以下、図面を参照して実施の形態について説明する。各図において共通または対応する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を簡略化または省略する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による加熱調理器1の断面図である。図2は、実施の形態1による加熱調理器1が備える回路構成を模式的に示す図である。以下では、加熱調理器1が水平面に置かれた状態を基準として、各部の位置関係を説明する。
図1に示すように、加熱調理器1は、筐体2と、外蓋3と、調理対象物を入れる容器4とを備えている。容器4は、筐体2及び外蓋3により囲まれる内部空間に配置されている。容器4は、上面が開口した鍋状の形状を有している。図示の例では、容器4は、その上端部に、開口の外周側へ突出するフランジを有している。
外蓋3は、ヒンジ(図示省略)を介して筐体2に連結されている。当該ヒンジを中心に外蓋3を回転させることで、外蓋3を開閉することができる。図1は、外蓋3が閉じられた状態を示している。外蓋3を開けると、筐体2から容器4を取り出すことができる。
筐体2の内側に、容器カバー5と、加熱コイル6と、第一温度センサ7とが設けられている。容器カバー5は、上方に開口した凹型の部材である。容器4は、容器カバー5の内側に配置される。すなわち、容器カバー5は、容器4の外側を覆う。容器カバー5は、容器4の底部に向かい合う底部5aを有する。底部5aの中央に貫通孔5bが形成されている。筐体2の内壁と、容器カバー5の外壁との間には空間が形成されている。
加熱コイル6は、螺旋状に巻回された導線からなるコイルである。加熱コイル6は、底部5a及びその近くにおいて、容器カバー5の外壁に接するように配置されている。加熱コイル6に高周波の電流が供給されると、加熱コイル6が電磁誘導によって容器4を発熱させる。加熱コイル6は、加熱手段に相当する。
第一温度センサ7は、貫通孔5bの内側に配置されている。第一温度センサ7の一端は、容器4の底部の外壁の中央に接している。第一温度センサ7は、容器4の底部の温度を検出する。第一温度センサ7の他端と、筐体2の内壁との間に圧縮バネ8が配置されている。圧縮バネ8が第一温度センサ7の他端を押圧することで、第一温度センサ7の一端が容器4の底部に密着する。容器4の内容物は容器4の底部に接しているので、容器4の底部の温度は、実質的に、容器4の内容物の温度に等しいと考えることができる。したがって、第一温度センサ7は、容器4内の温度を検出する温度検出手段に相当する。
外蓋3の内面側に内蓋9が取り付けられている。内蓋9は、外蓋3から取り外し可能でもよい。外蓋3が閉じた状態では、内蓋9が容器4の開口を密閉する。内蓋9に内蓋通気孔9aが形成されている。内蓋9にパッキン10が取り付けられている。パッキン10は、容器4の上面開口の内周部と、容器4のフランジの上面とに接する。パッキン10は、容器4と内蓋9との隙間を封止するシール部材に相当する。
外蓋3にカートリッジ11が装着されている。カートリッジ11は、蒸気排出孔11aを有している。カートリッジ11は、外蓋3から取り外し可能である。外蓋3の上面と下面との間を貫通する開口の内側にカートリッジ11が配置されている。カートリッジ11は、内蓋通気孔9aの周囲において内蓋9に接する。外蓋3の開口の内周面とカートリッジ11の外周面との間の隙間、及び、内蓋9とカートリッジ11との間の隙間は、シール部材であるパッキン12により封止される。容器4内で発生した蒸気は、内蓋通気孔9aからカートリッジ11の内部を通り、蒸気排出孔11aから外部空間へ排出される。
容器4内の温度を検出する第二温度センサ13が外蓋3に設置されている。第二温度センサ13の先端は、内蓋9に形成された貫通孔9bを通って、容器4の内部空間に面している。第二温度センサ13は、容器4内の温度を検出する温度検出手段に相当する。
本実施の形態の加熱調理器1は、容器4を用いて炊飯する炊飯工程を実行可能である。加熱調理器1は、米飯以外の食べ物を調理する調理工程をさらに実行可能なものでもよいし、そのような調理工程を実行可能でないものでもよい。炊飯工程の詳細については後述する。また、本実施の形態の加熱調理器1は、容器4の内容物を冷却可能な冷却装置14を備えている。冷却装置14は、例えばペルチェ素子を用いたものでもよい。本実施の形態における冷却装置14は、容器4の外壁に接するように配置されている。図示の例では、冷却装置14は、容器4の底部に接する。冷却装置14に通電すると、冷却装置14が作動して容器4の温度を低下させることにより、容器4の内容物が冷却される。冷却装置14の設置場所は、図示の例に限定されない。例えば、容器4の側面またはフランジに冷却装置14が接するように配置してもよいし、複数個所に冷却装置14を設置してもよい。
加熱調理器1は、操作表示部15を備えている。操作表示部15は、ユーザーインターフェースに相当する。図1に示す例では、筐体2の側面に操作表示部15が配置されているが、例えば外蓋3の上面に操作表示部15を配置してもよい。
図2に示すように、加熱調理器1は、インバータ16と制御装置50とを備えている。インバータ16及び制御装置50は、例えば、筐体2と容器カバー5との間の内部空間に配置されているが、図1では図示が省略されている。第一温度センサ7、第二温度センサ13、冷却装置14、操作表示部15、及びインバータ16のそれぞれは、制御装置50に対して電気的に接続されている。
制御装置50は、加熱調理器1の動作を制御する制御手段に相当する。制御装置50は、一日のうちの時間を管理するタイマー機能を有していてもよい。また、制御装置50は、年月日を管理するカレンダー機能を有していてもよい。制御装置50の各機能は、処理回路により実現されてもよい。制御装置50の処理回路は、少なくとも1つのプロセッサ50aと少なくとも1つのメモリ50bとを備えてもよい。少なくとも1つのプロセッサ50aは、少なくとも1つのメモリ50bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、制御装置50の各機能を実現してもよい。制御装置50の処理回路は、少なくとも1つの専用のハードウェアを備えてもよい。図示の例のように単一の制御装置50により動作が制御される構成に限定されるものではなく、複数の制御装置が連携することで動作を制御する構成にしてもよい。
インバータ16は、加熱コイル6に電気的に接続されている。加熱動作が実行される際には、以下のようになる。制御装置50は、インバータ16から加熱コイル6へ高周波電流が供給されるように制御する。加熱コイル6に高周波磁界が発生し、加熱コイル6と磁気結合した容器4の底部が励磁されて渦電流が誘起される。この渦電流と、容器4の持つ抵抗により、ジュール熱が生じ、容器4の底部が発熱して、加熱動作が行われる。
図3は、実施の形態1による加熱調理器1が備える操作表示部15の外観を示す図である。本実施の形態における操作表示部15は、加熱調理器1の状態などに関する情報を表示する例えば液晶表示装置のようなディスプレイ15aと、使用者が操作する例えば押しボタンのような操作部とを有している。図3に示す例では、操作部として、スタートボタン15b、「切」ボタン15c、米種選択ボタン15d、メニュー選択ボタン15e、予約ボタン15f、及び、時刻設定ボタン15gが操作表示部15に設けられている。以下の説明では、加熱調理器1に対する使用者の操作を「ユーザー操作」と称する場合がある。
図示の例に限らず、操作表示部15は、ディスプレイ15a及び操作部の両方の機能を有するタッチスクリーンを備えてもよい。操作表示部15は、文字あるいは数字などをディスプレイ15aに表示することによって使用者に対して情報を報知する報知手段として機能することができる。また、加熱調理器1は、スピーカーから音あるいは音声を出力することによって使用者に対して情報を報知する報知手段を備えていてもよい。以下の説明では、上述したような報知手段により情報を報知する動作を単に「報知動作」と称する。
操作表示部15に代えて、または操作表示部15に加えて、例えばスマートフォンあるいはタブレット端末のような携帯情報端末が、加熱調理器1のユーザーインターフェースとして使用できるように構成してもよい。その場合、当該携帯情報端末と制御装置50とは、例えば赤外線通信あるいは近距離無線通信を用いて直接的に通信してもよいし、例えば無線LANによるネットワークを介して通信してもよいし、例えばホームエネルギーマネジメントシステムのような他の制御システムを介して通信してもよい。
次に、加熱調理器1を用いて炊飯するときの動作の一例について説明する。使用者は、米と水が入った容器4を容器カバー5内に配置し、外蓋3を閉める。炊き込みご飯を作る場合には、さらに調味料及び具材を容器4内に入れてもよい。外蓋3を閉めると、容器4は、内蓋9により密閉される。制御装置50は、炊飯工程を制御する制御モードとして、複数の炊飯モードを記憶している。使用者は、操作表示部15を操作することにより、炊飯モードを選択することができる。例えば、使用者は、米種選択ボタン15dを操作することにより、米種に応じた炊飯モードを選択することができる。例えば、米種に応じた炊飯モードとして、白米、無洗米、発芽米、玄米などのモードのうちから一つを選択することができる。また、使用者は、メニュー選択ボタン15eを操作することにより、硬さあるいは粘りなどに関する好みに応じた炊飯モードを選択したり、炊き込みご飯用の炊飯モードを選択したりすることができる。スタートボタン15bが使用者により押下されると、制御装置50は、選択された炊飯モードに応じた炊飯工程の実行を開始する。
炊飯工程によって炊き上げられた米飯を使用者が冷凍保存する場合がある。通常の米飯を冷凍すると、全体が一つの塊となって凍結する。このため、凍結した米飯を再加熱して食する場合に、塊の中心部の温度が上がりにくく、加熱ムラが生じやすい。また、凍結した米飯の塊は、分割することが困難であるので、冷凍保存された米飯のうちの一部だけを取り出して使用したい場合に不便である。
このような課題を解決するために、本実施の形態の加熱調理器1では、冷却装置14を用いて容器4内の米飯を冷却する米飯冷却工程を制御装置50により実行可能としている。米飯冷却工程では、制御装置50は、少なくとも基準冷却時間だけ、米飯の温度が、所定の冷却温度帯に保たれるように冷却装置14を作動させる。冷却温度帯は、米飯が凍結することなく、かつ、糊化澱粉が再配列する温度帯である。再配列とは、糊化した澱粉を低温に置くと、澱粉分子が再配列して規則性を持つ現象であり、「老化」とも呼ばれる現象である。米飯の糊化澱粉が再配列すると、米飯の粘りが低下するとともに、米飯の硬さが増加する。
本実施の形態であれば、米飯冷却工程を行うことで、糊化澱粉が再配列した米飯を得ることができる。以下の説明では、米飯冷却工程を経た後の米飯を「冷凍用米飯」と称する場合がある。また、米飯冷却工程を経ていない米飯を「通常米飯」と称する場合がある。
冷凍用米飯は、通常米飯に比べて、粘りが低く、かつ硬さが増加している。このため、冷凍用米飯は、通常米飯に比べて、飯粒同士が付着しにくく、飯粒と飯粒とが離れやすい。それゆえ、冷凍用米飯は、冷凍保存して凍結した後も、飯粒同士がパラパラとほぐれ易い状態に維持される。したがって、冷凍保存された冷凍用米飯を例えば電子レンジなどにより再加熱して食する場合に、飯粒同士がほぐれた状態で加熱することができるので、加熱ムラを確実に抑制できる。また、冷凍保存された冷凍用米飯のうちの一部だけを使用したい場合に、使用する分だけを容易に取り出すことができるので、利便性が高い。このように、本実施の形態であれば、冷凍保存に適した冷凍用米飯を得ることが可能となる。また、冷凍米飯が再加熱されるときに、澱粉が再び糊化することで、米飯の粘りが回復するとともに、硬さが低下する。これにより、食味の優れた米飯を得ることが可能となる。
冷却装置14は、容器4内の米飯の温度が10℃以下となるように冷却可能な冷却能力を有していることが望ましい。米飯の温度が10℃以下になると、糊化澱粉の再配列がより速やかに進行するので、より短い冷却時間で、冷凍保存に適した冷凍用米飯を得ることが可能となる。
本実施の形態における制御装置50は、炊飯工程と、当該炊飯工程により得られた米飯を冷却する米飯冷却工程とを続けて実行する冷凍用米飯製造モードを、炊飯モードの種類として備えている。使用者は、容器4内で炊飯された米飯の全部を冷凍保存する場合がある。そのような場合には、使用者は、例えば、米と水が入った容器4を加熱調理器1内にセットし、メニュー選択ボタン15eにより冷凍用米飯製造モードを選択した後、スタートボタン15bを押下することで、加熱調理器1に冷凍用米飯製造モードの実行を開始させることができる。この冷凍用米飯製造モードによれば、炊飯工程の終了後に米飯冷却工程を開始させるユーザー操作が不要であるので、利便性をさらに向上できる。
本実施の形態の冷凍用米飯製造方法は、容器4を用いて炊飯する炊飯工程と、容器4の内容物を冷却可能な冷却装置14を用いて、炊飯工程で生成した米飯を容器4内で冷却する米飯冷却工程とを備えるものである。上記冷凍用米飯製造方法によれば、炊飯した容器4をそのまま用いて米飯冷却工程を実行することができ、米飯冷却工程に際して容器4内の米飯を移し替える必要がない。このため、冷凍保存に適した冷凍用米飯を効率良く製造することが可能となる。また、本実施の形態であれば、加熱調理器1が冷凍用米飯製造モードを実行することにより、上記冷凍用米飯製造方法を自動で実施することが可能となる。
図4は、実施の形態1による加熱調理器1の冷凍用米飯製造モードの実行中における容器4の内容物の温度と、時間との関係の一例を示すグラフである。以下の説明では、容器4の内容物の温度を「容器内温度」と称する場合がある。図4中、横軸は経過時間を表し、縦軸は容器内温度を表す。本実施の形態では、第一温度センサ7及び第二温度センサ13の少なくとも一方を用いて、容器内温度を検出することができる。
本実施の形態における制御装置50は、炊飯工程として、予熱工程、昇温工程、沸騰工程、及び蒸らし工程をこの順に実行する。図4中、時刻T0から時刻T1までが予熱工程であり、時刻T1から時刻T2までが昇温工程であり、時刻T2から時刻T3までが沸騰工程であり、時刻T3から時刻T4までが蒸らし工程である。
予熱工程において、制御装置50は、容器内温度を予熱温度に所定の時間だけ維持するように加熱動作を行う。予熱温度は、例えば、80℃未満の所定の温度である。予熱工程において、制御装置50は、主として第一温度センサ7の検出温度を用いて温度制御を行う。予熱工程により、容器内温度を予熱温度に維持することで、米粒の吸水を促すことができる。以下の説明では、予熱工程を継続する時間を「予熱時間」と称する。
予熱工程が終了すると、制御装置50は、容器内温度を沸騰温度まで昇温させるように加熱動作を行う昇温工程を実行する。制御装置50は、第二温度センサ13の検出温度を用いて、容器4内の沸騰を検出することができる。容器4内の沸騰が検出されると、沸騰工程に移行する。
以下の説明では、昇温工程を継続する時間を「昇温時間」と称する。制御装置50は、例えば、昇温工程における加熱出力を調整することにより、昇温時間を調整してもよい。加熱出力を高くすると、昇温速度が速くなるので、昇温時間が短縮する。逆に、加熱出力を低くすると、昇温速度が遅くなるので、昇温時間が延びる。
沸騰工程において、制御装置50は、容器4内の沸騰を維持するように加熱動作を行う。沸騰工程では、米の澱粉の糊化が促進されるとともに、余分な水分の蒸発が促される。
容器4内の余分な水分の蒸発が進むと、容器内温度は沸騰温度よりも高温となる。制御装置50は、沸騰工程の終了を判定するための基準となるドライアップ温度を記憶している。ドライアップ温度は、沸騰温度よりも高い所定の温度である。制御装置50は、第一温度センサ7の検出温度がドライアップ温度に達すると、蒸らし工程に移行する。蒸らし工程において、制御装置50は、容器内温度が高温に維持されるように加熱動作を行う。蒸らし工程を実行することで、飯粒の表面の水分を飯粒の内部に吸収させることができる。
以下の説明では、炊飯工程の後に米飯冷却工程を行わない炊飯モードを「通常米飯製造モード」と称する。通常米飯製造モードにおいて、制御装置50は、炊飯工程の終了後、すなわち蒸らし工程の終了後に、容器4内の米飯を保温する保温工程を実行してもよい。保温工程において、制御装置50は、容器内温度が保温温度に保たれるように加熱動作を行う。保温温度は、例えば、70℃前後の温度でもよい。
図4に示す冷凍用米飯製造モードにおいては、制御装置50は、炊飯工程の終了後、すなわち蒸らし工程の終了後に、保温工程に移行することなく、米飯冷却工程を実行する。図4では時刻T4から時刻T6までが米飯冷却工程に相当する。以下の説明では、容器4内の米飯の温度を「米飯温度」と称する。本実施の形態では、第一温度センサ7及び第二温度センサ13の少なくとも一方を用いて米飯温度を検出できる。
米飯冷却工程において、制御装置50は、米飯温度が冷却温度帯に保たれるように冷却装置14を作動させる。例えば、制御装置50は、米飯温度の検出値が、冷却温度帯の上限から下限までの範囲に保たれるように、冷却装置14の作動を制御する。制御装置50は、蒸らし工程の終了直後に冷却装置14の作動を開始してもよい。例えば図4の時刻T4において制御装置50が冷却装置14の作動を開始してもよい。あるいは、制御装置50は、蒸らし工程の終了後、米飯の温度が自然に低下するのを待ってから、冷却装置14の作動を開始してもよい。例えば図4の時刻T4と時刻T5との間のタイミングにおいて制御装置50が冷却装置14の作動を開始してもよい。
図5は、10℃で米飯を保存した場合における冷却時間と、糊化澱粉の再配列度との関係の概要を示す図である。図5中の再配列度Aは、飯粒と飯粒とが容易に離れるようになる再配列状態、すなわち冷凍保存に適した米飯の再配列状態に相当している。図5中の時間Taは、再配列度Aに達するまでの所要冷却時間に相当する。所要冷却時間Taとして、炊飯工程における糊化の状態あるいは水分量などによっても異なるが、おおむね6時間、またはそれ以上の時間が必要である。
米飯冷却工程において、制御装置50は、少なくとも基準冷却時間だけ、米飯温度が冷却温度帯に保たれるように冷却装置14を作動させる。基準冷却時間は、上述した所要冷却時間Taに相当している。このため、基準冷却時間は、6時間以上の時間であることが望ましい。基準冷却時間を、6時間、またはそれよりも長い時間にすることで、糊化澱粉の再配列がより確実に進行し、飯粒同士がパラパラとほぐれる状態をより確実に達成できる。このため、冷凍保存に適した冷凍用米飯をより確実に得ることが可能となる。制御装置50は、例えば、基準冷却時間を、6時間と設定してもよいし、9時間と設定してもよいし、12時間と設定してもよいし、さらに長い時間に設定してもよい。また、後述するように、制御装置50は、容器4内の米飯の量と、米飯冷却工程の最中の容器内温度と、炊飯工程後の米飯の仕上がり状態(粘りまたは硬さ)とのうちの少なくとも一つに応じて、基準冷却時間の値を調整してもよい。
米飯冷却工程において、制御装置50は、米飯が凍結しないように制御する。米飯が凍結すると、糊化澱粉の再配列は進行しない。本実施の形態であれば、米飯冷却工程において米飯の凍結を確実に防止できるので、糊化澱粉の再配列をより速やかに進行させることができる。例えば、制御装置50は、第一温度センサ7あるいは第二温度センサ13により検出される容器内温度が、凍結点である0℃以上に保たれるように制御してもよい。これにより、米飯の凍結を確実に防止できる。この場合、冷却温度帯の下限は、0℃となる。炊き込みご飯の場合には、塩などの調味料が水に溶解しているので、凍結点は0℃よりも低い温度となる。このような場合には、凍結しない範囲で米飯温度が氷点下になってもよい。この観点から、炊き込みご飯用の炊飯モードが選択されている場合には、制御装置50は、冷却温度帯の下限を、0℃よりも低い温度に設定してもよい。
糊化澱粉の再配列は、米飯が凍結しない限り、米飯温度が低いほど速やかに進行する傾向がある。このことに鑑みると、冷却温度帯の上限は、10℃以下の温度であることが望ましい。例えば、制御装置50は、冷却温度帯の上限を、10℃と設定してもよいし、8℃と設定してもよいし、5℃と設定してもよい。そのようにすることで、糊化澱粉の再配列がより速やかに進行するので、より短い冷却時間で、冷凍保存に適した冷凍用米飯を得ることが可能となる。なお、冷却温度帯の上限が凍結点よりも高い温度であることは言うまでもない。
制御装置50は、第一温度センサ7及び第二温度センサ13の少なくとも一方を用いて検出された米飯温度が冷却温度帯の上限以下になると、基準冷却時間の計時を開始する。図4の例では、冷却温度帯の上限を10℃としており、時刻T5において制御装置50が基準冷却時間の計時を開始する。時刻T5から時刻T6までの時間が基準冷却時間に相当している。
基準冷却時間が経過すると、糊化澱粉の再配列が十分に進行する結果、飯粒同士が付着しにくくなり、飯粒と飯粒とが離れやすくなる。このような米飯は、凍結した後でも飯粒同士がパラパラとほぐれ易い。すなわち、基準冷却時間が経過すると、冷凍保存に適した冷凍用米飯が出来上がったと言える。使用者は、出来上がった冷凍用米飯を容器4から取り出し、例えばプラスチック製保存袋あるいは密閉容器などに移し替えた後、冷凍庫に入れて冷凍保存する。あるいは、使用者は、出来上がった冷凍用米飯を容器4に入れたまま、容器4ごと冷凍庫に入れて冷凍保存してもよい。その場合には、水分の蒸発を抑制するために、容器4に蓋を装着することが望ましい。使用者は、冷凍用米飯を冷凍庫に入れる前に、例えばしゃもじを用いて冷凍用米飯を攪拌してほぐしてもよい。そのようにすることで、飯粒同士の間に空気が含まれるようになるので、凍結後の飯粒同士がさらに容易に離れるようにすることが可能となる。
制御装置50は、基準冷却時間が経過したときに報知動作を実行するように制御してもよい。これにより、冷凍用米飯の出来上がりを使用者に知らせることができるので、出来上がった冷凍用米飯を冷凍庫へ移すことを使用者に促すことができる。
制御装置50は、基準冷却時間が経過した場合に、米飯冷却工程を終了し、冷却装置14の作動を停止させるようにしてもよい。また、制御装置50は、所定のユーザー操作がなされた場合に、米飯冷却工程を終了し、冷却装置14の作動を停止させるようにしてもよい。例えば、制御装置50は、「切」ボタン15cが押下された場合に米飯冷却工程を終了してもよいし、外蓋3が開いたことがセンサ(図示省略)により検出された場合に米飯冷却工程を終了してもよい。以下の説明では、米飯冷却工程を終了させるユーザー操作を「終了操作」と称する。
制御装置50は、基準冷却時間が経過した後も、終了操作がなされるまでは、冷却装置14を用いて米飯冷却工程を継続してもよい。そのようにすることで、出来上がった冷凍用米飯を使用者が冷凍庫へ移し忘れたり、冷凍用米飯が出来上がったときに使用者が外出していたような場合であっても、容器4内の冷凍用米飯が腐敗することを確実に防止できる。この場合、制御装置50は、基準冷却時間が経過した後、終了操作がなされるまで、報知動作を繰り返し実行させることが望ましい。これにより、冷凍用米飯をなるべく早期に冷凍庫へ移すことを使用者に促すことができる。
理想的には、制御装置50は、容器4内の米飯の全体が冷却温度帯の上限以下の温度まで冷却された時点から、基準冷却時間の計時を開始することが望ましい。そのような理想を実現するために、例えば、制御装置50は、基準冷却時間の計時の開始に際して、第一温度センサ7の検出温度と、第二温度センサ13の検出温度とのいずれか高い方の温度を、冷却温度帯の上限と比較してもよい。そのようにすることで、容器4内の米飯の全体または大部分が冷却温度帯の上限以下の温度まで冷却された時点から、基準冷却時間の計時を開始することができる。
制御装置50は、炊飯量を検出する機能を有していてもよい。例えば、制御装置50は、予熱工程あるいは昇温工程における第一温度センサ7あるいは第二温度センサ13の検出温度の上昇速度を用いて、炊飯量を検出してもよい。
炊飯量が多い場合には、米飯冷却工程のとき、容器4内の米飯のうちの中心部分にある飯粒群の温度低下速度は、周囲部分の飯粒群の温度低下速度よりも遅くなる可能性がある。この場合、中心部分の飯粒群の温度は、第一温度センサ7あるいは第二温度センサ13の検出温度よりも高い可能性がある。このようなことに鑑みて、炊飯量が多い場合には、制御装置50は、第一温度センサ7あるいは第二温度センサ13の検出温度が冷却温度帯の上限以下になった後に所定時間が経過した時点から、基準冷却時間の計時を開始してもよい。そのようにすることで、炊飯量が多い場合においても、容器4内の米飯の全体または大部分が冷却温度帯の上限以下の温度まで冷却された時点から、基準冷却時間の計時を開始することができる。
あるいは、制御装置50は、容器4内の米飯の量すなわち炊飯量に応じて、基準冷却時間の値を変更してもよい。容器4内の米飯の量が多い場合に、基準冷却時間を延長することで、上述した効果と同様の効果が得られる。
また、制御装置50は、米飯冷却工程の最中に第一温度センサ7あるいは第二温度センサ13により検出される容器内温度に応じて、基準冷却時間の値を変更してもよい。前述したように、糊化澱粉の再配列は、凍結しない限り、温度が低いほど速やかに進行する傾向がある。このため、米飯冷却工程の最中の容器内温度が低い場合には、糊化澱粉の再配列がより速やかに進行していると推測できるので、制御装置50は、基準冷却時間を短縮してもよい。
米飯冷却工程の終了後の米飯の糊化率は、米飯冷却工程の開始前の米飯の糊化率よりも低くなる。糊化率は、糊化度あるいはアルファ化度とも呼ばれる。米飯冷却工程によって糊化率がどの程度低下するかは、米飯冷却工程の最中の米飯温度と、冷却時間の長さとに応じて変化する。本実施の形態では、米飯冷却工程の開始前の米飯の糊化率[%]から、米飯冷却工程において基準冷却時間が経過した時点での米飯の糊化率[%]を差し引いた低下幅は、10ポイント以上であることが好ましく、20ポイント以上であることがさらに好ましい。米飯冷却工程による糊化率の低下幅が上記の範囲にあれば、糊化澱粉の再配列度が十分に高くなるので、冷凍保存に適した冷凍用米飯をより確実に得ることができる。なお、上記の糊化率の低下幅は、うるち米(ジャポニカ米)の白米を、粘り及び硬さが普通となる炊飯モードで加熱調理器1により炊飯した米飯に対して米飯冷却工程を実施した場合の値であるものとする。
一般に、冷凍保存された冷凍米飯は、再加熱の際に、水分を放出する。このため、冷凍米飯を再加熱した後の米飯は、炊き立てのときよりも硬くなる傾向がある。このことに鑑みて、冷凍用米飯製造モードの炊飯工程では、制御装置50は、通常米飯製造モードの炊飯工程よりも米粒の吸水量が多くなるように制御してもよい。そのようにして米粒の吸水量を増加させることで、冷凍米飯の再加熱時に水分が放出しても、必要な水分が飯粒に確実に残るようになり、おいしさをより確実に維持することができる。
具体的には、予熱時間を長くしたり、予熱温度を高くしたりすることで、米粒の吸水量を増加させることができる。このことを利用するために、制御装置50は、冷凍用米飯製造モードにおける予熱温度が通常米飯製造モードにおける予熱温度よりも高いという第一条件と、冷凍用米飯製造モードにおける予熱時間が通常米飯製造モードにおける予熱時間よりも長いという第二条件とのうちの少なくとも一方の条件を満足するように制御してもよい。
また、昇温時間を長くした場合にも、米粒の吸水量が増加する。このことを利用するために、制御装置50は、冷凍用米飯製造モードにおける昇温時間が通常米飯製造モードにおける昇温時間よりも長くなるように制御してもよい。
一般に、沸騰工程の時間を長くすると、米飯が軟らかい仕上がりになる。軟らかすぎる米飯は、飯粒がつぶれやすかったり、飯粒と飯粒とが付着しやすかったりするので、冷凍保存にはあまり適さない。この観点から、制御装置50は、冷凍用米飯製造モードにおける沸騰工程の時間が、通常米飯製造モードにおける沸騰工程の時間と比べて、同等または短くなるように制御することが望ましい。飯粒の表面は粒として形状をよく保ち、かつ飯粒内部に水分を多く含む炊き上がりとすることで、米飯冷却工程の後に飯粒が壊れずにパラパラと離すことができるとともに、再加熱後も粒形状を保って外観も好ましく仕上げることができる。
冷凍用米飯製造モードは、通常米飯製造モードと同じように、硬さ、粘り等を変更できるように、複数のモードから選択可能に構成されていてもよい。その場合、制御装置50は、炊飯工程後の米飯の仕上がりに合わせて、基準冷却時間の値を変更してもよい。例えば、制御装置50は、冷凍用米飯製造モードにおいて、比較的軟らかく粘りの大きい炊き上がりとするモードが選択されている場合には、そうでない場合に比べて、基準冷却時間が長くなるようにしてもよい。
本開示における冷却装置は、前述した冷却装置14のような構成に限定されるものではなく、容器4の内容物を冷却温度帯の温度に冷却可能なものであれば、いかなる構成のものでもよい。例えば、冷却装置は、冷蔵庫のような外部の機器から供給される冷風または冷水のような低温流体を用いて容器4の内容物を冷却するように構成されたものでもよい。
実施の形態2.
次に、図6を参照して、実施の形態2について説明するが、前述した実施の形態1との相違点を中心に説明し、前述した要素と共通または対応する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を簡略化または省略する。図6は、実施の形態2による加熱調理器1が備える操作表示部15の外観を示す図である。図6に示すように、本実施の形態における操作表示部15は、冷凍ご飯ボタン15hを有している。
制御装置50は、冷凍ご飯ボタン15hが押下されると、米飯冷却工程の実行を開始する。これにより、本実施の形態であれば、使用者は、米飯冷却工程のみを加熱調理器1に実行させることができる。
使用者は、容器4内で炊飯した米飯のうちの一部を、冷凍することなくそのまま食し、残りの米飯を冷凍保存したい場合がある。そのような場合に、使用者は、通常米飯製造モードにより炊飯し、容器4内の炊き立ての米飯のうちの一部をそのまま食べた後、残った米飯を容器4内に入れた状態で冷凍ご飯ボタン15hを押下する。これにより、残った米飯から冷凍用米飯を得ることができる。なお、冷凍ご飯ボタン15hを設けることに代えて、メニュー選択ボタン15eを操作することで、米飯冷却工程のみを実行するモードを選択できるように構成してもよい。
実施の形態3.
次に、図7を参照して、実施の形態3について説明するが、前述した実施の形態1との相違点を中心に説明し、前述した要素と共通または対応する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を簡略化または省略する。図7は、実施の形態3による加熱調理器1Aの断面図である。
図7に示すように、本実施の形態の加熱調理器1Aは、容器4の内容物を攪拌可能な攪拌装置17を備えている。攪拌装置17は、内蓋9の中央において回転可能に支持された回転シャフト18と、容器4の内部空間に位置し、回転シャフト18と一体となって回転する回転アーム19と、外蓋3の内部に設けられ、回転シャフト18及び回転アーム19を回転駆動するモータ20とを備えている。
回転アーム19は、内蓋9の近くから容器4の底部に向かって突出する部分を有している。モータ20は、外蓋3の内部に配置されている。回転シャフト18の上端部は、外蓋3の下面に形成された開口を通って、モータ20の出力軸に連結されている。モータ20の動作は、制御装置50により制御される。モータ20が回転シャフト18及び回転アーム19を回転させると、回転アーム19が容器4の内容物に接しながら回転することで、容器4の内容物が攪拌される。
本実施の形態では、容器4内の米飯を攪拌装置17により攪拌することで、米飯をほぐすことができる。攪拌装置17は、容器4内の米飯に物理的に作用して米飯をほぐすほぐし手段の例である。また、回転アーム19は、容器4内の米飯に接する可動部に相当している。本開示におけるほぐし手段は、攪拌装置17のように米飯を攪拌するものに限定されない。ほぐし手段は、例えば、米飯を揺さ振ることで米飯をほぐすように構成されたものでもよいし、米飯を押し広げることで米飯をほぐすように構成されたものでもよい。
制御装置50は、米飯冷却工程のときに攪拌装置17を作動させる。これにより、飯粒と飯粒との間に空気を含ませることができるので、冷凍保存により適した冷凍用米飯、すなわち凍結した後でも飯粒同士がパラパラとほぐれる状態になる米飯を、より確実に得ることが可能となる。本実施の形態であれば、使用者は、冷凍用米飯が出来上がった後に冷凍用米飯をほぐす作業を自分でしなくても、上記の効果が得られる。このため、使い勝手がさらに向上する。
制御装置50は、基準冷却時間が経過する前に攪拌装置17を作動してもよいし、基準冷却時間の経過後に攪拌装置17を作動してもよいし、基準冷却時間の経過前と経過後の両方において攪拌装置17を作動してもよい。
制御装置50は、米飯冷却工程の開始後、ある程度の時間が経過するまでは攪拌装置17を作動しないようにすることが望ましい。米飯冷却工程の開始後、ある程度の時間が経過し、糊化澱粉の再配列度が一定レベルに到達した後に攪拌装置17を作動することで、より効率良く米飯をほぐすことができる。制御装置50は、糊化澱粉の再配列度が高くなるにつれて、攪拌装置17の動作速度を速くしてもよい。すなわち、制御装置50は、米飯冷却工程の開始から長い時間が経過しているときには、経過時間がまだ短いときに比べて、攪拌装置17の動作速度を速くしてもよい。そのようにすることで、より効率良く米飯をほぐすことができるとともに、攪拌動作のときに飯粒が変形したり、飯粒同士がくっついたりすることをより確実に防止できる。
制御装置50は、基準冷却時間が経過し、かつ攪拌装置17の作動が終了した後に、報知動作を実行することにより、冷凍用米飯の出来上がりを使用者に報知してもよい。
回転アーム19は、容器4の内容物に接しない形状になるように折りたたみ可能な構造を有していてもよい。加熱調理器1Aは、回転アーム19を、折りたたんだ状態と伸ばした状態とに切り替えるアクチュエータ(図示省略)を備えていてもよい。当該アクチュエータを用いて、制御装置50は、攪拌装置17による攪拌動作を行わないときには回転アーム19を折りたたみ、攪拌動作を行うときに回転アーム19を伸ばすように制御してもよい。
回転シャフト18及び回転アーム19は、外蓋3及び内蓋9から取り外し可能でもよい。攪拌装置17が必要でないとき、例えば通常米飯製造モードのときには、使用者は、回転シャフト18及び回転アーム19を外蓋3及び内蓋9から取り外してもよい。
本実施の形態の加熱調理器1Aは、回転アーム19に設けられた冷却装置21をさらに備えている。冷却装置21は、例えばペルチェ素子を用いたものでもよい。図示の例では、回転アーム19の長手方向の位置に関して、回転アーム19の中央よりも先端側の位置に冷却装置21が配置されている。制御装置50は、米飯冷却工程において、冷却装置21を作動させることにより、米飯を冷却する。本実施の形態であれば、容器4内の米飯に接する回転アーム19に設けられた冷却装置21を備えたことで、容器4内の米飯の全体を均等かつ迅速に冷却する上でより有利になる。
制御装置50は、回転アーム19を回転させながら冷却装置21を作動させてもよい。すなわち、容器4内の米飯を攪拌しながら冷却してもよい。本実施の形態では、回転アーム19のうち、容器4内の米飯の中に埋没する部分に冷却装置21が配置されている。これにより、容器4内の米飯を、その内部からも冷却することができるので、容器4内の米飯の全体を均等かつ迅速に冷却する上でさらに有利になる。
全体が均等に冷却されて生成した冷凍用米飯は、凍結後に再加熱した際にも、全体がより均等な仕上がりとなる。このため、一部が硬くなったり軟らかくなったりすることをより確実に防止することができ、おいしさがさらに向上する。
なお、上述した複数の実施の形態のうち、組み合わせることが可能な二つ以上を組み合わせて実施してもよい。