以下、図面を参照して、本発明の実施形態における電動機について具体的に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
図1は、実施形態の電動機を搭載した車両を模式的に示すスケルトン図である。車両Veは、電動機1と、動力伝達装置2と、車軸3と、駆動輪4と、を備える。車両Veに搭載された電動機1は走行用の動力源として機能する。車両Veでは、電動機1から出力された動力が動力伝達装置2から車軸3を介して駆動輪4に伝達される。電動機1は動力伝達装置2に連結されている。動力伝達装置2は、電動機1と車軸3との間の動力伝達経路を形成するものであり、例えば減速機やディファレンシャル機構などのギヤ機構を含んで構成される。なお、電動機1は、図示しないバッテリと電気的に接続されており、バッテリから供給される電力によって駆動することができる。
電動機1は、ロータ11と、ステータ12と、界磁ヨーク13と、界磁コイル14と、を備える。この電動機1は、ケース5の内部に収容されている。図1に示す例では、ケース5は、電動機1とともに動力伝達装置2を収容するトランスアクスルケースにより構成されている。ロータ11は、回転軸6に固定されており、回転軸6と一体回転する。回転軸6は軸受7を介してケース5に回転自在に支持されている。ステータ12は、ボルト8によってケース5に締結されている。ボルト8は、ステータ12をケース5に固定するための締結部材である。ケース5には、ボルト8が取り付けられるボルト穴が設けられている。電動機1では、ボルト締結によりステータ12をケース5に直接的に固定している。また、界磁ヨーク13は、界磁コイル14に通電することにより生じる界磁磁束を通すための部材である。界磁コイル14は、界磁電流を流すことにより界磁磁束を生じるものである。つまり、電動機1は、界磁ヨーク13と界磁コイル14とにより構成される可変界磁機構を備える。
図2は、図1に示す電動機の周辺部分を拡大した断面図である。図3は、軸方向から電動機を見た場合を示す模式図である。図4は、電動機を模式的に示す斜視図である。図5は、界磁ヨークの構造を説明するための図である。なお、図3には、ロータ11およびステータ12の軸方向端面が示されており、回転軸6、ステータコイル12c、界磁ヨーク13、および界磁コイル14は図示されていない。同様に、図4でも、回転軸6、ステータコイル12c、界磁ヨーク13、および界磁コイル14は図示されていない。
ロータ11は、円筒状のロータコア11aと、ロータコア11aの内部に埋め込まれた永久磁石11bとを有する。ロータコア11aは、円環状の電磁鋼板を軸方向に積層して構成された円筒状の磁性体である。ロータ11は、ロータコア11aの内周部に回転軸6が挿通された状態で回転軸6に固定されている。回転軸6は、ロータ軸であり、電動機1の出力軸として機能する。
永久磁石11bは、ロータコア11aの周方向に等間隔を空けて複数配置され、ロータコア11aの内部に埋め込まれている。図3に示すように、ロータ11には、四つの永久磁石11bが周方向に等間隔を空けて配置されている。さらに、永久磁石11bは、径方向位置について、ロータコア11aの内周面よりもロータコア11aの外周面に近い位置に配置されている。そして、図2に示すように、永久磁石11bはロータコア11aの内部を軸方向に沿って延在している。この場合、永久磁石11bの軸方向端面はロータ11の軸方向端面と同一平面上に配置される。
ステータ12は、円筒状のステータコア12aと、ステータコア12aから径方向内側に突出するステータティース12bと、ステータティース12bに巻き回されたステータコイル12cと、ケース5に固定される部位としての固定部12dと、を有する。ステータ12では、ステータコア12aとステータティース12bと固定部12dとが電磁鋼板により一体に形成されている。
ステータコア12aは、ロータ11の外周側に配置されている。ステータティース12bは、ステータコア12aから径方向内側に突出している。ステータコア12aおよびステータティース12bは、環状の電磁鋼板を軸方向に積層して構成された筒状の磁性体である。ステータティース12bの先端部はロータコア11aに向けて突出している。ステータティース12bとロータコア11aとの間には、径方向の空隙(エアギャップ)が設けられている。
ステータコイル12cは、三相コイルにより構成される。三相コイルは、U相コイル、V相コイル、およびW相コイルを含む。ステータコイル12cは、交流電流(三相交流)が流れることにより回転磁界を生じるものである。つまり、電動機1は、回転磁界を発生させるステータコイル12cと、界磁磁界を発生させる界磁コイル14とを備える可変界磁モータである。また、電動機1には、図示しないインバータが電気的に接続されている。このインバータに含まれるスイッチング素子によって、ステータコイル12cに流す電流を制御することができる。
固定部12dは、ステータコア12aから径方向外側に突出する突部により構成される。また、固定部12dには、締結部材であるボルト8が挿通される締結孔12eが形成されている。締結孔12eは、固定部12dの内部を軸方向に貫通する貫通孔である。
また、固定部12dは、周方向に所定間隔を空けて複数設けられ、軸方向に沿って延在している。例えば、図3および図4に示すように、三つの固定部12dが周方向に等間隔を空けて配置されている。そのため、ステータ12の外周面は、ステータコア12aの外周面と、固定部12dの外周面とにより構成される。ステータコア12aの外周面は、周方向に沿った円弧面である。一方、固定部12dの外周面は、ステータコア12aの外周面から径方向外側に突出した突出面である。つまり、ステータ12の外周面は、ステータコア12aからなる円弧面と、固定部12dからなる突出面とが、周方向に交互に配置された形状を有する。
さらに、ステータ12の外周側のうち、ステータコア12aの外周側に界磁ヨーク13(第3界磁ヨーク133)が配置されている。すなわち、固定部12dが設けられていない部分に、界磁ヨーク13(第3界磁ヨーク133)が配置されている。つまり、電動機1では、ステータ12の外周側の一部に界磁ヨーク13(第3界磁ヨーク133)が配置されている。この場合、ステータ12の外周部のうち、ステータコア12aからなる円弧状の外周面に界磁ヨーク13(第3界磁ヨーク133)が面接触している。そして、固定部12dは、ステータコア12aの外周側に配置された界磁ヨーク13(第3界磁ヨーク133)よりも径方向外側に突出している。
界磁ヨーク13は、ロータ11およびステータ12と軸方向の一方側から対向する位置に配置された第1界磁ヨーク131と、ロータ11およびステータ12と軸方向の他方側から対向する位置に配置された第2界磁ヨーク132と、ステータコア12aの外周側に配置された第3界磁ヨーク133と、を有する。第1界磁ヨーク131と第2界磁ヨーク132とは、ロータ11およびステータ12の軸方向外側に配置された一対の磁性体であり、周方向に沿った円環状に形成されている。この一対の界磁ヨーク131,132に軸方向両側から挟まれるようにして第3界磁ヨーク133およびステータ12が配置されている。つまり、第1界磁ヨーク131および第2界磁ヨーク132は、第3界磁ヨーク133およびステータ12と軸方向に接触している。
第1界磁ヨーク131は、環状の円板部131aと、内側円筒部131bと、外側円筒部131cとを有する。この第1界磁ヨーク131は、ロータ11およびステータ12に対して軸方向一方側の位置で、界磁コイル14により生じる界磁磁束を流すための部材である。
円板部131aは、ロータコア11aおよびステータ12と軸方向の一方側から対向する平板部であり、周方向に沿った円環状に形成されている。この円板部131aは、界磁コイル14に通電することにより生じる界磁磁束を、径方向に流すためのものである。そのため、円板部131aは、ロータコア11aとステータコア12aと軸方向に対向することが可能な径方向長さを有している。
内側円筒部131bは、円板部131aの内周部から軸方向で他方側に延びている。また、内側円筒部131bには、界磁コイル14(第1界磁コイル141)が周方向に沿って円環状に巻き回されている。図2に示すように、内側円筒部131bは、回転軸6よりも大径に形成され、回転軸6およびロータ11と非接触である。この内側円筒部131bは、界磁コイル14(第1界磁コイル141)に通電することにより生じる界磁磁束を、ロータコア11aの軸方向端面と繋がるように軸方向に流すためのものである。そのため、内側円筒部131bは、ロータコア11aと軸方向に対向する端部131dを有する。この端部131dは、周方向に沿った円環状に形成され、ロータコア11aから所定距離だけ離間した位置に配置されている。図2に示すように、内側円筒部131bの内径および外径は、ロータコア11aの内周部よりも径方向外側、かつ永久磁石11bが配置された径方向位置よりも径方向内側に設定されている。つまり、端部131dは、永久磁石11bとは軸方向に対向しない位置に配置されている。
外側円筒部131cは、円板部131aの外周部から軸方向で他方側に延びており、ステータコア12aの外径よりも大径に形成されている。この外側円筒部131cは、界磁コイル14(第1界磁コイル141)に通電することにより生じる界磁磁束を、第3界磁ヨーク133と繋ぐように軸方向に流すためのものである。そのため、外側円筒部131cは、第3界磁ヨーク133と軸方向に接触する端部131eを有する。この端部131eは、周方向に沿った円環状に形成され、第3界磁ヨーク133の軸方向端部133aと接触している。さらに、端部131eの一部はステータ12の固定部12dの軸方向端面(一方側)と接触している。つまり、端部131eは、第3界磁ヨーク133の軸方向端部133aと接触する部分とステータ12の固定部12dと接触する部分とが周方向に交互に配置されている。また、外側円筒部131cの径方向内側には、ステータコイル12cのコイルエンド部が配置されている。第1界磁ヨーク131はステータコイル12cのコイルエンド部とは非接触である。
第2界磁ヨーク132は、環状の円板部132aと、内側円筒部132bと、外側円筒部132cとを有する。この第2界磁ヨーク132は、ロータ11およびステータ12に対して軸方向他方側の位置で、界磁コイル14により生じる界磁磁束を流すための部材である。
円板部132aは、ロータコア11aおよびステータ12と軸方向の他方側から対向する平板部であり、周方向に沿った円環状に形成されている。この円板部132aは、界磁コイル14(第2界磁コイル142)に通電することにより生じる界磁磁束を、径方向に流すためのものである。そのため、円板部132aは、ロータコア11aとステータコア12aと軸方向に対向することが可能な径方向長さを有している。
内側円筒部132bは、円板部132aの内周部から軸方向で一方側に延びている。また、内側円筒部132bには、界磁コイル14(第2界磁コイル142)が周方向に沿って円環状に巻き回されている。図2に示すように、内側円筒部132bは、回転軸6よりも大径に形成され、回転軸6およびロータ11と非接触である。この内側円筒部132bは、界磁コイル14(第2界磁コイル142)に通電することにより生じる界磁磁束を、ロータコア11aの軸方向端面と繋がるように軸方向に流すためのものである。そのため、内側円筒部132bは、ロータコア11aと軸方向に対向する端部132dを有する。この端部132dは、周方向に沿った円環状に形成され、ロータコア11aから所定距離だけ離間した位置に配置されている。図2に示すように、内側円筒部132bの内径および外径は、ロータコア11aの内周部よりも径方向外側、かつ永久磁石11bが配置された径方向位置よりも径方向内側に設定されている。つまり、端部132dは、永久磁石11bとは軸方向に対向しない位置に配置されている。
外側円筒部132cは、円板部132aの外周部から軸方向で一方側に延びており、ステータコア12aの外径よりも大径に形成されている。この外側円筒部132cは、界磁コイル14(第2界磁コイル142)に通電することにより生じる界磁磁束を、第3界磁ヨーク133と繋ぐように軸方向に流すためのものである。そのため、外側円筒部132cは、第3界磁ヨーク133と軸方向に接触する端部132eを有する。この端部132eは、周方向に沿った円環状に形成され、第3界磁ヨーク133の軸方向端部133bと接触している。さらに、端部131eの一部はステータ12の固定部12dの軸方向端面(他方側)と接触している。つまり、端部132eは、第3界磁ヨーク133の軸方向端部133bと接触する部分とステータ12の固定部12dと接触する部分とが周方向に交互に配置されている。また、外側円筒部132cの径方向内側には、ステータコイル12cのコイルエンド部(他方側)が配置されている。第2界磁ヨーク132はステータコイル12cのコイルエンド部とは非接触である。なお、第2界磁ヨーク132は第1界磁ヨーク131と対をなす部材であるため、形状としては第1界磁ヨーク131と同じものを用いることが可能である。
第3界磁ヨーク133は、ステータコア12aの外周面に沿った円弧状の内周面を有し、ステータコア12aの軸方向長さに対応して軸方向に延在している。この第3界磁ヨーク133は、界磁コイル14(第1界磁コイル141および第2界磁コイル142)に通電することにより生じる界磁磁束を、ステータコア12aの外周側で軸方向に流すための部材である。
図3および図4に示すように、第3界磁ヨーク133は、固定部12dを境にして周方向に分割されている。すなわち、第3界磁ヨーク133は、ステータコア12aの外周側において、固定部12dが設けられている部分には配置されていない。電動機1では、複数の第3界磁ヨーク133が設けられており、図3に示す例では、第3界磁ヨーク133が3つ設けられている。そして、第3界磁ヨーク133は、固定部12dに固定されている。この固定方法としては、例えば溶接によって第3界磁ヨーク133を固定部12dに接合することができる。なお、溶接に限らず、接着によって第3界磁ヨーク133と固定部12dとを固定する固定方法であってもよい。
図5は、界磁ヨークの構造を説明するための図である。図5に示すように、第3界磁ヨーク133は周方向に均等に分割された構造を有する。この第3界磁ヨーク133は、一方側の軸方向端部133aと、他方側の軸方向端部133bと、周方向端部133cと、を有する。
軸方向端部133aは、周方向に沿った形状に形成され、軸方向の一方側で第1界磁ヨーク131と接触する。軸方向端部133bは、周方向に沿った形状に形成され、軸方向の他方側で第2界磁ヨーク132と接触する。第3界磁ヨーク133は、均一の厚さに形成されており、図2に示すように、第1界磁ヨーク131の外側円筒部131cおよび第2界磁ヨーク132の外側円筒部132cと略同等の厚さに形成されている。この場合、外側円筒部131cの端部131eは、径方向全域が軸方向端部133aに接触する。同様に、外側円筒部132cの端部132eは、径方向全域が軸方向端部133bに接触する。さらに、軸方向端部133aは、ステータコア12aの軸方向一方側の端面と同一平面上に配置されており、軸方向端部133bは、ステータコア12aの軸方向他方側の端面と同一平面上に配置されている。電動機1では、第3界磁ヨーク133の軸方向長さは、ステータコア12aの軸方向長さと同じである。
周方向端部133cは、軸方向に沿った形状に形成され、ステータ12の固定部12dに接触する。この周方向端部133cは固定部12dに固定される部位である。例えば、周方向端部133cを軸方向に沿って直線状に溶接して、固定部12dに接合する。あるいは、軸方向に所定間隔を空けた位置で周方向端部133cと固定部12dとを溶接してもよい。この固定部12dは、ステータコイル12cが通電された際に生じる磁束が通る経路には含まれない部位である。そのため、ステータコア12aではなく、固定部12dに第3界磁ヨーク133を溶接することが望ましい。ステータコア12aは、ステータコイル12cにより生じる磁束が流すための部材であるため、溶接部による回転磁界への影響を考慮すると、ステータコア12aには第3界磁ヨーク133との溶接部が設けられないことが望ましい。
また、図2および図3に示すように、第3界磁ヨーク133は、周方向で固定部12d同士の間に配置され、径方向でステータコア12aの外周面に密着している。第3界磁ヨーク133の内周面はステータコア12aの外周面に沿った円弧状の面である。そして、第3界磁ヨーク133の内周面とステータコア12aの外周面とが密着していることにより、界磁コイル14により生じる界磁磁束が、第3界磁ヨーク133とステータコア12aとの間で径方向に流れることが可能になる。
界磁コイル14は、第1界磁ヨーク131の内側円筒部131bに巻き回された第1界磁コイル141と、第2界磁ヨーク132の内側円筒部132bに巻き回された第2界磁コイル142とを含む。この界磁コイル14は、界磁電流が流されることによって、第3界磁ヨーク133を経由してロータ11およびステータ12を通る界磁磁束を発生させる。
第1界磁コイル141に界磁電流を流すと、第1界磁コイル141は、第1界磁ヨーク131および第3界磁ヨーク133を経由してステータ12およびロータ11を流れる界磁磁束を発生させる。一方、第2界磁コイル142に界磁電流を流すと、第2界磁コイル142は、第2界磁ヨーク132および第3界磁ヨーク133を経由してステータ12およびロータ11を流れる界磁磁束を発生させる。電動機1では、制御装置によって、界磁コイル14に通電される界磁電流が制御され、界磁磁束の発生が制御される。例えば、制御装置は、電動機1の動作点に応じて、界磁コイル14への通電を制御し、ロータ11とステータ12との間の径方向の空隙を通る磁束量を制御する。
図6は、界磁コイルに界磁電流を通電した際に生じる界磁磁束の流れを説明するための図である。電動機1では、図6に示す矢印の方向に流れる界磁磁束が発生するように、第1界磁コイル141および第2界磁コイル142に界磁電流を流すことができる。
第1界磁コイル141への通電により生じる界磁磁束は、第1界磁ヨーク131の円板部131a、外側円筒部131c、第3界磁ヨーク133、ステータコア12a、ステータティース12b、ロータコア11a、第1界磁ヨーク131の内側円筒部131b、円板部131aの順に流れる。
より詳細には、第1界磁コイル141による界磁磁束は、ステータコア12aの外周側において第3界磁ヨーク133の内部を軸方向に流れる。また、ステータコア12aは電磁鋼板を軸方向に積層した構造であるため、ステータコア12aの内部では径方向の磁気抵抗が軸方向の磁気抵抗よりも小さい。そのため、図6に示すように、第1界磁コイル141による界磁磁束は、第3界磁ヨーク133からステータコア12aの内部へと径方向に流れ、ステータティース12bからロータコア11aへと空隙を介して径方向に流れる。ロータコア11aは、ステータコア12aと同様に、電磁鋼板を軸方向に積層した構造であるため、ロータコア11aの内部では径方向の磁気抵抗が軸方向の磁気抵抗よりも小さい。そのため、図6に示すように、第1界磁コイル141による界磁磁束は、ロータコア11aの外周部から内周部へと、ロータ11の内部を径方向内側に向けて流れる。この場合、第1界磁コイル141による界磁磁束は永久磁石11bの内部を径方向に流れる。
また、ロータコア11aのうち径方向内側の部分は、軸方向の一方側において、第1界磁ヨーク131の内側円筒部131bの端部131dと対向している。そのため、ロータコア11aのうち径方向内側の部分では、磁気回路が内側円筒部131bの端部131dと繋がる経路となるように、界磁磁束は軸方向に流れる。そして、ロータコア11aの軸方向端面から軸方向の空隙を介して内側円筒部131bの端部131dへと界磁磁束が流れ込む。
第1界磁ヨーク131の内部を流れる界磁磁束は、内側円筒部131bを軸方向一方側に向けて流れた後、円板部131aを径方向外側に向けて流れる。さらに、その界磁磁束は、円板部131aから外側円筒部131cへと流れた後、外側円筒部131cを軸方向他方側に向けて流れる。そして、この界磁磁束は外側円筒部131cの端部131eから第3界磁ヨーク133の軸方向端部133aを介して第3界磁ヨーク133の内部へと流れ込む。
第2界磁コイル142への通電により生じる界磁磁束は、第2界磁ヨーク132の円板部132a、外側円筒部132c、第3界磁ヨーク133、ステータコア12a、ステータティース12b、ロータコア11a、第2界磁ヨーク132の内側円筒部132b、円板部132aの順に流れる。
より詳細には、第2界磁コイル142による界磁磁束は、ステータコア12aの外周側において第3界磁ヨーク133の内部を軸方向に流れる。また、図6に示すように、第2界磁コイル142による界磁磁束は、第3界磁ヨーク133からステータコア12aの内部へと径方向に流れ、ステータティース12bからロータコア11aへと空隙を介して径方向に流れる。さらに、第2界磁コイル142による界磁磁束は、ロータコア11aの外周部から内周部へと、ロータ11の内部を径方向内側に向けて流れる。この場合、第2界磁コイル142による界磁磁束は永久磁石11bの内部を径方向に流れる。
また、ロータコア11aのうち径方向内側の部分は、軸方向の他方側において、第2界磁ヨーク132の内側円筒部132bの端部132dと対向している。そのため、ロータコア11aのうち径方向内側の部分では、磁気回路が内側円筒部131bの端部131dと繋がる経路となるように、第2界磁コイル142による界磁磁束は軸方向に流れる。そして、ロータコア11aの軸方向端面から軸方向の空隙を介して内側円筒部132bの端部132dへと界磁磁束が流れ込む。
第2界磁ヨーク132の内部を流れる界磁磁束は、内側円筒部132bを軸方向他方側に向けて流れた後、円板部132aを径方向外側に向けて流れる。さらに、その界磁磁束は、円板部132aから外側円筒部131cへと流れた後、外側円筒部132cを軸方向一方側に向けて流れる。そして、この界磁磁束は、外側円筒部132cの端部131eから第3界磁ヨーク133の軸方向端部133bを介して第3界磁ヨーク133の内部へと流れ込む。
このように、電動機1は、回転磁界を発生させるステータコイル12cと、界磁磁界を発生させる界磁コイル14とを備える。そして、電動機1では、モータの動作点に応じて、界磁コイル14に界磁電流を通電する場合と、界磁コイル14に界磁電流を通電しない場合とを使い分けることによって、ロータ11とステータ12との間の径方向の空隙を通る磁束量を制御することができる。
以上説明した通り、実施形態によれば、ステータ12に設けられた固定部12dは、ステータコア12aの外周側に配置された界磁ヨーク13(第3界磁ヨーク133)よりも径方向外側に突出しているので、固定部12dをケース5に直接的に固定することができる。これにより、経時的にステータ12とケース5との固定力が安定する。
また、電動機1によれば、ステータコア12aの外周側において、第3界磁ヨーク133が固定部12dに固定されているため、歪みよる損失が発生しない。この歪みによる損失とは、例えば円筒状の界磁ヨークを焼嵌めによって円筒状のステータコアに固定した構造では、焼嵌めによる界磁ヨークからの締め付けによってステータコアが変形することが考える。このステータコアの変形による歪みが生じると、損失が発生してしまう。さらに、この円筒状の界磁ヨークを製造する場合と比較して、上述した第3界磁ヨーク133では製造が容易になる。加えて、第3界磁ヨーク133によれば、歩留まりが向上するとともに、電動機1を軽量化できる。
なお、第3界磁ヨーク133および固定部12dの構造は、上述した実施形態の構造に限定されない。例えば、固定部12dは、必ずしも周方向に等間隔を空けた位置でなくてもよく、その数も三つに限定されない。同様に、第3界磁ヨーク133は、固定部12dの数に応じて複数に分割されていればよい。四つの固定部12dを備えるステータ12の場合には、四つの第3界磁ヨーク133を備えた電動機1を構成すればよい。さらに、固定部12dを境にして周方向に分割された第3界磁ヨーク133を備える電動機1では、固定部12dと軸方向に対向する位置に第3界磁ヨーク133が配置されていないことになる。そのため、固定部12dに設けられた締結孔12eは、第3界磁ヨーク133よりも径方向外側に設けられなくてもよい。これは、締結孔12eにボルト8を挿通する際、第3界磁ヨーク133が妨げとはならないためである。例えば、締結孔12eは、第3界磁ヨーク133が配置された径方向位置と重なる径方向位置に設けられてもよい。すなわち、締結孔12eは、少なくとも一部が第3界磁ヨーク133よりも径方向外側に配置されてもよい。
また、第3界磁ヨーク133を固定する部分は、固定部12dに限らず、ステータコア12aであってもよい。例えば、ステータコア12aの軸方向端面側から、第3界磁ヨーク133とステータコア12aとを溶接してもよい。この場合、第3界磁ヨーク133を固定部12dに接触させなくてもよい。そのため、第3界磁ヨーク133は、ステータコア12aに溶接された場合、周方向端部133cは固定部12dに接触しない位置に配置されてもよい。すなわち、固定部12d同士の間で、ステータコア12aの外周面を周方向全域に亘って第3界磁ヨーク133で覆わなくてもよい。
また、固定部12dが第3界磁ヨーク133よりも径方向外側に突出した構造であればよいので、固定部12dの一部に第3界磁ヨーク133の一部が配置された構造であってもよい。例えば、固定部12dがステータコア12aの外周面から緩やかに径方向外側に突出する構造となる場合、この固定部12dのうち突出し始めの部分には第3界磁ヨーク133が配置されることになる。
また、電動機1は、ステータコア12aの外周側に第3界磁ヨーク133を備える構成であればよく、必ずしも上述した実施形態の構造に限定されない。
例えば、ロータ11は、永久磁石11bを有するものに限定されない。具体的には、ロータ11は、永久磁石11bを有さず、突極構造に構成されたロータコア11aを有するものであってもよい。つまり、電動機1は、突極構造のロータ11と突極構造のステータ12とを備えるリラクタンスモータであってもよい。
また、第3界磁ヨーク133の厚さと外側円筒部131cおよび外側円筒部132cの厚さとの関係は、特に限定されない。例えば、第3界磁ヨーク133の厚さは、外側円筒部131cの厚さおよび外側円筒部132cの厚さと同じ厚さであってもよく、あるいは異なる厚さであってもよい。さらに、外側円筒部131cの厚さと外側円筒部132cの厚さの関係も、特に限定されない。つまり、外側円筒部131cは、外側円筒部132cと同じ厚さであってもよく、あるいは異なる厚さであってもよい。
また、第3界磁ヨーク133は、軸方向端部133a,133bがステータコア12aよりも軸方向外側に突出した構造であってもよい。つまり、第3界磁ヨーク133は、軸方向の両側において、第1界磁ヨーク131および第2界磁ヨーク132と接触していればよいので、必ずしもステータコア12aと同じ軸方向長さでなくてもよい。
また、第1界磁ヨーク131および第2界磁ヨーク132は、第3界磁ヨーク133と接触していればよいので、外側円筒部131c,132cを有さない構造であってもよい。例えば、第1界磁ヨーク131の円板部131aが、ステータコア12aよりも軸方向一方側に突出した軸方向端部133aと軸方向に接触する。同様に、第2界磁ヨーク132の円板部132aが、ステータコア12aよりも軸方向他方側に突出した軸方向端部133bと軸方向に接触する。
また、第3界磁ヨーク133は、周方向に複数の部材に分割された構造に限らず、1つの部材から構成されてもよい。例えば、第3界磁ヨーク133は一枚のシート状の磁性体から構成されてもよい。この変形例の第3界磁ヨーク133について、図7〜図9に構造を例示した。
図7は、変形例の第3界磁ヨークを説明するための図である。図8は、変形例の第3界磁ヨークが円筒状に構成される前の状態を示す模式図である。図9は、変形例の第3界磁ヨークを備えた電動機を模式的に示す断面図である。
図7および図8に示すように、変形例の第3界磁ヨーク133は、一枚のシート状の磁性体から構成されている。この第3界磁ヨーク133は、固定部12dに対応する位置に形成された貫通孔133dと、周方向の突き合わせ部となる周方向端部133eとを有する。貫通孔133dは、第3界磁ヨーク133の厚さ方向、すなわちステータコア12aの径方向に貫通している。この貫通孔133dは、ステータ12に取り付けられた際に、固定部12dが径方向外側に貫通するための孔である。周方向端部133eは、第3界磁ヨーク133の周方向両側の端部同士を突き合わせて接合される部位である。
具体的には、図8に示すように平板状の状態の第3界磁ヨーク133は、ステータコア12aの外周側に配置される際、図7に示すように円筒状に丸められることが可能である。この際、周方向端部133e同士を周方向に突き合わせた状態で溶接によって接合する。さらに、貫通孔133dを形成している部位を、固定部12dに固定する。つまり、貫通孔133dを縁取っている磁性体の部分を、軸方向に沿って固定部12dに溶接することができる。
図9に示すように、この変形例では、ステータ12の固定部12dは、第3界磁ヨーク133の貫通孔133dを通じて径方向外側に突出している。この場合、第3界磁ヨーク133の軸方向端部133aは、軸方向一方側において、ステータコア12aおよび固定部12dよりも軸方向外側に突出した位置で第1界磁ヨーク131の外側円筒部131cと接触している。同様に、第3界磁ヨーク133の軸方向端部133bは、軸方向他方側において、ステータコア12aおよび固定部12dよりも軸方向外側に突出した位置で第2界磁ヨーク132の外側円筒部132cと接触している。例えば、変形例の第3界磁ヨーク133は、上述した実施形態の第3界磁ヨーク133と同じ材料により構成される。このように、変形例の第3界磁ヨーク133を備える電動機1によれば、第3界磁ヨーク133を一つの部材により構成することができる。これにより、電動機1の部品点数を削減できるとともに、製造性が向上する。
なお、上述した図7〜図9に例示した第3界磁ヨーク133は、固定部12dと軸方向に対向する部分が、ステータコア12aに密着して配置された部分と比べて、厚さが薄く形成されてもよい。つまり、ボルト8を締結孔12eに挿通する際に、固定部12dと軸方向に対向する部分となる第3界磁ヨーク133が、ボルト8の妨げとならないようにするために、相対的に薄くしてもよい。あるいは、上述した図7〜図9に例示した第3界磁ヨーク133について、固定部12dと軸方向に対向する部分を削除した構造であってもよい。