以下、添付の図面を参照して、本発明を実施するための形態について説明する。各図における同一の符号は、同一の部分または相当する部分を示す。また、本開示では、重複する説明については、適宜に簡略化または省略する。なお、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において、以下の実施の形態によって開示される構成のあらゆる変形およびあらゆる組み合わせを含み得るものである。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1の米飯調理システムの全体構成を示す図である。図2は、実施の形態1の米飯調理システムの機能ブロック図である。まず、本実施の形態に係る米飯調理システムの概要について説明する。
図1および図2に示されるように、本実施の形態に係る米飯調理システムは、炊飯器100、冷蔵庫200および電子レンジ300を備えている。炊飯器100は、ホームネットワーク400に接続されている。冷蔵庫200および電子レンジ300も、ホームネットワーク400に接続されている。ホームネットワーク400は、例えば、使用者の家宅内に設置されるコンピュータ等によって構築される。
炊飯器100と冷蔵庫200とは、ホームネットワーク400を介して、相互通信が可能に接続されている。また、冷蔵庫200と電子レンジ300とは、ホームネットワーク400を介して、相互通信が可能に接続されている。
炊飯器100には、ホームネットワーク400に接続して通信を行うための通信手段として、通信用インターフェース101が搭載されている。また、冷蔵庫200には、ホームネットワーク400に接続して通信を行うための通信手段として、通信用インターフェース201が搭載されている。電子レンジ300には、ホームネットワーク400に接続して通信を行うための通信手段として、通信用インターフェース301が搭載されている。
通信用インターフェース101は、外部に信号を送信することができる送信部101aと、外部から信号を受信することができる受信部101bと、を有する。通信用インターフェース201は、外部に信号を送信することができる送信部201aと、外部から信号を受信することができる受信部201bと、を有する。同様に、通信用インターフェース301は、外部に信号を送信することができる送信部301aと、外部から信号を受信することができる受信部301bと、を有する。通信用インターフェース101、通信用インターフェース201および通信用インターフェース301は、各種の情報を含む信号を相互に送受信できるように構成されている。
なお、ホームネットワーク400は、使用者の家宅外に設置された機器等から構成されていてもよい。ホームネットワーク400は、例えば、複数のサーバからなるクラウドサーバであってもよい。また、炊飯器100、冷蔵庫200および電子レンジ300は、ホームネットワーク400に代えて、通信事業者のもつ電話回線等のネットワーク回線から構成された外部ネットワークに接続していてもよい。炊飯器100と冷蔵庫200とは、外部ネットワークを介して、通信可能に接続されていてもよい。冷蔵庫200と電子レンジ300とは、外部ネットワークを介して、通信可能に接続されていてもよい。
また、炊飯器100と冷蔵庫200とは、ホームネットワーク400および外部ネットワークを介さずに直接的に通信可能に接続されてもよい。同様に、冷蔵庫200と電子レンジ300とは、ホームネットワーク400および外部ネットワークを介さずに直接的に通信可能に接続されてもよい。
本実施の形態に係る米飯調理システムは、冷凍用に適した米飯の炊飯と、米飯のより適切な冷凍保存と、冷凍された米飯のより適切な再加熱と、を実行可能なシステムである。炊飯器100は、冷凍用に適した米飯の炊飯を行えるように構成されている。冷蔵庫200は、炊飯器100によって炊飯された米飯を適切に冷凍保存できるように構成されている。また、電子レンジ300は、冷蔵庫200によって冷凍された米飯を、適切に再加熱できるように構成されている。
本実施の形態の炊飯器100は、通常モードと冷凍モードとでの炊飯を選択的に実行可能である。通常モードとは、使用者がそのまま食べることに適した米飯を炊き上げるためのモードである。一方、冷凍モードとは、冷凍したときに粒同士が離れやすい状態になる米飯を炊き上げるためのモードである。本実施の形態における通常モードは、食用に適した米飯を炊き上げるための第1モードの一例である。また、本実施の形態における冷凍モードは、冷凍用に適した米飯を炊き上げるための第2モードの一例である。
通常モードで炊き上げられた米飯と冷凍モードで炊き上げられた米飯とについて、具体的に説明する。通常モードで炊き上げられた米飯は、そのまま食べるために十分に加熱された状態のものである。通常モードで炊き上げられた米飯は、そのまま食べるために十分に糊化した状態のものである。一方で、冷凍モードで炊き上げられた米飯は、そのまま食べるには糊化が不十分な状態のものである。以下、説明の簡略化のため、通常モードで炊き上げられた米飯を「通常米飯」、冷凍モードによって炊き上げられた米飯を「パラパラ冷凍米飯」と称する。
通常米飯の糊化度は、予め設定された基準値を超える。この基準値は、例えば、90%である。通常米飯の糊化度は、例えば、95%前後である。95%前後とは、95%を含む前後数%の範囲を意味する。
一方、パラパラ冷凍米飯の糊化度は、予め設定された基準値以下である。上記したように、基準値は、例えば、90%である。パラパラ冷凍米飯の糊化度は、例えば、70%から90%の範囲内である。このように、パラパラ冷凍米飯の糊化度は、通常米飯の糊化度を下回っている。
上記のような特徴を有するパラパラ冷凍米飯は、通常米飯よりも硬い。パラパラ冷凍米飯は、通常米飯よりも粘りが少ない。パラパラ冷凍米飯は、通常米飯に比べて、粒同士がくっつきにくい。パラパラ冷凍米飯は、通常米飯に比べて、粒同士が離れやすい。
このように、本実施の形態の炊飯器100は、冷凍モードで動作することによって、上記のような特徴を有するパラパラ冷凍米飯を炊飯可能である。なお、冷凍モードの具体的な動作例については、後述する。
一般的に、通常米飯のように十分に糊化した米飯は、冷凍されると、粒同士がくっついた状態で凍結する。一方、パラパラ冷凍米飯は、冷凍されると、粒同士が離れた状態、または、パラパラとほぐしやすい状態で凍結する。使用者は、パラパラ冷凍米飯を冷凍するだけまたはパラパラ冷凍米飯を冷凍後に少し力を加えるだけで、一粒一粒が離れた状態または一口大のブロックに分割された状態の冷凍された米飯を得ることができる。
一例として、冷凍後のパラパラ冷凍米飯をほぐすために必要な力は、冷凍後の通常米飯を割るために必要な力の三分の一以下である。使用者は、道具を用いることなく手で冷凍後のパラパラ冷凍米飯を容易にほぐすことができる。
パラパラ冷凍米飯は、糊化度が低いため、そのまま食べることに適していない。パラパラ冷凍米飯は、その状態によっては、そのまま食べることができない。パラパラ冷凍米飯は、冷凍保存された後に再加熱されてから食べられることを前提としている。
パラパラ冷凍米飯は、例えば、電子レンジ300等の再加熱手段によって再加熱されてから食べられる。パラパラ冷凍米飯は、再加熱されることによって糊化が進む。パラパラ冷凍米飯の糊化度は、再加熱手段によって再加熱されることで、例えば95%前後まで上がる。このように、使用者は、冷凍された状態のパラパラ冷凍米飯を再加熱手段によって再加熱することで、当該パラパラ冷凍米飯を美味しく食べることができる。
本実施の形態の炊飯器100は、冷凍モードでの炊飯を実行する場合に、冷凍モードでの炊飯が実行されることを示す信号を送信する機能を有する。以下、この信号を、本実施の形態では「冷凍モード信号」と称する。冷凍モード信号は、炊飯器100に搭載された通信用インターフェース101の送信部101aから送信される。本実施の形態における送信部101aは、炊飯器送信部の一例である。また、冷凍モード信号は、炊飯器送信部から送信される第1信号の一例である。
炊飯器100が送信した冷凍モード信号は、ホームネットワーク400を経由して、冷蔵庫200に受信される。なお、冷凍モード信号は、ホームネットワーク400を介さずに、炊飯器100から冷蔵庫200へ送られてもよい。また、冷凍モード信号は、ホームネットワーク400で別の信号に変換されてから冷蔵庫200へ送られてもよい。
冷蔵庫200は、当該冷蔵庫200に搭載された通信用インターフェース201の受信部201bによって冷凍モード信号を受信することができる。本実施の形態における受信部201bは、冷蔵庫受信部の一例である。冷凍モード信号を受信した冷蔵庫200は、炊飯器100が冷凍モードによって炊き上げたパラパラ冷凍米飯を適切に冷凍保存できるように動作する。
冷凍モード信号を受信した冷蔵庫200は、パラパラ冷凍米飯が収納される貯蔵室の温度が予め設定された設定温度になるように動作する。この設定温度は、粒同士が離れたパラパラの状態でパラパラ冷凍米飯を冷凍保存することができる温度として設定される。なお、上記の設定温度は、少し力を加えるだけでほぐすことが可能な状態でパラパラ冷凍米飯を冷凍保存することができる温度として設定されてもよい。
上記の設定温度は、例えば、−7℃である。−7℃は、最大氷結晶生成帯以下で冷凍温度帯より上の温度帯である−9℃から−5℃の温度帯に含まれる設定温度の一例である。最大氷結晶生成帯以下で冷凍温度帯より上の温度帯とは、肉類および魚類等の食品が凍結した状態のまま解凍せずに小分け可能な温度帯である。
冷蔵庫200は、パラパラ冷凍米飯が収納される貯蔵室の温度が上記の設定温度になるように動作することで、パラパラ冷凍米飯を、適切に冷凍保存することができる。本実施の形態であれば、パラパラ冷凍米飯が過度に低温になって硬くなり過ぎた状態で冷凍保存されてしまうことが防止される。また、パラパラ冷凍米飯が収納される貯蔵室の温度が高すぎることによるパラパラ冷凍米飯の品質劣化も防止される。
このように、本実施の形態の米飯調理システムによれば、炊飯器100と冷蔵庫200とが連携することで、米飯をパラパラの状態で適切に冷凍保存することが可能となる。
また、本実施の形態の電子レンジ300は、冷凍されたパラパラ冷凍米飯を適切に再加熱できるように構成されている。電子レンジ300は、通常温めモードでの加熱と冷凍米飯温めモードでの加熱との、2つの異なる動作を選択的に実行可能である。
通常温めモードは、使用者が電子レンジ300の出力等の設定を特に行うことなく自動的に電子レンジ300の出力が決定される運転モードである。冷凍米飯温めモードは、冷凍されたパラパラ冷凍米飯を適切に再加熱するための運転モードである。
一例として、電子レンジ300は、凍結した状態の米飯が冷蔵庫200から当該電子レンジ300へ移された場合に、冷凍米飯温めモードによって当該米飯を加熱するように構成されている。電子レンジ300は、冷凍米飯温めモードで動作することによって、冷蔵庫200によって冷凍されたパラパラ冷凍米飯を適切に再加熱することができる。
使用者は、冷凍保存されたパラパラ冷凍米飯を冷蔵庫200の貯蔵室から取り出す際、当該貯蔵室の扉を開放する。本実施の形態の冷蔵庫200は、パラパラ冷凍米飯が収納される貯蔵室の扉が開放された場合に、当該扉が開放されたことを示す信号を送信する機能を有する。以下、この信号を、本実施の形態では「冷蔵庫開放信号」と称する。
冷蔵庫開放信号は、冷蔵庫200に搭載された通信用インターフェース201の送信部201aから送信される。本実施の形態における送信部201aは、冷蔵庫送信部の一例である。また、冷蔵庫開放信号は、冷蔵庫送信部から送信される第2信号の一例である。
冷蔵庫200が送信した冷蔵庫開放信号は、ホームネットワーク400を経由して、電子レンジ300に受信される。なお、冷蔵庫開放信号は、ホームネットワーク400を介さずに、冷蔵庫200から電子レンジ300へ送られてもよい。また、冷蔵庫開放信号は、ホームネットワーク400で別の信号に変換されてから電子レンジ300へ送られてもよい。
電子レンジ300は、当該電子レンジ300に搭載された通信用インターフェース301の受信部301bによって冷蔵庫開放信号を受信することができる。本実施の形態における受信部301bは、電子レンジ受信部の一例である。そして、冷蔵庫開放信号を受信した電子レンジ300は、冷蔵庫200の貯蔵室から取り出された凍結した状態のパラパラ冷凍米飯を適切に再加熱できるように動作する。電子レンジ300は、凍結した状態のパラパラ冷凍米飯が当該電子レンジ300へ移されると、冷凍米飯温めモードで動作する。
冷凍米飯温めモードは、上記したように、凍結した状態のパラパラ冷凍米飯を適切に再加熱するための運転モードである。具体的には、冷凍米飯温めモードで動作する電子レンジ300は、第1出力での加熱を行う第1加熱工程と当該第1出力よりも低出力である第2出力での加熱を行う第2加熱工程とを順次実施する。一例として、電子レンジ300が冷凍米飯温めモードで動作すると、米飯の温度が60℃になるまで第1加熱工程が実行され、米飯の温度が60℃になると第1加熱工程が終了して第2加熱工程に移行する。
電子レンジ300は、冷凍米飯温めモードで動作することで、加熱ムラおよび過加熱による乾燥の発生を抑制しつつ、米飯中のデンプンの糊化を促進することができる。使用者は、パラパラ冷凍米飯を、電子レンジ300に冷凍米飯温めモードで再加熱させることで、当該パラパラ冷凍米飯を美味しく食べることができる。また、電子レンジ300は、冷凍米飯温めモードで動作する際、水蒸気を供給することによって米飯に水分を付与しつつ当該米飯を加熱してもよい。これにより、米飯の乾燥の発生を抑制しつつ、米飯中のデンプンの糊化をより効果的に促進することができる。なお、冷凍米飯温めモードのより具体的な動作例については、後述する。
以上に示したように、本実施の形態に係る炊飯器100は、冷凍用に適した米飯を炊き上げることが可能である。また、本実施の形態に係る米飯調理システムは、炊飯器100と、この炊飯器100によって炊き上げられたパラパラ冷凍米飯を適切に再加熱することができる電子レンジ300を備えている。本実施の形態に係る米飯調理システムによれば、米飯をパラパラの状態で適切に冷凍保存して且つ当該米飯を適切に再加熱することが可能となる。
また、本実施の形態に係る米飯調理システムは、炊飯器100と、当該炊飯器100と連携する冷蔵庫200と、当該冷蔵庫200と連携する電子レンジ300と、を備えている。本実施の形態に係る米飯調理システムによれば、炊飯器100と冷蔵庫200と電子レンジ300とが連携することで、米飯の適切な冷凍保存および冷凍保存された米飯の適切な再加熱を容易に行うことができる。
次に、本実施の形態に係る米飯調理システムを構成する炊飯器100、冷蔵庫200および電子レンジ300について、より具体的に説明する。
図3は、実施の形態1の炊飯器100の構成を示す概略図である。図2に加えて図3を更に参照して、炊飯器100について説明する。図3に示されるように、炊飯器100は、鍋状容器102と、炊飯器本体103と、外蓋104と、を備えている。
炊飯器100は、米および水を加熱することで、米飯を炊き上げる装置である。鍋状容器102は、上方に開口した鍋状の容器である。鍋状容器102は、米および水を収容する容器の一例である。鍋状容器102は、炊飯釜とも称されるものである。
炊飯器本体103は、炊飯器100の主要構造部分である。炊飯器本体103の形状は、有底の筒状である。炊飯器本体103は、上方に開口した形状をしている。鍋状容器102は、この炊飯器本体103に着脱自在に収容される。
外蓋104は、開閉自在に炊飯器本体103に取り付けられている。外蓋104は、例えば、炊飯器本体103に設けられたヒンジによって開閉自在に支持されている。また、外蓋104には、内蓋105が取り付けられている。外蓋104および内蓋105は、炊飯器本体103の上部の開口を開閉可能な蓋体を構成している。外蓋104および内蓋105からなる蓋体は、炊飯器本体103に収容された鍋状容器102の上部の開口も開閉する。図3において、蓋体は、鍋状容器102の上部の開口を閉じている。図3において、蓋体は、鍋状容器102および当該鍋状容器102に収容された米および水を上方から覆っている。
図3に示されるように、炊飯器本体103は、当該炊飯器本体103に収容された鍋状容器102を加熱する加熱コイル106を備えている。加熱コイル106は、例えば、鍋状容器102に対向する位置に設けられる。鍋状容器102には、例えば、電磁誘導によって発熱する磁性体の金属が含まれる。加熱コイル106は、図示しないインバータから高周波の電流が供給されると、電磁誘導によって鍋状容器102を発熱させる。これにより、当該鍋状容器102内の米および水が加熱されて、米飯が炊き上げられる。
本実施の形態において、加熱コイル106は、図示しないインバータを含む回路等と共に、図2に示される炊飯機構106aを構成している。炊飯機構106aは、米飯を炊き上げる炊飯手段の一例である。また、加熱コイル106は、米および水を収容する容器を加熱する加熱手段の一例である。なお、米および水を収容する容器を加熱する加熱手段は、加熱コイル106に限定されず、例えば、シーズヒータ等の電気ヒーターであってもよい。
炊飯機構106aは、炊飯器100の動作を制御するための炊飯器制御手段の一例である炊飯器制御装置107によって制御される。炊飯器制御装置107は、特に、炊飯器100の炊飯工程における炊飯機構106aの動作を制御する。炊飯工程とは、炊飯器100が米飯を炊き上げる際に実施される工程を意味する。炊飯工程には、例えば、予熱工程、炊き上げ工程および蒸らし工程が含まれる。
炊飯器制御装置107は、例えば、図3に示されるように、炊飯器本体103に内蔵されている。なお、炊飯器制御装置107が設けられる場所は、炊飯器本体103に限られない。炊飯器制御装置107は、例えば、蓋体に設けられてもよい。
また、炊飯器100は、図2および図3に示されるように、操作表示部108を備えている。操作表示部108は、使用者が炊飯器100を使用する際に操作される。また、操作表示部108は、炊飯器100に関する各種の情報を表示する。操作表示部108は、一例として、炊飯器本体103の外面に設けられる。なお、操作表示部108の設置場所は、この例に限られず、例えば、外蓋104の上面等であってもよい。また、使用者は、操作表示部108の代わりに、スマートフォン等の機器によって炊飯器100を操作してもよい。炊飯器100は、スマートフォン等の機器と通信可能に構成されてもよい。
図4は、実施の形態1の操作表示部108の外観の一例である。操作表示部108には、使用者が行う各種の指示の操作を受け付ける複数の操作ボタンが含まれる。使用者が操作ボタンによって行う各種の指示とは、例えば、炊飯の開始、炊飯動作の取り消し、炊飯開始時刻の予約、炊飯メニューの設定等である。本実施の形態において、この複数の操作ボタンには、図4に示すように、メニュー選択ボタン108aおよび延長ボタン108bが含まれている。
上記した炊飯メニューとは、例えば、標準時間での炊飯か当該標準時間よりも短い時間の早炊き炊飯か、仕上がりは硬めか柔らかめか、等を示すものである。使用者は、メニュー選択ボタン108aを操作することで、炊飯メニューの設定を行うことができる。
また、炊飯メニューには、通常モードでの炊飯か冷凍モードでの炊飯かの選択結果も含まれる。使用者は、メニュー選択ボタン108aを操作することで、炊飯器100に通常モードでの炊飯および冷凍モードでの炊飯を選択的に実行させることができる。本実施の形態のメニュー選択ボタン108aは、使用者からの操作に応じて、食用に適した米飯を炊き上げるための第1モードと冷凍用に適した米飯を炊き上げるための第2モードとを選択可能なモード選択手段の一例である。
なお、本実施の形態における通常モードでの炊飯には、冷凍モードではない各種の炊飯が該当する。例えば、仕上がりが硬めとして設定された炊飯メニューによる炊飯も、仕上がりが柔らかめとして設定された炊飯メニューによる炊飯も、通常モードでの炊飯である。また、標準時間での炊飯も、早炊き炊飯も、通常モードでの炊飯に該当する。
また、図4に示されるように、操作表示部108には、炊飯器100によって炊き上げる米の種類を選ぶための操作ボタンが設けられていてもよい。米の種類の選択は、メニュー選択ボタン108aによって行われても良い。また、米の種類が白米以外として設定された炊飯メニューによる炊飯は、通常モードでの炊飯にも該当し得るし、冷凍モードでの炊飯にも該当し得る。通常モードであるか冷凍モードであるかの選択は、米の種類の選択とは独立して行われる。
延長ボタン108bは、冷凍モードによって炊き上げられたパラパラ冷凍米飯をさらに加熱させるための操作ボタンである。本実施の形態の延長ボタン108bは、延長加熱指示手段の一例である。
冷凍モードによる米飯の炊き上げを完了した炊飯器100は、延長ボタン108bが使用者によって操作されると、鍋状容器102内の米飯の糊化度が予め設定された基準値を超えるまで当該米飯の加熱を行う。この基準値は、例えば、90%または95%前後である。使用者は、鍋状容器102内のパラパラ冷凍米飯の一部を冷蔵庫200へ移した後に延長ボタン108bを操作することで、鍋状容器102に残された米飯をそのまますぐに食べることができる状態まで加熱することができる。
また、操作表示部108は、図4に示されるように、液晶ディスプレイ等によって構成された表示部108cを備えている。表示部108cは、炊飯器100に関する各種の情報を表示する。表示部108cは、炊飯器100の使用者に対する各種の報知を行う。本実施の形態における表示部108cは、報知手段の一例である。また、操作表示部108に含まれる操作ボタンと表示部108cとは、例えば、一体の液晶ディスプレイ等として形成されていてもよい。
表示部108cに表示される情報には、使用者がメニュー選択ボタン108a等の操作ボタンによって設定した炊飯メニューの情報が含まれる。すなわち、表示部108cには、標準時間での炊飯か早炊き炊飯かの選択結果、仕上がりは硬めか柔らかめかの選択結果、米の種類は白米か無洗米か等の選択結果が表示される。
図4においては、一例として、白米を冷凍モードで炊き上げることとして設定された炊飯メニューの情報が、表示部108cに表示されている。表示部108cには、図4に示されるように、炊飯完了までの残り時間等も表示される。
報知手段の一例である表示部108cは、炊飯器100に異常が起こった場合に、異常の報知を使用者へ行う機能を有していてもよい。なお、炊飯器100には、音声報知可能なスピーカー等が報知手段として別途設けられていてもよい。
操作表示部108は、信号線を介して炊飯器制御装置107に電気的に接続される。操作表示部108は、使用者が操作表示部108を操作することで入力した各種の指示に関する情報を電気信号として炊飯器制御装置107に送る。炊飯器制御装置107は、操作表示部108からの電気信号に応じて動作する。炊飯器制御装置107は、使用者による操作表示部108の操作に応じて、炊飯機構106aを制御する。
炊飯器制御装置107は、操作表示部108への操作によって設定された炊飯メニューでの炊飯が実行されるように、炊飯機構106aを制御する。炊飯器制御装置107は、メニュー選択ボタン108aによって通常モードが選択された場合には、炊飯機構106aに対して第1炊飯制御を実行する。第1炊飯制御の処理によって、炊飯機構106aは通常炊飯動作を実行して米飯を炊き上げる。
炊飯器制御装置107は、メニュー選択ボタン108aによって冷凍モードが選択された場合には、炊飯機構106aに対して第2炊飯制御を実行する。第2炊飯制御は、上記の第1炊飯制御とは異なる処理である。第2炊飯制御の処理によって、炊飯機構106aは通常炊飯動作と異なる冷凍炊飯動作を実行し、米飯を炊き上げる。
炊飯機構106aの通常炊飯動作によって炊き上げられた米飯とは、すなわち、上記した通常モードで炊き上げられた通常米飯である。また、炊飯機構106aの冷凍炊飯動作によって炊き上げられた米飯とは、上記した冷凍モードで炊き上げられたパラパラ冷凍米飯である。通常炊飯動作によって炊き上げられた米飯の糊化度は予め設定された基準値を超え、冷凍炊飯動作によって炊き上げられたパラパラ冷凍米飯の糊化度はこの基準値以下である。
延長加熱指示手段の一例である延長ボタン108bは、上記の冷凍炊飯動作の実行後に使用者によって操作されると、延長加熱指示信号を炊飯器制御装置107へ送信する。延長加熱指示信号を受信した炊飯器制御装置107は、鍋状容器102内の米飯の糊化度が予め設定された基準値を超えるように、冷凍炊飯動作の実行後の炊飯機構106aを再び動作させる。
炊飯器制御装置107は、操作表示部108の表示部108cの動作を制御する機能も有している。また、炊飯器制御装置107は、通信用インターフェース201の送信部201aに信号を発信させる機能も有している。上記した、送信部101aからの冷凍モード信号の発信動作は、炊飯器制御装置107によって制御される。
炊飯器制御装置107には、炊飯器100の動作を制御するための制御回路等が備えられている。炊飯器制御装置107の各機能は、この制御回路によって実現される。炊飯器制御装置107の制御回路には、例えば、プロセッサ107aおよびメモリ107bが備えられている。炊飯器制御装置107は、メモリ107bに記憶されたプログラムをプロセッサ107aが実行することにより、炊飯器100を制御する。メモリ107bには、炊飯器100の各種の動作のために必要な各種のプログラム等が記憶されている。
プロセッサ107aは、CPU(Central Processing Unit)、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータあるいはDSPともいう。メモリ107bには、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリー、EPROMおよびEEPROM等の不揮発性または揮発性の半導体メモリ、または磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスクおよびDVD等が該当する。
本実施の形態において、メモリ107bには、炊飯器100が通常モードでの炊飯を行うためのプログラムと、炊飯器100が冷凍モードでの炊飯を行うためのプログラムと、が少なくとも記憶されている。すなわち、メモリ107bには、炊飯機構106aが通常炊飯動作を実行するためのプログラムと、炊飯機構106aが冷凍炊飯動作を実行するためのプログラムと、が少なくとも記憶されている。また、メモリ107bには、炊飯器制御装置107が延長加熱指示信号を受信した場合に炊飯機構106aを再び動作させるためのプログラムも記憶されている。
なお、炊飯器制御装置107の制御回路は、例えば、専用のハードウェアとして形成されてもよい。炊飯器制御装置107の制御回路の一部が専用のハードウェアとして形成され、且つ、当該制御回路にプロセッサ107aおよびメモリ107bが備えられていてもよい。一部が専用のハードウェアとして形成される制御回路には、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、またはこれらを組み合わせたものが該当する。
また、炊飯器制御装置107の機能は、炊飯器100の外部の装置またはシステムによって実現されてもよい。炊飯器制御装置107の機能は、例えば、ホームネットワーク400上のシステムによって実現されてもよい。炊飯器100の動作の制御は、ホームネットワーク400上のシステムによって行われてもよい。
次に、通常モードでの炊飯と冷凍モードでの炊飯とについて、より具体的に説明する。図5は、実施の形態1の鍋状容器102に印字された水位の目盛の一例を説明する図である。本実施例におけるこの目盛は、米飯を炊き上げることに適した量の水を計量可能な水計量手段の一例を構成するものである。図5に示される実施例において、鍋状容器102に印字された目盛は、通常モードにおける適切な水位と冷凍モードにおける適切な水位をそれぞれ示している。図5に示される実施例において、鍋状容器102に印字された目盛は、通常炊飯動作によって米飯を炊き上げることに適した量の水と、冷凍炊飯動作によってパラパラ冷凍米飯を炊き上げることに適した量の水と、の両方を計量可能に構成されている。使用者は、選択するモードの目盛に合わせた量の水を入れて、炊飯を開始する。
なお、鍋状容器102に印字された目盛は、図5に示される例に限られない。例えば、鍋状容器102に印字された目盛は、仕上がりは硬めか柔らかめか、米の種類は白米かそれ以外か、等、各種の炊飯メニューに応じた水位を示すように構成されていてもよい。本実施の形態における鍋状容器102に印字された目盛は、少なくとも冷凍炊飯動作によってパラパラ冷凍米飯を炊き上げることに適した量の水を計量可能に構成されていればよい。
図5に示される実施例において、冷凍モードでの適切な水位を示す目盛は、通常モードでの適切な水位を示す目盛よりも低い。すなわち、冷凍炊飯動作によってパラパラ冷凍米飯を炊き上げることに適する水量は、通常炊飯動作によって米飯を炊き上げることに適する水量よりも少なく設定されている。これにより、パラパラ冷凍米飯は、通常炊飯動作によって炊き上げられる米飯に比べて含水率および糊化度が低い冷凍用に適したものとなる。
また、図5に示される実施例では、通常モードでの適切な水位を示す目盛と冷凍モードでの適切な水位を示す目盛とで、それぞれ外観を違うものにしている。図5に示される実施例では、通常モードでの適切な水位を示す目盛は三角形と線とからなり、冷凍モードでの適切な水位を示す目盛は線だけで構成されている。目盛の外観をそれぞれ違うものにすることで、使用者が水位を合わせるべき目盛を見間違えてしまう可能性を抑えることができる。
また、図6は、実施の形態1の通常モードにおける炊飯工程と冷凍モードにおける炊飯工程の具体例を説明する図である。図6は、炊飯工程における、鍋状容器102内に収容された内容物温度の時系列変化の一例を示している。
本実施の形態において、通常モードでの炊飯工程には、予熱工程、炊き上げ工程および蒸らし工程の3つの工程が全て含まれる。一方、本実施の形態において、冷凍モードでの炊飯工程には炊き上げ工程は含まれるが、予熱工程および蒸らし工程は省略される。
炊飯器100による通常モードでの炊飯が開始すると、炊飯工程のうちの予熱工程が最初に実施される。予熱工程は、鍋状容器102内の水を沸騰させる前の段階で、鍋状容器102を予め設定された温度で予め設定された時間だけ加熱する工程である。予熱工程におけるこの加熱により、米の吸水が促進され、甘味成分である糖および旨味成分であるアミノ酸等の呈味成分が生成される。予熱工程では、鍋状容器102内に収容された内容物温度が予め設定された基準温度で維持されるように、炊飯機構106aが動作する。
予熱工程が完了すると、炊き上げ工程が実施される。炊き上げ工程が開始すると、鍋状容器102内に収容された内容物温度が予め設定された基準温度になるまで、鍋状容器102が加熱される。炊き上げ工程では、鍋状容器102内に収容された内容物温度がこの基準温度で維持されるように、炊飯機構106aが動作する。
例えば、通常モードでの炊き上げ工程においては、鍋状容器102内の水が沸騰するまで、鍋状容器102と当該鍋状容器102内の米と水とが加熱される。通常モードでの炊き上げ工程においては、鍋状容器102内の水の沸騰が維持され、気泡によって米周囲のでんぷんが削れて溶出する。高温で加熱されることで、米のでんぷんの糊化が促進される。
通常モードでの炊き上げ工程における上記の基準温度を、本実施の形態では「通常炊き上げ温度」と称することとする。通常炊き上げ温度は、例えば、100℃である。
本実施の形態の冷凍モードでの炊飯が開始すると、予熱工程が省略され、炊き上げ工程が開始される。冷凍モードでの炊き上げ工程における上記の基準温度を、本実施の形態では「冷凍モード時炊き上げ温度」と称することとする。冷凍モード時炊き上げ温度は、通常炊き上げ温度よりも低く設定される。冷凍モード時炊き上げ温度は、例えば、90℃以下の温度として設定される。
冷凍モードでの炊き上げ工程においては、鍋状容器102内の米と水とは、図6に示されるように、水の沸点以下の温度で維持される。冷凍モードでの炊き上げ工程においては、通常モードでの炊き上げ工程に比べて、米からのでんぷんの溶出が抑制される。冷凍モードでの炊き上げ工程においては、通常モードでの炊き上げ工程に比べ、米のでんぷんの糊化が進まない。
また、上記したように、通常モードでの炊飯工程が実行される場合には、炊き上げ工程の次に蒸らし工程が実行される。蒸らし工程とは、鍋状容器102を加熱することで米飯の温度を高温で維持して当該米飯を蒸らす工程である。蒸らし工程では、米飯の粒の中心におけるでんぷんまで十分に糊化する。また、米飯の粒内の水分の分布が均一になるように、鍋状容器102が加熱され続ける。蒸らし工程が終わると、通常モードでの炊飯工程は終了する。一方、本実施の形態の冷凍モードでの炊飯工程が実行される場合には、炊き上げ工程の次に蒸らし工程が実行されることはない。
通常モードでは、予熱工程中に米のでんぷんが水の中に溶出し、さらに、炊き上げ工程においても前述の通りでんぷんの溶出が進む。炊き上げ工程で米の吸水が進んで鍋状容器102内の水がなくなると、溶出したでんぷんが米粒の周りに再付着して粘りを発生させる。また、炊き上げ工程においては、高温での加熱によって米に含まれるでんぷんの糊化が進む。糊化度が高い米飯は、強い粘りを有する状態である。通常モードでは、米粒周りに再付着したでんぷんと米粒内の高糊化度なでんぷんとの両方の影響により、強い粘りを有する米飯が炊き上げられる。通常モードで炊き上げられた強い粘りを有する米飯は、粒同士がくっつきやすい状態である。
一方、冷凍モードにおいては、予熱工程が省略されるため、通常モードの予熱工程中におけるでんぷんの溶出がない。また、冷凍モードの炊き上げ工程における加熱温度は、通常モードの炊き上げ工程における加熱温度よりも低い。このため、冷凍モードの炊き上げ工程におけるでんぷんの溶出は、通常モードの炊き上げ工程におけるでんぷんの溶出よりも少なくなる。冷凍モードの炊き上げ工程では、通常モードの炊き上げ工程に比べ、米粒の周囲へのでんぷんの再付着が抑制される。また、前述の通り、冷凍モードの炊き上げ工程におけるでんぷんの糊化は、通常モードの炊き上げ工程におけるでんぷんの糊化に比べて進みにくい。冷凍モードで炊き上げられたパラパラ冷凍米飯は、通常モードで炊き上げられた米飯よりも、粘りが少なく粒同士がくっつきにくい状態となる。
前述の通り、冷凍モードの炊き上げ工程における加熱温度は、通常モードの炊き上げ工程における加熱温度よりも低い。このため、冷凍モードでは米に含まれるでんぷんが十分に吸水するまでに長い時間がかかる。例えば、炊き上がった米飯の糊化度が低くて且つ粘りが弱かったとしても、米に吸水されなかった水が鍋状容器102内に残った場合には、米飯を冷凍した時に、この残った水が米粒同士を結着させてしまう。この場合、冷凍された米飯は、粒同士が強く結びついた状態の非常に堅い塊となってしまい、使用者が当該米飯を手でほぐしたとしても粒同士が離れた状態または一口大のブロックに分割された状態にすることは難しい。このため、冷凍モードの炊き上げ工程においては、長い時間をかけて吸水を促すことで炊飯完了後に鍋状容器102内に水が残らないようにすることが好ましい。本実施の形態においては、冷凍モードが選択された場合の炊き上げ工程の時間は、通常モードが選択された場合の炊き上げ工程の時間よりも長く設定されている。
ただし、米の吸水が完了した状態で加熱を続けてしまうと、でんぷんの膨潤が進み、糊化反応が進んで米飯の粘度が上昇してしまう。このため、冷凍モードでは、粘度が上昇してしまう前、すなわち、米飯全体が十分に糊化する前に、炊き上げ工程を終了する。これにより、冷凍モードによって炊き上げられたパラパラ冷凍米飯の糊化度は、通常モードによって炊き上げられた通常米飯の糊化度を下回る。
また、冷凍モードで炊飯を開始する際、鍋状容器102に入れる水量を少なくすることで、炊飯終了時に鍋状容器102内に吸水されずに残ってしまう水を減らすことができる。鍋状容器102に入れる水量を減らせば減らすほど、よりパラパラでほぐれやすい状態で冷凍されるパラパラ冷凍米飯を炊き上げることを容易に実現することができる。
ただし、鍋状容器102に入れる水量を減らせば減らすほど、パラパラ冷凍米飯の含水率が必要以上に低すぎてしまうという問題が発生し易くもなってします。パラパラ冷凍米飯の含水率が低すぎる場合、再加熱しても硬すぎて美味しくないまたは再加熱時に時間がかかり過ぎる等の問題が発生する。
図7は、実施の形態1の冷凍モードで炊き上げたパラパラ冷凍米飯の含水率と再加熱時間と食味との関係の実験結果を説明する図である。図7に示される実験結果においては、含水率が50%から60%までの範囲内であれば、パラパラでほぐれやすい状態で冷凍することが可能で且つ実用的な短い再加熱時間で美味しく食べることが可能な米飯が得られることが分かった。
上記の実験結果を踏まえ、本実施の形態における鍋状容器102に印字された冷凍モード用の目盛は、冷凍モードによって炊き上げられたパラパラ冷凍米飯の含水率が50%から60%の範囲内になるように設定されている。なお、一般的な食用に適する米飯の含水率は60%から65%程度であり、本実施の形態における鍋状容器102に印字された通常モード用の目盛は、通常モードによって炊き上げられた通常米飯の含水率が60%から65%程度となるように設定されている。
本実施の形態における冷凍モードでは、炊き上げ工程の時間が長い分、予熱工程と蒸らし工程とを省略することで、炊飯工程全体の長さが長くなり過ぎることを抑制している。冷凍モードの炊飯工程全体の時間が長すぎるのを防ぐことで、使用者にとっての使い勝手が良くなる。
なお、上記の実施例では冷凍モードにおいて予熱工程を省略しているが、必ずしも省略しなくてもよい。例えば、冷凍モードにおいては、通常モードに比べて加熱温度が低い予熱工程が実施されてもよい。予熱工程が実施されることで呈味成分が生成され、より美味しい状態のパラパラ冷凍米飯を炊きあげることができる。
上記した通り、本実施の形態の炊飯器100は、冷凍炊飯動作によってパラパラ冷凍米飯を炊き上げることに適する水量を計測可能な水計量手段として、鍋状容器102内に印字された目盛を備えている。本開示に係る水計量手段は、目盛に限られず、例えば、鍋状容器102内に投入された水の重量を計測する重量センサ等から構成されていてもよい。炊飯器100は、この重量センサの検知結果に応じて、パラパラ冷凍米飯を炊き上げることに適する水量が投入されたことを報知可能に構成されていてもよい。また、炊飯器100は、水計量手段として、パラパラ冷凍米飯を炊き上げることに適する水量を計測可能な計量カップを備えていてもよい。
上記したように、本実施の形態では、通常モードが選択された場合には、炊飯機構106aは通常炊飯動作を行う。炊飯機構106aは、図6に示される予熱工程、炊き上げ工程および蒸らし工程が順に実行されるように、通常炊飯動作を行う。また、冷凍モードが選択された場合には、炊飯機構106aは冷凍炊飯動作を行う。炊飯機構106aは、図6に示す冷凍モードでの炊き上げ工程が実行されるように、冷凍炊飯動作を行う。
鍋状容器102内の米および水は、通常炊飯動作が実行された場合には当該水が沸騰するまで加熱され、冷凍炊飯動作が実行された場合には当該水の沸点以下の温度で維持される。通常炊飯動作によって炊き上げられた米飯の糊化度は予め設定された基準値を超え、冷凍炊飯動作によって炊き上げられた米飯の糊化度はこの基準値以下になる。
本実施の形態によれば、炊飯機構106aが上記のような通常炊飯動作を行うことによって、そのまま食べることができる食用に適した通常米飯が炊き上げられる。また、炊飯機構106aが上記のような冷凍炊飯動作を行うことによって、冷凍用に適した米飯、すなわち、冷凍された場合に粒同士が離れた状態またはパラパラと離れやすい状態で凍結するパラパラ冷凍米飯が炊き上げられる。
本実施の形態の炊飯器100は、上記した冷凍モードでの炊飯が終了した後に、鍋状容器102内の米飯の再加熱が可能な延長加熱待機状態に自動的になる。炊飯器100が延長加熱待機状態になっているときに使用者によって延長ボタン108bが操作されると、鍋状容器102内の米飯が十分に糊化するように、炊飯機構106aが再び動作する。一例として、炊飯機構106aは、予め設定された一定時間が経過するまで鍋状容器102内の米飯が90℃以上で維持されるように、鍋状容器102を加熱する。これにより、鍋状容器102に残された米飯は、十分に糊化した状態となる。
また、本実施の形態において、炊飯器制御装置107は、冷凍モードが選択された場合、通信用インターフェース201の送信部201aに、冷凍モード信号の送信を行わせる。送信部201aは、例えば、冷凍モードでの炊飯工程の開始時に冷凍モード信号を送信する。このように、本実施の形態であれば、冷凍モードでの炊飯が実行されることを示す信号が、炊飯器100から外部機器に対して自動的に発信される。本実施の形態であれば、炊飯器100と外部機器との連携がスムーズに行われ、使用者の使い勝手が向上する。
なお、送信部201aから冷凍モード信号が送信されるタイミングは、冷凍モードでの炊飯工程の開始時に限られない。冷凍モード信号が送信されるタイミングは、例えば、冷凍モードが選択されて炊飯メニューの設定が完了した時点でもよいし、冷凍モードでの炊飯工程の実施中でもよいし、冷凍モードでの炊飯工程の終了時でもよい。
次に、以上のように構成された炊飯器100と連携する冷蔵庫200の機能について、図2を参照して説明する。冷蔵庫200は、食品を収納保存するための複数の貯蔵室を有している。複数の貯蔵室には、例えば、冷蔵室、切替室、製氷室、冷凍室および野菜室等が含まれる。切替室は、一例として、冷蔵室に比べて容量が小さい。
冷蔵庫200は、各貯蔵室を冷却するための冷却機構202を有している。また、冷蔵庫200には、冷蔵庫200の動作を制御するための冷蔵庫制御手段の一例として、冷蔵庫制御装置203が備えられている。
冷却機構202には、圧縮機、冷却器、凝縮器および絞り装置等から構成された冷凍サイクル回路が含まれる。冷蔵庫200内には、冷凍サイクル回路によって冷却された空気を各貯蔵室へ供給するための風路が形成されている。そして、この風路には、冷却器で冷却された空気を各貯蔵室へ送るための送風機が設置されている。
また、上記の風路から各貯蔵室へと通じる中途の箇所には、ダンパが設けられている。ダンパの開閉状態が変化することで、各貯蔵室へと供給される冷気の風量が調節される。貯蔵室へと供給される冷気の風量は、送風機の運転が制御されることによっても調節される。各貯蔵室へと供給される空気の温度は、圧縮機の運転が制御されることで調節される。以上に示したように、本実施の形態の冷却機構202は、圧縮機、冷却器、凝縮器、絞り装置、送風機およびダンパ等によって構成されている。
各貯蔵室の温度は、冷却機構202の動作が制御されることによって、調節される。冷蔵庫200が有する複数の貯蔵室のうちの切替室の温度帯は、複数の温度帯のうちのいずれかに選択的に切り替えることが可能である。切替室の温度帯は、冷却機構202が冷蔵庫制御装置203によって制御されることで、切り替えられる。
切替室の温度帯として選択可能な複数の温度帯は、例えば、冷凍温度帯、冷蔵温度帯、チルド温度帯、ソフト冷凍温度帯等である。冷凍温度帯は、例えば、−18℃程度の温度帯である。冷蔵温度帯は、例えば、3℃程度の温度帯である。チルド温度帯は、例えば、0℃程度の温度帯である。ソフト冷凍温度帯は、例えば、−7℃程度の温度帯である。
このように、切替室は、収容した食品を冷凍保存することができる。本実施の形態における切替室は、食品を冷凍保存可能な貯蔵室の一例である。また、上記した冷凍温度帯、冷蔵温度帯およびチルド温度帯は、第1温度帯の一例である。ソフト冷凍温度帯は、この第1温度帯と異なる第2温度帯の一例である。第2温度帯は、炊飯器100によって炊き上げられたパラパラ冷凍米飯を冷凍保存するのに適した温度帯である。冷却機構202は、切替室を第1温度帯と第2温度帯とに選択的に調節可能な貯蔵室冷却手段の一例である。
−7℃程度の温度帯であるソフト冷凍温度帯とは、すなわち、最大氷結晶生成帯以下で冷凍温度帯より上の温度帯の一例である。使用者は、温度帯がソフト冷凍温度帯となっている切替室にパラパラ冷凍米飯を収容することで、パラパラ冷凍米飯を、パラパラの状態で適切に冷凍保存することができる。
上記したように、冷凍モードが選択された場合、炊飯器100の送信部101aから、外部機器に対して冷凍モード信号が自動的に発信される。そして、冷蔵庫200の受信部201bが冷凍モード信号を受信すると、冷蔵庫制御装置203は、切替室の温度帯がソフト冷凍温度帯になるように、冷却機構202を制御する。例えば、冷却機構202は、切替室を急冷した後に、当該切替室の温度が−7℃程度で維持されるように動作する。このように、本実施の形態においては、冷凍モードでの炊飯が実行された場合に、切替室の温度帯が自動的にソフト冷凍温度帯に調節される。
また、本実施の形態の冷蔵庫200は、図2に示されるように、パラパラ冷凍米飯が収納される貯蔵室の扉、すなわち切替室の扉の開閉を検知する開閉検知部204を備えている。冷蔵庫制御装置203は、開閉検知部204の検知結果に応じて動作する。開閉検知部204は、切替室の扉が開放されると、当該扉が開放されたことを示す信号を冷蔵庫制御装置203へ送信する。開閉検知部204からこの信号を受信した冷蔵庫制御装置203は、通信用インターフェース201の送信部201aに、上記した冷蔵庫開放信号の送信を行わせる。
開閉検知部204は、パラパラ冷凍米飯が収納される貯蔵室の扉の開閉を検知する開閉検知手段の一例である。また、開閉検知部204は、パラパラ冷凍米飯が収納される貯蔵室から凍結した状態のパラパラ冷凍米飯が取り出されたことを検知する移動検知手段の一例でもある。なお、移動検知手段は、例えば、切替室内の温度を検知するサーミスタおよび切替室内を撮像するカメラ等によって構成されていてもよい。
また、本実施の形態の冷蔵庫200は、図2に示されるように、切替室から取り出された物の量を検知する量検知部205を備える。量検知部205は、例えば、切替室内の重量の変化を検知するセンサおよび切替室内を撮像するカメラ等によって構成される。量検知部205は、冷蔵庫200の貯蔵室から電子レンジ300へ移された凍結した状態の米飯の量を検知する量検知手段の一例である。なお、量検知手段は、例えば、電子レンジ300に設けられた各種のセンサ等によって構成されていてもよい。
冷蔵庫制御装置203は、量検知部205の検知結果に応じて動作する。量検知部205は、切替室から凍結した状態の米飯が取り出されると、当該米飯の量の情報を含む信号を、冷蔵庫制御装置203へ送信する。量検知部205からこの信号を受信した冷蔵庫制御装置203は、送信部201aに、切替室から取り出された米飯の量の情報を含む信号
の送信を行わせる。
上記のように動作する冷蔵庫制御装置203には、炊飯器制御装置107と同様に、制御回路が備えられている。そして、制御回路には、例えば、プロセッサ203aおよびメモリ203bが備えられている。冷蔵庫制御装置203は、メモリ203bに記憶されたプログラムをプロセッサ203aが実行することにより、冷蔵庫200を制御する。本実施の形態において、メモリ203bには、切替室の温度帯をソフト冷凍温度帯に調節するためのプログラムが少なくとも記憶されている。
冷蔵庫制御装置203の制御回路は、例えば、専用のハードウェアとして形成されてもよい。冷蔵庫制御装置203の制御回路の一部が専用のハードウェアとして形成され、且つ、当該制御回路にプロセッサ203aおよびメモリ203bが備えられていてもよい。また、冷蔵庫制御装置203の機能は、例えば、ホームネットワーク400上のシステム等の、冷蔵庫200の外部の装置またはシステムによって実現されてもよい。
次に、以上のように構成された冷蔵庫200と連携する電子レンジ300の機能について、図2を参照しつつ説明する。電子レンジ300は、当該電子レンジ300に収容された食品を加熱する加熱手段の一例として、加熱機構302を備えている。加熱機構302は、マイクロ波を照射することによって、食品の加熱を行う。加熱機構302の動作は、電子レンジ300の動作を制御するための電子レンジ制御手段の一例である電子レンジ制御装置303によって制御される。電子レンジ300は、加熱機構302が電子レンジ制御装置303によって制御されることで、通常温めモードでの加熱と冷凍米飯温めモードでの加熱とを選択的に実行可能である。
電子レンジ300の受信部301bが上記した冷蔵庫開放信号を受信すると、電子レンジ制御装置303は、冷凍米飯温めモードでの加熱が行われるように、加熱機構302を制御する。電子レンジ300は、冷蔵庫200の切替室から凍結した状態のパラパラ冷凍米飯が当該電子レンジ300へ移されると、冷凍米飯温めモードで動作する。このように、本実施の形態の電子レンジ300は、冷凍保存されたパラパラ冷凍米飯を適切に再加熱することができる運転モードで自動的に動作する。
また、電子レンジ300は、当該電子レンジ300内の食品の温度を検知する温度検知手段の一例として、サーミスタ等から構成される温度検知部304を備えている。電子レンジ制御装置303は、温度検知部304の検知結果に基づいて動作する。例えば、電子レンジ制御装置303は、温度検知部304によって検知される温度が予め設定された一定温度以上になるように、加熱機構302を制御する。
また、電子レンジ300には、一例として、電子レンジ操作表示部305が設けられている。電子レンジ操作表示部305は、炊飯器100の操作表示部108と同様に、使用者が電子レンジ300を使用する際に操作される。また、電子レンジ300に関する各種の情報を表示する電子レンジ操作表示部305は、例えば、電子レンジ300による食品の加熱が終了したことを、使用者に対して報知する。電子レンジ操作表示部305は、電子レンジ制御装置303によって制御される。また、電子レンジ制御装置303は、使用者による電子レンジ操作表示部305への操作に応じて、動作する。
上記のように動作する電子レンジ制御装置303には、炊飯器制御装置107および冷蔵庫制御装置203と同様に、制御回路が備えられている。制御回路には、例えば、プロセッサ303aおよびメモリ303bが備えられている。電子レンジ制御装置303は、メモリ303bに記憶されたプログラムをプロセッサ303aが実行することにより、電子レンジ300を制御する。本実施の形態において、メモリ303bには、通常温めモードでの加熱を行うためのプログラムと、冷凍米飯温めモードでの加熱を行うためのプログラムと、が少なくとも記憶されている。
電子レンジ制御装置303の制御回路は、例えば、専用のハードウェアとして形成されてもよい。電子レンジ制御装置303の制御回路の一部が専用のハードウェアとして形成され、且つ、当該制御回路にプロセッサ303aおよびメモリ303bが備えられていてもよい。また、電子レンジ制御装置303の機能は、例えば、ホームネットワーク400上のシステム等の、電子レンジ300の外部の装置またはシステムによって実現されてもよい。
ここで、電子レンジ300の通常温めモードと冷凍米飯温めモードとの具体例を説明する。図8は、実施の形態1の電子レンジ300の通常温めモードと冷凍米飯温めモードとの具体例を説明する図である。図8(a)は、通常温めモードの具体例である。図8(b)は、冷凍米飯温めモードの具体例である。図8は、電子レンジ300によって加熱される米飯の温度と電子レンジ300の出力との時系列変化の一例を示している。
上記したように、通常温めモードは、使用者が電子レンジ300の出力等の設定を特に行うことなく自動的に電子レンジ300の出力が決定される運転モードである。一例として、通常温めモードでの加熱は、電子レンジ300内の被加熱物の温度が80℃以上になるように行われる。図8に示される実施例において、通常温めモードでの動作時、電子レンジ制御装置303は、温度検知部304の検知結果に基づいて、電子レンジ300内の被加熱物が80℃以上になった時点で加熱機構302を停止させる。また、通常温めモードの実施時には、予め設定された所定の出力での加熱が所定時間だけ経過するまで行われてもよい。通常温めモードでの加熱が終了すると、電子レンジ操作表示部305によって、通常温めモードでの加熱が終了したことが報知される。
また、上記したように、冷凍米飯温めモードは、凍結した状態のパラパラ冷凍米飯を適切に再加熱するための運転モードである。冷凍米飯温めモードでは,第1出力で加熱する第1加熱工程と当該第1出力よりも低出力な第2出力で加熱する第2加熱工程とが順次実施される。また、上記したように、冷凍米飯温めモードでは、水蒸気を供給することによってパラパラ冷凍米飯に水分を付与しつつ当該パラパラ冷凍米飯を加熱してもよい。図2に示されるように、電子レンジ300は、当該電子レンジ内の被加熱物に水分を供給する水分供給手段の一例として、蒸気供給部306を備えていてもよい。
電子レンジ300が冷凍米飯温めモードで動作する際には、一例として、図8に示されるように、当該電子レンジ300内の米飯の温度が60℃になった時点で第1加熱工程を終了して第2加熱工程が開始する。電子レンジ300は、パラパラ冷凍米飯を再加熱するための冷凍米飯温めモードで動作することで、加熱ムラおよび過加熱による乾燥の発生を抑制しつつ、パラパラ冷凍米飯のでんぷん糊化を促進することができる。使用者は、パラパラ冷凍米飯を、電子レンジ300に冷凍米飯温めモードで再加熱させることで、当該パラパラ冷凍米飯を美味しく食べることができる。
炊飯器100が冷凍モードで炊き上げたパラパラ冷凍米飯は、含水量が少なく、糊化度が低いことを特徴としている。冷凍されたパラパラ冷凍米飯を再加熱する場合には、含水量が少ないパラパラ冷凍米飯を十分に糊化させる必要がある。冷凍されたパラパラ冷凍米飯を再加熱する場合には、蒸気の無駄な放出を避けることが好ましい。
そこで、蒸気供給部306によって水蒸気をパラパラ冷凍米飯に供給しながら加熱することで、当該パラパラ冷凍米飯を柔らかくて美味しい状態に再加熱することができる。蒸気供給部306で水蒸気をパラパラ冷凍米飯に付与することで、パラパラ冷凍米飯全体にムラなく均一に水分を与えることができる。水蒸気をパラパラ冷凍米飯に供給しながら加熱することで、再加熱後のパラパラ冷凍米飯は均一に含水量が増加する。これにより、硬さのムラが少なく全体が均一に適度な柔らかさの美味しい米飯を得ることができる。
なお、電子レンジ300が備える水分供給手段は、水蒸気を供給する蒸気供給部306に限られない。例えば、水分供給手段は、スプレー状のノズルによって水を供給するように構成されていてもよい。
また、電子レンジ300に水分供給手段を備える代わりに、電子レンジ300での再加熱を行う前に使用者がパラパラ冷凍米飯に水分を供給してもよい。電子レンジ300に水分供給手段を設ける必要がなくなることで、当該水分供給手段のメンテナンス、具体的には水分供給手段の清掃および水の補給をする手間がなくなる。また、電子レンジ300に水分供給手段を設ける必要がなくなることで、当該電子レンジ300を小型化することができる。
冷凍米飯温めモードで電子レンジ300が動作する際、電子レンジ制御装置303は、温度検知部304の検知結果に基づいて、第1加熱工程および第2加熱工程が順次実施されるように加熱機構302を制御する。冷凍米飯温めモードで電子レンジ300が動作する際、電子レンジ制御装置303は、例えば、電子レンジ300内の米飯の温度が60℃以上になった時点で第1加熱工程が終了して第2加熱工程が開始するように、加熱機構302を制御する。第1出力よりも低出力な第2出力で加熱する第2加熱工程が行われることで、電子レンジ300内の温度はでんぷんの吸水および膨潤が進む温度帯で維持され、十分な糊化反応を起こすことができる。
でんぷんの糊化に伴う吸熱反応は、60℃付近の温度で発生し始める。十分に吸水させた米は、60℃以上の温度帯においては、高温であればあるほど短時間に糊化が完了する。しかし、吸水が不十分な米飯を電子レンジで加熱する場合には、当該米飯が80℃以上になると糊化ではなく水分の蒸発ばかりが進行してしまうことが実験によって分かった。パラパラ冷凍米飯を再加熱して美味しい状態にするためには、60℃から80℃の温度帯を維持して十分な糊化反応を起こすことが重要である。また、低出力で加熱することで、加熱ムラの発生および蒸気の無駄な放出による米飯の乾燥が抑制される。
例えば、再加熱開始時から低出力での加熱を行い続けた場合には、再加熱が完了するまでに長い時間がかかってしまう。上記した冷凍米飯温めモードにおいては、糊化および水分の蒸発が発生しにくい加熱初期の第1加熱工程においては、大きな第1出力で短時間の加熱を行う。この第1加熱工程の後、第2加熱工程では小さな第2出力での加熱を行う。第2加熱工程は、パラパラ冷凍米飯の温度が60℃から80℃の温度帯で長時間維持されるように実施されるとよい。
具体的には、第2加熱工程におけるパラパラ冷凍米飯の温度が上昇する速度は、第1加熱工程におけるパラパラ冷凍米飯の温度が上昇する速度よりも低いとよい。すなわち、第1加熱工程においてパラパラ冷凍米飯の温度が再加熱前の温度から60℃になるまでの昇温速度が、第2加熱工程においてパラパラ冷凍米飯の温度が60℃から80℃になるまでの昇温速度よりも低いとよい。第1加熱工程においてパラパラ冷凍米飯の温度が再加熱前の温度から60℃になるまでの昇温速度は、図8(b)における点aから点bまでの傾きである。また、第1加熱工程においてパラパラ冷凍米飯の温度が再加熱前の温度から60℃になるまでの昇温速度は、図8(b)における点bから点cまでの傾きである。
上記のように、第1加熱工程と第2加熱工程とを組み合わせることで、比較的短い時間でパラパラ冷凍米飯を十分に糊化することができる。本実施の形態によれば、使用者にとっての使い勝手と再加熱後のパラパラ冷凍米飯の美味しさとを両立することができる。
冷凍米飯温めモードにおける電子レンジ300の第1出力、第2出力および加熱時間は、例えば、温度検知部304の検知結果に基づいて設定される。第1出力、第2出力および加熱時間は、冷蔵庫200の切替室から電子レンジ300へ移された米飯の量に応じて設定されてもよい。第1出力、第2出力および加熱時間の設定は、一例として、電子レンジ制御装置303によって行われる。
上記したように、量検知部205から信号を受信した冷蔵庫制御装置203は、送信部201aに、切替室から取り出された米飯の量の情報を含む信号の送信を行わせる。この信号は、受信部301bによって受信される。電子レンジ制御装置303は、受信部301bが受信した信号に含まれる切替室から取り出された米飯の量の情報に基づいて、第1出力、第2出力および冷凍米飯温めモードでの加熱時間を設定する。例えば、第2出力は、切替室から電子レンジ300へ移された米飯の量が少ないほど小さい出力として設定されるとよい。
本実施の形態によれば、電子レンジ300は、切替室から当該電子レンジ300へ移された米飯の量に応じて、適切に動作することができる。例えば、電子レンジ300内の米飯の量が少ない場合に多くの蒸気が当該米飯から無駄に放出されてしまうことが抑制される。また、電子レンジ300内の米飯の量が多い場合に、加熱時間が足りずに糊化が十分に進まないことも防止される。
本実施の形態において、切替室から電子レンジ300へ移された米飯の量の検知は、冷蔵庫200に備えられた量検知部205によって行われる。本実施の形態の米飯調理システムであれば、電子レンジ300で米飯を加熱する際に当該米飯が収容される容器の重量の影響を受けずに、切替室から電子レンジ300へ移された米飯の量の検知を行うことができる。
なお、冷凍米飯温めモードでの電子レンジ300の動作は、図8に示される例に限られない。例えば、冷凍米飯温めモードにおいて、電子レンジ300は、第1加熱工程の終了時に加熱機構302を停止させた後,余熱によって電子レンジ300内の米飯を加熱してもよい。すなわち、電子レンジ300は、上記した第2加熱工程に代えて、余熱による米飯の加熱を行ってもよい。電子レンジ300は、余熱による米飯の加熱が一定時間だけ行われたあと、電子レンジ操作表示部305によって加熱が終了したことを報知するように構成されてもよい。余熱によって米飯を加熱する時間は、切替室から電子レンジ300へ移された米飯の量が多いほど長い時間として設定されてもよい。
本実施の形態における通常温めモードは、冷凍米飯温めモードとは異なるモードの一例である。すなわち、電子レンジ300は、冷凍米飯温めモードでの動作と、当該冷凍米飯温めモードとは異なるモードでの動作とを選択的に実行可能に構成されている。電子レンジ300は、上記した通常温めモード以外の運転モードでの動作を実行可能に構成されてもよい。例えば、電子レンジ300は、一般的な電子レンジと同様に、使用者が設定した加熱時間および出力によって動作してもよい。
上記の実施の形態において、米飯調理システムは、冷凍米飯炊飯工程と、冷凍工程と、水分供給工程と、再加熱工程と、を順に実施するように構成されている。冷凍米飯炊飯工程は、冷凍炊飯動作によってパラパラ冷凍米飯を炊き上げる工程であり、具体的には炊飯器100によって実施される。冷凍工程は、冷凍米飯炊飯工程によって炊き上げられた米飯を冷凍する工程であり、具体的には冷蔵庫200によって実施される。水分供給工程は、冷凍工程によって冷凍された米飯に水分を供給する工程である。この水分供給工程は、使用者が手で水をふりかけることで実施してもよいし、電子レンジ300が行ってもよい。また、その他の危機によって水分供給工程が実施されてもよい。再加熱工程は、水分供給工程によって水分を供給された米飯を冷凍米飯温めモードで再加熱する工程であり、具体的には電子レンジ300によって実施される。上記のように構成された米飯調理システムによれば、米飯をパラパラの状態で適切に冷凍保存することが可能であり、且つ、冷凍保存された米飯を食味がよい状態になるように適切に再加熱することが可能である。
次に、フロー図を参照して、実施の形態1の米飯調理システムの具体的な動作の流れを説明する。図9、図10および図11は、実施の形態1の米飯調理システムの動作フロー図である。図9は、炊飯器100に関するフロー図である。図10は、冷蔵庫200に関するフロー図である。図11は、電子レンジ300に関するフロー図である。図9、図10および図11を参照して、本実施の形態に係る米飯調理システム全体の動作の流れについて説明する。なお、図9、図10および、図11のフロー図は、炊飯器100によって冷凍モードでの炊飯が行われることを前提としているものである。
まず、使用者は、鍋状容器102内に米と水とを入れる。その後、使用者は、操作表示部108を操作して、炊飯メニューの設定を行う。上記したように、ここでは、冷凍モードが選択されたこととする。炊飯メニューの設定を行った使用者は、操作表示部108を操作して、炊飯器100に炊飯を開始させる。炊飯器100は、冷凍モードでの炊飯を開始する(ステップS101)。
炊飯器制御装置107は、炊飯を開始させるための指示を操作表示部108から受信すると、冷凍モードが選択されているか否かの判定を行う(ステップS102)。冷凍モードが選択されている場合、炊飯器制御装置107は、送信部201aに、冷凍モード信号の送信を行わせる(ステップS103)。冷凍モードが選択されていない場合には、ステップS103の処理は実行されない。
図9および図10に示されるように、送信部201aから送信された冷凍モード信号は、冷蔵庫200の受信部201bによって受信される(ステップS201)。受信部201bが冷凍モード信号を受信すると、冷蔵庫制御装置203は、切替室の設定温度を、ソフト冷凍温度帯になるように設定する(ステップS202)。また、冷蔵庫制御装置203は、切替室の温度帯がソフト冷凍温度帯になるように、冷却機構202に予冷を開始させる(ステップS203)。
なお、例えば、このステップS203の時点で切替室の温度帯がソフト冷凍温度帯にくらべて低温である場合には、冷蔵庫制御装置203は、切替室の温度帯がソフト冷凍温度帯まで昇温するように冷却機構202を制御してもよい。
冷凍モードによる炊飯が終了すると、図9に示されるように、表示部108cによって炊飯が終了した旨の報知が行われる(ステップS104)。炊飯器100による炊飯が完了すると、使用者は、外蓋104を開放して、鍋状容器102から冷凍する分のパラパラ冷凍米飯を取り出す(ステップS105)。使用者は、例えば、冷凍する分のパラパラ冷凍米飯を、容器または袋等に入れる。
使用者は、冷凍する分のパラパラ冷凍米飯を、図10に示すように、冷蔵庫200の切替室に収容する(ステップS204)。冷蔵庫制御装置203は、切替室の温度帯がソフト冷凍温度帯に維持されるように、冷却機構202を制御する。これにより、パラパラ冷凍米飯は、パラパラとほぐれやすい状態で冷凍保存される。
なお、冷蔵庫200は、例えば、開閉検知部204、量検知部205、切替室内の温度を検知するサーミスタおよび切替室内を撮像するカメラ等によって、切替室内にパラパラ冷凍米飯が収容されたことを検知可能に構成されていてもよい。冷蔵庫200は、切替室内にパラパラ冷凍米飯が収容されたことが検知されると切替室が急冷されるように構成されていてもよい。そして、冷蔵庫200は、切替室が急冷された後に当該切替室の温度帯がソフト冷凍温度帯に維持されるように構成されていてもよい。
使用者は、冷凍モードで炊き上げられたパラパラ冷凍米飯のうち、一部をそのまま食べる分として鍋状容器102内に残す。冷凍する分のパラパラ冷凍米飯を鍋状容器から取り出した使用者は、外蓋104を閉じてから延長ボタン108bを押下する(ステップS106)。炊飯器100は、延長ボタン108bが使用者によって操作されると、鍋状容器102内の米飯の糊化度が予め設定された基準値を超えるまで当該米飯の加熱を行う。炊飯器100による再度の加熱が完了すると、加熱が終了した旨の報知が表示部108cによって行われる(ステップS107)。
また、使用者は、冷凍保存されたパラパラ冷凍米飯を再加熱して食べる際に、冷凍されたパラパラ冷凍米飯を切替室から食べたい分だけ取り出す。本実施の形態に係る米飯調理システムであれば、切替室で冷凍されたパラパラ冷凍米飯は、粒同士が離れた状態またはパラパラと離れやすい状態になっている。使用者は、冷凍されたパラパラ冷凍米飯を、食べたい分だけ茶わん等の容器に容易に取り出すことができる。
使用者は、冷凍されたパラパラ冷凍米飯を切替室から取り出す際に、当該切替室の扉を開放する(ステップS205)。切替室の扉が開放されると、送信部201aから冷蔵庫開放信号が送信される。送信部201aから送信された冷蔵庫開放信号は、図9に示すように、電子レンジ300の受信部301bによって受信される(ステップS301)。また、使用者は、冷凍されたパラパラ冷凍米飯を切替室から取り出した後、当該切替室の扉を閉じる(ステップS206)。
電子レンジ300は、受信部301bによって冷蔵庫開放信号を受信すると、冷凍米飯温めモードでの加熱を行うための待機状態になる。この状態で、使用者が電子レンジ操作表示部305を操作して電子レンジ300に加熱を開始させると、電子レンジ300は、冷凍米飯温めモードでの加熱を行う。
使用者は、冷凍されたパラパラ冷凍米飯を電子レンジ300によって加熱する際に、当該電子レンジ300の扉を開放する(ステップS302)。電子レンジ300の扉が開放されると、当該扉が開放されたことを示す信号が、送信部301aから送信される。送信部301aによる信号の発信動作は、例えば、電子レンジ制御装置303によって制御される。
送信部301aから送信された電子レンジ300の扉が開放されたことを示す信号は、冷蔵庫200の受信部201bによって受信される。受信部201bが送信部301aから信号を受信すると、ステップS205で切替室の扉が開かれる直前での切替室内のパラパラ冷凍米飯の量の検知と、ステップS306で電子レンジ300の扉が開かれた時点での切替室内のパラパラ冷凍米飯の量の検知と、が実行される。また、切替室の扉が開かれる直前での切替室内のパラパラ冷凍米飯の量と電子レンジ300の扉が開かれた時点での切替室内のパラパラ冷凍米飯の量との比較も実行される(ステップS207)。このステップS207の処理は、冷蔵庫制御装置203、開閉検知部204および量検知部205等によって実行される。
また、使用者は、電子レンジ300の扉を開放した後、茶わん等の容器に入れた凍結したパラパラ冷凍米飯を当該電子レンジ300に収納する(ステップS303)。また、使用者は、切替室から取り出したパラパラ冷凍米飯のうち、電子レンジ300に収納しなかった残りのパラパラ冷凍米飯を切替室へ戻す(ステップS304)。
使用者は、パラパラ冷凍米飯を切替室に戻す際に、当該切替室の扉を開放する(ステップS208)。使用者は、パラパラ冷凍米飯を切替室に戻した後、当該切替室の扉を閉じる(ステップS209)。切替室の扉が閉じられると、この時点での切替室内のパラパラ冷凍米飯の量の検知が実行される。また、ステップS207によって検知された各時点での切替室内のパラパラ冷凍米飯の量とステップS209の直後の時点での切替室内のパラパラ冷凍米飯の量との比較も実行される(ステップS210)。
冷蔵庫制御装置203は、ステップS207の処理の結果とステップS210の処理の結果とに基づいて、切替室から取り出されて電子レンジ300へ移されたパラパラ冷凍米飯の量を算出する。そして、冷蔵庫制御装置203は、切替室から取り出されて電子レンジ300へ移されたパラパラ冷凍米飯の量の算出結果の情報を含む信号を、送信部201aに、送信させる(ステップS211)。この信号は、電子レンジ300の受信部301bによって受信される(ステップS305)。
上記のステップS305の後、冷凍米飯温めモードにおける電子レンジ300の出力および加熱時間、すなわち、第2出力および第2時間の設定が行われる。第2出力および第2時間は、ステップS305で受信部301bが受信した信号に応じて、電子レンジ制御装置303によって設定される(ステップS306)。
パラパラ冷凍米飯を電子レンジ300に収納した使用者は、電子レンジ操作表示部305を操作して、電子レンジ300に加熱を開始させる。電子レンジ300は、冷凍米飯温めモードでの加熱を開始する(ステップS307)。電子レンジ300は、第2出力で第2時間の加熱を行う。本実施の形態に係る米飯調理システムは、一例として、以上のように動作する。
以上に示した実施の形態によれば、冷凍したときに粒同士が離れた状態または離れやすい冷凍用に適した米飯、すなわちパラパラ冷凍米飯を炊き上げることができる炊飯器100が得られる。使用者は、パラパラ冷凍米飯を同じ袋または容器でまとめて冷凍しても、必要な分だけ茶わん等の容器に取り出して再加熱することが容易にできる。例えば、使用者は、1食分のパラパラ冷凍米飯を、冷凍後に容易に再加熱することができる。本実施の形態によれば、米飯を冷凍する前に当該米飯を予め小分けする手間をなくすことができる使い勝手のよい炊飯器100が得られる。
また、炊飯器100によって炊き上げられたパラパラ冷凍米飯は、粒同士が離れた状態または離れやすい状態で冷凍されるため、電子レンジ300等によって再加熱された場合に均一に温められる。例えば、米飯を再加熱する際に使用されるラップが収縮してつぶされることによって生じる加熱ムラが抑制される。パラパラ冷凍米飯は、全体が均一に温められることで、食味がよい状態で使用者に食べられる。
また、本実施の形態によれば、炊飯器100と冷蔵庫200とが連携することで、米飯をパラパラの状態で適切に冷凍保存することが可能な米飯調理システムが得られる。さらに、冷蔵庫200と電子レンジ300とが連携することによって、冷凍保存された米飯を、食味がよい状態になるように適切に再加熱することが可能となる。
ここで、炊飯器100の具体的な変形例について説明する。炊飯器100は、例えば、冷凍モードで米飯を炊き上げる場合に、米を蒸すことによって米飯を炊き上げるように構成されてもよい。米を蒸して米飯を炊き上げる場合の米への吸水量は、米と水との混合物を沸騰させることによって米飯を炊き上げる場合の米への吸水量よりも少なくなる。これにより、通常米飯に比べて糊化度が低いパラパラ冷凍米飯が炊き上げられる。
また、その他の変形例として、炊飯器100には、鍋状容器102内を減圧する減圧手段が備えられていてもよい。炊飯器100は、冷凍モードが選択された場合に、鍋状容器102を加熱しながら減圧手段を駆動することによって当該鍋状容器102内の物の温度を基準温度範囲内に維持するように構成されていてもよい。基準温度範囲は、例えば、70℃以上90℃未満として設定される。すなわち、減圧手段は、冷凍モードの炊飯工程における鍋状容器102内の温度を、通常モードの炊飯工程における鍋状容器102内の温度よりも低くするための手段である。本変形例によっても、上記の実施の形態と同様に、糊化度が基準値以下となるパラパラ冷凍米飯の炊飯が可能である。
また、その他の変形例として、炊飯器100は、ペルチェ素子等の機器によって構成された冷却装置を備えていてもよい。炊飯器100は、冷凍モードが選択された場合に、炊き上げられた米飯をこの冷却装置によって冷却するように構成されてもよい。米飯のでんぷんは、当該米飯が冷却されることで老化する。すなわち、米飯の糊化度は、当該米飯が冷却されることで低下する。米飯は、冷却されることで、粘りが少なく硬い状態になる。
特に、米飯は、10℃以下まで冷却されることで、糊化度が大きく低下した状態になる。本変形例によっても、上記の実施の形態と同様に、糊化度が基準値以下となる冷凍用に適したパラパラ冷凍米飯を炊き上げることができる。