融液−固体界面の形状を制御することは、製造される単結晶の品質を決定する際の重要なファクターである。融液−固体界面の形状は、以下に限定される訳ではないが、温度、坩堝回転数、結晶回転数、及び結晶引上速度等のプロセスパラメーターに依存する。これらのプロセスパラメーターを決定することにより、融液−固体界面も決定される。好ましい実施の形態において、結晶成長プロセスの間付加される磁場は、また、上記融液−固体界面の形状に影響を与える。金属及び半導体金属において対流を安定化させるため、また、自然対流及び乱流を低減するため磁場を用いる。導電性の融液において対流を安定化させるために3つの従来タイプの磁場配置、つまり軸方向、水平方向、及びカスプ磁場が用いられる。
図1は、結晶成長装置において、融液25を含む坩堝23に付加される軸方向(垂直方向とも称される)の磁場を例示するブロック図である。軸方向磁場配置により、結晶成長の方向に対して平行な磁場が発生する。図1において、断面図に示された磁場コイル21は、坩堝23に対して磁場を提供する。図示されているように、坩堝23は、シリコン融液25を含む。結晶27がシリコン融液25から成長する。
図2は、結晶成長装置において、融液25を含む坩堝23に付加される水平(横方向とも称される)の磁場を例示するブロック図である。水平方向の磁場配置において、結晶成長方向に対して垂直な磁場を発生させるため、2つの磁気ポール29が反対方向に配置される。
図3は、結晶成長装置において、融液25を含む坩堝23に付加されるカスプ磁場を例示するブロック図である。カスプ磁場配置は、軸方向磁場配置及び水平方向磁場配置の不備を解消するようにデザインされる。一対のコイル31及び33(具体的にはへルムホルツコイル)は、融液−固体界面36の上下に同軸上に配置され、反対方向のカレントモードで操作され、融液表面36近くの純粋な半径方向磁場成分と、融液25の中心38近くの純粋な軸方向磁場成分と、を有する磁場を発生させる。コイル31及び33によりそれぞれ発生する上部磁場40と下部磁場42との組み合わせにより、結果的に、軸方向及び半径方向のカスプ磁場成分となる。
好ましい実施の形態において、上記融液−固体界面の形状を変更するため、プロセスパラメーターを調整する。より詳細には、好ましい実施の形態において、上記融液−固体界面の形状に影響を与えるように磁場が付加される。好ましい実施の形態において、カスプ磁場がアンバランス化され、それにより、上記融液−固体界面の磁場の軸方向成分がより強くなり、融液フローが影響を受けカルマンセルが増強され、それにより融液−固体界面の深さが増加する。アンバランスなカスプ磁場の所望の効果は、結晶に対してより凹んだ形状を有する融液−固体界面が形成されることにある。
図4は、好ましい結晶成長システム100のブロック図である。システム100は半導体インゴットを作製するためチョクラルスキー結晶成長法を用いる。一般的に、結晶成長システム100には、坩堝103を包囲する真空チャンバー101が含まれる。ヒーター105具体的には抵抗ヒーターは坩堝103を取り囲む。加熱及び結晶引上げの間、坩堝駆動ユニット(具体的にはモーター)107は、坩堝103を矢印で示すように、例えば時計回りに回転させる。また、坩堝駆動ユニット107は、成長プロセスの間、所望のように、坩堝103を上昇及び/又は下降させてもよい。融液レベル111を有するシリコン融液109は坩堝103内にある。オペレーション中、システム100は、引上げシャフト若しくはケーブル117に取付けられたシード結晶115から開始して、単結晶113を融液109から引き上げる。引上げシャフト若しくはケーブル117の一端は、滑車(図4には不図示)を介してドラム(図4には不図示)に接続され、その他端は、シード結晶115及びシード結晶115から成長した結晶113を保持するチャック(図4には不図示)に接続される。
坩堝103及び単結晶113は、共通の対称軸119を有する。レベル111を所望の高さに維持するため、坩堝駆動ユニット107は、融液109が減少するにしたがって、坩堝103を軸119に沿って上昇させる。結晶駆動ユニット121は、同様に、坩堝駆動ユニット107が坩堝103を回転させる方向と反対の方向に(具体的には、反時計回りに)引上げシャフト若しくはケーブル117を回転させる。同方向回転を用いる実施の形態において、結晶駆動ユニット121は、坩堝駆動ユニット107が坩堝103を回転させる方向と同じ方向(具体的には、時計回りの方向)に引上げシャフト若しくはケーブル117を回転させてもよい。同方向回転は、同一回転とも称される。さらに、結晶駆動ユニット121は、結晶プロセスの間、所望のように、融液レベル111に対して結晶113を上昇及び下降させる。
チョクラルスキー単結晶成長プロセスにしたがって、所定量の多結晶シリコン若しくはポリシリコンが坩堝103に導入される。ヒーター電源123は、抵抗ヒーター105に電圧を印加し、絶縁体125は、真空チャンバー101の内壁を覆っている。ガス供給部127(具体的には、ボトル)は、真空ポンプ151によりガスが真空チャンバー101から除去されるにしたがって、アルゴンガスはガスフローコントローラー129を介して真空チャンバー101まで供給される。容器からの冷却水135が供給される外部チャンバー133は、真空チャンバー101を取り囲む。冷却ジャケット136が、抵抗ヒーター105と結晶113との間に配置される。好ましい実施の形態において、冷却ジャケット136は、融液−固体界面の形状に影響を与えうる(図5及び6に示されている)。より詳細には、ある実施の形態において、冷却ジャケット136を有しない場合、システム100は、結晶113に対して凹状に形成された界面形状を形成しうる。上記凹部形状は、約3ミリメートル(3mm)の深さを有する。しかしながら、冷却ジャケット136を備えることにより、凹部形状の深さは、例えば、略5ミリメートル(5mm)まで増加しうる。
その際、冷却水は、冷却水返還用配管137へ排水される。典型的には、温度センサー、例えばフォトセル139(若しくはパイロメーター)は、融液109の表面において融液109の温度を測定し、直径トランデューサー141は、単結晶113の直径を測定する。コントロールユニット143等のプロセッサーは、フォトセル139及び直径トランデューサー141により発生する信号を処理する。コントロールユニット143は、プログラムされたデジタル若しくはアナログのコンピューターであってもよく、坩堝駆動ユニット107、結晶駆動ユニット121、ヒーター電源123、真空ポンプ151及びガスフローコントローラー129(具体的には、アルゴンフローコントローラー)を制御する。好ましい実施の形態において、システム100は、上部ヒーターを有しない。上部ヒーターの有無により、結晶113の冷却特性が変わる。
好ましい実施の形態において、ソレノイドコイル145等の上部磁石、及びソレノイドコイル147等の下部磁石を、それぞれ、融液レベル111の上下に配置してもよい。好ましい実施の形態において、断面図に示されたコイル145及び147は、真空チャンバー101を取り囲み、その軸は対称軸119と共通する。上部コイル145及び下部コイル147は、別々の電源、つまり上部コイル用電源149と、下部コイル用電源151とを有する。これらのそれぞれは、コントロールユニット143に接続され、これにより制御される。
2つのソレノイドコイル145及び147に電流を反対方向に流し、磁場を発生させる。冷却水が冷却水返還用配管137を介して抜き出される前に、容器153は上部コイル145及び下部コイル147に冷却水を提供する。鉄によるシールド155は、迷走磁場を低減し発生する磁場の強さを増加させるために、コイル145及び147を取り囲む。
好ましい実施の形態において、システム100により、デバイス製造において使用されるに適したシリコン結晶インゴットが作製される。好ましくは、システム100は、実質的に一部若しくは全部が、実質的に、凝集真性点欠陥を有しないシリコン結晶113を作製するために使用してもよい。すなわち、作製された結晶113の実質的に一部若しくは全部は、約1×104欠陥/cm3未満、約5×103欠陥/cm3未満、約1×103欠陥/cm3未満の欠陥密度を有してもよく、さらに好ましくは検出可能な凝集真性点欠陥を有しなくてもよい。さらに、システム100は、直径において約60ナノメートル(nm)より大きい凝集欠陥を実質的に有しない結晶113を作製するために使用してもよい。
融液−固体若しくは融液−結晶界面の形状は、結晶成長の間、凝集真性点欠陥の形成が制限及び/又は抑制されるように制御される。図5及び6は、好ましい融液−固体界面を例示し、これは、融液表面161から延びる。融液109とシリコン結晶113との界面の形状は、結晶113に対して凹状であってもよいし(図6に図示)、若しくは凸状であってもよいし(図5に図示)、凹状及び凸状の両方のコンビネーション(”ガルウィング”形状とも称する)であってもよい。以下に記載するように、融液−固体界面の形状を制御することにより、容易に結晶成長欠陥が低減される。
好ましい実施の形態において、融液−固体界面の形状に作用を及ぼすため、融液対流が用いられる。対流とは、液体自身の移動による、当該液体内の熱の輸送プロセスを意味する。一般的に、2つのタイプの対流が存在する:自然対流及び強制対流。融液109の移動が、例えば、密度勾配を発生させるヒーター105の存在に起因する場合、自然対流が起こる。融液109の移動が、例えば、坩堝103における磁場等の外部からの刺激に起因する場合、強制対流が起こる。したがって、磁場を制御することにより、容易に、所望の融液−固体界面形状を形成することができる。
図7は、結晶成長の間に形成される融液フローセル200及び202の概略図である。好ましい実施の形態において、結晶204は、坩堝208内に保持された融液206から引き上げられる。坩堝208は、上部210、下部212、及び坩堝壁214を有する。好ましい実施の形態において、結晶204及び坩堝208は、同じ方向に回転しつつ(すなわち、同方向回転)、融液フローセル200及び202は、結晶204の成長の間、融液206内に形成される。より詳細には、融液206内に形成された2つのタイプのフローセルは、カルマンセル200と浮揚セル202である。カルマンセル200は、結晶204の真下に形成され、浮揚セル202は、坩堝壁214に沿って形成される。エックマンセル(図7には不図示)を含め異なるフローセルが反時計回りに形成される。エックマンセルが存在する場合、カルマンセル200が存在する場合と異なり、融液−固体界面216の凹部の形成は容易とならない。
カルマンセル200を増強することにより、容易に結晶204に対してより凹んだ形状の融液−固体界面216を形成することができる(図6に図示)。カルマンセル200は、軸方向の磁場を付加すること若しくは付加されたカスプ磁場において軸方向磁場成分を増加させることのいずれかにより、より増強させることができる。また、軸方向磁場は、坩堝208の下部212において融液温度を増加させ、より多くの熱をもたらすという効果を有する。これにより、容易に、より窪んだ形状の融液−固体界面216を形成することができる。
好ましい実施の形態において、結晶成長プロセス中に付加されるカスプ磁場の軸方向成分を、上部磁場40(図3に図示)及び下部磁場42(図3に図示)をアンバランス化することにより、増加させる。いくつかの実施の形態において、バランスされたカスプ磁場は、ここでは、上部磁場40(すなわち、コイル31(図3には不図示)により発生させた磁場)が、実質的に、下部磁場42(すなわち、コイル33(図3には不図示))と実質的に同等の強度を有するカスプ磁場と定義される。反対に、いくつかの実施の形態において、アンバランスなカスプ磁場は、ここでは、上部磁場40が、実質的に、下部磁場42と異なる強度を有するカスプ磁場と定義される。さらに、バランスされたカスプ磁場は、融液36の近くにおいて純粋な半径方向磁場成分を有する(図3図示)。対称的に、アンバランスなカスプ磁場は、融液表面36近くにおいて純粋な半径方向磁場成分を有せず、むしろ融液表面36近くに軸方向磁場成分を有する。例えば、第1コイルにより発生する第1磁場の強度を第2コイルにより発生する第2磁場の強度と比較すると、磁場強度は、例えばソースからの距離にしたがって変動するため、第1磁場強度は、ここで使用されているように上記第1コイルから距離Xのポイントにおいて測定し、第2磁場強度は、上記第2コイルから距離Xのポイントにおいて測定する。
好ましい実施の形態において、アンバランスなカスプ磁場は一定である。換言すれば、上部磁場40の強度と下部磁場42の強度との間の比率は、結晶成長の間変動しない。一定な磁場比率により、容易に、融液表面36近くにおいて軸方向磁場成分が維持される。他の実施の形態において、融液表面36近くで軸方向磁場成分を所望の強度に維持することを容易にするため、上部磁場40の強度と下部磁場42の強度との間の比率を結晶成長プロセスの間変動させる。上部コイル31及び/又は下部コイル33に供給される電流を調整することにより当該比率を変動させてもよい。さらに、アンバランスなカスプ磁場の軸方向磁場成分の強度を、異なる結晶成長ステージ及び/又は異なる結晶長さに対して容易に適合させるため、当該比率を時間及び/又は結晶長さの関数として変動させてもよい。
好ましい実施の形態において、上部磁場40の強度、下部磁場42の強度、及び/又は上部磁場40の強度と下部磁場42の強度との間の比率は、少なくとも部分的に、アンバランスなカスプ磁場が融液フローセル(具体的には、カルマンセル200及び浮揚セル202)に対して与える影響に基づいて決定される。上部磁場40の強度及び/又は下部磁場42の強度は、カルマンセル200が強固になるように、及び/又は浮揚セル202が脆弱になるように、決定してもよい。さらに、上部磁場40の強度と下部磁場42の強度との間の比率は、カルマンセル200が強固になるように、及び/又は浮揚セル202が脆弱になるように、決定してもよい。
図8A、8B、8Cは、バランスされたカスプ磁場の下での結晶成長の間における好ましい融液フローシミュレーション300、融液206における温度の好ましい温度フィールドシミュレーション310、及び好ましい磁場ベクトルシミュレーション320をそれぞれ示している。例示された具体例において、上部磁場40の強度(図3に図示)と下部磁場42の強度(図3に図示)との磁場比率は1である。換言すれば、上部磁場40の強度は、下部磁場42の強度と実質的に等しい。例えば、バランスされたカスプ磁場の生成を容易にするため、上部コイル31(図3に図示)及び下部コイル33(図3に図示)の両方に、コイル31及び33において用いることができる最大電流レベルの45パーセント(45%)のレベルの電流を提供する。
図9A、9B及び9Cは、アンバランスなカスプ磁場の下での結晶成長における好ましい融液フローシミュレーション330、融液206における温度の好ましい温度フィールドシミュレーション340、好ましい磁場ベクトルシミュレーション350をそれぞれ示している。図9Cに示されたアンバランスなカスプ磁場は、バランスされたカスプ磁場により生成された磁場(図8Cに図示)と比較して、軸成分が増加している。付加されたアンバランスな磁場の軸成分の増加は、特に融液−固体界面216近くにおいて顕著である。
例示された実施の形態において、上部磁場40と下部磁場42との磁場比率は、約0.64である。より詳細には、例示された実施の形態において、上部磁場40の強度は、下部磁場強度42の強度の約0.64倍である。より詳細には、いくつかの実施の形態において、上部磁場40の強度と下部磁場42の強度との間の磁場比率は、0.10〜0.90であってもよい。他の実施の形態において、上部磁場40の強度と下部磁場42の強度との間の磁場比率は、0.40〜0.70であってもよい。
一例として説明すると、磁場比率0.64は、コイル31及び33において用いることができる最大電流レベルの約29パーセント(29%)のレベルの電流を上部コイル31に提供し、コイル31及び33において用いることができる最大電流レベルの約45パーセント(45%)のレベルの電流を下部コイル33に提供することにより、達成することができる。しかしながら、所望の磁場比率の発生を容易にするものであれば、上部コイル31と下部コイル33との適切な比率の電流レベルを上部コイル31及び下部コイル33に供給してもよい。
さらに、図8Bと図9Bとを比較すると、アンバランスなカスプ磁場を融液206に付加した場合、結晶204の真下においてより高温となることが分かる。いくつかの実施の形態において、バランスされた磁場の付加に比して、アンバランスなカスプ磁場により、約1〜5ケルビン、より好ましくは約3〜5ケルビン、結晶204の真下において温度が増加しうる。好ましい実施の形態において、図9Bにおいて結晶204の真下に集中してより高温となっていることは、坩堝208に対して与えられる熱エネルギーが増加することにより引き起こされる訳ではなく、むしろ、融液−固体界面216において、付加されたカスプ磁場の軸方向成分が増加することにより引き起こされる。融液フローシミュレーション(図8A及び9Aに図示)により、結晶形成プロセスの間に付加される磁場がアンバランスである場合、特に、上部コイル31からの磁場強度が下部コイル33からの磁場強度より低い場合により強いカルマンセルが形成されることが説明されている。
図10は、2つの典型的な融液−固体界面360及び362を説明するものである。より詳細には、典型的な融液−固体界面360は、バランスされたカスプ磁場の存在下成長させた結晶の融液−固体界面の具体例である。対称的に、典型的な融液−固体界面362は、アンバランスなカスプ磁場の存在下成長させた結晶の融液−固体界面の具体例である。いくつかの実施の形態において、アンバランスなカスプ磁場を付加することにより、融液−固体界面362の形成が容易となる。融液−固体界面362は、融液−固体界面360より凹んでいる。凸状の界面、例えば、融液−固体界面360は、典型的な製造プロセスを可能とするプロセスウィンドウを提供しない。
具体的な実施の形態において、300ミリメートル(300mm)の直径を有する結晶を、アンバランスなカスプ磁場を付加した状態で成長させる。上述のように、概して結晶成長の間に付加されたカスプ磁場は、実質的に同一の強度の下部磁場及び上部磁場の両方を有する。具体的な実施の形態において、下部磁石は、上部磁石から発生する磁場よりも強い磁場を発生させる。例えば、下部磁石から発生する磁場の強度の20パーセント(20%)の磁場が発生するように上部磁石を維持してもよい。図10に示す具体的な実施の形態において、融液−固体界面は、上記結晶を上記融液から取り出し界面形状を計測することにより、結晶長さ300mmにおいて、アンバランスなカスプ磁場条件の下測定される。
融液−固体界面362の形状を制御することは好ましく、より凹状の融液−固体界面(図6に図示)を得ることにより、容易に、結晶成長のためのプロセスウィンドウを増加させることができる。好ましい実施の形態において、界面形状が改善されるように(すなわち、結晶に対して、より凹状の界面が形成されるように)、プロセスパラメーターを変更してもよい。シード回転及び坩堝回転等のプロセスパラメーターを用いて、界面形状を変更してもよい。しかしながら、これらのパラメーターは、単独では、界面形状において大きな変化が引き起こされ、それにより、プロセスウィンドウにおいて大きな改良がもたらされる程は大きくない。好ましい実施の形態において、上述のように、シードと坩堝の同方向回転とともに、結晶成長の間付加されたカスプ磁場をアンバランス化することにより、さらに、容易に融液−固体界面の形状をさらに変更することができる。
図11は、アンバランス化された磁場の存在下において成長させた結晶についての好ましい欠陥遷移図380である。図12は、アンバランス化された磁場の存在下において成長させた結晶についての好ましい欠陥遷移図382である。プロセスウィンドウとも称される引上速度ウィンドウを決定するに際し欠陥遷移図380及び382を用いてもよい。欠陥遷移図380は、負のプロセスウィンドウ384を例示する。対称的に、欠陥遷移図382は、より平坦な欠陥輸送を有する増加したプロセスウィンドウ386を示す。
図13は、結晶成長システム、例えば、結晶成長システム100(図4に図示)において結晶成長を制御する好ましい方法のフローチャート400である。より詳細には、図13は、チョクラルスキー法により製造された単結晶インゴットの成長を制御するための好ましい方法を例示する。好ましい実施の形態において、結晶成長システムにおいて結晶成長を制御することには、インゴットの融液−固体界面の形状を制御することが含まれ、より詳細には、実質的に窪んだ融液−固体界面の形状を有するインゴット(図6に図示)の作製を容易にすることが含まれる。
ここに記載されているシステム及び方法は、28インチのホットゾーン(すなわち、28インチ坩堝)とともに使用されるように設計されている。しかしながら、ここに記載されている利益は、例えば32インチのホットゾーン、24インチのホットゾーン、及び22インチのホットゾーンなどの他の如何なるサイズのホットゾーンに、ここに記載された当該システム及び方法を適用することによっても達成することができる。
上述のように、結晶成長システムは、半導体融液を含む加熱された坩堝を有する。当該半導体融液からインゴットが引き上げられる。融液から引き上げられたシード結晶上において当該インゴットは成長する。好ましい方法には、所望のアンバランスなカスプ磁場を得るため、結晶成長システムの上部コイルに付加する電流レベル及び下部コイルに付加する電流レベルを決定する工程402が含まれる。例えば、結晶成長システム100の上部コイル145に付加する電流レベル(図4に図示)及び下部コイル147に付加する電流レベル(図4に図示)を、所望のアンバランスなカスプ磁場が得られるように、決定してもよい402。上部コイル145及び下部コイル147に印加される電流レベルは、半導体融液に付加された際、結果として得られる磁場40(図3に図示)及び結果として得られる磁場42(図3に図示)がカルマンセル200(図7に図示)の強度を最大にすること、及び/又は浮揚セル202(図7に図示)の強度を最小にすることを容易にするように決定してもよい402。さらに、上部コイル145及び下部コイル147に印加される電流レベルを、結果として得られる上部磁場40の強度及び結果として得られる下部磁場42の強度との間の所望の比率が得られるように決定してもよい402。カルマンセル200の強度が最大となり及び/又は浮揚セル202の強度を最小となるように上部磁場40の強度と下部磁場42の強度との比率を決定してもよい。
好ましい方法には、また、融液にアンバランスなカスプ磁場を付加する工程404が含まれる。例えば、決定されたレベルの電流を、上部コイル145及び下部コイル147に印加する402。これにより、アンバランス化されたカスプ磁場が発生する。その後、アンバランス化されたカスプ磁場を融液に印加する404。好ましい方法では、また、インゴットを融液から引き上げつつ、インゴット及び坩堝を同じ方向に回転させる工程406が含まれる。ある実施の形態では、アンバランス化されたカスプ磁場を付加する工程404には、融液−固体界面の上側において上部磁場40を、融液−固体界面の下側において下部磁場42を付加することが含まれる。例えば、アンバランス化された磁場を、融液−固体界面111の上に配置された上部コイル145(図4に図示)及び融液−固体界面111の下に配置された下部コイル147により印加してもよい。好ましい実施の形態において、上部磁場40の磁場強度は、下部磁場42の磁場強度より弱い。より詳細には、ある実施の形態において、上部磁場40の磁場強度は、下部磁場42の磁場強度の5%〜50%であってもよい。他の実施の形態では、上部磁場40の磁場強度は、下部磁場42の磁場強度の10%〜30%であってもよい。上部磁場40の強度と下部磁場42の強度との間の比率は、結晶成長システム100をここで述べるように機能させることができる適切な比率であってもよい。
融液にアンバランスなカスプ磁場を付加する工程404には、付加された磁場の軸方向成分が、融液−固体界面において、付加された磁場の半径方向成分より大きくなるように上部磁場及び下部磁場を付加すること(図9Cに図示)が含まれる。
上述の結晶成長を制御する方法及びシステムは、費用効率がよく、より正確である。当該方法及びシステムは、チョクラルスキー法にしたがって成長させた単結晶インゴットの融液−固体界面の形状を制御することを容易にする。融液−固体界面の形状を制御することにより、単結晶シリコン製造のためのプロセスウィンドウの増加を容易にする。アンバランス化されたカスプ磁場の付加と、結晶及び坩堝の同方向回転と、を組み合わせることにより、結晶に対して概して凹状の形状を有する融液−固体界面の形成を容易にする。結晶に対して概して凹状の形状を有する融液−固体界面により、所望のプロセスウィンドウ及び欠陥遷移が提供される。
ここで例示され記載された方法の遂行の順序及び性能は、他に限定された場合を除いて、根本的なものではない。すなわち、他に限定された場合を除いて、如何なる順序で当該方法の各構成要素を実行してもよく、ここで開示されたもの以上の構成要件を含んでいてもよいし、それ以下の構成要件を含んでいてもよいことは、当業者によって予期されることである。
上述の方法及びシステム若しくはその実施の形態の構成要素を導入する際、冠詞”a”、”an”、”the”、”said”は、1以上の構成要素が存在することを意味することを意図している。”含む(comprising)”、”含有する(including)”、及び”有する(having)”なる用語は、包括的であることを意図し、列挙された構成要素以外の付加的な要素が存在してもよいことを意味する。
本発明(ベストモードを含む)を開示するため、また、本発明を当業者が実行すること(装置若しくはシステムを作製及び使用すること、並びに包含する方法を実行することを含む)を可能とするため、当該明細書は具体例を用いる。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲により規定され、当業者が思い至る他の具体例が含まれる。もしそれらが特許請求の範囲の文言と同じ構造的構成要素を含む場合、若しくは、それらが、特許請求の範囲の文言と非実質的に異なる場合を含め、特許請求の範囲の文言と同等の構造的構成要素を含む場合、そのような他の具体例は、特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図されている。