JP2021050321A - トナー用ポリエステル樹脂及びトナーの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】画像光沢性及び帯電性に優れ帯電バラつきの少ないトナー用ポリエステル樹脂及びトナーを提供することを目的とする。【解決手段】チタン化合物及びアミン化合物の存在下で、アルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合させてポリエステル樹脂を得るトナー用ポリエステル樹脂の製造方法であって、チタン化合物がカルボン酸チタン、カルボン酸チタニル、カルボン酸チタン塩、及びカルボン酸チタニル塩からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物であり、アミン化合物の酸解離定数(pKa)が7〜10であるトナー用ポリエステル樹脂の製造方法;及びトナー用ポリエステル樹脂を含有するトナーの製造方法【選択図】 なし

Description

本発明は、トナー用ポリエステル樹脂及びトナーの製造方法に関する。
近年、パソコンやスマホ、タブレット等の電子機器の高性能化およびWi−Fi等の無線LANによるネットワークの普及に伴い、情報ネットワークシステムの出力機として電子写真方式のデジタルカラー複合機およびカラープリンターが急速に普及してきている。その中で、電子写真の強みを生かした様々なプリントシステムがデジタル印刷市場にも提供されている。しかし電子写真の画質は、オフセット印刷に迫る高画質画像が出力できるまでになってきたが、追い越すまでには至っておらず、トナーには更なる高画質化が強く要望されている。
高画質化には現像工程(現像プロセス)の改善や高光沢性、トナーバインダーの透明性、色目等が必要な特性として挙げられる。現像プロセスの機能としては、トナーの帯電、帯電量分布を制御する必要があり、トナーの光沢性には、低温定着性の向上が必要である。また、トナーバインダーの透明性、色目については、重合触媒や合成時の着色に由来するため最適な反応条件を設定する必要がある。
従来、トナー用ポリエステル樹脂を製造する際に用いられてきたエステル化触媒としては、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル酸錫、チタン酸テトライソプロピル、チタン酸テトラブチル等の金属触媒が知られている。錫触媒は非常に高活性であるがREACH等の規制や国内・海外での使用制限等の制約を受けており、錫触媒の代替品が活発に開発されている。中でも環境への負荷が少ない、活性も比較的高いチタン系触媒の開発が進んでいる。従来のアルコキシド系のチタン触媒は初期活性が十分高いが、耐加水分解性が弱く、反応中に発生する縮合水で失活してしまうという課題がある。これに対して、耐加水分解性の高い、水系キレートであるチタン触媒(特許文献1)が提案されている。しかしながら、反応中に発生する縮合水に高温で接触するため、反応末期には失活してしまい、反応時間が長時間化したり、樹脂自体も酸化分解反応などの副反応が生じて黄色く着色するという課題がある。失活対策として、失活分を考慮して触媒量を増やすという方法もあるが、反応中に失活した触媒残渣により樹脂自体がカスんだり、また触媒量を増やすことで帯電安定性が低下したり、逆帯電のトナーが発生するなどの課題がある。
これに対して、重合触媒に助触媒と組み合わせた、チタン触媒とアミンからなる組成物(特許文献2)が提案されている。しかしながら、ポリエステル樹脂の重合に使用するチタン触媒量が多いため、得られたポリエステル樹脂を用いてトナーを製造した場合、チタン触媒の影響により画像光沢性や帯電性が悪化するという課題がある。
特開2006−243715号公報 特開2007−333977号公報
本発明の目的は、画像光沢性及び帯電性に優れ帯電バラつきの少ないトナー用ポリエステル樹脂を、チタン触媒を用いて製造することである。
上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、チタン化合物及びアミン化合物の存在下で、アルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合させてポリエステル樹脂を得るトナー用ポリエステル樹脂の製造方法であって、チタン化合物がカルボン酸チタン、カルボン酸チタニル、カルボン酸チタン塩、及びカルボン酸チタニル塩からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物であり、アミン化合物の酸解離定数(pKa)が7〜10であるトナー用ポリエステル樹脂の製造方法である。
本発明により、本発明の目的は、画像光沢性及び帯電性に優れ帯電バラつきの少ないトナー用ポリエステル樹脂及びトナーを提供することが可能になる。
以下、本発明を詳述する。
本発明の製造方法により得られるトナー用ポリエステル樹脂は、アルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合させて得られたポリエステル樹脂である。
ポリエステル樹脂のアルコール成分としては、ジオール及び/又は3価以上の価数のポリオールが挙げられる。また、アルコール成分には、必要によりモノアルコールを使用してもよい。
これらは、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
ジオールとしては、炭素数2〜12のアルキレングリコール(エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−ノナンジオール、1,2−デカンジオール)、炭素数4〜36のアルキレンエーテルグリコール(例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等)、炭素数4〜36の脂環式ジオール(例えば1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等)、上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(以下、「アルキレンオキサイド」をAOと略記する)〔エチレンオキサイド(以下、「エチレンオキサイド」をEOと略記する)、プロピレンオキサイド(以下、「プロピレンオキサイド」をPOと略記する)、ブチレンオキサイド(以下、「ブチレンオキサイド」をBOと略記する)等〕付加物(好ましくは付加モル数1〜30)、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等)のAO(EO、PO、BO等)付加物(好ましくは付加モル数2〜30)、ポリラクトンジオール(ポリε−カプロラクトンジオール等)及びポリブタジエンジオール等が挙げられる。
3価以上の価数のポリオールとしては、アルカンポリオール及びその分子内もしくは分子間脱水物(例えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン及びポリグリセリン等)、糖類及びその誘導体(例えばショ糖及びメチルグルコシド等)、トリスフェノール類(トリスフェノールPA等)のAO付加物(付加モル数は好ましくは2〜30)、ノボラック樹脂(フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等が含まれ、平均重合度としては好ましくは3〜60)のAO付加物(付加モル数は好ましくは2〜30)及びアクリルポリオール[ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと他のビニルモノマーの共重合物等]等が挙げられる。
モノアルコールとしては、炭素数1〜30の直鎖又は分岐アルキルアルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−デカノール、ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール及びリグノセリルアルコール等)等が挙げられる。
アルコール成分のうち帯電性の観点で、好ましくは炭素数2〜12のアルキレングリコール、ビスフェノール類のAO付加物(付加モル数2〜30)及びノボラック樹脂のAO付加物(付加モル数2〜30)であり、より好ましくはビスフェノール類のAO付加物(付加モル数2〜10)であり、特に好ましくはビスフェノールAのEO付加物(付加モル数2〜10)及びビスフェノールAのPO付加物(付加モル数2〜10)である。
ポリエステル樹脂のカルボン酸成分としては、ジカルボン酸及び/又は3価以上の価数のポリカルボン酸及びこれらの酸の無水物や低級アルキル(炭素数1〜4)エステル(メチルエステル、エチルエステル及びイソプロピルエステル等)等が挙げられる。また、カルボン酸成分には、必要によりモノカルボン酸を使用してもよい。
これらは、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
ジカルボン酸としては、炭素数2〜50のアルカンジカルボン酸{鎖状飽和炭化水素基の両末端にカルボキシル基を有するアルカンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸等)、鎖状飽和炭化水素基の末端以外にカルボキシル基を有するアルカンジカルボン酸(デシルコハク酸等)}、炭素数4〜50のアルケンジカルボン酸(ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸、オクタデセニルコハク酸等のアルケニルコハク酸、マレイン酸、フマル酸及びシトラコン酸等)、炭素数6〜40の脂環式ジカルボン酸〔ダイマー酸(2量化リノール酸)等〕、炭素数8〜36の芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、t−ブチルイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸及び4,4’−ビフェニルジカルボン酸等)等が挙げられる。また、これらの酸の無水物や低級アルキルエステルであってもよい。
3価以上の価数のポリカルボン酸としては、例えば、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸及びピロメリット酸等)、炭素数6〜36の脂肪族トリカルボン酸(ヘキサントリカルボン酸等)及び不飽和カルボン酸のビニル重合体[数平均分子量(Mn):450〜10,000](スチレン/マレイン酸共重合体、スチレン/アクリル酸共重合体、及びスチレン/フマル酸共重合体等)等が挙げられる。また、これらの酸の無水物や低級アルキルエステルであってもよい。
モノカルボン酸としては、炭素数(カルボニル基の炭素を含める)7〜37の芳香族モノカルボン酸(安息香酸、トルイル酸、4−エチル安息香酸、4−プロピル安息香酸等)、炭素数2〜50の脂肪族モノカルボン酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、(メタ)アクリル酸[「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味する。]、クロトン酸、イソクロトン酸及び桂皮酸等)等が挙げられる。
カルボン酸成分のうち帯電性の観点で、好ましくは炭素数7〜37の芳香族モノカルボン酸、炭素数8〜36の芳香族ジカルボン酸、炭素数2〜50のアルカンジカルボン酸、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸及びこれらの組合せであり、より好ましくは炭素数8〜36の芳香族ジカルボン酸、炭素数2〜50のアルカンジカルボン酸、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸及びこれらの組合せであり、特に好ましくはテレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸及びトリメリット酸である。
本発明は、チタン化合物及びアミン化合物の存在下で、アルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合させてポリエステル樹脂を得るトナー用ポリエステル樹脂の製造方法である。
チタン化合物とは、カルボン酸チタン、カルボン酸チタニル、カルボン酸チタン塩、及びカルボン酸チタニル塩からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物である。詳細は定かではないが、上記化合物を用いることで、アミン化合物の存在下でエステル化する際に触媒活性が向上する。その結果、チタン化合物の使用量を減らすことができ、ポリエステルの透明性、帯電性が向上し帯電バラつきが少なくなる。また、上記化合物を用いることで、得られるポリエステル樹脂の粘度が低下し画像光沢性が良好となる。
カルボン酸チタンとしては特に限定されないが、例えば、炭素数1〜32の脂肪族カルボン酸チタン、炭素数7〜38の芳香族カルボン酸チタンなどが挙げられる。2価以上のポリカルボン酸チタンの場合、チタンに配位するカルボキシル基は、1個でも2個以上でもよく、チタンに配位せず遊離のカルボキシル基が存在していてもよい。
炭素数1〜32の脂肪族カルボン酸チタンとしては特に限定されないが、例えば、脂肪族モノカルボン酸チタン、脂肪族ジカルボン酸チタン、脂肪族トリカルボン酸チタン及び4価以上の脂肪族ポリカルボン酸チタンなどが挙げられる。
脂肪族モノカルボン酸チタンとしては、例えば、ぎ酸チタン、酢酸チタン、プロピオン酸チタン、オクタン酸チタンなどが挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸チタンとしては、例えば、シュウ酸チタン、コハク酸チタン、マレイン酸チタン、アジピン酸チタン、セバシン酸チタンなどが挙げられる。
脂肪族トリカルボン酸チタンとしては、例えば、ヘキサントリカルボン酸チタン、イソオクタントリカルボン酸チタンなどが挙げられる。
4価以上の脂肪族ポリカルボン酸チタンとしては、例えば、オクタンテトラカルボン酸チタン、デカンテトラカルボン酸チタンなどが挙げられる。
炭素数7〜38の芳香族カルボン酸チタンとしては特に限定されないが、例えば、芳香族モノカルボン酸チタン、芳香族ジカルボン酸チタン、芳香族トリカルボン酸チタン及び4価以上の芳香族ポリカルボン酸チタンなどが挙げられる。
芳香族モノカルボン酸チタンとしては、例えば、安息香酸チタンなどが挙げられる。
芳香族ジカルボン酸チタンとしては、例えば、フタル酸チタン、テレフタル酸チタン、イソフタル酸チタン、1,3−ナフタレンジカルボン酸チタン、4,4−ビフェニルジカルボン酸チタン、2,5−トルエンジカルボン酸チタン、アントラセンジカルボン酸チタンなどが挙げられる。
芳香族トリカルボン酸チタンとしては、例えば、トリメリット酸チタン、2,4,6−ナフタレントリカルボン酸チタンなどが挙げられる。
4価以上の芳香族ポリカルボン酸チタンとしては、例えば、ピロメリット酸チタン、2,3,4,6−ナフタレンテトラカルボン酸チタンなどが挙げられる。
上記カルボン酸チタンの中では触媒活性の観点から、炭素数7〜38の芳香族カルボン酸チタンが好ましく、芳香族ジカルボン酸チタンがより好ましい。
カルボン酸チタニルとしては特に限定されないが、例えば、炭素数1〜32の脂肪族カルボン酸チタニル、炭素数7〜38の芳香族カルボン酸チタニルなどが挙げられる。2価以上のポリカルボン酸チタニルの場合、チタンに配位するカルボキシル基は、1個でも2個でもよく、チタンに配位せず遊離のカルボキシル基が存在していてもよい。
炭素数1〜32の脂肪族カルボン酸チタニルとしては特に限定されないが、例えば、脂肪族モノカルボン酸チタニル、脂肪族ジカルボン酸チタニル、脂肪族トリカルボン酸チタニル及び4価以上の脂肪族ポリカルボン酸チタニルなどが挙げられる。
脂肪族モノカルボン酸チタニルとしては、例えば、ぎ酸チタニル、酢酸チタニル、プロピオン酸チタニル、オクタン酸チタニルなどが挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸チタニルとしては、例えば、シュウ酸チタニル、コハク酸チタニル、マレイン酸チタニル、アジピン酸チタニル、セバシン酸チタニルなどが挙げられる。
脂肪族トリカルボン酸チタニルとしては、例えば、ヘキサントリカルボン酸チタニル、イソオクタントリカルボン酸チタニルなどが挙げられる。
4価以上の脂肪族ポリカルボン酸チタニルとしては、例えば、オクタンテトラカルボン酸チタニル、デカンテトラカルボン酸チタニルなどが挙げられる。
炭素数7〜38の芳香族カルボン酸チタニルとしては、例えば、芳香族モノカルボン酸チタニル、芳香族ジカルボン酸チタニル、芳香族トリカルボン酸チタニル及び4価以上の芳香族ポリカルボン酸チタニルなどが挙げられる。
芳香族モノカルボン酸チタニルとしては、例えば、安息香酸チタニルなどが挙げられる。
芳香族ジカルボン酸チタニルとしては、例えば、フタル酸チタニル、テレフタル酸チタニル、イソフタル酸チタニル、1,3−ナフタレンジカルボン酸チタニル、4,4−ビフェニルジカルボン酸チタニル、2,5−トルエンジカルボン酸チタニル、アントラセンジカルボン酸チタニルなどが挙げられる。
芳香族トリカルボン酸チタニルとしては、例えば、トリメリット酸チタニル、2,4,6−ナフタレントリカルボン酸チタニルなどが挙げられる。
4価以上の芳香族ポリカルボン酸チタニルとしては特に限定されないが、例えば、ピロメリット酸チタニル、2,3,4,6−ナフタレンテトラカルボン酸チタニルなどが挙げられる。
カルボン酸チタン塩としては特に限定されないが、例えば、脂肪族ジカルボン酸チタン、脂肪族トリカルボン酸チタン及び4価以上の脂肪族ポリカルボン酸チタン、芳香族ジカルボン酸チタン、芳香族トリカルボン酸チタン及び4価以上の芳香族ポリカルボン酸チタンに挙げたカルボン酸チタンのアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)塩又はアルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、バリウムなど)塩などが挙げられる。上記カルボン酸チタン塩の中では、触媒活性の観点から、芳香族カルボン酸チタン塩が好ましく、芳香族ジカルボン酸チタン塩がより好ましい
カルボン酸チタニル塩としては特に限定されないが、例えば、脂肪族ジカルボン酸チタニル、脂肪族トリカルボン酸チタニル、脂肪族ポリカルボン酸チタニル、芳香族ジカルボン酸チタニル、芳香族トリカルボン酸チタニル、または芳香族ポリカルボン酸チタニルに挙げたカルボン酸チタニルの、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)塩又はアルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、バリウムなど)塩などが挙げられる。上記カルボン酸チタニル塩の中では、触媒活性の観点から、脂肪族ジカルボン酸チタニル塩が好ましく、マレイン酸チタニル塩及びシュウ酸チタニル塩が好ましい。
アミン化合物とは、酸解離定数(pKa)が7〜10を満たすものであり、上記チタン化合物以外の化合物であればどのようなアミン化合物でもよく、例えば非環状アミン(アルキルアミン、アルカノールアミン等)、環状アミン(脂環式アミン、複素環式アミン及び芳香族アミン等)等が挙げられる。上記アミン化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。詳細は定かではないが、pKaが7〜10の範囲であれば、ポリエステル樹脂を得る際、チタン化合物の活性が高くなり、短時間でエステル化の反応が進むことやチタン化合物の副生物の生成が抑えられることで、得られるポリエステル樹脂の着色性や透明性、トナーの帯電安定性及び帯電バラつきが良好となる。
なお、酸解離定数(pKa)は中和滴定とヘンダーソン・ハッセルバルヒ式により求めることができる。具体的には、アミン化合物をビーカーに精秤し、テトラヒドロフラン(THF)を加え溶解する。この溶液にpH電極を入れ、アミン化合物のpHを読み取る。その後、0.1モル/L水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、滴定量とpHの滴定曲線を得る。得られた滴定曲線からpHの傾きが一番大きいところを中和点とし、中和点までに必要とした0.1モル/L水酸化カリウムエタノール溶液の半分量でのpHを滴定曲線から読み取り、読み取ったpHの値を酸解離定数(pKa)とする。
酸をHAで表すと以下の一般式(1)となり、ヘンダーソン・ハッセルバルヒ式は以下の一般式(2)となる。(中和点では、pH=pKa)
HA⇔ H + A 一般式(1)
pH=pKa+log[A]/[HA] 一般式(2)
酸解離定数(pKa)が7〜10を満たすアルキルアミンとしては、炭素数2〜30のアルキルアミン(例えばトリメチルアミン(pKa9.8)、ジメチルイソブチルアミン(pKa9.9)及びトリペンチルアミン(pKa9.8)等)が挙げられる。
酸解離定数(pKa)が7〜10を満たすアルカノールアミンとしては炭素数2〜30のアルカノールアミン(例えば、モノエタノールアミン(pKa9.5)、ジエタノールアミン(pKa8.9)及びトリエタノールアミン(pKa7.8))等が挙げられる。
酸解離定数(pKa)が7〜10を満たす脂環式アミンとしては、炭素数6〜20の脂環式アミン(例えばシクロヘキシルアミン(pKa9.8)、シクロデシルアミン(pKa9.9)及びシクロオクタデシルアミン(pKa9.5)等)が挙げられる。
酸解離定数(pKa)が7〜10を満たす複素環式アミンとしては、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、ピリジン、ピリダジン、ピラジン、オキサゾール及びチアゾールを有する複素環式アミン(例えば、DABCO(pKa8.8)、モルホリン(pKa8.4)、N−メチルモルホリン(pKa7.4)、4−アリルモルホリン(pKa7.1)、ベンゾイルピペラジン(pKa7.8)及び2−(p−トリル)ピリジン(pKa7.6)等)等が挙げられる。
酸解離定数(pKa)が7〜10を満たす芳香族アミンとしては、炭素数6〜30の芳香族アミン(例えばジメチルベンジルアミン(pKa8.9)、ジエチルベンジルアミン(pKa9.5)、2−フェニルエチルアミン(pKa9.8)、アドレナリン(pKa8.6)等)が挙げられる。
上記アミン化合物の内、詳細は定かではないが、酸との反応性の観点から、好ましくはアルキルアミン、アルカノールアミン及び複素環式アミンであり、より好ましくはトリペンチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン及び1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)である。
本発明のトナー用ポリエステル樹脂の製造方法において、触媒活性、樹脂の透明性(カスミ)及び画像光沢性観点から、重合開始時(原料)のアルコール成分とカルボン酸成分の合計重量を基準として、チタン化合物の存在量が、0.01〜0.4重量%であることが好ましく、0.01〜0.1重量%であることがより好ましい。チタン化合物の存在量が、0.01重量%以上であると触媒活性が良好となり、エステル化反応の速度が向上し、チタン化合物の存在量が0.4重量%以下であると樹脂の透明性(カスミ)及び画像光沢性が良好となる。
一方で、触媒活性、帯電性及び帯電バラつきの観点から、重合開始時(原料)のアルコール成分とカルボン酸成分の合計重量を基準として、アミン化合物の存在量が、0.01〜0.4重量%であることが好ましく、0.01〜0.1重量%であることがより好ましい。
また、アミン化合物とチタン化合物との重量比率[アミン化合物/チタン化合物]は触媒活性の観点から、0.1〜20であることが好ましく、0.5〜5であることがより好ましい。
アルコール成分とカルボン酸成分の仕込み比率は、水酸基とカルボキシル基の当量比[OH]/[COOH]として、好ましくは1/2〜2/1、より好ましくは1/1.3〜1.5/1、さらに好ましくは1/1.2〜1.4/1である。上記水酸基は、アルコール成分由来の水酸基であり、カルボキシル基は、カルボン酸成分由来のカルボキシル基の合計である。
本発明におけるポリエステル樹脂は、チタン化合物及びアミン化合物の存在下で、アルコール成分とカルボン酸成分とを、例えば不活性ガス(窒素ガス等)雰囲気中で、反応温度が好ましくは150〜280℃、より好ましくは160〜250℃、さらに好ましくは170〜235℃で重縮合させることにより製造することができる。また反応時間は、重縮合反応を確実に行う観点から、好ましくは30分以上、より好ましくは2〜40時間である。反応速度を向上させるために減圧する工程を有することが好ましく、減圧度は好ましくは0.5〜20kPaであり、より好ましくは0.2〜15kPaであり、さらに好ましくは0.1〜10kPaである。得られるポリエステル樹脂の着色性や透明性、トナーの帯電安定性及び帯電バラつきの観点から、圧力が80〜120kPaの工程時間は、8時間以下であることが好ましい。
なお、ポリエステル樹脂を製造する際には、上記チタン化合物と共にスズ含有触媒(例えばジブチルスズオキシド等)、三酸化アンチモン、上記チタン化合物以外のチタン含有触媒[例えばチタンアルコキシド、シュウ酸チタン酸カリウム、テレフタル酸チタン及びテレフタル酸チタンアルコキシド等]、ジルコニウム含有触媒(例えば酢酸ジルコニル等)、及び酢酸亜鉛等を併用してもよい。
本発明において、ポリエステル樹脂の軟化点は、帯電安定性の観点から好ましくは90〜150℃であり、より好ましくは95〜135℃であり、さらに好ましくは100〜120℃である。
本発明において、ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、帯電安定性の観点から好ましくは45〜80℃であり、より好ましくは50〜70℃である。
本発明において、ポリエステル樹脂の酸価は、帯電性と帯電安定性の観点から好ましくは1〜30mgKOH/gであり、より好ましくは3〜25mgKOH/gであり、さらに好ましくは5〜20mgKOH/gである。
本発明において、ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、帯電安定性観点から好ましくは4,000〜100,000である。
本発明の製造方法により得られるトナー用ポリエステル樹脂は、トナーバインダー、分散剤、定着助剤として用いることができる。トナー用ポリエステル樹脂を分散剤及び定着助剤として用いる場合は、トナー用ポリエステル樹脂以外の樹脂として公知であるその他の樹脂をトナーバインダーとして用いてもよい。
本発明の製造方法により得られるトナーは、トナー用ポリエステル樹脂を含有する。トナー用ポリエステル樹脂は1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよく、帯電量の調整が容易なことから2種以上の組み合わせが好ましい。また、トナー用ポリエステル樹脂を含有するトナーは、必要により着色剤、離型剤、荷電制御剤及び流動化剤等を含有してもよい。
着色剤としては、トナー用着色剤として使用されている染料、顔料等のすべてを使用することができる。具体的には、カーボンブラック、鉄黒、スーダンブラックSM、ファーストイエローG、ベンジジンイエロー、ピグメントイエロー、インドファーストオレンジ、ピグメントレッド、イルガシンレッド、パラニトロアニリンレッド、トルイジンレッド、カーミンFB、ピグメントオレンジR、レーキレッド2G、ローダミンFB、ローダミンBレーキ、メチルバイオレットBレーキ、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、ブリリアントグリーン、フタロシアニングリーン、ピグメントイエロー、オイルイエローGG、カヤセットYG、オラゾールブラウンB及びオイルピンクOP等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、必要により磁性粉(鉄、コバルト及びニッケル等の強磁性金属の粉末又はマグネタイト、ヘマタイト及びフェライト等の化合物)を着色剤としての機能を兼ねて含有させることができる。
着色剤の含有量は、本発明のトナー用ポリエステル樹脂100部に対して、好ましくは1〜40部、より好ましくは3〜10部である。なお、磁性粉を用いる場合は、好ましくは20〜150部、より好ましくは40〜120部である。上記及び以下において、部は重量部を意味する。
離型剤としては、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物、カルナバワックス、モンタンワックス及びそれらの脱酸ワックス、エステルワックス、脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられる。
ポリオレフィンワックスとしては、オレフィン(エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセン、1−ドデセン、1−オクタデセン及びこれらの混合物等)の(共)重合体[(共)重合により得られるもの及びそれをさらに熱減成して得られるものを含む]、(例えば低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレンポリエチレン共重合体)、オレフィンの(共)重合体の酸素及び/又はオゾンによる酸化物、オレフィンの(共)重合体のマレイン酸変性物[マレイン酸及びその誘導体(無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル及びマレイン酸ジメチル等)変性物等]、オレフィンと不飽和カルボン酸[(メタ)アクリル酸、イタコン酸及び無水マレイン酸等]及び/又は不飽和カルボン酸アルキルエステル[(メタ)アクリル酸アルキル(アルキルの炭素数1〜18)エステル及びマレイン酸アルキル(アルキルの炭素数1〜18)エステル等]等との共重合体等が挙げられる。
マイクロクリスタリンワックスとしては、例えば、日本精蝋(株)製のHi−Mic−2095、Hi−Mic−1090、Hi−Mic−1080、Hi−Mic−1070、Hi−Mic−2065、Hi−Mic−1045、Hi−Mic−2045等が挙げられる。
パラフィンワックスとしては、例えば、日本精蝋(株)製のParaffin WAX−155、Paraffin WAX−150、Paraffin WAX−145、Paraffin WAX−140、Paraffin WAX−135、HNP−3、HNP−5、HNP−9、HNP−10、HNP−11、HNP−12、HNP−51等が挙げられる。
フィッシャートロプシュワックスとしては、サゾール社製のSasolwax C80等が挙げられる。
カルナバワックスとしては、株式会社加藤洋行社製の精製カルナウバワックス 特製1号等が挙げられる。
エステルワックスとしては、脂肪酸エステルワックス(例えば、日油社製のニッサンエレクトールWEP−2、WEP−3、WEP−4、WEP−5及びWEP−8等)等が挙げられる。
高級アルコールとしては、炭素数30〜50の脂肪族アルコールなどであり、例えばトリアコンタノールが挙げられる。脂肪酸としては、炭素数30〜50の脂肪酸などであり、例えばトリアコンタンカルボン酸が挙げられる。
脂肪酸アミドとしては、三菱ケミカル社製のダイヤミッドY、ダイヤミッド200等が挙げられる。
上記の中で好ましくは、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、カルナバワックス及びエステルワックスが好ましい。
荷電制御剤としては、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよく、ニグロシン染料、3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩、ポリアミン、イミダゾール誘導体、4級アンモニウム塩基含有重合体、含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸金属塩、ベンジル酸のホウ素錯体、スルホン酸基含有重合体、含フッ素系重合体及びハロゲン置換芳香環含有重合体等が挙げられる。
流動化剤としては、シリカ、チタニア、アルミナ、炭酸カルシウム、脂肪酸金属塩、シリコーン樹脂粒子及びフッ素樹脂粒子等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。トナーの帯電性の観点からシリカが好ましい。また、シリカは、トナーの転写性の観点から疎水性シリカであることが好ましい。
トナー中のトナー用ポリエステル樹脂の含有量はトナー重量に基づき、好ましくは30〜97重量%、より好ましくは40〜95重量%、さらに好ましくは45〜92重量%である。着色剤の含有量はトナー重量に基づき、好ましくは0.05〜60重量%、より好ましくは0.1〜55重量%、さらに好ましくは0.5〜50重量%である。離型剤の含有量はトナー重量に基づき、好ましくは0〜30重量%、より好ましくは0.1〜20重量%、さらに好ましくは0.5〜10重量%である。荷電制御剤の含有量はトナー重量に基づき、好ましくは0〜20重量%、より好ましくは0.1〜10重量%、さらに好ましくは0.5〜7.5重量%である。流動化剤の含有量はトナー重量に基づき、好ましくは0〜10重量%、より好ましくは0〜5重量%、さらに好ましくは0.1〜4重量%である。また、着色剤、離型剤、荷電制御剤及び流動化剤の合計含有量は、好ましくは3〜70重量%、より好ましくは4〜58重量%、さらに好ましくは5〜50重量%である。トナーの組成比率が上記の範囲であることで帯電性が良好なものを容易に得ることができる。
本発明のトナー用ポリエステル樹脂を含有するトナーの製造方法はチタン化合物及びアミン化合物の存在下で、アルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合させてポリエステル樹脂を得る工程以外は、特に限定されず、公知の混練粉砕法、乳化転相法、乳化重合法、特公昭36−10231号公報、特開昭59−53856号公報、特開昭59−61842号公報に記載されている懸濁重合法、溶解懸濁法及び特開昭62−106473号公報や特開昭63−186253号公報に記載されている乳化凝集法等の公知のいずれの方法により得られたものであってもよい。
例えば、混練粉砕法によりトナーを得る場合、流動化剤を除くトナーを構成する成分をヘンシェルミキサー、ナウターミキサー及びバンバリーミキサー等で乾式ブレンドした後、二軸混練機、エクストルーダー、コンティニアスニーダー及び3本ロール等の連続式の混合装置で溶融混練し、その後ミル機等で粗粉砕し、最終的に気流式微粉砕機等を用いて微粒化して、さらにエルボージェット等の分級機で粒度分布を調整することにより、トナー粒子[好ましくは体積平均粒径(D50)が5〜20μmの粒子]とした後、流動化剤を混合して製造することができる。
なお、体積平均粒径(D50)はコールターカウンター[例えば、商品名:マルチサイザーIII(コールター社製)]を用いて測定される。
本発明の製造方法により得られるトナー用ポリエステル樹脂を含有するトナーは、必要に応じて鉄粉、ガラスビーズ、ニッケル粉、フェライト、マグネタイト及び樹脂(アクリル樹脂、シリコーン樹脂等)により表面をコーティングしたフェライト等のキャリア粒子と混合されて電気的潜像の現像剤として用いられる。キャリア粒子を用いる場合、トナーとキャリア粒子との重量比は、1/99〜99/1が好ましい。また、キャリア粒子の代わりに帯電ブレード等の部材と摩擦し、電気的潜像を形成することもできる。
なお、本発明のトナーバインダーを含有するトナーは、キャリア粒子を含まなくてもよい。
本発明の製造方法により得られるトナー用ポリエステル樹脂を含有するトナーは、複写機、プリンター等により支持体(紙、及びポリエステルフィルム等)に定着して記録材料とされる。支持体に定着する方法としては、公知の熱ロール定着方法及びフラッシュ定着方法等が適用できる。
本発明の製造方法により得られるトナー用ポリエステル樹脂を含有するトナーは、電子写真法、静電記録法や静電印刷法等において、静電荷像または磁気潜像の現像に用いられる。さらに詳しくは、特にフルカラー用に好適な静電荷像または磁気潜像の現像に用いられる。
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り「部」は重量部を示す。
ポリエステル樹脂の各物性値については次の方法により測定した。
<ポリエステル樹脂の軟化点の測定方法>
定試験力押出形細管式レオメータフローテスタ[(株)島津製作所製、CFT−500D]を用いて、1gの測定試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出して、「プランジャー降下量(流れ値)」と「温度」とのグラフを描き、プランジャーの降下量の最大値の1/2に対応する温度をグラフから読み取り、この値(測定試料の半分が流出したときの温度)を軟化点とした。
<ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)の測定方法>
示差走査熱量計(TA Instruments(株)製、DSC Q20)を用いて、ASTM D3418−82に規定の方法(DSC法)で、以下の条件により測定した。
(1)30℃から20℃/分で150℃まで昇温
(2)150℃で10分間保持
(3)20℃/分で−35℃まで冷却
(4)−35℃で10分間保持
(5)20℃/分で150℃まで昇温
(6)(5)の過程にて測定される示差走査熱量曲線を解析しガラス転移温度を求めた。
<ポリエステル樹脂の酸価の測定方法>
JIS K0070(1992年版)に規定の方法で測定した。ただし、酸価の測定溶媒はアセトン、メタノール及びトルエンの混合溶媒(アセトン:メタノール:トルエン=12.5:12.5:75)、水酸基価の測定溶媒はTHFとした。
<ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)の測定方法>
分子量の測定は、ポリエステル樹脂をTHFに溶解し、不溶解分をグラスフィルターでろ別したものを試料溶液とし、以下の条件で測定した。
装置 : 東ソー(株)製 HLC−8120
カラム : TSK GEL GMH6 2本 〔東ソー(株)製〕
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.25重量%のTHF溶液
溶液注入量 : 100μl
検出装置 : 屈折率検出器
基準物質 : 東ソー(株)製 標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量 500 1,050 2,800 5,970 9,100 18,100 37,900 96,400 190,000 355,000 1,090,000 2,890,000)
<製造例1>[チタン化合物(テレフタル酸チタン)の製造]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、テレフタル酸636.8部(75モル%)、酢酸エチル1200.4部を入れ、20℃で撹拌しながら、チタンテトライソプロポキシド363.2部(25モル%)を滴下する。滴下後50℃まで昇温し、約60分間反応させた。その後0.5〜2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行うことで、テレフタル酸チタンを得た。
<製造例2>[チタン化合物(テレフタル酸チタンカリウム)の製造]
製造例1において、酢酸エチル1200.4部を入れた後に、水酸化カリウム(東京応化工業社製)215部を発熱しないように7部/分の添加速度で約30分かけてゆっくりと入れる以外は製造例1と同様にして、テレフタル酸チタンカリウムを得た。
<製造例3>[チタン化合物(シュウ酸チタニル)の製造]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、シュウ酸チタニルカリウム(昭和化工株式会社製)25部、イオン交換水500部を入れ、20℃で撹拌することで溶解させた。そこへ、上記水溶液がpH3になるまで塩酸(富士フィルム和光純薬製 試薬特級)をゆっくり滴下し、沈殿した固形物を回収することで、シュウ酸チタニルを得た。
<実施例1>[ポリエステル樹脂(L−1)の合成]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・PO2モル付加物(三洋化成工業(株)製、「ハイマーBP−2P」)61.1部(4.6モル%)、ビスフェノールA・PO3モル付加物(三洋化成工業(株)製、「ハイマーBP−3P」)691.5部(46.2モル%)、テレフタル酸156.0部(25.0モル%)、イソフタル酸156.0部(25.0モル%)、チタン化合物としてテレフタル酸チタン0.5部、アミン化合物としてトリエタノールアミン(東京化成工業(株)製)0.5部を入れ、常圧、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら4時間反応させた。さらに、0.5〜2.5kPaの減圧下に10時間反応させ、酸価が12になった時点で取り出し、ポリエステル樹脂(L−1)を得た。なお、テレフタル酸チタンは、上記製造例1のチタン化合物を用いた。
ポリエステル樹脂(L−1)の軟化点は113℃、酸価は8mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)は61℃、重量平均分子量Mwは12,000だった。
<実施例2>[ポリエステル樹脂(L−2)の合成]
実施例1において、トリエタノールアミンをジエタノールアミン(東京化成工業(株)製)に置き換えた以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂(L−2)を得た。ポリエステル樹脂(L−2)の軟化点は107℃、酸価は10mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)は62℃、重量平均分子量Mwは11,000だった。
<実施例3>[ポリエステル樹脂(L−3)の合成]
実施例1において、トリエタノールアミンをトリペンチルアミン(東京化成工業(株)製)に置き換えた以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂(L−3)を得た。ポリエステル樹脂(L−3)の軟化点は105℃、酸価は12mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)は62℃、重量平均分子量Mwは10,100だった。
<実施例4>[ポリエステル樹脂(L−4)の合成]
実施例1において、テレフタル酸チタンをシュウ酸チタニルカリウム(昭和化工株式会社製)、トリエタノールアミンを4−アリルモルホリン(東京化成工業(株)製)に置き換えた以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂(L−4)を得た。ポリエステル樹脂(L−4)の軟化点は104℃、酸価は11mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)は61℃、重量平均分子量Mwは9,300だった。
<実施例5>[ポリエステル樹脂(L−5)の合成]
実施例1において、トリエタノールアミンを1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(東京化成工業(株)製)に置き換えた以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂(L−5)を得た。ポリエステル樹脂(L−5)の軟化点は103℃、酸価は12mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)は61℃、重量平均分子量Mwは9,000だった。
<実施例6>[ポリエステル樹脂(L−6)の合成]
実施例1において、テレフタル酸チタン0.5部を2.0部に置き換えた以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂(L−6)を得た。ポリエステル樹脂(L−6)の軟化点は103℃、酸価は11mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)は61℃、重量平均分子量Mwは9,200だった。
<実施例7>[ポリエステル樹脂(L−7)の合成]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・PO2モル付加物189.9部(14.2モル%)、ビスフェノールA・PO3モル付加物561.4部(37.5モル%)、テレフタル酸220.6部(33.5モル%)、イソフタル酸94.5部(14.8モル%)、チタン化合物としてテレフタル酸チタンカリウム0.2部、アミン化合物としてトリエタノールアミン(東京化成工業(株)製)0.5部を入れ、常圧、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら4時間反応させた。さらに、0.5〜2.5kPaの減圧下に10時間反応させ、酸価が8になった時点で取り出し、ポリエステル樹脂(L−7)を得た。なお、テレフタル酸チタンカリウムは、上記製造例2のチタン化合物を用いた。
ポリエステル樹脂(L−7)の軟化点は108℃、酸価は8mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)は63℃、重量平均分子量Mwは10,700だった。
<実施例8>[ポリエステル樹脂(L−8)の合成]
実施例7において、テレフタル酸チタンカリウム0.2部をシュウ酸チタニル4.0部に置き換えた以外は実施例7と同様にしてポリエステル樹脂(L−8)を得た。なお、シュウ酸チタニルは、上記製造例3のチタン化合物を用いた。ポリエステル樹脂(L−8)の軟化点は107℃、酸価は10mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)は62℃、重量平均分子量Mwは10,500だった。
<実施例9>[ポリエステル樹脂(L−9)の合成]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・PO3モル付加物442.2部(29.6モル%)、ビスフェノールA・PO5モル付加物(三洋化成工業(株)製、「ニューポールBP−5P」)120.9部(6.1モル%)、ビスフェノールA・EO2モル付加物191.8(15.3モル%)、テレフタル酸280.3部(44.1モル%)、イソフタル酸31.1部(4.9モル%)、チタン化合物としてテレフタル酸チタン0.5部、アミン化合物としてトリエタノールアミン(東京化成工業(株)製)0.5部を入れ、常圧、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら4時間反応させた。さらに、0.5〜2.5kPaの減圧下に10時間反応させ、酸価が9になった時点で取り出し、ポリエステル樹脂(L−9)を得た。
ポリエステル樹脂(L−9)の軟化点は99℃、酸価は9mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)は53℃、重量平均分子量Mwは11,700だった。
<実施例10>[ポリエステル樹脂(H−1)の合成]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・PO2モル付加物(三洋化成工業(株)製、「ハイマーBP−2P」)108.9部(8.7モル%)、ビスフェノールA・PO3モル付加物(三洋化成工業(株)製、「ニューポールBP−3P」)648.4部(46.4モル%)、テレフタル酸214.3部(31.9モル%)、イソフタル酸26.8部(4.0モル%)、アジピン酸23.6部(4.0モル%)、無水トリメリット酸39.6部(4.0モル%)、チタン化合物としてテレフタル酸チタン0.5部、アミン化合物としてトリエタノールアミン0.5部を入れ、常圧、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら4時間反応させた。さらに、0.5〜2.5kPaの減圧下に10時間反応させ、酸価が13になった時点で取り出し、ポリエステル樹脂(H−1)を得た。
ポリエステル樹脂(H−1)の軟化点は120℃、酸価は10mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)は58℃、重量平均分子量Mwは53,000だった。
<実施例11>[ポリエステル樹脂(H−2)の合成]
実施例10において、トリエタノールアミンをジエタノールアミン(東京化成工業(株)製)に置き換えた以外は実施例10と同様にしてポリエステル樹脂(H−2)を得た。ポリエステル樹脂(H−2)の軟化点は118℃、酸価は12mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)は57℃、重量平均分子量Mwは50,000だった。
<実施例12>[ポリエステル樹脂(H−3)の合成]
実施例10において、トリエタノールアミンをトリペンチルアミン(東京化成工業(株)製)に置き換えた以外は実施例10と同様にしてポリエステル樹脂(H−3)を得た。ポリエステル樹脂(H−3)の軟化点は122℃、酸価は8mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)は59℃、重量平均分子量Mwは57,000だった。
<実施例13>[ポリエステル樹脂(H−4)の合成]
実施例10において、テレフタル酸チタンをシュウ酸チタニルカリウム、トリエタノールアミンを4−アリルモルホリン(東京化成工業(株)製)に置き換えた以外は実施例10と同様にしてポリエステル樹脂(H−4)を得た。ポリエステル樹脂(H−4)の軟化点は123℃、酸価は9mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)は58℃、重量平均分子量Mwは62,000だった。
<実施例14>[ポリエステル樹脂(H−5)の合成]
実施例10において、トリエタノールアミンを1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(東京化成工業(株)製)に置き換えた以外は実施例10と同様にしてポリエステル樹脂(H−5)を得た。ポリエステル樹脂(H−5)の軟化点は119℃、酸価は13mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)は57℃、重量平均分子量Mwは58,000だった。
<実施例15>[ポリエステル樹脂(H−6)の合成]
実施例10において、トリエタノールアミン0.5部を2.0部に置き換えた以外は実施例10と同様にしてポリエステル樹脂(H−6)を得た。ポリエステル樹脂(H−6)の軟化点は117℃、酸価は12mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)は57℃、重量平均分子量Mwは59,000だった。
<実施例16>[ポリエステル樹脂(H−7)の合成]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・PO2モル付加物109.9部(17.2モル%)、ビスフェノールA・PO3モル付加物654.9部(40.0モル%)、テレフタル酸197.9部(29.3モル%)、イソフタル酸24.7部(3.6モル%)、アジピン酸21.8部(3.6モル%)、無水トリメリット酸50.0部(6.3モル%)、チタン化合物としてテレフタル酸チタン0.5部、アミン化合物としてトリエタノールアミン0.13部を入れ、常圧、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら4時間反応させた。さらに、0.5〜2.5kPaの減圧下に10時間反応させ、酸価が9になった時点で取り出し、ポリエステル樹脂(H−7)を得た。
ポリエステル樹脂(H−7)の軟化点は117℃、酸価は9mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)は59℃、重量平均分子量Mwは56,100だった。
<実施例17>[ポリエステル樹脂(H−8)の合成]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・PO2モル付加物107.8部(8.6モル%)、ビスフェノールA・PO3モル付加物642.1部(46.0モル%)、テレフタル酸29.8部(4.4モル%)、イソフタル酸238.2部(35.4モル%)、アジピン酸2.4部(0.4モル%)、無水トリメリット酸39.6部(5.1モル%)、チタン化合物としてテレフタル酸チタン0.5部、アミン化合物としてトリエタノールアミン4.0部を入れ、常圧、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら4時間反応させた。さらに、0.5〜2.5kPaの減圧下に10時間反応させ、酸価が9になった時点で取り出し、ポリエステル樹脂(H−8)を得た。
ポリエステル樹脂(H−8)の軟化点は122℃、酸価は12mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)は61℃、重量平均分子量Mwは58,900だった。
<比較例1>[ポリエステル樹脂(LR−1)の合成]
実施例1において、テレフタル酸チタン0.5部、トリエタノールアミン0.5部に代えてチタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)(マツモトファインケミカル(株)製 TC−750)5.0部とし、さらに常圧、180℃、窒素気流下で生成する水を留去する時間を4時間から10時間に変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂(LR−1)を得た。ポリエステル樹脂(LR−1)の軟化点は113℃、酸価は8mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)は61℃、重量平均分子量Mwは12,000だった。
<比較例2>[ポリエステル樹脂(LR−2)の合成]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・PO2モル付加物61.1部(4.6モル%)、ビスフェノールA・PO3モル付加物691.5部(46.2モル%)、テレフタル酸156.0部(25.0モル%)、イソフタル酸156.0部(25.0モル%)、チタン化合物としてチタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート(マツモトファインケミカル(株)製 オルガチックス TC−400)0.5部、アミン化合物としてトリエタノールアミン0.5部を入れ、常圧、200℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら12時間反応させた。さらに、230℃まで昇温して0.5〜2.5kPaの減圧下に12時間反応させ、酸価が7になった時点で取り出し、ポリエステル樹脂(LR−2)を得た。
ポリエステル樹脂(LR−2)の軟化点は114℃、酸価は7mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)は62℃、重量平均分子量Mwは12,500だった。
<比較例3>[ポリエステル樹脂(HR−1)の合成]
実施例10において、テレフタル酸チタン0.5部、トリエタノールアミン0.5部に代えてチタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)(マツモトファインケミカル(株)製 TC−750)5.0部とし、さらに常圧、180℃、窒素気流下で生成する水を留去する時間を4時間から10時間に変更した以外は実施例10と同様にしてポリエステル樹脂(HR−1)を得た。ポリエステル樹脂(HR−1)の軟化点は120℃、酸価は10mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)は57℃、重量平均分子量Mwは54,000だった。
<比較例4>[ポリエステル樹脂(HR−2)の合成]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・PO2モル付加物108.9部(8.7モル%)、ビスフェノールA・PO3モル付加物648.4部(46.4モル%)、テレフタル酸214.3部(31.9モル%)、イソフタル酸26.8部(4.0モル%)、アジピン酸23.6部(4.0モル%)、無水トリメリット酸39.6部(4.0モル%)、チタン化合物としてチタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート0.5部、アミン化合物としてトリエタノールアミン0.5部を入れ、常圧、200℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら12時間反応させた。さらに、230℃まで昇温して0.5〜2.5kPaの減圧下に12時間反応させ、酸価が9になった時点で取り出し、ポリエステル樹脂(HR−2)を得た。
ポリエステル樹脂(HR−2)の軟化点は122℃、酸価は9mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)は58℃、重量平均分子量Mwは58,000だった。
Figure 2021050321
Figure 2021050321
<実施例18>[トナー(T−1)の製造]
まず、サンプルミルを用いてポリエステル樹脂(L−1)50.0部、ポリエステル樹脂(H−1)50.0部、着色剤のカーボンブラック[MA−100、三菱ケミカル(株)製]8.0部、荷電制御剤[T−77、保土谷化学工業(株)製]1.0部、離型剤のポリオレフィンワックス[日本精蝋製 HNP−9]5.0部を予備混合した後、二軸混練機[(株)池貝製 PCM−30]で混練した。ついで気流式微粉砕機[(株)栗本鐵工所製 KJ−25]を用いて微粉砕した後、エルボージェット分級機[(株)マツボー製 EJ−L−3(LABO)型]で分級し、体積平均粒径が7μmのトナー粒子を得た。
ついで、トナー粒子100部に流動化剤として疎水性シリカ[アエロジルR972、日本アエロジル(株)製]0.6部をサンプルミルにて混合して、本発明のトナー(T−1)を得た。
<実施例19〜34及び比較例3〜4>
実施例1〜17で得られたポリエステル樹脂(L−1)〜(L−9)、(H−1)〜(H−8)及び比較例1〜2で得られた(LR−1)〜(LR−2)、(HR−1)〜(HR−2)を、表3の配合比(重量部)で、実施例18と同様にトナーを製造し、トナー(T−2)〜(T−17)、(TR−1)〜(TR−3)を得た。
[評価方法]
以下に得られたポリエステル樹脂の着色性及び透明性並びにトナーの画像光沢性、帯電性、及び帯電バラつきの測定方法、評価方法、判定基準を説明する。評価結果を表1〜3に示す。
<着色性>
ポリエステル樹脂にメチルエチルケトン(MEK)を加えて溶解させて、10wt%溶液を調整し、色数計(NIPPON DENSHOKU製、「OME」−2000」)を用いて、Saybolt色測定法にて着色性(L、a、b)を測定した。数値が低いほど着色性が優れることを意味する。
[判定基準]
◎:a≦0 かつ b≦20
〇:a≦0 かつ 20<b または a>0 かつ b≦20
×:0<a かつ 20<b
<透明性>
着色性と同様にポリエステル樹脂の10wt%MEK溶液を用いて、紫外分光光度計(SHIMADZU製、「UV−2550」)を用いて、スペクトルモジュール測定にて可視光領域(波長:300〜800nm)の透過率(%)を測定した。代表値として波長600nmでの透過率(%)を比較し、数値が高いほど透明性が優れることを意味する。
[判定基準]
◎:透過率90%以上
○:透過率70%以上90%未満
×:透過率70%未満
<帯電性>
(1)トナー0.5gとフェライトキャリア(パウダーテック社製、F−150)10gとを50mlのガラス瓶に入れ、これを23℃、相対湿度50%で8時間以上調湿した。
(2)ターブラーシェーカーミキサーにて90rpm×2分間摩擦攪拌し、攪拌後の混合粉体0.2gを目開き20μmステンレス金網がセットされたブローオフ粉体帯電量測定装置に装填し、ブロー圧10KPa,吸引圧5KPaの条件で、残存フェライトキャリアの帯電量を測定し、定法により樹脂粒子の帯電量(μC/g)を算出した。なお、トナー用としてはマイナス帯電量が高いほど帯電特性が優れている。
測定にはブローオフ帯電量測定装置[東芝ケミカル(株)製]を用いた。
[判定基準]
◎:−15未満
○:−15以上−5未満
×:−5以上
<帯電バラつき>
(1)トナー0.5gとフェライトキャリア(パウダーテック社製、F−150)20gとを50mlのガラス瓶に入れ、これを23℃、相対湿度50%で8時間以上調湿した。
(2)ターブラーシェーカーミキサーにて50rpm×20分間摩擦攪拌し、帯電量分布を測定した。
測定には粒子帯電量分布測定装置[EST−1、ホソカワミクロン(株)製]を用いた。
[判定基準]
◎:帯電量分布の標準偏差が0.3未満
○:帯電量分布の標準偏差が0.3以上0.5未満
×:帯電量分布の標準偏差が0.5以上
<画像光沢性>
トナーを紙面上に0.6mg/cmとなるよう均一に載せた。このとき粉体を紙面に載せる方法は、熱定着機を外したプリンターを用いた。上記の重量密度で粉体を均一に載せることができるのであれば他の方法を用いてもよい。
この紙を加圧ローラーに温度(加熱ローラー温度)150℃、定着速度(加熱ローラ周速)213mm/sec、定着圧力(加圧ローラ圧)10kg/cmの条件で通し、定着評価を行った。画像の下に白色の厚紙を敷き、光沢度計(株式会社堀場製作所製、「IG−330」)を用いて、入射角度60度にて、印字画像の光沢度を測定した。
[判定基準]
◎:20以上
○:15以上20未満
△:10以上15未満
×:10未満
Figure 2021050321
[評価結果]
表3の評価結果から明らかなように、本発明の製造方法で得られたトナー用ポリエステル樹脂を含有するトナーはいずれもすべての性能評価において優れた結果が得られた。一方、アミン化合物を使用しないで製造したポリエステル樹脂を含有する比較例5及び比較例6のトナーは画像光沢性及び帯電バラつきが不良となり、チタン化合物としてチタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネートを使用して製造したポリエステル樹脂を含有する比較例7のトナーは帯電性及び帯電バラツキが不良となり、いずれも本願の効果を得ることができなかった。
本発明の製造方法により得られるトナー用ポリエステル樹脂及びトナーは、画像光沢性、帯電性に優れ帯電バラつきの少なく電子写真、静電記録及び静電印刷等に用いるトナーとして好適に使用できる。さらに、塗料用添加剤、接着剤用添加剤、電子ペーパー用粒子などの用途として好適である。

Claims (4)

  1. チタン化合物及びアミン化合物の存在下で、アルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合させてポリエステル樹脂を得るトナー用ポリエステル樹脂の製造方法であって、チタン化合物がカルボン酸チタン、カルボン酸チタニル、カルボン酸チタン塩、及びカルボン酸チタニル塩からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物であり、アミン化合物の酸解離定数(pKa)が7〜10であるトナー用ポリエステル樹脂の製造方法。
  2. 重合開始時のアルコール成分とカルボン酸成分の合計重量を基準として、チタン化合物の存在量が、0.01〜0.4重量%である請求項1に記載のトナー用ポリエステル樹脂の製造方法。
  3. 重合開始時のアルコール成分とカルボン酸成分の合計重量を基準として、アミン化合物の存在量が、0.01〜0.4重量%である請求項1又は2に記載のトナー用ポリエステル樹脂の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のトナー用ポリエステル樹脂を含有するトナーの製造方法。
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