JP2021057216A - リチウムイオン二次電池に用いられる負極活物質粉体、負極、及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
Description
近年、このような携帯型電子機器や車載用のリチウムイオン二次電池として小型化・軽量化が求められ、単位質量あたりの放電容量、サイクル特性、電池としての安定性等の更なる性能向上が望まれている。
また、特許文献2には、炭素材料からなる第1負極活物質、及び炭素材料からなり、かつ前記第1負極活物質とは異なる、非晶質炭素材料を含む第2負極活物質を含有し、特定の特性を有する負極活物質層を用いることにより、低抵抗かつ高負荷時の充放電サイクル特性、及び高温保存耐久性に優れ、かつセル組立時の負極活物質の欠落が抑制された負極が得られることが開示されている。
[1] Si、SiOx(但し0<x<2)、Sn、及びSnOy(但し0<y≦2)からなる群より選ばれる少なくとも1種の単粒子を活物質として含み、リチウムイオン二次電池に用いられる負極活物質粉体であって、前記単粒子より形成される二次粒子表面にフッ素化された層を有する、負極活物質粉体。
[2] フッ素含有量の合計が0.1〜20質量%である、前記[1]に記載の負極活物質粉体。
[3] 表面に前記フッ素化された層を有する二次粒子の平均粒径が0.1〜10μmである前記[1]又は[2]に記載の負極活物質粉体。
[4] 前記フッ素化された層の厚みが1〜50nmである、前記[1]〜[3]のいずれか1に記載の負極活物質粉体。
[5] 前記フッ素化された層が、フッ素化されたカーボンの粒子からなり、前記フッ素化された層における前記カーボンの含有量が50〜99質量%である、前記[1]〜[4]のいずれか1に記載の負極活物質粉体。
[6] 表面に前記フッ素化された層を有する二次粒子において、粒子表面のフッ素含有量が、粒子内部のフッ素含有量よりも多い、前記[1]〜[5]のいずれか1に記載の負極活物質粉体。
[7] 前記[1]〜[6]のいずれか1に記載の負極活物質粉体及び導電助剤を含み、リチウムイオン二次電池に用いられる負極。
[8] 前記[7]に記載の負極と、電解液又は固体電解質と、正極と、を含む、リチウムイオン二次電池。
本実施形態に係る負極活物質粉体は、リチウムイオン二次電池に用いられる。Si、SiOx(但し0<x<2)、Sn、及びSnOy(但し0<y≦2)からなる群より選ばれる少なくとも1種の単粒子を活物質として含み、前記単粒子より形成される二次粒子表面にフッ素化された層を有する。
また、これらのうち1種以上を、他の負極活物質と共に用いてもよく、複合材料として用いてもよい。他の負極活物質としては、例えば黒鉛、酸化鉄、酸化ルテニウム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化チタン、酸化スズ等の酸化物、その他の窒化物等が挙げられる。
初期不可逆容量の低下については、フッ素化された層により、SEIの形成が有効に抑制されるためであると推測される。この詳細については明らかではないが、以下に推測される理由を述べる。
この理由も明らかではないが、固体電解質の場合には、電解液の場合と同様に、負極活物質|固体電解質界面にはSEIかそれに類する何らかの被膜が形成されており、その被膜形成を有効に抑制できる可能性が考えられる。また、活物質である二次粒子表面にフッ素化された層が形成されることにより、二次粒子表面が安定化されつつ、電気陰性度の大きなフッ素の存在に伴って二次粒子表面は分極し、Liカチオンとの相互作用により、負極活物質|電解質界面における界面抵抗が小さくなることで、良好なLiイオン伝導経路が形成される可能性も考えられる。
なお、フッ素含有量は、燃焼法による元素分析の結果から求められる。
フッ素化された層が、二次粒子表面をフッ素化された別の粒子により覆うことで形成された層である場合、フッ素化された層の厚みは、本発明の効果がより得られる点から0.1μm以上が好ましく、また、1μm以下が好ましい。
なお、フッ素化された層の厚みはX線光電子分光法や二次粒子断面からの元素マッピングなどの分析により求められる。
なお、表面にフッ素化された層を有する二次粒子の平均粒径とは、フッ素化された層の厚みを含み、粒径分布測定装置により求められる。通常、D50平均粒径(メジアン径:頻度の累積が50%になる粒子径)を採用される。
具体的には、負極活物質を水中に超音波処理によって充分に分散させ、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置にて二次粒子の測定を行う。頻度分布および累積体積分布曲線を得ることで体積基準の粒度分布を得、累積体積分布曲線において50%となる点の粒子径をD50平均粒径と定義する。
二次粒子における表面と内部のフッ素含有量の差は、元素分析による二次粒子全体におけるフッ素含有量と、X線光電子分析による二次粒子表面から粒子内部までの深さ方向におけるフッ素含有プロファイルにより、凡そ見積もることができる。
フッ素化可能な気体とは、フッ素元素を含む気体であり、フッ素ガス(F2ガス)、フッ化水素ガス(HFガス)、BF3ガス、NF3ガス、PF5ガス、SiF4ガス、SF6ガス等が挙げられる。これらフッ素元素を含む気体は単独で用いても、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスとの混合ガスを用いてもよい。
フッ素元素を含む気体との接触は、加圧しながら行ってもよく、その圧力は、安全性を高める観点及び過剰なフッ素化を抑制する観点から、0.6MPa(ゲージ圧)以下が好ましく、0.3MPa以下がより好ましい。
流通式の場合は、反応容器内に二次粒子を静置した状態で入れ、所定の濃度のフッ素を含む気体を開放型の反応容器内に連続的に供給して、二次粒子とフッ素を含む気体とを接触させる方法が好ましい。
バッチ式の場合は、所定の濃度とされたフッ素元素を含む気体雰囲気の密閉された反応容器内に二次粒子を収容して、二次粒子とフッ素元素を含む気体とを接触させる方法が好ましい。
バッチ式で行う場合、二次粒子に対して均一にフッ素元素を含む気体を接触させるために、二次粒子を撹拌混合しながら行うことも可能である。
具体的には、二次粒子の表面を、フッ素化されたカーボン粒子で覆う層、フッ素化された酸化物粒子で覆う層等が挙げられる。中でもフッ素化されたカーボンの粒子で覆う層であることが高電位における安定性や大きな比表面積をもったカーボン粒子を用いることでフッ素濃度を高めることも可能となり、フッ素化による効果を十分に得ることができるので好ましい。
粒子状のカーボンとしては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック、活性炭、黒鉛、C60、C70、C84等のフラーレン類、ダイヤモンド等が挙げられる。
繊維状のカーボンとしては、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ等が挙げられる。
かかるフッ素とカーボンの含有量は、燃焼法による元素分析により求められる。
ガス状フッ化物を用いる場合には、フッ素化処理を制御し易くするためN2等の不活性ガスで希釈して用いてもよい。
混合方法は、乾式法又は湿式法が挙げられる。乾式法は、分散媒を用いずに混合する方式であるが、混合後の乾燥が不要であること、及び、湿式法に必要な分散液の調製が不要であること等の理由から、乾式法が簡便であり好ましい。
本実施形態に係る負極は、上記負極活物質粉体及び導電助剤を含み、リチウムイオン二次電池に用いられる。また、必要に応じでバインダーを含んでいてもよい。
具体的には、集電体上に、負極活物質粉体及び導電助剤の混合物が形成されたものであり、媒体に溶解又は分散させてスラリー状にした混合物を、前記集電体上に塗布、乾燥し、必要であればプレスすることにより圧密化し負極が得られる。
導電助剤も特に限定されず、従来公知の物が用いられ、例えばアセチレンブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラックや活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー等が挙げられる。
バインダーも特に限定されず、従来公知の物が用いられ、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)、スチレンブタジエンラバー(SBR)等が挙げられる。
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、上記負極、電解質及び正極を含むものである。電解質が液体である場合には、負極と正極を隔てる隔膜として機能し短絡を防止するためにセパレータを用いる。このセパレータとしては、多孔膜などが挙げられる。
電解質、正極、セパレータは従来公知の物が用いられる。以下に具体例を示すが、これらになんら限定されるものではない。
水系電解液は、二成分高濃度電解質を用いた水系電解液や、イオン液体を用いた水系電解液が挙げられる。
該高分子化合物としては、酸化還元反応に対する安定性の点から、フッ素系高分子化合物が好ましい。
無機固体電解質としては、窒化リチウム、ヨウ化リチウム等が挙げられる。
得られた負極活物質粉体又はリチウムイオン二次電池における各特性の評価方法を下記に示す。
(フッ素化処理)
内容積0.3Lのハステロイ製反応器内にSiO粉体(豊島製作所製、純度3N)を6.5639gを入れて、F2ガスを20体積%含むN2ガスを用いて、室温で2時間SiO粉体のフッ素化処理を行うことで、表面にフッ素化された層を有するSiO粉体(二次粒子)を得た。自動試料燃焼装置(三菱ケミカルアナリテック(ダイヤインスツルメンツ)製、AQF−100)とイオンクロマトグラフィー(ダイオネクス製、DX120)とを用いて、フッ素含有量を定量分析したところ、フッ素化された層を有するSiO粉体中のフッ素含有量の合計は0.45質量%であり、二次粒子表面のフッ素含有量は、二次粒子内部のフッ素含有量よりも多かった。なお、表面にフッ素化された層を有する二次粒子の平均粒径は1μmであった。
上記で得られた表面にフッ素化された層を有するSiO粉末を負極活物質として用いて以下の手順により負極形成用スラリーを調製した。
室温で表面にフッ素化された層を有するSiO粉体を1.9993g秤量し、ここにアセチレンブラックを0.1133gを加え、自転・公転回転ミキサー(THINKY社製、あわとり練太郎、ARE−310)を用いて、2000rpm、2分間粉体混合した。次に、増粘剤であるCMC(カルボキシメチルセルロース)水溶液2.4664gと水2.0104を加え、2000rpmで10分間混合した。
バインダーとして、アフラスCS150(AGC社製)0.2023gを加え、500rpm、10秒間混合し負極形成用スラリーを調製した。
次に、以下の手順により負極シートを作製した。
上記で調製された負極形成用スラリーを厚さ30μmの銅箔上にドクターブレードにより塗工ギャプ120μm設定で塗工した。次に80℃に設定したホットプレート上に置いて、10分間乾燥した。更に、100℃、10分間オーブンの中で乾燥した。このようにして乾燥し得られた負極シートを圧延ローラーで圧密化し、厚さ46μm、密度1.40g/cm3からなる負極シートを作製した。
上記手順で負極シートを作製した後、負極シートを打ち抜いた。セパレータとして厚さ25μmの多孔質ポリプロピレンを用い、更に電解液には、濃度1mol/dm3のLiPF6/EC(エチレンカーボネート)+DEC(ジエチルカーボネート)(1:1)溶液(LiPF6を溶質とするECとDECとの体積比(EC:DEC=1:1)の混合溶液を意味する。)を用いた。
アルゴンガスグローブボックス内でステンレス製簡易密閉セルに銅箔上に塗工した負極シート、セパレータ、電解液を入れ、対極として厚さ500μmの金属リチウム箔を入れ、リチウムイオン電池用評価セルを組み立てた。
上記で得られたリチウムイオン二次電池用評価セルを用いて、以下の充放電特性評価を実施した。
C−レート0.05C(電流0.4339mA)で電圧0.05Vまで定電流充電した。また、充電完了後に同じC−レート0.05C(電流0.4339mA)で電圧1.5Vまで定電流放電した。充放電容量特性として、1サイクル目の充電容量と放電容量を求め、その充電容量に対する放電容量の比を初期不可逆容量として算出した。また、充放電電圧特性として、100mAh/g時における充電電圧と放電電圧をそれぞれ求めた。
カーボンとして比表面積1270m2/gのケッチェンブラックEC−600JD(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製)に対し、例1と同様の手法によりフッ素化処理を行うことで、フッ素化カーボンを作製した。元素分析法によりフッ素含有量を定量分析したところ、フッ素化カーボンにおけるフッ素含有量は40質量%であり、カーボン含有量は60質量%であった。
得られたフッ素化カーボンを0.04g、実施例1で使用したものと同一のSiO粉体2.0gを、自転・公転回転ミキサー(THINKY社製、あわとり練太郎、ARE−310)を用いて、2000rpm、2分間粉体混合して、SiO粉体の表面上にフッ素化カーボンを付着コートさせることで、フッ素化された層を有するSiO粉体(二次粒子)を得た。ここで、フッ素化カーボンの付着コートを実施する前後におけるSiO粉体の走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製、S−4300)による表面観察から、付着コートにより、SiO粉体の表面にフッ素化カーボンによるフッ素化された層が形成されていることを確認した。
フッ素化された層を有するSiO粉体中のフッ素含有量の合計は0.55質量%であり、二次粒子表面のフッ素含有量は、二次粒子内部のフッ素含有量よりも多かった。なお、表面にフッ素化された層を有する二次粒子の平均粒径は1.5μmであった。
次いで例1と同様にして負極形成用スラリーを調製し、負極シートを作製した後、リチウムイオン二次電池用評価セルを組むことで、電池特性の評価を行った。
例1で使用したSiO粉体をそのままの形で用い、例1と同様にして負極形成用スラリーを調製し、負極シートを作製した後、リチウムイオン二次電池用評価セルを組むことで、電池特性の評価を行った。
Si粉体(豊島製作所製、純度3N、平均粒径5μm)をそのままの形で用い、例1と同様にして負極形成用スラリーを調製し、負極シートを作製した後、リチウムイオン二次電池用評価セルを組むことで、電池特性の評価を行った。
また、例2のフッ素化カーボンコートによりフッ素化された層を有するSiO粉体においては、初期不可逆容量は、例3と同程度であった。しかしながら、充電容量が100mAh/gの時の充電電圧が0.26Vであり、例3のSiO粉体(0.17V)と比較して高かった。これより、二次粒子表面におけるLiイオン伝導経路が形成されたことにより、充電時における電圧低下が小さくなったものと推察される。
Claims (8)
- Si、SiOx(但し0<x<2)、Sn、及びSnOy(但し0<y≦2)からなる群より選ばれる少なくとも1種の単粒子を活物質として含み、リチウムイオン二次電池に用いられる負極活物質粉体であって、
前記単粒子より形成される二次粒子表面にフッ素化された層を有する、負極活物質粉体。 - フッ素含有量の合計が0.1〜20質量%である、請求項1に記載の負極活物質粉体。
- 表面に前記フッ素化された層を有する二次粒子の平均粒径が0.1〜10μmである請求項1又は2に記載の負極活物質粉体。
- 前記フッ素化された層の厚みが1〜50nmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の負極活物質粉体。
- 前記フッ素化された層が、フッ素化されたカーボンの粒子からなり、
前記フッ素化された層における前記カーボンの含有量が50〜99質量%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の負極活物質粉体。 - 表面に前記フッ素化された層を有する二次粒子において、粒子表面のフッ素含有量が、粒子内部のフッ素含有量よりも多い、請求項1〜5のいずれか1項に記載の負極活物質粉体。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の負極活物質粉体及び導電助剤を含み、リチウムイオン二次電池に用いられる負極。
- 請求項7に記載の負極と、電解液又は固体電解質と、正極と、を含む、リチウムイオン二次電池。
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