JP2021015308A - 眼鏡用レンズ - Google Patents

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【課題】レンズ周縁に近い領域において従来以上の被写界深度延長効果を得ることが可能な、レンズ前面が曲率半径150mm以下で設定されている眼鏡用レンズを提供する。【解決手段】レンズの前面が曲率半径150mm以下で設定されている眼鏡用レンズであって、レンズの全面もしくは一部に設定された被写界深度延長領域にて、装用者の正面視の視線とレンズの光軸とを一致された状態で測定される平均度数、もしくは、装用者の正面視の視線に対しレンズの光軸を所定のそり角で傾けた状態で測定される平均度数が、レンズの光学中心からレンズ周縁に向けてマイナス側に変化するとともに、眼球の回旋角が0度〜20度の範囲の第1領域における度数変化量と、眼球の回旋角が20度〜40度の範囲の第2領域における度数変化量とが、ともに0.14〜0.46ディオプタの範囲内である。【選択図】 図5

Description

本発明は、被写界深度延長効果を備えた眼鏡用レンズに関し、特にレンズの前面が曲率半径150mm以下で設定されている眼鏡用レンズに関する。
下記特許文献1には、レンズ中心を通る前後方向の軸をz軸、レンズの後方に向かう方向をz軸の正方向としたとき、処方度数に基づいて決定される屈折面のz座標値に、Ar3で表される焦点深度延長成分が付加された視力矯正用レンズが記載されている。このように焦点深度(被写界深度)延長成分が付加されたレンズは、ピントが合って見える範囲が広がるので、広い範囲でボケの少ない画像を得ることができる。また、眼鏡装用者は、眼の調整力を使ったピント合せの動作が軽減され、調節性疲労が減少する。このような焦点深度(被写界深度)延長成分が付加されたレンズは、動く物体の視認も容易となるため、特にスポーツ用レンズとして好適に用いることができる。
特開2016−206338号公報
ところで、近年、レンズの前面を深いカーブとしたハイカーブレンズが提供されている。かかるハイカーブレンズは、顔面に沿うように装着することで視野の向上、異物・風の入り込みの軽減を図ることができ、特にスポーツ用レンズとして用いられる場合が多い。
このようなハイカーブレンズに、上述の被写界深度延長機能を付与すれば、スポーツ用レンズとしての付加価値をより高めることができる。
しかしながら、前面を深いカーブとしたレンズに、単に上述のAr3で表される被写界深度延長成分を付加しても、レンズ周縁に向かうにつれて被写界深度延長効果が小さくなってしまう問題があった。
本発明は、このような問題を解決するものであり、レンズ周縁に近い領域において従来以上の被写界深度延長効果を得ることが可能な、レンズ前面が曲率半径150mm以下で設定されている眼鏡用レンズを提供することを目的とする。
本発明の眼鏡用レンズは、レンズの前面が曲率半径150mm以下で設定されている眼鏡用レンズであって、
前記レンズの全面もしくは一部に設定された被写界深度延長領域にて、
装用者の正面視の視線とレンズの光軸とを一致された状態で測定される平均度数が、レンズの光学中心からレンズ周縁に向けてマイナス側に変化するとともに、
眼球の回旋角が0度〜20度の範囲の第1領域における度数変化量と、眼球の回旋角が20度〜40度の範囲の第2領域における度数変化量とが、ともに0.14〜0.46ディオプタの範囲内であることを特徴とする。
本発明の眼鏡用レンズによれば、レンズの光学中心からレンズ周縁に向けてマイナス側に変化させた被写界深度延長成分により、元の焦点のよりも遠方に被写界深度が延長されて、元の焦点のよりも遠方にある対象物にも容易にピントを合わせることができる。
なお、レンズの光学中心からレンズ周縁に向けての度数変化が大きい程、被写界深度延長効果自体は大きくなるが、レンズの中央部と周縁部とで大きな度数差が生じてしまう。本発明の眼鏡用レンズでは、それらのバランスを考慮して、レンズ中央側の第1領域、および、第1領域より外側の第2領域での度数変化量を、ともに0.14〜0.46ディオプタ(以降”D”とする場合がある)の範囲内とした。より好ましい範囲は0.15〜0.23ディオプタである。このようにすることでレンズの中央部と周縁部との間の度数差を抑えつつ、レンズ中央側の第1領域、および、第1領域より外側の第2領域で一定以上の被写界深度延長効果を得ることができる。
また本発明の眼鏡用レンズは、レンズの前面が曲率半径150mm以下で設定されている眼鏡用レンズであって、
前記レンズの全面もしくは一部に設定された被写界深度延長領域にて、
装用者の正面視の視線に対しレンズの光軸を所定のそり角で傾けた状態で測定される平均度数が、レンズの光学中心からレンズ周縁に向けてマイナス側に変化するとともに、
眼球の回旋角が0度〜20度の範囲の第1領域における度数変化量と、眼球の回旋角が20度〜40度の範囲の第2領域における度数変化量とが、ともに0.14〜0.46ディオプタの範囲内であることを特徴とする。
このようにすれば、所定のそり角を有する眼鏡用フレームに装着される場合でも、レンズの中央部と周縁部との間の度数差を抑えつつ、レンズ中央側の第1領域、および、第1領域より外側の第2領域で一定以上の被写界深度延長効果を得ることができる。
また本発明の眼鏡用レンズは、屈折率が1.608、レンズの前面が4.0〜4.9カーブで設定され、装用者の正面視の視線に対しレンズの光軸を10度のそり角で傾けた状態で用いられる眼鏡用レンズであって、
装用者の正面視の視線とレンズの光軸とを一致された状態で測定される平均度数が、レンズの光学中心からレンズ周縁に向けてマイナス側に変化するとともに、
眼球の上下方向且つ回旋角0度〜20度の範囲の度数変化量が0.20〜0.25ディオプタ、眼球の上下方向且つ回旋角20度〜40度の範囲の度数変化量が0.60〜0.70ディオプタ、眼球の左右方向耳側且つ回旋角0度〜20度の範囲の度数変化量が0.20〜0.30ディオプタ、眼球の左右方向耳側且つ回旋角20度〜40度の範囲の度数変化量が0.50〜0.60ディオプタ、眼球の左右方向鼻側且つ回旋角0度〜20度の範囲の度数変化量が0.15〜0.25ディオプタ、眼球の左右方向鼻側且つ回旋角20度〜40度の範囲の度数変化量が0.50〜0.60ディオプタ、とすることができる。
このようにすれば、10度のそり角を有する眼鏡用フレームに装着された場合に、レンズの中央部と周縁部との間の度数差を抑えつつ、レンズ中央側の回旋角0度〜20度の範囲の第1領域、および、第1領域より外側の回旋角20度〜40度の範囲の第2領域で一定以上の被写界深度延長効果を得ることができる。
本発明の眼鏡用レンズは、レンズの光学中心を通る前後方向の軸をz軸、レンズの後方に向かう方向をz軸の正方向としたとき、処方度数に基づいて決定されるレンズの後面のz座標値に、Br4+Cr6+Dr8+Er10(但し、rはz軸からの距離、B,C,D,Eは定数)で表され、レンズ面内の平均度数の変動を抑制する平均度数安定化成分を付加し、前記レンズの後面のz座標値に、Ar3(但し、Aは定数)で表され、被写界深度を延長させる被写界深度延長成分を付加することができる。
被写界深度延長の効果は、光学中心からレンズ周縁に向けて、レンズ面内の度数を変化させることで得ることができる。しかしながらAr3(Aは正の数)で表される非球面成分は、レンズ面内の度数を光学中心からレンズ周縁部に向けてマイナス側に変化させるのに対し、前面に曲率半径150mm以下の深いカーブが設定されているレンズでは、レンズ周縁に向かうにつれて度数がプラス側に変化するため、Ar3で表される非球面成分による被写界深度延長効果の一部が相殺され、レンズ周縁に近い領域での被写界深度延長効果が小さくなってしまっていた。
そこで本発明では、先ずBr4+Cr6+Dr8+Er10で表される平均度数安定化成分を付加することにより、レンズ面内の各部における平均度数が略一定となるよう補正した上で、Ar3で表される被写界深度延長成分を付加することができる。このようにすれば、レンズ周縁に近い領域での被写界深度延長効果の低下を抑制して、レンズ周縁に近い領域を通じて視認する場合であっても一定以上の被写界深度延長効果を得ることが可能な、レンズ前面が曲率半径150mm以下で設定されている眼鏡用レンズを提供することができる。
また本発明の眼鏡用レンズは、レンズの光学中心から放射状に延びるように設定された複数の分割線上において、F(θ)r4+G(θ)r6+H(θ)r8+I(θ)r10(但し、F(θ),G(θ),H(θ),I(θ)は定数、θは前記z軸と直交するx軸からの角度)で表され、装用者の正面視の視線に対し、レンズの光軸を所定のそり角で傾けた際に生じる平均度数の変化を打ち消すように働くそり角補正成分を、前記レンズの後面のz座標値に付加することができる。
このようにすれば、これら平均度数安定化成分、被写界深度延長成分およびそり角補正成分を組合せて成るJ(θ)r3+K(θ)r4+L(θ)r6+M(θ)r8+N(θ)r10(但し、J(θ),K(θ),L(θ),M(θ) ,N(θ)は定数)で表される回転非対称の非球面成分が、前記レンズの後面の各分割線上のz座標値に付加される。
レンズの前面が曲率半径150mm以下の深いカーブで設定されているレンズは、所定のそり角を有する眼鏡用フレームに装着される場合がある。このような場合、装用者の正面視の視線の方向とレンズの光軸方向との間にそり角に相当する傾きが生じ、その結果、装用者からみた平均度数が変化し、所定の被写界深度延長効果も得られなくなってしまう。このため、所定のそり角で傾けた際に生じる平均度数の変化を打ち消すように働くそり角補正成分を更に追加することにより、そり角に応じてレンズを傾斜させた場合でも、そり角がゼロの場合と同等もしくはこれに近似した被写界深度延長効果を得ることができる。
また本発明の眼鏡用レンズは、前記レンズの後面を、被写界深度延長効果を発揮させる被写界深度延長領域と、それ以外の非被写界深度延長領域とに区画して、前記被写界深度延長領域に対して前記平均度数安定化成分および被写界深度延長成分を選択的に付加することができる。
また本発明の眼鏡用レンズは、被写界深度延長効果を発揮させる被写界深度延長領域を前記レンズの後面の周方向異なる位置に複数設定し、それぞれの被写界深度延長領域に異なる定数Aの値を設定することができる。
(a)は本発明の一実施形態の単焦点レンズの全体の概略図、(b)は同レンズの上半分を拡大した概略図である。 図1の単焦点レンズを説明するための図である。 被写界深度を説明するための図で、(a)は通常の単焦点レンズの場合、(b)は同実施形態に係る単焦点レンズの場合の説明図である。 図3とは異なる説明図で、(a)は明所における被写界深度、(b)は暗所における被写界深度、(c)は暗所において同実施形態に係るレンズを用いた場合の被写界深度、について説明するための図である。 図1の単焦点レンズの効果を説明するための図である。 比較例のレンズ30aの平均度数分布等高線図である。 (a)は比較例のレンズ30bの平均度数分布等高線図、(b)はy軸方向に沿った断面での平均度数の変化を示した図である。 (a)は実施例のレンズ30の平均度数分布等高線図、(b)はy軸方向に沿った断面での平均度数の変化を示した図である。 実施例のレンズを用いて撮影した写真を、比較例のレンズを用いて撮影した写真とともに示した図である。 そり角のある眼鏡用フレームについての説明図である。 本発明の他の実施形態の単焦点レンズを説明するための図である。 図11の単焦点レンズの設計方法についての説明図である。 図12に続く設計方法についての説明図である。 (a)は装用者の正面視の視線に対しレンズの光軸を10度傾けた状態で測定された実施例のレンズ50の平均度数分布等高線図、(b)はy軸方向に沿った断面での平均度数の変化を示した図である。 装用者の正面視の視線とレンズの光軸とを一致された状態で測定された実施例のレンズ50の平均度数分布等高線図である。 本発明の更に他の実施形態の単焦点レンズを説明するための図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、レンズを用いた眼鏡を装用した装用者にとっての前後、左右、上下を、それぞれ、当該レンズにおける前後、左右、上下とする。
図1において、レンズ1は、装用者の視力を矯正するための単焦点レンズである。レンズ1は、後面2が式(i)で定義される凹面とされ、前面3が式(ii)で定義される凸面とされている。レンズ1では、前面3が曲率半径150mm以下で設定されている。なお、レンズ1の光学中心O(後面2では基点O1、前面3では基点O2)を通る前後方向の軸をz軸とし、レンズ1の後方に向かう方向をz軸の正方向とする。z軸はレンズ1の光軸に一致する。
z=r2/(R1+(R1 2−Kr21/2)+δ1+δ2 …式(i)
z=r2/(R2+(R2 2−Kr21/2) …式(ii)
式(i)、(ii)のrは、z軸からの距離である。すなわち、後面2では基点O1、前面3では基点O2を中心として、z軸に直交する左右方向、上下方向の軸をそれぞれx軸、y軸とする直交座標系を考えた場合、r=(x2+y21/2である。R1、R2は面の頂点における曲率半径、Kは1、である。
また、後面2を定義する式(i)において、δ1は、Br4+Cr6+Dr8+Er10(但し、rはz軸からの距離、B,C,D,Eは定数)で表される平均度数安定化成分である。またδ2は、Ar3(但し、rはz軸からの距離、Aは定数)で表される被写界深度延長成分である。
したがって、本例のレンズ1は、前面3が球面、後面2が非球面となる。なお、R1、R2は、処方度数(本例ではS度数)によって決まる。ここでレンズ1は、近視者のための遠用レンズであるため、R1<R2である。
式(i)における平均度数安定化成分δ1は、レンズ面内の中央から周縁に向けて平均度数を略一定とする目的でレンズ後面に付加する非球面成分である。レンズの前面3を深いカーブで設定した場合、レンズの周縁に近い領域の度数はプラス側に変化する。この傾向は前面3のカーブがより深くなるほど顕著となる。本例では、前面3に曲率半径150mm以下の深いカーブを備えたレンズを設計するに際し、レンズ面内の平均度数を、一旦、略一定に補正する目的でレンズの後面2に平均度数安定化成分δ1を付加している。
一方、式(i)における被写界深度延長成分δ2は、レンズの光学中心からレンズ周縁に向けて、平均度数をマイナス側に漸次変化させる目的でレンズ後面に付加する非球面成分である。Ar3(但し、Aは正の数)で表される非球面成分は、平均度数が一定の面(平均度数変化の無い面)に対して付加することが、レンズ中央からレンズ周縁に向けて平均度数を略直線的に変化させるのに有効である。
このように本例のレンズ1は、処方度数に基づいて決定されるレンズ後面2の屈折面(本例での曲率半径R1の球面。以下、元の球面ともいい、符号Sで示す。)に、平均度数安定化成分δ1と、被写界深度延長成分δ2とを付加したものである(図2参照)。
次に、被写界深度延長の効果について説明する。
図3(a)で示すように、レンズ面内の度数が一定とされた通常のレンズ15(比較例)では、レンズ後方の結像位置Pに、焦点位置Dから発せられた光線ばかりが集まるため、焦点位置Dにある対象物は鮮明に見えるが、例えば位置CやEのように、焦点位置Dから少しずれた位置にある対象物は、急激にぼやけて見えなくなる。すなわち、レンズ15の被写界深度は浅い。
一方、図3(b)で示すレンズ1では、Ar3で表される被写界深度延長成分によりレンズの径方向に度数が変化しているため、元の焦点位置Dを含むある程度の範囲からの光線が結像位置Pに集まる。したがって、焦点位置Dでも若干のボケは残るが、例えば位置C、Bのように焦点位置Dから少しずれた位置においても、焦点位置Dと同程度の鮮明さで対象物の識別が可能となるため、事実上ピントが合っている範囲(同図において破線で囲まれた範囲)が拡大する、すなわちレンズ1の被写界深度は深い。
なお、被写界深度延長成分の定数Aを正の値とした場合、被写界深度は、元の焦点位置Dよりも遠方側(同図におけるCやBの位置の側)に延長される。
被写界深度延長の効果は、特に夜間など照度が低い暗所で大きい。以下、図4を用いて説明する。図4では、虹彩21を含む眼球20を示している。
図4(a)は、昼間など照度が高い明所での状態を示したものであり、虹彩21が閉じて、光線束22が細くなるため、光が集中する範囲が長くなり、事実上ピントが合っている範囲、即ち被写界深度が深く(長く)なる。したがって、比較的遠くまで見ることができる。
図4(b)は、暗所での状態を示したものである。虹彩21が開いて、光線束22が太くなるため、光が集中する範囲が短くなり、被写界深度が浅く(短く)なる。したがって、光が集中する焦点位置から少しずれた位置にある対象物は、すぐに見え難くなってしまう。
図4(c)は、暗所でレンズ1を用いた状態を示したものであり、虹彩21が開いて、光線束22が太くなるが、レンズ1は、被写界深度延長効果を有し、比較的長い距離で焦点が合う。したがって、レンズ1によれば、特に暗所での対象物の識別が容易となる。
このような被写界深度延長の効果は、レンズ面内における度数の変化量によって変動する。本実施形態のレンズ1では、図5に示すように光学中心からレンズ周縁に向けて、度数を略直線状に変化させることで、レンズの中央に近い領域を通じて対象物に視線を合わせる場合に視野の中に入るレンズ領域における度数の変化量aと、これよりも外側の領域を通じて対象物に視線を合わせる場合に視野の中に入るレンズ領域における度数の変化量bと、を略同じとし、レンズ1の中央部およびこれよりも外側の領域で、同等の被写界深度延長効果を得ることができる。
ただし、レンズの光学中心からレンズ周縁に向けての度数変化が大きい程、被写界深度延長効果自体は大きくなるが、レンズの中央部と周縁部とで大きな度数差が生じてしまう。レンズ1では、それらのバランスを考慮して、眼球の回旋角が0度〜20度の範囲のレンズ中央側の第1領域、および、眼球の回旋角が20度〜40度の範囲の第2領域での度数変化量を、ともに0.14〜0.46ディオプタの範囲内とした。
次に、レンズ1の設計方法について説明する。
まず、処方度数に基づいてレンズ1の前面3の屈折面および後面2の屈折面を決定する。この決定方法については、周知であるため、ここでは詳述しない。次に、処方度数に基づいて決定されたレンズの後面2の屈折面(元の球面S)に非球面成分を付加する。具体的には、平均度数の変動を抑制する平均度数安定化成分δ1を付加する第1の非球面成分付加工程と、被写界深度を延長させる被写界深度延長成分δ2を付加する第2の非球面成分付加工程と、によって後面2の屈折面に非球面成分を付加する。
第1の非球面成分付加工程では、Br4+Cr6+Dr8+Er10(但し、rはz軸からの距離、B,C,D,Eは定数)で表される平均度数安定化成分δ1を求めて、後面2の屈折面に付加する。
平均度数安定化成分δ1は、下記非球面の式(iii)を用いて表される後面2の屈折面形状について、光線追跡によるシミュレーションを行い、度数(詳しくはメリジオナル方向の屈折力とサジタル方向の屈折力との平均である平均度数)の変化を抑制するのに最適な非球面係数B,C,D,Eを求め、これら非球面係数の値から平均度数安定化成分δ1を得ることができる。
z=r2/(R1+(R1 2−Kr21/2)+Br4+Cr6+Dr8+Er10 …式(iii)
ここで、zは後面2におけるサグ値、rはz軸からの距離、R1は頂点曲率半径、B,C,D,Eは定数(非球面係数)である。
次に第2の非球面成分付加工程では、Ar3(但し、rはz軸からの距離、Aは定数)で表される被写界深度延長成分δ2を求めて、後面2の屈折面に付加する。
被写界深度延長成分における定数Aは、6.40×10-7〜2.40×10-5の範囲内から選択される。通常のサイズの眼鏡レンズ(直径50〜80mm)において定数Aがこの範囲であれば、被写界深度延長効果が適度に得られ、かつ、レンズの中央部と周縁部との間で生じる度数差を抑制することができるからである。
このようにすることで、上記式(i)で定義されたレンズ1の後面2の屈折面形状が決定される。
[実施例1]
下記レンズデータにもとづいて、前面の曲率半径R2が150mm以下(詳しくは125.62mm)で、S度数が−3.00Dの単焦点レンズ30,30a,30bを作製し、これらレンズの平均度数の変化を測定した。
共通するレンズデータは以下の通りである。
S度数 −3.00D
屈折率n 1.608
前面カーブK 4.84カーブ(4.84D)
前面曲率半径R2 125.62mm
外径 Φ50mm
中心厚CT 1.10mm
なお、前面の曲率半径R2は(n−1)/K×1000により求めることができる。
レンズ30a(比較例)は、処方度数に基づいて決定された屈折面S(図1(b)参照)をレンズ後面の形状としたもので、前面および後面がともに球面形状である。
このレンズ30aの平均度数分布を図6に示す。平均度数分布は、眼球に対し所定距離離間した位置(ここではレンズ後面の屈折面から眼球の回旋中心まで距離が25mmの位置)で、レンズの光軸が眼球の正面視の視線と一致するように配置した右レンズについて測定した。図6ではこのようにして得られた平均度数分布をレンズの後面側から示している。図6において図中点線で示されているのは5mmピッチの格子である。なお、以降に詳述するレンズ30b,30における平均度数分布図も同様である。
この図6に示すように、レンズの前面が4.84カーブ(曲率半径125.62mm)で形成されたレンズ30aでは、レンズの中央部の平均度数が−3.12D以下であるのに対し、周縁部の度数が−2.96D以上で、周縁部において中央部よりもプラス側に度数が変化していることが分かる。
一方、レンズ30b(比較例)は、上記レンズ30aのレンズ後面に、Ar3で表される被写界深度延長成分δ2を付加したものである。なお定数Aは7.68×10-6である。
図7(a)はこのレンズ30bの平均度数分布を、図7(b)はレンズ30bのy軸方向(上下方向)に沿った断面での平均度数の変化を、示した図である。レンズ後面に被写界深度延長成分δ2からなる非球面成分を追加したレンズ30bでは、レンズ周縁部において度数がプラス側に変化しており、図7(b)における眼球の回旋角が0度〜20度の範囲の第1領域における度数変化量aが、0.21ディオプタであるのに対し、眼球の回旋角が20度〜40度の範囲の第2領域における度数変化量bが、0.13ディオプタと小さいため、このレンズ30bにあっては、レンズ周縁に近い領域を通じて対象物を視認する際、十分な被写界深度延長効果を得ることができない。
次に、レンズ30(実施例)は、本実施形態の設計方法に基づいて、処方度数より決定されたレンズ後面の屈折面に、Br4+Cr6+Dr8+Er10で表される平均度数安定化成分δ1と、Ar3で表される被写界深度延長成分δ2と、を付加した例である。なお、平均度数安定化成分δ1の各定数は、Bが−9.58×10-8、Cが1.02×10-10、Dが3.03×10-14、Eが−2.80×10-17である。また、被写界深度延長成分の定数Aは、上記レンズ30bの場合と同様に7.68×10-6である。
図8(a)はこのレンズ30の平均度数分布を、図8(b)はレンズ30のy軸方向に沿った断面での平均度数の変化を、示した図である。レンズの後面に平均度数安定化成分δ1と被写界深度延長成分δ2とからなる非球面成分を追加したレンズ30では、上記レンズ30bに比べ、レンズ周縁に近い領域における度数のプラス側への変化が抑制されて、その結果、レンズ周縁に近い領域での度数変化量が高められ、すなわち被写界深度延長効果が高められている。図8(b)に示すように、このレンズ30では眼球の回旋角が0度〜20度の範囲の第1領域における度数変化量aが0.18ディオプタ、眼球の回旋角が20度〜40度の範囲の第2領域における度数変化量bが0.16ディオプタで、いずれの度数変化量も0.14〜0.46ディオプタの範囲内にある。図8(b)は、レンズ30のy軸方向に沿った断面での平均度数の変化を示した図であるが、レンズ30では光軸周りに回転対称の非球面成分が付加されており、y軸方向以外の断面においても同様の度数変化量が得られている。このようなレンズ30にあっては、レンズの中央部と周縁部との間の度数差を抑えつつ、レンズ周縁に近い領域において従来以上の被写界深度延長効果を得ることができる。
なお、図9は、上記単焦点レンズ30a(比較例)と30(実施例)をそれぞれ用いて、撮影した風景の写真である。図9の(a)が単焦点レンズ30aを用いて撮影された写真で、(b)が単焦点レンズ30を用いて撮影された写真である。撮影に用いたカメラは、NIKON D5500で、F値16.0、シャッタースピード1/25の条件で、上記レンズ30aまたは30を装着して手前の電柱にピントを合わせた状態で撮影した。図9の(a)と(b)の画像を比較すると、(b)の画像のほうが、遠方に位置する看板等が鮮明であり、単焦点レンズ30にて一定の被写界深度延長効果が得られていることが分かる。
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
例えば、上記実施例1で示したレンズ30を、そり角を有する眼鏡用フレームに装着した場合、装用者の正面視の視線の方向とレンズの光軸方向との間にそり角に相当する傾きが生じ、その結果、装用者からみた平均度数が変化し、所定の被写界深度延長効果も得られなくなってしまう。
これに対し、以下で詳述する本実施形態の設計方法によれば、所定のそり角を有する眼鏡用フレームに装着されるレンズに対し、好適な被写界深度延長効果を付与することができる。ここで、そり角とは、図10に示すように、レンズを保持するリム部37を装用者の顔面に沿うように傾けた眼鏡用フレーム35における、装用者の正面視の視線に直交する線分36に対する、リム部37の傾きαである。
本例の設計方法では、上記第1実施形態の設計方法と同様の、第1の非球面成分付加工程および第2の非球面成分付加工程に続いて、所定のそり角でレンズを傾けた際に生じる平均度数の変化を打ち消すように働くそり角補正成分δ3を、レンズの後面2に付加する第3の非球面成分付加工程を経て、後面2の面形状を決定する。すなわち、この設計方法では、図11に示すように、処方度数に基づいて決定されるレンズの後面2の屈折面Sに平均度数安定化成分δ1と、被写界深度延長成分δ2と、そり角補正成分δ3と、を付加する。
以下では、上記第1実施形態の設計方法によって得られたレンズ1と略同等の被写界深度延長効果を有するレンズ40を設計する場合を例に、第3の非球面成分付加工程を説明する。
第3の非球面成分付加工程では、まず、レンズ40の光学中心Oから放射状に延びる分割線mを等間隔に複数設定する。レンズの周方向に設定される分割線mの数は、12〜360の範囲で、且つ、レンズ40を周方向360°に亘って等間隔で区画できる数とする。
図12では、分割線mを12本設定した場合を示している。この場合、各分割線mは30°の等間隔で周方向に設定される。同図に示すように分割線mは、x軸上に基準となる分割線m1が配置され、以降30°の間隔でm2〜m12の分割線が周方向の異なる位置に設定される。なお同図においてp1〜p12は、各分割線mの間に位置する領域である。
次に各分割線m上の目標度数を、図13で示すような光学モデルより求める。同図において、20は眼球で、f0は眼球20の正面方向の視線、25は眼球の回旋中心である。
眼球20に対し所定距離離間した位置(ここではレンズ後面の屈折面から眼球の回旋中心まで距離が25mmの位置)で、レンズの光軸が眼球20の視線f0と一致するように2点鎖線で示す基準となるレンズ1を配置し、次にこのレンズ1に対しそり角α分だけ傾けた状態でレンズ40を配置する。
このような光学モデルにおいて、レンズ40の分割線mと交差して延びる任意の視線f1を描き、同一線上にある基準レンズ1の部位41′の度数(平均度数)を、レンズ40の分割線m上に位置する部位41での目標度数とする。このようにして各分割線m上の目標度数を設定する。
次に、各分割線m上のそり角補正成分δ3を求める。そり角補正成分δ3は、F(θ)r4+G(θ)r6+H(θ)r8+I(θ)r10(但し、rはz軸からの距離、F(θ),G(θ),H(θ),I(θ)は定数(非球面係数)、θはx軸からの角度(図12参照))で表される。
そして下記非球面の式(iv)を用いて表される後面2の屈折面形状について、光線追跡によるシミュレーションを行い、分割線m上の度数が上記目標度数と一致または近似するように最適な非球面係数F(θ),G(θ),H(θ),I(θ)を求め、これら非球面係数の値から分割線m上のそり角補正成分δ3を得ることができる。
z=r2/(R1+(R1 2−Kr21/2)+δ1+δ2+F(θ)r4+G(θ)r6+H(θ)r8+I(θ)r10 …式(iv)
次に、各分割線mの間に位置する各領域p1〜p12(図12参照)についてのそり角補正成分δ3を求める。例えば、領域p1では、分割線m1との境界において分割線m1と同じそり角補正成分量となるよう、また分割線m2との境界において分割線m2と同じそり角補正成分量となるよう、分割線m1との境界から分割線m2との境界までを周方向(図12の曲線w1参照)に沿ってコサインカーブ(半波長分)にて滑らかに接続し、領域p1についてのそり角補正成分を導出する。残りの領域p2〜p12についても同様の方法でそり角補正成分を導出する。このようにすることで、第3の非球面成分付加工程では、各分割線m1〜m12上、分割線m間の領域p1〜p12、それぞれについてそり角補正成分に相当する非球面付加量が決定される。
そして、処方度数に基づいて決定されたレンズの後面2の屈折面に、平均度数の変動を抑制する平均度数安定化成分δ1、被写界深度を延長させる被写界深度延長成分δ2、に加えて、更にそり角補正成分δ3を付加することでレンズ40の後面2の屈折面形状が決定される。このときレンズ後面の各分割線m上のz座標値には、上記第1,第2,第3の非球面成分付加工程で求めた各非球面成分を組合せて成るJ(θ)r3+K(θ)r4+L(θ)r6+M(θ)r8+N(θ)r10(但し、J(θ),K(θ),L(θ),M(θ) ,N(θ)は定数)で表され、光軸周りに回転非対称の非球面成分が付加されることとなる。ここで、それぞれの定数(非球面係数)は、J(θ)がAの値、K(θ)がB+F(θ)の値、L(θ)がC+G(θ)の値、M(θ)がD+H(θ)の値、N(θ)がE+I(θ)の値、となる。
このような設計方法によれば、そり角に応じてレンズを傾斜させた場合でも、そり角がゼロの場合と同等もしくはこれに近似した度数変化となり、そり角がゼロの場合と同等もしくはこれに近似した被写界深度延長効果を得ることができる。
[実施例2]
レンズ前面が曲率半径150mm以下(詳しくは125.62mm)、S度数が−3.00Dで且つそり角αが10度の眼鏡用フレームに装着される単焦点レンズ50を作製し、レンズの平均度数分布を測定した。なおそり角以外のレンズデータは、上記実施例1の場合と同じである。
S度数 −3.00D
屈折率n 1.608
前面カーブK 4.84カーブ(4.84D)
前面曲率半径R2 125.62mm
外径 Φ50mm
中心厚CT 1.10mm
レンズ50は、処方度数より決定されたレンズ後面の屈折面に、Br4+Cr6+Dr8+Er10で表される平均度数安定化成分δ1と、Ar3で表される被写界深度延長成分δ2と、そり角補正成分δ3とが付加されている。なお、平均度数安定化成分δ1の各定数は、Bが−9.58×10-8、Cが1.02×10-10、Dが3.03×10-14、Eが−2.80×10-17である。また、被写界深度延長成分の定数Aは、7.68×10-6である。
また、各分割線m上におけるそり角補正成分δ3を特定する定数は、下記表1に示す通りである。なお、表1において、E及びEの右側の数字は、10を基数としEの右側の数字を指数とする累乗を表している。
図14(a)は、このレンズ50を眼球に対しそり角分(10度)傾けた状態で測定した平均度数分布を示している。同図は右側のレンズを後面側から示した図であり、図中左側が鼻側で、右側が耳側となる。
また図14(b)は、レンズ50のy軸方向に沿った断面での平均度数の変化を示した図である。
このレンズ50では、図14(b)に示すように、眼球の回旋角が0度〜20度の範囲の第1領域における度数変化量aが0.16ディオプタ、眼球の回旋角が20度〜40度の範囲の第2領域における度数変化量bが0.15ディオプタで、いずれの度数変化量も0.14〜0.46ディオプタの範囲内にある。
一方、図14(a)で示すx1方向の度数変化については、回旋角が0度〜20度の範囲の第1領域における度数変化量aが0.22ディオプタ、眼球の回旋角が20度〜40度の範囲の第2領域における度数変化量bが0.21ディオプタであり、またx2方向の度数変化については、第1領域における度数変化量aが0.16ディオプタ、第2領域における度数変化量bが0.14ディオプタであり、x軸方向に沿った断面においても、第1領域における度数変化量aと、第2領域における度数変化量bと、がともに0.14〜0.46ディオプタの範囲内にある。
このレンズ50にあっても、レンズの中央部と周縁部との間の度数差を抑えつつ、レンズ周縁に近い領域において従来以上の被写界深度延長効果を得ることができる。
なお、図15は、装用者の正面視の視線とレンズの光軸とを一致された状態で測定したレンズ50の平均度数分布を示している。同図は右側のレンズを後面側から示した図であり、図中左側が鼻側で、右側が耳側となる。
同図において、平均度数はレンズの光学中心Oからレンズ周縁に向けてマイナス側に変化しており、上下方向上側(y軸に沿ったy1方向)への度数変化については、回旋角が0度〜20度の範囲の第1領域における度数変化量aが0.237ディオプタ、眼球の回旋角が20度〜40度の範囲の第2領域における度数変化量bが0.644ディオプタであり、上下方向下側(y軸に沿ったy2方向)への度数変化については、度数変化量aが0.23ディオプタ、度数変化量bが0.631ディオプタであった。
また、左右方向鼻側(x軸に沿ったx1方向)への度数変化については、回旋角が0度〜20度の範囲の第1領域における度数変化量aが0.196ディオプタ、眼球の回旋角が20度〜40度の範囲の第2領域における度数変化量bが0.53ディオプタであり、左右方向耳側(x軸に沿ったx2方向)の度数変化については、度数変化量aが0.29ディオプタ、度数変化量bが0.586ディオプタであった。
すなわち、装用者の正面視の視線とレンズの光軸とを一致された状態で測定された平均度数が、レンズの光学中心からレンズ周縁に向けてマイナス側に変化するとともに、
眼球の上下方向(y1およびy2方向)での回旋角0度〜20度の範囲の度数変化量aを0.20〜0.25ディオプタ、回旋角20度〜40度の範囲の度数変化量bを0.60〜0.70ディオプタ、
眼球の左右方向耳側(x2方向)への度数変化量aを0.20〜0.30ディオプタ、度数変化量bを0.50〜0.60ディオプタ、
眼球の左右方向鼻側(x1方向)への度数変化量aを0.15〜0.25ディオプタ、度数変化量bを0.50〜0.60ディオプタ、とすれば、10度のそり角を有する眼鏡用フレームに装着された場合に、図14で示すような度数分布が得られ、レンズの中央部と周縁部との間の度数差を抑えつつ、レンズ中央側の回旋角0度〜20度の範囲の第1領域、および、第1領域より外側の回旋角20度〜40度の範囲の第2領域で一定以上の被写界深度延長効果を得ることができる。
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまでも一例示である。
被写界深度延長効果を好適に発揮させるための平均度数安定化成分δ1および被写界深度延長成分δ2は、後面2の全面に付加する場合のほか、後面2の一部の領域に選択的に付加することも可能である。
たとえば、図16(a)に示すように、レンズ60を周方向に、被写界深度延長効果を発揮させる被写界深度延長領域62と、それ以外の非被写界深度延長領域64とに区画して、被写界深度延長領域62にのみ平均度数安定化成分δ1および被写界深度延長成分δ2を付加することも可能である。なお、平均度数安定化成分δ1については被写界深度延長領域62のほか非被写界深度延長領域64に付加されてもよい。
図16(a)の場合のように、被写界深度延長領域62をレンズ60の耳側の領域に設定した場合、正面視においては、主に非被写界深度延長領域64を通じて対象物を鮮明に視認することができる一方、被写界深度延長領域62を通じて後方の風景等を見たとき、被写界深度延長効果により広い範囲でボケの少ない像を得ることが可能となる。このようなレンズは、例えばスポーツ自転車運転時といった用途に適している。
また図16(b)に示すように、被写界深度延長効果を発揮させる被写界深度延長領域62をレンズ60の周方向異なる位置に複数(ここでは3つ)設定し、それぞれの領域に異なる被写界深度延長成分δ2を付加することも可能である。具体的には、レンズ設計時(第2の非球面成分付加工程において)、領域別に異なる定数Aの値を設定する。このようにすれば、各領域に好みの被写界深度延長効果を付与することができる。
また、上記実施形態ではS度数に基づいて決定されるレンズの後面の屈折面に対して各非球面成分を付加しているが、処方度数に基づいて決定されるレンズの後面の屈折面は、S度数のほかC度数、乱視軸AX等に基づいて決定することができる。
また、そり角による視線のずれを抑制するため、そり角・処方度数ごとに補正プリズム成分をさらに付加することも可能であるし、またレンズの前傾斜を考慮した非球面成分をさらに付加することも可能である。
また、眼鏡用レンズの光学中心は、円形レンズの幾何学中心から偏心させた位置に設けることも可能である等、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において様々変更を加えた形態で実施可能である。
1,30,40,50,60 レンズ
2 後面
3 前面
S 屈折面

Claims (4)

  1. レンズの前面が曲率半径150mm以下で設定されている眼鏡用レンズであって、
    前記レンズの全面もしくは一部に設定された被写界深度延長領域にて、
    装用者の正面視の視線とレンズの光軸とを一致された状態で測定される平均度数、もしくは、前記装用者の正面視の視線に対し前記レンズの光軸を所定のそり角で傾けた状態で測定される平均度数が、レンズの光学中心からレンズ周縁に向けてマイナス側に変化するとともに、
    眼球の回旋角が0度〜20度の範囲の第1領域における度数変化量と、眼球の回旋角が20度〜40度の範囲の第2領域における度数変化量とが、ともに0.14〜0.46ディオプタの範囲内であることを特徴とする眼鏡用レンズ。
  2. 屈折率が1.608、レンズの前面が4.0〜4.9カーブで設定され、装用者の正面視の視線に対しレンズの光軸を10度のそり角で傾けた状態で用いられる眼鏡用レンズであって、
    装用者の正面視の視線とレンズの光軸とを一致された状態で測定される平均度数が、レンズの光学中心からレンズ周縁に向けてマイナス側に変化するとともに、
    眼球の上下方向且つ回旋角0度〜20度の範囲の度数変化量が0.20〜0.25ディオプタ、
    眼球の上下方向且つ回旋角20度〜40度の範囲の度数変化量が0.60〜0.70ディオプタ、
    眼球の左右方向耳側且つ回旋角0度〜20度の範囲の度数変化量が0.20〜0.30ディオプタ、
    眼球の左右方向耳側且つ回旋角20度〜40度の範囲の度数変化量が0.50〜0.60ディオプタ、
    眼球の左右方向鼻側且つ回旋角0度〜20度の範囲の度数変化量が0.15〜0.25ディオプタ、
    眼球の左右方向鼻側且つ回旋角20度〜40度の範囲の度数変化量が0.50〜0.60ディオプタ、であることを特徴とする請求項1に記載の眼鏡用レンズ。
  3. レンズの光学中心を通る前後方向の軸をz軸、レンズの後方に向かう方向をz軸の正方向としたとき、処方度数に基づいて決定されるレンズの後面のz座標値に、Br4+Cr6+Dr8+Er10(但し、rはz軸からの距離、B,C,D,Eは定数)で表され、レンズ面内の平均度数の変動を抑制する平均度数安定化成分が付加され、
    更に前記レンズの後面のz座標値に、Ar3(但し、Aは定数)で表され、被写界深度を延長させる被写界深度延長成分が付加されていることを特徴とする請求項1,2の何れかに記載の眼鏡用レンズ。
  4. レンズの光学中心から放射状に延びるように設定された複数の分割線上において、F(θ)r4+G(θ)r6+H(θ)r8+I(θ)r10(但し、F(θ),G(θ),H(θ),I(θ)は定数、θは前記z軸と直交するx軸からの角度)で表され、装用者の正面視の視線に対し、レンズの光軸を所定のそり角で傾けた際に生じる平均度数の変化を打ち消すように働くそり角補正成分が、前記レンズの後面のz座標値に更に付加され、
    これら平均度数安定化成分、被写界深度延長成分およびそり角補正成分を組合せて成るJ(θ)r3+K(θ)r4+L(θ)r6+M(θ)r8+N(θ)r10(但し、J(θ),K(θ),L(θ),M(θ) ,N(θ)は定数)で表される回転非対称の非球面成分が、前記レンズの後面の各分割線上のz座標値に付加されていることを特徴とする請求項3に記載の眼鏡用レンズ。
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