JP7384071B2 - リチウムイオン二次電池に用いられる正極層及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents

リチウムイオン二次電池に用いられる正極層及びリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Description

本発明はリチウムイオン二次電池に用いられる正極層及びリチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池は、携帯電話やノート型パソコン等の携帯型電子機器や自動車等に広く用いられている。
近年、このような携帯型電子機器や車載用のリチウムイオン二次電池として小型化・軽量化が求められ、単位質量あたりの放電容量、サイクル特性、レート特性、及び電池としての安定性等の更なる性能向上が望まれている。
従来、リチウムイオン二次電池においては液体の電解質が使用されてきたが、安全性の向上や高速充放電が期待できる点から、固体電解質をリチウムイオン二次電池の電解質として用いる全固体型リチウムイオン二次電池が注目されている。
全固体型リチウムイオン二次電池用の正極層としては、例えば正極活物質、固体電解質及び導電助剤等を含有し、シート状等に加工された正極層を使用できる。
例えば、特許文献1においては、少なくとも正極活物質を含有する層であり、必要に応じて、固体電解質材料、導電化材および結着材の少なくとも一つを含有する正極層について記載されている。
特開2016-207577号公報
しかしながら、このような正極層を用いた全固体型リチウムイオン二次電池においては、液体の電解質を用いる場合に比べ、正極層中の粒子同士の界面における抵抗により、リチウムイオン伝導が抑制されやすいという課題がある。これは、正極層中の粒子間に浸透する液体電解質を用いる場合と比較して、正極層が含有する粒子同士の接触界面が小さくなりやすいためと考えられる。このような粒子同士の界面の抵抗により、正極層のリチウムイオン伝導度が低下し、リチウムイオン二次電池の特性を低下させてしまうという問題がある。
そこで本発明は、電池特性が向上するリチウムイオン二次電池用の正極層を提供することを目的とする。具体的には、正極層中の粒子同士のリチウムイオンの伝導経路を確保し、リチウムイオン伝導性を向上することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、正極層が、表面がフッ素化された正極活物質粒子又は表面がフッ素化された固体電解質粒子を含むことにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記[1]~[6]に関するものである。
[1]正極活物質粒子、固体電解質粒子、及び導電助剤を含む正極層であって、
前記正極活物質粒子および前記固体電解質粒子の少なくとも一方が表面にフッ素化された層を有する、
リチウムイオン二次電池用正極層。
[2]前記固体電解質粒子が表面にフッ素化された層を有し、前記フッ素化された層の最表面におけるフッ素の含有量が95質量%以上である、[1]に記載のリチウムイオン二次電池用正極層。
[3]前記固体電解質粒子が、硫化物系固体電解質粒子及び酸化物系固体電解質粒子の少なくとも一方を含む、[1]または[2]に記載のリチウムイオン二次電池用正極層。
[4]前記固体電解質粒子の平均粒径が0.01~30μmである、[1]~[3]のいずれか1に記載のリチウムイオン二次電池用正極層。
[5]前記正極活物質粒子が表面にフッ素化された層を有し、前記正極活物質粒子における前記フッ素化された層がフッ素化されたカーボン粒子からなる、[1]~[4]のいずれか1に記載のリチウムイオン二次電池用正極層。
[6][1]~[5]のいずれか1に記載の正極層を含む正極と、固体電解質層と、負極と、を含む、リチウムイオン二次電池。
本発明に係る正極層によれば、当該正極層に含まれる正極活物質粒子および固体電解質粒子の少なくとも一方の表面がフッ素化されていることにより、正極層のイオン伝導性を向上でき、リチウムイオン二次電池における電池特性を向上できる。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施できる。また、数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
<正極層>
本実施形態に係る正極層は、リチウムイオン二次電池に用いられる。本実施形態に係る正極層は正極活物質粒子、固体電解質粒子、及び導電助剤を含み、正極活物質粒子および固体電解質粒子の少なくとも一方が表面にフッ素化された層を有する。
(正極活物質粒子)
正極活物質粒子は、リチウムイオンの吸蔵及び放出、言い換えるとリチウムイオンの脱離及び挿入(インターカレーション)、又は、該リチウムイオンとそのカウンターアニオン(例えば、PF6-)のドープ及び脱ドープを可逆的に進行できる正極活物質を含む粒子であればよい。正極活物質としては特に限定されず、公知の正極活物質を使用できる。
正極活物質としては、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMnO)、ニッケルマンガン酸リチウム、Li(NiCoMn)O(x+y+z+a=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、0≦a≦1であり、MはAl、Mg、Nb、Ti、Cu、Zn、Crから選択される少なくとも一種)で表される複合金属酸化物、Li(PO(1≦a≦4、1≦b≦2、1≦c≦3であり、MはFe、V、Co、Mn、Ni、VOから選択される少なくとも一種)で表されるポリアニオンオリビン型正極、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、及びポリアセン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
正極活物質粒子の平均粒径は、正極層中におけるリチウムイオン伝導性と電子伝導性を確保する観点から0.01μm以上が好ましく、0.02μm以上がより好ましく、0.05μm以上がさらに好ましい。また、正極活物質粒子の平均粒径は正極層中の形成しやすさの観点から30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。
正極活物質粒子の平均粒径は、例えば、粒径分布測定装置により求められる。なお、後述するように正極活物質粒子がフッ素化された層を有する場合は、フッ素化された層の厚みも含む径を粒径として測定する。粒子の平均粒径としては、通常、D50平均粒径(メジアン径:頻度の累積が50%になる粒子径)を採用できる。
具体的には、粒子を水中または有機溶剤中に超音波処理によって充分に分散させ、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置にて粒子の測定を行う。頻度分布および累積体積分布曲線を得ることで体積基準の粒度分布を得、累積体積分布曲線において50%となる点の粒子径をD50平均粒径と定義する。
また、正極層を形成した後に、正極層を割断しその断面におけるSEM観察から、正極活物質の粒径を測定することもできる。
本実施形態に係る正極層において、正極活物質粒子の含有量は、充放電容量を高める観点から50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。また、正極活物質粒子の含有量は、正極層におけるリチウムイオン伝導性、電子伝導性確保の観点から99質量%以下が好ましく、97質量%以下がより好ましく、95質量%以下がさらに好ましい。
本実施形態に係る正極層において、正極活物質粒子の含有量は、例えば、正極層形成前の正極層形成のスラリー調製時の正極活物質配合比率により測定できる。具体的には、正極活物質粒子の重量測定を行う。また、正極層形成後における正極活物質粒子の含有量については、正極層を割断し、その断面からSEM/EDX分析で元素分析を行うことで一定の定量性をもって正極活物質粒子の含有量を測定できる。
(固体電解質粒子)
本実施形態に係る正極層は固体電解質粒子を含む。本実施形態に係る正極層を用いたリチウムイオン二次電池において、正極活物質粒子が吸蔵及び放出するリチウムイオンは、正極層が含む固体電解質粒子を介して正極層中および正極層と固体電解質層との間を移動できる。
固体電解質粒子は、リチウムイオン伝導性を有する固体電解質を含む粒子であれば特に限定されず、公知の固体電解質を使用できる。固体電解質としては、例えば、硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質、窒化リチウム、及びヨウ化リチウム等の無機固体電解質等が挙げられる。これらの固体電解質は単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。なかでも、リチウムイオン伝導性の観点から、リチウムイオン伝導性に優れる硫化物系固体電解質及び酸化物系固体電解質の少なくとも一方を好ましく使用できる。
硫化物系固体電解質は、硫化物系であれば特に限定されず、硫黄(S)を含有し、かつリチウムイオン伝導性を有するものを好適に使用できる。硫化物系固体電解質としては、例えば、LiS-SiS系固体電解質が挙げられる。LiS-SiS系固体電解質は一般に、10-4S/cmオーダーのリチウムイオン伝導率を有する。硫化物系固体電解質としては、他にもP-LiS系、B-LiS系、B-LiS系、GeS-LiS系などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
酸化物系固体電解質は、酸化物系であれば特に限定されず、酸素(O)を含有し、かつリチウムイオン伝導性を有するものを好適に使用できる。例えば、リチウムを含むペロブスカイト型酸化物、リチウムを含むガーネット型酸化物、リン酸リチウム(LiPO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、NASICON構造のLAGP(Li1+xAlGe2-x(PO(0≦x≦1))、NASICON構造のLATP(Li1+xAlTi2-x(PO(0≦x≦1))、NASICON構造のLZP(Li1+4xZr2-x(PO(0≦x≦0.4、LZPの一部の金属元素が別の金属元素で置き換わっていてもよく、別の金属元素をドーピングしていてもよい。別の金属元素としては、Na、Sr、Ca、Mg、La、Y、Sc、Ce、In、Al、Ge、Ti、Vなどが挙げられる。)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
リチウムを含むペロブスカイト型酸化物は、ペロブスカイト型結晶構造を持つABOで表される酸化物であり、Aサイトが、La、Sr、Ba、Na、Ca及びNdよりなる群から選択される少なくとも1種の元素と、Liを含み、Bサイトが、Ti、Ta、Cr、Fe、Co、Ga及びNbよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含むことが好ましい。具体的には、ペロブスカイト型酸化物として、チタン酸リチウムランタンLi3xLa2/3-xTiO(0≦x≦1/6、LLTOとも呼ばれる)、ニオブ酸リチウムランタン(LiLa(1-x)/3NbO)(0≦x≦1)、等が挙げられる。なお、チタン酸リチウムランタンを構成する元素の一部が別の元素に置き換わっていてもよく、別の元素をドーピングしていてもよい。別の元素としては、Na、K、Rb、Ag、Tl、Mg、Sr、Ca、Ba、Nb、Ta、W、Ru、Cr、Mn、Fe、Co、Al、Ga、Si、Ge、Zr、Hf、Pr、Nd、Sm、Gd、Dy、Y、Eu、Tb等が挙げられ、具体的には、La(2/3)-xSrLiTiO、LiLa2/3Ti1-xAl等が挙げられる。
ガーネット型酸化物としては、例えば、LiLaZr12、LiLaNb12、LiLaTa12、及びLiLaBaTa12等が挙げられる。
なお、酸化物系固体電解質は結晶材料に限定されず、アモルファスの材料であってもよい。例えば、酸化物系固体電解質はアモルファス材料としてLiSiO、LiPO、LiBO、SiO、B等と複合化されていてもよい。
固体電解質粒子の平均粒径は、0.01μm以上が好ましく、0.02μm以上がより好ましく、0.03μm以上がさらに好ましい。また、固体電解質粒子の平均粒径は30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。固体電解質粒子の平均粒径が上記範囲であると、固体電解質粒子の粒径が正極活物質粒子の粒径に対して適度に小さいため、固体電解質粒子が正極活物質粒子の周囲をより密着して覆いやすくなる。これにより、正極活物質粒子の周囲において、正極活物質粒子と固体電解質粒子との間のリチウムイオン伝導経路を確保しやすくなる。固体電解質粒子の平均粒径は、上述した正極活物質粒子の場合と同様の方法で測定できる。
本実施形態に係る正極層において、固体電解質粒子の含有量は、正極層にリチウムイオン伝導性を付与し優れた充放電容量を得るため、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましい。また、固体電解質粒子の含有量は、正極層において正極活物質を多く用いて高容量とするため30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。固体電解質粒子の含有量は、上述した正極活物質粒子の場合と同様の方法で測定できる。
(フッ素化された層)
本実施形態に係る正極層は、正極活物質粒子および固体電解質粒子の少なくとも一方が表面にフッ素化された層を有する。ここで、上記少なくとも一方の粒子について、正極層中の該粒子の全てがフッ素化された層を有してもよいし、フッ素化された層を有しない粒子が含まれていてもよい。また、正極活物質粒子および固体電解質粒子の両方が、表面にフッ素化された層を有していてもよい。
正極層に含まれる正極活物質粒子および固体電解質粒子の少なくとも一方の表面がフッ素化されていることにより、これらの粒子同士の界面の抵抗(以下、粒界抵抗ともいう)を低減できる。その結果、正極層が含む粒子同士の界面におけるリチウムイオンの伝導経路を確保でき、正極層のリチウムイオン伝導性を向上できる。
正極活物質粒子および固体電解質粒子の少なくとも一方の表面がフッ素化されていることにより、粒界抵抗を低減できる理由については明らかではないが、以下のように推測される。
すなわち、かかる粒子の表面がフッ素化されることにより、粒子表面は低融点化される。これらの粒子を含む材料に対して熱処理を行い、シート状の正極層を形成する際に、フッ素化された層を有する粒子の表面が容易に溶解することで、フッ素化された層を有する粒子と、それと隣り合う粒子との粒子界面において、粒子同士の密着性が良好となる。その結果、正極層中の粒子同士の粒界抵抗が低減されリチウムイオン伝導性が向上するものと推察される。
あるいは、フッ素化により粒子表面が安定化されつつ、電気陰性度の大きなフッ素の存在に伴って粒子表面が分極し、リチウムイオンとの相互作用により、フッ素化された層を有する粒子と周囲の粒子との界面における粒界抵抗が小さくなる。これにより、良好なリチウムイオン伝導経路が形成される可能性も考えられる。
また、正極活物質粒子の表面においては、正極活物質を構成する酸素原子が欠け、格子欠陥が生じている場合がある。このとき、フッ素化された層が含有するフッ素原子により格子欠陥が埋められると、正極活物質のリチウムイオンに対する拘束力が弱まり、リチウムイオンが移動しやすくなることも考えられる。
さらに、正極活物質粒子の表面においては、上記格子欠陥がフッ化物イオンにより埋められることで、正極活物質が含有する遷移金属元素が格子欠陥を介して拡散してしまうことも抑制できる。遷移金属元素の拡散を抑制することにより、リチウムイオン二次電池が充放電を繰り返した場合においても電池特性が低下しにくくなる。
また、正極活物質粒子および固体電解質粒子の少なくとも一方の表面がフッ素化されていることにより、粒子および該粒子を含む正極層の加水分解耐性も向上する。この理由は、フッ素化により粒子表面が安定化されるためと考えられる。これにより、かかる粒子や該粒子を含む正極層が空気中の水分等と反応してしまうことを抑制でき、粒子そのものや正極層のハンドリング性が向上する。
正極活物質粒子および固体電解質粒子の形状は、一次粒子であってもよいし、一次粒子が凝集してなる二次粒子であってもよいし、または一次粒子及び二次粒子の組み合わせであってもよい。粒子形状が一次粒子である場合は、その一次粒子の表面がフッ素化されていてもよく、粒子形状が二次粒子である場合は、一次粒子が凝集して形成される二次粒子の表面がフッ素化されていてもよい。本実施形態に係る正極層は、二次粒子の表面がフッ素化された正極活物質粒子または固体電解質粒子を含むことが、本発明の効果の観点から好ましい。
以上のように、正極活物質粒子または固体電解質粒子の少なくとも一方が表面にフッ素化された層を有することにより、正極層中におけるリチウムイオンの伝導経路の形成によるリチウムイオン伝導性の向上が図られる。これにより、リチウムイオン二次電池の電池特性が改善されて良好なものとなる。
正極活物質粒子または固体電解質粒子が表面にフッ素化された層を有する場合、該フッ素化された層は、フッ素化された層の最表面におけるフッ素の含有量が95質量%以上であることが好ましい。最表面のフッ素の含有量が95質量%以上であることにより、粒子表面が高濃度にフッ素化されることになり、リチウムイオン伝導性がより向上しやすくなるため、本発明における所望の効果を得ることができる。最表面のフッ素の含有量は97質量%以上がより好ましく、最表面のフッ素の含有量は98質量%以上がさらに好ましい。
ここで「フッ素化された層の最表面におけるフッ素の含有量」とは、フッ素化された層の表面から2nmの深さにおける粒子構成成分(上述した粒子を構成する成分)を除いたフッ素の含有割合をいう。「粒子構成成分を除く」とは、粒子からフッ素化された層への拡散または移動される粒子構成成分を除く意味である。
フッ素化された層の最表面におけるフッ素の含有量は、以下の方法で測定する。すなわち、透過型電子顕微鏡(TEM)による元素マッピング、またはESCA(X線光電子分光法)による粒子表面から粒内方向への深度元素プロファイル分析により、フッ素化された層の表面から2nmの深さにおける、粒子構成成分を除いたフッ素の含有割合を測定する。
なお、フッ素化された層が後述するフッ化水素ガス(HFガス)により形成される場合は、フッ素化された層の最表面に微量の水素が存在することになる。このとき、フッ素化された層の最表面における水素の含有量は0.1~5質量%であることが好ましく、0.1~3質量%であることがより好ましい。上記範囲であることによって、フッ素化された層の最表面における微量の水素による影響を最小限に抑えられる。
フッ素化された層の最表面の水素の含有量は、上記フッ素含有量と同様の方法にて測定できる。
固体電解質粒子または正極活物質粒子が表面にフッ素化された層を有する場合、正極層中の固体電解質粒子全体または正極活物質粒子全体におけるフッ素含有量は、10質量%以下であることが好ましい。フッ素化された層の最表面におけるフッ素の含有量を上述の好ましい範囲としながら、固体電解質粒子全体または正極活物質粒子全体におけるフッ素含有量を10質量%以下とすることにより、粒子内部に存在するフッ素含有量が少なくなり、結晶性の悪化や低イオン伝導性成分の過剰に起因するリチウムイオン伝導性の低下を軽減できる。また、絶縁性であるLiFによる導電性の低下も抑制できる。固体電解質粒子全体または正極活物質粒子全体におけるフッ素含有量は、9質量%以下がより好ましく、8質量%以下がさらに好ましい。また、フッ素含有量の合計は0.1質量%以上であることが、粒子の表面にフッ素化された層を形成する上で好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上がさらに好ましい。
なお、固体電解質粒子全体または正極活物質粒子全体におけるフッ素含有量は、燃焼法による元素分析の結果から求められる。あるいは、かかるフッ素含有量は、フッ素化された固体電解質粒子全体または正極活物質を水中に浸漬し遊離してくるFを、フッ素イオン電極を用いて定量分析することによっても測定できる。
正極活物質粒子表面または固体電解質粒子表面におけるフッ素化された層の厚みは、本発明の効果がより得られる観点から1nm以上が好ましく、1.25nm以上がより好ましく、1.5nm以上がさらに好ましく、2nm以上がよりさらに好ましい。また、フッ素化された層の厚みは、導電性の低下を抑制する点から、50nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましく、10nm以下がさらに好ましい。
特に、フッ素化された層を有する粒子が二次粒子を含む場合において、二次粒子におけるフッ素化された層の厚みは1nm以上が好ましく、1.25nm以上がより好ましく、1.5nm以上がさらに好ましく、2nm以上がよりさらに好ましい。また、フッ素化された層の厚みは、50nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましく、10nm以下がさらに好ましい。
フッ素化された層が、後述する、粒子表面をフッ素化された別の粒子により覆うことで形成された層である場合、フッ素化された層の厚みは、本発明の効果がより得られる点から0.1μm以上が好ましく、また、1μm以下が好ましい。
なお、フッ素化された層の厚みはX線光電子分光法や粒子断面からの元素マッピング等の分析により求められる。
(フッ素化された層の形成方法)
フッ素化された層の形成方法は特に限定されず、フッ素化された層とは、例えば、正極活物質粒子または固体電解質粒子の、粒子そのものの表面がフッ素化された層であってもよい。あるいは、正極活物質粒子または固体電解質粒子の粒子表面をフッ素化された別の粒子により覆うことで形成された層であってもよい。
粒子そのものの表面がフッ素化された層を有する場合、その形成方法としては、例えば、粒子をフッ素化可能な気体と接触させる方法が挙げられる。かかる方法によれば、粒子の表面を選択的に高濃度にフッ素化でき、粒子内部に存在するフッ素含有量の増加を抑制できる。すなわち、粒子内部におけるイオン伝導性の低いLiFの形成を抑制でき、ひいては正極層そのもののイオン伝導性の低下を抑制できる。また、フッ素化された層の形成過程において熱や応力による材料の劣化を防ぐ観点からも、粒子をフッ素化可能な気体と接触させる方法を好ましく適用できる。
粒子をフッ素化可能な気体と接触させる方法の一例を以下に説明する。粒子をフッ素化可能な気体と接触させる方法でフッ素化された層が形成された場合、粒子表面のフッ素含有量は、粒子内部のフッ素含有量よりも多くなる。
フッ素化可能な気体とは、フッ素元素を含む気体であり、フッ素ガス(Fガス)、フッ化水素ガス(HFガス)、BFガス、NFガス、PFガス、SiFガス、SFガス等が挙げられる。これらフッ素元素を含む気体は単独で用いても、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスとの混合ガスを用いてもよい。
これらの中でも、純粋にフッ素のみを反応させるという意味において他の元素を含まないので、フッ素ガス(Fガス)、フッ化水素ガス(HFガス)、またはこれらと不活性ガスとの混合ガスが好ましい。粒子とFガス又はHFガスとの接触によりフッ素化された層が形成された場合、正極活物質中または固体電解質粒子には、フッ素原子または水素原子のみしか含有されないので、かかるガスの接触によりフッ素化された層が形成されたと判断できる。
混合ガスを用いる場合、フッ素元素を含む気体の濃度は、反応の制御のしやすさ及び経済的な観点から、混合ガス全体に対して0.01体積%以上が好ましく、0.1体積%以上がより好ましい。また、フッ素元素を含む気体の濃度は、50体積%以下が好ましく、35体積%以下がより好ましく、20体積%以下がさらに好ましい。
粒子とフッ素元素を含む気体とを接触させる時間は、10秒以上が好ましく、1分以上がより好ましく、また、120分以下が好ましく、10分以下がより好ましい。かかる範囲にすることで、粒子の表面に濃度を制御したフッ素化された層を精度よく形成でき、ひいてはサイクル特性や充放電特性に優れた正極層を形成できる。
粒子とフッ素元素を含む気体とを接触させる温度は、10~150℃の範囲で温度制御しながら行うことが好ましい。粒子表面におけるフッ素濃度を高めたい場合には、温度を上げることで粒子表面とフッ素との反応性が上がり高濃度で所望のフッ素を含む層を形成することもできる。これにより、効率よくフッ素化された層を形成できる。
フッ素元素を含む気体との接触は、加圧しながら行ってもよい。その圧力は、安全性を高める観点及び過剰なフッ素化を抑制する観点から、0.6MPa(ゲージ圧)以下が好ましく、0.3MPa以下がより好ましい。
フッ素元素を含む気体との接触は、流通式又はバッチ式が好ましい。
流通式の場合は、反応容器内に粒子を静置した状態で入れ、所定の濃度のフッ素を含む気体を開放型の反応容器内に連続的に供給して、粒子とフッ素を含む気体とを接触させる方法が好ましい。
バッチ式の場合は、所定の濃度とされたフッ素元素を含む気体雰囲気の密閉された反応容器内に粒子を収容して、粒子とフッ素元素を含む気体とを接触させる方法が好ましい。
流通式で行う場合、粒子に対して均一にフッ素元素を含む気体を接触させる観点から、反応容器として粒子を置き流動させる流動床を備えるものや、管状炉などのキルンを用いることも可能である。流動床を備える場合には、フッ素化する処理時間の短縮化および過剰なフッ素化を抑制し、より均一なフッ素化を実現できるので特に好ましい。
バッチ式で行う場合、粒子に対して均一にフッ素元素を含む気体を接触させるために、粒子を撹拌混合しながら行うことも可能である。
フッ素化された層が、粒子表面をフッ素化された別の粒子により覆うことで形成された層である場合、その形成方法としては、例えば、粒子の表面をフッ素化されたカーボン粒子で覆う方法や、粒子の表面をフッ素化された酸化物粒子で覆う方法等が挙げられる。なかでも、フッ素化されたカーボンの粒子で覆う方法は、高電位における安定性や大きな比表面積をもったカーボン粒子を用いることでフッ素濃度を高めることも可能となり、フッ素化による効果が十分に得られるので好ましい。このような方法でフッ素化された層が形成された場合、粒子表面のフッ素含有量は、粒子内部のフッ素含有量よりも多くなる。
カーボンの粒子は粒子状に限られず、繊維状のカーボンでもよい。いずれの場合にも、カーボンの表面にフッ素が化学吸着もしくは化学結合しているものを作製できる。
粒子状のカーボンとしては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック、活性炭、黒鉛、C60、C70、C84等のフラーレン類、ダイヤモンド等が挙げられる。
繊維状のカーボンとしては、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ等が挙げられる。
上記の中でも、サイクル特性およびエネルギー密度が充分に高くなる点から、粒子状のカーボンが好ましく、高比表面積をもったケッチェンブラック又は活性炭がより好ましい。なお、カーボンは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
フッ素化された層が、粒子表面をフッ素化された別の粒子で覆うことで形成される場合、フッ素化された層の厚みは0.1~1μmが好ましいことから、フッ素化されたカーボンの粒子の粒径も1μm以下が好ましい。
フッ素化された層がフッ素化されたカーボンの粒子から形成される場合、フッ素化された層におけるカーボンの含有量は、正極活物質粒子表面または固体電解質粒子表面を隙間なくコートでき、粒子表面の界面抵抗の増大を抑制する必要性から50質量%以上が好ましい。また、フッ素化における効果を得るために、カーボンの含有量は99質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましい。一方、フッ素化された層におけるフッ素の含有量は1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、また、50質量%以下が好ましい。
フッ素化された層におけるフッ素及びカーボンの含有量は、燃焼法による元素分析により求められる。
粒子の表面をフッ素化された別の粒子によって覆う方法におけるフッ素化された別の粒子が、カーボンである場合、カーボンとフッ素化合物とを混合接触させることにより、フッ素化されたカーボンを製造できる。
フッ素化に用いるフッ素化合物としては、フッ素ガス、フッ化水素ガス、ClF、及びIF等のフッ化ハロゲン、BF、NF、PF、SiF、SF等のガス状フッ化物、LiF、及びNiF等の金属フッ化物等が挙げられる。
これらのうち、取り扱いの容易性および、得られるフッ素化されたカーボンに含まれる不純物を少なくする点から、ガス状フッ化物を使用することが好ましく、F、ClF、及びNFがより好ましく、Fが特に好ましい。
ガス状フッ化物を用いる場合には、フッ素化処理を制御し易くするためN等の不活性ガスで希釈して用いてもよい。
カーボンをフッ素化する際の温度は、-20℃以上が、カーボン表面にフッ素が化学吸着もしくは化学結合の形成を可能とするため好ましい。また、かかる温度は、極度のフッ素化反応を抑制するため、350℃以下が好ましい。
上記で得たフッ素化されたカーボンを粒子と混合することで、フッ素化された層を有する粒子が得られる。
混合方法は、乾式法又は湿式法が挙げられる。乾式法は、分散媒を用いずに混合する方式であるが、混合後の乾燥が不要であること、及び、湿式法に必要な分散液の調製が不要であること等の理由から、乾式法が簡便であり好ましい。
乾式法において混合に用いる機器としては、各種ディスパ、ボールミル、スーパーミキサ、ヘンシェルミキサ、アトマイザ、V型混合機、ペイントシェーカ、コニカルブレンダ、ナウターミキサ、SVミキサ、ドラムミキサ、シェーカーミキサ、プロシェアーミキサ、万能ミキサ、リボン型混合機、リボンミキサ、及びコンテナミキサ等が挙げられる。小スケールで混合を行う場合には、自転・公転ミキサを用いてもよい。
乾式法の混合時間は、生産性の点から1~60分間が好ましく、1~30分間がより好ましい。また、混合温度は20~30℃が好ましい。
(導電助剤)
本実施形態に係る正極層は、導電助剤を含む。正極層が導電助剤を含むことで、リチウムイオン二次電池用として好適な電子伝導性を有する正極層が得られる。導電助剤としては特に限定されず、公知の正極用導電助剤を使用できる。正極用導電助剤としては、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック等の炭素系材料や、銅、ニッケル、ステンレス、鉄等の金属、酸化インジウムスズ(ITO)等の導電性酸化物が挙げられる。導電助剤としては、電子伝導性に優れ、粒径の小さい炭素系材料は、正極層中で細かく分散することにより、電子伝導性を高めることができるため、好ましく使用できる。これら導電助剤は単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態に係る正極層において、導電助剤の含有量は、正極層における伝導性付与の観点から1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましい。また、導電助剤の含有量は正極層中に正極活物質を多く用いて高容量化する観点から20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
(その他添加剤)
本実施形態に係る正極層は、上記成分の他、正極層自体の構造を保持するため、適宜バインダー、を含んでいてもよい。バインダーとしては従来公知のものを使用でき、例えば、ブタジエンゴム(BR)、アクリレートブタジエンゴム(ABR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等を使用できる。
また、正極層は、フッ素化された無機化合物の粒子等を含んでいてもよい。フッ素化された無機化合物の粒子を含むことで、固体電解質粒子の電気化学的な安定性や大気雰囲気下での安定性を向上できる。無機化合物の粒子としては、TiO、SiO、ZrOなどの酸化物粒子やTiN、SiN、ZrNなどの窒化物粒子などが挙げられる。無機化合物をフッ素化する方法としては特に限定されないが、例えば、無機化合物にフッ素含有ガスを接触させる方法や、液相法、固相法等が挙げられる。
(正極層の製造方法)
本実施形態に係る正極層を形成する方法は特に限定されないが、例えば、上記した正極層を構成する成分を溶媒に分散あるいは溶解させてスラリーとし、層状(シート状)に塗工し、乾燥させ、任意にプレスする方法が挙げられる。必要に応じて、熱をかけて脱バインダー処理を行ってもよい。当該スラリーの塗工量等を調整することで、正極層の厚みを容易に調整できる。
なお、上記したような湿式成形ではなく、正極層を形成する対象(正極集電体、固体電解質層等)の表面において、正極層を構成する成分を含む材料等を乾式でプレス成形することによって正極層を形成してもよい。あるいは、他の基材に正極層を形成し、これを、正極層を形成する対象の表面に転写してもよい。正極層を形成する対象の表面に強固な正極層を工業的に安定して形成可能である観点から、溶媒を用いた湿式成形によって、対象の表面に正極層を形成することが好ましい。
正極層の厚みは特に限定されず、目的とする電池の性能に応じて適宜決定すればよい。正極層の厚みは、例えば、高容量化の観点からは、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、30μm以上がさらに好ましい。また、正極層の厚みは、厚み方向におけるリチウムイオン伝導性や電子伝導性を確保する観点から500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましい。
<リチウムイオン二次電池>
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、上述の正極層を含む正極と、固体電解質層と、負極と、を含むものである。固体電解質層及び負極は従来公知の物が用いられる。以下に具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
(正極)
正極は、少なくとも上述の正極層と、正極集電体とを含有する。
正極集電体は、導電性を有する材料であればよく、例えば、アルミニウム又はそれらの合金、ステンレス等の金属薄板(金属箔)やスパッタ材等を使用できる。これらは、耐酸化性に優れており好ましい。
正極を作製する方法は特に限定されず、例えば、あらかじめ上述の方法等で形成した正極層と正極集電体とを積層する方法や、正極集電体上に直接正極層を形成する方法が挙げられる。
(固体電解質層)
固体電解質層は、リチウムイオン伝導性を有する固体電解質を含み、正極と負極との短絡を防止でき、かつ、正極と負極との間におけるリチウムイオンの移動を可能とするものであればよい。固体電解質の種類としては特に限定されないが、上述の正極層が含有する固体電解質粒子に使用できるものとして例示した固体電解質と同様の固体電解質を好適に使用できる。また、固体電解質層は必要に応じてバインダー等の添加剤を適宜含んでいてもよい。固体電解質層の形状や厚み、形成方法等も特に限定されず、目的とする電池の性能に応じて適宜決定すればよい。
(負極)
負極は、少なくとも負極集電体および負極活物質を含有する。
負極集電体は、導電性を有する材料であればよく、例えば、銅やアルミニウム等の金属薄板(金属箔)やスパッタ材等を使用できる。これらは、耐酸化性に優れており好ましい。
負極活物質としては、リチウムイオンの吸蔵及び放出、言い換えるとリチウムイオンの脱離及び挿入(インターカレーション)、又は、該リチウムイオンとそのカウンターアニオン(例えば、PF6-)のドープ及び脱ドープを可逆的に進行できれば特に限定されず、公知の負極活物質を使用できる。上記負極活物質としては、例えば、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素系材料、アルミニウム、シリコン、スズ等のリチウムと合金を形成することが出来る金属、酸化シリコン、酸化スズ等の非晶質の酸化物、及びチタン酸リチウム(LiTi12)等が挙げられる。
その他、負極は、負極活物質同士を結合すると共に、負極活物質と負極集電体とを結合するバインダーを有してもよい。バインダーは従来公知のものを使用できる。
また、負極は、公知の負極用導電助剤を有してもよく、上記正極用導電助剤と同様のものを使用できる。
上記の他、負極は、リチウムイオン伝導性の観点から、上記負極活物質の他に、固体電解質粒子等を含んでもよい。
上記固体電解質層、正極及び負極等のリチウムイオン二次電池を構成するものは、電池外装体に格納される。電池外装体の材料も、従来公知のものを使用できるが、具体的には、ニッケルメッキを施した鉄、ステンレス、アルミニウムまたはその合金、ニッケル、チタン、樹脂材料、フィルム材料等が挙げられる。
リチウムイオン二次電池の形状としては、コイン型、シート状(フィルム状)、折り畳み状、巻回型有底円筒型、ボタン型等が挙げられ、用途に応じて適宜選択できる。
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、良好なリチウムイオン伝導性を実現し得る。
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
<フッ素化LiCoOの作製>
コバルト酸リチウムLiCoO(AGCセイミケミカル社製、平均粒径:13μm、比表面積:0.2m/g)を単独で正極活物質粒子として用いる。
(フッ素化処理)
内容積0.3Lのハステロイ製反応器内に上記LiCoOの粉末を3.3g入れて、Fガスを20体積%含むNガスを用いて、圧力0.56KPa、室温で2時間フッ素化処理を行い、表面にフッ素化された層を有する正極活物質粒子として、フッ素化LiCoO粉末を得る。ESCA分析(X線光電子分光法)として、アルバック・ファイ社製、ESCA5500(商品名)を用いてフッ素化LiCoO粉末粒子の最表面のフッ素含有量を測定する。また、フッ素化された層の最表面におけるフッ素の含有量が95質量%以上である。
自動試料燃焼装置(三菱ケミカルアナリテック(ダイヤインスツルメンツ)社製、AQF-100)とイオンクロマトグラフィー(ダイオネクス製、DX120)とを用いて、フッ素含有量を定量分析する。
<フッ素化Li0.35La0.55TiOの作製>
(Li0.35La0.55TiO粉末の合成)
炭酸リチウム(LiCO)3.87gと酢酸ランタン(La(CHCOO)・1.5HO)0.27gを23.88gの水に撹拌しながら溶かし、ここに乳酸チタン水溶液(マツモトファインケミカル社製、オルガチックスTC-315、Ti含量8.3%)11.98gをゆっくりと加えた。得られた水分散液を80℃で24時間乾燥後、メノウ乳鉢を使い粉砕した。その後、アルミナ容器に入れて、700℃で4時間熱処理し、75μmメッシュを通して粉末を合成した。得られた粉末のX線回折装置(Rigaku社、Smart Lab)による測定により、Li0.35La0.55TiOが形成していることを確認し、これを固体電解質粒子とした。
(フッ素化処理)
内容積0.3Lのハステロイ製反応器内に上記にて合成したLi0.35La0.55TiO粉末を3g入れて、Fガスを20体積%含むNガスを用いて、圧力2.5KPa、温度140℃で2時間、Li0.35La0.55TiO粉末のフッ素化処理を行うことで、粒子表面にフッ素化された層を有する固体電解質粒子としてLi0.35La0.55TiO粉末を得た。
(最表面のフッ素含有量)
ESCA分析(X線光電子分光法)として、アルバック・ファイ社製ESCA5500を用いて測定し、フッ素化された層の最表面におけるフッ素の含有量は100質量%であった。
(粉末中のフッ素含有量)
自動試料燃焼装置(三菱ケミカルアナリテック(ダイヤインスツルメンツ)社製、AQF-100)とイオンクロマトグラフィー(ダイオネクス社製、DX120)とを用いて、フッ素含有量を定量分析したところ、フッ素化された層を有するLi0.35La0.55TiO粉末全体中のフッ素の含有量は9質量%であった。
(平均粒径)
レーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置(日機装社製、製品名MT-3300EX)を用いて上記粉末の平均粒径を測定したところ、3μmであった。
(正極層および正極の作製)
次に、以下の手順により正極集電体上に正極層が形成されたリチウムイオン二次電池用正極を作製する。
[例1(実施例)]
上記で作製した正極活物質として、フッ素化LiCoOを0.7g、固体電解質材料として、Li0.35La0.55TiOを0.20g、導電助剤として、デンカブラック(電気化学工業社製)0.05gを秤量し自転・公転ミキサ(THINKY社製、あわとり練太郎、ARE-310)を用いて、2000rpm、10分間粉体混合する。得られる混合粉体を成型加工することで正極層(厚み100μm)を形成する。
[例2(実施例)]
また、同様にLiCoOを0.7g、固体電解質材料として、フッ素化Li0.35La0.55TiOを0.20g、導電助剤としてデンカブラック(電気化学工業社製)0.05gを秤量し使用すること以外は、例1の正極層と同様の手順にて正極層(厚み100μm)を形成する。
[例3(比較例)]
また、同様にLiCoOを0.7g、固体電解質材料として、Li0.35La0.55TiOを0.20g、導電助剤としてデンカブラック(電気化学工業社製)0.05gを秤量し使用すること以外は、例1の正極層と同様の手順にて正極層(厚み100μm)を形成する。
(リチウムイオン二次電池用評価セルの作製)
上記手順で作製した例1~例3の正極層について、固体電解質層として厚さ100μmのLi0.35La0.55TiOからなる固体電解質を用い、負極としてはリチウムを用いて充放電特性を評価する。
アルゴンガスグローブボックス内でステンレス製簡易密閉セルに上記の正極層、固体電解質層、負極を入れ、リチウムイオン二次電池用評価セルを組み立てる。
(電池特性)
リチウムイオン二次電池用評価セルを用いて、以下の充放電特性評価を実施する。
C-レート0.05Cで電圧4.2Vまで定電流充電する。また、充電完了後に同じC-レート0.05Cで電圧2Vまで定電流放電する。表1に、例1~例3における正極層の構成材料と充放電特性を示す。充電は4.2V時、放電は2V時における正極活物質単位g当たりの容量を示す。
Figure 0007384071000001
上記の結果から、本発明の実施形態における正極活物質粒子および固体電解質粒子の少なくとも一方が、表面にフッ素化された層を有することで優れた電池特性を示すことが確認される。

Claims (5)

  1. 正極活物質粒子、固体電解質粒子、及び導電助剤を含む正極層であって、
    前記固体電解質粒子が表面にフッ素化された層を有し、前記フッ素化された層の最表面におけるフッ素の含有量が95質量%以上である、
    リチウムイオン二次電池用正極層。
  2. 前記固体電解質粒子が、硫化物系固体電解質粒子及び酸化物系固体電解質粒子の少なくとも一方を含む、請求項に記載のリチウムイオン二次電池用正極層。
  3. 前記固体電解質粒子の平均粒径が0.01~30μmである、請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用正極層。
  4. 前記正極活物質粒子が表面にフッ素化された層を有し、前記正極活物質粒子における前記フッ素化された層がフッ素化されたカーボン粒子からなる、請求項1~のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極層。
  5. 請求項1~のいずれか1項に記載の正極層を含む正極と、固体電解質層と、負極と、を含む、リチウムイオン二次電池。
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