZn相の(10−11)面の回折ピークの強度とした。ステップは0.02°、走査速度は5°/minとし、検出器は高速半導体2次元検出器を用いた。
本実施例では、正方形パターンの一辺のサイズが10mm以上であったが、仮想格子線の間隔は1mmとした。そのため、X線光源から出射されるX線は、ポリキャピラリによって集光した。集光後のX線の照射範囲は、直径1mmの円形とした。このように照射範囲を狭めたX線を、1mm間隔の仮想格子線によって区画された領域毎に照射したX線回折測定は、微小領域測定用のX線回折装置を用いた。
そして、配向率が3.5以上の領域を第1領域と判別し、配向率が3.5未満の領域を第2領域と判別した。
そして、正方形のパターン及びそれ以外の部分における第1領域の面積率をそれぞれ求め、第1領域の面積率の差の絶対値を求めた。
[識別性]
正方形状のパターン部を施した試験板の、製造した直後の初期状態のものと、6ヶ月間屋外暴露した経時状態のものを対象に、下記の判定基準に基づいて目視評価した。初期状態、経時状態とも、◎〜△を合格とした。
◎:5m先からでもパターン部を視認できる。
○:5m先からはパターン部を視認できないが、3m先からの視認性は高い。
△:3m先からはパターン部を視認できないが、1m先からの視認性は高い。
×:1m先からパターン部を視認できない。
[耐食性]
試験板を150×70mmに切断し、JASO−M609に準拠した腐食促進試験CCTを30サイクル試験した後、錆発生状況を調査し、下記の判定基準に基づいて評価した。◎〜△を合格とした。
◎:錆発生がなく、パターン部と非パターン部ともに美麗な意匠外観を維持している。
○:錆発生はないが、パターン部と非パターン部にごくわずかな意匠外観変化が認められる。
△:意匠外観がやや損なわれているが、パターン部と非パターン部が目視で区別できる。
×:パターン部と非パターン部の外観品位が著しく低下しており、目視で区別できない。
表2A及び表2Bに示すように、No.1〜No.29の本発明例のZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板は、識別性及び耐食性の両方に優れていた。図1に、No.1のパターン部の走査型電子顕微鏡による観察結果を示し、図2に、No.1の非パターン部の走査型電子顕微鏡による観察結果を示す。パターン部は非パターン部に比べて、第1領域の面積率が大きく異なっており、パターン部と非パターン部との識別が可能であることがわかる。
No.30については、溶融金属の温度が(最終凝固温度−5)℃〜(最終凝固温度+5)℃の範囲よりも低い温度にあるときに、窒素ガスをガスノズルによって吹き付けたため、パターン部における第1領域の面積率と、非パターン部における第1領域の面積率との差が30%未満になり、パターン部の識別性が低下した。
また、No.31及びNo.32は、溶融めっき層の組成が本発明の範囲から外れており、6ヶ月間屋外暴露した後の識別性が低下した。
インクジェット法で正方形状のパターン部を印刷したNo.33は、6ヶ月間の屋外暴露後の経過状態においてパターン部が薄くなり、識別性が低下した。
また、研削によって正方形状のパターン部を形成したNo.34は、研削した箇所のめっき層の厚みが低下し、研削箇所での耐食性が低下した。
なお、No.1〜6、10〜34のめっき層には、Al相と、Al/Zn/MgZnの三元共晶組織とを含んでいた。
図3には、Zn−Al−Mg系溶融めっき層に窒素ガスの吹き付けることにより、文字列(アルファベット)をパターン部で表した溶融めっき鋼板の表面を示す。
本発明によれば、溶融めっき鋼板の表面に、文字やマークからなるパターン部を意図的に表すことができるようになる。
Figure 2021085086
Figure 2021085086
Figure 2021085086

Claims (7)

  1. 鋼板と、前記鋼板の表面に形成された溶融めっき層と、を備え、
    前記溶融めっき層は、平均組成で、Al:0〜90質量%、Mg:0〜10質量%を含有し、残部がZnおよび不純物を含み、
    前記溶融めっき層に、所定の形状となるように配置されたパターン部と、非パターン部とが形成され、
    前記パターン部及び前記非パターン部は、それぞれ、第1領域、第2領域のうちの1種または2種を含み、
    前記パターン部における前記第1領域の面積率と、前記非パターン部における前記第1領域の面積率との差の絶対値が、30%以上であり、
    前記第1領域は、下記の測定方法で得られる配向率が3.5以上の領域であり、
    前記第2領域は、下記の測定方法で得られる配向率が3.5未満の領域であることを特徴とする、溶融めっき鋼板。
    [測定方法] 前記溶融めっき層の表面に1mm間隔または10mm間隔で仮想格子線を描き、前記仮想格子線によって区画される複数の領域にそれぞれX線を入射させるX線回折法により、前記領域毎に、Zn相の(0002)面の回折ピーク強度I0002と、Zn相の(10−11)面の回折ピーク強度I10−11とを測定し、これらの強度比(I0002/I10−11)を前記配向率とする。
  2. 前記溶融めっき層が、平均組成で、Al:4〜22質量%、Mg:0〜10質量%を含有し、残部がZnおよび不純物を含むことを特徴とする請求項1に記載の溶融めっき鋼板。
  3. 前記溶融めっき層が、更に、平均組成で、Si:0.0001〜2質量%を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の溶融めっき鋼板。
  4. 前記溶融めっき層が、更に、平均組成で、Ni、Ti、Zr、Sr、Fe、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hf、Cのいずれか1種または2種以上を、合計で0.001〜2質量%含有することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の溶融めっき鋼板。
  5. 前記パターン部が、直線部、曲線部、ドット部、図形、数字、記号、模様若しくは文字のいずれか1種またはこれらのうちの2種以上を組合せた形状となるように配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の溶融めっき鋼板。
  6. 前記パターン部が、意図的に形成されたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の溶融めっき鋼板。
  7. 前記溶融めっき層の付着量が前記鋼板両面合計で30〜600g/mであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の溶融めっき鋼板。
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