JP2020511544A - 関節リウマチを予防及び治療するための薬物の製造における選択性tnfr1拮抗ペプチドの使用 - Google Patents

関節リウマチを予防及び治療するための薬物の製造における選択性tnfr1拮抗ペプチドの使用 Download PDF

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Abstract

関節リウマチを予防及び治療するための薬物の製造における、マダラウミヘビのヘビ毒に由来する選択性TNFR1拮抗ペプチドHydrostatin−SN10の使用が提供される。【選択図】なし

Description

本発明は、生物医薬技術分野に関し、具体的には、マダラウミヘビ(Hydrophis cyanocinctus)のヘビ毒に由来する選択性TNFR1拮抗ペプチドHydrostatin−SN10及びその関節リウマチにおける使用に関する。
関節リウマチ(Rheumatoid arthritis,RA)は、関節滑膜炎を特徴とする慢性自己免疫疾患である。主な臨床症状は、小関節滑膜の腫れや痛み、滑膜炎及び過形成による軟骨及び骨の侵食、関節の隙間が狭くなることであり、末期は、重度の骨破壊、吸収により、関節強直、奇形、機能障害が引き起こされる。アメリカでは、RAは、人間の健康に影響を与える5つの主要な疾患(心血管疾患、アルツハイマー病、がん、エイズ、関節リウマチ)の一つであると考えられている。RAはどの年齢でも発症する可能性があり、特に20−50歳で発症率が最も高い。世界中の約0.24%の人がRAに苦しんでおり、非常に高い障害率及び予後不良を伴っている。(Cross,M.,Smith,E.,Hoy,D.,Carmona,L.,Wolfe,F.,Vos,T.,Williams,B.,Gabriel,S.,Lassere,M.,Johns,N.,Buchbinder,R.,Woolf,A.,March,L.,2014.The global burden of rheumatoid arthritis:estimates from the global burden of disease 2010 study.Ann.Rheum.Dis.73,1316−132.)。今までのところ、RAの病因はまだ明らかではないが、遺伝的関節リウマチを予防及び治療するための薬物環境的要因は疾患の発症と密接に関連している。研究により、関節リウマチの重症度は、炎症性メディエーターに大きく影響されていることが分かった。主な炎症性メディエーターは、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−17(IL−17)及びインターロイキン−1(IL−1)などを含み、この中、TNF−αは、RAの発症メカニズムにおいて非常に重要な役割を果たす。現在、関節リウマチの臨床治療において、抗TNF−α薬物、例えば、アダリムマブ、インフリキシマブなどは、良好な臨床効果を達成しており、症状を改善するとともに、関節の破壊を抑制することができる。しかし、このような抗TNF−αモノクローナル抗体医薬品は、TNF−αの生物学的機能を完全に遮断するため、生体の免疫自己安定機能及び免疫監視機能に影響を与え、多くの患者には、結核感染症、新しい自己免疫疾患、さらに腫瘍などのリスクをもたらす。
生体内のTNF−αの過剰発現及びTNF−α/TNFRシグナル伝達経路の異常活性化は、関節リウマチなどの自己免疫疾患の発症及び進行に密接に関連している。RAの発症メカニズムについての詳細な研究に伴い、より多くの研究は現在治療の標的をTNFRに変えている。しかし、抗TNF−αモノクローナル抗体と比較して、TNFRの小分子拮抗薬の基礎研究関節リウマチを予防及び治療するための薬物応用研究の進歩が遅い。一般的に言えば、抗炎症の観点から、TNFR1は主に炎症誘発性シグナル関節リウマチを予防及び治療するための薬物アポトーシスシグナルを伝達するため、TNFR1伝達のシグナル伝達経路を選択的に遮断することによってTNF−αの生物学的機能を遮断することは、このような薬物の開発の焦点となっている。現在、臨床に適用可能な高度の選択性を有するTNFR1拮抗薬がまだない。以前の研究において、我々の研究グループは、Hydrophis cyanocinctusの毒液のファージディスプレイライブラリーを生物的に選択し、抗炎症活性ペプチドHydrostatin−SN1を得た(中国特許文献:CN103030687A)。次いで、構造最適化により候補ペプチドHydrostatin−SN10を取得た。BIAcore(表面プラズモン共鳴に基づく生体高分子相互作用解析)及びMST(マイクロスケール熱泳動)技術によりHydrostatin−SN10とTNF−α、TNFR1、TNFR2との相互作用を分析した結果、Hydrostatin−SN10はTNFR1に直接結合することができ、かつTNF−α及びTNFR2と結合せず、標的特異的であり、選択性TNFR1拮抗ペプチドであることが証明された。特許文献CN103030687Aには、Hydrostatin−SN1がTNF−αに関連する疾患を治療可能であることが開示されており、また、TNF−αに関連する疾患が関節リウマチであることが開示されている。この先行技術のメカニズムに基づいて、Hydrostatin−SN10が関節リウマチの治療に使用できることは、明確に導き出すことができない。
しかし、低分子ポリペプチドは、その相対分子量が比較的小さく、生体内で糸球体によって急速にろ過され、関連するプロテアーゼによって分解されやすいので、安定性が悪く、血漿半減期が短く、正常な生物学的機能を発揮できず、効果的な治療効果を奏することができないため、その開発と使用はある程度に制限される。この問題を解決するために、ポリペプチド薬物の修飾又は他の材料との融合による安定性の向上は、生物医薬分野において研究のホットスポットになっている。現在、ペプチド及びタンパク質に使用される化学修飾剤が数多くあり、その中で、モノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)及びその誘導体は最も広く使用されている修飾剤の一つである。PEG修飾の利点は、主に(1)薬物動態特性の改善と血漿の半減期の延長、(2)溶解性と安定性(熱安定性、酸塩基耐性、変性剤耐性及びプロテアーゼ加水分解耐性)の向上、(3)免疫原性と毒性の低減、(4)体内の生物活性の向上を含む。現在、PEG−TNF−α抗体のFab断片、PEG−赤血球生成促進ポリペプチドなどの多数のPEG化タンパク質及びポリペプチド類薬は、物臨床使用に承認されている。したがって、本発明者らは、以前の研究に基づいて、Hydrostatin−SN10の構造を修飾することにより、本発明の生成物であるPEG−SN10を得た。本発明では、関節リウマチにおけるPEG−SN10の役割を検討する。
本発明は、マダラウミヘビのヘビ毒に由来する選択性TNFR1拮抗ペプチドHydrostatin−SN10及び関節リウマチにおけるその使用を提供することを目的とする。また、本発明のその他の目的は、mPEG2000(モノメトキシポリエチレングリコール2000)により修飾された選択性TNFR1拮抗ペプチドHydrostatin−SN10、即ちPEG−SN10の関節リウマチにおける使用を提供することである。
本発明者らは、Hydrostatin−SN1(22AA)を切断してHydrostatin−SN10(10AA)を得、表面プラズモン共鳴技術(SPR)によりHydrostatin−SN10(10AA)がTNFR1に結合することができ、結合能が約KD=2.8μMであり、Hydrostatin−SN1とTNFR1の結合能(KD=32μM)よりも高いことが高いことを発見した(江海龍、中国人民解放軍第二軍医大学2015年修士論文「ウミヘビのヘビ毒の抗炎症活性ペプチドHydrostatin−SN1の構造最適化と抗炎症メカニズムの研究」)。動物モデルの結果により、Hydrostatin−SN10は、一定の抗炎症活性を有することを示しているが、TNFR1を選択的に拮抗できるか否かが不明である。
本発明では、ウシII型コラーゲン誘発関節リウマチ(CIA)動物モデルを構築することにより、Hydrostatin−SN10及びPEG−SN10が関節リウマチの治療用途を有することが証明される。
本発明の第1態様によれば、アミノ酸配列が配列番号2に示される選択性TNFR1拮抗ペプチドHydrostatin−SN10が提供される。
前記選択性TNFR1拮抗ペプチドHydrostatin−SN10の合成方法は、固相合成法によりHydrostatin−SN10を合成することであり、HPLC及びMSにより分析した結果、前記選択性TNFR1拮抗ペプチドHydrostatin−SN10の分子量は1250.29ダルトン、等電点は4.39である。
本発明の第2態様によれば、ヌクレオチド配列が配列番号1に示される選択性TNFR1拮抗ペプチドHydrostatin−SN10のコーディング遺伝子が提供される。
本発明の第3態様によれば、関節リウマチを予防及び治療するための薬物の製造における前記選択性TNFR1拮抗ペプチドHydrostatin−SN10の使用が提供される。
好ましくは、前記関節リウマチを予防及び治療するための薬物は、選択性TNFR1拮抗ペプチドHydrostatin−SN10を唯一の活性成分とするか、又は選択性TNFR1拮抗ペプチドHydrostatin−SN10を含む医薬組成物である。
本発明の第4態様によれば、mPEG2000(モノメトキシポリエチレングリコール2000)により修飾された選択性TNFR1拮抗ペプチドHydrostatin−SN10、即ちPEG−SN10が提供される。前記mPEG2000のカルボキシル基は、Hydrostatin−SN10のペプチド鎖のN端にあるアスパラギン酸の遊離アミノ基に共有結合する。平均分子量が約2000ダルトンのmPEG(モノメトキシポリエチレングリコール)によりHydrostatin−SN10を修飾することにより、Hydrostatin−SN10の半減期及び安定性が向上する。前記mPEG2000の構造式は、CHO−(CH2CH2O)n−COOHであり、前記nは重合度を示し、n=35〜45であり、その平均分子量は2000ダルトンである。
本発明の第5態様によれば、関節リウマチを予防及び治療するための薬物の製造における前記mPEG2000により修飾された選択性TNFR1拮抗ペプチドPEG−SN10の使用が提供される。
好ましくは、前記関節リウマチを予防及び治療するための薬物は、PEG−SN10を唯一の活性成分とするか、又はPEG−SN10を含む医薬組成物である。
好ましくは、前記医薬組成物及び薬剤学的に許容される添加剤を用いて医薬製剤を製造する。
好ましくは、前記医薬製剤は、錠剤、顆粒剤、分散剤、カプセル剤、ソフトカプセル剤、滴丸剤(dripping pill)、注射剤、粉末注射剤又はエアロゾル剤などである。
好ましくは、前記関節リウマチを予防及び治療するための薬物は、TNFR1を選択的に拮抗する。
本発明では、BIAcore(表面プラズモン共鳴に基づく生体高分子相互作用解析)及びMST(マイクロ熱泳動)技術を使用し、Hydrostatin−SN10とTNF−α、TNFR1、TNFR2の相互作用を分析することにより、Hydrostatin−SN10がTNFR1と直接結合することができ、TNF−α及びTNFR2と結合しないことを証明した。本発明では、ウシII型コラーゲン誘発関節リウマチ動物モデルを用いて本発明のポリペプチドの治療作用を観察した結果、Hydrostatin−SN10及びPEG−SN10は、腹腔内投与後にCIAマウスの関節炎指数を効果的に低下させ、CIAマウス血清におけるコラーゲン特異的抗体IgG及び炎症誘発性因子IL−17、TNF−α、IL−6、IFN−γのレベルを顕著に低下させ、抗炎症性因子IL−10のレベルを顕著に向上させ、炎症性因子の作用により抗炎症作用を発揮することができる。micro−CTスキャンは、Hydrostatin−SN10及びPEG−SN10がマウス骨梁の骨破壊の程度を顕著に改善できることを示す。骨破壊の観点から、Hydrostatin−SN10及びPEG−SN10は、顕著な抗炎症効果を有し、CIAマウスの関節損傷、滑膜過形成及び炎症性細胞浸潤を顕著に改善し、関節におけるTNF−αの発現量、破骨細胞の数を顕著に減少させることができる。関節の病理の観点から、Hydrostatin−SN10及びPEG−SN10は、顕著な抗炎症効果を有し、Th1/Th2及びTh17/Tregの比率の不均衡を調節することができ、即ち、Hydrostatin−SN10及びPEG−SN10は、免疫調節により抗関節リウマチの作用を発揮することができる。
前記研究の結果は、選択制TNFR1拮抗ペプチドHydrostatin−SN10及びPEG−SN10は、いずれも良好な抗関節リウマチの作用を有することを示している。本発明は、関節リウマチを防止及び治療するための有効な薬物を提供する。
Hydrostatin−SN10のHPLC分析結果である。 Hydrostatin−SN10のMS分析結果である。 BIAcore(SPR技術)によるHydrostatin−SN10とTNFR1との結合能の分析を示す。図3Aは、SN10とTNFR1の相互作用を示し、結合解離定数KD値は約2.8μMである。図3Bは、SN10とTNF−αとが結合しないことを示す。図3Cは、TNF−α−TNFR1結合に対するSN10の競合阻害作用を示す(TNFR1がチップ上にある)。図3Dは、TNF−α−TNFR1結合に対するSN10の競合阻害作用を示す(TNF−αがチップ上にある)。図3Eは、TNF−α−TNFR2結合に対するSN10の競合阻害作用を示す。 MST技術によるHydrostatin−SN10とTNFR1との結合能の分析ことを示す。図4Aは、SN10とTNFR1との相互作用を示し、結合解離定数KD値が約2.8μMである。図4Bは、SN10とTNF−αとが結合しないことを示す。図4Cは、SN10とTNFR2とが結合しないことを示す。図4Dは、TNFR1−TNF−α結合に対するSN10の競合阻害作用を示す(TNFR1蛍光マーカー)。図4Eは、TNFR1−TNF−α結合に対するSN10の競合阻害作用を示す(TNF−α蛍光マーカー)。図4Fは、TNFR2−TNF−α結合に対するSN10の競合阻害作用を示す(TNFR2蛍光マーカー)。 CIAマウスの足の裏の腫脹に対するHydrostatin−SN10及びPEG−SN10の改善状況を示す。 CIAマウス臨床スコアに対するHydrostatin−SN10及びPEG−SN10の改善状況を示す。 CIAマウスコラーゲン特異的抗体IgG及び血清中の炎症性因子に対するHydrostatin−SN10及びPEG−SN10の影響(n=6)を示す。 CIAマウス後肢関節に対するHydrostatin−SN10及びPEG−SN10の影響を示す(n=12)。 CIAマウス骨梁に対するHydrostatin−SN10及びPEG−SN10の影響を示す(n=12)。 CIAマウス骨梁パラメーターに対するHydrostatin−SN10及びPEG−SN10の影響を示す(n=12)。 CIAマウス足首関節病変病に対するHydrostatin−SN10及びPEG−SN10の影響を示す組織切片HE染色光学顕微鏡写真である。図11Aは正常群、図11Bはモデル群、図11CはHydrostatin−SN10、図11DはPEG−SN10、図11Eはインフリキシマブ群である。 CIAマウスTNF−αの発現量に対するHydrostatin−SN10及びPEG−SN10の影響を示す。図12Aは正常群、図12Bはモデル群、図12CはHydrostatin−SN10、図12DはPEG−SN10、図12Eはインフリキシマブ群である。 CIAマウスTRAPの発現量に対するHydrostatin−SN10及びPEG−SN10の影響を示す。図13Aは正常群、図13Bはモデル群、図13CはHydrostatin−SN10、図13DはPEG−SN10、図13Eはインフリキシマブ群である。 CIAマウスTreg細胞におけるFoxp3の発現量に対するHydrostatin−SN10及びPEG−SN10の影響を示す(n=6)。 CIAマウスTreg細胞におけるFoxp3の発現量に対するHydrostatin−SN10及びPEG−SN10の影響を示す(n=6)。 CIAマウスT細胞におけるTh1、Th2、Th17の百分率に対するHydrostatin−SN10及びPEG−SN10の影響を示す(n=6)。 CIAマウスT細胞におけるTh1、Th2、Th17の百分率に対するHydrostatin−SN10及びPEG−SN10の影響を示す(n=6)。
以下、実施例により本発明の具体的な実施形態を詳しく説明する。
以下の実施例中の実験方法は、特に明記しない限り、通常の方法である。
実施例1で製造されるHydrostatin−SN10を用いて実施例2−5の実験を行う。以下の実施例で用いられるPEG−SN10は、強耀生物科技有限公司によって合成されたものであり、HPLCにより検出した純度は98%以上である。
(実施例1)
マダラウミヘビに由来する選択性TNFR1拮抗ペプチドHydrostatin−SN10の合成
ポリペプチド固相合成技術によりHydrostatin−SN10を合成し、HPLC(図1)及びMS(図2)によりその純度及び分子量を分析した結果、純度>97%、分子量1250.29g/molであった。
(実施例2)
BIAcoreによるHydrostatin−SN10とTNFR1との結合能の分析
1、ベースラインレベルに達するまで、泳動用緩衝液を10μl/minの流速でCM−5センシングチップに設けられたチャンネルに通過させた。
2、機器推奨緩衝液によりチップの各チャンネルの表面反応基を活性化した。
3、EP緩衝液でTNFR1及びTNFR2の凍結乾燥粉末を溶解し、チップの表面に包まれるように一定の濃度で試料を注入し、さらに、1mol/Lのエタノールアミンでチップをブロックした。なお、適切な再生条件を選択するために、動力学曲線を測定する前に再生条件をテストする必要がある。
4、ベースラインが安定した後、一連の濃度のポリペプチドを注入し、中間濃度のポリペプチドを1回注射し、各濃度の応答値を記録した。
図3に示すように、Hydrostatin−SN10は、TNFR1と直接作用することができ、TNFR1との結合能が約2.8μMであり、Hydrostatin−SN10とTNF−αが結合せず、TNFR1とTNF−αとの相互作用を競合的に阻害することができる。
(実施例3)
MSTによるHydrostatin−SN10とTNFR1との結合能の分析
1、Hydrostatin−SN10とTNF−α、TNFR1、TNFR2との相互作用
1:1の希釈比率で一連のグラジエント濃度のHydrostatin−SN10を調製し、蛍光マーカーTNF−α/TNFR1/TNFR2 200nMとHydrostatin−SN10とを等体積で均一に混合した後、暗所で30分間インキュベートし、次いで、毛細管で適量のサンプルを取って検出し、相対蛍光値の時間軌跡及び熱泳動(Thermophoresis)の用量反応曲線を観察し、ソフトウェアNTAffinityAnalysis v2.0.2によりシミュレートして親和性KD値を計算し、特異的結合の傾向があるか否かを判断した。
2、TNF−αとのTNFR1/TNFR2との結合に対するHydrostatin−SN10の競合阻害作用
1:1の希釈比率で一連のグラジエント濃度のTNF−αを調製し、蛍光マーカーTNFR1/TNFR2(200nM)とTNF−αとを等体積で均一に混合した後、暗所で30分間インキュベートし、次いで、毛細管で適量のサンプルを取って検出し、ソフトウェアによりシミュレートして陽性対照TNFR1/TNFR2及びTNF−αのKD値を求め、400nMのTNFR1と400μMのHydrostatin−SN10を等体積で混合した後、さらに一連の濃度のTNF−αと等体積で混合し、30分間インキュベートした後、毛細管で適量のサンプルを取って検出し、ソフトウェアによりシミュレートしてKD値を求めた。Hydrostatin−SN10添加前後のTNF−α飽和濃度、応答値振幅及び親和性定数KD値の変化を比較した。
3、TNF−αとTNFR1/TNFR2との結合に対するHydrostatin−SN10の競合阻害作用(方法は前記2と同じ)
図4に示すように、MST実験の結果から分かるように、Hydrostatin−SN10は、標的特異的であり、TNFR1と直接相互作用することができ、TNFR1との結合能が約2.8μMであり、TNF−α、TNFR2に結合せず、TNFR1のみに結合し、選択性を有し、TNFR1とTNF−αとの相互作用を競合的に阻害することができる。
(実施例4)
SDラット体内のHydrostatin−SN10及びPEG−SN10の血漿半減期の検出。
Genzyme社から購入したELISAキットを用いて、製品説明書に従って測定した。ヘパリンで処理した50μL毛細管により後眼窩から血清サンプルを採取し、処理後の1min、2min、3min、5min、10min、15min、20min、30min、45min、1h、2h、4h、6h、8hに血液サンプルを収集した。2時間静置した後、サンプルを遠心分離し、得られた上澄みを検出まで−20℃で貯蔵した。
表1に示すように、PEGで修飾したPEG−SN10の血漿半減期は、Hydrostatin−SN10の血漿半減期よりも長くなった。
実施例5:関節リウマチに対するHydrostatin−SN10及びPEG−SN10の治療作用
一、実験動物
DBA/1マウス、雄性、8〜10週齢、体重18〜20g、30匹。
二、試薬
ウシII型コラーゲン(Bovine Type II Collagen,Chondrex)、完全フロイントアジュバント(Complete Freund’s Adjuvant,Chondrex)、不完全フロイントアジュバント(Incomplete Freund’s Adjuvant,Chondrex)、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識IgG抗体(Ebioscience)、マウスIL−17ELISA検出キット(Ebioscience)、マウスLEGENDplexTM多因子(TNF−α、IL−6、IL−10、IFN−γ) フロー検出キット(Biolegend、米国)、True−NuclearTM Mouse Treg FlowTM Kit(FOXP3 Alexa Fluor(登録商標)488/CD4 APC/CD25 PE、美国)、FITC anti−mouse CD3(Biolegend、美国)、PE/Cy7anti−mouse CD4(Biolegend、美国)、PerCP/Cy5.5anti−mouse IFN−γ(Biolegend、美国)、PE/DazzleTM 594anti−mouse IL−4(Biolegend、美国)、Alexa Fluor(登録商標)647 anti−mouse IL−17A (Biolegend、美国)、FOXP3 Fix/Perm Buffer(4x)(Biolegend、美国)。
三、実験方法
DBA/1マウスを使用し、3日間の適応後、体重を測定し、モデルを構築し始めた。正常群として6匹ランダムに選び、残りは実験群とした。
0日目:ウシII型コラーゲン(4mg/ml)を取り、等体積のCFA(4mg/ml)とボルテックス混合した後(好ましくは、水に滴下されて分散しないまで)、100ul/匹でマウスの尾根部に皮内注射した。
21日目:ウシII型コラーゲン(4mg/ml)を取り、等体積のIFA(4mg/ml)とボルテックス混合した後(好ましくは、水に滴下されて分散しないまで)、100ul/匹でマウスの尾根部に皮内注射した。30日目にモデル構築が成功することが観察され、同日からモデル群(PBS)、投与群−SN10(1600ug/kg)、投与群PEG−SN10(1600ug/kg)、インフリキシマブ群(4mg/kg)に対して1回/日で腹腔内注射により18日間連続して投与した。
四、実験結果
Graphpad Prism5によりデータに対してOne−Way ANOVA統計分析を行い、P<0.05である場合、差が統計学的に有意である。*はP<0.05、**はP<0.01、***はP<0.001を示す。
1.マウス関節炎指数スコアに対するHydrostatin−SN10、PEG−SN10の影響
図5、図6に示すように、初回予防接種の29後、各群のマウスの関節炎指数は徐々に高くなり、つまり、炎症は徐々に悪化した。時間の経過につれて、マウス後肢の腫脹の程度は徐々に軽減したが、関節は強直又は奇形が発生し、最高スコアに達した。モデル群と比較して、投与群Hydrostatin−SN10及びPEG−SN10は、いずれも関節炎指数が減少し、症状の進行が遅くなった。
2.CIAマウス血清中のコラーゲン特異的抗体及び炎症性因子に対するHydrostatin−SN10、PEG−SN10の影響
ELISAキット及び多因子キットにより各群マウスの血清中のコラーゲン特異的抗体IgG、炎症誘発性因子IL−17、TNF−α、IL−6、IFN−γ、及び抗炎症性因子IL−10の含有量を測定した。各群の含有量を図7に示す。正常対照群と比較して、モデル群マウスの血清中のコラーゲン特異的抗体IgG及び炎症誘発性因子IL−17、TNF−α、IL−6、IFN−γの含有量は顕著に高いが、抗炎症性因子IL−10の含有量は正常群と差がない。モデル群と比較して、投与群Hydrostatin−SN10、PEG−SN10は、いずれも血清中のコラーゲン特異的抗体IgG及び炎症誘発性因子IL−17、TNF−α、IL−6、IFN−γの含有量を顕著に減少させ、抗炎症性因子IL−10の含有量を顕著に増加させることができる。
3.CIAマウス骨破壊に対するHydrostatin−SN10、PEG−SN10の影響のMicro−CT検出
図8に示すように、マウス後肢のMicro−CT検査結果から明らかであるように、正常群は、関節面が滑らかで、関節構造がはっきりと見え、CIAモデル群は、関節面が粗く、骨破壊が重度であり、投与群Hydrostatin−SN10、PEG−SN10及び陽性薬インフリキシマブ群は、骨破壊の程度が顕著に軽減された。
図9に示すように、マウス骨梁のMicro−CT結果から明らかであるように、正常群は、骨梁構造が完全であり、CIAモデル群は、正常群と比較して骨破壊が深刻であり、顕著な空洞があり、Hydrostatin−SN10、PEG−SN10及び陽性薬インフリキシマブ群は、モデル群と比較して、骨破壊の程度が顕著に軽減された。
図10に示すように、骨密度(BMD)、骨体積/組織体積(BV/TV)、骨面積/組織体積(BS/TV)、骨梁の数(Th.N)、骨梁の厚さ(Tb.Th)、骨表面積/骨体積(BS/BV)、骨梁のパターンファクター(Tb.pf)、骨梁の分離度(Tb.sp)などの骨パラメーターを分析することにより、骨破壊に対するHydrostatin−SN10、PEG−SN10の緩和状況を分析した。結果から明らかであるように、正常群と比較して、モデル群は、骨密度(BMD)、骨体積/組織体積(BV/TV)、骨面積/組織体積(BS/TV)、骨梁の数(Th.N)、骨梁の厚さ(Tb.Th)などのパラメーターが顕著に低下し、骨表面積/骨体積(BS/BV)、骨梁のパターンファクター(Tb.pf)、骨梁の分離度(Tb.sp)などのパラメーターが顕著に向上し、Hydrostatin−SN10及びPEG−SN10群は、モデル群と比較して、骨密度(BMD)、骨体積/組織体積(BV/TV)、骨面積/組織体積(BS/TV)、骨梁の数(Th.N)、骨梁の厚さ(Tb.Th)などのパラメーターが顕著に向上し、骨表面積/骨体積(BS/BV)、骨梁のパターンファクター(Tb.pf)、骨梁の分離度(Tb.sp)などのパラメーターが顕著に低下した。
4.CIAマウス関節破壊に対するHydrostatin−SN10、PEG−SN10の影響のHE染色観察
図11に示すように、マウス関節のHE染色結果から明らかであるように、正常群マウスでは、関節包滑膜組織が完全で、繊維膜がはっきりと見え、嚢胞腔に滲出が観察されず、滑膜関節リウマチを予防及び治療するための薬物滑膜組織には明らかな炎症細胞浸潤が観察されなかった。CIAモデル群では、重度の関節構造損傷、滑膜過形成、重度の軟骨損傷、重度の炎症性細胞浸潤が観察され、投与群Hydrostatin−SN10では、完全な関節構造、重度の滑膜過形成、関節リウマチを予防及び治療するための薬物より重度の炎症性細胞浸潤が観察された。PEG−SN10及びインフリキシマブでは、関節構造が完全であり、炎症性細胞浸潤が弱く、関節損傷が顕著に軽減した。
5. CIAマウスTNF−α発現量に対するHydrostatin−SN10、PEG−SN10の影響の免疫組織化学的観察
以前の結果は、Hydrostatin−SN10が標的特異的であり、TNFR1と特異的に結合できるが、TNF−α、TNFR2と結合せず、かつHydrostatin−SN10がTNF−αとTNFR1の結合を競合的に阻害できることを示した。これによって、TNF−αの発現量は減少した。図12に示すように、正常群と比較して、モデル群TNF−αの発現量は増加し、モデル群と比較して、Hydrostatin−SN10、PEG−SN10群の関節中のTNF−αの発現量は減少した。
6.関節中の破骨細胞に対するHydrostatin−SN10、PEG−SN10の影響のTRAP染色観察
破骨細胞は、骨組織成分の一種であり、骨吸収の機能を果たす。破骨細胞は、骨芽細胞に機能的に対応している。酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ(TRAP)は、破骨細胞の特異的マーカー酵素であり、その発現と分泌は破骨細胞の分化と機能に密接に関連している。図13に示すように、正常群と比較して、CIAモデル群マウスでは、酒石酸抵抗性酸ホスファターゼが顕著に増加し、モデル群と比較して、Hydrostatin−SN10、PEG−SN10が酒石酸抵抗性酸ホスファターゼの含有量を減少させ、破骨細胞の数を減少させることができ、これにより、骨組織に対する侵食が減少する。
7.CIAマウスTreg細胞中のFoxp3の発現量に対するHydrostatin−SN10、PEG−SN10の影響
Treg細胞は、特殊な免疫調節細胞であり、免疫不応答性及び免疫抑制性の2つの特性を有する。細胞間での直接接触及び阻害性サイトカインの分泌などによりB細胞、T細胞などの免疫細胞の活性及び機能を阻害することができ、自己免疫疾患の予防に非常に重要である。
証拠から分かるように、RA患者体内のTreg細胞の数が変化し、これは、Treg細胞の異常がRAの発症と密接に関連していることを示している。Foxp3は、Treg細胞中で特異に発現し、Tregの増殖及び機能に重要な役割を果たすため、Tregのバイオマーカーとして適用できる。図14、15に示すように、モデル群と比較して、Hydrostatin−SN10、PEG−SN10及びインフリキシマブ群は、いずれもFxop3の発現量が顕著に向上し、即ち、Treg細胞の数が増加し、免疫抑制作用が顕著に強くなる。これによって、関節リウマチの発症及び発展は阻害される。
8.CIAマウス脾臓中のTh1、Th2、Th17の発現量に対するHydrostatin−SN10、PEG−SN10の影響
Th1は、主にIFN−γを分泌し、細胞性免疫応答を媒介し、炎症性因子の生成及びマクロファージの活性化を誘発し、主に自己免疫疾患の発生を誘発する。Th2は、主にIL−4を分泌し、液性免疫を媒介し、単球を阻害し、炎症性サイトカインの放出を促進する。また、Th1/Th2比の不均衡は、RAの発症メカニズムに重要な役割を果たす。
研究から明らかであるように、Th17細胞は、IL−17を高度に分泌し、マトリックスメタロプロテイナーゼ−1、IL−1β、TNF−αなどが分泌されるようにFLSを刺激することにより、RAの骨破壊及び組織の炎症性損傷へのNF−κB受容体活性化因子リガンドの関与などを協働誘発する。脾臓細胞中のヘルパーT細胞の発現を測定することによりその作用を観察した。図16、17に示すように、モデル群と比較して、Hydrostatin−SN10、PEG−SN10及びインフリキシマブ群では、IFN−γ、IL−17の発現量が顕著に減少し、IL−4の発現量が増加し、つまり、Hydrostatin−SN10、PEG−SN10は、Th1、Th2、Th17の変化を調節することにより、炎症性因子の発現及び放出を阻害し、骨破壊を軽減する可能性がある。
以上の結果は、Hydrostatin−SN10及びPEG−SN10は、II型コラーゲン誘発マウス関節リウマチ動物モデルを効果的に治療できることを示している。
以上本発明の好適な実施例を具体的に説明したが、本発明は、これらの実施例に限定されない。当業者は、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で、多種の同等の変形又は置換を行うことができ、これらの同等の変形又は置換は、全て本発明の特許請求の範囲に含まれる。

Claims (9)

  1. 関節リウマチを予防及び治療するための薬物の製造における選択性TNFR1拮抗ペプチドHydrostatin−SN10の使用であって、
    前記選択性TNFR1拮抗ペプチドHydrostatin−SN10のコーディング遺伝子のヌクレオチド配列は、配列番号1に示され、前記選択性TNFR1拮抗ペプチドHydrostatin−SN10のアミノ酸配列は、配列番号2に示される、使用。
  2. 前記選択性TNFR1拮抗ペプチドHydrostatin−SN10の分子量は1250.29ダルトンである、請求項1に記載の使用。
  3. 前記関節リウマチを予防及び治療するための薬物は、TNFR1を選択的に拮抗する、請求項1に記載の使用。
  4. 前記関節リウマチを予防及び治療するための薬物は、選択性TNFR1拮抗ペプチドHydrostatin−SN10を唯一の活性成分とするか、又は選択性TNFR1拮抗ペプチドHydrostatin−SN10を含む医薬組成物である、請求項1に記載の使用。
  5. 関節リウマチを予防及び治療するための薬物の製造におけるmPEG2000によって修飾された選択性TNFR1拮抗ペプチドPEG−SN10の使用であって、
    前記mPEG2000のカルボキシル基は、Hydrostatin−SN10のペプチド鎖のN端にあるアスパラギン酸の遊離アミノ基に共有結合し、
    前記Hydrostatin−SN10のアミノ酸配列は、配列番号2に示される、使用。
  6. 前記mPEG2000の平均分子量は2000ダルトンである、請求項5に記載の使用。
  7. 前記関節リウマチを予防及び治療するための薬物は、PEG−SN10を唯一の活性成分とするか、又はPEG−SN10を含む医薬組成物である、請求項5に記載の使用。
  8. 前記医薬組成物及び薬剤学的に許容される添加剤を用いて医薬製剤を製造する、請求項4又は7に記載の使用。
  9. 前記医薬製剤は、錠剤、顆粒剤、分散剤、カプセル剤、ソフトカプセル剤、滴丸剤、注射剤、粉末注射剤又はエアロゾル剤である、請求項8に記載の使用。
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