JP2021064765A - 圧電セラミックス及びその製造方法、並びに圧電素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】誘電正接tanδが改善された圧電セラミックスを提供する。【解決手段】構成元素として鉛を含まない圧電セラミックスであって、含有する粒子の粒径の変動係数C.V.が35%以下であり、かつ断面を後方散乱電子回折(EBSD)法で解析して得られるイメージクオリティ(IQ)像において、粒径が3μm〜5μmで、粒子中に占めるドメインの面積割合が85%以上の粒子が確認されることを特徴とする圧電セラミックスとする。【選択図】図3

Description

本発明は、圧電セラミックス及びその製造方法、並びに圧電素子に関する。
圧電素子は、機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換する正圧電効果を利用して、センサ素子や発電素子等に用いられている。また、圧電素子は、電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換する逆圧電効果を利用して、振動子、発音体、アクチュエータ、超音波モータ及びポンプ等にも用いられている。さらに、圧電素子は、正圧電効果と逆圧電効果との併用により、回路素子及び振動制御素子等にも用いられている。
圧電素子を構成する圧電セラミックスの組成としては、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O、PZT)及びその固溶体が広く用いられている。このようなPZT系の圧電セラミックスは、優れた圧電特性を有するものの、有害物質である鉛を含むことが問題視されており、これに代わる、鉛を含まない圧電セラミックスの開発が進められている。
鉛を含まない圧電セラミックス組成の一例として、チタン酸ビスマスナトリウム((Bi0.5Na0.5)TiO、BNT)とチタン酸バリウム(BaTiO、BT)とを主成分とするもの(BNT−BT系)が報告されている(特許文献1、2)。特許文献1には、当該文献に記載の圧電セラミックスが、洗浄機用や加工機用のボルト締めランジュバン型超音波振動子などの強力超音波応用機器や、魚群探知機などの超音波振動子に用いる素子として適する、電気機械結合係数kt、機械的品質係数Qm、比誘電率ε33 /εやキュリー温度Tcが比較的大きいものである旨の記載がある。また、特許文献2には、当該文献に記載の圧電セラミックスが、大きな機械的品質係数Qmを有することにより、弾性的にエネルギー効率の高い材料となり、圧電デバイスへの用途が広がる旨の記載がある。
また、鉛を含まない圧電セラミックス組成の他の例として、ニオブ酸カリウムナトリウム((K,Na)NbO)を主成分とするものも報告されている(特許文献3)。特許文献3には、当該文献に記載の圧電セラミックスが、大きな機械的品質係数Qmを有し、超音波アクチュエータ、センサ、フィルタ、振動子、超音波モータ等に好適に用いられる旨の記載がある。
さらに、鉛を含まない圧電セラミックス組成の他の例として、チタン酸ジルコン酸バリウムカルシウム(BCTZ)を主成分とするものも報告されている(特許文献4)。特許文献4では、Mnを含むBCTZ系の圧電セラミックスにおいて、結晶粒径及びドメインの幅を特定のものとすることで、大きい圧電定数(d31)と大きい機械的品質係数(Qm)とが両立する圧電材料を提供できる旨、及び当該圧電材料が超音波振動子にも使用可能である旨の記載がある。
特開2006−327863号公報 特開2010−150060号公報 特開2009−96668号公報 特開2019−29671号公報
圧電素子のうち、振動子や超音波モータ等は、共振点などの大振幅が生じる条件下で連続駆動されるため、素子自体が発熱しやすい。発熱は、圧電特性の劣化や失活に繋がるため、その抑制が素子の実用化の鍵となる。圧電素子の発熱は、圧電セラミックスの機械的な損失、及び電気的な損失に起因することが知られている。圧電セラミックスにおいては、機械的な損失は圧電特性の一つである機械的品質係数Qmを高めることで、電気的な損失は誘電正接(損失)tanδを下げることで、それぞれ低減できることが知られている。このため、振動子や超音波モータ等に用いる圧電セラミックスには、機械的品質係数Qmが大きく、かつ誘電正接tanδが小さいことが求められる。
特許文献2、3では、大きな機械的品質係数Qmを有する非鉛系の圧電セラミックスを得るために、また特許文献1では、これに加えて小さな誘電正接tanδを有する非鉛系の圧電セラミックスを得るために、いずれも組成面からの検討を行い、一定の成果を上げている。しかし、超音波振動子の実用面からは、圧電セラミックスの更なる特性向上が求められている。
特許文献4では、非鉛系の圧電セラミックスの組成に加えて粒径及びドメイン幅についても検討を行い、大きな機械的品質係数Qmを得ているが、誘電正接tanδが小さいことについては確認されていない。また、大きな圧電定数と機械的品質係数とを実現するために、製造時に二段階の分極処理を行っており、製造に要する工程数が多い点で不利な技術といえる。
そこで本発明は、機械的品質係数Qmを保持しつつ、誘電正接tanδが改善された非鉛系の圧電セラミックスを提供することを目的とする。
本発明者は、前記課題を解決するために種々の検討を行ったところ、圧電セラミックスを構成する焼結粒子について、その粒径の変動係数C.V.を小さくすると共に、比較的粒径の大きな粒子中のドメインサイズを大きくすることで、当該課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、前記課題を解決するための本発明の一実施形態は、構成元素として鉛を含まない圧電セラミックスであって、含有する粒子の粒径の変動係数C.V.が35%以下であり、かつ断面を後方散乱電子回折(EBSD)法で解析して得られるイメージクオリティ(IQ)像において、粒径が3μm〜5μmで、粒子中に占めるドメインの面積割合が85%以上の粒子が確認されることを特徴とする圧電セラミックスである。
また、本発明の他の実施形態は、構成元素として鉛を含まない圧電セラミックスの製造方法であって、所定量の原料粉末を混合して混合粉末を得ること、前記混合粉末を仮焼して仮焼粉を得ること、前記仮焼粉を所定形状に成形して成形体を得ること、前記成形体を焼成して焼結体を得ること、及び前記焼結体を分極処理することを含み、前記原料粉末のうち、モル換算での使用量が最も多いものとして、比表面積が10m/g以上のものを使用することを特徴とする、圧電セラミックスの製造方法である。
さらに、本発明の他の実施形態は、前述の圧電セラミックスと、該圧電セラミックスに電気的に接続された電極とを備える圧電素子である。
本発明によれば、機械的品質係数Qmを保持しつつ、誘電正接tanδが改善された非鉛系の圧電セラミックスを提供することができる。
複数の粒子に跨がって観察されるドメインの説明図 積層型圧電素子の構造を示す概略図((a)正面図、(b)斜視図) 実施例に係る圧電セラミックスにおいて、粒子中に観察されたドメインの構造を示す概略図 比較例に係る圧電セラミックスにおいて、粒子中に観察されたドメインの構造を示す概略図
以下、図面を参照しながら、本発明の構成及び作用効果について、技術的思想を交えて説明する。但し、作用機構については推定を含んでおり、その正否は、本発明を制限するものではない。また、以下の実施形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。なお、数値範囲の記載(2つの数値を「〜」でつないだ記載)については、下限及び上限として記載された数値をも含む意味である。
[圧電セラミックス]
本発明の一実施形態に係る圧電セラミックス(以下、単に「第1実施形態」と記載することがある。)は、構成元素として鉛を含まないものであり、含有する粒子の粒径の変動係数C.V.が35%以下であり、かつ断面を後方散乱電子回折(EBSD)法で解析して得られるイメージクオリティ(IQ)像において、粒径が3μm〜5μmで、粒子中に占めるドメインの面積割合が85%以上の粒子が確認されることを特徴とする。なお、本明細書において、「圧電セラミックス」とは、圧電性を示すセラミックス(焼結体)を意味する語として使用され、これに電極を形成した圧電素子における電極間の部分をも含む意味で使用される。
第1実施形態は、構成元素として鉛を含まないものであるため、環境負荷を低減できる。本明細書において、「構成元素として鉛を含まない」とは、原料に不可避的に含まれる鉛や、製造工程で不可避的に混入する鉛以外に、鉛を含まない意味である。
第1実施形態は、含有する粒子の粒径の変動係数C.V.が35%以下である。粒径の変動係数C.V.を小さくすることで、微細構造がより均一なものとなり、誘電正接tanδが低下する。変動係数C.V.は32%以下とすることが好ましく、30%以下とすることがより好ましい。
第1実施形態における、含有する粒子の平均粒径ravgは特に限定されないが、3μm以上とすることが好ましい。平均粒径ravgを3μm以上とすることで、圧電素子とした際に、高い機械的品質係数Qmが得られる。平均粒径ravgは、3.5μm以上とすることがより好ましい。平均粒径ravgの上限値は特に限定されないが、粗大粒子による機械的強度の低下を抑制する点からは、10μm以下とすることが好ましい。
ここで、第1実施形態における平均粒径ravg及び粒径の変動係数C.V.は、以下の手順で決定する。
まず、圧電セラミックスの表面に、導電性を付与するために白金を蒸着して測定用試料とする。
次いで、測定用試料を、走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、視野中に60〜200個程度の粒子が入る倍率にて、4〜6枚の写真を撮影する。
次いで、撮影した写真を画像処理することで、写真に写る各粒子の面積を求め、同じ面積を有する円の直径である円相当径を算出する。
次いで、得られた個々の粒子の円相当径r及びこれを算出した粒子の個数nから、下記(式1)により平均粒径ravgを算出し、これを圧電セラミックスの平均粒径ravgとする。
次いで、得られた平均粒径ravgの値から下記(式2)により粒径の標準偏差sを算出する。
最後に、得られた平均粒径ravg及び標準偏差sの値から、(式3)により変動係数C.V.を算出し、これを圧電セラミックスにおける粒径の変動係数C.V.とする。
Figure 2021064765
Figure 2021064765
Figure 2021064765
前述した圧電セラミックスの表面観察を、研磨された表面について行う場合、圧電セラミックス表面の一部が除去されることにより、粒子の輪郭が見えにくくなることがある。このような場合には、前述の手順の実施に先立って、900〜960℃の温度で15分〜30分程度の熱処理(サーマルエッチング)を行うとよい。
第1実施形態では、断面を後方散乱電子回折(EBSD)法で解析して得られるイメージクオリティ(IQ)像において、粒径が3μm〜5μmで、粒子中に占めるドメインの面積割合が85%以上の粒子が確認される。なお、ここでの粒径は、前述した円相当径rを意味する。圧電セラミックスにおいて、ドメインの占める面積割合が大きい粒子が確認されることは、当該粒子中に大きなドメインが存在することを示唆するものである。前述のとおり、粒径の揃った圧電セラミックスである第1実施形態において、このように比較的粒径の大きな粒子中に大きなドメインが存在することで、低い誘電正接tanδが達成される。粒子中に占めるドメインの面積割合は、誘電正接tanδを低減する点からは大きいほど好ましい。具体的には、前記面積割合が87%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
前述したドメインの面積割合を有する粒子は、圧電セラミックス中に1個でも確認されればよい。これは、第1実施形態では、含有する粒子の粒径の変動係数が小さく微細構造の均質性が高いことから、分極処理時における個々の粒子中の電界のばらつき、及び当該電界に対するイオンや電子の応答のばらつきがいずれも小さく抑えられ、結果として同様のドメイン構造を有する粒子が多数存在することによる。圧電セラミックス中に存在する、粒径が3μm〜5μmで、前述したドメインの面積割合を有する粒子の個数ないし割合は、多い方がtanδ低減の点で好ましい。一例として、圧電セラミックスの断面に、前記粒子が2個以上観察される10μm×10μmの領域が存在することが好ましく、前記粒子が3個以上観察される10μm×10μmの領域が存在することがより好ましい。
ここで、第1実施形態におけるドメインの観察、及びその粒子中に占める面積割合の算出は、以下の手順にて行う。
まず、圧電セラミックスを分極方向に切断する。圧電セラミックスが圧電素子となっている場合、分極方向は、通常、電極面に垂直な方向であるが、厚みすべり振動を利用する圧電素子等においては、これとは異なる方向であるため注意を要する。切断手段は特に限定されず、ダイシングソー、カッター等を使用できる。
次いで、切断された圧電セラミックスを、切断面が露出するようにエポキシ樹脂に埋設した後、コロイダルシリカを用いて切断面を鏡面研磨する。
次いで、圧電セラミックスの切断面に導電性を付与するため、研磨面にオスミウム(Os)コートを施し、測定用試料とする。
次いで、得られた測定用試料を、EBSD検出器(EDAX社製、Hikari Speed EBSD Detector)を備える走査型電子顕微鏡(SEM)(Carl Zeiss社製、SUPRA40VP)による測定に供する。測定では、0.075μmステップで電子ビームを照射して、一辺が10μm〜20μm程度の長方形ないし正方形の領域の反射電子(BSE)像を取得した後、当該BSE像中の粒径が3μm〜5μmの粒子が多く存在する箇所を拡大し、0.025μmステップで電子ビームを照射して、EBSD検出器によるイメージクオリティ(IQ)像を画像ファイルとして取得する。
次いで、得られたIQ像の画像ファイルをPDF形式で保存した後、当該PDFファイルをAcrobat(Adobe社製)にて開く。そして、その機能である「ものさしツール」において、測定タイプとして「面積ツール」を選択し、IQ像中に観察される粒径が3μm〜5μmの粒子、並びにその内部に白っぽい部分として観察されるドメイン、及び色の濃い(黒っぽい)部分として観察されるドメイン壁について、それぞれの輪郭をなぞって多角形を作図し、出力される当該各多角形の面積から、当該粒子中に占めるドメインの面積割合を算出する。そして、パーセント(%)で表した面積割合の小数第一位を四捨五入して、当該粒子中に占めるドメインの面積割合とする。
第1実施形態では、ドメインが複数の粒子に跨がって観察されることが好ましい。ここで、「ドメインが複数の粒子に跨がって観察される」とは、前述した手順でドメインの観察を行った際に、図1に示すように、隣接する粒子21a、21bのうち、一方に見られるドメイン壁212a、212aがそれぞれ粒子同士の境界と接する点をa、aとし、他方に見られるドメイン壁212b、212bがそれぞれ粒子同士の境界と接する点をb、bとしたときの、a−b間距離及びa−b間距離がいずれも、a−a間距離及びb−b間距離、すなわちドメイン幅の15%以下となることをいう。ドメインが複数の粒子に跨がって観察されることで、ドメインサイズがより大きくなり、より低い誘電正接tanδが達成可能となる。
第1実施形態は、好ましくは、組成式(Bi0.5−x/2Na0.5−x/2Ba)(Ti1−yMn)O(ただし、0.01≦x≦0.25、0.001≦y≦0.020)で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とする。これにより、高い機械的品質係数Qmを得ることができる。ここで、本明細書における「主成分」とは、圧電セラミックス中に、質量基準で最も多く含まれる成分を意味する。
前記組成式において、xの値、すなわちBaの含有割合は0.01〜0.25とする。xの値をこの範囲にすることで、優れた圧電特性と高いキュリー温度とを両立できる。
前記組成式において、yの値、すなわちMnの含有割合は0.001〜0.020とする。Mnの含有割合を0.001以上とすることで、高い機械的品質係数Qmが得られる。yの値は0.005以上とすることが好ましく、0.0075以上とすることがより好ましい。他方、Mnの含有量を0.020以下とすることで、Mnに富む析出物の生成が抑制され、圧電特性の低下を防止できる。
第1実施形態は、前述の組成式を有するペロブスカイト型化合物を主成分とするものであれば、他の添加元素ないし化合物を含有するものであってもよい。添加元素の例としては、Bi、Na又はBaと置換されるLi、K、Ca又はSr等、Tiと置換されるNb、Ta、Zr、Fe又はZn等、及びOと置換されるF等が挙げられる。化合物の例としては、焼結温度を下げるために添加した成分に由来する、ガラス質の粒界相等が挙げられる。
ここで、第1実施形態が、前述の組成式で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とすることは、圧電セラミックスを粉砕して得た粉末について、Cu−Kα線を用いたX線回折装置(XRD)で回折線プロファイルを測定し、ペロブスカイト構造由来のプロファイルにおける最強回折線強度に対する、他の構造由来の回折プロファイルにおける最強回折線強度の割合が10%以下であることを確認した後、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP)、イオンクロマトグラフィー装置ないしは、蛍光X線分析装置(XRF)によって各元素の含有比率を測定し、該測定結果が前記組成式における比率となっていること、により確認される。
[圧電セラミックスの製造方法]
本発明の他の実施形態に係る圧電セラミックスの製造方法(以下、単に「第2実施形態」と記載することがある。)は、構成元素として鉛を含まない圧電セラミックスを製造するものであり、所定量の原料粉末を混合して混合粉末を得ること、前記混合粉末を仮焼して仮焼粉を得ること、前記仮焼粉を所定形状に成形して成形体を得ること、前記成形体を焼成して焼結体を得ること、及び前記焼結体を分極処理することを含み、前記原料粉末のうち、モル換算での使用量が最も多いものとして、比表面積が10m/g以上のものを使用することを特徴とする。
第2実施形態において原料として使用する粉末は、圧電セラミックス(焼結体)の成分元素単体又は当該元素を含有する化合物の粉末であれば特に限定されない。原料粉末を構成する化合物は、圧電セラミックスの成分元素のうち複数種を含有するものであってもよく、またこれらの元素以外の添加元素を含むものであってもよい。
第2実施形態では、原料粉末のうち、モル換算での使用量が最も多いもの(以下、「主原料粉末」と記載する。)として、比表面積が10m/g以上の粉末を使用する。これにより、得られる圧電セラミックスにおいて、これを構成する粒子の粒径のばらつきを抑え、誘電正接tanδを小さくすることができる。前記比表面積は、15m/g以上とすることが好ましく、20m/g以上とすることがより好ましく、25m/g以上とすることがさらに好ましい。
主原料粉末に比表面積の大きなものを使用することにより、誘電正接tanδが小さい圧電セラミックスが得られるメカニズムは明らかでないが、混合粉末中で主原料粉末と他の原料粉末との接触面積が大きくなることが影響していると考えられる。すなわち、原料の混合粉末においては、主原料粉末の粒子と他の原料粉末の粒子とが互いに接触しており、これを仮焼することで、当該接触箇所における成分元素同士の反応、ないしは当該接触箇所を通じた成分元素の他の粒子中への拡散・移動後の反応により、所期の組成の化合物が生成する。このとき、異種粒子同士の接触面積が小さいと、成分元素の拡散・移動距離が必然的に長くなるため、仮焼により得られる仮焼粉中に、原子レベルでの組成の不均一や構造欠陥が多い粒子が多数含まれると考えられる。こうした組成の不均一や構造欠陥により、本焼成時に生じる粒成長の駆動力が局所的に異なることとなり、圧電セラミックスにおける粒径の不均一が生じると考えられる。翻って、第2実施形態のように、混合粉末中での主原料粉末と他の原料粉末との接触面積が大きい場合には、仮焼時に粒子内を拡散・移動する成分元素の総移動距離が短くなり、組成の不均一や構造欠陥が少ない仮焼粉が得られると解される。このため、本焼成時に均一な粒成長の駆動力が生じ、粒径のばらつきが小さい圧電セラミックスが得られると考えられる。
ここで、主原料粉末の比表面積は、全自動比表面積測定装置により、窒素ガス吸着法を用いて測定・算出する。まず、ヒーター内で測定試料を脱気した後、測定試料に窒素ガスを吸着・脱離させることにより吸着窒素量を測定する。次いで、得られた吸着窒素量から、BET1点法を用いて単分子層吸着量を算出し、この値から、1個の窒素分子が占める面積及びアボガドロ数の値を用いて試料の表面積を導出する。最後に、得られた試料の表面積を該試料の質量で除すことで、粉末の比表面積を得る。なお、使用する主原料粉末の比表面積が、カタログ等に掲載されている場合には、当該掲載された値を採用してもよい。
主原料粉末以外の原料粉末の比表面積は特に限定されないが、本焼成時の粒成長の駆動力が大きい系において、粗大粒子の生成とこれに起因する圧電セラミックスの機械的強度の低下を抑制する点からは、9.0m/g以下とすることが好ましく、7.0m/g以下とすることがより好ましい。
原料の混合方法は、不純物の混入を防ぎつつ各粉末が均一に混合されるものであれば特に限定されず、乾式混合、湿式混合のいずれを採用してもよい。ボールミルを用いた湿式混合を採用する場合には、例えば8〜24時間程度混合すればよい。
仮焼条件は、各原料が反応して上述した組成式で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とする仮焼粉が得られるものであれば限定されず、例えば大気雰囲気中、700℃〜1000℃で2時間〜8時間とすればよい。焼成温度が低すぎたり、焼成時間が短すぎたりすると、未反応の原料や中間生成物が残存する虞がある。反対に、焼成温度が高すぎたり、焼成時間が長すぎたりすると、成分の揮発により所期の組成の化合物が得られない虞や、生成物が固結して解砕しにくくなることで生産性が低下する虞がある。
仮焼粉を成形する方法としては、粉末の一軸加圧成形、粉末を含む坏土の押出成形及び粉末を分散したスラリーの鋳込成形等の、セラミックス粉末の成形に通常用いられる方法を採用することができる。なお、積層型圧電素子を得るための成形方法については、後述する該素子の製造方法にて説明する。
成形体の焼成条件は、緻密な圧電セラミックスが得られるものであれば限定されず、例えば大気雰囲気中、900℃〜1200℃で1時間〜5時間とすればよい。焼成温度が低すぎたり、焼成時間が短すぎたりすると、緻密化が不十分であることにより、所期の特性の圧電セラミックスが得られない虞がある。反対に、焼成温度が高すぎたり、焼成時間が長すぎたりすると、成分の揮発により組成ずれが生じる虞や、粗大粒子の生成により特性が低下する虞がある。こうした焼成中の成分の揮発や粗大粒子の生成を抑制する点からは、焼成温度の上限は、1100℃とすることが好ましい。
第2実施形態では、焼成により得られた焼結体を分極処理する。分極処理は、典型的には、焼結体の表面に導電材料で一対の電極を形成し、当該電極間に高電圧を印加することで行う。
電極の形成には、電極材料を含むペーストを焼結体表面に塗布ないし印刷して焼き付ける方法や、焼結体表面に電極材料を蒸着する方法等の、慣用されている方法を採用できる。電極材料は、導電性が高く、分極条件下で物理的及び化学的に安定な材料であれば特に限定されない。また、形成された電極を、分極処理後にそのまま圧電素子の電極として使用する場合には、圧電素子の使用環境下で物理的及び化学的に安定であることも要求される。使用可能な電極材料の例としては、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)及びニッケル(Ni)、並びにこれらの合金等が挙げられる。
分極処理の条件は、圧電セラミックスに亀裂等の損傷を生じることなく自発分極の向きを揃えられるものであれば特に限定されない。一例として、100℃〜150℃の温度にて4kV/mm〜6kV/mmの電界を印加することが挙げられる。
第2実施形態では、好ましくは、組成式(Bi0.5−x/2Na0.5−x/2Ba)(Ti1−yMn)O(ただし、0.01≦x≦0.25、0.001≦y≦0.020)で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とする焼結体を得るように、原料粉末及び製造条件を選択する。この場合、得られる圧電セラミックスが高い圧電特性、特に高い機械的品質係数Qmを示すことに加えて、主原料粉末として、比表面積の大きな粉末が容易に入手可能なTiOが使用できるというメリットがある。
この場合、使用できる他の原料粉末の例としては、ビスマス化合物として酸化ビスマス(Bi)又は塩化酸化ビスマス(BiOCl)、ナトリウム化合物として炭酸ナトリウム(NaCO)又は炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、バリウム化合物として炭酸バリウム(BaCO)、及びマンガン化合物として炭酸マンガン(MnCO)等が挙げられる。
[圧電素子]
第1実施形態に係る圧電セラミックス、又は第2実施形態により得られた圧電セラミックスは、表面に所期の形状の電極を形成して圧電素子となる。電極の形成方法は、前述した分極処理時の電極形成方法に準じて行う。利用する振動モードによっては、分極処理の際に形成した電極を、そのまま圧電素子の電極として用いてもよい。他方、厚みすべり振動を利用する圧電素子等では、分極方向と駆動時の電圧の印加方向とが異なるため、これを得るためには、圧電セラミックスの表面に、新たに駆動用の電極を形成する必要がある。
[積層型圧電素子]
前述の圧電素子は、積層型圧電素子であってもよい。以下に、積層型圧電素子の構造を、図2を参照しながら説明する。
図2に模式的に示される積層型圧電素子1は、圧電セラミックス層2及び内部電極層3が交互に積層された積層体と、内部電極層3に対して、一層おきに電気的に接続された一対の接続導体41、42と、前記積層体の表面に設けられ、前記一対の接続導体にそれぞれ電気的に接続された表面電極51、52とを備える。なお、図中には、内部電極層3の位置が把握しやすいように、内部電極層3の接続導体41、42と接続されていない部分も素子端面に露出する構造を示したが、素子構造はこれに限定されず、内部電極層3の接続導体41、42と接続されない部分が素子端面に露出しない構造とすることも可能である。
圧電セラミックス層2は、上述した圧電セラミックスで形成されたものであるため、説明を省略する。
内部電極層3は、圧電セラミックス層2と交互に積層され、かつ互いに異なる2種類の電極パターンが1層おきに交互に積層されて、積層型圧電素子1の基本となる積層構造をなす。
内部電極層3を構成する電極材料は、導電性が高く、積層型圧電素子1の使用環境下で物理的及び化学的に安定な材料であれば特に限定されない。積層型圧電素子1を製造する際に、後述する圧電セラミックス層2と内部電極層3との一体焼成を採用する場合には、焼成温度及び雰囲気において物理的及び化学的に安定であることも必要である。使用可能な電極材料の例としては、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)及びニッケル(Ni)、並びにこれらの合金等が挙げられる。
接続導体41、42は、内部電極層3に対して、一層おきに電気的に接続される。すなわち、接続導体41は、上から数えて奇数番目の内部電極層3と電気的に接続され、接続導体42は、上から数えて偶数番目の内部電極層3と電気的に接続される。なお、この電気的な接続は、奇数番目と偶数番目とを入れ替えてもよい。また、図2では、接続導体41、42は、積層型圧電素子1の端面において内部電極層3の露出部分に接続されているが、接続導体41、42と内部電極層3との接続態様はこれに限定されず、例えば圧電セラミックス層2を貫通するスルーホール(ビア)により接続されてもよい。
接続導体41、42を構成する材料は、導電性が高く、積層型圧電素子1の使用環境下で物理的及び化学的に安定な材料であれば特に限定されない。接続導体41、42が、内部電極層3と同様に、圧電セラミックス層2との一体焼成により形成される場合には、焼成温度及び雰囲気において物理的及び化学的に安定であることも必要である。使用可能な電極材料の例としては、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)及びニッケル(Ni)、並びにこれらの合金等が挙げられる。接続導体41、42を構成する電極材料は、内部電極層3を構成する電極材料と同一でもよく、異なっていてもよい。
表面電極51、52は、積層型圧電素子1の表面に設けられ、接続導体41、42にそれぞれ電気的に接続される。前述の接続導体41、42が積層型圧電素子1の表面に設けられる場合には、接続導体41、42が表面電極51、52を兼ねることもできる。
表面電極51、52を構成する電極材料は、導電性が高く、積層型圧電素子1の使用環境下で物理的及び化学的に安定な材料であれば特に限定されない。使用可能な電極材料の例としては、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)及びニッケル(Ni)、並びにこれらの合金等が挙げられる。表面電極51、52を構成する電極材料は、内部電極層3及び接続導体41、42を構成する電極材料と同一でもよく、異なっていてもよい。
[積層型圧電素子の製造方法]
前述の積層型圧電素子1の製造には、一般的な積層型素子の製造方法を採用できる。一例として、圧電セラミックス層2と内部電極層3とを一体焼成する方法について以下に説明する。
まず、圧電セラミックス層2を形成する仮焼粉をバインダー等と混合し、スラリー又は坏土を形成した後、これをシート状に成形して仮焼粉を含む生シートを得る。シートの成形方法としては、ドクターブレード法、押出成形法等の慣用されている方法を採用できる。
なお、上述したような、内部電極層3と接続導体41、42とをスルーホール(ビア)により接続した積層型圧電素子1を製造する場合には、得られた生シートに、パンチングやレーザー光の照射等により貫通孔を形成する。
次に、仮焼粉を含む生シート上に、焼成後に内部電極層3となる電極パターンを形成する。電極パターンは慣用されている方法で形成すれば良く、電極材料を含むペーストを印刷又は塗布する方法がコストの点で好ましい。印刷又は塗布により電極パターンを形成する際には、焼成後の圧電セラミックス層2への付着強度を向上させるため、ガラスフリットや圧電セラミックス用の仮焼粉(共材)をペースト中に含有させてもよい。
なお、上述したような、内部電極層3と接続導体41、42とをスルーホール(ビア)により接続した積層型圧電素子1を製造する場合には、電極パターンの形成に前後して、焼成後に接続導体41、42となる電極材料を、生シートに形成した貫通孔に充填する。充填方法は特に限定されないが、電極材料を含むペーストを印刷する方法が、コストの点で好ましい。
次に、電極パターンを形成した生シートを所定の枚数積層し、シート同士を接着して生成形体を得る。積層及び接着は慣用されている方法で行えば良く、生シート同士をバインダーの作用で熱圧着する方法がコストの点で好ましい。
次に、生成形体からバインダーを除去し、焼成する。バインダーの除去と焼成とは同じ焼成装置を用いて連続して行ってもよい。バインダーの除去及び焼成の条件は、バインダーの揮発温度及び含有量、並びに仮焼粉の焼結性及び内部電極材料の耐久性等を考慮して適宜設定すればよい。内部電極材料として銅(Cu)又はニッケル(Ni)を用いる場合には、内部電極の酸化を防止するために還元性ないし不活性雰囲気で焼成を行うことが好ましい。内部電極材料に銅(Cu)又はニッケル(Ni)のいずれも含まない場合の焼成条件の例としては、大気雰囲気中、900℃〜1200℃で1時間〜5時間が挙げられる。内部電極層を構成する電極材料に低融点の材料を使用して材料コストを低減する点からは、焼成温度を1100℃以下とすることが好ましい。なお、1つの生成形体から複数の圧電素子を得る場合には、焼成に先立って生成形体を幾つかのブロックに分割してもよい。
接続導体41、42を積層型圧電素子1の表面に設ける場合には、焼成後、焼成体の端面に、該端面に露出した内部電極層3を接続するように接続導体41、42を形成する。また、焼成後の積層体の表面に表面電極51、52を形成する。接続導体41、42及び/又は表面電極51、52の形成は、慣用されている方法で行えば良く、電極材料を含むペーストを印刷又は塗布して焼き付ける方法の他、蒸着を採用してもよい。
接続導体41、42及び/又は表面電極51、52を形成した後、上述した条件で分極処理を施して積層型圧電素子1を得る。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は該実施例に限定されるものではない。
(実施例)
[圧電セラミックスの製造]
出発原料として、高純度の酸化ビスマス(Bi)、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸バリウム(BaCO)、酸化チタン(TiO)、及び炭酸マンガン(MnCO)を使用した。酸化チタンとしては、昭和電工のF−2(比表面積30m/g)を使用した。
これらの出発原料を、最終的に得られる圧電セラミックスの組成が(Bi0.425Na0.425Ba0.15)(Ti0.982Mn0.018)Oとなり、かつ原料の総質量が1kgとなるように秤量し、6kgのジルコニアビーズ、及び3Lのエタノール系溶剤と共に容積5Lのポットに投入し、100rpmで16時間の湿式混合を行った。
混合後のスラリーからジルコニアビーズを分離し、エバポレーターで溶剤を除去して得た混合粉について、大気中、850℃で3時間の条件で仮焼を行い、仮焼粉を得た。
得られた仮焼粉を、固結した粗大な粒子が見られなくなるまでボールミルにて湿式解砕した後、アクリル系バインダーと混合し、2tfの圧力で一軸プレス成形して、直径10mmの円板状成形体を得た。
得られた成形体を、大気中、1080℃で2時間焼成し、実施例に係る圧電セラミックスを得た。
[圧電セラミックスの粒径測定]
得られた圧電セラミックスについて、平均粒径ravg及び粒径の変動係数C.V.を、上述した方法で決定したところ、ravg=3.8μm、C.V.=29.7%となった。
[試験用圧電素子の製造]
前述した円板状の圧電セラミックスの両面全体にAgペーストを塗布した後、800℃に設定したベルト炉内を通過させて焼き付けることで電極を形成した。
電極形成後の圧電セラミックスを、100℃のシリコンオイル中で、6kV/mmの電界強度で15分間分極処理して試験用圧電素子を得た。
[粒子中のドメインの面積割合の測定]
分極後、24時間経過した試験用圧電素子について、これを構成する圧電セラミックスにおける粒子中のドメインの面積割合を、上述した方法で決定した。ドメインの面積割合の決定に用いたIQ像のスケッチを、図3に示す。10μm×10μmの範囲内に観察された、粒径が3μm〜5μmの粒子2個について算出されたドメインの面積割合はそれぞれ、85%及び87%であった。また、観察領域内の隣接する粒子について、各粒子内のドメイン壁と粒子同士の境界との接点間距離(図1のa−b間距離及びa−b間距離)の、ドメイン幅(図1のa−a間距離及びb−b間距離)に対する割合を算出したところ、最大で13.3%であった。このことから、実施例に係る試験用圧電素子は、隣接する複数の粒子に跨ってドメインが確認される、本発明の好ましい態様であることが判明した。
[試験用圧電素子の特性測定]
分極後、24時間経過した試験用圧電素子について、以下の測定を行った。
LCRメーターを用いて、周波数1kHz、OSC1Vの条件で、静電容量C及び誘電正接tanδを測定した。得られた静電容量Cの値と試験用圧電素子の寸法とから、該素子の比誘電率ε33 /εを算出した。測定の結果、比誘電率ε33 /εは459、誘電正接tanδは0.91%であった。
また、インピーダンスアナライザーを用いて、周波数とインピーダンスとの関係を測定し、共振−反共振法により機械的品質係数Qmを算出した。測定の結果、機械的品質係数Qmは1096であった。
さらに、d33メーター(ベルリンコート法)を用いて圧電定数d33を測定した。測定の結果、圧電定数d33は95.2pC/Nであった。
(比較例)
[圧電セラミックスの製造]
出発原料として、高純度の酸化ビスマス(Bi)、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸バリウム(BaCO)、酸化チタン(TiO)、及び炭酸マンガン(MnCO)を使用した。酸化チタンとしては、石原産業のCR−EL(比表面積6.5m/g)を使用した。
これらの出発原料を、最終的に得られる圧電セラミックスの組成が(Bi0.425Na0.425Ba0.15)(Ti0.982Mn0.018)Oとなり、かつ原料の総質量が1kgとなるように秤量し、3kgのジルコニアビーズ、及び3Lのエタノール系溶剤と共に容積5Lのポットに投入し、100rpmで16時間の湿式混合を行った。
混合後のスラリーからジルコニアビーズを分離し、エバポレーターで溶剤を除去して得た混合粉について、大気中、840℃で3時間の条件で仮焼を行い、仮焼粉を得た。
得られた仮焼粉を、粗大な凝集粒子が見られなくなるまでボールミルにて湿式解砕した後、アクリル系バインダーと混合し、2tfの圧力で1軸プレス成形して直径10mmの円板状成形体を得た。
得られた成形体を、大気中、1030℃で2時間焼成し、比較例に係る圧電セラミックスを得た。
[圧電セラミックスの粒径測定]
得られた圧電セラミックスについて、平均粒径ravg及び粒径の変動係数C.V.を、実施例と同様の方法で決定したところ、ravg=2.9μm、C.V.=35.4%となった。
[試験用圧電素子の製造及び特性測定]
前述した圧電セラミックスに実施例と同様の処理を行って、比較例に係る試験用圧電素子を得た。
得られた圧電素子について、実施例1と同様の方法で粒子中のドメインの面積割合を決定した。ドメインの面積割合の決定に用いたIQ像のスケッチを、図4に示す。10μm×10μmの範囲内に観察された、粒径が3μm〜5μmの粒子2個について算出されたドメインの面積割合はそれぞれ、83%及び80%であった。
得られた試験用圧電素子について、実施例と同様の方法で特性を測定したところ、比誘電率ε33 /εは539、誘電正接tanδは1.05%、機械的品質係数Qmは847、圧電定数d33は98.4pC/Nであった。
実施例及び比較例の結果をまとめて表1に示す。
Figure 2021064765
実施例と比較例とを対比すると、圧電セラミックスにおける粒径の変動係数C.V.の値が比較例に比べて小さく、大径粒子中のドメインの面積割合が大きい実施例は、比較例と同程度以上の機械的品質係数Qmを発現しつつ、誘電正接tanδの値が小さくなることが判る。この結果から、圧電セラミックスにおいて、含有する粒子の粒径の変動係数C.V.を小さくし、かつ含有する比較的粒径の大きな粒子中のドメインサイズを大きくすることで、誘電正接tanδを低減できるといえる。
本発明によれば、高い機械的品質係数Qmを保持しつつ、誘電正接tanδが改善された圧電セラミックスを提供することができる。このような圧電セラミックスは、超音波振動子に使用した際に、駆動中の発熱量が従来のものよりも抑えられ、高性能で信頼性の高い素子を得ることができる。このため、本発明に係る圧電セラミックスを備える圧電素子は、超音波振動子に好適に用いることができる。また、本発明によれば、高い機械的品質係数Qmと低い誘電正接tanδとが両立する圧電セラミックスを、特別な工程を経ることなく製造することができる。このため、本発明は、製造コストの増加を抑えつつ、特性の優れた圧電セラミックスが得られるという利点をも有する。
1 積層型圧電素子
2 圧電セラミックス層
21a、21b (圧電セラミックスの)粒子
211a、211b ドメイン
212a、212b ドメイン壁
3 内部電極層
41、42 接続導体
51、52 表面電極

Claims (8)

  1. 構成元素として鉛を含まない圧電セラミックスであって、
    含有する粒子の粒径の変動係数C.V.が35%以下であり、かつ
    断面を後方散乱電子回折(EBSD)法で解析して得られるイメージクオリティ(IQ)像において、粒径が3μm〜5μmで、粒子中に占めるドメインの面積割合が85%以上の粒子が確認される
    ことを特徴とする圧電セラミックス。
  2. 前記ドメインが、隣接する複数の粒子に跨って確認される、請求項1に記載の圧電セラミックス。
  3. 前記圧電セラミックスが、組成式(Bi0.5−x/2Na0.5−x/2Ba)(Ti1−yMn)O(ただし、0.01≦x≦0.25、0.001≦y≦0.020)で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とする、請求項1又は2に記載の圧電セラミックス。
  4. 構成元素として鉛を含まない圧電セラミックスの製造方法であって、
    所定量の原料粉末を混合して混合粉末を得ること、
    前記混合粉末を仮焼して仮焼粉を得ること、
    前記仮焼粉を所定形状に成形して成形体を得ること
    前記成形体を焼成して焼結体を得ること、及び
    前記焼結体を分極処理すること
    を含み、
    前記原料粉末のうち、モル換算での使用量が最も多いものとして、比表面積が10m/g以上のものを使用する
    ことを特徴とする、圧電セラミックスの製造方法。
  5. 前記焼結体が、組成式(Bi0.5−x/2Na0.5−x/2Ba)(Ti1−yMn)O(ただし、0.01≦x≦0.25、0.001≦y≦0.020)で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とするものであり、前記モル換算での使用量が最も多い原料粉末がTiO2粉末である、請求項4に記載の圧電セラミックスの製造方法。
  6. 前記焼成を1100℃以下の温度で行う、請求項4又は5に記載の圧電セラミックスの製造方法。
  7. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧電セラミックスと、該圧電セラミックスに電気的に接続された電極とを備える圧電素子。
  8. 請求項7に記載の圧電素子であって、
    圧電セラミックス層及び内部電極層が交互に積層された積層体と、
    前記内部電極層に対して、一層おきに電気的に接続された一対の接続導体と、
    前記積層体の表面に設けられ、前記一対の接続導体にそれぞれ電気的に接続された表面電極と、
    を備える圧電素子。
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