JP2003055092A - シリコン単結晶の引上げ方法 - Google Patents

シリコン単結晶の引上げ方法

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JP2003055092A
JP2003055092A JP2001246869A JP2001246869A JP2003055092A JP 2003055092 A JP2003055092 A JP 2003055092A JP 2001246869 A JP2001246869 A JP 2001246869A JP 2001246869 A JP2001246869 A JP 2001246869A JP 2003055092 A JP2003055092 A JP 2003055092A
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silicon
quartz crucible
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JP2001246869A
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Shinrin Fu
森林 符
Yoji Suzuki
洋二 鈴木
Kazuhiro Harada
和浩 原田
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Sumitomo Mitsubishi Silicon Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 比較的少ない電力及び比較的狭い空間で、無
欠陥であって、しかも酸素濃度が制御されたシリコン単
結晶のインゴットを比較的容易に製造する。 【解決手段】 石英るつぼ14を所定の回転速度で回転
させ、シリコン融液13から引上げられるシリコン単結
晶のインゴット16を所定の回転速度で回転させる。る
つぼの回転軸をそれぞれコイル中心としかつ鉛直方向に
所定の間隔をあけて上コイル11及び下コイル12を配
設し、これらコイル11、12に互いに逆向きの電流を
流すことにより各コイル中心から各コイル間の中立面1
7aを通るカスプ磁場17を発生させる。インゴット内
がパーフェクト領域となる引上げ速度でインゴットを引
上げ、融液とインゴットとの固液界面19形状が上側に
凸となるように、各コイルに流す電流と、カスプ磁場の
中立面の位置と、カスプ磁場の強度と、るつぼの回転速
度と、インゴットの回転速度とを制御する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シリコン融液にカ
スプ(CUSP)磁場を印加しながら、シリコン単結晶
のインゴットをシリコン融液から引上げる方法に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】従来、シリコン単結晶の製造方法とし
て、シリコン単結晶のインゴットをチョクラルスキー法
(以下、CZ法という)により引上げる方法が知られて
いる。このCZ法は、石英るつぼに貯留されたシリコン
融液に種結晶を接触させ、石英るつぼ及び種結晶を回転
させながら種結晶を引上げることにより、円柱状のシリ
コン単結晶のインゴットを製造する方法である。
【0003】一方、半導体集積回路を製造する工程にお
いて、歩留りを低下させる原因として酸化誘起積層欠陥
(Oxidation Induced Stacking Fault、以下、OSFと
いう。)の核となる酸素析出物の微小欠陥や、結晶に起
因したパーティクル(Crystal Originated Particle、
以下、COPという。)や、或いは侵入型転位(Inters
titial-type Large Dislocation、以下、LDとい
う。)の存在が挙げられている。OSFは、結晶成長時
にその核となる微小欠陥が導入され、半導体デバイスを
製造する際の熱酸化工程等で顕在化し、作製したデバイ
スのリーク電流の増加等の不良原因になる。またCOP
は、鏡面研磨後のシリコンウェーハをアンモニアと過酸
化水素の混合液で洗浄したときにウェーハ表面に出現す
る結晶に起因したピットである。このウェーハをパーテ
ィクルカウンタで測定すると、このピットも本来のパー
ティクルとともに光散乱欠陥として検出される。
【0004】このCOPは電気的特性、例えば酸化膜の
経時絶縁破壊特性(Time Dependentdielectric Breakdo
wn、TDDB)、酸化膜耐圧特性(Time Zero Dielectr
icBreakdown、TZDB)等を劣化させる原因となる。
またCOPがウェーハ表面に存在するとデバイスの配線
工程において段差を生じ、断線の原因となり得る。そし
て素子分離部分においてもリーク等の原因となり、製品
の歩留りを低くする。更にLDは、転位クラスタとも呼
ばれたり、或いはこの欠陥を生じたシリコンウェーハを
フッ酸を主成分とする選択エッチング液に浸漬するとピ
ットを生じることから転位ピットとも呼ばれる。このL
Dも、電気的特性、例えばリーク特性、アイソレーショ
ン特性等を劣化させる原因となる。この結果、半導体集
積回路を製造するために用いられるシリコンウェーハか
らOSF、COP及びLDを減少させることが必要とな
っている。
【0005】このOSF、COP及びLDを有しない無
欠陥のシリコンウェーハを切出すためのシリコン単結晶
インゴットの製造方法が特開平11−1393号公報に
開示されている。一般に、シリコン単結晶のインゴット
を速い速度で引上げると、インゴット内部に空孔型点欠
陥の凝集体が支配的に存在する領域[V]が形成され、
インゴットを遅い速度で引上げると、インゴット内部に
格子間シリコン型点欠陥の凝集体が支配的に存在する領
域[I]が形成される。このため上記製造方法では、イ
ンゴットを最適な引上げ速度で引上げることにより、上
記点欠陥の凝集体が存在しないパーフェクト領域[P]
からなるシリコン単結晶を製造できるようになってい
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来の特
開平11−1393号公報に示されたシリコン単結晶イ
ンゴットの製造方法では、シリコン単結晶のインゴット
とシリコン融液との固液界面近傍での鉛直方向の温度勾
配が均一になるように制御する必要があり、この制御は
シリコン融液の残量の変化や対流の変化による影響を受
けるため、インゴットの直胴部全長にわたって、無欠陥
のシリコン単結晶を製造することは困難であった。本発
明の目的は、比較的少ない電力及び比較的狭い空間で、
無欠陥であって、しかも酸素濃度が制御されたシリコン
単結晶のインゴットを比較的容易に製造できる、シリコ
ン単結晶の引上げ方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明は、
図1に示すように、シリコン融液13を貯留する石英る
つぼ14を所定の回転速度で回転させ、シリコン融液1
3から引上げられるシリコン単結晶のインゴット16を
所定の回転速度で回転させ、石英るつぼ14の外径より
それぞれ大きなコイル直径を有する上コイル11及び下
コイル12を石英るつぼ14の回転軸をそれぞれコイル
中心としかつ鉛直方向に所定の間隔をあけて配設し、上
コイル11及び下コイル12に互いに逆向きの電流を流
すことにより上コイル及び下コイルの各コイル中心から
上コイル及び下コイル間の中立面17aを通るカスプ磁
場17を発生させ、インゴット16内が格子間シリコン
型点欠陥の凝集体及び空孔型点欠陥の凝集体の存在しな
いパーフェクト領域となる引上げ速度でインゴットを引
上げるシリコン単結晶の引上げ方法の改良である。その
特徴ある構成は、シリコン融液13とインゴット16と
の固液界面19形状が上側に凸となるように、上コイル
11及び下コイル12に流す電流と、カスプ磁場17の
中立面17aの位置と、カスプ磁場17の強度と、石英
るつぼ14の回転速度と、インゴット16の回転速度と
を制御するところにある。
【0008】この請求項1に記載されたシリコン単結晶
の引上げ方法では、上コイル11及び下コイル12に流
す電流と、カスプ磁場17の中立面の位置と、カスプ磁
場の強度と、石英るつぼ14の回転速度と、インゴット
16の回転速度とを制御しながら、インゴットを引上げ
ると、シリコン融液13に所定の対流21〜23が発生
し、これらの対流21〜23により固液界面19形状が
上側に凸となる。この結果、固液界面の中心がシリコン
融液13表面の延長面上より上方に位置するため、固液
界面19の中心における鉛直方向の温度勾配が大きくな
り、固液界面の中心における鉛直方向の温度勾配と、固
液界面の周縁における鉛直方向の温度勾配との差が小さ
くなる。従って、略全長にわたって無欠陥で高品質のシ
リコン単結晶のインゴット16を比較的容易に製造でき
る。
【0009】ここで、上コイル11に流す電流をI1
下コイル12に流す電流をI2としかつ電流I1を1×1
0A≦I1≦1×1010Aの範囲に規定するとき、I2
−(0〜100)I1又はI2=+(0〜100)I1
満たすように、上コイル11及び下コイル12に流す電
流をそれぞれ独立して制御することが好ましい。また、
カスプ磁場17の中立面17aとシリコン融液13の表
面との距離をHとするとき、0mm≦H≦1500mm
を満たすように、中立面17aをシリコン融液13の表
面の上方又は下方に制御することが好ましい。
【0010】また、石英るつぼ14の直径が大きくなる
に従ってカスプ磁場17の強度が強くなるように、上コ
イル11及び下コイル12に流す電流を制御することが
できる。更に、石英るつぼ14の回転速度をR1としか
つシリコン単結晶のインゴット16の回転速度をR2
するとき、R1=−(0〜3.0)R2又はR1=+(0
〜3.0)R2を満たすように、石英るつぼ14及びイ
ンゴット16の回転速度をそれぞれ制御することが好ま
しい。
【0011】
【発明の実施の形態】次に本発明の実施の形態を図面に
基づいて説明する。図1に示すように、本発明のシリコ
ン単結晶の引上げ方法は、シリコン融液13を貯留する
石英るつぼ14を所定の回転速度R1で回転させ、シリ
コン融液13から引上げられるシリコン単結晶のインゴ
ット16を所定の回転速度R2で回転させ、かつシリコ
ン融液13に上コイル11及び下コイル12を用いてカ
スプ磁場17を印加しながら、上記シリコン融液13か
ら上記インゴット16を引上げる方法である。上記上コ
イル11及び下コイル12は、石英るつぼ14の外径よ
り大きなコイル直径を有し、石英るつぼの回転軸をそれ
ぞれコイル中心としかつ鉛直方向に所定の間隔をあけて
配設される。また上コイル11及び下コイル12には互
いに逆向きの電流が流され、これにより上コイル及び下
コイルの各コイル中心から上コイル及び下コイル間の中
立面17aを通るカスプ磁場17が発生するようになっ
ている。なお、上記中立面17aは、上コイル11及び
下コイル12間における、鉛直方向の磁場強度がゼロと
なる水平面である。図示しないが、上コイル及び下コイ
ルは互いの大きさが同一でも良いし、異なっていてもよ
い。図1の符号18は石英るつぼ14の外周面を包囲す
るヒータである。
【0012】一方、上記インゴット16は、このインゴ
ット内が格子間シリコン型点欠陥の凝集体及び空孔型点
欠陥の凝集体の存在しないパーフェクト領域となる引上
げ速度で引上げられる。即ち、インゴットは、CZ法に
よりホットゾーン炉内のシリコン融液13からボロンコ
フ(Voronkov)の理論に基づいた所定の引上げ速度プロ
ファイルで引上げられる。
【0013】一般的に、CZ法によりホットゾーン炉内
のシリコン融液13からシリコン単結晶のインゴット1
6を引上げると、インゴット内には、点欠陥(point de
fect)と点欠陥の凝集体(agglomerates:三次元欠陥)
が発生する。点欠陥は空孔型点欠陥と格子間シリコン型
点欠陥という二つの一般的な形態がある。空孔型点欠陥
は一つのシリコン原子がシリコン結晶格子で正常的な位
置の一つから離脱したものである。このような空孔が空
孔型点欠陥になる。一方、原子がシリコン結晶の格子点
以外の位置(インタースチシャルサイト)で発見される
とこれが格子間シリコン点欠陥になる。
【0014】点欠陥は一般的にシリコン融液13とイン
ゴット16の間の接触面、即ち固液界面19で形成され
る。しかし、インゴット16を継続的に引上げることに
よって固液界面19であった部分は引上げとともに冷却
し始める。冷却の間、空孔型点欠陥又は格子間シリコン
型点欠陥は拡散により互いに合併して、空孔型点欠陥の
凝集体(vacancy agglomerates)又は格子間シリコン型
点欠陥の凝集体(interstitial agglomerates)が形成
される。言い換えれば、凝集体は点欠陥の合併に起因し
て発生する三次元構造となる。
【0015】空孔型点欠陥の凝集体は、前述したCOP
の他に、LSTD(Laser Scattering Tomograph Defec
ts)又はFPD(Flow Pattern Defects)と呼ばれる欠
陥を含み、格子間シリコン型点欠陥の凝集体は前述した
LDと呼ばれる欠陥を含む。FPDとは、インゴットを
スライスして作製されたシリコンウェーハを30分間セ
コエッチング(Secco etching、HF:K2Cr27(0.1
5mol/l)=2:1の混合液によるエッチング)したとき
に現れる特異なフローパターンを呈する痕跡の源であ
り、LSTDとは、シリコン単結晶内に赤外線を照射し
たときにシリコンとは異なる屈折率を有し散乱光を発生
する源である。
【0016】ボロンコフの理論は、欠陥の数が少ない高
純度インゴット16を成長させるために、インゴットの
引上げ速度をV(mm/分)、インゴットとシリコン融
液13の界面近傍のインゴット中の温度勾配をG(℃/
mm)とするときに、V/G(mm2/分・℃)を制御
することである。この理論では、図2に示すように、V
/Gを横軸にとり、空孔型点欠陥濃度と格子間シリコン
型点欠陥濃度を同一の縦軸にとって、V/Gと点欠陥濃
度との関係を図式的に表現し、空孔領域と格子間シリコ
ン領域の境界がV/Gによって決定されることを説明し
ている。より詳しくは、V/G比が臨界点以上では空孔
型点欠陥濃度が優勢なインゴットが形成される反面、V
/G比が臨界点以下では格子間シリコン型点欠陥濃度が
優勢なインゴットが形成される。図2において、[I]
は格子間シリコン型点欠陥が支配的であって、格子間シ
リコン型点欠陥の凝集体が存在する領域((V/G)1
下)を示し、[V]はインゴット内での空孔型点欠陥が
支配的であって、空孔型点欠陥の凝集体が存在する領域
((V/G)2以上)を示し、[P]は空孔型点欠陥の凝
集体及び格子間シリコン型点欠陥の凝集体が存在しない
パーフェクト領域((V/G)1〜(V/G)2)を示す。領
域[P]に隣接する領域[V]にはOSF核を形成する
領域[OSF]((V/G)2〜(V/G)3)が存在する。
【0017】このパーフェクト領域[P]は更に領域
[PI]と領域[PV]に分類される。[PI]はV/G
比が上記(V/G)1から臨界点までの領域であり、
[PV]はV/G比が臨界点から上記(V/G)2までの領
域である。即ち、[PI]は領域[I]に隣接し、かつ
侵入型転位を形成し得る最低の格子間シリコン型点欠陥
濃度未満の格子間シリコン型点欠陥濃度を有する領域で
あり、[PV]は領域[V]に隣接し、かつOSFを形
成し得る最低の空孔型点欠陥濃度未満の空孔型点欠陥濃
度を有する領域である。なお、上記OSFは、結晶成長
時にその核となる微小欠陥が導入され、半導体デバイス
を製造する際の熱酸化工程等で顕在化し、作製したデバ
イスのリーク電流の増加等の不良原因になる。
【0018】図1に戻って、シリコン融液13とインゴ
ット16との固液界面19形状が上側に凸となるよう
に、上コイル11及び下コイル12に流す電流と、カス
プ磁場17の中立面17aの位置と、カスプ磁場17の
強度と、石英るつぼ14の回転速度と、インゴット16
の回転速度とを制御する。
【0019】具体的には、上コイル11に流す電流をI
1、下コイル12に流す電流をI2としかつ電流I1を1
×10A≦I1≦1×1010Aの範囲に規定するとき、
2=−(0〜100)I1又はI2=+(0〜100)
1を満たすように、上コイル11及び下コイル12に
流す電流をそれぞれ独立して制御する。上コイル11及
び下コイル12に流す電流をそれぞれ独立して制御する
と、各種磁力線分布を組合せて出力することができる。
即ち、電流I1が電流I2より大きい場合、図1に示すよ
うに、上コイル11側の磁力線が強く、下コイル12側
の磁力線が弱くなるため、カスプ磁場17の中立面17
aは上コイル11と下コイル12の間隔Tの中間位置1
5より下に位置する。また、電流I1が電流I2より小さ
い場合、図3に示すように、上コイル11側の磁力線が
弱く、下コイル12側の磁力線が強くなるため、カスプ
磁場17の中立面17aは上コイル11と下コイル12
の間隔Tの中間位置15より上に位置する。更に電流I
1と電流I2が同じ大きさの電流を流す場合、図4に示す
ように、上コイル11側の磁力線と下コイル12側の磁
力線とが同等の強さとなるため、カスプ磁場17の中立
面17aは上コイル11と下コイル12の間隔Tの中間
位置15と同じ高さ位置となる。このように、電流I1
及び電流I2を独立して制御することにより、上コイル
11及び下コイル12を移動することなくカスプ磁場1
7の中立面17aを制御することができる。
【0020】ここで電流I1を1×10A≦I1≦1×1
10Aに限定したのは、I1が下限値未満では、磁場強
度が弱すぎて固液界面19が上側に凸となるようにシリ
コン融液13を制御できず、I1が上限値を越えると強
い磁場強度となるが、得られる効果は変わらないため、
経済的ではない。更に、磁場強度が強くなりすぎて、シ
リコン融液13を制御できない不具合もある。またI2
=−(0〜100)I1又はI2=+(0〜100)I1
に限定したのは、これらの範囲を外れる数値を設定する
と、インゴット16下方のシリコン融液13に発生する
対流が下向きになって、固液界面19が下側に凸となる
不具合があるからである。好ましくはI2=−(0.1
〜10.0)I1又はI2=+(0.1〜10.0)I1
である。
【0021】またカスプ磁場17の中立面17aとシリ
コン融液13の表面との距離をHとするとき、0mm≦
H≦1500mm、好ましくは100mm≦H≦700
mmを満たすように、上記中立面17aをシリコン融液
13の表面の上方又は下方に制御する。ここで0mm≦
H≦1500mmに限定したのは、Hが1500mmを
越えると、磁場強度が弱すぎて固液界面19が上側に凸
となるようにシリコン融液13を制御できないからであ
る。
【0022】また石英るつぼ14の直径が大きくなるに
従ってカスプ磁場17の強度が強くなるように、上コイ
ル11及び下コイル12に流す電流を制御する。このよ
うに上コイル及び下コイルの電流を制御するのは、固液
界面19が上側に凸となるようにシリコン融液13に対
流を発生させるローレンツ力を、石英るつぼ14の直径
が大きくなるに従って大きくする必要があるためであ
る。例えば、直径が200mmのインゴット16を引上
げるために、内径が550〜650mmの石英るつぼ1
4を用いた場合には、カスプ磁場17の強度を50〜5
00ガウスの範囲内の一定値に制御し、直径が300m
mのインゴット16を引上げるために、内径が650〜
800mmの石英るつぼ14を用いた場合には、カスプ
磁場17の強度を100〜2000ガウスの範囲内の一
定値に制御する。
【0023】更に石英るつぼ14の回転速度をR1とし
かつインゴット16の回転速度をR2とするとき、R1
−(0〜3.0)R2又はR1=+(0〜3.0)R2
好ましくはR1=−(0.01〜0.8)R2又はR1
+(0.1〜1.5)R2を満たすように、石英るつぼ
14及びインゴット16の回転速度をそれぞれ制御す
る。ここでR1又はR2がプラスのときは、回転方向が上
方から見て反時計回りを示し、R1又はR2がマイナスの
ときは、回転方向が上方から見て時計回りを示す。また
1=−(0〜3.0)R2又はR1=+(0〜3.0)
2に限定したのは、これらの範囲を外れる数値を設定
すると、インゴット16下方のシリコン融液13に発生
する対流が下向きになって、固液界面19が下側に凸と
なる不具合があるからである。なお、インゴット16の
回転速度R2は±(1〜80)rpmの範囲にあること
が好ましい。
【0024】上述のように、上コイル11及び下コイル
12に流す電流と、カスプ磁場17の中立面17aの位
置と、カスプ磁場17の強度と、石英るつぼ14の回転
速度と、インゴット16の回転速度とを制御しながら、
シリコン単結晶のインゴット16を引上げると、石英る
つぼ14の底部中央から固液界面19の中央に向って上
昇した後に、固液界面の外周縁近傍から石英るつぼ14
の底部中央に流下する第1対流21が発生し、石英るつ
ぼ14の底部外周縁から周縁に沿って上昇した後に、上
記第1対流21に沿って流下する第2対流22が発生
し、更に第1対流21の外方かつ第2対流22の上方で
あってシリコン融液13の表面近傍を循環する第3対流
23が発生する。上記第1対流21は固液界面19を押
上げるので、固液界面形状は上側に凸となる。
【0025】この結果、固液界面19の中心がシリコン
融液13表面の延長面上より上方に位置するため、固液
界面19の中心における鉛直方向の温度勾配が大きくな
り、固液界面の中心における鉛直方向の温度勾配と、固
液界面の周縁における鉛直方向の温度勾配との差が小さ
くなる。従って、略全長にわたって無欠陥で高品質のシ
リコン単結晶のインゴット16を比較的容易に製造でき
る。またカスプ磁場17の強度は極めて低いので、少な
い消費電力でインゴット16を引上げることができると
ともに、上コイル11及び下コイル12を小型化できる
ので、比較的狭い空間でインゴット16を引上げること
ができる。なお、第2対流22は、場合によっては存在
しないこともあり、第3対流23は、シリコン融液13
から引上げられたインゴット16内の酸素濃度に対して
影響する可能性がある。
【0026】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、シ
リコン融液とインゴットとの固液界面形状が上側に凸と
なるように、上コイル及び下コイルに流す電流と、カス
プ磁場の中立面の位置と、カスプ磁場の強度と、石英る
つぼの回転速度と、インゴットの回転速度とを制御し、
シリコン単結晶のインゴット内がパーフェクト領域とな
るような引上げ速度でインゴットを引上げるので、シリ
コン融液に所定の対流が発生し、これらの対流により固
液界面形状が上側に凸となる。この結果、固液界面の中
心がシリコン融液表面の延長面上より上方に位置すると
いう理由から、固液界面の中心における鉛直方向の温度
勾配が大きくなるので、この温度勾配と、固液界面の周
縁における鉛直方向の温度勾配との差が小さくなる。従
って、略全長にわたって無欠陥で高品質のシリコン単結
晶のインゴットを比較的容易に製造できる。またカスプ
磁場の強度は極めて低いので、少ない消費電力でインゴ
ットを引上げることができるとともに、上コイル及び下
コイルを小型化できるので、比較的狭い空間でインゴッ
トを引上げることができる。
【0027】更に、結晶引上げ中に磁場移動せず、上コ
イル及び下コイルの電流をそれぞれ独立して制御するこ
とにより、カスプ磁場の中立面を移動することができ
る。従って、磁場本体の移動により発生する機械振動を
抑制し、引上げ中の結晶の有転位化を避けることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の上コイルに下コイルに流す
電流より大きな電流を流しながらシリコン単結晶のイン
ゴットを引上げている状態を示す断面構成図。
【図2】ボロンコフの理論を基づいた、V/G比が臨界
点以上では空孔型点欠陥濃度が優勢なインゴットが形成
され、V/G比が臨界点以下では格子間シリコン型点欠
陥濃度が優勢なインゴットが形成されることを示す図。
【図3】本発明の別の実施形態の上コイルに下コイルに
流す電流より小さな電流を流しながらシリコン単結晶の
インゴットを引上げている状態を示す断面構成図。
【図4】本発明の更に別の実施形態の上コイルと下コイ
ルに同等の電流を流しながらシリコン単結晶のインゴッ
トを引上げている状態を示す断面構成図。
【符号の説明】
11 上コイル 12 下コイル 13 シリコン融液 14 石英るつぼ 16 シリコン単結晶のインゴット 17 カスプ磁場 17a カスプ磁場の中立面 19 固液界面
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 原田 和浩 東京都千代田区大手町1丁目5番1号 三 菱マテリアルシリコン株式会社内 Fターム(参考) 4G077 AA02 BA04 CF10 EH08 EH09 EJ02 HA12 PF55

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シリコン融液(13)を貯留する石英るつぼ
    (14)を所定の回転速度で回転させ、前記シリコン融液(1
    3)から引上げられるシリコン単結晶のインゴット(16)を
    所定の回転速度で回転させ、前記石英るつぼ(14)の外径
    よりそれぞれ大きなコイル直径を有する上コイル(11)及
    び下コイル(12)を前記石英るつぼ(14)の回転軸をそれぞ
    れコイル中心としかつ鉛直方向に所定の間隔をあけて配
    設し、前記上コイル(11)及び下コイル(12)に互いに逆向
    きの電流を流すことにより前記上コイル及び下コイルの
    各コイル中心から前記上コイル及び下コイル間の中立面
    (17a)を通るカスプ磁場(17)を発生させ、前記インゴッ
    ト(16)内が格子間シリコン型点欠陥の凝集体及び空孔型
    点欠陥の凝集体の存在しないパーフェクト領域となる引
    上げ速度で前記インゴットを引上げるシリコン単結晶の
    引上げ方法において、 前記シリコン融液(13)と前記インゴット(16)との固液界
    面(19)形状が上側に凸となるように、前記上コイル(11)
    及び下コイル(12)に流す電流と、カスプ磁場(17)の中立
    面(17a)の位置と、前記カスプ磁場(17)の強度と、前記
    石英るつぼ(14)の回転速度と、前記インゴット(16)の回
    転速度とを制御することを特徴とするシリコン単結晶の
    引上げ方法。
  2. 【請求項2】 上コイル(11)に流す電流をI1、下コイ
    ル(12)に流す電流をI2としかつ電流I1を1×10A≦
    1≦1×1010Aの範囲に規定するとき、I2=−(0
    〜100)I1又はI2=+(0〜100)I1を満たす
    ように、前記上コイル(11)及び下コイル(12)に流す電流
    をそれぞれ独立して制御する請求項1記載のシリコン単
    結晶の引上げ方法。
  3. 【請求項3】 カスプ磁場(17)の中立面(17a)とシリコ
    ン融液(13)の表面との距離をHとするとき、0mm≦H
    ≦1500mmを満たすように、前記中立面(17a)を前
    記シリコン融液(13)の表面の上方又は下方に制御する請
    求項1記載のシリコン単結晶の引上げ方法。
  4. 【請求項4】 石英るつぼ(14)の直径が大きくなるに従
    ってカスプ磁場(17)の強度が強くなるように、上コイル
    (11)及び下コイル(12)に流す電流を制御する請求項1な
    いし3いずれか記載のシリコン単結晶の引上げ方法。
  5. 【請求項5】 石英るつぼ(14)の回転速度をR1としか
    つシリコン単結晶のインゴット(16)の回転速度をR2
    するとき、R1=−(0〜3.0)R2又はR1=+(0
    〜3.0)R2を満たすように、前記石英るつぼ(14)及
    び前記インゴット(16)の回転速度をそれぞれ制御する請
    求項1ないし4いずれか記載のシリコン単結晶の引上げ
    方法。
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