JP2012052178A - 室温での強度及び延性に優れたチタン合金 - Google Patents
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Abstract
【課題】室温下においてASTMグレード3と同等以上の強度、すなわち、380MPa以上の0.2%耐力と全伸び25%以上の延性を有する強度と延性バランスに優れたチタン合金を提供する。
【解決手段】Cu:1.8%超〜3.8%、Sn:0.5%超〜7.5%、及び酸素:0.04%超〜0.25%を含有し、残部がチタンであって、不可避的不純物(Fe、C、N、H、Si、Cr、Ni等)が総量で0.3%以下であるチタン合金。
【選択図】図1
【解決手段】Cu:1.8%超〜3.8%、Sn:0.5%超〜7.5%、及び酸素:0.04%超〜0.25%を含有し、残部がチタンであって、不可避的不純物(Fe、C、N、H、Si、Cr、Ni等)が総量で0.3%以下であるチタン合金。
【選択図】図1
Description
本発明は、室温での強度及び延性に優れたチタン合金に関し、詳細には、室温下でも380MPa以上の強度(0.2%耐力)を有すると共に、延性にも優れているチタン合金に関するものである。
チタンは、その優れた耐食性、プレス成形性、比強度、軽量性などを利用して、例えば、航空機部品、化学プラント部材、沿岸部の構造材(特に、海水が接触し腐食が促進するような湾岸構造材)、自動車、建材など幅広い分野、用途で汎用されている。
近年、様々な分野において環境負荷低減や省エネルギー化が要求されており、軽くて強いとされるチタンにおいてもさらなる軽量・薄肉化のニーズに応えるため、高強度化が望まれている。純チタンの中でも、もともと不純物である鉄(Fe)、酸素(O)の含有量を調整して強度レベルをクラス分け(ASTMではグレード1〜グレード4)しているが、強度と延性は相反する特性であり、同じ強度レベルでもより延性や成形性の高い素材が求められている。また、純チタンよりも高強度な合金としてTi−3Al−2.5V(ASTMグレード9)が知られている。この合金は室温下で代表的には500MPaレベル(0.2%耐力)の強度、全伸びは20%程度であり、強度と延性のバランスにおいては純チタンのそれとほぼ変わらないため、加工性の厳しい用途への適用が困難であった。
加えて例えばこのチタン合金を線材とするために冷間伸線加工を施すと、延性が低いため破断しないように所望のサイズまで加工するには中間焼鈍を何度も繰り返し行うことになり、高コストである。そこで強度をそのままに延性を向上できれば、焼鈍回数が減ることで生産コストが抑えられ、安価なチタンの提供が可能となる。
またチタン合金成分として多用されている高価なMo、V、Nb、Zr等のレアメタルは近年、資源枯渇問題や供給安定性の観点からも使用しないことが望ましい。
一方、室温での高強度化、高延性化を図る技術ではないが、特許文献1、2には約600℃以上の高温下での強度に優れ、冷間加工性にも優れた自動車等の排気装置部材用耐熱合金が提案されている。
このうち特許文献1には、Cu、Sn等を添加したチタン合金が開示されており、具体的にはCuを2.1%超〜4.5%、酸素を0.04%以下、Feを0.06%以下含有し、更に選択元素としてSn、Zr、Si、Nbを含有したチタン合金が開示されている。しかしながら特許文献1では用途との関係で室温での高加工性はねらっているものの、室温での強度向上は意図しておらず、室温下での強度は320MPa程度でしかない。
なお、上記特許文献1の実施例では770℃以下の低温での真空焼鈍で行っており、また4〜5時間もの長時間焼鈍でかつ緩冷却を行っている。
また特許文献2には、Cuを0.3〜1.8%含有し、酸素を0.18%以下、Feを0.30%以下に制御し、更に選択元素としてSn、Zr、Mo等を0.3〜1.5%含有したチタン合金が開示されている。しかしながら特許文献2のチタン合金は、室温下で200MPaレベルの強度しかない。
このように、室温下での強度と延性のバランスに優れているチタン合金は未だ提供されていない。
本発明は、上記従来の問題を鑑みてなされたものであって、その目的は室温下での強度と延性のバランスに優れたチタン合金を提供することである。詳細には室温下においてASTMグレード3と同等以上の強度、即ち、380MPa以上の0.2%耐力と延性に優れているチタン合金を提供することである。
上記目的を達成し得た本発明のチタン合金は、Cu:1.8%超〜3.8%、Sn:0.5%超〜7.5%、及び酸素:0.04%超〜0.25%を含有し、残部がチタン及び不可避的不純物からなることに要旨を有するものである。
本発明によれば、化学成分組成を各元素のバランスを考慮した上で厳密に規定することによって、室温下でも強度が高いだけでなく、室温下での延性にも優れたチタン合金を得ることができる。更に本発明のチタン合金は、基本的に合金元素としてCu及びSnのみを含むことから、比較的安価で上記特性を有するチタン合金を提供することが可能である。本発明のチタン合金は、チタン本来の優れた耐食性はもとより、ASTMグレード3と同等以上の高い機械的強度に加えて、室温でも優れた延性を有しているので、携帯電話機、モバイルパソコン、カメラなどのボディ、眼鏡フレーム、プレート式熱交換器の構成材、燃料電池のセパレーター等の幅広い分野で室温下での高い強度が要求される場合において、良好な成形加工性を発揮することが可能である。
本発明者らは、室温での機械的特性(強度・延性)に優れたチタン合金を提供するため、特に各成分の添加効果について検討した。その結果、合金成分について次のような知見が得られた。
Tiに固溶量以上のCuを添加してTi2Cuを析出させることによって室温での強度が向上すること、更にSnを添加すると室温での延性を損なわずに、一層室温での強度向上効果が得られることが分かった。そこで、本発明者らは、詳細については不明であるが、本チタン合金中のCuの分布状態を調査したところ、その殆どがTi2Cuとして存在し、マトリックスであるα相に固溶しているCu量は少ないことが分かった。このようなCuの分布状態はβ相中へのCu濃縮および冷却中にα相とTi2Cuへの分解を利用することで達成されるが、SnはそのTi2Cuの析出を促進する一方、Snはα相に固溶し、マトリックスの延性を損なわずに維持していることを見出し、結果として所定の延性を確保しつつ室温での高強度化を図れることを見出し、本発明を完成した。
なお、上記特許文献1もTi2Cu析出を積極的に活用する技術である旨記載されている。しかしながら、上記特許文献1には、Ti2Cuが冷間圧延性にほとんど影響を与えず高温強度を向上させることが出来ることが記載されているのみであり、Ti2Cuが室温での機械的特性に対し、どのような影響を及ぼすかは全く記載されていない。更に上記特許文献1では、所望の混合組織(α相とTi2Cu相の混合組織)を確保するため、650〜780℃での比較的低温で焼鈍処理を不可欠とするものであり、実施例では5時間もの長時間焼鈍を行なっているのに対し、本発明では後述するように、高温短時間の焼鈍処理を行なっており、得られるTi2Cuの粒径や分散状態などは異なっているものと思料される。
本発明のチタン合金においては、上記の観点から化学成分組成を適切に調整することが重要である。本発明のチタン合金における、これら各成分の範囲設定理由は次の通りである。
Cu:1.8%超〜3.8%(「質量%」の意味、化学成分については以下同じ)
CuはTi2Cu相として析出させることによって室温での高強度化に寄与する元素である。Cuは共析型のβ安定化元素であり、α+β域での焼鈍によってα相の粒界や三重点付近に生じるβ相中に濃化するが、焼鈍後に空冷をすることによってそのβ相は大部分がα相とTi2Cuに分解する。特に本発明ではα相粒界近傍にTi2Cuを析出させることによって、結晶粒の粗大化抑制にも寄与している。Ti2Cuの析出や上記の結晶粒粗大化抑制効果により室温下で高い強度(0.2%耐力で380MPa以上)と高い延性(全伸び25%以上)を確保できる。このような効果を発揮させるためには、Cuの含有量は1.8%超とする必要があり、好ましくは2.0%以上である。しかしながら、Cuの含有量が3.8%を超えると、析出するTi2Cu量が多くなり過ぎ、また延性が悪くなる。したがってCu含有量は3.8%以下とする必要があり、好ましくは3.0%以下である。
CuはTi2Cu相として析出させることによって室温での高強度化に寄与する元素である。Cuは共析型のβ安定化元素であり、α+β域での焼鈍によってα相の粒界や三重点付近に生じるβ相中に濃化するが、焼鈍後に空冷をすることによってそのβ相は大部分がα相とTi2Cuに分解する。特に本発明ではα相粒界近傍にTi2Cuを析出させることによって、結晶粒の粗大化抑制にも寄与している。Ti2Cuの析出や上記の結晶粒粗大化抑制効果により室温下で高い強度(0.2%耐力で380MPa以上)と高い延性(全伸び25%以上)を確保できる。このような効果を発揮させるためには、Cuの含有量は1.8%超とする必要があり、好ましくは2.0%以上である。しかしながら、Cuの含有量が3.8%を超えると、析出するTi2Cu量が多くなり過ぎ、また延性が悪くなる。したがってCu含有量は3.8%以下とする必要があり、好ましくは3.0%以下である。
Sn:0.5%超〜7.5%
Snは室温での延性を損なわずに室温での強度向上に寄与する元素である。すなわち、SnとCuを併用すると、チタン合金中でのCuの固溶限を低下させ、Ti2Cuの析出量を増加できるため、Snを含有していない場合と比べて少ないCu量でチタン合金の室温下での高強度化を図ることができる。またSnは固溶強化によってチタン合金の延性を損なわずにマトリックスの強化に寄与する効果も有する。このような効果を発揮させるためには、Snの含有量は0.5%超、好ましくは1.0%以上とする必要がある。しかしながら、Snの含有量が多くなり過ぎると、Snの固溶量が増大して強度が高くなると共に、十分な延性が確保できなくなる。またSn量が増大するとチタン合金のコストが高くなると共に、比重が増加する要因にもなる。したがってSn量は7.5%以下とする必要があり、好ましくは6.0%以下である。
Snは室温での延性を損なわずに室温での強度向上に寄与する元素である。すなわち、SnとCuを併用すると、チタン合金中でのCuの固溶限を低下させ、Ti2Cuの析出量を増加できるため、Snを含有していない場合と比べて少ないCu量でチタン合金の室温下での高強度化を図ることができる。またSnは固溶強化によってチタン合金の延性を損なわずにマトリックスの強化に寄与する効果も有する。このような効果を発揮させるためには、Snの含有量は0.5%超、好ましくは1.0%以上とする必要がある。しかしながら、Snの含有量が多くなり過ぎると、Snの固溶量が増大して強度が高くなると共に、十分な延性が確保できなくなる。またSn量が増大するとチタン合金のコストが高くなると共に、比重が増加する要因にもなる。したがってSn量は7.5%以下とする必要があり、好ましくは6.0%以下である。
酸素:0.04%超〜0.25%
チタン合金の強度を確保するのに有効な元素であり、こうした効果を発揮させるためには、酸素の含有量は0.04%超、好ましくは0.05%以上とする。しかしながら酸素の含有量が多くなりすぎると強度が高くなりすぎ、延性が却って低下することになる。したがって酸素の含有量は0.25%以下、好ましくは0.2%以下とする。
チタン合金の強度を確保するのに有効な元素であり、こうした効果を発揮させるためには、酸素の含有量は0.04%超、好ましくは0.05%以上とする。しかしながら酸素の含有量が多くなりすぎると強度が高くなりすぎ、延性が却って低下することになる。したがって酸素の含有量は0.25%以下、好ましくは0.2%以下とする。
本発明のチタン合金は、上記成分の他、残部はチタン及び不可避的不純物からなるものである。「不可避的不純物」には、原料のスポンジチタンに不可避的に含まれる不純物元素(代表的には、鉄(Fe)、炭素(C)、窒素(N)、水素(H)、シリコン(Si)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)等)、或いは製造工程において製品中に取り込まれる可能性のある元素(例えば水素等)が含まれる。上記不可避的不純物は総量で、例えば0.3%程度以下であれば上記本発明のチタン合金の特性を阻害することがない。
本発明のチタン合金は室温下(25℃)で380MPa以上の強度(0.2%耐力)を有するものである。上述したようにチタン合金は様々な分野において用いられており、室温下でも高い強度が要求されるからである。本発明のチタン合金の強度は室温下でASTMグレード3と同等以上の強度である380MPa以上であり、好ましくは400MPa以上である。もっとも、強度が高くなりすぎると延性が低下して加工成形性が悪くなるため、好ましくは600MPa以下とする。
また本発明において室温での強度と延性のバランスに優れているとは、室温下で上記所定レベルの強度を有し、且つ延性(全伸び)が望ましくは25%以上有することである。上記したようにチタン合金の強度と延性は相反する特性であるが、本発明はこれら両特性を満足し得るようなチタン合金として、ASTMグレード3と同等以上の強度と延性を有するチタン合金を提供するものである。
次に、上記チタン合金の板を例にとり製造条件について説明する。例えばチタン合金板の場合は、一般に下記工程で製造される。チタン合金の物性は、用いるチタン合金の化学成分組成や各工程の設定条件により異なるので、一連の製造工程として総合的に条件を選択して決定すべきであり、個々の工程ごとに条件を厳密に設定することは必ずしも適切ではない。
[鋳造]→[分塊鍛造・圧延]→[熱間圧延]→[焼鈍]→[冷間圧延]→[最終焼鈍](なお、[冷間圧延]と[最終焼鈍]工程の間で、所望の板厚に調整するためなど、必要に応じて[中間焼鈍]→[冷間圧延]を単数回、或いは複数回繰り返し行ってもよい)
[鋳造]→[分塊鍛造・圧延]→[熱間圧延]→[焼鈍]→[冷間圧延]→[最終焼鈍](なお、[冷間圧延]と[最終焼鈍]工程の間で、所望の板厚に調整するためなど、必要に応じて[中間焼鈍]→[冷間圧延]を単数回、或いは複数回繰り返し行ってもよい)
上記[分塊鍛造・圧延]は、粗大な鋳造組織を壊せることができればよく、例えば、生産性(加工のしやすさ)などから900〜1200℃程度で均熱し鍛造もしくは圧延を開始すればよい。
[熱間圧延]は、例えば800〜950℃程度で保持した後、所望の板厚となるように熱間圧延すればよい。
[焼鈍]および必要に応じて行う[中間焼鈍]は、例えば700〜900℃程度で均熱した後、空冷すればよい。
最終焼鈍前に行う[冷間圧延]は組織を均一微細化させるために33%以上の圧下率とする。
[最終焼鈍]は、2相域(α+β域)に加熱して所望の時間保持した後、室温まで空冷すればよく、このような条件とすることによって、α粒界にTi2Cuを析出させることができる。例えば790〜870℃程度に加熱した後、1〜10分程度保持した後、空冷すればよい。790℃よりも低い温度で焼鈍した場合には、Ti2Cuが析出するものの、焼鈍温度が低いほど拡散速度が遅くなるため、添加したCuの一部がα相中に固溶した状態で存在したり、α相内にTi2Cuが析出したりするため、α相の延性をむしろ阻害すると考えられる。焼鈍温度はより好ましくは800℃以上、更に好ましくは820℃以上である。また、β変態点以上に加熱して焼鈍を行った場合、冷却中に針状組織が形成され、延性が阻害されるため、2相域(α+β域)で最終焼鈍を行う。焼鈍温度はより好ましくは「β変態点―10℃以下」、更に好ましくは「β変態点―30℃以下」である。
尚、冷間圧延や最終焼鈍におけるその他の条件や、その他の工程の条件は、一般的な条件を採用することができる。
本発明のチタン合金の厚さについては、必要とされる強度等を考慮して設定すればよく特に限定されない。
本発明に係るチタン合金は、本来の優れた耐食性はもとより高い強度に加えて、優れた延性を有しているので、携帯電話機、モバイルパソコン、カメラなどのボディ、眼鏡フレーム、プレート式熱交換器の構成材、燃料電池のセパレーター等の幅広い分野で高度な成形性と機械的強度が要求される用途に広く適用できる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
表1に示す各種化学成分組成の原料をアーク溶解法にて溶製し、直径40mm×高さ20mmのボタン鋳塊を得た。得られたボタン鋳塊を1000℃で60分間加熱した後、幅40mm×厚さ4.5mmの板状になるまで熱間圧延した後、α+β域(820℃)で5分間加熱してから空冷した。得られた圧延材の表面に形成されたスケールを除去して4.0mmの厚さとし、更に、2.1mmの厚さになるまで冷間加工を行った。その後、820℃で3分の最終焼鈍を行った後に空冷した。得られた冷間圧延材に脱スケール処理を施して板厚0.5mmのチタン合金板を得た。得られたチタン合金板の圧延方向と引張荷重軸が平行となるようにASTMに規定されている試験片(サイズはASTM E8のサブサイズ)を採取し、ASTM E8に規定されている金属材料引張試験方法に基づいて圧延方向に平行な方向の0.2%耐力、引張強度、全伸びについて室温下で測定した。引張強度及び全伸びについては、引張試験時の試験速度は始めから0.5%の歪までは0.5%/minで、それ以降は40%/minとした。
評価基準
室温での機械的特性として室温での0.2%耐力が380MPa以上、室温での全伸びが25%以上を夫々合格とし、全てを満足する例を強度と延性のバランスが「優れている」(ASTMグレード3と同等以上)と評価した。
室温での機械的特性として室温での0.2%耐力が380MPa以上、室温での全伸びが25%以上を夫々合格とし、全てを満足する例を強度と延性のバランスが「優れている」(ASTMグレード3と同等以上)と評価した。
表1に結果を示す。
表1から次のように考察することができる。即ち、No.6〜21は本発明で規定する要件を満たすTi−Cu−Sn合金であり、室温での強度と延性に優れていることがわかる。
これに対し、No.1〜5、22〜34は本発明で規定する要件を満たしていないため、室温での強度を確保できなかったり、室温での延性に劣るといった不具合が生じた。
詳細には、No.1〜3は、Ti−Cu合金の例である(Snなし)。No.1〜3ではCu含有量が増加すると、それに伴ってTi2Cu析出量が増加して強度も向上しているが、いずれも0.2%耐力は380MPa未満である。またCu含有量が増加すると、それに伴って全伸びが低下する傾向を示しており、Ti−Cu合金では室温下で十分な強度と延性のバランスを図ることができなかった。なお、Cu含有量がNo.2と同じであって、Snを本発明の規定量含有するNo.6(本発明例)では、Sn添加による固溶強化と延性低下抑制効果と共に、Ti2Cuの析出促進効果によって、0.2%耐力及び全伸び共に優れており、室温での強度と延性のバランスに優れていた。
No.4と5は、Cu含有量が本発明の規定量を下回るTi−Cu−Sn合金の例である。Cu含有量が本発明の規定量を下回っているため、0.2%耐力はいずれも380MPaを下回っていた。なお、Sn含有量がNo.4、5と同じであって、Cu含有量が本発明の規定量を満足するNo.6(本発明例)では、0.2%耐力及び全伸び共に優れており、室温での強度と延性のバランスに優れていた。
No.22と23は、Sn含有量が本発明の規定量を上回るTi−Cu−Sn合金の例である。Sn含有量が本発明の規定量を上回っているため、全伸びがいずれも25%を下回っていた。なお、Cu含有量がNo.22と同じであって、Sn含有量が本発明を満足するNo.6〜12(本発明例、Snは1.0〜7.0%)と対比すると、No.22のようにSn含有量を増加し過ぎると0.2%耐力が増加する一方で全伸びが低下して、強度と延性のバランスを図ることができないことが分かった。
No.24は、Cu含有量が本発明の規定量を上回るTi−Cu−Sn合金の例である。Cu含有量が本発明の規定量を上回っているため、強度は向上したものの、全伸びが低下しており、室温での強度と延性のバランスを図ることができなかった。なお、Sn含有量が同じでCu合金量が本発明の規定量を満足するNo.6、19(本発明例)では、Cu量が増加するにしたがって0.2%耐力が向上するものの、全伸びは25%以上であり、室温での強度と延性のバランスに優れていた。
No.25と26は、Cu、Sn含有量は本発明の規定量を満足するが、酸素の含有量が本発明の規定を外れる例である。No.25は、酸素含有量が0.03%であり、十分な全伸びを示すものの、0.2%耐力(強度)が380MPaを得ることができない。一方、No.26は、酸素含有量が0.3%であり、十分な0.2%耐力を示すものの、十分な伸びを示さなかった。
No.27〜34はASTM規格(No.27〜30はグレード1、No.31はグレード2、No.32はグレード3、No.33はグレード4、No.34はグレード9)の従来例である。これらはいずれも0.2%耐力が低いか(No.27〜31)、全伸びが低く(No.32〜34)、室温での強度と延性のバランスを図ることができなかった。
参考のために、上記実施例No.1〜34の室温での強度(0.2%耐力)と延性(全伸び)の関係をプロットしたグラフを図1に示す。図1に示されている様に本発明例(No.6〜21)は室温下で0.2%耐力と全伸びに優れた特性を有しており、強度と延性のバランスがASTMグレード3と同等以上に優れている。一方、No.1〜5、No22〜34は室温での強度と延性のバランスを図ることができないことが分かる。
Claims (1)
- Cu:1.8%超〜3.8%(「質量%」の意味、化学成分については以下同じ)、Sn:0.5%超〜7.5%、及び酸素:0.04%超〜0.25%を含有し、残部がチタン及び不可避的不純物からなることを特徴とする室温での強度及び延性に優れたチタン合金。
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