JP2013057116A - 電気・電子部品用銅合金及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Fe2.1重量%以上2.6重量%以下、P0.015重量%以上0.15重量%以下、Zn0.05重量%以上0.2重量%以下を含有し、残部がCuと不可避的不純物からなる銅合金の鋳塊を、熱間圧延、第一の冷間圧延、第一の熱処理、第二の熱処理、及び第三の冷間圧延して所望の板厚まで加工する銅合金の製造工程において、前記第二熱処理の条件を420℃以上450℃以下で10時間以上30時間以下とし、前記第三の冷間圧延の加工度を60%以下とする。
【選択図】 図1
Description
引張強さ520MPa以上、ビッカース硬さ150Hv以上であり、かつCu母相の結晶粒が等軸状であることを特徴とする電気・電子部品用銅合金が提供される。
前記第二の熱処理の条件を420℃以上450℃以下で10時間以上30時間以下とし、
前記第三の冷間圧延の加工度を60%以下とすることを特徴とする電気・電子部品用銅合金の製造方法が提供される。
本発明の実施の形態の電気・電子部品用銅合金の成分は、Fe2.1重量%以上2.6重量%以下、P0.015重量%以上0.15重量%以下、Zn0.05重量%以上0.2重量%以下を含有し、残部がCuと不可避的不純物からなることを特徴とする。
本実施の形態において、銅合金を構成する成分について添加の理由と限定理由を以下に説明する。
C1940の規格成分である。本発明の実施の形態における規定範囲はこれに従ったものである。
本発明の実施の形態における銅合金は基本的にC1940の規格成分である。また、不純物として混入することを避けられない元素として、Mg、Al、Si、Sn、Ti、Cr、Mn、Co、Ni、Zr、C、Oがある。これは原料や脱酸剤等に含有される元素であり、鋳造時等に混入する可能性がある元素である。これらの元素は0.1重量%以下では、本発明の実施の形態のかなめである高強度、かつCu母相の結晶粒を等軸状にすること、また規定の特性を満たすこと、に悪影響を与えるものではなく、不可避的不純物として許容してよい範囲である。
また、本発明の実施の形態における銅合金の特性は、引張強さ520MPa以上、ビッカース硬さ150Hv以上であることを特徴とする。本実施の形態において、この銅合金の特性の限定理由を以下に説明する。
本発明の実施の形態のターゲットは高強度が要求される用途の銅合金であり、ESH、SSHと呼ばれる質別に関するものである。JIS規定において、C1940のESHの引張強さ505MPa以上590MPa以下、ビッカース硬さ145Hv以上170Hv以下である。本実施の形態では規定範囲を満たすものである。
リードフレーム等に用いられる電気・電子部品用銅合金は必然的に高い導電率が要求される。C1940の場合、一般的に60%IACS以上を要求されており、本実施の形態における規定範囲はこれに従ったものである。
リードフレーム等は前述のとおり打抜き成形される。この打抜き成形によって銅合金板にひずみが蓄積される。異方性をもつ材料は方向によって機械的特性が異なるため、ひずみが開放されたときの向きによって変形挙動が変わる。例えば、リードフレームのアウターリードを打ち抜きで、その後エッチング処理でインナーリードを成形する場合、エッチング処理でひずみが開放され、ピンの向きなどによって、変形の仕方が異なる。これを防ぐために、打抜き加工の後にひずみ取り焼鈍される。しかし、耐熱性が低い、すなわち熱処理によって軟化する割合が大きい銅合金では強度不足のため、ピンの形状安定性が低下する。よって、C1940には耐熱性が要求される。C1940に要求される耐熱性は450℃で5分熱処理した後のビッカース硬さ140Hv以上である。本発明の実施の形態における規定範囲はこれに従ったものである。
本発明の実施の形態における銅合金の金属組織の形態は、Cu母相の結晶粒が等軸状であることを特徴とする。等軸状結晶粒とはCu母相の結晶粒において結晶粒の長軸aと短軸bの比a/bが0.8以上(1以下)である。結晶粒を等軸状に制御することで、RDとTDの異方性を小さくすることができる。したがって、リードフレーム等を打ち抜きによって形成する場合、向きによって打ち抜き形成時の寸法精度等を改善できる。
本実施の形態によれば、リードフレーム等に用いられるC1940について、引張強さ520MPa以上、ビッカース硬さ150Hv以上であるので、強度の要求特性を満足できる。また、Cu母相の結晶粒が等軸状であるので、異方性を低減できる。
1.実施の形態に係る銅合金の製造工程
図1に本発明の一実施の形態に係る銅合金の製造工程フローの一例を示す。まず、Fe2.1重量%以上2.6重量%以下、P0.015重量%以上0.15重量%以下、Zn0.05重量%以上0.2重量%以下を含有し、残部がCuと不可避的不純物からなる前述の銅合金組成を有する鋳塊を、溶解・鋳造により形成する(ステップ1)。この形成された鋳塊を、熱間圧延(ステップ3)、第一の冷間圧延(ステップ5)、第一の熱処理(ステップ7)、必要に応じて第二の冷間圧延(ステップ8)、第二の熱処理(ステップ9)、第三の冷間圧延(ステップ11)、必要に応じて第三の熱処理(ステップ12)の工程を経て所望の板厚まで加工する。第二の熱処理(ステップ9)として420℃以上450℃以下で10時間以上30時間以下時効し、最後に第三の冷間圧延(ステップ11)で所望の板厚まで圧延して板状の銅合金を得る。このとき最後の第三の冷間圧延の加工度を60%以下とする。
本発明において最も重要なポイントがこの第二の熱処理である。第一の熱処理において、十分な耐熱性を得たことを前提に、従来よりも低い熱処理温度にすることで導電率を向上させ、かつ、最後の冷間圧延の加工度を低く抑えることができる。
前記時効後、冷間圧延を60%以下の加工度で冷間加工する。60%より大きい加工度ではCu母相の結晶粒が加工されてパンケーキ状となり、銅合金板の異方性の原因となる。冷間圧延の加工度は好ましくは40%以上60%以下である(実施例2、図3参照)。この範囲に限定することで、Cu母相中の結晶粒を等軸状に保ちつつ、安定してより高い強度を得ることができる。なお、更にこの後に、伸びの向上や歪除去のために低温焼鈍である第三の熱処理(ステップ12)を行っても良い。
2.実施の形態の銅合金の製造方法の効果
(1)本実施の形態によれば、第二の熱処理を420℃以上450℃以下で10時間以上30時間未満、好ましくは430℃以上450℃以下で15時間以上20時間以下とするので、製造リードタイム、コストの増加を抑え、強度、導電性、耐熱性の要求特性を満足することができる。
(2)また、第三の冷間圧延の加工度を60%以下とするので、銅母相中の結晶粒を等軸状に保ち、異方性を小さくできる。したがって、圧延方向(RD)と横断方向(TD)の組織形態が同じになり、向きによって打ち抜き成型時の寸法精度が異なる等を解消でき、よりリードフレームへの成型を容易にできる。
重量%にして2.1%Fe、0.02%P、0.013%Znを含有し、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金を高周波誘導型炉で溶解後、銅製鋳型で半連続鋳造し、横断面200mm×450mm、長さ4000mmの直方体の鋳塊を作製した。この鋳塊を所定温度の炉にて950℃の温度で保温した後、熱間圧延した。
上述した実施例1では、より低温で第二の熱処理を実施することで、最後の冷間圧延において低加工度でも高強度化できることがわかった。したがって、420℃よりも高い450℃で9時間の第二の熱処理を実施した場合において、150Hvを得るための最後の
冷間圧延での低加工度限界がわかれば、好適な第二の熱処理条件がわかることになる。実施例2は、この低加工度限界を見出すために行ったものである。
この結果を図3に示す。450℃×9時間で119Hvまで軟化している場合において、最後の冷間圧延加工度40%でも十分にビッカース硬さ150Hv(>154Hv=119Hv+35Hv)が得られることがわかった。
実施例1と同様の工程にて0.76mmまで冷間圧延(第二の冷間圧延)したものに対して、第二の熱処理として、420℃の塩浴に1〜43時間浸漬させたもの、又は450℃の塩浴に1〜30時間浸漬させたものを作製した。これを最後の冷間圧延で0.34mmまで圧延し(加工度55%)、導電率を評価し、最後の冷間圧延後における導電率の第二の熱処理時間の依存性を評価した。
この結果を図4に示す。60%IACSの導電率を得るためには、データ内挿から、450℃で約14時間、420℃で約30時間の第二の熱処理時間が必要であることがわかった。
重量%にして2.1%Fe、0.02%P、0.013%Zn、0.08%Snを含有し、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金を高周波誘導炉で溶解後、銅製鋳型で半連続鋳造し、横断面200mm×450mm、長さ4000mmの直方体の鋳塊を作製した。ここの鋳塊の一部を切り分けた後、表面をそれぞれ2mm面作し、2.5mmまで冷間圧延した(第一の冷間圧延)。
り、耐熱試験後のビッカース硬さは143Hvであった。また、結晶粒の形状を観察した結果、実施例の銅合金の断面組織は図6に示したように等軸状であった。
実施例と同一組成、同一工程の熱間圧延材(面削済み)を母材として、第一の冷間圧延により板厚2.5mmとした。次に、材料の最高温度が最大950℃になるように制御しながら、連続焼鈍炉の加熱帯中に銅板を走行させた(第一の熱処理)。加熱帯に続いて、冷却帯及び水冷プールを通過させて急冷させて溶体化処理した。更に表面及び裏面を研磨した後、第二の冷間圧延により板厚0.7mmとした。
Claims (3)
- Fe2.1重量%以上2.6重量%以下、P0.015重量%以上0.15重量%以下、Zn0.05重量%以上0.2重量%以下を含有し、残部がCuと不可避的不純物からなり、
引張強さ520MPa以上、ビッカース硬さ150Hv以上であり、かつCu母相の結晶粒が等軸状であることを特徴とする電気・電子部品用銅合金。 - 請求項1に記載の電気・電子部品用銅合金において、さらに導電率60%IACS以上であり、450℃で5分間加熱した後も前記ビッカース硬さが140Hv以上であることを特徴とする電気・電子部品用銅合金。
- Fe2.1重量%以上2.6重量%以下、P0.015重量%以上0.15重量%以下、Zn0.05重量%以上0.2重量%以下を含有し、残部がCuと不可避的不純物からなる銅合金の鋳塊を、熱間圧延、第一の冷間圧延、第一の熱処理、第二の熱処理、及び第三の冷間圧延して所望の板厚まで加工する銅合金の製造工程において、
前記第二熱処理の条件を420℃以上450℃以下で10時間以上30時間以下とし、
前記第三の冷間圧延の加工度を60%以下とすることを特徴とする電気・電子部品用銅合金の製造方法。
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JP4527198B1 (ja) * | 2009-08-20 | 2010-08-18 | 三菱伸銅株式会社 | 電子機器用銅合金の製造方法 |
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