JP2021035899A - シリコン単結晶の育成方法およびシリコン単結晶の引き上げ装置 - Google Patents
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Abstract
Description
シリコン融液中の酸素は結晶成長界面である固液界面を介してシリコン単結晶に取り込まれるため、酸素濃度の調整のためには、固液界面における酸素濃度の調整が必要となるが、現状の引き上げ装置では、酸素濃度の調整に限界があるという課題があった。
〔引き上げ装置〕
図1は、本発明の実施形態に係る引き上げ装置1の概略断面図である。図2は、図1のII−II線断面図である。図中には、構造の理解の容易化のため、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を示す(他の図においても同様とする。)。X方向およびY方向は水平方向に対応し、Z方向は鉛直方向に対応する。
引き上げ装置1は、チョクラルスキー法によりシリコン単結晶Sを引き上げ、育成を行う装置である。図1に示されるように、引き上げ装置1は、外郭を構成するチャンバ2と、チャンバ2の中心部に配置されるルツボ3と、ヒーター4と、磁場印加装置5と、を備える。
磁場印加装置5は、それぞれ電磁コイルで構成された第1の磁性体5Aおよび第2の磁性体5Bを備える。第1の磁性体5Aおよび第2の磁性体5Bは、チャンバ2の外側においてルツボ3を挟んで対向するように設けられている。磁場印加装置5は、磁場方向MDの正方向が+Y方向(図1における紙面手前側から奥側に向かう方向)となるように、水平磁場を印加する。水平磁場の磁場強度は例えば0.18テスラ〜0.40テスラである。
磁場印加装置5によって生じる磁力線は互いに及ぼす斥力により、場所によって向きが異なる。ここでは、磁場方向MDとは、互いの斥力が釣り合っている、磁力線の中立線の向きを意味する。また、磁力線の向きと同じ方向を「磁場方向MDの正方向」、磁力線の向きと逆の方向を「磁場方向MDの負方向」として記載している。
熱遮蔽体9は、育成中のシリコン単結晶Sに対して、ルツボ3内のシリコン融液Mやヒーター4やルツボ3の側壁からの高温の輻射熱を遮断する。また、熱遮蔽体9は、結晶成長界面である固液界面SIの近傍に対しては、外部への熱の拡散を抑制し、単結晶中心部および単結晶外周部の引き上げ軸方向の温度勾配を制御する役割を担う。
放射温度計14は、チャンバ2外部に設置されている。放射温度計14は、チャンバ2に設けられた石英窓2Aを介して入射される輻射光Lを受光して、測定点Pの温度を非接触で測定する。
第2の測定点P2は、中心軸Aを含み、かつ、磁場方向MDと平行をなす仮想面F2上であって第1の磁性体5A側に設定されている。
ヒーター4は、鉛直方向上方から見たときに、水平磁場の磁場方向MDの一方側と他方側とで、加熱能力が異なるように構成されている。具体的には、ヒーター4は、仮想面F1の両側の加熱能力が異なるように構成されている。すなわち、ヒーター4は、石英ルツボ3Aにおける磁場方向MDの一方側と磁場方向MDの他方側との間で温度勾配ができるように形成されている。
本実施形態のヒーター4は、仮想面F1の一方側(第1の磁性体5A側)に位置する第1の加熱部4Aと、仮想面F2の他方側(第2の磁性体5B側)に位置する第2の加熱部4Bとを備えている。
次に、本実施形態のシリコン単結晶の引き上げ装置1を用いたシリコン単結晶の育成方法について説明する。本実施形態のシリコン単結晶の育成方法は、シリコン融液Mの酸素濃度分布を考慮して行われるものである。具体的には、本実施形態のシリコン単結晶の育成方法では、シリコン融液M中の酸素の移送方向を制御するとともに、磁場方向MDで温度勾配を有するヒーター4でシリコン融液Mを加熱することによって、シリコン融液Mの酸素濃度分布を制御するものである。
シリコン単結晶の育成方法は、加熱工程と、温度測定工程と、磁場印加タイミング決定工程と、磁場印加工程と、石英ルツボ3Aに温度勾配を設定する石英ルツボの温度勾配設定工程と、をこの順序で有する。なお、工程の順序については、適宜変更してもよい。
磁場印加タイミング決定工程は、シリコン融液Mの表面MAの温度を測定結果に基づいて、磁場を印加するタイミングを決定して、対流CFの回転方向を制御する工程である。
磁場印加工程は、シリコン融液Mの温度を保持しながら回転している石英ルツボ3A内のシリコン融液Mに対して水平磁場を印加する工程である。
石英ルツボの温度勾配設定工程は、磁場印加工程後に、ヒーター4を用いて石英ルツボ3Aに温度勾配を与える工程である。石英ルツボの温度勾配設定工程により、石英ルツボ3Aにおける磁場方向MDの一方側と磁場方向MDの他方側との間で温度勾配ができる。
ここで、ルツボ3内のシリコン融液Mにおける酸素移送のメカニズムについて説明する。
本発明者らは、シリコン単結晶Sの育成過程において、ルツボ3を中心軸A回りに回転させるとともに、磁場印加装置5によりシリコン融液Mに磁場を印加した場合、シリコン融液M中に酸素濃度の分布が生じることを見出した。具体的には、磁場方向MDに対して、一方の酸素濃度が高くなるとともに、他方の酸素濃度が低くなることによって、磁場方向MDのいずれか一方(正方向または負方向)に向かう酸素の移送が生じる現象が生じる。
移送とは、拡散および対流によって酸素がシリコン融液M内を移動することをいう。また、酸素がAからBに移送される場合、Aが移送元側、Bが移送先側である。
以下で説明する対流CFの回転方向とは、磁場方向MDの正方向で見て(+Y方向で見て)、時計回りの回転方向(図3に示す)か、反時計回りの回転方向である。ルツボ3の回転方向Rとは、鉛直方向上方から見て(−Z方向で見て)、時計回りの回転方向(図3に示す)か、反時計回りの回転方向である。
以下、磁場印加タイミング決定工程で利用される対流CFの回転方向およびその制御方法について詳細に説明する。以下に説明する方法によって、対流CFの回転方向を時計回りにするか、反時計回りにするかを制御することができる。
本発明者らは、磁場が印加されたシリコン融液Mには、対流CFが生じることを見出した。図3に示されるように、対流CFは、シリコン融液Mの表面MAとルツボ3の底面との中間で、磁場方向MDに延びる仮想軸線Vを中心にシリコン融液Mが仮想軸線V回りに流動するロール状の流れである。シリコン融液Mは、この流れが生じることによって安定状態となる。
対流CFの回転方向は、磁場方向MDの正方向から見て時計回りか反時計回りとなるが、発明者らは、磁場印加装置5により磁場を印加するタイミングによって対流CFの回転方向を制御することができることを見出した。具体的には、対流CFの回転方向は、磁場を印加する時点のシリコン融液Mの表面MAの温度に基づいて制御することができる。
加熱工程後は、図5に示されるように、測定点P1,P2,P3の温度は、全てが周期振動する。振動周期は、例えば600secであり、ルツボの回転周期300secとは一致しない。振動の位相は、測定点P1,P2,P3でそれぞれ90secずつずれている。
図6(D)の状態で磁場印加装置5により磁場を印加すると、磁場強度が上昇する一方で、温度は、ルツボ3の回転方向Rに従って図6(A)の状態に近づく。その状態で磁場が十分強くなり、制動力によって、流れが固定される。図6(A)の状態では、下降流が図中の右方向に寄っており、磁場に垂直な面の流動を考えると、図中の左端のルツボ壁で上昇し、中心から右にずれた箇所で下降する渦流が優勢となっている。その渦が磁場印加後も主流として残り、測定点P1の温度が高い状態、すなわち、時計回りモードに固定されたと考えられる。従って、磁場印加タイミング決定工程において、対流CFの回転方向を時計回りモードとする場合は図6(D)、対流CFの回転方向を反時計回りモードとする場合は図6(B)のタイミングで磁場印加を開始することによって、回転方向を制御することができる。
ルツボ3の回転方向Rは、支持軸6を駆動する駆動源によって制御することができる。すなわち、支持軸6を制御することによって、ルツボ3の回転方向Rを時計回りにするか、反時計回りにするかを制御することができる。
次に、対流CFの回転方向およびルツボ3の回転方向Rに基づく酸素移送のメカニズムについて説明する。発明者らは、酸素の移送方向DFは、以下のようなメカニズムによって決定するものと考えた。
図7(a)に示されるように、対流CFが発生することによって、ルツボ3の底面近傍には、矢印CF1で示されるような流れが発生する。すなわち、ルツボ3の底面近傍では、酸素は、X方向の片側に向かう流れに乗る。対流CFを構成する流れのうち、上昇流によって運ばれた高濃度酸素融液は、シリコン融液M中に酸素を供給することなく、表面MAから蒸発する。一方、ルツボ3の底面付近の流れでは、酸素が表面MAから蒸発することなくシリコン融液M中に酸素を供給する働きとなる。
また、図7(b)に示すように、ルツボ3が回転することによって、シリコン融液Mにはルツボ3の内面との間のせん断応力により矢印R1に示されるような力が作用する。
石英ルツボの温度勾配設定工程では、例えば、図8に示すように、ヒーター4により二酸化シリコン(SiO2)を成分とする石英ルツボ3Aが加熱されることによって、石英ルツボ3Aから酸素O2が溶け出す。本実施形態のヒーター4は、石英ルツボ3Aにおける磁場方向MDの一方側と磁場方向MDの他方側との間で温度勾配ができるように形成されている。よって、石英ルツボ3Aにおいて温度が高い側からより多くの酸素O2が溶け出す。本実施形態では、電気抵抗が第1の加熱部4Aの電気抵抗より大きい第2の加熱部4Bに近い側からより多くの酸素O2が溶け出す。
すなわち、本実施形態のシリコン単結晶の引き上げ装置1では、ヒーター4の加熱に起因する酸素O2の溶出量が磁場方向MDの一方側と他方側とで異なる。
具体的には、図8に示されるように、対流CFの回転方向およびルツボ3の回転方向Rの制御により酸素移送方向DFを磁場方向MDの正方向とするとともに、ヒーター4の温度勾配により、酸素の移送で酸素濃度が低くなる箇所に積極的に酸素O2を供給する。これによって、酸素濃度の不均一性が低減されるため、固液界面SIからシリコン単結晶Sに取り込まれる酸素を増加させて酸素濃度を高めることができる。
印加する電圧をヒーター片毎に変更することによって、石英ルツボ3Aにおいてより多くの酸素O2が溶け出す位置を所望の位置に変更することができる。これにより、石英ルツボ3Aの磁場方向MDの一方側と磁場方向MDの他方側のうち、所望の側の温度が高くなるように温度勾配を設定することができる。温度勾配の設定により、シリコン融液M中の酸素濃度の更なる制御が可能となり、ひいては、シリコン単結晶Sに取り込まれる酸素量の制御が可能となる。
逆に、酸素の移送元側の石英ルツボの温度が低くなるように石英ルツボに温度勾配を設けると、石英ルツボに温度勾配を設けない場合に比べて、より低い酸素濃度の単結晶が得られる。
また、ゲッタリングサイトとして利用する場合も高酸素濃度のシリコン単結晶Sが好ましい。デバイス製造中に拡散する不純物金属をゲッタリングするためのゲッタリングサイトとして、酸素析出物を利用することができるからである。
デバイスのチャネル部に酸素析出物が存在すると、デバイス特性を悪化させるからである。(リーク電流や耐圧性の悪化など)電流がウェーハの高さ方向に流れるように設計されているパワーデバイスはウェーハ全体がチャネル部になるので,結晶の低酸素化が必要である。
Claims (7)
- チョクラルスキー法によるシリコン単結晶の育成方法であって、
石英ルツボ内のシリコン原料を加熱し、シリコン融液を形成する加熱工程と、
前記シリコン融液に対して水平磁場を印加する磁場印加工程と、
前記石英ルツボに温度勾配を設定する石英ルツボの温度勾配設定工程と、を備え、
前記石英ルツボの温度勾配設定工程は、前記磁場印加工程後に前記石英ルツボにおける磁場方向の一方側と前記磁場方向の他方側との間で温度勾配ができるように前記石英ルツボに温度勾配を与えることを特徴とするシリコン単結晶の育成方法。 - 請求項1に記載のシリコン単結晶の育成方法において、
前記磁場印加工程における前記シリコン融液の酸素移送方向を推定する酸素移送方向推定工程を備え、
前記石英ルツボの温度勾配設定工程では、前記石英ルツボの前記磁場方向の一方側と前記磁場方向の他方側のうち、前記酸素移送方向推定工程において推定された前記酸素の移送元側の温度が低くなるように、あるいは高くなるように前記温度勾配を設定することを特徴とするシリコン単結晶の育成方法。 - 請求項2に記載のシリコン単結晶の育成方法において、
前記酸素移送方向推定工程は、前記石英ルツボの回転方向および前記シリコン融液の対流の回転方向により前記酸素移送方向を推定することを特徴とするシリコン単結晶の育成方法。 - 請求項3に記載のシリコン単結晶の育成方法において、
前記磁場印加工程では、前記シリコン融液の表面温度に基づいて前記対流の回転方向を推定し、前記対流の回転方向が所望の回転方向であるときに磁場を印加することを特徴とするシリコン単結晶の育成方法。 - 軸線回りに回転可能な石英ルツボと、
前記石英ルツボ内のシリコン融液を加熱する加熱装置と、
前記シリコン融液に対して水平磁場を印加する磁場印加装置と、を備え、
前記加熱装置は、前記石英ルツボにおける磁場方向の一方側と前記磁場方向の他方側との間で温度勾配ができるように形成されていることを特徴とするシリコン単結晶の引き上げ装置。 - 請求項5に記載のシリコン単結晶の引き上げ装置において、
前記加熱装置はカーボンヒーターであり、前記カーボンヒーターは複数のヒーター片として周方向に分割され、各々の前記ヒーター片は、それぞれ温度制御可能であることを特徴とするシリコン単結晶の引き上げ装置。 - 請求項5に記載のシリコン単結晶の引き上げ装置において、
前記加熱装置はカーボンヒーターであり、前記カーボンヒーターは、前記磁場方向の一方側と前記磁場方向の他方側とで厚みが異なることを特徴とするシリコン単結晶の引き上げ装置。
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JPH09263485A (ja) * | 1996-03-27 | 1997-10-07 | Nippon Steel Corp | 単結晶引き上げ制御方法、単結晶製造方法および装置 |
JP2007031260A (ja) * | 2005-07-26 | 2007-02-08 | Siltron Inc | 高品質シリコン単結晶インゴット製造方法,成長装置及び前記方法及び装置から製造されたインゴット,ウエハ |
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CN115044966B (zh) * | 2022-05-26 | 2024-02-09 | 西安奕斯伟材料科技股份有限公司 | 一种加热器及其工作方法 |
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