JP6408463B2 - 正極材料、及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、正極材料、及びその製造方法、正極、並びに、リチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池の正極活物質としては、1980年代から遷移金属複合酸化物、硫化物などの多くの化合物が精力的に研究されている。その後、炭素負極と組み合わせて使うリチウムイオン二次電池が開発され、1990年代に市場に投入されている。ノートパソコン、携帯電話、及びスマートフォンの電源としてリチウムイオン二次電池の需要が急速に拡大していく中で、正極活物質の研究は、LiCoO、LiNiO、コスト面で有利なLiMnなどの化合物及びその類縁の化合物に集中して行われるようになっている。
現在、高性能かつ高耐久性の電池システムが求められる中で、これらの化合物は、特に高電位で充放電を繰り返すことで、結晶構造が崩壊する。また、これらの化合物は、特に高電位での充電時に、高活性な正極材表面で電解液の酸化分解が起こる。そのため、高電位での充放電において、性能低下、及びサイクル耐久性(サイクル寿命)の制限が生じ、低電位で充電せざるを得ず、高出力密度への対応が困難であるという問題がある。
これらの問題については、今後、電気自動車用途などを考えた高出力化、高安全化、及び長寿命化のためには解決を急がなければならない。
非特許文献1及び非特許文献2では、LiCoO、LiNiO及びその部分的置換体、LiMnなどの表面を、F、ClF、又はNFを用いてフッ素化する技術が提案されている。表面フッ素化が正極活物質の電気化学特性に与える影響は、ガス状フッ素化剤や対象とする正極活物質(リチウム含有複合酸化物)の組合せによって大きく異なる。また、フッ素を導入しようとする正極活物質の表面の状態(欠損、配向性、不純物の吸着度合など)によっても大きく異なる。そのため、フッ素を導入しようとする正極活物質の前処理方法及び条件、正確で精密なキャラクタリゼーション、ガス状フッ素化剤の純度、処理ラインの清浄性などに細心の注意が必要で、フッ素化の制御プロセスが非常に困難であるという問題がある。
また、LiMnについては、リチウムの組成を定比よりずらすことで結晶中に酸素欠陥サイトを作製できることを利用し、LiMnとガス状フッ素化剤との反応により結晶構造中にフッ素を導入できることが明らかとなっている。しかし、酸素欠陥サイトへフッ素を導入することで、放電容量、平均放電電位等の電池性能は、導入前と比べ、逆に劣化する。これは、分極率の小さいフッ素の導入により、結晶中での電子の移動に関する活性化障壁が大きくなることによると考えられる。
特許文献1及び特許文献2では、正極活物質表面の活性度を抑制し、サイクル寿命を向上させるための手段として、希土類元素の酸フッ化物や炭素及びフッ素を含む有機化合物を混合し、熱処理することでフッ素の導入を図る技術が提案されている。
しかし、これらの技術では、正極活物質表面に希土類元素のフッ化物及び/又は希土類元素の酸フッ化物を導入するのに、フッ素を含む有機化合物の分解温度(800℃)以上の熱処理が必要で、エネルギー消費が多いという問題がある。また、フッ素を含む有機化合物の熱分解において、正極活物質の表面状態を確実に変化させない温度及び時間の制御が難しく、量産的に均一な表面修飾が困難であるという問題がある。また、熱処理に伴う有機物の残留物による不純物の影響が長期サイクル耐久性において懸念される。さらに、フッ素を含む有機物の熱分解で生成する活性の高いフッ素原子が正極活物質の表面と接触することで、正極活物質中のリチウムと反応し、フッ化リチウムが形成される。フッ化リチウムが正極活物質の表面に形成されると、充放電で使用できるリチウムの減少による放電容量の低下や抵抗成分の増加による起電力の低下といった問題が懸念される。
また、非特許文献3には、LiMnの表面を改質する技術として、LiMnの表面にカーボンを蒸着によりコーティングした後に、更にNFを用いてフッ素化する技術が提案されている。しかし、この提案の技術では、LiMnの表面にカーボン薄膜を形成するため、カーボン薄膜はLiMnの表面と剛直に密着してしまう。そのため、充放電によって生じるLiMnの体積膨張に追随できず、膜浮きや膜剥がれが発生しやすく、結果、電池特性が低下する問題が懸念される。また、LiMnの表面にカーボンの薄膜を形成した後にフッ素化するため、単にLiMnの表面にカーボン蒸着したものと比較して、薄膜炭素中にフッ素を導入されていたとしてもカーボン蒸着の効果が表れず、期待されている放電容量の増加が見られなかった。さらに、LiMnの表面に存在するカーボンが薄膜であるため、フッ素化によりカーボン薄膜が分解するとともに、フッ素が正極活物質表面と接触することで、正極活物質の表面に影響を及ぼすプロセス上の問題も懸念される。
また、正極活物質を用いて正極を作製する際には、通常、正極活物質を含有する塗布液を塗布して作製するが、正極活物質の表面に存在する水酸基などの影響により塗布液の粘度が高くなり、塗布性に劣るという問題がある。
日本特許第4382193号公報 日本特許第4382194号公報
第42回電池討論会講演要旨集, 2001, 1A03 J. Fluorine Chem, 2004, Vol. 125, p.1657−1661 第42回電池討論会講演要旨集, 2001, 2A19
本発明は、電池特性に優れ、かつサイクル特性が非常に優れるリチウムイオン二次電池、それに用いる正極、並びに、容易に製造でき、更に正極を製造する際の塗布液の粘度を低くできる、正極に用いる正極材料、及びその効率的な製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の構成を有する正極材料、及びその製造方法、正極、並びに、リチウムイオン二次電池を提供する。
[1] 正極活物質粒子と、正極活物質粒子の表面上に粒子状又は繊維状の含フッ素炭素材料とを有することを特徴とする正極材料。
[2] 含フッ素炭素材料による正極活物質粒子の表面の被覆率が、10%以上である上記[1]に記載の正極材料。
[3] 正極活物質粒子が、下記一般式(1)で表される化合物である上記[1]又は[2]に記載の正極材料。
Li(CoMnNi(1−x−y))O2+δ・・・一般式(1)
ただし、一般式(1)中、0<x≦1、0≦y<1、1≦a≦1.5、0≦δ≦0.5である。
[4] 含フッ素炭素材料が、含フッ素カーボンブラック、含フッ素活性炭、含フッ素黒鉛、含フッ素カーボンファイバー、含フッ素カーボンナノチューブ、含フッ素フラーレン、及びフッ素化ダイヤモンドからなる群から選ばれる少なくとも一種である上記[1]〜[3]のいずれかに記載の正極材料。
[5] 含フッ素炭素材料におけるフッ素含有量が、1.0〜60質量%である上記[1]〜[4]のいずれかに記載の正極材料。
[6] 含フッ素炭素材料の比表面積が、1m/g以上である上記[1]〜[5]のいずれかに記載の正極材料。
[7] 正極材料が、粒子状又は繊維状の含フッ素化炭素材料を、正極活物質粒子100質量部に対して0.001〜10質量部有する上記[1]〜[6]のいずれかに記載の正極材料。
[8] 粒子状の含フッ素炭素材料の平均一次粒径が1nm〜10μmである上記[1]〜[7]のいずれかに記載の正極材料。
[9] 繊維状の含フッ素炭素材料の平均繊維粒径が1〜200nmである上記[1]〜[7]のいずれかに記載の正極材料。
[10] 正極活物質粒子の体積基準累積50%径(D50)が0.1〜30μmである上記[1]〜[9]のいずれかに記載の正極材料。
[11] 正極活物質粒子が、一般式(1)において、a=1、x=1、δ=0の条件を満たす化合物、または、a=1、0.04≦x≦0.28、0.22≦y≦0.44、δ=0の条件を満たす化合物である上記[3]〜[10]のいずれかに記載の正極材料。
[12] 上記[1]〜[11]のいずれかに記載の正極材料の製造方法であって、
正極活物質粒子と、粒子状又は繊維状の含フッ素炭素材料とを乾式法で混合することを特徴とする正極材料の製造方法。
[13] 粒子状又は繊維状の含フッ素炭素材料が、F、ClF、及びNFからなる群から選ばれる少なくとも一種のガスを用いて−20〜350℃で粒子状又は繊維状の炭素材料をフッ素化処理して得られる上記[12]に記載の正極材料の製造方法。
[14] 上記[1]〜[11]のいずれかに記載の正極材料と、導電材と、バインダーとを含有することを特徴とする正極。
[15] 上記[14]に記載の正極と、負極と、セパレータと、非水電解質とを有することを特徴とするリチウムイオン二次電池。
本発明によると、従来における前記諸問題を解決することができ、電池特性に優れ、かつサイクル特性が非常に優れるリチウムイオン二次電池、それに用いる正極、並びに、容易に製造でき、更に正極を製造する際の塗布液の粘度を低くできる、正極に用いる正極材料、及びその効率的な製造方法を提供することができる。
本発明は、正極活物質粒子と、単独で取り扱うことが可能な粒子状又は繊維状の含フッ素炭素材料とを有することで、正極材料表面とフッ素化剤とが直接接触することを回避しつつ、電池特性に優れ、かつサイクル特性が非常に優れるリチウムイオン二次電池、並びに、それに用いる正極を提供することができる。
図1は、実施例3で得られた正極材料のSEM(走査型電子顕微鏡)写真である。 図2は、図1の拡大写真である。 図3は、比較例1で用いた正極材料のSEM写真である。 図4は、図3の拡大写真である。
(正極材料)
本発明の正極材料は、正極活物質粒子と、粒子状又は繊維状の含フッ素炭素材料とを少なくとも含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
含フッ素炭素材料は、正極活物質粒子の表面上に存在する。
電池の中での電気化学反応場は、電極と電解質との界面、即ち活物質表面である。正極活物質の表面に粒子状又は繊維状の含フッ素炭素材料を存在させることで、以下の効果が期待される。
(1)リチウムイオンの溶媒和及び脱溶媒和がスムーズになる、
(2)正極活物質表面での導電性が向上する、
(3)電解質溶液と正極活物質表面とが接触をすることによる電解液の酸化分解を抑制できる、
(4)充放電に伴う正極活物質表面の崩壊を抑制できる。
<正極活物質粒子>
正極活物質粒子は、電極反応物質を吸蔵、及び放出可能な材料を含有する。当該材料としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出できる正極材料が好ましく、リチウム(Li)と遷移金属とを含有するリチウム遷移金属複合酸化物がより好ましく、層状岩塩型結晶構造(以下、層状構造ともいう。)又はスピネル型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物が特に好ましい。
層状構造又はスピネル型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
Li(CoMnNi(1−x−y))O2+δ・・・一般式(1)
ただし、一般式(1)中、0≦x≦1、0≦y≦1、0.4≦a≦1.5、0≦δ≦0.5である。
正極活物質粒子としては、具体的に、LiCoO、LiNi0.5Co0.2Mn0.3、LiCo1/3Mn1/3Ni1/3、Li1.45Ni0.20Co0.15Mn0.652.45、Li0.5Mn0.8Ni0.2(LiMn1.6Ni0.4)、Li0.5MnO(LiMn)、Li0.5Ni0.25Mn0.75(LiNi0.5Mn1.5)などが挙げられる。
正極活物質粒子としては、層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物が好ましい。
具体的には、前記一般式(1)中、0<x≦1、0≦y<1、1≦a≦1.5、0≦δ≦0.5である化合物が好ましい。
層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物は、スピネル構造を有するLiMnと比べ、充放電による体積変化が大きいが、特に放電容量が大きい点で有利である。
なかでも、正極活物質粒子は、一般式(1)において、a=1、x=1、δ=0の条件を満たす化合物(LiCoO)、または、a=1、0.04≦x≦0.28、0.22≦y≦0.44、δ=0の条件を満たす化合物が特に好ましい。
正極活物質粒子のレーザー散乱粒度分布測定における体積基準累積50%径(D50)としては、0.1〜30μmが好ましく、1.0〜20μmがより好ましく、5.0〜15μmが特に好ましい。正極活物質粒子の体積基準累積50%径(D50)が、0.1μm以上であれば、本発明の正極材料において、含フッ素炭素材料が正極活物質粒子から外れにくく、電池性能に優れる点で有利である。
体積基準累積50%径(D50)の測定は、粉末を水媒体中に超音波処理等で充分に分散させ、例えば、HORIBA社製レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(装置名;Partica LA−950VII)を使用して粒度分布を測定することにより行われる。
正極活物質粒子の比表面積は、0.1〜10m/gが好ましく、0.2〜5.0m/gがより好ましい。
正極活物質粒子のタップ密度は、1.5〜3.0g/cmが好ましく、1.7〜2.7g/cmがより好ましい。
正極活物質粒子の嵩密度は、1〜2g/cmが好ましく、1.1〜1.8g/cmがより好ましい。
<粒子状又は繊維状の含フッ素炭素材料>
粒子状の含フッ素炭素材料としては、含フッ素カーボンブラック(含フッ素アセチレンブラック、含フッ素サーマルブラック、含フッ素ファーネスブラック、含フッ素チャンネルブラックなど)、含フッ素活性炭、含フッ素黒鉛、含フッ素フラーレン類(C60、C70、C84など)、フッ素化ダイヤモンドなどが挙げられる。
繊維状の含フッ素炭素材料としては、含フッ素カーボンファイバー、含フッ素カーボンナノチューブなどが挙げられる。
含フッ素炭素材料は使用される正極活物質粒子の種類によって適宜変更することが可能である。
導電性による内部抵抗の低下を求める場合には、導電性の高い含フッ素カーボンブラック、含フッ素カーボンファイバー、含フッ素カーボンナノチューブ等が好ましく、含フッ素カーボンブラック、又は含フッ素カーボンナノチューブが特に好ましい。また、サイクル特性を求める場合には、粒子径が比較的大きく比表面積が大きい含フッ素カーボンブラックや含フッ素活性炭、若しくは、粒子径が均一で小さく、被覆率を高めることが可能な含フッ素フラーレン類が特に好ましい。導電性とサイクル特性の両方を求める場合には、含フッ素カーボンブラックがより好ましい。含フッ素カーボンブラックとしては、含フッ素アセチレンブラック、又は含フッ素ファーネスブラックが特に好ましい。
これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
粒子状の含フッ素炭素材料の平均一次粒径としては、正極活物質粒子の表面の被覆率を高める点で、1nm〜10μmが好ましく、2nm〜7.5μmがより好ましく、3nm〜6μmが特に好ましい。平均一次粒径が、前記範囲内であると、正極活物質粒子の表面とその粒子間界面の被覆率を高める点で有利である。
粒子状の含フッ素炭素材料が含フッ素活性炭以外を用いる場合には、平均一次粒径は500nm以下がさらに好ましく、1〜200nmが特に好ましい。
粒子状の含フッ素炭素材料が含フッ素活性炭を用いる場合には、平均一次粒径は0.2μm以上が特に好ましい。含フッ素活性炭の平均一次粒径が0.2μm以上であれば、含フッ素活性炭の有する細孔容積が大きくても正極活物質粒子の表面とその粒子間界面の被覆率を高められる。
粒子状の含フッ素炭素材料の平均二次粒径としては、平均一次粒径以上10μm以下が好ましく、平均一次粒径以上7.5μm以下がより好ましく、平均一次粒径以上6μm以下が特に好ましい。平均二次粒径が、前記範囲内であると、正極活物質粒子の表面の被覆率が向上できる点で有利である。
繊維状の含フッ素炭素材料の平均繊維径としては、1〜200nmが好ましく、2〜150nmがより好ましく、3〜100nmが特に好ましい。また、繊維状の含フッ素炭素材料の繊維長としては、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、10μm以下が特に好ましい。平均繊維径と繊維長が、前記範囲内であると、正極活物質粒子の表面の被覆率を高める点で有利である。
平均一次粒径、及び平均二次粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)により測定できる。
平均繊維径は、平均一次粒径と同様に走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)により測定できる。
粒子状及び繊維状の含フッ素炭素材料の比表面積(BET比表面積)としては、形状や結晶性にも依存するが、1m/g以上が好ましく、5〜3000m/gがより好ましく、10〜2500m/gが特に好ましい。
粒子状の含フッ素炭素材料の比表面積は、1〜3000m/gが好ましく、5〜3000m/gがより好ましい。
繊維状の含フッ素炭素材料の比表面積は、1〜2000m/gが好ましく、10〜1500m/gがより好ましい。
含フッ素炭素材料におけるフッ素含有量としては、粒子状の炭素材料の網目構造の発達度合いによって大きく異なるが、網目状構造を保持できる点から、1.0〜60質量%が好ましく、2.0〜55質量%がより好ましい。フッ素含有量が60質量%を超えると、含フッ素炭素材料の導電性が低下したり、オイル状の低分子量成分が生成したりすることがある。
含フッ素炭素材料におけるフッ素含有量は、例えば、AQF−IC法(自動燃焼装置−イオンクロマト法)を用いて測定することができる。
含フッ素炭素材料による正極活物質粒子の表面の被覆率としては、10%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、50%以上が特に好ましく、100%であってもよい。被覆率が、前記範囲内であると、サイクル特性が非常に優れる点で有利である。
被覆率は、XPS(X線光電子分光)分析により正極材料における正極活物質粒子中の金属のピーク強度を測定することで確認できる。
例えば、XPS分析によるCo2p3のピーク強度を求めることで、含フッ素炭素材料による正極活物質粒子の表面の被覆率を求めることができる。具体的には、含フッ素炭素材料により被覆されていない正極活物質粒子自体のXPS分析(例えば、測定装置としてアルバック・ファイ社製ESCA5500を用いる)を行い、Co2p3のピーク強度(X)を求める。次に、測定対象の、含フッ素炭素材料により被覆された正極活物質粒子(正極材料)についてXPS分析を行い、Co2p3のピーク強度(X)を求める。そして、以下の式から被覆率を求める。
被覆率(%)=100×(1−X/X
なお、XとXとを測定する際には、同じ組成の正極活物質粒子について測定を行う。例えば、測定対象の、含フッ素炭素材料により被覆された正極活物質粒子についてXPS分析を行い、Co2p3のピーク強度(X)を測定する。また、正極活物質粒子の表面から含フッ素炭素材料を除去し、正極活物質粒子自体についてXPS分析を行い、Co2p3のピーク強度(X)を測定する。
本発明の正極材料は、正極活物質粒子の表面上に含フッ素炭素材料を有するが、正極活物質粒子の表面上には、含フッ素炭素材料以外の炭素元素含有材料(例えば、前記炭素材料)を有していてもよい。
正極材料のレーザー散乱粒度分布測定における体積基準累積50%径(D50)としては、0.1〜30μmが好ましく、1.0〜20μmがより好ましく、5.0〜15μmが特に好ましい。
本発明の正極材料をリチウムイオン二次電池に用いた場合に、電池特性、特にサイクル特性が非常に優れる要因は定かではないが、正極活物質粒子の表面上に含フッ素炭素材料を有することで、一般的な電解質塩であるLiPFと水との加水分解によって生じるHFによる腐食が低減されたためと考えられる。
また、本発明の正極材料においては、粒子状又は繊維状の含フッ素炭素材料を用いることから、フッ素原子由来の低表面張力による滑り作用、粒子状(特に球状)又は繊維状(特に円筒状)による転がり作用によるベアリング効果によって、充放電時に生じる正極活物質粒子の体積変化を緩和し正極活物質粒子の構造崩壊を抑制でき、かつ含フッ素炭素材料が正極活物質粒子の表面から剥離しにくいためと考えられる。
さらに、前記ベアリング効果によって、後述する正極の製造方法において塗布液の粘度を低くでき、塗布性に優れる効果が得られると考えられる。
(正極材料の製造方法)
本発明の正極材料の製造方法は、混合工程を少なくとも含み、好ましくはフッ素化工程を含み、更に必要に応じて、その他の工程を有する。
本発明の正極材料の製造方法により、本発明の正極材料が得られる。
<混合工程>
混合工程は、正極活物質粒子と、含フッ素炭素材料とを乾式法で混合する工程である。
含フッ素炭素材料としては、前述の含フッ素炭素材料を適宜用いることができるが、安価で入手できることから、後述するフッ素化工程によって得られる含フッ素炭素材料であることが好ましい。
乾式法で混合する方法は、溶媒を用いずに混合する方法であり、例えば、各種ディスパー、ボールミル、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、アトマイザー、V型混合機、ペイントシェーカー、コニカルブレンダー、ナウターミキサ−、SVミキサー、ドラムミキサー、シェーカーミキサー、プロシェアーミキサー、万能ミキサー、リボン型混合機、リボンミキサー、コンテナミキサーなどを用いて行うことができる。また、小スケールで混合を行う場合には、自転・公転ミキサー(例えば、Thinky社製あわとり練太郎ARE−310)を用いて行うこともできる。
混合工程の時間としては、生産性の観点から、1〜60分間が好ましく、1〜30分間がより好ましい。混合工程の温度としては、20〜30℃が好ましい。
混合工程における正極活物質粒子と、粒子状又は繊維状の含フッ素化炭素材料との割合としては、正極活物質粒子100質量部に対して、0.001〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましい。
<フッ素化工程>
フッ素化工程は、粒子状又は繊維状の炭素材料をフッ素化処理して粒子状又は繊維状の含フッ素炭素材料を作製する工程である。
フッ素化処理とは、フッ素化合物と炭素材料とを反応させる処理である。フッ素化合物としては、フッ化水素、フッ素単体(F)、ClF及びIFなどのフッ化ハロゲン、BF、NF、PF、SiF、並びにSFなどのガス状フッ化物;HFC及びHCFCなどの含フッ素有機化合物;LiF及びNiFなどの金属フッ化物;ポリテトラフルオロエチレン及びポリフッ化ビニリデンなどのフッ素樹脂;などを用いることができる。取り扱いの容易さと、不純物を少なくすることができる点で、ガス状フッ化物を用いることが好ましく、F、ClF、及びNFからなる群から選ばれる少なくとも一種のガスを用いることがより好ましく、Fガスを用いることが特に好ましい。フッ素化処理の際には、Nなどの不活性ガスを併用してもよい。
粒子状の炭素材料としては、カーボンブラック(アセチレンブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラックなど)、活性炭、黒鉛、フラーレン類(C60、C70、C84など)、ダイヤモンドなどが挙げられる。
繊維状の炭素材料としては、カーボンファイバー、カーボンナノチューブなどが挙げられる。
粒子状の炭素材料の平均一次粒径としては、1nm〜10μmが好ましく、2nm〜7.5μmがより好ましく、3nm〜6μmが特に好ましい。平均一次粒径が、前記範囲内であると、正極活物質粒子の表面とその粒子間界面の被覆率を高める点で有利である。
粒子状の炭素材料の平均二次粒径としては、平均一次粒径以上10μm以下が好ましく、平均一次粒径以上7.5μm以下がより好ましく、平均一次粒径以上6μm以下が特に好ましい。平均二次粒径が、前記範囲内であると、正極活物質粒子の表面の被覆率が向上できる点で有利である。
繊維状の炭素材料の平均繊維径としては、1〜200nmが好ましく、2〜150nmがより好ましく、3〜100nmが特に好ましい。平均繊維径が、前記範囲内であると、正極活物質粒子の表面とその粒子間界面の被覆率を高める点で有利である。
粒子状又は繊維状の炭素材料の比表面積(BET比表面積)としては、当該炭素材料の形状や結晶性にも依存するが、1m/g以上が好ましく、1〜3000m/gがより好ましく、1〜2500m/gが特に好ましい。
フッ素化処理の温度としては、−20〜350℃が好ましい。
通常、天然黒鉛のような高結晶性黒鉛をFガスでフッ素化すると、−20〜約100℃では網目構造のエッジ炭素に選択的にフッ素が導入される。350℃超では反応速度の上昇により網目構造の面内炭素と反応し、共有結合性のフッ素化黒鉛(CF)、(CF)が得られるが、同時に網目構造の破壊が生じ、粒子状の炭素材料の導電性が低下するなどの問題が生じる。100〜350℃では網目構造の面内炭素と反応するものの、網目構造の破壊を生じない程度に黒鉛の表面付近のみがフッ素化される。一方、結晶性の低い粒子状又は繊維状の炭素材料ではフッ化炭素の生成温度が低下し、表面フッ素化の起こる温度範囲が狭くなる特徴を有している。
そのため、フッ素化処理の温度は、粒子状又は繊維状の炭素材料の表面のみをフッ素化する点で、350℃以下が好ましい。フッ素化処理の温度が、350℃を超えると得られる粒子状又は繊維状の含フッ素炭素材料の導電性が低下したり、オイル状の低分子量成分が生成したりし、電池性能をむしろ低下させることがある。
<その他の工程>
本発明の正極材料の製造方法において、その他の工程として、例えば、アニール工程、洗浄工程、及び乾燥工程などを有していてもよい。
アニール工程は、正極材料中の有機物等の不純物を分解して除去するとともに、正極活物質粒子と粒子状又は繊維状の含フッ素炭素材料の結着力をより高めるための工程である。アニール工程における加熱温度は、350℃以下が好ましく、100〜300℃がより好ましい。アニール工程によって、不純物の少ない、かつ正極活物質粒子に粒子状又は繊維状の含フッ素炭素材料とが強固に結着した正極材料を製造することができ、より優れる電池特性を得ることができる。
洗浄工程は、正極活物質粒子と粒子状又は繊維状の含フッ素炭素材料の結着力を損なわずにアニール工程で除去し切れていない不純物を洗い流すための工程である。洗浄工程としては、水、エタノール、フッ素系溶媒で洗浄することが好ましく、有機溶媒やフッ素系溶媒で洗浄することがより好ましい。
乾燥工程は、洗浄した正極材料の残存溶媒を除去するための工程である。乾燥温度は、300℃以下が好ましく、100〜200℃がより好ましい。
(正極)
本発明の正極は、本発明の正極材料と、導電材と、バインダーとを少なくとも含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
<導電材>
導電材としては、カーボンブラック、カーボンファイバー、黒鉛などが挙げられる。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどが挙げられる。
<バインダー>
バインダーとしては、フッ素樹脂、ポリオレフィン、不飽和結合を有する重合体及びその共重合体、アクリル酸系重合体及びその共重合体などが挙げられる。フッ素樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどが挙げられる。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。不飽和結合を有する重合体としては、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴムなどが挙げられる。アクリル酸系重合体としては、アクリル酸重合体、メタクリル酸重合体などが挙げられる。
<正極の製造方法>
正極の製造方法としては、正極材料と、導電材と、バインダーと、溶媒とを含有する塗布液を、正極集電体上に塗布して、正極材料と、導電材と、バインダーとを含有する正極材料含有層を形成する方法などが挙げられる。
−正極集電体−
正極集電体の形状、大きさ、構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
正極集電体の材質としては、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金などが挙げられる。
−溶媒−
溶媒としては、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。
−塗布−
塗布の方法としては、ドクターブレード塗工、スプレー塗工、浸漬塗工などが挙げられる。
正極材料含有層の形状、大きさ、構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
(リチウムイオン二次電池)
本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明の正極と、負極と、セパレータと、非水電解質とを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の成分を有する。
<負極>
負極は、負極集電体と、負極活物質含有層とを少なくとも含有し、更に必要に応じて、その他の部を含有する。
−負極集電体−
負極集電体の形状、大きさ、構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
負極集電体の材質としては、ニッケル、銅、ステンレス鋼などが挙げられる。
−負極活物質含有層−
負極活物質含有層は、負極活物質を少なくとも含有し、更に必要に応じて、その他の成分(バインダ等)を含有する。
負極活物質含有層は、負極活物質自体であってもよい。
負極活物質含有層は、負極集電体上に形成されている。
負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵、及び放出可能な材料であり、例えば、リチウム金属、リチウム合金、リチウム化合物、炭素材料、ケイ素、スズなどの周期表14、15族の金属元素を主体とする酸化物、炭化ケイ素化合物、酸化ケイ素化合物、硫化チタン、炭化ホウ素化合物などが挙げられる。
その他に、比較的低い電位でリチウムイオンを吸蔵、放出可能な材料であれば、例えば、酸化鉄、酸化ルテニウム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化チタン、酸化スズ、Li2.6Co0.4Nなども、負極活物質として用いることができる。
負極活物質含有層の形成方法としては、負極活物質とバインダーと溶媒とを混合することによってスラリーを調製し、調製したスラリーを負極集電体上に塗布し、続いて乾燥した後に、プレスする方法などが挙げられる。
<セパレータ>
セパレータの材質としては、紙、セロハン、ポリオレフィン不織布、ポリアミド不織布、ガラス繊維不織布、多孔質ポリプロピレンなどが挙げられる。紙としては、例えば、クラフト紙、ビニロン混抄紙、合成パルプ混抄紙などが挙げられる。
セパレータの形状としては、シート状などが挙げられる。
セパレータの構造は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
<非水電解質>
非水電解質としては、例えば、非水電解液、無機固体電解質、電解質塩を混合又は溶解させた固体状又はゲル状の高分子電解質などが挙げられる。
非水電解液としては、有機溶媒と電解質塩とを適宜組み合わせて調製したものが挙げられる。
有機溶媒としては、環状カーボネート、鎖状カーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジグライム、トリグライム、γ−ブチロラクトン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、酢酸エステル、酪酸エステル、プロピオン酸エステルなどが挙げられる。環状カーボネートとしては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネートなどが挙げられる。鎖状カーボネートとしては、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネートなどが挙げられる。これらの中でも、電圧安定性の点から、環状カーボネート、又は鎖状カーボネートが好ましく、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、又はジエチルカーボネートがより好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
電解質塩としては、例えば、LiClO、LiPF、LiBF、CFSOLi、LiCl、LiBrなどが挙げられる。
無機固体電解質としては、窒化リチウム、ヨウ化リチウムなどが挙げられる。
電解質塩を混合又は溶解させた固体状の高分子電解質に用いられる高分子化合物としては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリホスファゼン、ポリアジリジン、ポリエチレンスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、並びにこれらの誘導体、混合物、及び複合体などが挙げられる。
電解質塩を混合又は溶解させた固体状の高分子電解質に用いられる高分子化合物としては、フッ素系高分子化合物などが挙げられる。フッ素系高分子化合物としては、ポリ(ビニリデンフルオロライド)、ポリ(ビニリデンフルオロライド−co−ヘキサフルオロプロピレン)などが挙げられる。また、高分子化合物としては、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリルの共重合体、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイドの共重合体なども用いることができる。共重合体に用いるモノマーとしては、ポリプロピレンオキサイド、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチルなどが挙げられる。
ゲル状電解質のマトリックスとしては、酸化還元反応に対する安定性の観点から、フッ素系高分子化合物が好ましい。
<リチウムイオン二次電池の製造方法>
リチウムイオン二次電池の製造方法としては、正極作製工程と、積層物作製工程と、非水電解質付与工程とを少なくとも含む。
−正極作製工程−
正極作製工程は、本発明の正極を作製する工程であり、例えば、本発明の正極の説明において挙げた正極の製造方法などが挙げられる。
−積層物作製工程−
積層物作製工程は、本発明の正極と、セパレータと、負極とを積層して積層物を作製する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
−非水電解質付与工程−
非水電解質付与工程は、積層物に非水電解質を含有させる工程であり、積層物に非水電解質を注入する方法、非水電解質に積層物を浸漬する方法などが挙げられる。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
<材料>
粒子状の炭素材料として、アセチレンブラック(デンカブラック、プレス50%品、電気化学工業社製、平均一次粒径35nm、比表面積68m/g)を用いた。
正極活物質粒子として、LiCoO(AGCセイミケミカル社製、体積基準累積50%径(D50)12μm)を用いた。
<含フッ素炭素材料の製造>
粒子状の炭素材料を容器に詰め、気密性の高いリアクターに導入した。リアクター内の空気を真空引きした後、室温(20℃)において0.005MPaGの圧力までF/N(80/20(vol/vol))の混合ガスを導入した状態で4時間保持して、粒子状の炭素材料のフッ素化処理を行った。
<正極材料の製造>
2gの正極活物質粒子と、0.05gの粒子状の含フッ素炭素材料とを125cc容器内に秤量した後、自転・公転ミキサー(Thinky社製、あわとり練太郎ARE−310)を用いて、2,000rpmで2分間混合し、正極材料1を得た。
<正極の製造>
上記で得られた正極材料1を2.05gと、アセチレンブラック(デンカブラック、電気化学工業社製)0.25gと、N−メチルピロリドン(NMP)溶媒に溶かした2.07gのポリフッ化ビニリデン(PVDF)と、N−メチルピロリドン(NMP)溶媒4.02gとを、自転・公転ミキサー(Thinky社製、あわとり練太郎ARE−310)を用いて混合し、塗布液を得た。続いて、塗布液をアルミシートの集電体上に塗布して正極電極シートを作製した。正極電極シートを、40μmギャップを有するロールプレスに2回かけてプレスした後、直径18mmのサイズに打ち抜いて180℃で真空乾燥させて正極を得た。
<リチウムイオン二次電池の製造>
Arグローブボックス雰囲気内において、ステンレス鋼製簡易密閉セル型の電池評価セルに、真空乾燥させた正極と、セパレータ(Celgard社製、#2500)と、金属リチウム箔とを、この順に積層した。続いて、ジエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとの混合溶媒(1:1vol%)中にLiPFを1M含む電解液を入れ、電池を組み立てた。なお、負極集電体として平均厚み1mmのステンレス鋼板を使用し、負極集電体上に平均厚み300μmの金属リチウム箔を形成して負極とした。セパレータの平均厚みは50μm(25μm×2枚)であった。
<含フッ素炭素材料による正極活物質粒子の被覆率>
XPS(X線光電子分光)分析によるCo2p3のピーク強度を求めることで、正極材料における、含フッ素炭素材料による正極活物質粒子の被覆率を求めた。具体的には、含フッ素炭素材料により被覆されていない正極活物質粒子自体のXPS分析(測定装置:アルバック・ファイ社製ESCA5500)を行い、Co2p3のピーク強度(X)を求めた。続いて、測定対象の、含フッ素炭素材料により被覆された正極活物質粒子についてXPS分析を行い、Co2p3のピーク強度(X)を求めた。そして、以下の式から被覆率を求めた。結果を表3に示した。
被覆率(%)=100×(1−X/X
なお、XとXとを測定する際には、同じ組成の正極活物質粒子について測定を行った。
<活性化、初期容量、充放電効率、サイクル特性>
得られたリチウムイオン二次電池について、定電流・定電圧モードにおいて正極材料1gにつき37.5mAの負荷電流で4.3Vまで充電した後、定電流モードにおいて正極材料1gにつき37.5mAの負荷電流で2.75Vまで放電させた後、同負荷電流条件で充電圧を4.5Vに上げた充放電を繰返した。
続いて、定電流・定電圧モードにおいて正極材料1gにつき150mAの負荷電流で4.5Vまで充電した後、定電流モードにおいて正極材料1gにつき150mAの負荷電流で2.75Vまで放電させる繰返し充放電を50回行った。1回目の4.5V充電における放電容量に対する、50回目の4.5V充電における放電容量と平均放電圧とを、容量維持率と電圧維持率とした。結果を表3に示した。
(実施例2)
実施例1において、フッ素化処理の温度を140℃に変えた以外は、実施例1と同様にして、正極材料2を得た。
実施例1と同様にして評価を行った。結果を表3に示した。
(実施例3)
実施例1において、粒子状の炭素材料としてフラーレン(C60、Aldrich社製、平均一次粒径1nm)を用い、フッ素化処理の温度を230℃に変えた以外は、実施例1と同様にして、正極材料3を得た。
図1及び図2に、得られた正極材料3のSEM(走査型電子顕微鏡)写真を示した。
実施例1と同様にして正極及びリチウムイオン二次電池を作製し、評価を行った。結果を表3に示した。
なお、塗布液を、東機産業社製粘度計(RE550H形)を用いて測定した。校正済みローターNo.4を用いて正極材料3のスラリー(塗布液)をシリンジで1ml採取、気泡を抜いてセルに入れて、25℃になるまで放置した。スラリーが規定温度にあることを確認した後、装置を作動させた。プログラムモードで回転数0.1rpm〜200rpmまで所定時間範囲内で往復させ、復路時の1rpmの粘度を測定した。結果を表3に示した。
(実施例4)
実施例1において、繊維状の炭素材料としてカーボンナノチューブ(ダブルウォールタイプ、nanocyl社製、平均繊維径3.5nm、長さ1〜10μm)を用い、フッ素化処理の温度を180℃に変えた以外は、実施例1と同様にして、正極材料4を得た。
実施例1と同様にして評価を行った。結果を表3に示した。
(実施例5)
実施例2において、自転・公転ミキサーに代えて、ボールミルを用いて600rpmで30分間混合した以外は、実施例2と同様にして、正極材料5を得た。
実施例1と同様にして評価を行った。結果を表3に示した。
(実施例6)
実施例1において、正極活物質粒子と粒子状の含フッ素炭素材料とを混合する際の粒子状の含フッ素炭素材料の量を0.05g〜0.01gに変えた以外は、実施例1と同様にして、正極材料6を得た。
実施例1と同様にして評価を行った。結果を表3に示した。また、塗布粘度液の粘度を実施例3と同方法で測定し、結果を表3に示した。
(実施例7)
実施例1において、粒子状の炭素材料としてケッチェンブラック(登録商標:ケッチェン・ブラック・インターナショナル社、ライオン社製、KetjenEC、平均一次粒径25nm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、正極材料7を得た。
実施例1と同様にして評価を行った。結果を表3に示した。
(実施例8)
実施例1において、粒子状の炭素材料として活性炭(クラレケミカル社製、BP20、平均一次粒径5μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、正極材料8を得た。
実施例1と同様にして評価を行った。結果を表3に示した。
(実施例9)
実施例2において、正極活物質粒子としてLiNi0.5Co0.2Mn0.3(AGCセイミケミカル社製、体積基準累積50%径(D50)6μm)を用いた以外は、実施例2と同様にして、正極材料9を得た。
実施例1と同様にして評価を行った。結果を表3に示した。また、塗布粘度液の粘度を実施例3と同方法で測定し、結果を表3に示した。
(実施例10)
実施例9において、自転・公転ミキサーに代えて、ボールミルを用いて600rpmで30分間混合した以外は、実施例9と同様にして、正極材料10を得た。
実施例1と同様にして評価を行った。結果を表3に示した。
(実施例11)
実施例9において、繊維状の炭素材料としてカーボンナノチューブ(ダブルウォールタイプ、nanocyl社製、平均繊維径3.5nm、長さ1〜10μm)を用い、フッ素化処理の温度を180℃に変え、更に正極活物質粒子と粒子状の含フッ素炭素材料とを混合する際の粒子状の含フッ素炭素材料の量を0.05gから、0.01gに変えた以外は、実施例9と同様にして、正極材料11を得た。
実施例1と同様にして評価を行った。結果を表3に示した。
(実施例12)
実施例11において、正極活物質粒子と粒子状の含フッ素炭素材料とを混合する際の粒子状の含フッ素炭素材料の量を0.01gから0.002gに変えた以外は、実施例11と同様にして、正極材料12を得た。
実施例1と同様にして評価を行った。結果を表3に示した。
(比較例1)
LiCoO(AGCセイミケミカル社製、体積基準累積50%径(D50)12μm)を正極材料13として用いた。
図3及び図4に、正極材料13のSEM写真を示した。
実施例1と同様にして評価を行った。結果を表3に示した。また、塗布液の粘度を実施例3と同方法で測定し、結果を表3に示した。
(比較例2)
実施例1において、粒子状の含フッ素炭素材料に代えて、粒子状の炭素材料(アセチレンブラック、デンカブラック、プレス50%品、電気化学工業社製、平均一次粒径35nm、比表面積68m/g)を用いた以外は、実施例1と同様にして、正極材料14を得た。
実施例1と同様にして評価を行った。結果を表3に示した。
(比較例3)
LiNi0.5Co0.2Mn0.3(AGCセイミケミカル社製、体積基準累積50%径(D50)6μm)を正極材料15として用いた。
実施例1と同様にして評価を行った。結果を表3に示した。また、塗布液の粘度を実施例3と同方法で測定し、結果を表3に示した。
<炭素材料のフッ素化処理の確認>
AQF−IC法を用い、含フッ素炭素材料中のフッ素含有量を測定した。具体的には、測定試料を自動燃焼装置(三菱化学アナリテック社製、AQF−100)で燃焼させた後、NaOHを溶解させたH水溶液を捕集液として、燃焼ガスを捕集した。捕集液をイオンクラマトグラフィー(ダイオネクス社製、DX120、カラム:AS12A)に導入してフッ素量の定量を行った。内部標準法でフッ素の回収率を補正するための標準試料として、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)及びP(リン)を用いた。結果を表1に示した。
Figure 0006408463
<XPS(X線光電子分光)法を用いた表面組成の算出>
得られた正極材料について、アルバック・ファイ社製ESCA5500を用いてXPS分析を行った。ワイドスキャン分析において、Pass Energy:93.9[eV]、Energy Step:0.8[eV/step]、測定角度:45度の条件で行った。結果を表2に示した。
Figure 0006408463
表2中の数値の単位は、ac%(atomic concentration %)である。
全実施例の正極材料の表面は、比較例1よりCo濃度が低くなったが、含フッ素炭素材料に由来する元素(F)の濃度が逆に高くなった。したがって、正極活物質粒子の表面に、含フッ素炭素材料が存在していることが確認できた。
Figure 0006408463
表3より、実施例1〜8では、比較例1〜2より、塗布液の粘度が低く、50サイクル後の放電容量、及び容量維持率が高いことがわかる。また、実施例9〜11でも、比較例3より、塗布液の粘度が低く、50サイクル後の放電容量、及び容量維持率が高いことがわかる。
本発明の正極材料は、容易に製造でき、電池特性に優れ、かつサイクル特性が非常に優れ、更に正極を製造する際の塗布液の粘度を低くできることから、リチウムイオン二次電池に好適に用いることができる。
なお、2013年5月9日に出願された日本特許出願2013−099330号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。

Claims (13)

  1. 正極活物質粒子と、正極活物質粒子の表面上に粒子状又は繊維状の含フッ素炭素材料のみを有し、前記正極活物質粒子は、下記一般式(1)で表される化合物であり、前記含フッ素炭素材料におけるフッ素含有量が、1.0〜60質量%であることを特徴とする正極材料。
    Li(CoMnNi(1−x−y))O2+δ・・・一般式(1)
    ただし、一般式(1)中、0<x≦1、0≦y<1、1≦a≦1.5、0≦δ≦0.5である。
  2. 含フッ素炭素材料による正極活物質粒子の表面の被覆率が、10%以上である請求項1に記載の正極材料。
  3. 含フッ素炭素材料が、含フッ素カーボンブラック、含フッ素活性炭、含フッ素黒鉛、含フッ素カーボンファイバー、含フッ素カーボンナノチューブ、含フッ素フラーレン、及びフッ素化ダイヤモンドからなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1又は2に記載の正極材料。
  4. 含フッ素炭素材料の比表面積が、1m/g以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の正極材料。
  5. 正極材料が、粒子状又は繊維状の含フッ素化炭素材料を、正極活物質粒子100質量部に対して0.001〜10質量部有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の正極材料。
  6. 粒子状の含フッ素炭素材料の平均一次粒径が1nm〜10μmである請求項1〜5のいずれか1項に記載の正極材料。
  7. 繊維状の含フッ素炭素材料の平均繊維粒径が1〜200nmである請求項1〜6のいずれか1項に記載の正極材料。
  8. 正極活物質粒子の体積基準累積50%径(D50)が0.1〜30μmである請求項1〜7のいずれか1項に記載の正極材料。
  9. 正極活物質粒子が、一般式(1)において、a=1、x=1、δ=0の条件を満たす化合物、または、a=1、0.04≦x≦0.28、0.22≦y≦0.44、δ=0の条件を満たす化合物である請求項1〜8のいずれか1項に記載の正極材料。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の正極材料の製造方法であって、
    正極活物質粒子と、粒子状又は繊維状の含フッ素炭素材料とを乾式法で混合することを特徴とする正極材料の製造方法。
  11. 粒子状又は繊維状の含フッ素炭素材料が、F、ClF、及びNFからなる群から選ばれる少なくとも一種のガスを用いて−20〜350℃で粒子状又は繊維状の炭素材料をフッ素化処理して得られる請求項10に記載の正極材料の製造方法。
  12. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の正極材料と、導電材と、バインダーとを含有することを特徴とする正極。
  13. 請求項12に記載の正極と、負極と、セパレータと、非水電解質とを有することを特徴とするリチウムイオン二次電池。
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