JP7142956B2 - 眼鏡用レンズ - Google Patents
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このようなハイカーブレンズに、上述の被写界深度延長機能を付与すれば、スポーツ用レンズとしての付加価値をより高めることができる。
しかしながら、前面を深いカーブとしたレンズに、単に上述のAr3で表される被写界深度延長成分を付加しても、レンズ周縁に向かうにつれて被写界深度延長効果が小さくなってしまう問題があった。
前記レンズの全面もしくは一部に設定された被写界深度延長領域にて、
装用者の正面視の視線とレンズの光軸とを一致された状態で測定される平均度数が、レンズの光学中心からレンズ周縁に向けてマイナス側に変化するとともに、
眼球の回旋角が0度~20度の範囲の第1領域における度数変化量と、眼球の回旋角が20度~40度の範囲の第2領域における度数変化量とが、ともに0.14~0.46ディオプタの範囲内であることを特徴とする。
なお、レンズの光学中心からレンズ周縁に向けての度数変化が大きい程、被写界深度延長効果自体は大きくなるが、レンズの中央部と周縁部とで大きな度数差が生じてしまう。本発明の眼鏡用レンズでは、それらのバランスを考慮して、レンズ中央側の第1領域、および、第1領域より外側の第2領域での度数変化量を、ともに0.14~0.46ディオプタ(以降”D”とする場合がある)の範囲内とした。より好ましい範囲は0.15~0.23ディオプタである。このようにすることでレンズの中央部と周縁部との間の度数差を抑えつつ、レンズ中央側の第1領域、および、第1領域より外側の第2領域で一定以上の被写界深度延長効果を得ることができる。
前記レンズの全面もしくは一部に設定された被写界深度延長領域にて、
装用者の正面視の視線に対しレンズの光軸を所定のそり角で傾けた状態で測定される平均度数が、レンズの光学中心からレンズ周縁に向けてマイナス側に変化するとともに、
眼球の回旋角が0度~20度の範囲の第1領域における度数変化量と、眼球の回旋角が20度~40度の範囲の第2領域における度数変化量とが、ともに0.14~0.46ディオプタの範囲内であることを特徴とする。
このようにすれば、所定のそり角を有する眼鏡用フレームに装着される場合でも、レンズの中央部と周縁部との間の度数差を抑えつつ、レンズ中央側の第1領域、および、第1領域より外側の第2領域で一定以上の被写界深度延長効果を得ることができる。
装用者の正面視の視線とレンズの光軸とを一致された状態で測定される平均度数が、レンズの光学中心からレンズ周縁に向けてマイナス側に変化するとともに、
眼球の上下方向且つ回旋角0度~20度の範囲の度数変化量が0.20~0.25ディオプタ、眼球の上下方向且つ回旋角20度~40度の範囲の度数変化量が0.60~0.70ディオプタ、眼球の左右方向耳側且つ回旋角0度~20度の範囲の度数変化量が0.20~0.30ディオプタ、眼球の左右方向耳側且つ回旋角20度~40度の範囲の度数変化量が0.50~0.60ディオプタ、眼球の左右方向鼻側且つ回旋角0度~20度の範囲の度数変化量が0.15~0.25ディオプタ、眼球の左右方向鼻側且つ回旋角20度~40度の範囲の度数変化量が0.50~0.60ディオプタ、とすることができる。
このようにすれば、10度のそり角を有する眼鏡用フレームに装着された場合に、レンズの中央部と周縁部との間の度数差を抑えつつ、レンズ中央側の回旋角0度~20度の範囲の第1領域、および、第1領域より外側の回旋角20度~40度の範囲の第2領域で一定以上の被写界深度延長効果を得ることができる。
このようにすれば、これら平均度数安定化成分、被写界深度延長成分およびそり角補正成分を組合せて成るJ(θ)r3+K(θ)r4+L(θ)r6+M(θ)r8+N(θ)r10(但し、J(θ),K(θ),L(θ),M(θ) ,N(θ)は定数)で表される回転非対称の非球面成分が、前記レンズの後面の各分割線上のz座標値に付加される。
z=r2/(R2+(R2 2-Kr2)1/2) …式(ii)
また、後面2を定義する式(i)において、δ1は、Br4+Cr6+Dr8+Er10(但し、rはz軸からの距離、B,C,D,Eは定数)で表される平均度数安定化成分である。またδ2は、Ar3(但し、rはz軸からの距離、Aは定数)で表される被写界深度延長成分である。
したがって、本例のレンズ1は、前面3が球面、後面2が非球面となる。なお、R1、R2は、処方度数(本例ではS度数)によって決まる。ここでレンズ1は、近視者のための遠用レンズであるため、R1<R2である。
図3(a)で示すように、レンズ面内の度数が一定とされた通常のレンズ15(比較例)では、レンズ後方の結像位置Pに、焦点位置Dから発せられた光線ばかりが集まるため、焦点位置Dにある対象物は鮮明に見えるが、例えば位置CやEのように、焦点位置Dから少しずれた位置にある対象物は、急激にぼやけて見えなくなる。すなわち、レンズ15の被写界深度は浅い。
なお、被写界深度延長成分の定数Aを正の値とした場合、被写界深度は、元の焦点位置Dよりも遠方側(同図におけるCやBの位置の側)に延長される。
まず、処方度数に基づいてレンズ1の前面3の屈折面および後面2の屈折面を決定する。この決定方法については、周知であるため、ここでは詳述しない。次に、処方度数に基づいて決定されたレンズの後面2の屈折面(元の球面S)に非球面成分を付加する。具体的には、平均度数の変動を抑制する平均度数安定化成分δ1を付加する第1の非球面成分付加工程と、被写界深度を延長させる被写界深度延長成分δ2を付加する第2の非球面成分付加工程と、によって後面2の屈折面に非球面成分を付加する。
z=r2/(R1+(R1 2-Kr2)1/2)+Br4+Cr6+Dr8+Er10 …式(iii)
ここで、zは後面2におけるサグ値、rはz軸からの距離、R1は頂点曲率半径、B,C,D,Eは定数(非球面係数)である。
下記レンズデータにもとづいて、前面の曲率半径R2が150mm以下(詳しくは125.62mm)で、S度数が-3.00Dの単焦点レンズ30,30a,30bを作製し、これらレンズの平均度数の変化を測定した。
共通するレンズデータは以下の通りである。
S度数 -3.00D
屈折率n 1.608
前面カーブK 4.84カーブ(4.84D)
前面曲率半径R2 125.62mm
外径 Φ50mm
中心厚CT 1.10mm
なお、前面の曲率半径R2は(n-1)/K×1000により求めることができる。
例えば、上記実施例1で示したレンズ30を、そり角を有する眼鏡用フレームに装着した場合、装用者の正面視の視線の方向とレンズの光軸方向との間にそり角に相当する傾きが生じ、その結果、装用者からみた平均度数が変化し、所定の被写界深度延長効果も得られなくなってしまう。
これに対し、以下で詳述する本実施形態の設計方法によれば、所定のそり角を有する眼鏡用フレームに装着されるレンズに対し、好適な被写界深度延長効果を付与することができる。ここで、そり角とは、図10に示すように、レンズを保持するリム部37を装用者の顔面に沿うように傾けた眼鏡用フレーム35における、装用者の正面視の視線に直交する線分36に対する、リム部37の傾きαである。
眼球20に対し所定距離離間した位置(ここではレンズ後面の屈折面から眼球の回旋中心まで距離が25mmの位置)で、レンズの光軸が眼球20の視線f0と一致するように2点鎖線で示す基準となるレンズ1を配置し、次にこのレンズ1に対しそり角α分だけ傾けた状態でレンズ40を配置する。
このような光学モデルにおいて、レンズ40の分割線mと交差して延びる任意の視線f1を描き、同一線上にある基準レンズ1の部位41′の度数(平均度数)を、レンズ40の分割線m上に位置する部位41での目標度数とする。このようにして各分割線m上の目標度数を設定する。
そして下記非球面の式(iv)を用いて表される後面2の屈折面形状について、光線追跡によるシミュレーションを行い、分割線m上の度数が上記目標度数と一致または近似するように最適な非球面係数F(θ),G(θ),H(θ),I(θ)を求め、これら非球面係数の値から分割線m上のそり角補正成分δ3を得ることができる。
z=r2/(R1+(R1 2-Kr2)1/2)+δ1+δ2+F(θ)r4+G(θ)r6+H(θ)r8+I(θ)r10 …式(iv)
このような設計方法によれば、そり角に応じてレンズを傾斜させた場合でも、そり角がゼロの場合と同等もしくはこれに近似した度数変化となり、そり角がゼロの場合と同等もしくはこれに近似した被写界深度延長効果を得ることができる。
レンズ前面が曲率半径150mm以下(詳しくは125.62mm)、S度数が-3.00Dで且つそり角αが10度の眼鏡用フレームに装着される単焦点レンズ50を作製し、レンズの平均度数分布を測定した。なおそり角以外のレンズデータは、上記実施例1の場合と同じである。
S度数 -3.00D
屈折率n 1.608
前面カーブK 4.84カーブ(4.84D)
前面曲率半径R2 125.62mm
外径 Φ50mm
中心厚CT 1.10mm
また、各分割線m上におけるそり角補正成分δ3を特定する定数は、下記表1に示す通りである。なお、表1において、E及びEの右側の数字は、10を基数としEの右側の数字を指数とする累乗を表している。
また図14(b)は、レンズ50のy軸方向に沿った断面での平均度数の変化を示した図である。
一方、図14(a)で示すx1方向の度数変化については、回旋角が0度~20度の範囲の第1領域における度数変化量aが0.22ディオプタ、眼球の回旋角が20度~40度の範囲の第2領域における度数変化量bが0.21ディオプタであり、またx2方向の度数変化については、第1領域における度数変化量aが0.16ディオプタ、第2領域における度数変化量bが0.14ディオプタであり、x軸方向に沿った断面においても、第1領域における度数変化量aと、第2領域における度数変化量bと、がともに0.14~0.46ディオプタの範囲内にある。
このレンズ50にあっても、レンズの中央部と周縁部との間の度数差を抑えつつ、レンズ周縁に近い領域において従来以上の被写界深度延長効果を得ることができる。
同図において、平均度数はレンズの光学中心Oからレンズ周縁に向けてマイナス側に変化しており、上下方向上側(y軸に沿ったy1方向)への度数変化については、回旋角が0度~20度の範囲の第1領域における度数変化量aが0.237ディオプタ、眼球の回旋角が20度~40度の範囲の第2領域における度数変化量bが0.644ディオプタであり、上下方向下側(y軸に沿ったy2方向)への度数変化については、度数変化量aが0.23ディオプタ、度数変化量bが0.631ディオプタであった。
また、左右方向鼻側(x軸に沿ったx1方向)への度数変化については、回旋角が0度~20度の範囲の第1領域における度数変化量aが0.196ディオプタ、眼球の回旋角が20度~40度の範囲の第2領域における度数変化量bが0.53ディオプタであり、左右方向耳側(x軸に沿ったx2方向)の度数変化については、度数変化量aが0.29ディオプタ、度数変化量bが0.586ディオプタであった。
眼球の上下方向(y1およびy2方向)での回旋角0度~20度の範囲の度数変化量aを0.20~0.25ディオプタ、回旋角20度~40度の範囲の度数変化量bを0.60~0.70ディオプタ、
眼球の左右方向耳側(x2方向)への度数変化量aを0.20~0.30ディオプタ、度数変化量bを0.50~0.60ディオプタ、
眼球の左右方向鼻側(x1方向)への度数変化量aを0.15~0.25ディオプタ、度数変化量bを0.50~0.60ディオプタ、とすれば、10度のそり角を有する眼鏡用フレームに装着された場合に、図14で示すような度数分布が得られ、レンズの中央部と周縁部との間の度数差を抑えつつ、レンズ中央側の回旋角0度~20度の範囲の第1領域、および、第1領域より外側の回旋角20度~40度の範囲の第2領域で一定以上の被写界深度延長効果を得ることができる。
被写界深度延長効果を好適に発揮させるための平均度数安定化成分δ1および被写界深度延長成分δ2は、後面2の全面に付加する場合のほか、後面2の一部の領域に選択的に付加することも可能である。
また、そり角による視線のずれを抑制するため、そり角・処方度数ごとに補正プリズム成分をさらに付加することも可能であるし、またレンズの前傾斜を考慮した非球面成分をさらに付加することも可能である。
また、眼鏡用レンズの光学中心は、円形レンズの幾何学中心から偏心させた位置に設けることも可能である等、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において様々変更を加えた形態で実施可能である。
2 後面
3 前面
S 屈折面
Claims (3)
- 屈折率が1.608、レンズの前面が4.0~4.9カーブで、前記レンズの前面が曲率半径150mm以下で設定され、装用者の正面視の視線に対しレンズの光軸を10度のそり角で傾けた状態で用いられる眼鏡用レンズであって、
前記レンズの全面もしくは一部に設定された被写界深度延長領域にて、
前記装用者の正面視の視線と前記レンズの光軸とを一致された状態で測定される平均度数が、レンズの光学中心からレンズ周縁に向けてマイナス側に変化するとともに、
眼球の上下方向且つ回旋角0度~20度の範囲の度数変化量が0.20~0.25ディオプタ、
眼球の上下方向且つ回旋角20度~40度の範囲の度数変化量が0.60~0.70ディオプタ、
眼球の左右方向耳側且つ回旋角0度~20度の範囲の度数変化量が0.20~0.30ディオプタ、
眼球の左右方向耳側且つ回旋角20度~40度の範囲の度数変化量が0.50~0.60ディオプタ、
眼球の左右方向鼻側且つ回旋角0度~20度の範囲の度数変化量が0.15~0.25ディオプタ、
眼球の左右方向鼻側且つ回旋角20度~40度の範囲の度数変化量が0.50~0.60ディオプタ、であり、
前記装用者の正面視の視線に対し前記レンズの光軸を10度のそり角で傾けた状態で測定される、眼球の回旋角が0度~20度の範囲の第1領域における度数変化量と、眼球の回旋角が20度~40度の範囲の第2領域における度数変化量とが、ともに0.14~0.46ディオプタの範囲内であることを特徴とする眼鏡用レンズ。 - レンズの光学中心を通る前後方向の軸をz軸、レンズの後方に向かう方向をz軸の正方向としたとき、処方度数に基づいて決定されるレンズの後面のz座標値に、Br4+Cr6+Dr8+Er10(但し、rはz軸からの距離、B,C,D,Eは定数)で表され、レンズ面内の平均度数の変動を抑制する平均度数安定化成分が付加され、
更に前記レンズの後面のz座標値に、Ar3(但し、Aは定数)で表され、被写界深度を延長させる被写界深度延長成分が付加されていることを特徴とする請求項1に記載の眼鏡用レンズ。 - レンズの光学中心から放射状に延びるように設定された複数の分割線上において、F(θ)r4+G(θ)r6+H(θ)r8+I(θ)r10(但し、F(θ),G(θ),H(θ),I(θ)は定数、θは前記z軸と直交するx軸からの角度)で表され、装用者の正面視の視線に対し、レンズの光軸を所定のそり角で傾けた際に生じる平均度数の変化を打ち消すように働くそり角補正成分が、前記レンズの後面のz座標値に更に付加され、
これら平均度数安定化成分、被写界深度延長成分およびそり角補正成分を組合せて成るJ(θ)r3+K(θ)r4+L(θ)r6+M(θ)r8+N(θ)r10(但し、J(θ),K(θ),L(θ),M(θ) ,N(θ)は定数)で表される回転非対称の非球面成分が、前記レンズの後面の各分割線上のz座標値に付加されていることを特徴とする請求項2に記載の眼鏡用レンズ。
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