以下、本発明を適用したタイヤリフタの一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
(1.タイヤリフタ1の全体構成)
まず、本実施形態のタイヤリフタ1の全体構成について、図1乃至図8を参照しつつ説明する。図1はキャリッジ30上昇時のタイヤリフタ1を右斜め前方から視た斜視図、図2はキャリッジ30下降時のタイヤリフタ1を右斜め前方から視た斜視図、図3はキャリッジ30上昇時のタイヤリフタ1を右斜め後方から視た斜視図、図4はキャリッジ30上昇時のタイヤリフタを示す正面図である。図5は、図4に示すタイヤリフタ1のV−V線断面図、図6は同じくVI−VI線拡大断面図、図7は同じくVII−VII線拡大断面図である。図8は、制御装置60のカバーを取り外して示すタイヤリフタ1の背面図である。
タイヤリフタ1は、図1乃至図8に示すように、床面からリフトアップされた車両に対するタイヤの着脱作業を補助する装置であって、移動自在な基台10と、基台10に立設された支柱20と、タイヤを支承するラックであるキャリッジ30と、モータ40を有する昇降機構50と、制御装置60と、リモコン70と、バッテリ80とを備えて構成される。
基台10は、左右に延びる本体フレーム11と、本体フレーム11の下部から前方に延びる左右一対の脚部フレーム12とを有し、側面視でL字形且つ平面視でコ字状を呈するフレーム部材である。本体フレーム11の上面右端にはハンドル13が立設されている。ハンドル13は、上部で左へ屈曲して本体フレーム11左右幅と略同等の長さに延設されて逆L字状を呈し、上部の左右両側には前方側に傾斜して作業者が手で握るための握り部13aが設けられている。また、ハンドル13の右側の握り部13aよりもやや中央寄りに、リモコン70を着脱自在に保持可能なリモコンホルダ13hが設けられている。
本体フレーム11の後端の左右両側には、自在輪である後輪11wが設けられ、一対の脚部フレーム12の前端には固定輪である前輪12wが設けられている。よって、作業者がハンドル13を掴んで押したり引いたりすることで前輪12w及び後輪11wが転動し、タイヤリフタ1を床面上で自在に移動可能となっている。一対の脚部フレーム12には、側方へ張り出して床面に向かって傾斜する板状のタイヤ乗り込みステップ12sが取り付けられている。キャリッジ30を下限まで下降させた状態で、タイヤリフタ1の左側又は右側の床面からタイヤTを転がしてタイヤ乗り込みステップ12s上に通らせることで、キャリッジ30へ円滑に乗り込ませることができる。本体フレーム11下部の前面から一対の脚部フレーム12内側に沿ってコ字形の板状に張り出す補強板11aが設けられており、補強板11a上面には、一対のタイヤ受けローラ32の直下に一対のローラ止め部11bが設けられ、キャリッジ30が下限位置まで下降した時にタイヤ受けローラ32に当接して回り止めをするようになっている。
支柱20は、中空角柱状を呈するアルミニウム製部材であって、基台10の本体フレーム11の左端近傍位置に立設されている。支柱20の前面には、上下に延びてスリット状に開口するガイド部20aが設けられ、昇降機構50によって昇降動作するキャリッジ30を案内するようになっている。
キャリッジ30は、左右に延びるキャリッジ本体31と、キャリッジ本体31の左右両端から前方に延びてタイヤを下側から支承する左右一対のタイヤ受けローラ32とを備えている。キャリッジ本体31は、支柱20に対向する左寄りの部分が縦長に形成されると共に、背面がガイド部20a内に挿入されて昇降機構50のチェーン53に連結固定されている。また、キャリッジ本体31のガイド部20a内に挿入される部分には、上下に左右一対のガイドローラ31rが設けられ、ガイド部20a内側面に接触して昇降が案内されるようになっている。また、キャリッジ本体31上部の前面には、タイヤTの側面を受け止めるためのバンパ33が設けられている。さらに、キャリッジ本体31の左右両端には、タイヤTの側面を支持する支持バー34が立設され、一方の支持バー34には、リモコン70を着脱自在に保持可能なリモコンホルダ35が設けられている。この支持バー34は、リフトアップされた車両のタイヤTに対してキャリッジ30の位置を上下又は前後に微調整する際に、作業者が握る部分としての役割も有しており、その際にリモコンホルダ35にリモコン70が装着される。
昇降機構50は、モータ40の駆動によりキャリッジ30を支柱20に沿って昇降させる機構であり、モータ40と、減速機54と、駆動スプロケット51と、従動スプロケット52と、チェーン53と、カップリング55とを備えて構成される。
モータ40は、ブレーキ付きモータであって、例えば、ロータの回転を拘束する電磁式のブレーキ機構42を有するブラシレスDCモータによって構成される。モータ40は、本体フレーム11の下部に取付け固定され、バッテリ80から供給される電力により制御装置60を介して駆動制御される。モータ40には、回転検出部41が設けられており、ロータ角度情報を制御装置60に対して出力するようになっている。回転検出部41は、例えば、ホールセンサによって構成される。
駆動スプロケット51は、本体フレーム11において支柱20の直下に配置され、カップリング55を介して減速機54の出力軸と接続され、減速機54の入力はモータ40の出力軸と接続されている。従動スプロケット52は、支柱20内の上部で左右を軸方向として回転可能に軸支されている。チェーン53は、複数のチェーン素子の隣同士を連結して駆動スプロケット51と従動スプロケット52との間に掛け渡され、前面側の一端がキャリッジ本体31の上端に、前面側の他端がキャリッジ本体31の下端に連結固定され、全体として無端ループ状に形成されている。
そして、昇降機構50は、モータ40の回転駆動力が駆動スプロケット51を介してチェーン53に伝達され、チェーン53が駆動スプロケット51と従動スプロケット52との間を往復移動することで、キャリッジ本体31背面でチェーン53に連結されたキャリッジ30が昇降動作する。
制御装置60は、モータ40を制御する装置であり、モータ40と、リモコン70と、バッテリ80とに電気的接続が図られている。尚、制御装置60の電気的構成については、後述の(2.タイヤリフタ1の電気的構成)で詳細に説明する。
リモコン70は、制御装置60へ昇降操作の指令を行うための操作入力装置である。リモコン70は、上ボタン70aと下ボタン70bと中ボタン70cとを有し、押下されたボタンの種類に対応する信号を、ケーブルを介して制御装置60へ送信できるようになっている。
バッテリ80は、公知の二次電池からなる直流電源であって、制御装置60へ電力を供給する。バッテリ80は、支柱20の背面に取付けられた充電器71により外部の交流電源から充電が行われる。充電器71にはLEDを有するバッテリインジケータ71aが設けられ、バッテリ80の残存容量はLEDの発光色によって表示される。例えば、バッテリインジケータ71aは、バッテリ80の残存容量が多い時は緑色を発光し、残存容量が少ない時は赤色を発光するようにしてもよい。充電器71の上面には、非常停止ボタン72が設けられている。昇降機構50が昇降動作をしている最中に非常停止ボタン72が押下されると制御装置60へ信号が送信され、昇降機構50が非常停止される。
(2.タイヤリフタ1の電気的構成)
次に、タイヤリフタ1の電気的構成について図9を参照しつつ説明する。図9は、タイヤリフタ1の電気的構成を示すハードウエアブロック図である。タイヤリフタ1の電気的構成は、充電器71と、バッテリ80と、非常停止ボタン72と、リモコン70と、制御装置60と、モータ40と、回転検出部41と、ブレーキ機構42とを備えて構成される。制御装置60以外の各構成については説明済みであるので、以下、制御装置60の構成を中心に説明する。
制御装置60は、図9のブロック図に示すように、演算部61と、電圧検出部62と、モータドライバ63と、電流検出部64と、ブレーキ制御部65とを備えて構成される。
演算部61は、中央演算部としてのCPUと、記憶部としてのROM及びRAM等と、を備えて構成される公知のマイコン(マイクロコンピュータ)である。
電圧検出部62は、バッテリ80から供給される電圧を検出する回路である。電圧検出部62で検出された電圧は演算部61においてモータ電力値計算に使用される。
モータドライバ63は、演算部61によってモータ回転制御情報に応じてモータ40に供給する電力への変換を行うモータ駆動回路である。モータ40は、モータドライバ63から供給される電力によって回転駆動される。
電流検出部64は、モータ40に流れる電流値を検出する。電流検出部64は、シャント抵抗を用いて電圧降下の計測によって電流検出する回路をモータドライバ63に設ける構成としてもよいし、専用の電流センサを用いる構成としてもよい。電流検出部64は、電流値をA/D変換するA/D変換器を含み、A/D変換された電流値が演算部61へ出力される。
ブレーキ制御部65は、演算部61からの指令に応じてブレーキ機構42を制御し、モータ40のロータの拘束または解放を行わせる。
(3.タイヤリフタ1の制御的構成)
次に、タイヤリフタ1の制御的構成について、図10を参照しつつ説明する。図10は、タイヤリフタ1の制御的構成を示すブロック図である。
制御装置60は、作業者によってリモコン70の昇降ボタン(上ボタン70a又は下ボタン70b)が押下されると、昇降指令入力制御部601で、リモコン70からの昇降指令信号が入力され、位置制御部602からの昇降状況とのインタロックを取って位置制御部602へ昇降指令を出力する。
位置制御部602は、モータ40及びブレーキ機構42を含む昇降機構50の動きを制御する。位置制御部602は、後述する当て止め制御も行う。尚、本明細書において、「当て止め」とは、キャリッジ30の昇降動作中にタイヤ等の他の物体に当接したことを検出し(「当て止め検出」と称する。)、昇降動作を停止させることを意味するものとする。位置制御部602は、具体的には、昇降指令入力制御部601からの昇降指令と、ロータ位置・回転速度・位置演算部607からの位置情報と、モータ電力値演算部606からのモータ電力値とが入力されると、ブレーキ制御部65へのブレーキ制御指令と、速度制御部603へのモータ回転速度指令とを出力する。モータ回転速度指令には、モータ40の加減速及び停止が含まれる。当て止め検出には、モータ電力値演算部606からのモータ電力値を使用する。
速度制御部603は、位置制御部602から入力された速度指令値と、ロータ位置・回転速度・位置演算部607から入力されたモータ回転速度値とに基づいてモータ指令値を生成し、モータ回転制御部604へ入力する。モータ40の回転はPWMで制御されるので、モータ指令値はPWMの値すなわちPWMデューティ値である。モータ40に加わる負荷の変動に影響を受けることなく指令速度を維持するために、モータ指令値を一定とせず、モータ回転速度と回転速度指令値とを比較してフィードバック制御を行う。本実施形態では、PIDフィードバック制御を実装する。
モータ回転制御部604は、速度制御部603から入力されたモータ指令値と、ロータ位置・回転速度・位置演算部607から入力されたロータ位置情報とに基づいて、PWM信号を生成し、モータドライバ63へ入力する。
電圧検出制御・演算部605は、電圧検出部62にA/D変換を指令し、電圧値の取り込みを行う。
モータ電力値演算部606は、電流検出制御・演算部608から取得した電流値と、電圧検出制御・演算部605から取得した電圧値とを乗じることによりモータ電力値を算出する。
ロータ位置・回転速度・位置演算部607は、回転検出部41からモータ40のホールセンサ情報を受け取り、ロータ位置の割り出しを行う。モータ40の回転速度は、ホールセンサ情報のエッジ数を時間当たりでカウントすることにより求める。尚、モータ40の回転速度は、ホールセンサ情報のエッジ間の時間を計測することにより求めてもよい。モータ40によって駆動されるキャリッジ30の昇降位置は、ホールセンサ情報のエッジと値とを判定することでモータ40の回転方向を判定し、原点を基準にしてエッジをカウントすることで求める。
電流検出制御・演算部608は、電流検出部64にA/D変換を指令し、電流値の取り込みを行う。
(4.メイン制御処理の流れ)
次に、制御装置60によって実行されるメイン制御処理の流れについて、図11を参照しつつ説明する。図11は、メイン制御処理全体の流れを示すフローチャートである。メイン制御は、ステップ1(以下、S1と略記する。他のステップも同様。)で、システムを初期化した後、接点入力処理S2、リフト指令処理S3、位置制御処理S4、及び速度フィードバック処理S5を順に繰り返し実行する無限ループとなっている。以下、接点入力処理S2〜速度フィードバック処理S5の各処理内容について説明する。
接点入力処理S2では、昇降押し釦SW,非常停止SW,下限LS等接点入力状態をマイクロコンピュータである演算部61のI/Oポートから読み取り、チャタリング対応処理をして内部の接点入力情報として保持する。仕様に応じて、長押しやシャットダウンやリセット等の操作用に特定のキー操作シーケンスを認識する処理を行う。
リフト指令処理S3では、操作SW等の外部或いは内部の情報からリフト動作のきっかけを作る処理をする。接点入力処理S2によって作成された接点入力情報に基づいて、上昇、下降、停止等の動作を始める起点の処理を行う。リフト指令処理S3では、さらに、当て止めした後の逃がし動作、異常監視、システムのシャットダウンなどの処理も行う。リフト指令処理S3の内容は、後述の(5.リフト指令処理の流れ)で詳細に説明する。
位置制御処理S4では、リフト指令処理S3での要求に応じた昇降動作や当て止めの監視を行う。位置制御処理S4の内容は、後述の(7.位置制御処理の流れ)で詳細に説明する。
速度フィードバック処理S5では、位置制御処理S4から出力される速度指令に基づいて、モータ40が指定した速度になるようにフィードバック処理する。
(5.リフト指令処理の流れ)
次に、リフト指令処理S3の流れについて、図12を参照しつつ説明する。図12は、リフト指令処理全体の流れを示すフローチャートである。リフト指令処理S3は、リモコン70の操作ボタンの外部或いは内部情報から昇降機構50における動作の契機を作る処理をする。昇降機構50の基本動作となる上昇,下降,停止の各動作は、一旦、仮想コマンドの形で動作指令が発行され、その仮想コマンドを解釈して昇降機構50の動作が実行される。
尚、仮想コマンドを介して昇降機構50を動作させることにより、様々な条件で同一の動作が実行される場合に、処理を共通化することでプログラムの保守がし易くなり且つサイズもコンパクトになるという効果がある。例えば、停止動作は、リモコン70で押下中の上ボタン70aを離した時、非常停止ボタン72が押下された時、過負荷や電圧低下などのエラーが発生した時など、種々の条件成立で共通の仮想コマンドが発行されて実行される。
リフト指令処理S3が開始されると、最初にS30でエラーチェックを行う。エラーチェックS30では、昇降機構50が異常な状態かどうか監視し、異常発生を検出した場合は内部のエラーコードをセットして非常停止仮想コマンドを発行し、さらに作業者へのエラー報知の表示等を行う。異常な状態の例としては、モータ40の過負荷,バッテリ80の電圧低下,モータ40の回転検出部41の信号異常,昇降中に昇降機構50が傾いた又は移動を検出した等がある。
次に、S31で、電源管理を行う。本実施形態のタイヤリフタ1では、電源スイッチが設けられておらず、電源スイッチ操作の手間を省略したり、電源切り忘れによる電池消耗を防いだりする為にソフトウェアで電源管理可能に構成されている。例えば、昇降動作が所定時間行われない場合は自動的に電源遮断される。電源遮断後に上昇動作を行いたい場合は、リモコン70の上ボタン70aを押下するだけで電源がオンになり、上昇動作が開始する。尚、所定時間以上の昇降動作が無い状態以外でも、特定操作によって電源遮断させたり再起動させたりするようにしてもよい。
次に、S32で、当て逃がし処理を行う。当て逃がし処理S32は、キャリッジ30のタイヤ等への当て止めによって昇降動作を停止した後、逆方向へ微小量だけ昇降させて、タイヤ等への押し当て状態を解除するための処理である。
次に、S33で、停止位置記憶処理を行う。停止位置記憶処理S33では、昇降停止中のキャリッジ30の現在の高さ位置を設定高さとして記憶する処理である。具体的には、停止状態でリモコン70の中ボタン70cを3回押下する記憶操作を行うと、その時の停止位置が設定高さとして記憶され、設定高さが記憶された状態で再度中ボタン70cを3回押下する消去操作を行うと、設定高さの記憶が消去される。すなわち、タイヤを外す為にキャリッジ30を当て止めした状態で、上記の記憶操作を行って設定高さを記憶させておけば、次にタイヤを取り付ける際に、先に記憶した設定高さで上昇動作を自動停止させることにより、キャリッジ30の高さ調整の手間を省くことができる。また、リフトアップされた車両のタイヤ交換をする場合は基本的に全てのタイヤTの高さは同じであるので、1本目のタイヤ取り外し時だけ当て止めを行って設定高さを記憶させておけば、2本目以降のタイヤでは1本目と同じ高さでキャリッジ30の上昇動作を自動停止することができる。
次に、S34で、下限LS(リミットスイッチ)受付処理を行う。下限LS受付処理S34では、図示しない下限LSがオンした時に位置情報の原点リセットを行うと同時にこの位置で昇降動作を停止する。すなわち、本実施形態では、回転検出部41を備えているのでキャリッジ30の位置情報は常に管理されているが、何らかの異常に備えて昇降下限位置に下限LSを設け、下限LSからの信号に基づいて下限LS受付処理S34を行う。
次に、S35で、非常停止SW(スイッチ)受付処理を行う。非常停止SW受付処理S35では、非常停止ボタン72の押下に基づいて非常停止が受け付けられ、非常停止仮想コマンドが発行される。操作者が昇降機構50を緊急で停止させたい場合に非常停止ボタン72を押下することで非常停止させることが出来る。尚、リモコン70において押下中の上ボタン70a又は下ボタン70bを離した場合は通常停止が行われる。通常停止と非常停止とでは、減速してモータ40がブレーキ機構42でロックされるまでの時間が異なる。通常停止は、極力衝撃が発生しないように時間をかけて昇降動作を停止するが、非常停止は最短時間で減速してモータ40をブレーキ機構42でロックする。
次に、S36で、停止SW受付処理を行う。停止SW受付処理S36では、リモコン70において押下中の上ボタン70a又は下ボタン70bを離した場合や、昇降中に他のボタンが押下された場合に停止が受け付けられ、停止仮想コマンドが発行される。押下中の上ボタン70aや下ボタン70bを離したり、例えば上昇中に下ボタン70bを押下したりした場合に停止仮想コマンドが発行され、通常停止する。
次に、S37で上昇SW受付処理を行う。上昇SW受付処理S37では、上昇条件を満たし且つ上ボタン70aが押下されると、上昇仮想コマンドが発行され、上昇動作が開始される。本実施形態では、リモコンホルダ13hにリモコン70の装着の有無を検知するスイッチが設けられており、リモコン70がリモコンホルダ13hに装着された状態で上ボタン70aが押下されると通常速度での上昇動作となり、リモコンホルダ13hから外された場合又は中ボタン70c押下中に上ボタン70aが押下されると低速での上昇動作となる。
次に、S38で、下降SW受付処理を行う。下降SW受付処理S38では、下降条件を満たし且つ下降ボタンが押下されると、下降仮想コマンドが発行され、下降動作が開始される。本実施形態では、リモコン70がリモコンホルダ13hに装着された状態で下降ボタンが押下されると通常速度での下降動作となり、リモコンホルダ13hから外された場合又は中ボタン70c押下中に下降ボタンが押下されると低速での下降動作となる。
次に、S39で仮想コマンド受付処理を行う。仮想コマンド受付処理S39では、リフト指令処理内の各ステップで発行された仮想コマンドが受け付けられ、仮想コマンドの種類に応じて、上昇,下降,停止動作を開始する為の準備処理を行う。これを受けて、位置制御処理S4で実際の動作が開始される。仮想コマンドが受け付けられると、受け付けた仮想コマンドは次の動作に備えてクリアされる。以上で、リフト指令処理を終了する。
(6.当て逃がし処理の流れ)
次に、当て逃がし処理S32の流れについて、図13、図14を参照しつつ説明する。図13は、当て逃がし処理の流れを示すフローチャートである。図14は、当て逃がし動作状態遷移処理の流れを示す状態遷移図である。
まず、S320で、当て止め中か否かを判定する。すなわち、S320では、位置制御処理S4で当て止め検出時に設定される当て止め検出フラグを監視する。当て止め検出フラグがオフの場合は当て止め中でないと判定し(S320:No)、本ルーチンを終了する。一方、当て止め検出フラグがオンの場合は当て止め中と判定し(S320:Yes)、当て逃がし動作状態遷移処理S321を行う。以下、当て逃がし動作状態遷移処理S321の内容について、図14の状態遷移図(ステートマシン図)を参照しつつ説明する。
当て止め停止監視状態ST3210では、当て止め停止監視を行う。すなわち、当て止め検出されてモータ40が停止しても、直ちにブレーキ機構42でロックされた完全停止した状態とはならないので、完全停止するまで監視する。位置制御処理S4内の停止判定及びモータ停止シーケンス処理が完了するまで、当て止め停止監視状態ST3210のまま監視を続け、完全停止を検出した後、次の反転開始遅延状態ST3211へ遷移する。
反転開始遅延状態ST3211では、反転開始の遅延を行う。すなわち、完全停止検出後、反転動作をする前に所定の遅延時間(例えば0.1秒程度)だけ待機する。遅延時間が経過した後、次の反転指令発行状態ST3212へ遷移する。
反転指令発行状態ST3212では、反転指令の発行を行う。すなわち、指定距離だけ反転動作するように仮想コマンドを発行する。例えば、上昇時に当て止めした場合は下降仮想コマンドを発行する。反転動作により昇降する距離は、任意に設定可能であり、数mmに設定される。例えば、上昇時に当て止めした場合の反転動作の距離を5〜10mm程度(例えば8mm)に設定すると、キャリッジ30のローラがタイヤTから下側へ僅かに離れるので、タイヤの取り外しを円滑に行うことができる。また、下降時に当て止めした場合の反転動作の距離は、上昇当て止め時の反転動作よりも小さい値(例えば、2〜3mm程度)に設定し、過度な応力が加わることを防止しつつ、タイヤ受けローラ32がローラ止め部11bに当接した状態を維持するようにしてもよい。反転動作の仮想コマンドを発行した後、次の反転完了監視状態ST3213へ遷移する。
反転完了監視状態ST3213では、反転完了の監視を行う。すなわち、反転動作が完了して完全停止するまで監視する。反転動作の完全停止が検出されたら、次の逃がし動作完了状態ST3214へ遷移する。
逃がし動作完了状態ST3214では、一連の逃がし動作シーケンスを完了させる。
(7.位置制御処理の流れ)
次に、位置制御処理S4の流れについて、図15を参照しつつ説明する。図15は、位置制御処理全体の流れを示すフローチャートである。位置制御部602は、昇降指令入力制御部601或いは他の処理から仮想コマンドが発行されると、位置制御処理を開始する。仮想コマンドには、上昇、下降、停止、非常停止の各コマンドがある。尚、昇降指令入力制御部601以外の処理から仮想コマンドが発行される典型的なケースは過負荷等のエラーが発生した場合であり、この場合は非常停止コマンドが発行され、位置制御部602で非常停止処理が実行される。
位置制御処理S4が開始されると、まず、S40で位置制御初期化を行う。位置制御初期化S40では、昇降動作に必要な値が初期化される。上昇の場合は、現在位置を開始点として上限位置を停止点にセットし、さらに加速終了位置、減速開始位置、減速終了位置、モータ回転速度、上昇用過負荷設定値、停止時のブレーキロックタイミングなどを設定する。停止や非常停止の場合は、現在のモータ回転数に基づいて位置を再セットして減速終了位置、モータ回転速度、停止時のブレーキロックタイミングなどを設定する。
次に、S41で当て止め情報初期化を行う。すなわち、当て止め検出に必要な初期閾値の設定、検出状態のクリア、モータ負荷情報のクリアなどを行う。
次に、S42で始動判定を行い、始動の場合(S42:Yes)、S43でモータ始動シーケンス処理を行う。モータ始動シーケンス処理S43を行う理由は、昇降機構50により昇降されるキャリッジ30の落下防止のために設けられたブレーキ機構42を、始動時に適切なタイミングでブレーキ解放する必要があるからである。例えば、上昇の場合、モータ40に予備トルクを発生させてからブレーキ解放する。このようにするのは、上昇の場合、ブレーキ解放後にモータ始動するとずり下がりが発生する恐れがあるので、これを防止するためである。また、ブレーキ解放する際は、指令出力から実際の機械動作までの遅延があるので、遅延時間を加味して実行する。モータ始動シーケンス処理S43の後、始動判定S42へ戻る。
S42で始動でない場合(S42:No)、S44で停止判定を行う。停止判定S44では、リモコン70において押下中の上ボタン70a又は下ボタン70bを離した場合や、現在の昇降位置が、設定高さ記憶部610bに記憶された設定高さに達した場合等に、「停止」と判定される。停止の場合(S44:Yes)、S45でモータ停止シーケンス処理を行う。モータ停止シーケンス処理S45を行う理由は、直ちにブレーキロックさせるとキャリッジ30の搭載物であるタイヤに衝撃が掛かり、ブレーキ機構42にも負担が掛かるからである。モータ停止シーケンス処理S45では、必要十分な程度まで減速後、ブレーキ動作遅延を加味しながら適切なタイミングでブレーキロックさせる。モータ40への指令も、ずり下がりが発生しない適切なタイミングで行う。モータ停止シーケンス処理S45に続いて、S46で停止後処理を行う。停止後処理S46では、積算距離や履歴情報等の保存を行い、位置制御処理を終了する。
一方、S44で停止でない場合(S44:No)、S47で加減速判定を行う。加減速判定S47を行う理由は、速度指令演算では、加減速の状態に応じて速度指令を生成するために、現在が加速中か、等速状態か又は減速中かを判定する必要があるからである。加減速判定S47では、現在位置と加速終了位置、減速開始位置を比較して状態判定を行う。
続いて、S48で速度指令演算を行う。速度指令演算S48では、加速中又は減速中は、予め作成された加減速マップに従って速度指令値を演算する。尚、速度指令値は、加減速マップを使わずに数値演算により求めてもよい。速度制御部603は、速度指令値に基づいてモータ速度制御を行う。
次に、S49で、負荷情報保存を行う。負荷情報保存S49では、モータ負荷情報の履歴をバッファに記憶する。モータ負荷情報の履歴を記憶する理由は、モータ負荷情報の変化に基づいて当て止め動作の検出を行うからである。モータ負荷情報の履歴は、記憶領域610内に設定されたリングバッファ610aにおいて、古い履歴情報を順次消去して新しいモータ負荷情報を書き込むことにより、リング状に更新される。
次に、S50で、当て止めが検出されたか否かを判定する。当て止め検出処理S50では、モータ負荷変動を示す電流値等に基づいて、当て止め、すなわちキャリッジ30がタイヤ等に当接したか否かを判定する。尚、当て止め検出処理S50については、後述の(8.当て止め検出処理)で詳細に説明する。当て止めが検出された場合(S50:Yes)、S51で当て止め指令を行う。当て止め指令S51では、非常停止の仮想コマンドを発行し、モータ40に停止動作をさせる。一方、当て止め検出処理S50で、当て止めが検出されなかった場合(S50:No)、S44以降の処理を繰り返す。
(8.当て止め検出処理)
次に、当て止め検出処理S50の内容について、図16を参照しつつ説明する。図16は、当て止め検出処理の流れを示すフローチャートである。当て止め検出、すなわち、キャリッジ30がタイヤ等の物体に当接したことの検出は、モータ負荷の単位時間当たりの増加量に基づく第1の判定を行い、第1の判定で当て止めが検出されなかった場合はモータ負荷の絶対値に基づく第2の判定を行う。モータ負荷の情報としては、電流検出部64で検出されたモータ電流値を用いるか、或いはモータ電流値に電圧検出部62で検出された電圧値を乗じて得られるモータ電力値を用いる。
具体的には、S500で、単位時間当たりのモータ電流増加量が所定の増加量閾値より大きいか否かを判定する(第1の判定)。モータ電流増加量は、現在のモータ電流値と履歴情報中のモータ電流値との差分により求めることができる。本実施形態では、モータ電流増加量を求めるために、モータ電流値の履歴情報が記憶領域610内のリングバッファ610aに逐次格納されている。例えば、10msのサンプリング間隔で18個分、すなわち180ms分のモータ電流値の履歴が保持される。リングバッファ610aは、旧い情報から、順次、新しい情報で上書きされる。
増加量閾値は、昇降機構50における3ステージ(加速、等速、減速)の昇降状態に対応して、加速用増加量閾値Zth1、等速用増加量閾値Zth2、減速用増加量閾値Zth3の3種類が予め設定され、マイコンである演算部61のROMに記憶されている。これらの増加量閾値Zth1〜Zth3は、Zth1>Zth2>Zth3、という大小関係となっている。つまり、加速状態ではモータ電流の変化が相対的に大きいことから閾値の値を大きくし、等速状態、減速状態と加速度の減少に対応して順に閾値の値を小さく設定することにより、当て止めの検出精度を確保している。
モータ電流増加量が、各昇降状態に対応した増加量閾値(Zth1〜Zth3)より大きい場合(S500:Yes)、S501で当て止め検出有りと判定し、本ルーチンを終了する。図17は、キャリッジ上昇中に電流変化量に基づいて当て止め検出された例を示すモータ電流検出値の推移を示すグラフである。図17のグラフでは、電流グラフの傾きが急激に大きくなった時点、換言すれば、単位時間当たりのモータ電流増加量が増加量閾値を超えた時点で当て止めが検出されて、停止動作が行われていることが示されている。
一方、モータ電流増加量が各昇降状態に対応した増加量閾値以下の場合(S500:No)、S502で、モータ電流検出値が検出値閾値より大きいか否かを判定する(第2の判定)。すなわち、モータ電流増加量が当て止め検出の条件を満たさない場合に、現在のモータ電流値の絶対値(モータ電流値検出値)を検出値閾値と比較する。検出値閾値は、昇降機構50における3ステージ(加速、等速、減速)の昇降状態に対応して、加速用検出値閾値Kth1、等速用検出値閾値Kth2、減速用検出値閾値Kth3の3種類が予め設定され、マイコンである演算部61のROMに記憶されている。尚、3種類の検出値閾値Kth1〜Kth3は、Kth1>Kth2>Kth3、という大小関係となっている。つまり、加速状態ではモータ電流の変化が相対的に大きいことから閾値の値を大きくし、等速状態、減速状態と加速度の減少に対応して順に閾値の値を小さく設定することにより、当て止めの検出精度を確保している。
モータ電流検出値が各昇降状態に対応した検出値閾値(Kth1〜Kth3)より大きい場合(S502:Yes)、S501で当て止め検出有りと判定し、本ルーチンを終了する。図18は、キャリッジ上昇中に電流検出値に基づいて当て止め検出された例を示すモータ電流のグラフである。図18のグラフでは、電流検出値が検出値閾値より大きくなった時点で当て止めが検出されて、停止動作が行われていることが示されている。一方、モータ電流検出値が検出値閾値以下の場合(S502:No)、S503で当て止め検出無しと判定し、本ルーチンを終了する。
(9.タイヤ交換作業の流れ)
次に、タイヤリフタ1を使用して作業者が車両のタイヤ交換を行う際の作業の流れについて、図19、図20を参照しつつ説明する。図19(a)〜(d)は、リフトアップされた車両からタイヤTを取り外す作業の流れを示す説明図である。図20(a)〜(d)は、リフトアップされた車両に新しいタイヤTを取り付ける作業の流れを示す説明図である。尚、図19、図20は、リフトアップされた車両側からタイヤリフタ1を視た正面図を表している。
最初に、リフトアップされた車両からタイヤTを取り外す作業の流れについて、図19を参照しつつ説明する。まず、整備工場に設置された図示しないリフト装置で、床面FLからリフトアップされた車両の近傍にタイヤリフタ1を移動させ、タイヤTの正面でキャリッジ30の左右位置がタイヤTと一致するように、作業者がハンドル13を掴んでタイヤリフタ1を左右に動かして位置合わせを行う(図19(a)参照。)。尚、この場合のキャリッジ1の左右の位置合わせは正確である必要は無く、目視確認でタイヤTと概略一致していると判断できる程度でよい。
次に、リモコン70の上ボタン70aを押下して昇降機構50を上昇動作させる。上ボタン70aを押し続けてキャリッジ30が上昇中にタイヤTの下側に当接すると、当て止め検出が行われてキャリッジ30が上昇を停止した後、当て逃がし動作で数mm(5〜10mm程度、例えば8mm)下降して停止する(図19(b)参照。)。このようにして、キャリッジ30は、リフトアップされた車両のタイヤTに対応した高さ位置に自動調節される。また、作業者の必要に応じて、この時のキャリッジ30の高さ位置が、リモコン70でのボタン操作により、制御装置60の設定高さ記憶部610bに記憶される。尚、2本目以降のタイヤTについても毎回当て止め検出を行う場合は、キャリッジ30の高さ位置を記憶するボタン操作を行う必要は無い。
そして、作業者はタイヤTからナットを全て取り外した後、タイヤTを車両側のハブから取り外してキャリッジ30上に載置する。次に、作業者がリモコン70の下ボタン70bを押し続けて昇降機構50に下降動作させ、キャリッジ30がローラ止め部11bに当接すると、当て止め検出が行われて下降動作を停止した後、当て逃がし動作で数mm(例えば、2〜3mm程度)上昇して停止する(図19(c)参照。)。これにより、キャリッジ30に不必要な機械的負荷を与えることを防止しつつ、タイヤ受けローラ32が簡単には回転しないようにすることができる。
この状態で、作業者はタイヤTを左側又は右側へ手で転がしてキャリッジ30から床面FLへ降ろす(図19(d)参照。)。この時、タイヤ受けローラ32はローラ止め部11bに当接して回り止めされているので、タイヤTを転がす時にタイヤ受けローラ32が回転せず、タイヤTをキャリッジ30から円滑に降ろすことができる。
次に、キャリッジ30が下降した状態で、新しく取り付けるタイヤTを転がして、キャリッジ30上へ載置する(図20(a)、(b)参照。)。この時も、タイヤ受けローラ32が回り止めされて回転しないので、タイヤTをキャリッジ30上に円滑に乗り込ませることができる。
次に、リモコン70の上ボタン70aを押下し続けると、新しいタイヤTを載置したキャリッジ30の上昇動作を行い、制御装置60の設定高さ記憶部610bに記憶済みの設定高さに到達すると自動的に停止する(図20(c)参照。)。そして、作業者はタイヤTを車両側のハブに取り付けて、ナットの締め付けを行った後、作業者がリモコン70の下ボタン70bを押下してキャリッジ30を下降させてタイヤTの取付け作業が完了する(図20(d)参照。)。
続いて2本目のタイヤ交換を行う場合、2本目のタイヤの近傍へタイヤリフタ1を移動させて位置合わせした後、リモコン70の上ボタン70aを押下し続けると、昇降機構50が上昇動作を行い、制御装置60の設定高さ記憶部610bに記憶済みの設定高さに到達すると自動的に停止する。すなわち、2本目のタイヤ交換作業では、キャリッジ30の上昇時にタイヤTに当接させることなく、1本目の当て止め検出時に記憶した設定高さで停止させることができる。尚、2本目のタイヤ交換作業においても、1本目と同様に当て止め検出を行ってもよい。以下、1本目のタイヤと同様の作業によりタイヤ交換を行う。
(10.まとめ)
本実施形態のタイヤリフタ1は、移動自在な基台10と、基台10に立設された支柱20と、タイヤを支承するためのキャリッジ30と、駆動源としてのモータ40を有しモータ40の駆動力によりキャリッジ30を支柱20に沿って昇降させる昇降機構50とを備え、車両に対するタイヤの着脱作業を補助するものであって、床面からリフトアップされた車両に支持されたタイヤTの高さ位置を検出するタイヤ位置検出部(昇降機構50、制御装置60(S50))と、タイヤ位置検出部による検出結果に基づいてモータ40を制御し、昇降機構50を介してキャリッジ30の高さを位置決めする位置決め制御部(制御装置60(S51))と、を備える。
この構成によれば、床面からリフトアップされた車両に支持されたタイヤTの高さ位置を検出し、その検出結果に基づいてモータ40を制御して昇降機構50を介してキャリッジ30の高さを自動的に位置決めすることができる。よって、リフトアップされた車両のタイヤTに対するキャリッジ30の高さ調整に伴う負担を軽減することができるという効果を奏する。
タイヤリフタ1は、タイヤ位置検出部は、昇降機構50を介してキャリッジ30が上昇動作する間に、タイヤTの下側へキャリッジ30が当接したことの検出に基づいて、タイヤの高さ位置を検出する。
この構成によれば、タイヤTの下側へキャリッジが当接したことの検出に基づいて、タイヤTの高さ位置を確実に検出することができる。
タイヤリフタ1は、位置決め制御部は、タイヤ位置検出部によるキャリッジ30の当接の検出(S50)に基づき、モータ40を制御して昇降機構50の上昇動作を停止させた後(S51)、所定量だけ下降動作させて位置決めする(S32)。
この構成によれば、昇降機構50の上昇動作を停止させた後、所定量だけ下降動作させてキャリッジ30の高さを位置決めすることで、キャリッジ30のタイヤTへの押圧状態が解除されるので、車両に対するタイヤTの脱着作業を円滑に行うことができる。
タイヤリフタ1は、駆動源がモータ40であり、位置検出部は、モータ40の負荷変化に基づいてキャリッジ30の当接を検出する。
この構成によれば、昇降機構50の上昇動作中におけるモータ40の負荷変化に基づいて、キャリッジ30のタイヤTへの当接を確実に検出することができる。
タイヤリフタ1は、モータ40に流れる電流を検出する電流検出部64を備え、位置検出部は、電流検出部64によって検出される電流値の変化に基づいてキャリッジ30の当接を検出する。
この構成によれば、モータ40の負荷変化に応じて、電流検出部64によって検出される電流値が変化することに基づいて、センサを別途設けることなく、キャリッジ30のタイヤTへの当接を確実に検出することができる。すなわち、キャリッジ30の当接はモータ40の発生するトルク変化に基づいて行うのが好ましい。モータ40の発生するトルクを計測する方法として、トルクセンサを使用することが考えられるが高価であるという欠点がある。他の計測方法として、ベクトル制御のようなFOCモータ回転制御からトルク成分を利用することが考えられる。FOCモータ回転制御を行うためには演算部に高速な処理能力が要求されるので、タイヤリフタのようなバッテリを電源とする用途ではブラシレスDCモータやブラシ付きDCモータ等のDCモータが使われることが多い。本実施形態ではモータ40としてDCモータを使用しており、モータ40の発生するトルクは、その電流値にほぼ比例するので、低コストな電流検出部64で電流値を計測し、その変化に基づいてキャリッジ30の当接を検出することができる。但し、モータ負荷によって電源電圧が大きく変動するような場合では同一電流であっても発生トルクが大きく変動することから、電流値に電圧値を乗じた電力値を使用し、その変化で当接の検出を行うことにより精度を確保することが好ましい。
タイヤリフタ1は、位置検出部は、単位時間当たりの電流値の増加量が所定の増加量閾値(Zth1〜Zth3)を超えた場合に当接の発生と判定する(S500)。
この構成によれば、モータ40の負荷変化に応じて単位時間当たりの電流値の増加量が増大することに基づいて、キャリッジ30のタイヤTへの当接を確実に検出することができる。また、キャリッジ30のタイヤTへの当接に伴う電流値の増加量を利用して検出することで、モータ40の負荷が過大となる前に上昇動作を停止して位置決めするので、タイヤTへの衝撃を少なくすることができるという効果を奏する。
タイヤリフタ1は、位置検出部は、電流値が所定の検出値閾値(Kth1〜Kth3)を超えた場合に当接の発生と判定する。
この構成によれば、モータ40の負荷変化に応じて電流値が増大することに基づいて、キャリッジ30のタイヤTへの当接を確実に検出することができる。また、所定の検出値閾値を基準に検出することで、モータ40の負荷が過大となる前に上昇動作を停止して位置決めするので、タイヤTへの衝撃を少なくすることができるという効果を奏する。
タイヤリフタ1は、キャリッジ30の停止位置を設定高さとして記憶する設定高さ記憶部610bと、モータ40を制御し昇降機構50を介して、キャリッジ30を設定高さ記憶部610bに記憶された設定高さで停止させて再位置決めする再位置決め制御部(制御装置60(S44,S45))と、を備える。
この構成によれば、一度位置決めが行われた後、先に記憶した設定高さを用いて、タイヤTの高さ位置の検出を再度行うことなく、キャリッジ30を適切な高さに自動位置決めすることができる。
タイヤリフタ1は、キャリッジ30は、タイヤTの直径よりも小さい所定間隔を隔てて同一高さに並んで配置され、タイヤTを下側から支承する回転可能な一対のタイヤ受けローラ32を備えるものであり、昇降機構50を介してキャリッジ30が下限位置に下降した時、一対のタイヤ受けローラ32を回り止めするローラ止め部11bを備える。
この構成によれば、キャリッジ30が下限位置よりも上に位置して一対のタイヤ受けローラ32でタイヤTを支承する時、一対のタイヤ受けローラ32上でタイヤTが回るので、周方向位置を容易に調整することができる。一方、キャリッジ30が下限位置に下降した時、一対のタイヤ受けローラ32がローラ止め部11bによって回り止めされるので、タイヤTをキャリッジ30から床面FLへ降ろしたり、床面FLからキャリッジ30上に載せたりする作業を円滑に行うことができる。
(11.変形例)
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々に変更を施すことが可能である。例えば、上記実施形態では、タイヤの高さ位置の検出を、専用のセンサを別途設けることなく、モータ電流検出値に基づいて行う構成を示したが、これには限られない。
例えば、タイヤ位置検出部を、駆動源とは別個に設けられる公知の接触式センサ又は非接触式センサによりタイヤTの高さ位置を検出するように構成してもよい。この変形例によれば、公知の接触式センサ又は非接触式センサを用いて、タイヤTの高さ位置を検出し、その検出結果に基づいてキャリッジ30の高さを自動的に位置決めすることができる。よって、タイヤの位置に対するキャリッジの高さ調整を容易に行うことができるという上記実施形態と同様の効果を奏する。また、上記実施形態では、駆動源としてモータ40を用いた例を示したが、駆動源をモータに代えて空気圧機構や油圧機構により構成することも可能である。その場合、接触式センサ又は非接触式センサを用いてタイヤの高さ位置を検出する構成とするようにしてもよい。
また、上記実施形態では、モータ負荷の情報として電流検出値を用いる例を示したが、電流検出値に代えて或いは加えて、モータ40への電流指令値の変化に基づいてキャリッジ30の当接を検出するようにしてもよい。すなわち、PWMデューティ値の変化を補助的に用いて検出処理を行うようにしてもよい。本変形例では、上記実施形態と同様に、電流指令値の履歴情報を記憶すると共に、電流指令値に対する増加量閾値を予め設定し、電流指令値の増加量が増加量閾値を超えた場合に当接の発生と判定する。この構成によれば、モータ40の負荷変化に応じて、モータ40への電流指令値が変化することに基づいて、センサを別途設けることなく、キャリッジ30のタイヤTへの当接を確実に検出することができると共に、当接した際のモータ負荷が急激には増加しない稀な事象にも対応可能とすることができる。
ここで、稀な事象とは、例えば、昇降機構50のメカ剛性が低い場合である。或は別の例として、パンクしたタイヤの取り外しを行う場合を挙げることができる。パンクしたタイヤは、押し当てによって変形しやすいので、モータ負荷情報が緩やかになり、モータ負荷情報だけでは相当程度の押し当てを行わないと、キャリッジ当接の検出が困難である。そのような事象は、低速昇降の際にモータ回転速度が低いためにモータ負荷が低くなる条件で発生しやすく、モータ負荷情報だけでは当接の検出が困難な場合が想定される。モータ負荷はモータ速度制御した結果として表れるので、モータ電流検出値に代えてモータ電流指令値を用いることができる。但し、モータ指令値、すなわちPWMデューティ値は、速度やワーク(キャリッジ30に積載するタイヤ等)による負荷によって変動するので、絶対値ではなく変化量を用いる。