JP2021050393A - ベーパーチャンバー用チタン銅合金板及びベーパーチャンバー - Google Patents

ベーパーチャンバー用チタン銅合金板及びベーパーチャンバー Download PDF

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Abstract

【課題】ろう付けや拡散接合などによって接合可能であり、接合時の熱処理や厚みの低減を行っても良好な強度を有するベーパーチャンバー用チタン銅合金板を提供する。【解決手段】Tiを2.0〜5.0質量%、Fe、Co、Mg、Si、Ni、Cr、Zr、Mo、V、Nb、Mn、B、P及びAlからなる群から選択される1種以上の元素を合計で0.05〜0.5質量%含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなるベーパーチャンバー用チタン銅合金板とする。【選択図】なし

Description

本開示は、ベーパーチャンバー用チタン銅合金板及びベーパーチャンバーに関する。
ノート型パソコン、タブレット端末、スマートフォンなどのモバイル機器において、CPUなどで発生する熱を放熱するための部品としてベーパーチャンバーに注目が集まっている。ベーパーチャンバーは、平板型のヒートパイプとも称されており、筐体の空洞内に封入された作動液の蒸発・凝縮サイクルによって熱を移動させることができる。
ベーパーチャンバーは、上板及び底板から構成される筐体と、筐体内に配置される内部部品(例えば、ウィックと呼ばれる毛細管構造や、筐体を内側から支持するための支持体など)と、筐体内に封入される作動液とを一般に備えている。このような構造を有するベーパーチャンバーは、筐体を構成する上板と底板との間や、筐体と内部部品との間を、ろう付けや拡散接合などによって接合した後、筐体内を脱気して低真空にした上で筐体の空洞内に作動液を封入し、加締め加工や溶接などによって筐体を密封することによって製造される。
ベーパーチャンバーの筐体を構成する上板及び底板としては、銅板や銅合金板などの各種金属板を用いることが知られている。例えば、特許文献1には、ろう付けや拡散接合などによって接合する際の熱処理によって軟化して筐体が変形することを抑制することを目的として、Niを0.2〜0.95質量%、Feを0.05〜0.8質量%、Pを0.03〜0.2質量%含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなり、Ni及びFeの合計含有量が0.25〜1.0質量%、Ni及びFeの合計含有量に対するPの含有量の割合が2〜10である銅合金板を用いることが提案されている。また、特許文献2には、上記と同様の目的のために、Mgを0.05〜0.5質量%含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなる銅合金板を用いることが提案されている。
特許第6446007号公報 特許第6446011号公報
近年、モバイル機器の小型化及び軽量化の進展に伴い、モバイル機器に用いられるベーパーチャンバーに対しても薄型化の要求が増大している。ベーパーチャンバーを薄型化するためには、ベーパーチャンバーの筐体を構成する上板及び底板の厚みを低減することが考えられるが、厚みを低減すると強度が十分に確保されない。特に、ベーパーチャンバーの筐体は、上板と底板との間を、ろう付けや拡散接合などによって接合することによって形成されるため、接合時の熱処理によって強度が低下し易くなる。特許文献1及び2に記載の銅合金は、熱処理後の強度が良好であると記載されているものの、その強度は十分ではなく、特に厚みを低減した場合には、十分な強度を有しているとはいえない。
本発明の実施形態は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、ろう付けや拡散接合などによって接合可能であり、接合時の熱処理や厚みの低減を行っても良好な強度を有するベーパーチャンバー用チタン銅合金板を提供することを目的とする。
また、本発明の実施形態は、強度を確保しつつ薄型化が可能なベーパーチャンバーを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意研究を行った結果、ベーパーチャンバーを薄型化すると、筐体の熱抵抗に対する寄与が小さくなるため、筐体の熱伝導率を高めることは重要ではないという知見を得た。この知見に基づいて材料の検討を行った結果、チタン銅合金板がベーパーチャンバーに用いるのに適した特性を有していることを見出した。特に、チタン銅合金板に特定の元素を含有させることにより、接合時の熱処理においてチタン酸化物やチタン窒化物を介した接合が生じ、接合力が増大することを見出し、本発明の実施形態に至った。
すなわち、本発明の実施形態は、Tiを2.0〜5.0質量%、Fe、Co、Mg、Si、Ni、Cr、Zr、Mo、V、Nb、Mn、B、P及びAlからなる群から選択される1種以上の元素を合計で0.05〜0.5質量%含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなるベーパーチャンバー用チタン銅合金板に関する。
また、本発明の実施形態は、前記ベーパーチャンバー用チタン銅合金板を備えるベーパーチャンバーに関する。
さらに、本発明の実施形態は、上板、底板、及び前記上板と底板との間に形成された空洞内に封入された作動液を備えるベーパーチャンバーであって、前記上板及び前記底板が、前記ベーパーチャンバー用チタン銅合金板から形成されており、前記上板の周縁部が前記底板と拡散接合又はろう付けにより接合されているベーパーチャンバーに関する。
本発明の実施形態によれば、ろう付けや拡散接合などによって接合可能であり、接合時の熱処理や厚みの低減を行っても良好な強度を有するベーパーチャンバー用チタン銅合金板を提供することができる。
また、本発明の実施形態によれば、強度を確保しつつ薄型化が可能なベーパーチャンバーを提供することができる。
本発明の実施形態に係るベーパーチャンバーの断面模式図である。 実施例1の試験片複合体の光学顕微鏡写真である。 比較例1の試験片複合体の光学顕微鏡写真である。 比較例4の試験片複合体の光学顕微鏡写真である。 実施例1の試験片複合体の反射電子像である。
以下、本発明の好適な実施形態について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されて解釈されるべきものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、改良などを行うことができる。この実施形態に開示されている複数の構成要素は、適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、この実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよいし、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
本発明の実施形態に係るベーパーチャンバー用チタン銅合金板(以下、「チタン銅合金板」と略すことがある)は、Tiを2.0〜5.0質量%、Fe、Co、Mg、Si、Ni、Cr、Zr、Mo、V、Nb、Mn、B、P及びAlからなる群から選択される1種以上の元素を合計で0.05〜0.5質量%含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなる合金組成を有する。
(1)合金組成
本発明の実施形態に係るチタン銅合金板は、Tiを2.0〜5.0質量%含有する。このような範囲にTi濃度を制御することにより、溶体化処理においてCuマトリックス中へTiを固溶させ、時効処理において微細な析出物を合金中に分散させることができる。特に、Ti濃度が2.0質量%未満になると、析出物の析出が促進され、強度が向上するため、チタン銅合金板に対して接合時の熱処理や厚みの低減を行っても、高い強度を確保することができる。また、Ti濃度を5.0質量%以下とすることにより、加工性が向上し、圧延の際に材料が割れ難くなる。Ti濃度は、強度及び加工性のバランスを考慮すると、好ましくは2.5〜4.5質量%、より好ましくは3.0〜4.0質量%である。
本発明の実施形態に係るチタン銅合金板は、Fe、Co、Mg、Si、Ni、Cr、Zr、Mo、V、Nb、Mn、B、P及びAlからなる群から選択される1種以上の元素(以下、「第三元素」という)を合計で0.05〜0.5質量%含有する。第三元素の合計濃度を0.05質量%以上とすることにより、強度が向上するとともに、接合時の熱処理によって金属組織が微細化する。そのため、チタン銅合金板に対して接合時の熱処理や厚みの低減を行っても、高い強度を確保することができる。一方、第三元素の合計濃度を0.5質量%以下とすることにより、接合時の熱処理によってチタンの拡散を促進し、チタン酸化物やチタン窒化物が効率的に生成するため、接合力を増大させることができる。また、加工性の向上効果が大きくなり、圧延の際に材料が割れ難くなる。第三元素の合計濃度は、強度及び加工性のバランスを考慮すると、好ましくは0.1〜0.4質量%、より好ましくは0.15〜0.35質量%である。
本発明の実施形態に係るチタン銅合金板は、残部が銅及び不可避的不純物からなる。ここで、本明細書において「不可避的不純物」とは、H、Oなどの除去することが難しい成分のことを意味する。不可避的不純物は、原料を溶製する段階で不可避的に混入する。
(2)金属組織
本発明の実施形態に係るチタン銅合金板の金属組織は、特に限定されないが、800℃で1時間熱処理して空冷した後の圧延方向に平行な断面の組織観察において、平均結晶粒径が好ましくは5〜100μm、より好ましくは5〜75μmである。このような範囲に平均結晶粒径を制御することにより、強度、曲げ加工性などの特性をバランス良く高めることができる。また、平均結晶粒径が上記の範囲にあると、結晶粒界が多くなるため、接合時の熱処理によってチタン銅合金板中のチタンが表層に濃化し、それらが雰囲気中の微量の酸素や雰囲気ガス(例えば、窒素)と反応する。この反応によって生成したチタン酸化物やチタン窒化物がチタン銅合金間の接合を強固にするバインダーとしての役目を果たす。したがって、チタン銅合金板を用いて拡散接合などの接合を行う場合、焼鈍後の平均結晶粒径は接合の面で重要である。
ここで、平均結晶粒径は、JIS H0501:1986に基づく切断法に準じて測定することができる。
また、800℃で1時間熱処理して空冷する条件は、ベーパーチャンバーの製造においてチタン銅合金を拡散接合又はろう付けにより接合する場合の条件を想定したものである。
(3)ビッカース硬さ
本発明の実施形態に係るチタン銅合金板のビッカース硬さは、特に限定されないが、800℃で1時間熱処理して空冷した後の圧延方向に平行な断面のビッカース硬さが好ましくは150以上、より好ましくは200以上である。ビッカース硬さを150以上に制御することにより、接合時の熱処理や厚みの低減を行っても、高い強度を確保することができる。
ビッカース硬さは、ビッカース硬さ試験機を用いて測定することができる。
(4)0.2%耐力
本発明の実施形態に係るチタン銅合金板の0.2%耐力は、特に限定されないが、800℃で1時間熱処理して空冷した後の圧延方向に平行な方向における0.2%耐力が好ましくは500MPa以上、より好ましくは550〜800MPaである。0.2%耐力を500MPa以上に制御することにより、接合時の熱処理や厚みの低減を行っても、高い強度を確保することができる。ただし、0.2%耐力が高すぎると、加締め加工で割れが生じることがあるため、800MPa以下に制御することが望ましい。
0.2%耐力は、JIS Z2241:2011に準じて測定することができる。
本発明の実施形態に係るチタン銅合金板は、800℃で1時間熱処理して空冷する前の圧延方向に平行な方向における0.2%耐力に対する800℃で1時間熱処理して空冷した後の圧延方向に平行な方向における0.2%耐力の比(800℃で1時間熱処理して空冷した後の圧延方向に平行な方向における0.2%耐力/800℃で1時間熱処理して空冷する前の圧延方向に平行な方向における0.2%耐力)が0.3以上であることが好ましく、0.35〜1.0であることがより好ましい。このような範囲の比であれば、800℃で1時間熱処理して空冷する前後の強度の低下が比較的少ないとみなすことができる。
(5)引張強さ
本発明の実施形態に係るチタン銅合金板の引張強さは、特に限定されないが、800℃で1時間熱処理して空冷した後の圧延方向に平行な方向における引張強さが、好ましくは700MPa以上、より好ましくは700〜900MPaである。このような範囲に引張強さを制御することにより、接合時の熱処理や厚みの低減を行っても、高い強度を確保することができる。
(6)破断伸び
本発明の実施形態に係るチタン銅合金板の破断伸びは、特に限定されないが、圧延方向に平行な方向における破断伸びが、好ましくは5%以上、より好ましくは5〜30%である。このような範囲に破断伸びを制御することにより、ベーパーチャンバーの筐体を構成する上板及び底板への加工性が向上する。
また、本発明の実施形態に係るチタン銅合金板は、800℃で1時間熱処理して空冷した後の圧延方向に平行な方向における破断伸びが、好ましくは5%以上、より好ましくは7〜30%である。このような範囲に破断伸びを制御することにより、このような範囲に引張強さを制御することにより、接合時の熱処理や厚みの低減を行っても、高い強度を確保することができる。
(7)導電率
本発明の実施形態に係るチタン銅合金板の導電率は、特に限定されず、低くても構わない。特に、ベーパーチャンバーを薄型化すると、筐体の熱抵抗に対する寄与が小さくなるため、導電率が低くてもベーパーチャンバーの放熱特性に対する影響は少ない。
(8)厚さ
本発明の実施形態に係るチタン銅合金板の厚さは、特に限定されないが、好ましくは0.01〜0.5mm、より好ましくは0.05〜0.4mmである。このような範囲に厚さを制御することにより、筐体に用いられるチタン銅合金の厚さを低減することができるため、ベーパーチャンバーの薄型化が可能となる。
(9)製造方法
本発明の実施形態に係るチタン銅合金板の好適な製造例を工程ごとに説明する。
<インゴットの製造>
溶解及び鋳造によるインゴットの製造は、基本的に真空中又は不活性ガス雰囲気中で行う。溶解において添加元素の溶け残りがあると、強度の向上に対して有効に作用しない。よって、溶け残りをなくすため、FeやCrなどの高融点の元素は、添加してから十分に攪拌した上で、一定時間保持する必要がある。一方、TiはCu中に比較的溶け易いのでTi以外の元素の溶解後に添加すればよい。したがって、Cuに、Fe、Co、Mg、Si、Ni、Cr、Zr、Mo、V、Nb、Mn、B、P及びAlからなる群から選択される1種以上の元素を合計で0.05〜0.5質量%含有するように添加した後、Tiを2.0〜5.0質量%含有するように添加してインゴットを製造することが望ましい。
<均質化焼鈍及び熱間圧延>
インゴットの製造時に生じた凝固偏析や晶出物は粗大であるため、均質化焼鈍によって出来るだけ母相に固溶させて小さくし、可能な限り無くすことが望ましい。これは曲げ割れの防止に効果があるからである。具体的には、インゴットの製造工程後には、900〜970℃に加熱して3〜24時間均質化焼鈍を行い、次いで熱間圧延を実施することが好ましい。液体金属脆性を防止するために、熱延前及び熱延中は960℃以下とし、且つ、元厚から全体の圧下率が90%までのパスは900℃以上とするのが好ましい。
熱間圧延後、再度、均質化焼鈍を実施することが好ましい。これは、熱間圧延中に析出する第二相粒子を再度固溶させるためである。その条件は900〜970℃に加熱して3〜24時間均質化焼鈍を行い、次いで水冷すればよい。この工程を実施しない場合には、溶体化処理及びその後の工程を適切に実施したとしても、所望の特性が得られ難い。
<第一溶体化処理>
その後、冷延と焼鈍とを適宜繰り返してから第一溶体化処理を行うことが好ましい。ここで予め溶体化を行っておく理由は、最終の溶体化処理での負担を軽減させるためである。すなわち、最終の溶体化処理では、第二相粒子を固溶させるための熱処理ではなく、既に溶体化されてあるのだから、その状態を維持しつつ再結晶のみ起こさせればよいので、軽めの熱処理で済む。具体的には、第一溶体化処理は加熱温度を850〜900℃とし、2〜10分間行えばよい。そのときの昇温速度及び冷却速度においても極力速くし、ここでは第二相粒子が析出しないようにするのが好ましい。なお、第一溶体化処理は行わなくてもよい。
<中間圧延>
最終の溶体化処理前の中間圧延における圧下率を高くするほど、最終の溶体化処理における再結晶粒を均一かつ微細に制御できる。したがって、中間圧延の圧下率は好ましくは70〜99%である。圧下率は{((圧延前の厚み−圧延後の厚み)/圧延前の厚み)×100%}で定義される。
<最終の溶体化処理>
最終の溶体化処理では、析出物を完全に固溶させることが望ましいが、完全に無くすまで高温に加熱すると、結晶粒が粗大化し易いので、加熱温度は第二相粒子組成の固溶限付近の温度とする(Tiの添加量が2.0〜5.0質量%の範囲でTiの固溶限が添加量と等しくなる温度は730〜850℃程度であり、例えばTiの添加量が3.0質量%では800℃程度)。そして、この温度まで急速に加熱し、水冷などによって冷却速度も速くすれば粗大な第二相粒子の発生が抑制される。従って、典型的には、730〜850℃のTiの固溶限が添加量と同じになる温度に対して−20℃〜+50℃の温度に加熱し、より典型的には730〜850℃のTiの固溶限が添加量と同じになる温度に比べて0〜30℃高い温度、好ましくは0〜20℃高い温度に加熱する。
また、最終の溶体化処理での加熱時間は、短いほうが結晶粒の粗大化を抑制できる。加熱時間は、例えば30秒〜10分とすることができ、典型的には1分〜8分とすることができる。この時点で第二相粒子が発生しても微細かつ均一に分散していれば、強度と曲げ加工性に対してほとんど無害である。しかし、粗大なものは最終の時効処理で更に成長する傾向にあるので、この時点での第二相粒子は生成してもなるべく少なく、小さくしなければならない。
<時効処理>
最終の溶体化処理に引き続いて、時効処理を行う。ここでの時効処理は一般的な時効処理よりも低温短時間で実施することが望ましい。具体的には、式(1)の材料温度及び加熱時間の関係で時効処理することが好ましく、式(2)の材料温度及び加熱時間の関係で時効処理することがより好ましく、式(3)の材料温度及び加熱時間の関係で時効処理することが更により好ましい。
式(1):−13x+6500≦y≦−13x+8900
式(2):−13x+6700≦y≦−13x+8700
式(3):−13x+6900≦y≦−13x+8500
(式中、x=材料温度(℃)、y=加熱時間(秒)を表し、350≦x≦650、1≦y≦3600である。)
時効処理は、酸化被膜の発生を抑制するためにAr、N2、H2などの不活性雰囲気で行うことが好ましい。材料温度が650℃を超えたり、時効処理時間が3600秒を超えたりすると、時効処理による第二相粒子が材料表面に析出して所望の特性が得られ難い。
<最終の冷間圧延>
上記時効処理後、最終の冷間圧延を行う。最終の冷間加工によってチタン銅合金板の強度を高めることができるが、高強度と曲げ加工性の良好なバランスを得るためには圧下率を好ましくは5〜50%、より好ましくは20〜40%とする。
<最終の時効処理>
最終の冷間圧延に引き続いて、最終の時効処理を行う。ここでの時効処理も一般的な時効処理よりも低温短時間で実施することが望ましい。具体的には、式(1)の材料温度及び加熱時間の関係で時効処理することが好ましく、式(2)の材料温度及び加熱時間の関係で時効処理することがより好ましく、式(3)の材料温度及び加熱時間の関係で時効処理することが更により好ましい。
式(1):−13x+6500≦y≦−13x+8900
式(2):−13x+6700≦y≦−13x+8700
式(3):−13x+6900≦y≦−13x+8500
(式中、x=材料温度(℃)、y=加熱時間(秒)を表し、350≦x≦650、1≦y≦3600である。)
時効処理は、酸化被膜の発生を抑制するためにAr、N2、H2などの不活性雰囲気で行うことが好ましい。材料温度が650℃を超えたり、時効処理時間が3600秒を超えたりすると、時効処理による第二相粒子が材料表面に析出して所望の特性が得られ難い。
なお、上記各工程の合間に、表面の酸化スケール除去のための研削、研磨、ショットブラスト酸洗などの工程を適宜行なってもよい。
上記のようにして製造される本発明の実施形態に係るチタン銅合金板は、ろう付けや拡散接合などによって接合可能であり、接合時の熱処理や厚みの低減を行っても良好な強度を有するため、ベーパーチャンバーの構成部材(特に、筐体を構成する上板及び底板)として用いることができる。
次に、本発明の実施形態に係るベーパーチャンバーについて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るベーパーチャンバーの断面模式図である。
図1において、ベーパーチャンバー1は、上板2、底板3、上板2と底板3との間に形成された空洞内に封入された作動液4を備えている。また、空洞内には、ウィックと呼ばれる毛細管構造5、上板2及び底板3から構成される筐体を内側から支持するための支持体6が設けられている。
筐体を構成する上板2及び底板3は、上記のチタン銅合金板から形成されている。また、上板2の周縁部は底板3と拡散接合又はろう付けにより接合されており、上板2及び底板3は、それらの間に空洞を形成するように予め加工されている。
上記のチタン銅合金板は、ベーパーチャンバー1の製造において、ろう付けや拡散接合などによって接合可能であり、接合時の熱処理や厚みの低減を行っても良好な強度を有するため、ベーパーチャンバー1の強度を確保しつつ薄型化が可能になる。
また、上板2及び底板3は、上記のチタン銅合金板から形成されているため、上板2の周縁部と底板3とが、接合時に生成したチタン酸化物及び/又はチタン窒化物を介して接合される。そのため、上板2の周縁部と底板3との接合性が良好である。
作動液4、毛細管構造5及び支持体6としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。
上記のような構造を有するベーパーチャンバー1は、筐体を構成する上板2及び底板3との間や、筐体と毛細管構造5及び支持体6との間を、ろう付けや拡散接合などによって接合し、筐体の空洞内に作動液4を封入することによって製造することができる。
ベーパーチャンバー1は、ヒートシンクのベース部分や、放熱板などの設置が困難な薄いスペースの放熱に用いることができる。
ベーパーチャンバー1をヒートシンクのベース部分に用いる場合、例えば、上板2側にヒートシンク、底板3側にCPUなどの熱源が配置される。ベーパーチャンバー1は、作動液4が熱源によって加熱されると、作動液4が潜熱を吸収して蒸発する。蒸気は閉空間内に拡散し、ヒートシンクに接している上板2側の面に到達すると冷却され、潜熱を放出して液体に戻る。液体に戻った作動液4は、毛細管現象によって毛細管構造5を介して移動する。毛細管構造5は、作動液4を熱源方向に誘導するような形状をしており、再び作動液4が吸熱を行って蒸発するといったサイクルが繰り返される。これにより、熱源から発生した熱を、ヒートシンクに効率良く放熱することができる。
以下、本発明の実施形態を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1:チタン銅合金板)
まず、真空溶解炉にて電気銅2.5kgを溶解し、3.2質量%のTi及び0.2%のFeを添加した。添加元素の溶け残りがないよう添加後の保持時間にも十分に配慮した後に、これらをAr雰囲気で鋳型に注入して、約2kgのインゴットを製造した。
次に、上記インゴットに対して950℃で3時間加熱する均質化焼鈍の後、900〜950℃で熱間圧延を行い、続いて950℃で3時間加熱する均質化焼鈍後に水冷を実施し、板厚15mmの熱延板を得た。面削による脱スケール後、冷間圧延して素条の板厚(2mm)とし、素条での第一溶体化処理を行った。第一溶体化処理の条件は850℃で10分間加熱とし、その後、水冷した。次いで、最終冷間圧延における圧下率及び製品板厚の条件に応じて圧下率を調整して中間の冷間圧延を行った後、急速加熱が可能な焼鈍炉に挿入して最終の溶体化処理を行い、その後、水冷した。このときの加熱条件は800℃で10分とした。次いで、Ar雰囲気中、410℃で180分の間、時効処理を行った。酸洗による脱スケール後、圧下率20%で最終冷間圧延を行って板厚0.15mmとし、最後に350℃で3時間の間、時効処理を行って試験片(3.2Ti−0.2Fe:残部は銅及び不可避的不純物である)を得た。
(実施例2:チタン銅合金板)
真空溶解炉にて電気銅2.5kgを溶解し、4.8質量%のTi及び0.2質量%のFeを添加してインゴットを製造したこと以外は実施例1と同様の条件で試験片(4.8Ti−0.2Fe)を得た。
(実施例3:チタン銅合金板)
真空溶解炉にて電気銅2.5kgを溶解し、2.1質量%のTi及び0.2質量%のFeを添加してインゴットを製造したこと以外は実施例1と同様の条件で試験片(2.1Ti−0.2Fe)を得た。
(実施例4:チタン銅合金板)
真空溶解炉にて電気銅2.5kgを溶解し、3.2質量%のTi及び0.45質量%のFeを添加してインゴットを製造したこと以外は実施例1と同様の条件で試験片(3.2Ti−0.45Fe)を得た。
(実施例5:チタン銅合金板)
真空溶解炉にて電気銅2.5kgを溶解し、3.2質量%のTi及び0.06質量%のFeを添加してインゴットを製造したこと以外は実施例1と同様の条件で試験片(3.2Ti−0.06Fe)を得た。
(実施例6:チタン銅合金板)
真空溶解炉にて電気銅2.5kgを溶解し、3.2質量%のTi、0.2質量%のCo、0.002質量%のMg、0.002質量%のSi、0.005質量%のNi、0.004質量%のCr、0.002質量%のZr、0.005質量%のMo、0.001質量%のV、0.004質量%のNb、0.005質量%のMn、0.001質量%のP及び0.001質量%のAlを添加してインゴットを製造したこと以外は実施例1と同様の条件で試験片(3.2Ti−0.2Co−0.002Mg−0.002Si−0.005Ni−0.004Cr−0.002Zr−0.005Mo−0.001V−0.004Nb−0.005Mn−0.001P−0.001Al)を得た。
(比較例1:コルソン合金板)
まず、高周波溶解炉にて電気銅2.5kgを溶解し、1.9質量%のCo、0.44質量%のSiを添加した。添加元素の溶け残りがないよう添加後の保持時間にも十分に配慮した後に、これらをAr雰囲気で鋳型に注入して、約2kgのインゴットを製造した。
次に、上記インゴットに対して、950℃で3時間加熱したインゴットを所定の厚みまで熱間圧延し、直ちに水冷した。熱間圧延で生成した酸化スケールをグラインダーで除去した。研削量は片面あたり0.5mmとした。次に、総加工度(R)95%、1パスあたりの加工度(rave)20%で冷間圧延した。次に、920℃に調整した電気炉に試料を挿入し、60秒間保持した後、水槽に入れ冷却した。次に、加工度70%で厚み0.25mmまで冷間圧延を行った。800℃に調整した電気炉に試料を挿入し、10秒間保持する溶体化処理を行った後、試料を水槽に入れ冷却した。次に、電気炉を用い450℃で5時間、Ar雰囲気中で加熱する時効処理を行った。次に、0.25mmから0.20mmまで加工度20%で冷間圧延した。次に、400℃に調整した電気炉に試料を挿入し、10秒間保持した後、試料を大気中に放置し冷却して試験片(1.9Co−0.44Si)を得た。
(比較例2:タフピッチ銅板)
JIS H3100;2012に規定されるタフピッチ銅板(板厚0.1mm)を試験片とて用いた。
(比較例3:コルソン合金板)
まず、高周波溶解炉にて電気銅2.5kgを溶解し、3.8質量%のNi、0.8質量%のSi、0.13質量%のMn、0.1質量%のMgを添加した。添加元素の溶け残りがないよう添加後の保持時間にも十分に配慮した後に、これらをAr雰囲気で鋳型に注入して、約2kgのインゴットを製造した。
次に、上記インゴットに対して、950℃で3時間加熱したインゴットを所定の厚みまで熱間圧延し、直ちに水冷した。熱間圧延で生成した酸化スケールをグラインダーで除去した。研削量は片面あたり0.5mmとした。次に、総加工度(R)80%、1パスあたりの加工度(rave)20%で冷間圧延した。次に、750℃に調整した電気炉に試料を挿入し、90秒間保持した後、水槽に入れ冷却した。次に、加工度75%で厚み0.25mmまで冷間圧延を行った。800℃に調整した電気炉に試料を挿入し、10秒間保持する溶体化処理を行った後、試料を水槽に入れ冷却した。次に、電気炉を用い450℃で5時間、Ar雰囲気中で加熱する時効処理を行った。次に、0.25mmから0.20mmまで加工度20%で冷間圧延した。次に、400℃に調整した電気炉に試料を挿入し、10秒間保持した後、試料を大気中に放置し冷却して試験片(3.8Ni−0.8Si−0.13Mn−0.1Mg)を得た。
(比較例4:コルソン合金板)
まず、高周波溶解炉にて電気銅2.5kgを溶解し、1.95質量%のNi、1.1質量%のCo、0.67質量%のSi、0.11質量%のCrを添加した。添加元素の溶け残りがないよう添加後の保持時間にも十分に配慮した後に、これらをAr雰囲気で鋳型に注入して、約2kgのインゴットを製造した。
次に、上記インゴットに対して、950℃で3時間加熱したインゴットを所定の厚みまで熱間圧延し、直ちに水冷した。熱間圧延で生成した酸化スケールをグラインダーで除去した。研削量は片面あたり0.5mmとした。次に、総加工度(R)75%、1パスあたりの加工度(rave)15%で冷間圧延した。次に、900℃に調整した電気炉に試料を挿入し、10秒間保持した後、水槽に入れ冷却した。次に、加工度20%で厚み0.25mmまで冷間圧延を行った。800℃に調整した電気炉に試料を挿入し、10秒間保持する溶体化処理を行った後、試料を水槽に入れ冷却した。次に、電気炉を用い450℃で5時間、Ar雰囲気中で加熱する時効処理を行った。次に、0.25mmから0.20mmまで加工度20%で冷間圧延した。次に、400℃に調整した電気炉に試料を挿入し、10秒間保持した後、試料を大気中に放置し冷却して試験片(1.95Ni−1.1Co−0.67Si−0.11Cr)を得た。
(比較例5:コルソン合金板)
まず、高周波溶解炉にて電気銅2.5kgを溶解し、1.5質量%のNi、1.1質量%のCo、0.67質量%のSi、0.05質量%のMgを添加した。添加元素の溶け残りがないよう添加後の保持時間にも十分に配慮した後に、これらをAr雰囲気で鋳型に注入して、約2kgのインゴットを製造した。
次に、上記インゴットに対して、950℃で3時間加熱したインゴットを所定の厚みまで熱間圧延し、直ちに水冷した。熱間圧延で生成した酸化スケールをグラインダーで除去した。研削量は片面あたり0.5mmとした。次に、総加工度(R)75%、1パスあたりの加工度(rave)20%で冷間圧延した。次に、800℃に調整した電気炉に試料を挿入し、120秒間保持した後、水槽に入れ冷却した。次に、加工度70%で厚み0.25mmまで冷間圧延を行った。800℃に調整した電気炉に試料を挿入し、10秒間保持する溶体化処理を行った後、試料を水槽に入れ冷却した。次に、電気炉を用い450℃で5時間、Ar雰囲気中で加熱する時効処理を行った。次に、0.25mmから0.20mmまで加工度20%で冷間圧延した。次に、400℃に調整した電気炉に試料を挿入し、10秒間保持した後、試料を大気中に放置し冷却して試験片(1.5Ni−1.1Co−0.67Si−0.05Mg)を得た。
(比較例6:チタン銅合金板)
真空溶解炉にて電気銅2.5kgを溶解し、5.2質量%のTi及び0.2質量%のFeを添加してインゴットを製造したこと以外は実施例1と同様の条件で試験片(5.2Ti−0.2Fe)を得た。
(比較例7:チタン銅合金板)
真空溶解炉にて電気銅2.5kgを溶解し、1.9質量%のTi及び0.2質量%のFeを添加してインゴットを製造したこと以外は実施例1と同様の条件で試験片(1.9Ti−0.2Fe)を得た。
(比較例8:チタン銅合金板)
真空溶解炉にて電気銅2.5kgを溶解し、3.2質量%のTi及び0.6質量%のFeを添加してインゴットを製造したこと以外は実施例1と同様の条件で試験片(3.2Ti−0.6Fe)を得た。
(比較例9:チタン銅合金板)
真空溶解炉にて電気銅2.5kgを溶解し、3.2質量%のTi及び0.04質量%のFeを添加してインゴットを製造したこと以外は実施例1と同様の条件で試験片(3.2Ti−0.04Fe)を得た。
(比較例10:チタン銅合金板)
真空溶解炉にて電気銅2.5kgを溶解し、3.2質量%のTiを添加してインゴットを製造したこと以外は実施例1と同様の条件で試験片(3.2Ti)を得た。
上記で作製した試験片について次の評価を行った。
(1)接合性の評価
上記で作製した試験片を15mm×15mmに切断した。切断された3つの試験片を3枚重ねて治具に挟み固定し、0.9MPaの応力で締め付けた状態で管状炉に入れた。そして、水素ガス雰囲気下及び窒素ガス雰囲気下のそれぞれにおいて800℃で1時間の熱処理を行った後、空冷することにより、拡散接合を模した熱処理(焼鈍)を実施し、試験片複合体を得た。
次に、上記で得られた試験片複合体に対して自由落下試験及び光学顕微鏡観察(1000倍)を行った。自由落下試験は、試験片複合体を30cmの高さからアスファルト上に角度を指定せずに100回自由落下させた場合に試験片が剥離するか否かを評価した。また、光学顕微鏡観察は、試験片間を光学顕微鏡(1000倍)で断面観察することにより、拡散接合しているか否かを評価した。これらの評価基準は以下の通りとした。
A:自由落下試験において試験片が剥離していないとともに、光学顕微鏡観察において試験片間に隙間が生じておらず、拡散接合が良好であると認められるもの
B:自由落下試験において試験片が剥離していないものの、光学顕微鏡観察において試験片間に隙間が生じており、拡散接合が不十分であると認められるもの
C:上記の熱処理を行っても試験片同士が接合しなかったもの又は自由落下試験において試験片が剥離してしまったもの
なお、この評価で撮影された顕微鏡写真の代表例を図2〜4に示す。図2は評価結果がAである実施例1の試験片複合体の光学顕微鏡写真、図3は評価結果がCである比較例1の試験片複合体の光学顕微鏡写真、図4は評価結果がBである比較例4の試験片複合体の光学顕微鏡写真である。
また、上記の試験片複合体における各試験片の間をFE−SEM(5000倍)を用いて反射電子像観察及びEDX分析による定性分析を行い、接合部のチタン酸化物及び/又はチタン窒化物の平均層厚みを測定した。平均層厚みは、上記5000倍で観察した反射電子像の画面上で任意の5箇所の厚さ測定を行い、それらの平均を求めることによって算出した。この評価において、母材同士の接合よりもチタン酸化物及び/又はチタン窒化物を介して接合している方が強固に接合されていると判断することができるため、チタン酸化物及び/又はチタン窒化物の平均層厚みが1μm以上であれば強固に接合されているといえる。したがって、上記の光学顕微鏡による評価が同じであっても、チタン酸化物及び/又はチタン窒化物の平均層厚みが大きい方が、接合性が良好である。
なお、この評価で撮影された反射電子像の代表例を図5に示す。図5は実施例1の試験片複合体(水素ガス雰囲気下で熱処理後)の反射電子像であり、試験片の境界にチタン酸化物(中央の白色部分)が生成していることを確認することができる。
(2)平均結晶粒径
上記で作製した試験片を水素ガス雰囲気下において800℃で1時間の熱処理を行った後、空冷することにより、拡散接合を模した熱処理(焼鈍)を実施した。この試験片について、平均結晶粒径を評価した。平均結晶粒径は、圧延方向に平行な断面を研磨したのちエッチングし、その面を光学顕微鏡で観察し、100個以上の結晶粒の粒径をJIS H0501:1986の切断法で測定することによって求めた。なお、窒素ガス雰囲気下で熱処理した後の試験片についても同様の評価を行ったが、平均結晶粒径の値は水素ガス雰囲気下で熱処理した後の試験片と同程度であった。
(3)ビッカース硬さ(HV)
上記で作製した試験片を水素ガス雰囲気下において800℃で1時間の熱処理を行った後、空冷することにより、拡散接合を模した熱処理(焼鈍)を実施した。この試験片について、ビッカース硬さ試験機を用いてビッカース硬さを測定した。なお、窒素ガス雰囲気下で熱処理した後の試験片についても同様の評価を行ったが、ビッカース硬さの値は水素ガス雰囲気下で熱処理した後の試験片と同程度であった。
(4)0.2%耐力(YS)、破断伸び(EL)及び引張強さ(TS)
上記で作製した試験片を水素ガス雰囲気下において800℃で1時間の熱処理を行った後、空冷することにより、拡散接合を模した熱処理(焼鈍)を実施した。この熱処理前後の試験片について、JIS13B号試験片を作製し、JIS Z2241:2011に準じ、引張試験機を用いて圧延方向に平行な方向における0.2%耐力、破断伸び及び引張強さを測定した。なお、引張強さ(TS)については、熱処理後の試験片のみについて測定した。なお、窒素ガス雰囲気下で熱処理した後の試験片についても同様の評価を行ったが、0.2%耐力、破断伸び及び引張強さの値は水素ガス雰囲気下で熱処理した後の試験片と同程度であった。
(5)導電率(EC)
上記で作製した試験片を水素ガス雰囲気下において800℃で1時間の熱処理を行った後、空冷することにより、拡散接合を模した熱処理(焼鈍)を実施した。この試験片について、JIS H0505:1975に準じ、ダブルブリッジを用いた四端子法で導電率を測定した。なお、窒素ガス雰囲気下で熱処理した後の試験片についても同様の評価を行ったが、導電率の値は水素ガス雰囲気下で熱処理した後の試験片と同程度であった。
上記の各評価結果を表1に示す。
Figure 2021050393
表1に示されるように、実施例1〜6のチタン銅合金板は、接合性が良好であり、比較例1〜5の各金属板に比べて、熱処理後のビッカース硬さ、0.2%耐力及び引張強さが高かった。特に、実施例1、2及び4のチタン銅合金板は、平均結晶粒径が小さいため、熱処理時(接合時)の雰囲気が水素ガス雰囲気である場合には接合面にチタン酸化物が生成し、また、熱処理時(接合時)の雰囲気が窒素ガス雰囲気である場合には接合面にチタン窒化物及びチタン酸化物が生成し、それらを介して強固に接合していた。また、実施例1と実施例4及び5との比較から、第三元素(Fe)の含有量を適切な範囲に制御することにより、平均結晶粒径を小さくすることができるため、チタン酸化物及び/又はチタン窒化物の平均層厚みを大きくして接合性を向上させ得ることがわかった。
一方、比較例6のチタン銅合金板は、Tiの含有量が多すぎたため、熱間圧延で割れが発生してしまった。また、比較例7のチタン銅合金板は、Tiの含有量が少なすぎたため、熱処理後のビッカース硬さ、0.2%耐力及び引張強さが低くなった。また、比較例8及び9のチタン銅合金板は、第三元素(Fe)の含有量が適切な範囲でなかったため、チタン酸化物及び/又はチタン窒化物の平均層厚みが十分ではなく、所望の接合性を得ることができなかった。さらに、比較例10のチタン銅合金板は、第三元素を含有していないため、チタン酸化物及び/又はチタン窒化物が生成せず、所望の接合性を得ることができなかった。
以上の結果からわかるように、本発明の実施形態によれば、ろう付けや拡散接合などによって接合可能であり、接合時の熱処理や厚みの低減を行っても良好な強度を有するベーパーチャンバー用チタン銅合金板を提供することができる。また、本発明の実施形態によれば、強度を確保しつつ薄型化が可能なベーパーチャンバーを提供することができる。
1 ベーパーチャンバー
2 上板
3 底板
4 作動液
5 毛細管構造
6 支持体

Claims (9)

  1. Tiを2.0〜5.0質量%、Fe、Co、Mg、Si、Ni、Cr、Zr、Mo、V、Nb、Mn、B、P及びAlからなる群から選択される1種以上の元素を合計で0.05〜0.5質量%含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなるベーパーチャンバー用チタン銅合金板。
  2. 800℃で1時間熱処理して空冷した後の圧延方向に平行な断面のビッカース硬さが150以上である、請求項1に記載のベーパーチャンバー用チタン銅合金板。
  3. 800℃で1時間熱処理して空冷した後の圧延方向に平行な方向における0.2%耐力が500MPa以上である、請求項1又は2に記載のベーパーチャンバー用チタン銅合金板。
  4. 800℃で1時間熱処理して空冷する前の圧延方向に平行な方向における0.2%耐力に対する800℃で1時間熱処理して空冷した後の圧延方向に平行な方向における0.2%耐力の比が0.3以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のベーパーチャンバー用チタン銅合金板。
  5. 800℃で1時間熱処理して空冷した後の圧延方向に平行な断面の組織観察において、平均結晶粒径が5〜100μmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のベーパーチャンバー用チタン銅合金板。
  6. 厚さが0.01〜0.5mmである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のベーパーチャンバー用チタン銅合金板。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載のベーパーチャンバー用チタン銅合金板を備えるベーパーチャンバー。
  8. 上板、底板、及び前記上板と底板との間に形成された空洞内に封入された作動液を備えるベーパーチャンバーであって、
    前記上板及び前記底板が、請求項1〜6のいずれか一項に記載のベーパーチャンバー用チタン銅合金板から形成されており、
    前記上板の周縁部が前記底板と拡散接合又はろう付けにより接合されているベーパーチャンバー。
  9. 前記上板の周縁部と前記底板とが、前記接合時に生成したチタン酸化物及び/又はチタン窒化物を介して接合されている、請求項8に記載のベーパーチャンバー。
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