JP2021048044A - 導電性フィルム及びその製造方法 - Google Patents

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【課題】プラスチックからなるフィルム基材/導電層/樹脂層の順で積層された、耐熱性に優れる導電性フィルム及びその製法を提供する。【解決手段】フィルム基材と、前記フィルム基材の少なくとも一方の面に形成された導電層と、前記導電層の表面に積層された樹脂層と、を備えた導電性フィルムであって、前記導電層は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体を含有し、前記樹脂層は、特定の芳香族化合物と、バインダ樹脂とを含有する、導電性フィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、導電性フィルム及びその製造方法に関する。
電子デバイスの製造に関する技術として、プラスチック基材の表面に導電層を形成することが求められている。π共役系導電性高分子は、導電性及び透明性に優れるので、導電層を形成する材料として注目されている。
π共役系導電性高分子を含有する導電層の形成方法としては、例えば、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含有する導電性複合体が水中に分散している導電性高分子分散液を基材に塗工し、乾燥させる方法が挙げられる(特許文献1)。
国際公開第2015/108001号
プラスチック基材の表面に形成された導電層には、耐熱性が求められることがある。
本発明は、プラスチックからなるフィルム基材/導電層/樹脂層の順で積層された、耐熱性に優れる導電性フィルム及びその製法を提供する。
[1] フィルム基材と、前記フィルム基材の少なくとも一方の面に形成された導電層と、前記導電層の表面に積層された樹脂層と、を備えた導電性フィルムであって、前記導電層は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体を含有し、前記樹脂層は、下記化学式(1)で表される化合物と、バインダ樹脂とを含有する、導電性フィルム。
[2] 前記樹脂層は、下記化学式(1)の下記R〜Rから任意に選択される1つ以上が水酸基であり、且つ下記R〜R10から任意に選択される1つ以上が水酸基である化合物を含む、[1]に記載の導電性フィルム。
[3] 前記樹脂層は、下記化学式(2)で表される化合物を含む、[1]又は[2]に記載の導電性フィルム。
[4] 前記樹脂層は、下記化学式(1)又は下記化学式(2)の下記Xが硫黄原子若しくはスルホニル基である化合物を含む、[1]〜[3]の何れか一項に記載の導電性フィルム。
[5] 前記樹脂層は、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニルスルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,2’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジメチル−4,4’−チオジフェノール、及び2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−p−クレゾール)から選択される1種以上を含む、[1]に記載の導電性フィルム。
[6] 前記樹脂層がポリエステル樹脂を含む、[1]〜[5]の何れか一項に記載の導電性フィルム。
[7] 前記導電層がバインダ樹脂を含む、[1]〜[6]の何れか一項に記載の導電性フィルム。
[8] 前記バインダ樹脂がポリエステル樹脂を含む、[7]に記載の導電性フィルム。
[9] 前記π共役系導電性高分子がポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である、[1]〜[8]の何れか一項に記載の導電性フィルム。
[10] 前記ポリアニオンがポリスチレンスルホン酸である、[1]〜[9]の何れか一項に記載の導電性フィルム。
[11] 前記フィルム基材がポリエステル樹脂を含む、[1]〜[10]の何れか一項に記載の導電性フィルム。
[12] [1]〜[11]の何れか一項に記載の導電性フィルムを製造する方法であって、前記フィルム基材の少なくとも一方の面に、前記導電性複合体及び分散媒を含む第一の塗料を塗布し、形成した塗膜を乾燥することにより前記導電層を形成した後、前記導電層の表面に、下記化学式(1)で表される化合物、バインダ成分、及び溶剤を含む第二の塗料を塗布し、形成した塗膜を乾燥することにより前記樹脂層を形成することを含む、導電性フィルムの製造方法。
[13] 前記第一の塗料が水分散性バインダ樹脂を含む、[12]に記載の導電性フィルムの製造方法。
[14] 前記水分散性バインダ樹脂が水分散性ポリエステルを含む、[13]に記載の導電性フィルムの製造方法。
[15] 前記第一の塗料が高導電化剤を含む、[12]〜[14]の何れか一項に記載の導電性フィルムの製造方法。
[16] 前記高導電化剤がジオールを含む、[15]に記載の導電性フィルムの製造方法。
[17] 前記ジオールがプロピレングリコールを含む、[16]に記載の導電性フィルムの製造方法。
Figure 2021048044
[式(1)中、R〜R10から任意に選択される1つ以上が水酸基であり、水酸基ではない残りの基は水素原子又は水酸基以外の任意の置換基であり、Xは、硫黄原子、酸素原子、ジスルフィド基(−S−S−)、スルホニル基(−S(=O)−)、アルキレン基、又は単結合を表す。]
Figure 2021048044
[式(2)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は任意の置換基を表し、Xは、硫黄原子、酸素原子、ジスルフィド基(−S−S−)、スルホニル基(−S(=O)−)、アルキレン基、又は単結合を表す。]
本発明の導電性フィルムは耐熱性に優れ、110℃程度の高温環境下に長時間置かれた場合にも、導電性の低下が抑制されている。
本発明の製造方法は、耐熱性に優れた導電性フィルムを容易に製造することができる。
≪導電性フィルム≫
本発明の第一態様は、フィルム基材と、前記フィルム基材の少なくとも一方の面に形成された導電層と、前記導電層の表面に積層された樹脂層と、を備えた導電性フィルムであって、前記導電層は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体を含有し、前記樹脂層は、下記化学式(1)で表される化合物と、バインダ樹脂とを含有する、導電性フィルムである。
<導電層>
[導電性複合体]
本態様の導電性フィルムの導電層に含まれる導電性複合体は、π共役系導電性高分子とポリアニオンとを含む。導電性複合体中のポリアニオンはπ共役系導電性高分子にドープして、導電性を有する導電性複合体を形成している。
ポリアニオンにおいては、一部のアニオン基のみがπ共役系導電性高分子にドープしており、ドープに関与しない余剰のアニオン基を有している。余剰のアニオン基は親水基であるため、導電性複合体は水分散性を有する。
(π共役系導電性高分子)
π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であればよく、例えば、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリフェニレン系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセン系導電性高分子、ポリチオフェンビニレン系導電性高分子、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン類及びポリアニリン系導電性高分子が好ましく、透明性の面から、ポリチオフェン系導電性高分子がより好ましい。
ポリチオフェン系導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)が挙げられる。
ポリピロール系導電性高分子としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)が挙げられる。
ポリアニリン系導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)が挙げられる。
これらのπ共役系導電性高分子のなかでも、導電性、透明性、耐熱性の点から、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
導電性複合体に含まれるπ共役系導電性高分子は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
(ポリアニオン)
ポリアニオンは、アニオン基を有するモノマー単位を、分子内に2つ以上有する重合体である。このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性を向上させる。
ポリアニオンのアニオン基としては、スルホ基、またはカルボキシ基であることが好ましい。
このようなポリアニオンの具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、スルホ基を有するポリアクリル酸エステル、スルホ基を有するポリメタクリル酸エステル(例えば、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリメタクリロイルオキシベンゼンスルホン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸等のスルホ基を有する高分子や、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸等のカルボキシ基を有する高分子が挙げられる。ポリアニオンは、単一のモノマーが重合した単独重合体であってもよいし、2種以上のモノマーが重合した共重合体であってもよい。
これらポリアニオンのなかでも、導電性をより高くできることから、スルホ基を有する高分子が好ましく、ポリスチレンスルホン酸がより好ましい。
前記ポリアニオンは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリアニオンの質量平均分子量は2万以上100万以下であることが好ましく、10万以上50万以下であることがより好ましい。質量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィを用いて測定し、ポリスチレン換算で求めた質量基準の平均分子量である。
導電性複合体中の、ポリアニオンの含有割合は、π共役系導電性高分子100質量部に対して1質量部以上1000質量部以下の範囲であることが好ましく、10質量部以上700質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上500質量部以下の範囲であることがさらに好ましい。ポリアニオンの含有割合が前記下限値以上であれば、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が強くなる傾向にあり、導電性がより高くなる。一方、ポリアニオンの含有量が前記上限値以下であれば、π共役系導電性高分子を充分に含有させることができるので、充分な導電性を確保できる。
本態様の導電性フィルムの導電層に含まれる導電性複合体の含有量としては、例えば、導電層の総質量に対して、1質量%以上99質量%以下が好ましく、10質量%以上90質量%以下がより好ましく、20質量%以上70質量%以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、導電層の導電性を充分に確保することができる。上記範囲の上限値以下であると、導電層にバインダ樹脂等の任意成分を含有させる余地があり、導電層に導電性以外の特性を付与することができる。
[バインダ樹脂]
本態様の導電性フィルムの導電層はバインダ樹脂を含んでいてもよい。バインダ樹脂は、前記π共役系導電性高分子及び前記ポリアニオン以外の樹脂であり、熱可塑性樹脂、導電層形成時に硬化した硬化性樹脂等が挙げられる。
バインダ樹脂の具体例としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
バインダ樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記導電層に含まれるバインダ樹脂は、前記フィルム基材に含まれる樹脂と同じ種類の樹脂であることが好ましい。例えば、前記フィルム基材にポリエステル樹脂が含まれる場合、前記導電層に含まれるバインダ樹脂はポリエステル樹脂を含むことが好ましい。このように、前記導電層と前記フィルム基材に同種類の樹脂が含まれると、前記導電層と前記フィルム基材との密着性を向上させることができる。
本態様の導電性フィルムの導電層に含まれるバインダ樹脂の含有量としては、例えば、導電層の総質量に対して、1質量%以上99質量%以下が好ましく、10質量%以上90質量%以下がより好ましく、20質量%以上70質量%以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、前記フィルム基材及び前記樹脂層に対する導電層の密着性を向上させることができる。上記範囲の上限値以下であると、導電層に含まれる導電性複合体の相対的な含有量を増加させることができ、導電層の導電性を向上させることができる。
[高導電化剤]
本態様の導電性フィルムの導電層は、導電性をより向上させるために、高導電化剤を含んでもよい。ここで、π共役系導電性高分子、ポリアニオン、及び前述のバインダ樹脂は、高導電化剤に分類されない。
高導電化剤は、糖類、窒素含有芳香族性環式化合物、2個以上のヒドロキシ基を有する化合物、1個以上のヒドロキシ基及び1個以上のカルボキシ基を有する化合物、アミド基を有する化合物、イミド基を有する化合物、ラクタム化合物、グリシジル基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
前記高導電化剤としては、2個以上のヒドロキシ基を有する化合物(ジオール)が好ましく、プロピレングリコールがより好ましい。
本態様の導電性フィルムの導電層に含有される高導電化剤は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
本態様の導電性高分子分散液における高導電化剤の含有割合は、導電性複合体100質量部に対して、例えば、1質量部以上100,000質量部以下とすることができ、100質量部以上1000質量部以下が好ましい。高導電化剤の含有割合が前記下限値以上であれば、高導電化剤添加による導電性向上効果が充分に発揮され、前記上限値以下であれば、π共役系導電性高分子濃度の低下に起因する導電性の低下を防止できる。
[その他の添加剤]
本態様の導電性フィルムの導電層は、その他の添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、本発明の効果が得られる限り特に制限されず、例えば、界面活性剤、無機導電剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを使用できる。ただし、添加剤は、前述したπ共役系導電性高分子、ポリアニオン、バインダ樹脂、及び高導電化剤以外の化合物からなる。
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤が挙げられるが、保存安定性の面からノニオン系が好ましい。また、ポリビニルピロリドンなどのポリマー系界面活性剤を添加してもよい。
無機導電剤としては、金属イオン類、導電性カーボン等が挙げられる。なお、金属イオンは、金属塩を水に溶解させることにより生成させることができる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンオイル等が挙げられる。
カップリング剤としては、エポキシ基、ビニル基又はアミノ基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキサニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
本態様の導電性フィルムの導電層が上記添加剤を含有する場合、その含有割合は、添加剤の種類に応じて適宜決められるが、例えば、導電性複合体100質量部に対して、0.001質量部以上5質量部以下の範囲とすることができる。
前記導電層の厚さは特に制限されず、例えば、10nm以上50000nm以下であることが好ましく、20nm以上10000nm以下であることがより好ましく、30nm以上5000nm以下であることがさらに好ましい。
前記導電層の平均厚さが前記下限値以上であれば、充分に高い導電性を発揮でき、前記上限値以下であれば、導電層のフィルム基材に対する密着性がより向上する。
本態様の導電性フィルムの導電層の良好な導電性の目安として、例えば、1×10Ω/□以上1×1010Ω/□以下の表面抵抗値を有することが好ましい。
前記表面抵抗値の測定は後述するように、デジタルマルチメータ(テスター)により行われる。
<樹脂層>
本態様の導電性フィルムの樹脂層は、下記化学式(1)で表される化合物(以下、「芳香族化合物(1)」ともいう。)と、バインダ樹脂とを含有する。
[芳香族化合物(1)]
前記樹脂層に含まれる芳香族化合物(1)は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
Figure 2021048044
[式(1)中、R〜R10から任意に選択される1つ以上が水酸基であり、水酸基ではない残りの基は水素原子又は水酸基以外の任意の置換基であり、Xは、硫黄原子、酸素原子、ジスルフィド基(−S−S−)、スルホニル基(−S(=O)−)、アルキレン基、又は単結合を表す。]
前記樹脂層は、前記化学式(1)の前記R〜Rから任意に選択される1つ以上が水酸基であり、且つ前記R〜R10から任意に選択される1つ以上が水酸基である化合物を含むことが好ましい。すなわち、芳香族化合物(1)が有する2つの芳香環のそれぞれが少なくとも1つの水酸基を有し、芳香族化合物(1)の分子全体として2つ以上の水酸基を有することが好ましい。この好ましい化合物であると、導電層の耐熱性をより一層向上させることができる。
前記任意の置換基としては、例えば、炭素数1〜14のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)、炭素数1〜14のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)、水酸基、アミノ基、カルボキシ基等が挙げられる。これらの置換基が有する水素原子は、さらに別の置換基(例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基、カルボキシ基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、トリアルコキシシリル基、ハロゲン(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)等)に置換されていてもよい。
本発明の効果を充分に得る観点から、前記任意の置換基のうち少なくとも1つは、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜2の直鎖状アルキル基であることがより好ましい。また、前記任意の置換基がアルキル基である場合、そのアルキル基は、2つの芳香環のうち少なくとも一方の3位又は5位に結合していることが好ましい。
前記樹脂層は、下記化学式(2)で表される化合物(以下、「芳香族化合物(2)」ともいう。)を含むことが好ましい。この好ましい化合物であると、導電層の耐熱性をより一層向上させることができる。なお、芳香族化合物(2)は芳香族化合物(1)に該当する。
Figure 2021048044
[式(2)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は任意の置換基を表し、Xは、硫黄原子、酸素原子、ジスルフィド基(−S−S−)、スルホニル基(−S(=O)−)、アルキレン基、又は単結合を表す。]
芳香族化合物(2)が有する前記任意の置換基の具体例は前述の通りであり、水酸基であっても構わないが、水酸基以外の基であることが好ましい。すなわち、芳香族化合物(2)が有する水酸基は4位及び4’位に結合する2つの水酸基のみであることがより好ましい。このより好ましい化合物であると、導電層の耐熱性をさらにより一層向上させることができる。
前記樹脂層は、前記化学式(1)又は前記化学式(2)の前記Xが硫黄原子若しくはスルホニル基である化合物を含むことが好ましく、前記Xが硫黄原子である化合物を含むことがより好ましい。これらの好ましい化合物であると、導電層の耐熱性をより一層向上させることができる。前記Xがアルキレン基である場合、その炭素数は1〜3であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。
芳香族化合物(1)の好適な具体例としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニルスルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,2’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジメチル−4,4’−チオジフェノール、及び2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−p−クレゾール)からなる群が挙げられる。前記導電層の耐熱性をより一層向上させる観点から、前記樹脂層は、上記群から選択される1種以上を含むことが好ましい。
前記樹脂層に含まれる芳香族化合物(1)の含有割合は、例えば、前記樹脂層に含まれるバインダ樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下が好ましく、0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、1質量部以上5質量部以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、前記導電層の耐熱性をより一層向上させることができる。上記範囲の上限値以下であると、前記樹脂層に含まれるバインダ樹脂の相対的な含有量が増加するので、前記樹脂層の前記導電層に対する密着性を向上させることができる。
前記樹脂層に含まれる芳香族化合物(1)の含有割合は、例えば、前記導電層に含まれる導電性複合体100質量部に対して、1質量部以上500質量部以下が好ましく、10質量部以上200質量部以下が好ましく、50質量部以上100質量部以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、前記導電層の耐熱性をより一層向上させることができる。上記範囲の上限値以下であると、前記樹脂層に含まれるバインダ樹脂の相対的な含有量が増加するので、前記樹脂層の前記導電層に対する密着性を向上させることができる。
[バインダ樹脂]
前記樹脂層に含まれるバインダ樹脂は、前記π共役系導電性高分子及び前記ポリアニオン以外の樹脂であり、熱可塑性樹脂、導電層形成時に硬化した硬化性樹脂等が挙げられる。
バインダ樹脂の具体例としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
バインダ樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記樹脂層に含まれるバインダ樹脂は、前記導電層に含まれるバインダ樹脂と同じ種類のバインダ樹脂であることが好ましい。例えば、前記導電層にポリエステル樹脂が含まれる場合、前記樹脂層に含まれるバインダ樹脂はポリエステル樹脂を含むことが好ましい。このように、前記樹脂層と前記導電層に同種類の樹脂が含まれると、前記樹脂層と前記導電層との密着性を向上させることができる。
本態様の導電性フィルムの樹脂層に含まれるバインダ樹脂の含有量としては、例えば、樹脂層の総質量に対して、1質量%以上99質量%以下が好ましく、10質量%以上90質量%以下がより好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、前記導電層に対する前記樹脂層の密着性を向上させることができる。上記範囲の上限値以下であると、前記樹脂層に含まれる芳香族化合物(1)の相対的な含有量を増加させることができ、導電層の耐熱性をより一層向上させることができる。
[その他の添加剤]
本態様の導電性フィルムの樹脂層は、その他の添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、本発明の効果が得られる限り特に制限されず、例えば、界面活性剤、無機導電剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを使用できる。ただし、添加剤は、前述したπ共役系導電性高分子、ポリアニオン、芳香族化合物(1)、及びバインダ樹脂以外の化合物からなる。
具体的な添加剤の例示は、前記導電層に含まれてもよい添加剤の具体例と同じであるので、ここではその例示を省略する。
本態様の導電性フィルムの樹脂層が上記添加剤を含有する場合、その含有割合は、添加剤の種類に応じて適宜決められるが、例えば、芳香族化合物(1)100質量部に対して、1質量部以上100質量部以下の範囲とすることができる。
前記樹脂層の厚さは特に制限されず、例えば、10nm以上50000nm以下であることが好ましく、20nm以上10000nm以下であることがより好ましく、30nm以上5000nm以下であることがさらに好ましい。
前記樹脂層の平均厚さが前記下限値以上であると、前記導電層を外部から充分に遮蔽して、前記導電層の耐熱性を充分に高めることができる。前記上限値以下であると、前記樹脂層の前記導電層に対する密着性がより向上する。
本態様の導電性フィルムにおいて、前記樹脂層の厚さは前記導電層より薄くても構わない。前記樹脂層の厚さ/前記導電層の厚さで表される厚さ比は、例えば、0.1〜3.0が好ましく、0.2〜2.0がより好ましく、0.3〜1.0がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、前記導電層を外部から充分に遮蔽して、導電層の耐熱性を充分に高めることができる。前記上限値以下であると、前記樹脂層の前記導電層に対する密着性がより向上する。
<フィルム基材>
前記フィルム基材としては、例えば、プラスチックフィルムが挙げられる。ここで、プラスチックとは合成樹脂のことをいう。
プラスチックフィルムを構成するフィルム基材用樹脂としては、例えば、エチレン−メチルメタクリレート共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリレート、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。
フィルム基材と導電層との密着性を高める観点から、フィルム基材用樹脂は導電層に含まれるバインダ樹脂と同種の樹脂であることが好ましく、なかでも、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂が好ましい。
フィルム基材用の樹脂は、非晶性でもよいし、結晶性でもよい。
フィルム基材は、未延伸のものでもよいし、延伸されたものでもよい。
フィルム基材には、導電層の密着性を向上させるために、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理等の表面処理が施されてもよい。
フィルム基材の平均厚みは、5μm以上500μm以下が好ましく、20μm以上200μm以下がより好ましい。フィルム基材の平均厚みが前記下限値以上であれば、破断しにくくなり、前記上限値以下であれば、フィルムとして充分な可撓性を確保できる。
本明細書におけるフィルム基材及び各層の厚さは、無作為に選択される10箇所について常法により厚さを測定し、その測定値を平均した値である。
前記フィルム基材として、公知の偏光フィルムを使用することもできる。
偏光フィルムとしては、例えば、一対の透明フィルムと、これらの間に配置された偏光層とを備えたものが知られている。
透明フィルムを構成する透明樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂等が挙げられる。
透明フィルムの厚さは、例えば、10μm以上500μm以下とすることができ、薄型化と強度の両立の点では、20μm以上300μm以下が好ましい。
偏光層としては、例えば、親水性フィルムに二色性物質を付着させ、一軸延伸して二色性物質を配向させたものが挙げられる。親水性フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体の部分ケン化フィルム等が挙げられる。二色性物質としては、例えば、ヨウ素、二色性染料等が挙げられる。
偏光層の厚さは、例えば、10μm以上500μm以下とすることができ、薄型化と偏光性の両立の点では、20μm以上300μm以下が好ましい。
導電性フィルムを光学用途に使用する場合には、フィルム基材が透明であることが好ましい。具体的には、フィルム基材の全光線透過率は65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。全光線透過率は、JIS K7136に従って測定した値である。
<作用効果>
本発明にかかる導電性フィルムにあっては、導電層の上に樹脂層が積層されており、導電層が外部から保護されている。さらに、この樹脂層には芳香族化合物(1)が含有されているので、導電性フィルムが高温環境下に長時間置かれた場合にも、導電層の導電性低下が抑制されている。このメカニズムの詳細は未解明であるが、樹脂層に含まれる芳香族化合物(1)が、酸化防止剤として機能し、樹脂層を透過しようとする酸素分子やその他の酸化剤の働きを阻害すると考えられる。その結果、導電層に含まれる導電性複合体の酸化分解が抑制され、優れた導電性が維持されていると推測される。
≪導電性フィルムの製造方法≫
本発明の第二態様は、第一態様の導電性フィルムを製造する方法であって、前記フィルム基材の少なくとも一方の面に、前記導電性複合体及び分散媒を含む第一の塗料を塗布し、形成した塗膜を乾燥することにより前記導電層を形成した後、前記導電層の表面に、前記化学式(1)で表される化合物(芳香族化合物(1))、前記バインダ樹脂及び溶剤を含む第二の塗料を塗布し、形成した塗膜を乾燥することにより前記樹脂層を形成することを含む、導電性フィルムの製造方法である。
<第一の塗料>
前記フィルム基材に塗布する第一の塗料は、前記導電性複合体及び分散媒を含む。第一の塗料が導電性高分子を含むことから、以下では第一の塗料を「導電性高分子分散液」ということがある。
[導電性複合体]
本態様の導電性高分子分散液に含まれる導電性複合体の説明は、第一態様の導電性フィルムにおける導電性複合体の説明と同様であるので、重複する説明は省略する。
導電性高分子分散液の総質量に対する導電性複合体の含有量は、例えば、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.3質量%以上5.0質量%以下がより好ましく、0.
5質量%以上2.0質量%以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、本態様の導電性高分子分散液を用いて形成する導電層の導電性が充分に得られる。上記範囲の上限値以下であると、本態様の導電性高分子分散液における導電性複合体の分散性を高めることができる。
[分散媒]
本態様の導電性高分子分散液に含まれる分散媒としては、水、有機溶剤、水と有機溶剤との混合液が挙げられる。
有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、窒素原子含有溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤等が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、アリルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等の一価アルコールが挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールジアルキルエーテル等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
窒素原子含有溶剤としては、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン等が挙げられる。
有機溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
有機溶剤のなかでも、導電性複合体及び水分散性樹脂の分散性をより高められることから、一価アルコールが好ましく、メタノールがより好ましい。
導電性複合体は水に対する分散性が高いので、本態様の導電性高分子分散液の分散媒は水を含有する水系分散媒であることが好ましい。
本態様の導電性高分子分散液が含む全分散媒に対する水の含有割合は、例えば、5質量%以上100質量%以下とすることができ、20質量%以上90質量%以下が好ましく、40質量%以上80質量%以下がより好ましい。水以外の分散媒としては、一価アルコールが好ましい。なお、高導電化剤のうち、上記有機溶剤の例示に該当するものの質量は、全分散媒の質量に含まれるものとする。
[バインダ成分]
本態様の導電性高分子分散液はバインダ成分を含んでいてもよい。バインダ成分は、前記π共役系導電性高分子及び前記ポリアニオン以外の樹脂又はその前駆体であり、熱可塑性樹脂、又は、導電層の形成時に硬化する硬化性のモノマー又はオリゴマーである。熱可塑性樹脂はそのままバインダ樹脂となり、硬化性のモノマー又はオリゴマーは硬化により形成した樹脂がバインダ樹脂となる。
導電性高分子分散液に含まれるバインダ成分は1種でもよいし、2種以上でもよい。
バインダ成分由来のバインダ樹脂の具体例としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン等が挙げられる。
導電性高分子分散液の分散媒が水系分散媒である場合、含有するバインダ樹脂としては、水分散性樹脂が好ましく、水分散性エマルション樹脂がより好ましい。水分散性樹脂は、エマルション樹脂又は水溶性樹脂である。
水分散性エマルション樹脂の具体例としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂等であって、乳化剤によってエマルションにされたものが挙げられる。なかでも、導電性高分子分散液をフィルム基材に塗工した塗膜の強度が高くなることから、ポリエステルエマルションが好ましい。特に、ポリエステル樹脂を含むフィルム基材に塗工する場合、フィルム基材に対する塗膜の密着性が高くなることから、ポリエステルエマルションが好ましい。
水溶性樹脂の具体例としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂であって、カルボキシ基やスルホ基等の酸基又はその塩を有するものが挙げられる。ここで、水溶性樹脂は、25℃の蒸留水100gに、1g以上、好ましくは5g以上、より好ましくは10g以上溶解するものが好ましい。水溶性樹脂が有するカルボキシ基、スルホ基等の酸基は、ナトリウムイオンやカリウムイオン等のカチオンと塩を形成していてもよい。
硬化性のモノマー又はオリゴマーは、熱硬化性のモノマー又はオリゴマーであってもよいし、光硬化性のモノマー又はオリゴマーであってもよい。ここで、オリゴマーは、質量平均分子量が1万未満の重合体のことである。
硬化性のモノマーとしては、例えば、アクリルモノマー(アクリル化合物)、エポキシモノマー等が挙げられる。硬化性のオリゴマーとしては、例えば、アクリルオリゴマー(アクリル化合物)、エポキシオリゴマー等が挙げられる。
バインダ成分としてアクリルモノマー又はアクリルオリゴマーを用いた場合には、加熱又は光照射により容易に硬化させることができる。
硬化性のモノマー又はオリゴマーを含む場合には、さらに硬化触媒を含むことが好ましい。例えば、熱硬化性のモノマー又はオリゴマーを含む場合には、加熱によりラジカルを発生させる熱重合開始剤を含むことが好ましく、光硬化性のモノマー又はオリゴマーを含む場合には、光照射によりラジカルを発生させる光重合開始剤を含むことが好ましい。
導電性高分子分散液におけるバインダ成分の含有割合は、導電性複合体100質量部に対して、100質量部以上20000質量部以下であることが好ましく、100質量部以上5000質量部以下であることがより好ましい。バインダ成分の含有割合が前記下限値以上であれば、導電性高分子分散液をフィルム基材に塗工する際の製膜性と膜強度を向上させることができる。バインダ成分の含有割合が前記上限値以下であれば、導電性複合体の含有割合の低下による導電性の低下を抑制することができる。
[高導電化剤]
導電性高分子分散液は、導電性をより向上させるために、高導電化剤を含んでもよい。
高導電化剤は、糖類、窒素含有芳香族性環式化合物、2個以上のヒドロキシ基を有する化合物、2個以上のカルボキシル基を有する化合物、1個以上のヒドロキシ基および1個以上のカルボキシ基を有する化合物、アミド基を有する化合物、イミド基を有する化合物、ラクタム化合物、グリシジル基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
ただし、高導電化剤は、前述したπ共役系導電性高分子及びポリアニオン、前記分散媒、及び前記バインダ成分以外の化合物である。
高導電化剤のなかでも、導電性向上の効果が高いことから、ヒドロキシ基を2つ有する直鎖状化合物であるグリコールが好ましく、プロピレングリコールがより好ましい。
導電性高分子分散液に含まれる高導電化剤は1種でもよいし、2種以上でもよい。
高導電化剤の含有割合は導電性複合体100質量部に対して、1質量部以上10000質量部以下であることが好ましく、10質量部以上5000質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上2500質量部以下であることがさらに好ましい。高導電化剤の含有割合が前記下限値以上であれば、高導電化剤添加による導電性向上効果が充分に発揮され、前記上限値以下であれば、π共役系導電性高分子濃度の低下に起因する導電性の低下を防止できる。
[その他の添加剤]
本態様の導電性高分子分散液には、その他の添加剤が含まれてもよい。添加剤としては、本発明の効果が得られる限り特に制限されず、例えば、界面活性剤、無機導電剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを使用できる。ただし、添加剤は、前述したπ共役系導電性高分子、ポリアニオン、分散媒、及びバインダ樹脂以外の化合物からなる。
具体的な添加剤の例示は、前記導電層に含まれてもよい添加剤の具体例と同じであるので、ここではその例示を省略する。
導電性高分子分散液が前記添加剤を含有する場合、その含有割合は、添加剤の種類に応じて適宜決められるが、例えば、導電性複合体100質量部に対して、0.001質量部以上5質量部以下の範囲とすることができる。
[導電性高分子分散液の製造方法]
本発明の第二態様で用いる第一の塗料(導電性高分子分散液)は、例えば下記の方法により製造することができる。すなわち、導電性複合体の水分散液に、分散媒、任意成分であるバインダ成分、添加剤等を添加する方法が挙げられる。
導電性複合体の水分散液は、ポリアニオンの水溶液中でπ共役系導電性高分子を形成するモノマーを化学酸化重合させて得てもよいし、市販のものを使用しても構わない。
前記化学酸化重合は、公知の触媒及び酸化剤を用いて行うことができる。触媒としては、例えば、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物等が挙げられる。酸化剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩が挙げられる。酸化剤は、還元された触媒を元の酸化状態に戻すことができる。
<導電層の形成>
導電性高分子分散液をフィルム基材に塗布(塗工)する方法としては、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファウンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等のコーターを用いた方法、エアスプレー、エアレススプレー、ローターダンプニング等の噴霧器を用いた方法、ディップ等の浸漬方法等を適用することができる。
市販のバーコーターには、塗工厚に応じた番号が付されており、その番号が大きい程、厚く塗工できる。
導電性高分子分散液のフィルム基材への塗布量は特に制限されないが、均一にムラなく塗工することと、導電性と膜強度を勘案して、固形分として、0.01g/m以上10.0g/m以下の範囲であることが好ましい。
フィルム基材上に塗工した導電性高分子分散液からなる塗膜を乾燥させて、分散媒を除去することにより、導電層が形成された導電性フィルムを得ることができる。
塗膜を乾燥する方法としては、加熱乾燥、真空乾燥等が挙げられる。加熱乾燥としては、例えば、熱風加熱や、赤外線加熱などの通常の方法を採用できる。
加熱乾燥を適用する場合、加熱温度は、使用する分散媒に応じて適宜設定されるが、通常は、50℃以上150℃以下の範囲内である。ここで、加熱温度は、乾燥装置の設定温度である。
塗工した導電性高分子分散液が、バインダ成分として熱硬化性のモノマー又はオリゴマーを含む場合には、塗膜を加熱して、バインダ成分を硬化させることにより、導電層を形成することができる。
塗工した導電性高分子分散液が、バインダ成分として光硬化性のモノマー又はオリゴマーを含む場合には、塗膜に紫外線又は電子線を照射して、バインダ成分を硬化させることにより、導電層を形成することができる。
<第二の塗料>
前記フィルム基材に形成した導電層の表面に塗布する第二の塗料は、前記化学式(1)で表される化合物(芳香族化合物(1))、バインダ成分、及び溶剤を含む。
[芳香族化合物(1)]
本態様の第二の塗料に含まれる芳香族化合物(1)の説明は、第一態様の芳香族化合物(1)の説明と同様であるので、重複する説明は省略する。第二の塗料に含まれる芳香族化合物(1)の種類は1種類でもよいし、2種以上でもよい。
第二の塗料に含まれる芳香族化合物(1)の含有量は、第二の塗料に含まれるバインダ成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上20質量部以下が好ましく、0.5質量部以上10質量部以下がより好ましく、1質量部以上5質量部以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、導電層の耐熱性を充分に向上させることができる。上記範囲の上限値以下であると、第二の塗料を用いて形成する樹脂層の前記導電層に対する密着性が充分に得られる。
[バインダ成分]
本態様の第二の塗料はバインダ成分を含む。バインダ成分は、前記π共役系導電性高分子及び前記ポリアニオン以外の樹脂又はその前駆体であり、熱可塑性樹脂、又は、樹脂層の形成時に硬化する硬化性のモノマー又はオリゴマーである。熱可塑性樹脂はそのままバインダ樹脂となり、硬化性のモノマー又はオリゴマーは硬化により形成した樹脂がバインダ樹脂となる。
第二の塗料に含まれるバインダ成分の説明は、第一の塗料(導電性高分子分散液)に含まれてもよいバインダ成分の説明と同様であるので、重複する説明は省略する。
第二の塗料に含まれるバインダ成分は1種でもよいし、2種以上でもよい。
第二の塗料の総質量に対するバインダ成分の含有割合は、特に制限されず、塗料の粘度と塗布の容易さを考慮して、例えば、1質量%以上40質量%以下の範囲で適宜設定することができる。
[溶剤]
本態様の第二の塗料に含まれる溶剤は、芳香族化合物(1)及びバインダ成分を溶解又は充分に分散できるものであればよく、塗布面を構成する前記導電層を侵さないものであることが好ましい。これらの観点から、前記溶剤は、有機溶剤、又は水と有機溶剤の混合液であることが好ましく、前記導電性複合体が溶解し難い有機溶剤であることがより好ましい。
(有機溶剤)
前記有機溶剤は、水溶性有機溶剤でもよいし、非水溶性有機溶剤でもよいし、水溶性有機溶剤及び非水溶性有機溶剤の混合溶剤でもよいが、芳香族化合物(1)を充分に溶解する観点から、水溶性有機溶剤であることが好ましい。ここで、水溶性有機溶剤は、20℃の水100gに対する溶解量が1g以上の有機溶剤であり、非水溶性有機溶剤は、20℃の水100gに対する溶解量が1g未満の有機溶剤である。
水溶性有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、窒素原子含有溶剤等が挙げられる。これらの溶剤の具体例は、第一の塗料の分散媒の例示と同じであるので、ここでの例示は省略する。
第二の塗料に含まれる水溶性有機溶剤は1種でもよいし、2種以上でもよい。
第二の塗料の前記導電層に対する塗工性が良好であることから、水溶性有機溶剤としてはアルコール系溶剤又はケトン系溶剤が好ましく、ケトン系溶剤がより好ましく、メチルエチルケトンがさらに好ましい。
非水溶性有機溶剤としては、例えば、炭化水素系溶剤等が挙げられる。炭化水素系溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。
脂肪族炭化水素系溶剤としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ペンタン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン等が挙げられる。
第二の塗料に含まれる非水溶性有機溶剤は1種でもよいし、2種以上でもよい。
本態様の第二の塗料における芳香族化合物(1)の溶解性及びバインダ成分の分散性を高める観点から、第二の塗料の総質量に対する前記有機溶剤の含有量は、50質量%以上99.9質量%以下が好ましく、60質量%以上99.9質量%以下がより好ましく、70質量%以上99.9質量%以下がさらに好ましい。
[その他の添加剤]
第二の塗料には、その他の添加剤が含まれてもよい。添加剤としては、本発明の効果が得られる限り特に制限されず、例えば、界面活性剤、無機導電剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを使用できる。ただし、添加剤は、前述したπ共役系導電性高分子、ポリアニオン、分散媒、及びバインダ樹脂以外の化合物からなる。
具体的な添加剤の例示は、前記導電層に含まれてもよい添加剤の具体例と同じであるので、ここではその例示を省略する。
第二の塗料が前記添加剤を含有する場合、その含有割合は、添加剤の種類に応じて適宜決められるが、例えば、芳香族化合物(1)100質量部に対して、1質量部以上100質量部以下の範囲とすることができる。
[第二の塗料の製造方法]
第二の塗料は、例えば、溶剤にバインダ成分を溶解又は分散させた後、芳香族化合物(1)、任意の添加剤等を添加することにより製造することができる。
<樹脂層の形成>
第二の塗料を前記導電層の表面に塗布(塗工)する方法としては、前述の導電性高分子分散液を塗布する方法と同様の方法が例示される。
第二の塗料の塗布量は特に制限されないが、均一にムラなく塗工することと、前記導電層の耐熱性をより一層向上させること、及び形成する樹脂層の強度等を勘案して、固形分として、例えば、0.1g/m以上100g/m以下の範囲であることが好ましい。
前記導電層の表面に塗工した第二の塗料からなる塗膜を乾燥させて、溶剤を除去することにより、前記導電層に樹脂層が積層された導電性フィルムを得ることができる。
塗膜を乾燥する方法としては、加熱乾燥、真空乾燥等が挙げられる。加熱乾燥としては、例えば、熱風加熱や、赤外線加熱などの通常の方法を採用できる。
加熱乾燥を適用する場合、加熱温度は、使用する分散媒に応じて適宜設定されるが、通常は、50℃以上150℃以下の範囲内である。ここで、加熱温度は、乾燥装置の設定温度である。
塗工した第二の塗料が、バインダ成分として熱硬化性のモノマー又はオリゴマーを含む場合には、塗膜を加熱して、バインダ成分を硬化させることにより、目的の導電性フィルムを得ることができる。
塗工した第二の塗料が、バインダ成分として光硬化性のモノマー又はオリゴマーを含む場合には、塗膜に紫外線又は電子線を照射して、バインダ成分を硬化させることにより、目的の導電性フィルムを得ることができる。
(製造例1)ポリアニオンの合成
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を12時間攪拌した。
得られたポリスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に、10質量%に希釈した硫酸を1000ml添加し、得られたポリスチレンスルホン酸含有溶液の約1000mlの溶媒を限外ろ過法により除去した。次いで、残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去して、ポリスチレンスルホン酸を水洗した。この水洗操作を3回繰り返した。
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形状のポリスチレンスルホン酸を得た。
(製造例2)導電性複合体の合成
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、製造例1で得た36.7gのポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。得られた混合溶液を20℃に保ち、攪拌しながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌して反応させた。
反応後の反応液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去した。この操作を3回繰り返した。
次に、得られた溶液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水とを加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去し、残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた溶液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去した。この操作を5回繰り返し、固形分(不揮発成分)濃度1.2質量%のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT−PSS)の水分散液を得た。
(実施例1)
製造例2で得たPEDOT−PSS水分散液50g(固形分0.6g)と、メタノール40gと、プロピレングリコール5gと、水分散ポリエステル樹脂であるプラスコートRZ−105(互応化学社製、固形分25質量%)5gと、を加え、第一の塗料を得た。
得られた塗料を#12のバーコーターを用いてPETフィルム(東レ社製、ルミラーT60)上に塗布し、150℃で1分間乾燥し、PETフィルム上に導電層を備えた導電性フィルムを得た。
得られた導電性フィルムを縦20mm×横110mmの大きさに切り取り、両横の末端5mmの部分に銀ペーストを用いて接点をそれぞれ形成し、セロテープ(登録商標)で各接点をマスクした。
次に、ポリエステル樹脂であるバイロン240(東洋紡社製、固形分10%、溶剤:メチルエチルケトン)100gに、下記化学式(3)で表されるビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド0.3gを添加し、第二の塗料を得た。
得られた塗料を#8のバーコーターを用いて導電性フィルムの導電層の上に塗布し、150℃で1分間乾燥した。その後、セロテープを剥がして銀ペーストの接点を露出させ、デジタルマルチメータ(CUTTOM社製、CDM-17D)を用いて、初期抵抗値Rを測定した。続いて、導電性フィルムを110℃で240時間加熱した後、加熱後抵抗値Rを測定した。これらの測定結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1においてビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド0.3gの添加量を0.6gに変えたこと以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、各抵抗値を測定した。その結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1においてビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド0.3gを下記化学式(4)で表されるビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン0.3gに変えたこと以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、各抵抗値を測定した。その結果を表1に示す。
(実施例4)
実施例1においてビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド0.3gを下記化学式(5)で表される2,4’-ジヒドロキシフェニルスルホン0.3gに変えたこと以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、各抵抗値を測定した。その結果を表1に示す。
(実施例5)
実施例1においてビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド0.3gを下記化学式(6)で表されるビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド0.3gに変えたこと以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、各抵抗値を測定した。その結果を表1に示す。
(実施例6)
実施例1においてビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド0.3gを下記化学式(7)で表される2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-p-クレゾール)0.3gに変えたこと以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、各抵抗値を測定した。その結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1においてビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド0.3gを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、各抵抗値を測定した。その結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例1においてビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド0.3gを下記化学式(8)で表されるフェニルスルフィド0.3gに変えたこと以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、各抵抗値を測定した。その結果を表1に示す。
(比較例3)
実施例1においてビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド0.3gを下記化学式(9)で表されるジフェニルジスルフィド0.3gに変えたこと以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、各抵抗値を測定した。その結果を表1に示す。
Figure 2021048044
Figure 2021048044
以上の結果から、本発明にかかる実施例1〜6の導電性フィルムの導電性は、加熱試験後においても良好であり、耐熱性が優れることが明らかである。この耐熱性は、導電層に積層された樹脂層が芳香族化合物(1)を含むことにより発揮される。一方、芳香族化合物(1)が含まれない比較例1〜3の導電性フィルムの耐熱性は低く、加熱試験後の導電性が著しく悪化している。

Claims (17)

  1. フィルム基材と、前記フィルム基材の少なくとも一方の面に形成された導電層と、前記導電層の表面に積層された樹脂層と、を備えた導電性フィルムであって、
    前記導電層は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体を含有し、
    前記樹脂層は、下記化学式(1)で表される化合物と、バインダ樹脂とを含有する、
    導電性フィルム。
    Figure 2021048044
    [式(1)中、R〜R10から任意に選択される1つ以上が水酸基であり、水酸基ではない残りの基は水素原子又は水酸基以外の任意の置換基であり、Xは、硫黄原子、酸素原子、ジスルフィド基、スルホニル基、アルキレン基、又は単結合を表す。]
  2. 前記樹脂層は、前記化学式(
    1)の前記R〜Rから任意に選択される1つ以上が水酸基であり、且つ前記R〜R10から任意に選択される1つ以上が水酸基である化合物を含む、請求項1に記載の導電性フィルム。
  3. 前記樹脂層は、下記化学式(2)で表される化合物を含む、請求項1又は2に記載の導電性フィルム。
    Figure 2021048044
    [式(2)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は任意の置換基を表し、Xは、硫黄原子、酸素原子、ジスルフィド基、スルホニル基、アルキレン基、又は単結合を表す。]
  4. 前記樹脂層は、前記化学式(1)又は前記化学式(2)の前記Xが硫黄原子若しくはスルホニル基である化合物を含む、請求項1〜3の何れか一項に記載の導電性フィルム。
  5. 前記樹脂層は、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニルスルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,2’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジメチル−4,4’−チオジフェノール、及び2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−p−クレゾール)から選択される1種以上を含む、請求項1に記載の導電性フィルム。
  6. 前記樹脂層がポリエステル樹脂を含む、請求項1〜5の何れか一項に記載の導電性フィルム。
  7. 前記導電層がバインダ樹脂を含む、請求項1〜6の何れか一項に記載の導電性フィルム。
  8. 前記バインダ樹脂がポリエステル樹脂を含む、請求項7に記載の導電性フィルム。
  9. 前記π共役系導電性高分子がポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である、請求項1〜8の何れか一項に記載の導電性フィルム。
  10. 前記ポリアニオンがポリスチレンスルホン酸である、請求項1〜9の何れか一項に記載の導電性フィルム。
  11. 前記フィルム基材がポリエステル樹脂を含む、請求項1〜10の何れか一項に記載の導電性フィルム。
  12. 請求項1〜11の何れか一項に記載の導電性フィルムを製造する方法であって、
    前記フィルム基材の少なくとも一方の面に、前記導電性複合体及び分散媒を含む第一の塗料を塗布し、形成した塗膜を乾燥することにより前記導電層を形成した後、
    前記導電層の表面に、前記化学式(1)で表される化合物、バインダ成分、及び溶剤を含む第二の塗料を塗布し、形成した塗膜を乾燥することにより前記樹脂層を形成することを含む、導電性フィルムの製造方法。
  13. 前記第一の塗料が水分散性バインダ樹脂を含む、請求項12に記載の導電性フィルムの製造方法。
  14. 前記水分散性バインダ樹脂が水分散性ポリエステルを含む、請求項13に記載の導電性フィルムの製造方法。
  15. 前記第一の塗料が高導電化剤を含む、請求項12〜14の何れか一項に記載の導電性フィルムの製造方法。
  16. 前記高導電化剤がジオールを含む、請求項15に記載の導電性フィルムの製造方法。
  17. 前記ジオールがプロピレングリコールを含む、請求項16に記載の導電性フィルムの製造方法。
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