JP2020172613A - 塗料用水性樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐汚染性と塗膜のクラック防止とを充分に両立する塗料を与える、塗料用水性樹脂組成物の提供。【解決手段】ウレタン系ポリマー成分及びアクリル系ポリマー成分を有するエマルション粒子、及び、重量平均分子量が1万〜20万の水溶性ポリマーを含む塗料用水性樹脂組成物である。組成物は、エマルション粒子と水溶性ポリマーとが架橋構造を形成し得るものであり、エマルション粒子は、官能基(α)を有し、水溶性ポリマーは、官能基(β)を有し、組成物は、官能基(α)と官能基(β)との間で反応して架橋構造を形成し得る架橋剤(C)を含む。【選択図】図1

Description

本発明は、塗料用水性樹脂組成物に関する。より詳しくは、建築物の外壁等を塗装する塗料(外装塗料)として好適に使用できる塗料用水性樹脂組成物に関する。
近年、塗料用水性樹脂組成物は、塗装者の健康被害を低減することができ、また、水質汚濁及び大気環境汚染等の環境汚染を防ぐことができることから、広く用いられている。塗料用水性樹脂組成物を用いて得られる塗料(水性塗料)は、例えば、屋外の建築物の外壁等に塗装するために使用される他、金属、ガラス、磁器タイル、コンクリート、サイディングボード、押出成型板、プラスチック等の各種素材の表面仕上げ等に使用されている。
従来の塗料用水性樹脂組成物を用いて得られる塗料は、特に外装塗料の場合、塗料を塗装し塗膜形成する際にポリマー間を架橋させること等により、塗膜を硬質化し、汚れを付着しにくくしたり、塗膜表面を親水化する水溶性ポリマーを配合し、雨水を塗膜表面となじませて、汚れ(油分)を雨が洗い流しやすくしたりして、耐汚染性を向上させている。
従来の塗料用水性樹脂組成物としては、乳化重合によって得られる(メタ)アクリルエマルション(A)と、水溶性樹脂(B)とを必須として構成される塗料用水性樹脂組成物であって、該塗料用水性樹脂組成物は、(メタ)アクリルエマルション(A)と水溶性樹脂(B)とが架橋構造を形成し得るものである塗料用水性樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
また(a)有機合成樹脂のエマルション、(b)カップリング剤、および(c)前記有機合成樹脂(a)以外でかつ前記カップリング剤(b)と反応し得る基を有する親水化用有機化合物からなる低汚染型水性塗料用樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献2を参照)。
ところで、ウレタン樹脂と1種又は複数種の(メタ)アクリル系単量体とを、予め混合分散した(メタ)アクリル系単量体混合液を、反応容器中の水系媒体に添加して乳化重合するウレタン−(メタ)アクリル複合樹脂の製造方法が開示されている(例えば、特許文献3を参照)。
国際公開第2008/102816号公報 特開2001−72928号公報 特開2010−163612号公報
しかし、従来の塗料用水性樹脂組成物を用いて得られる塗料は、特に外装塗料として用いる場合、塗料の塗布面(例えば、建築物の外壁)が、寒暖差等による膨張収縮を繰り返し、歪が生じるため、塗膜が硬いと塗布面の歪に追従できす、塗膜の破断(クラック)が発生する問題があった。
なお、上述したように、耐汚染性向上を目的として、塗膜を硬質化する代わりに、塗膜表面を親水化することで汚れ(油分)を雨が洗い流す手法(セルフクリーニング)も検討されてきたが(例えば、図1〜図3を参照。)、耐水白化性の課題があり、また、親水化剤の量にも限界があった。すなわち、親水化剤を多く入れすぎると、塗膜の耐水性が低下するため、耐汚染性を充分向上するためには塗膜を硬質化する手法を併用せざるを得なかった。
以上のように、耐汚染性向上技術と塗膜のクラック防止とを両立させる技術開発が望まれていた。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、耐汚染性と塗膜のクラック防止とを充分に両立する方法を提供することを目的とするものである。
本発明者は、塗料用水性樹脂組成物について検討し、耐汚染性を向上するために、塗膜表面を親水性にすることに先ず着目した。そして、塗料用水性樹脂組成物の構成成分について種々検討したところ、アクリル系ポリマー成分を有するエマルション粒子と、重量平均分子量1万〜20万の水溶性ポリマーとを必須とすると、塗膜形成時にある程度の耐汚染性を発揮できる塗料用水性樹脂組成物となることを見出した。本発明者は、更に鋭意検討を行い、エマルション粒子が、アクリル系ポリマー成分とともにウレタン系ポリマー成分を有するものとすると、低温時の伸び性を非常に優れたものとすることができ、塗膜のクラックを充分に防止できるとともに、耐汚染性をより優れたものとすることができることを見出し、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
更に、本発明者は、エマルション粒子と、重量平均分子量1万〜20万の水溶性ポリマーとが架橋構造を形成し得るものとすること、例えば、当該エマルション粒子及び重量平均分子量が1万〜20万の水溶性ポリマーがそれぞれ特定の官能基を有し、これらが直接に、又は、更に特定の官能基を有する架橋剤を介して架橋構造を形成するものとしたり、上記水溶性ポリマーをN−ビニル環状ラクタム由来の構成単位を所定量以上有するものとしたり、エマルション粒子中のウレタン系ポリマー成分が、更にカーボネート骨格を有するものとしたりすると、これらの特性をよりバランス良く両立できることを見出した。
すなわち本発明は、塗料用水性樹脂組成物であって、該組成物は、ウレタン系ポリマー成分及びアクリル系ポリマー成分を有するエマルション粒子、及び、重量平均分子量が1万〜20万の水溶性ポリマーを含むことを特徴とする塗料用水性樹脂組成物である。
本発明の塗料用水性樹脂組成物は、上述の構成よりなり、耐汚染性と塗膜のクラック防止とを充分に両立することができる。
塗膜表面を親水化した低汚染性塗膜とすることで汚れ(油分)を雨が洗い流す様子を示す説明図である。 本発明の塗料用水性樹脂組成物において、水溶性ポリマーが固定化される様子を示す説明図である。 従来の塗膜では、雨水が塗膜となじまないため、雨水だけをはじいて、汚れが残る様子を示す説明図である。
以下に本発明を詳述する。
(塗料用水性樹脂組成物)
本発明の塗料用水性樹脂組成物は、ウレタン系ポリマー成分及びアクリル系ポリマー成分を有するエマルション粒子、及び、重量平均分子量が1万〜20万の水溶性ポリマーを含むことを特徴とする。
ウレタン系ポリマー成分及びアクリル系ポリマー成分とを有するエマルション粒子、及び、特定の分子量を規定した水溶性ポリマーを含む水性樹脂組成物の構成は、(メタ)アクリルエマルションと水溶性樹脂とを必須として構成される従来の塗料用水性樹脂組成物と比べて、より優れた耐汚染性を発現する。理由は定かではないが、ウレタン系ポリマー成分とアクリル系ポリマー成分とを有するエマルション粒子から形成される塗膜とその表面に固着する前記水溶性ポリマーとの作用が、効果的にセルフクリーニングしているからと考えられる。
[ウレタン系ポリマー成分及びアクリル系ポリマー成分を有するエマルション粒子]
本発明の塗料用水性樹脂組成物に含まれる、ウレタン系ポリマー成分及びアクリル系ポリマー成分を有するエマルション粒子とは、ウレタン系ポリマーとアクリル系ポリマーとが複合化してなるエマルション粒子であってもよく、ウレタン系ポリマーとアクリル系ポリマーとが単に混合されてなるエマルション粒子であってもよいが、ウレタン系ポリマーとアクリル系ポリマーとが複合化してなるエマルション粒子であることが好ましい。複合化の形態については、後述する。
すなわち、エマルション粒子が有するウレタン系ポリマー成分及びアクリル系ポリマー成分は、それぞれ、複合化されてポリマーの一部(ポリマー鎖)となったものであってもよく、ポリマーそのものであってもよいが、複合化されてポリマー鎖となったものであることが好ましい。
上記アクリル系ポリマー成分とは、(メタ)アクリル系モノマーとして(メタ)アクリル酸エステルを必須成分として含むモノマー成分を重合して得られるポリマー又はポリマー鎖を意味する。言い換えれば、該アクリル系ポリマー成分は、(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位を含む。
(メタ)アクリル酸エステルとは、(メタ)アクリル酸のカルボン酸基と1価のアルコール又はフェノールとがエステル結合した構造を有するモノマーを言う。アルコールは、炭化水素基及び/又はアリール基を有する化合物(ただし、フェノールは除く)であってよい。該(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルであってもよく、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルであってもよく、(メタ)アクリル酸アリールエステルであってもよい。言い換えれば、該(メタ)アクリル酸エステルの炭化水素部は、アルキル基であってもよく、シクロアルキル基であってもよく、アリール基であってもよい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アリールエステルとしては、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらは、1種又は2種以上を使用できる。
例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、耐侯性の観点からは好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、上記例示の中でも特に、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートが好ましい。アクリル系ポリマー成分がこのようなモノマー由来の構成単位を含むことにより、耐侯性を更に向上させることができる。
上記アクリル系ポリマー成分中、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位の含有量は、特に限定されないが、例えば、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。また、該(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位の含有量は、その上限値は特に限定されず、100質量%であってもよいが、例えば99質量%以下であることが好ましい。また、耐汚染性向上の為に、アクリル系ポリマー成分が、シクロヘキシルメタクリレート由来の構成単位を含むことが好ましい。アクリル系ポリマー成分中、シクロヘキシルメタクリレート由来の構成単位の含有量は、5〜50質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましい。
上記アクリル系ポリマー成分を得るために、上述した(メタ)アクリル酸エステルの他、後述する架橋構造を形成し得る官能基を有する不飽和モノマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水マレイン酸等の酸基を有する不飽和モノマー類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する不飽和モノマー類;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有する不飽和モノマー類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基を有する不飽和モノマー類;ジアセトンアクリルアミド、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等の活性カルボニル基(後述するケトン、アルデヒド等のエステル基、カルボキシル基を除くカルボニル基を有する官能基)を有する不飽和モノマー類;上記以外の、後述する架橋構造を形成し得る官能基を有する不飽和モノマー類が好適なものとして挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。
上記アクリル系ポリマー成分中、架橋構造を形成し得る官能基を有する不飽和モノマー由来の構成単位の含有量は、特に限定されないが、例えば、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることが更に好ましい。また、該架橋構造を形成し得る官能基を有する不飽和モノマー由来の構成単位の含有量は、例えば50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
上記アクリル系ポリマー成分中、紫外線吸収性基を有する不飽和モノマー類由来の構成単位、及び/又は、紫外線安定性不飽和モノマー類由来の構成単位を含有してもよい。アクリル系ポリマー成分が、紫外線吸収性基を有する不飽和モノマー類由来の構成単位、及び/又は、紫外線安定性不飽和モノマー類由来の構成単位を含有する場合、アクリル系ポリマー成分中、上記紫外線吸収性基を有する不飽和モノマー類由来の構成単位、及び/又は、紫外線安定性不飽和モノマー類由来の構成単位の含有量は、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。なお、アクリル系ポリマー成分が、紫外線吸収性基を有する不飽和モノマー類由来の構成単位と、紫外線安定性不飽和モノマー類由来の構成単位との両方を含有する場合、上記含有量は、合計含有量である。
紫外線吸収性基を有する不飽和モノマー類としては、例えば、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−(メタ)アクロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。
紫外線安定性不飽和モノマー類としては、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。
上記アクリル系ポリマー成分中、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系不飽和モノマー類由来の構成単位を含有してもよい。
アクリル系ポリマー成分が、スチレン系不飽和モノマー類由来の構成単位を含有する場合、アクリル系ポリマー成分中、スチレン系不飽和モノマー類由来の構成単位の含有量は、1〜30質量%であることが好ましく、3〜25質量%がより好ましい。
上記アクリル系ポリマー成分中、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタアクリレート、ジアリルフタレート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、トリアリルシアヌレート、ジビニルベンゼン等の多官能性不飽和モノマー類由来の構成単位を含有してもよい。なお、多官能性不飽和モノマー類とは、反応性の不飽和結合を2つ以上有する化合物を言う。
アクリル系ポリマー成分が、多官能性不飽和モノマー類由来の構成単位を含有する場合、アクリル系ポリマー成分中、多官能性不飽和モノマー類由来の構成単位の含有量は、0.1〜20質量%であることが好ましく、1〜10質量%がより好ましい。
上記アクリル系ポリマー成分中、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン等のアミド基含有不飽和モノマー類由来の構成単位を含有してもよい。なお、ジアセトンアクリルアミドのように、アミド基を含有していても、上述した活性カルボニル基を有する不飽和モノマー類は、アミド基含有不飽和モノマー類ではなく活性カルボニル基を有する不飽和モノマー類とする。
アクリル系ポリマー成分が、アミド基含有不飽和モノマー類由来の構成単位を含有する場合、アクリル系ポリマー成分中、アミド基含有不飽和モノマー類由来の構成単位の含有量は、0.1〜20質量%であることが好ましく、1〜10質量%がより好ましい。
上記アクリル系ポリマー成分中、(メタ)アクリル酸エチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール等のアルキレングリコール鎖を有する不飽和モノマー類由来の構成単位を含有してもよい。
アクリル系ポリマー成分が、アルキレングリコール鎖を有する不飽和モノマー類由来の構成単位を含有する場合、アクリル系ポリマー成分中、アルキレングリコール鎖を有する不飽和モノマー類由来の構成単位の含有量は、0.1〜20質量%であることが好ましく、1〜10質量%がより好ましい。
上記アクリル系ポリマー成分中、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート等のフッ素原子を有する不飽和モノマー類由来の構成単位を含有してもよい。
アクリル系ポリマー成分が、フッ素原子を有する不飽和モノマー類由来の構成単位を含有する場合、アクリル系ポリマー成分中、フッ素原子を有する不飽和モノマー類の含有量は、0.1〜20質量%であることが好ましく、1〜10質量%がより好ましい。
その他の使用可能なモノマーとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニルエステル;上記以外の重合性モノマーが挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる
上記アクリル系ポリマー成分中、上記その他の使用可能なモノマー由来の構成単位の含有量は、例えば、0〜10質量%であることが好ましい。該含有量は、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましい。
上記アクリル系ポリマー成分は、ガラス転移温度(Tg)が−10〜100℃であることが好ましい。より好ましくは、0〜70℃であり、更に好ましくは、10〜50℃であり、特に好ましくは、10〜30℃である。ガラス転移温度が−10℃未満であると、塗膜硬度が不足する。また、100℃より大きいと、造膜性が低下する。
本明細書中、ガラス転移温度は、ポリマー又はポリマー鎖を構成する各モノマー成分のホモポリマーのガラス転移温度を用いて、下記Foxの式より計算される。
1/Tg=Σ(Wn/Tgn)/100
ここで、Wnはモノマーnの質量%、TgnはモノマーnからなるホモポリマーのTg(K:絶対温度)を示す。
なお、Tgは、上述したFox式による計算値であるが、実測値の場合にも、同様の範囲が好ましい。Tgの実測値は、例えば、Tgは水性樹脂組成物を示差熱走査熱量分析することによって得ることができる。
本発明の塗料用水性樹脂組成物に含まれるエマルション粒子が有するウレタン系ポリマー成分とは、ウレタン結合(NHCOO)を有するモノマーを必須成分として含むモノマー成分を重合して得られるポリマー又はポリマー鎖を意味する。
ウレタン系ポリマー成分としては、モノマー単位間の結合部がすべてウレタン結合であるポリウレタンであってもよいが、ウレタン結合とともに他の化学結合を規則的又は不規則的に有するものであってもよく、例えば、カーボネート結合(O−C(=O)−O)を有するポリカーボネート型ウレタン系ポリマー(例えば、ユーコートUS−230〔三洋化成工業社製〕、スーパーフレックス420〔第一工業製薬社製〕、スーパーフレックス420NS〔第一工業製薬社製〕、スーパーフレックス460S〔第一工業製薬社製〕、スーパーフレックス470NS〔第一工業製薬社製〕)、エステル結合を有するポリエステル型ウレタン系ポリマー(例えば、ユーコートUWS−145〔三洋化成工業社製〕、アデカボンタイターHUX−370〔ADEKA社製〕、アデカボンタイターHUX−541〔ADEKA社製〕、DAOTAN VTW 6462/36WA〔ダイセル・オルテクス社製〕、DAOTAN TW 6492/35WA〔ダイセル・オルテクス社製〕)、エーテル結合を有するポリエーテル型ウレタン系ポリマー(例えば、アデカボンタイターHUX550〔ADEKA社製〕、パーマリンUA−200〔三洋化成工業社製〕)等のウレタン系ポリマー、上記以外の、後述する架橋構造を形成し得る官能基を有するウレタン系ポリマーや、これらウレタン系ポリマーを後述するようにアクリル系ポリマーと複合化して得られる、エマルションポリマーの一部(ポリマー鎖)となったもの(以下、ウレタン系ポリマー由来のポリマー鎖等とも言う。)が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。
上記ウレタン系ポリマー成分は、中でも、耐候性の観点から、ポリカーボネート型ウレタン系ポリマー、ポリエステル型ウレタン系ポリマー、又は、これらウレタン系ポリマー由来のポリマー鎖が好ましく、耐汚染性及び耐候性の観点から、ポリカーボネート型ウレタン系ポリマー又はポリカーボネート型ウレタン系ポリマー由来のポリマー鎖がより好ましい。言い換えれば、上記ウレタン系ポリマー成分は、カーボネート結合を有するウレタン系ポリマー成分であることがより好ましい。
上記ウレタン系ポリマー成分は、ガラス転移温度(Tg)が−70〜40℃であることが好ましい。より好ましくは、−50〜20℃であり、更に好ましくは、−40〜0℃であり、特に好ましくは、−30〜−15℃である。ガラス転移温度が−70℃未満であると、耐汚染性が低下するおそれがある。また、40℃より大きいと、伸び性が低下するおそれがある。
上記ウレタン系ポリマー成分及びアクリル系ポリマー成分を有するエマルション粒子は、本発明の効果を発揮する限り、粒子構造は特に制限されず、ウレタン系ポリマー鎖とアクリル系ポリマー鎖とが複合化した構造であってもよく、ウレタン系ポリマーとアクリル系ポリマーとを混合して得られる構造であってもよいが、ウレタン系ポリマー鎖とアクリル系ポリマー鎖とが複合化した構造であることが好ましく、中でもコア−シェル構造であることがより好ましい。
コア・シェル構造を有するエマルション粒子の製造方法は、特に制限されず、例えば、コア部となるエマルション粒子を用意し、コア部上にモノマー成分を滴下し、乳化重合してシェル部を形成させる方法、コア部となるポリマーと、(メタ)アクリル系モノマーとを含む成分を滴下重合する方法等が挙げられるが、コア部となるエマルション粒子を用意し、コア部上にモノマー成分を滴下し、乳化重合してシェル部を形成させる方法が好適である。例えば、上述したウレタン系ポリマーからなるエマルション粒子に対し、(メタ)アクリル系モノマーを必須成分として含むモノマー成分を滴下して乳化重合(シード重合)し、コア−シェル構造を得る方法が好ましい。このような方法により得られる粒子構造を有するものであると、本発明の効果がより顕著なものとなる。
なお、架橋構造を形成し得る官能基を有するモノマーを用いて複層構造のエマルション粒子を調製する際には、塗膜形成時に水溶性ポリマーとの架橋反応を生じやすくする観点から、コア・シェル構造を有するエマルション粒子のシェル部形成時に、架橋構造を形成し得る官能基を有するモノマーを用いて重合することが好ましい(複層構造のエマルション粒子を形成する多段重合のうちの最終段に相当する)。例えば、ウレタン系ポリマーからなるエマルション粒子に対し、(メタ)アクリル系モノマーを必須成分として含むモノマー成分を乳化重合(シード重合)してアクリル系ポリマー成分を調製する場合、ウレタン系ポリマーが架橋構造を形成し得る官能基を有していても良いが、アクリル系ポリマーが当該官能基を有することが好ましい。
上記エマルション粒子において、上記ウレタン系ポリマー成分と上記アクリル系ポリマー成分との質量割合は、1:90〜50:50の範囲内であることが好ましい。該質量割合は、塗膜のクラックをより充分に防止する観点からは、2:90〜50:50であることがより好ましく、5:95〜50:50であることが更に好ましく、10:90〜50:50であることが更に好ましく、20:80〜50:50であることが一層好ましく、30:70〜50:50であることが更に好ましい。また、該質量割合は、耐汚染性をより優れたものとする観点からは、1:90〜50:50であることがより好ましく、1:90〜40:60であることが更に好ましく、1:90〜30:70であることが更に好ましく、1:90〜15:85であることが特に好ましい。上記のように、ウレタン系ポリマー成分とアクリル系ポリマー成分とを有するエマルション粒子は、ウレタン系ポリマー成分の質量割合を50質量%以下にすることで耐候性の低下を抑えられることができる。耐候性の低下をより抑える観点から、ウレタン系ポリマー成分の質量割合を40質量%以下にすることが好ましく、30質量%以下がより好ましい。質量上記質量比は、固形分による質量比を表す。
上記ウレタン系ポリマー成分及びアクリル系ポリマー成分を有するエマルション粒子は、平均粒子径が30〜300nmであることが好ましい。より好ましくは、50〜200nmである。更に好ましくは70〜160nmである。平均粒子径が30nm未満であると、粒子安定性が低下する。また、300nmより大きいと、耐水性が低下する。
上記平均粒子径は、動的光散乱法による粒度分布測定器(大塚電子株式会社FPAR−1000)を用いて測定されるものである。
[重量平均分子量が1万〜20万の水溶性ポリマー]
本発明における重量平均分子量が1万〜20万の水溶性ポリマーとしては、水溶性である限り特に限定されないが、例えば、ポリカルボン酸系ポリマー、ポリビニルアルコール系ポリマー、セルロースやその誘導体、ゼラチン、N−ビニル環状ラクタム由来の構成単位を有するポリマー等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。上記水溶性ポリマーは、更に、後述する架橋構造を形成し得る官能基を有するモノマー(例えば、後述するカルボニル基含有モノマーやオキサゾリン基含有モノマー)由来の構成単位を含んでいてもよい。
上記水溶性ポリマーは、塗膜を柔らかくし過ぎることなく、また、図1〜図3に示すように、塗膜を親水化でき、洗いやすくすることができるものである。上記水溶性ポリマーは、中でも、N−ビニル環状ラクタム由来の構成単位を有するポリマーであることが好ましい。N−ビニル環状ラクタム由来の構成単位を有するポリマーは、少なくともN−ビニル環状ラクタム由来の構成単位を有するものであればよく、例えば、N−ビニルピロリドンやN−ビニルカプロラクタムを重合又は共重合させて得られるホモポリマー又はコポリマー等を用いることができる。尚、本明細書中、水溶性とは、20℃の水100gに対し8g以上溶解する物質のことを示す。塗膜の親水化を容易にする観点から、水溶性ポリマーが、水に対し任意の量で溶解することが好ましい。
上記N−ビニル環状ラクタム由来の構成単位を有するポリマーとしては、N−ビニルピロリドンやN−ビニルカプロラクタムを、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸やそのエステル、マレイン酸やそのエステル、ジメチルアミノアルキルエステル及びその四級塩、ヒドロキシアルキルエステル、ジアセトンアクリルアミド、アクリロニトリル、スチレン、アルキルビニルエーテル、N−ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、アリルアルコール、オレフィン類等と共重合させて得られるコポリマーが好適なものとして挙げられる。これらの中でも、N−ビニルピロリドンやN−ビニルカプロラクタムを(メタ)アクリル酸及び/又はジアセトンアクリルアミドと共重合させて得られるコポリマーが好ましい。これらのモノマーは、1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
なお、(メタ)アクリル酸、マレイン酸のエステルとしては、特に限定されないが、炭素数1〜20のアルキルエステル等が好適なものとして挙げられる。
上記N−ビニル環状ラクタム由来の構成単位を有するポリマーは、N−ビニルピロリドンやN−ビニルカプロラクタム等のN−ビニル環状ラクタム由来の構成単位を50質量%以上有するものであることが好ましい。より好ましくは、60質量%以上有するものである。これにより、塗料から得られる塗膜の親水性がより優れたものとなり、塗膜の耐汚染性がより優れたものとなる。
本発明の塗料用水性樹脂組成物は、上記エマルション粒子と上記水溶性ポリマーとの質量比が99.9:0.1〜60:40であることが好ましい。より好ましくは、99.5:0.5〜70:30であり、更に好ましくは、99:1〜75:25である。特に好ましくは、98:2〜80:20であり、最も好ましくは、97:3〜90:10である。
なお、上記質量比は、固形分による質量比を表す。
本発明の塗料用水性樹脂組成物は、本発明の効果を妨げない限り、上記エマルション粒子及び上記水溶性ポリマー以外の成分を含んでもよいが、上記エマルション粒子及び上記水溶性ポリマーの合計質量が、塗料用水性樹脂組成物の固形分100質量%中、50質量%以上であることが好ましい。この質量割合は、塗料用水性樹脂組成物に要求される物性によって異なるが、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。
本発明の塗料用水性樹脂組成物は、上記エマルション粒子が分散している水系のものである。上記エマルション粒子が分散している媒体としては、水又は水と有機溶剤の混合液を用いることができるが、混合液100質量%中、水が50質量%以上であることが好ましい。混合液中における水の質量割合は、樹脂組成物に要求される物性によって異なるが、70質量%以上であることがより好ましくは、80質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
上記有機溶剤としては、水と混合することができるものである限り特に制限されず、例えば、メタノールのような低級アルコール等の親水性溶剤等を用いることができる。
本発明の塗料用水性樹脂組成物は、上記エマルション粒子と上記水溶性ポリマーとが架橋構造を形成し得るものであることが好ましい。言い換えれば、上記エマルション粒子と上記水溶性ポリマーとが、それぞれ、直接的又は間接的に互いに架橋構造を形成し得る官能基を有することが好ましい。
上記エマルション粒子と上記水溶性ポリマーとが架橋構造を形成し得るものであると、水溶性ポリマーを塗膜表面に配向させ、かつ、塗膜と架橋形成した水溶性ポリマーが塗膜表面から容易に流出しないものとすることができるため、塗料用水性樹脂組成物から形成される塗膜が、長期にわたってその親水性によっても耐汚染性に優れたものとなる。また、塗膜形成時に架橋構造が形成されること等で得られる塗膜が適度に硬質化してもよく、耐汚染性に優れたものとなる。
上記架橋構造を形成し得る官能基としては、例えば、エポキシ基、炭素原子に結合した水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アルコキシカルボニル基、シクロカーボネート基、N−ヒドロキシメチル酸アミド基、N−アルコキシメチル酸アミド基、N−(アルコキシカルボニル−ヒドロキシ)メチル酸アミド基、N−(アルコキシカルボニル−アルコキシ)メチル酸アミド基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、ブロック水酸基、ブロックカルボキシル基、ブロックアミノ基、オキサゾリン基、オキサゾリジン基、カルボン酸無水基、アセトアセトキシ基、ヒドラジノ基、カルボニル基等が挙げられる。これらの1種のみを有していてもよく、2種以上を有していてもよい。
これらの中でも、エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、イソシアネート基、オキサゾリン基、ヒドラジノ基、カルボニル基が好ましい。より好ましくは、オキサゾリン基、カルボキシル基、ヒドラジノ基、カルボニル基である。
すなわち、架橋構造を形成し得る官能基は、オキサゾリン基、カルボキシル基、ヒドラジノ基、カルボニル基のいずれかであることが好ましい。
上記架橋構造を形成し得る官能基の組み合わせとしては、例えば、エポキシ基と水酸基、エポキシ基とカルボキシル基、エポキシ基とブロックカルボキシル基、エポキシ基とアミノ基、エポキシ基とブロックアミノ基、シクロカーボネート基とカルボキシル基、水酸基とアルコキシカルボニル基、水酸基とイソシアネート基、ブロック水酸基とイソシアネート基、水酸基とブロックイソシアネート基、水酸基とN−ヒドロキシメチル酸アミド基、水酸基とN−アルコキシメチルアミド酸基、水酸基とN−(アルコキシカルボニル−ヒドロキシ)メチル酸アミド基、水酸基とN−(アルコキシカルボニル−アルコキシ)メチル酸アミド基、水酸基とヒドロキシメチルアミノ基、水酸基とアルコキシメチルアミノ基、水酸基とカルボン酸無水基、アセトアセトキシ基とイソシアネート基、アセトアセトキシ基とブロックイソシアネート基、オキサゾリン基とカルボキシル基、ブロック水酸基とカルボン酸無水基、オキサゾリジン基とイソシアネート基もしくはオキサゾリジン基とカルボン酸無水基、ヒドラジノ基とカルボニル基等、各種の組み合わせが挙げられる。これらの組み合わせの1つのみを用いてもよく、2つ以上を併用してもよい。
上記架橋構造を形成し得る官能基の組み合わせの中でも、エポキシ基とカルボキシル基、エポキシ基とアミノ基、水酸基とイソシアネート基、オキサゾリン基とカルボキシル基、ヒドラジノ基とカルボニル基の組み合わせが好ましい。より好ましくは、オキサゾリン基とカルボキシル基との組み合わせ、エポキシ基とカルボキシル基との組み合わせ、又は、ヒドラジノ基とカルボニル基の組み合わせである。更に好ましくは、オキサゾリン基とカルボキシル基との組み合わせ、ヒドラジノ基とカルボニル基との組み合わせである。
架橋構造がオキサゾリン基とカルボキシル基との組み合わせ、又は、ヒドラジノ基とカルボニル基の組み合わせで形成されると、塗料組成物から得られる塗膜の低温硬化性が向上し、塗膜の物性が更に優れたものとなる。
上記エマルション粒子と上記水溶性ポリマーとが架橋構造を形成する形態としては、上記エマルション粒子と上記水溶性ポリマーとが他の架橋剤(C)を介して架橋構造を形成し得る形態(第1の形態)、上記エマルション粒子と上記水溶性ポリマーとが直接架橋構造を形成し得る形態(第2の形態)がある。以下では、先ず第1の形態について説明し、次いで第2の形態について説明する。
上記エマルション粒子と上記水溶性ポリマーとが他の架橋剤(C)を介して架橋構造を形成すること、すなわち、本発明の塗料用水性樹脂組成物において、上記エマルション粒子は、官能基(α)を有し、上記水溶性ポリマーは、官能基(β)を有し、上記組成物は、該官能基(α)と該官能基(β)との間で反応して架橋構造を形成し得る架橋剤(C)を含むこと(第1の形態)は、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記架橋剤(C)は、水溶性であり、上記エマルション粒子が有する官能基(α)と架橋構造を形成する官能基、及び、上記水溶性ポリマーが有する官能基(β)と架橋構造を形成する官能基を有していればよく、架橋剤(C)が有する2つ以上の官能基は、同一であっても異なっていてもよい。また、上記エマルション粒子が有する官能基(α)と上記水溶性ポリマーが有する官能基(β)も、同一であってもよく、異なっていてもよい。尚、上述したように、水溶性とは、20℃の水100gに対し8g以上溶解する物質のことを示す。
なお、上記架橋剤(C)は、上記エマルション粒子が有する官能基(α)と上記水溶性ポリマーが有する官能基(β)との間で反応して架橋構造を形成し得るものである限り、重量平均分子量が1万〜20万の水溶性ポリマーに該当するものであってもよい。該架橋剤(C)は、本発明の塗料用水性樹脂組成物に含まれる水溶性ポリマーと同じものであってもよく、異なるものであってもよい。該架橋剤(C)は、水溶性ポリマーとして機能してもよい。
本発明において、上記架橋剤(C)としては、上述した架橋構造を形成し得る官能基のいずれかを有するものであればよいが、上述したように、同じ官能基を2つ以上有する化合物であることが好ましい。より好ましくは、カルボキシル基、ヒドラジノ基のいずれかを2つ以上有する化合物であり、更に好ましくは、ヒドラジノ基を2つ以上有する化合物である。
上記架橋剤(C)としては、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、こはく酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等の炭素原子を2〜10個有するジカルボン酸ジヒドラジド;エチレン−1,2−ジヒドラジン、プロピレン−1,3−ジヒドラジン、ブチレン−1,4−ジヒドラジン等の2〜4個の炭素原子を有する脂肪族水溶性ジヒドラジン;2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(3−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−(1,4−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−(1,3−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)等のジオキサゾリン;エポクロス(登録商標)WS−300、WS−500、WS−700、K−2010E、K−2020E、K−2030E(株式会社日本触媒製)等のオキサゾリン基含有ポリマーが挙げられる。これらの架橋剤は、1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、こはく酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等の炭素原子を4〜6個有するジカルボン酸ジヒドラジドが好ましい。より好ましくは、アジピン酸ジヒドラジドである。
上記エマルション粒子が有する官能基(α)と上記水溶性ポリマーが有する官能基(β)が同一であり、また、架橋剤(C)が有する上記エマルション粒子及び上記水溶性ポリマーとの間で架橋構造を形成する2つの官能基が同一であることが好ましい。このような形態であると、耐汚染性を高めることができる。
例えば、本発明の塗料用水性樹脂組成物において、上記官能基(α)及び官能基(β)は、それぞれ、カルボニル基であり、上記架橋剤(C)は、ヒドラジン系架橋剤であるか、又は、上記官能基(α)及び官能基(β)は、それぞれ、カルボキシル基であり、上記架橋剤(C)は、オキサゾリン系架橋剤であることが好ましい。
例えば、上記第1の形態の塗料用水性樹脂組成物に用いられるエマルション粒子が含むポリマー成分(ウレタン系ポリマー成分、アクリル系ポリマー成分が挙げられるが、好ましくはアクリル系ポリマー成分)及び水溶性ポリマーの原料となるモノマー成分は、カルボニル基含有モノマーを含むものであることが好ましい。
上記カルボニル基含有モノマーとしては、分子中に少なくとも1個のアルド基(アルデヒドの骨格を有する官能基)又はケト基(ケトンの骨格を有する官能基)を有し、かつ、少なくとも1個の重合可能な二重結合を有するモノマーを用いることができる。これらの中でも、重合可能なモノエチレン系不飽和アルド化合物及びモノエチレン系不飽和ケト化合物であって、かつエステル基及びカルボキシル基のみを有する化合物を除くものが好ましい。カルボニル基含有モノマーの具体例としては、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、アセトキシエチル(メタ)アクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(ビニルエチルケトン等)、(メタ)アクリルオキシアルキルプロペナール、ジアセトンアクリレート、アセトニルアクリレート、ジアセトンメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートアセチルアセテート、ブタンジオール−1,4−アクリレートアセチルアセテート等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。これらの中でも、ジアセトンアクリルアミド、アセトキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
上記カルボニル基含有モノマーの配合割合は、全モノマー成分(エマルション粒子が含むポリマー成分及び水溶性ポリマーを得るために用いたモノマーの合計)100重量部に対して0.1〜30質量%であることが好ましい。0.1質量%未満であると、充分な架橋が進行せず適度な硬度が発現しないおそれがあり、30質量%を超えると、過度に架橋が進行するおそれがある。好ましくは、0.5〜20質量%であり、より好ましくは、1〜10質量%である。
上記官能基(α)及び官能基(β)が、カルボキシル基である場合、エマルション粒子が含むポリマー成分(好ましくは、アクリル系ポリマー成分)の原料として、上述したカルボキシル基を有するモノマー(例えば、「酸性官能基を有する(メタ)アクリレート類」として上述したモノマー)を適宜使用できる。また、水溶性ポリマーとして、上述したカルボキシル基を有するもの(例えば、N−ビニルピロリドンやN−ビニルカプロラクタムを(メタ)アクリル酸等と共重合させて得られるコポリマー等)を適宜使用できる。
また上記架橋剤(C)がオキサゾリン系架橋剤である場合、後述するオキサゾリン基含有モノマーを適宜使用できる。
上記第1の形態において、上記エマルション粒子と上記水溶性ポリマーと上記架橋剤(C)との質量比は、99.8:0.1:0.1〜60:20:20であることが好ましい。より好ましくは、99:0.5:0.5〜70:15:15であり、更に好ましくは、98:1:1〜80:10:10である。
なお、上記質量比は、固形分による質量比を表す。
本発明の塗料用水性樹脂組成物において、上記エマルション粒子と上記水溶性ポリマーとが直接、架橋構造を形成するものであること、すなわち、本発明の塗料用水性樹脂組成物において、上記エマルション粒子は、官能基(α)を有し、上記水溶性ポリマーは、該官能基(α)と反応して架橋構造を形成し得る官能基(β)を有すること(第2の形態)もまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
本発明の塗料用水性樹脂組成物において、上記官能基(α)は、カルボキシル基であり、上記官能基(β)は、オキサゾリン基であることが好ましい。
上記官能基(α)が、カルボキシル基である場合、エマルション粒子が含むポリマー成分(好ましくは、アクリル系ポリマー成分)の原料として、上述したカルボキシル基を有するモノマーを適宜使用できる。
また上記官能基(β)が、オキサゾリン基である場合、上記水溶性ポリマーは、オキサゾリン基含有モノマー由来の構成単位を含むものであることが好ましい。
上記オキサゾリン基含有モノマーとしては、下記一般式(1);
Figure 2020172613
(式中、R、R、R及びRは、同一又は異なって、水素、ハロゲン、アルキル、フェニル又は置換フェニル基を表す。Rは、付加重合性不飽和結合をもつ非環状有機基を表す。)で表される化合物であることが好ましい。
上記オキサゾリン基含有モノマーの具体例としては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロぺニル−5−エチル−2−オキサゾリン等が挙げられる。中でも、工業的に入手容易性の観点から、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが好ましい。
上記オキサゾリン基含有モノマーの配合割合は、全モノマー成分100質量%に対して0.1〜30質量%であることが好ましい。0.1質量%未満であると、充分な架橋が進行せず適度な硬度が発現しないおそれがあり、30質量%を超えると、過度に架橋が進行するおそれがある。好ましくは、0.5〜20質量%であり、より好ましくは、1〜10質量%である。
(塗料)
本発明は、本発明の塗料用水性樹脂組成物を含む塗料(水性塗料)でもある。
本発明の塗料の固形分100質量%中、本発明の塗料用水性樹脂組成物に含まれる樹脂(エマルション粒子が含むポリマー成分及び水溶性ポリマーの合計)の固形分は、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましく、15質量%以上であることが特に好ましい。また、上記樹脂の固形分は、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることが更に好ましい。
本発明の塗料は、更に、顔料を含んでいてもよい。
上記顔料は、有機顔料であってもよく、無機顔料であってもよい。上記有機顔料としては、特に限定されないが、例えば、アゾ顔料、アゾメチン顔料、メチン顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニン顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、ジケトピロロピロール顔料、チオインジゴ顔料、イミノイソインドリン顔料、イミノイソインドリノン顔料、キナクリドンレッドやキナクリドンバイオレット等のキナクリドン顔料、フラバントロン顔料、インダントロン顔料、アントラピリミジン顔料、カルバゾール顔料、モノアリーライドイエロー、ジアリーライドイエロー、ベンゾイミダゾロンイエロー、トリルオレンジ、ナフトールオレンジ、キノフタロン顔料等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。上記無機顔料は、例えば、無機着色剤、防錆顔料、充填材等の1種又は2種以上を使用することができる。該無機着色剤としては、酸化チタン、カーボンブラック、弁柄等が挙げられる。該防錆顔料としては、リン酸金属塩、モリブデン酸金属塩、硼酸金属塩等が挙げられる。該充填材としては、炭酸カルシウム、カオリン、シリカ、タルク、硫酸バリウム、アルミナ、酸化鉄、ガラストーク、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、珪藻土、クレー等の無機質充填材;ガラスフレーク、マイカ等の鱗片状無機質充填材;金属酸化物ウィスカー、ガラス繊維等の繊維状無機質充填材等が挙げられる。
上記顔料の配合量としては、本発明の塗料中の樹脂の固形分100質量部に対し、10〜900質量部とすることが好ましく、より好ましくは100〜800質量部であり、更に好ましくは200〜500質量部である。
本発明の塗料は、更に分散剤;増粘剤;ゲル化剤;可塑剤;安定剤;湿潤剤;防腐剤;老化防止剤;防黴剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤等のその他の添加剤の1種又は2種以上を含んでいても良い。
上記その他の添加剤の配合量としては、本発明の塗料中の樹脂の固形分100質量部に対し、0〜100質量部とすることが好ましく、0〜30質量部とすることがより好ましい。
なお、上記顔料、及び、他の成分は、例えば、ディスパー、バタフライミキサー、プラネタリーミキサー、スパイラルミキサー、ニーダー、ディゾルバー等を用いて、本発明に係る界面活性剤成分や樹脂等と混合され得る。
本発明の塗料は、更に、水及び/又は有機溶剤が添加されてものであっても良い。
上記水及び/又は有機溶剤としては、例えば、水;エチレングリコール、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート等の有機溶媒が挙げられる。水及び/又は有機溶剤の配合量としては、本発明の塗料の固形分濃度を調整するために適宜設定すればよい。
(塗料用水性樹脂組成物の製造方法)
本発明は、ウレタン系ポリマー成分及びアクリル系ポリマー成分を有するエマルション粒子、及び、重量平均分子量が1万〜20万の水溶性ポリマーを含む塗料用水性樹脂組成物の製造方法であって、該製造方法は、ウレタン系ポリマーの水分散体の存在下でアクリル系モノマーを乳化重合してエマルション粒子を得る工程を含む塗料用水性樹脂組成物の製造方法でもある。
本発明に係るエマルション粒子は、ウレタン系ポリマーの水分散体の存在下でアクリル系モノマーを乳化重合して得られるものであるが、ここで行われる乳化重合としては特に限定されず、例えば、フィード法等の通常よく知られている方法を用いて行うことができる。具体的には、ウレタン系ポリマーの水分散体に乳化剤を溶解させ、加熱撹拌下、原料となるアクリル系モノマーを含むモノマー成分及び重合開始剤を滴下する方法や、乳化剤と水とを用いて予め乳化した原料となるモノマー成分を同様に滴下する方法等を挙げることができる。
上記水分散体における水性媒体としては、通常、水が使用されるが、必要に応じて、例えばメタノールのような低級アルコール等の親水性溶媒を併用することもできる。なお、水性媒体の使用量は、得ようとするエマルションの所望の樹脂固形分を考慮して適宜設定すればよい。
上記乳化重合に用いられる乳化剤としては、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤、高分子乳化剤、反応性乳化剤を使用することができる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
中でも、特に耐水性を重視する場合には、重合性基を有する乳化剤、いわゆる反応性乳化剤を使用するのが好ましい。
上記反応性乳化剤とは、モノマー中に不飽和二重結合を有する、その他のモノマーと重合可能な界面活性剤を意味する。具体的には、分子中にビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、プロペニル基等のラジカル重合性の二重結合を有し、非反応性乳化剤と同様に乳化、分散機能を持つ乳化剤である。重合安定性や塗膜性能の観点から、ポリオキシアルキレン鎖を分子構造中に持つものが特に好ましい。
上記反応性乳化剤としては、例えば、ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレート化スルフォネート塩(例えば、日本乳化剤社製、アントックスMS−60等)、プロペニル−アルキルスルホコハク酸エステル塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルフォネート塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンホスフォネート塩(例えば、三洋化成工業社製、エレミノールRS−30等)、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテルスルフォネート塩(例えば、第一工業製薬社製、アクアロンHS−10等)、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルフォネート塩(例えば、第一工業製薬社製、アクアロンKH−10等)やアリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレンのスルフォネート塩(例えば、旭電化工業社製、アデカリアソープSE−10等)、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン硫酸エステル塩(例えば、旭電化工業社製、アデカリアソープSR−10、SR−30等)、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン(例えば、旭電化工業社製、アデカリアソープER−20等)、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル(例えば、第一工業製薬社製、アクアロンRN−20等)、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン(例えば、旭電化工業社製、アデカリアソープNE−10等)等が挙げられる。特に環境面を重視する場合には、非ノニルフェニル型の乳化剤を用いるのが好ましい。なお、上記反応性乳化剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
このような反応性乳化剤の例を以下に示す。
Figure 2020172613
上記(I)〜(VIII)の化学式において、R及びR〜Rは、アルキル基を表す。A及びA〜Aは、アルキレン基を表す。Mは、軽金属又はアンモニウムイオンを表す。m及びnは、整数である。なお、(III)のR〜Rは、アルキル基又は水素原子を表す。
上記反応性乳化剤の配合割合は、特に限定はされないが、例えば、乳化重合における全モノマー成分100重量部に対し、0.5〜10質量%とするのが好ましい。より好ましくは1.0〜5.0質量%、更に好ましくは2.0〜4.0質量%とするのがよい。反応性乳化剤の使用量が多すぎると、塗膜の耐水性を低下させるおそれがあり、一方、少なすぎると、重合安定性が低下しやすい。
上記反応性乳化剤以外の乳化剤を使用する場合の配合割合は、特に限定されないが、塗膜の耐水性及び重合安定性の双方を低下させない観点から、例えば、乳化重合における全モノマー成分100重量部に対して、0.5〜10質量%とすることが好ましい。より好ましくは、1.0〜5.0質量%であり、更に好ましくは、2.0〜4.0質量%である。
上記乳化重合で用いることのできる重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、2,2−アゾビス(2―ジアミノプロパン)ハイドロクロライド等のアゾ化合物;過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素等の過酸化物;等が挙げられる。具体的には、例えば、アゾ系の油性化合物(例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等)、水性化合物(例えば、アニオン系の4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、カチオン系の2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン));レドックス系の油性過酸化物(例えば、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート等)、水性過酸化物(例えば、過硫酸カリウム及び過酸化アンモニウム等);等を挙げることができる。なお、重合開始剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記重合開始剤の使用量は、特に限定されないが、好ましくは、全モノマー成分100重量部に対し、0.05〜1質量%とするのがよく、より好ましくは0.1〜0.5質量%とするのがよい。重合開始剤の使用量が0.05質量%未満であると、重合速度が遅くなって未反応のモノマーが残存しやすくなり、一方、1質量%を超えると、形成される塗膜の耐水性が低下する傾向がある。
上記乳化重合においてはまた、重合開始剤の分解を促進する目的で、例えば、亜硫酸水素ナトリウム等の還元剤や硫酸第一鉄等の遷移金属塩を添加してもよい。乳化重合においては、さらに必要に応じて、pH緩衝剤、キレート剤、連鎖移動剤、成膜助剤等の公知の添加剤を添加してもよい。連鎖移動剤としては、t−ドデシルメルカプタン等のチオール基を有する化合物等が挙げられる。上記連鎖移動剤や調節剤の使用量は、特に制限されないが、例えば、全モノマー成分100重量部に対し、0.01〜5質量%、より好ましくは0.1〜3質量%とするのがよい。
上記エマルション粒子を合成する際に、シランカップリング剤等のその他の添加剤を使用してもよい。
上記エマルション粒子を合成する工程前の反応系のpHは、6以上10未満の範囲に設定することが好ましい。より好ましくは、7以上9.5未満で、更に好ましくは8以上9未満である。
上記反応系内のpHを6以上とする際に用いることのできる中和剤としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン等の有機アミン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸カルシウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸化物等のアルカリ性物質を用いることができる。これらの中でもアンモニア、トリエチルアミン等の有機アミン類といった揮発性をもつアルカリ性物質が好ましく、アンモニアが特に好ましい。
上記乳化重合における重合温度としては、特に限定はなく、好ましくは0〜100℃、より好ましくは40〜95℃とするのがよい。重合温度は一定であってもよいし、重合途中でもしくは各段階によって変化させてもよい。重合時間についても、特に限定はなく、反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、例えば、重合開始から終了まで2〜8時間の範囲とするのが好ましい。重合時の雰囲気については、重合開始剤の効率を高めるため窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うのが一般的である。
上記水溶性ポリマーは、重量平均分子量が1万〜20万の範囲内である限りその重合方法は特に制限されないが、上記水溶性ポリマーが官能基(β)を有する場合、重合体の主鎖に架橋構造を形成し得る官能基(β)を有する構成単位がランダム、ブロック等のいずれの形態で組み込まれたのものであってもよく、官能基(β)を有する構成単位が重合体の主鎖にグラフト重合した形態のものであってもよいが、グラフト重合した形態のものが好ましい。グラフト重合した形態のものであると、架橋効率がよく、少ない使用量でも効果を発揮することができる。
上記水溶性ポリマーの合成は、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、沈殿重合等の重合方法によって行うことができるが、溶液重合が好ましく、水を溶媒とする水溶液重合がより好ましい。
また、重合反応の反応温度は、特に限定されないが、0〜200℃が好ましい。より好ましくは、50〜150℃である。
反応圧力は、特に限定されるものではなく、常圧下、減圧下、加圧下のいずれで反応させてもよいが、常圧下又は減圧下で溶媒を沸騰させながら反応させると、効果的に除熱ができ、反応制御が容易となるので好ましい。
重合反応を行う雰囲気は、反応が進行する限り特に制限されるものではないが、窒素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガス等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。
上記水溶性ポリマーの合成に用いることができる溶媒としては、重合体の原料となるモノマー成分が溶解するものであれば特に限定されないが、例えば、水;アルコール類;エーテル類;ケトン類;エステル類;アミド類;スルホキシド類;炭化水素類;等が挙げられる。これらの中でも、水、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、トルエン、酢酸エチル、及び、これらの混合溶媒が好ましく、水が特に好ましい。また、これら溶媒中には、カルボン酸の中和やpH制御の目的で有機アミン類やアンモニア等が添加されていてもよい。また、水を含む溶媒においては、アルカリ金属水酸化物を使用することもできる。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
なお、以下の製造例において、各種物性等は以下のように評価した。
<Tg>
各段で用いたモノマー組成から、上述したFoxの式を用いて算出した。なお、全ての段で用いたモノマー組成から算出したTgを「トータルTg」として記載した。
<不揮発分(NV)>
得られた塗料用水性樹脂組成物約1gを秤量し、熱風乾燥機にて110℃1時間乾燥させ、乾燥残量を、不揮発分として、乾燥前質量に対する比率を質量%で算出し表示した。
<pH>
pHメーター(堀場製作所社製「F−23」)により25℃での値を測定した。
<N−ビニル環状ラクタム由来の構成単位を有する水溶性ポリマーの製造例>
(製造例A1)
冷却管、窒素導入ライン、及び、温度計を設置した重合容器内に脱イオン水602部を仕込み、窒素ガスを導入することにより、重合容器内を窒素ガス雰囲気とした。室温下で重合容器内の内容物を攪拌しながら0.02%硫酸銅水溶液1.7部添加した。滴下ロートAに脱イオン水186.6部及びN−ビニルピロリドン1053部を添加し、プレミックスを調製した。滴下ロートBに脱イオン水74部及び35%過酸化水素水21.3部を添加した。滴下ロートCに脱イオン水69部及び25%アンモニア水溶液3.3部を添加した。滴下ロートA、滴下ロートB及び滴下ロートCの各内容物を3時間かけて均一に重合容器内に滴下し重合反応を行った。滴下終了後、重合容器の内温が重合熱によって上昇した後、60℃で3時間、重合容器内の内容物を撹拌し、ポリマー溶液A1を得た。
(製造例A2)
冷却管、窒素導入ライン及び温度計を設置した重合容器内に脱イオン水100部、900部の製造例A1で得られたポリマー溶液A1を重合容器内に添加し、窒素ガスを重合容器内に導入することにより、窒素ガス雰囲気とした。室温下で重合容器内の内容物を攪拌しながら85℃まで昇温し、温度が一定になったところでジアセトンアクリルアミド100部、アクリル酸10部、脱イオン水50部及び25%アンモニア水溶液4.7部を混合した水溶液を120分間かけて重合容器内に添加するとともに、過硫酸アンモニウム1.5部を脱イオン水48.5部に溶解させた水溶液を120分間かけて重合容器内に添加した。滴下終了後、脱イオン水200部を重合容器内に添加し、80℃で1時間攪拌することにより、反応を終了した。得られたポリマー溶液の不揮発含量は40.1%であり、ポリマー溶液に含まれているポリマーの重量平均分子量は30000であった。得られたポリマーを水溶性ポリマー(A)とした。
(製造例B)
冷却管、窒素導入ライン及び温度計を設置した重合容器内に脱イオン水594部を仕込んだ。フラスコ内に窒素ガスを導入し、フラスコ内を窒素ガス雰囲気にした。
滴下ロートA内にN−ビニルピロリドン255部、ジアセトンアクリルアミド9部及びメチルメタクリレート26部を添加し、プレミックスを調製した。滴下ロートB内に脱イオン水129部及び2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩6.5部を添加した。
滴下ロートA及び滴下ロートBの各内容物をそれぞれ2時間かけて均一に重合容器内に滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、重合容器内の温度が重合熱によって上昇した後、80℃の温度で2時間撹拌した。
次に、滴下ロートA及び滴下ロートBをそれぞれ脱イオン水51部で洗浄し、得られた洗浄液を重合容器内に添加し、80℃の温度で1時間撹拌した。1時間後、脱イオン水に溶かした2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩10%水溶液2.6部を重合容器内に添加し、さらに80℃の温度で1時間撹拌することにより、水溶性ポリマー溶液を得た。得られた水溶性ポリマー溶液の不揮発分含量は25.0質量%であり、得られたポリマーの重量平均分子量は20000であった。得られたポリマーを水溶性ポリマー(B)とした。
(実施例1)
滴下ロート、攪拌機、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水100部を入れた。
一方、滴下ロート内で脱イオン水52部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10の25%水溶液〕10部、2−エチルへキシルアクリレート66部、メチルメタクリレート108部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2部、ジアセトンアクリルアミド2部、及び、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン2部からなる滴下用プレエマルションを調製した。
フラスコ内の脱イオン水にゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら昇温し80℃に到達させた。80℃に到達後、ウレタン樹脂としてポリカーボネート系のスーパーフレックス460S(第一工業製薬社製、ウレタン樹脂の水分散体であり不揮発分33質量%である)をフラスコ内に60部添加し、続けて5%過硫酸カリウム水溶液18部を添加した。その後、フラスコ内の温度を80℃に到達させてから、滴下用プレエマルションを2時間かけて滴下することでアクリルウレタン複合化エマルションを得た。
滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、25%アンモニア水をフラスコ内に添加し、pHを9に調整して重合を終了した。
得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュ(JISメッシュ、以下同じ)の金網で濾過することにより、不揮発分の含有率が45質量%である樹脂エマルションを得た。
表1に、使用した各モノマーの量を、使用した全モノマー成分合計量100重量部に対する比率(質量部)で示した。得られた樹脂エマルションに、製造例A2で得た水溶性ポリマー(A)のポリマー溶液と、架橋剤であるアジピン酸ジヒドラジドとを配合固形比が100:4:1となるように配合し、塗料用水性樹脂組成物1を調製した。得られた塗料用水性樹脂組成物1について、下記試験方法に従って物性を評価した。評価結果を表1に示す。
(実施例2〜12)
下記表1に示されるように、ウレタン系ポリマー及びモノマー成分の種類及び量を変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、塗料用水性樹脂組成物2〜12を調製した。得られた塗料用水性樹脂組成物2〜12のそれぞれについて、下記試験方法に従って物性を評価した。結果を表1に示す。
(実施例13)
滴下ロート、攪拌機、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水100部を入れた。
一方、滴下ロート内で脱イオン水52部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10の25%水溶液〕10部、2−エチルへキシルアクリレート66部、メチルメタクリレート108部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2部、ジアセトンアクリルアミド2部、及び、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン2部、ウレタン樹脂としてポリカーボネート系のスーパーフレックス460S(第一工業製薬社製、ウレタン樹脂の水分散体であり不揮発分33質量%である)60部からなる滴下用プレエマルションを調製した。
フラスコ内の脱イオン水にゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら昇温し80℃に到達させた。80℃に到達後、5%過硫酸カリウム水溶液18部をフラスコ内に添加した。その後、フラスコ内の温度を80℃に到達させてから、滴下用プレエマルションを2時間かけて滴下することでアクリルウレタン複合化エマルションを得た。
滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、25%アンモニア水をフラスコ内に添加し、pHを9に調整して重合を終了した。
得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュ(JISメッシュ、以下同じ)の金網で濾過することにより、不揮発分の含有率が45質量%である樹脂エマルションを得た。
(比較例1〜5、7)
下記表2に示されるようにウレタン系ポリマー及びモノマー成分の種類及び量を変更し、比較例1、4、7では架橋剤であるアジピン酸ジヒドラジドを配合しなかった以外は、実施例1と同様の操作を行って、塗料用水性樹脂組成物14〜18、20を調製した。得られた塗料用水性樹脂組成物14〜18、20のそれぞれについて、下記試験方法に従って物性を評価した。結果を表2に示す。
(比較例6)
下記表2に示されるようにウレタン系ポリマー及びモノマー成分の種類及び量を変更し、架橋剤であるアジピン酸ジヒドラジドを配合しなかった以外は、実施例13と同様の操作を行って、塗料用水性樹脂組成物19を調製した。得られた塗料用水性樹脂組成物19について、下記試験方法に従って物性を評価した。結果を表2に示す。
表1中の下記記載は、以下の通りである。
<モノマー成分>
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート(Tg:−70℃)
MMA:メチルメタクリレート(Tg:105℃)
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート(Tg:83℃)
HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート(Tg:55℃)
DAAM:ジアセトンアクリルアミド(Tg:65℃)
HALS:4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン(Tg:130℃)
なお、上記モノマーの化合物名の後に括弧書きにて示したTgは、当該モノマーからなるホモポリマーのTg(℃)である。
下記表1、表2において、下記の方法で評価を行った。なお、カーボン汚染性試験は、実施例1〜13、比較例4、5のみについて評価を行った。
<評価方法>
(A)クリヤー塗料配合
塗料用水性樹脂組成物1〜20 100部に、成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールイソブチレート〔JNC(株)製、品番:CS−12〕10部を添加し、ホモディスパーで回転速度1500rpmにて10分間撹拌した後、不揮発分量が37%となるように希釈水、消泡剤(SNデフォーマー777〔シリコン系消泡剤:ノプコ社製〕)を添加した。更に増粘剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカノールUH−420〕の5%水溶液を当該混合物に添加しその状態で30分間攪拌後、300メッシュ金網で濾過することにより、試料を調製した。
(B)エナメル塗料配合
塗料用水性樹脂組成物1〜20 100部に、成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールイソブチレート〔JNC(株)製、品番:CS−12〕10部を添加し、ホモディスパーで回転速度1500rpmにて10分間撹拌した後、顔料ペーストの量が樹脂粒子と顔料ペーストの合計の14体積%となるように、白色顔料ペーストを添加した。さらに、不揮発分量が45質量%となるように適量の希釈水及び適量のシリコーン系消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:SNデフォーマー777〕を当該混合物に添加した後、BH型粘度計〔東京計器(株)製〕で回転速度20rpmにおける25℃での粘度が4500mPa・sとなるように増粘剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカノールUH−420〕の5%水溶液を当該混合物に添加し、その状態で30分間攪拌後、300メッシュ金網で濾過することにより、試料を調製した。
なお、白色顔料ペーストは、脱イオン水210部、分散剤〔花王(株)製、商品名:デモールEP〕60部、分散剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:ディスコートN−14〕50部、湿潤剤〔花王(株)製、商品名:エマルゲンLS−106〕10部、プロピレングリコール60部、酸化チタン〔石原産業(株)製、品番:CR−95〕1000部及びガラスビーズ(直径:1mm)200部をホモディスパーで回転速度3000rpmにて60分間分散させることによって調製した。酸化チタンを分散させた後に、60メッシュ金網で濾過しガラスビーズを除去後、白色顔料ペーストとして使用した。
(1)引っ張り試験
離形紙を貼りつけたガラス板(縦:150mm、横:150mm、厚さ:2mm)の端に試験膜厚が0.3mmになるようにガムテープで枠をつけた試験用基板に上記で得られたクリヤー塗料を塗布し、室温で24時間、80℃で48時間乾燥させた後、形成された塗膜を基板から剥離させ、短冊状(縦:50mm、横:10mm)に切り抜き、−10℃に調温した恒温槽内で2時間入れた後、引っ張り試験機〔(株)島津製作所製、商品名:オートグラフAGS−100D〕を用いて引っ張り速度50mm/minの条件で引っ張り試験を行い、被膜の伸張率(低温伸び率)を評価した。
(評価基準)
◎:5%以上
〇:3%以上、5%未満
×:3%未満
被膜の伸張率(低温伸び率)が3%以上であれば、良好である。
(2)屋外暴露試験
アルミ板〔日本テストパネル(株)製、縦:400mm、横:100mm、厚さ:1mm〕に上記白色塗料(上記エナメル塗料)を10mi1アプリケーターで塗布し、23℃で1週間乾燥させた。試験板を縦方向に半分のところ(200mm)で南面30度の傾斜がつくように折り曲げた。試験板の斜面の部位に関して初期E値(E)を色差計〔日本電色工業(株)製、品番:ZE−6000〕で測定し、JIS Z2381(大気暴露試験方法通則)に準じ、以下の条件にて屋外暴露試験を行った。2ヵ月後に試験板を引き上げ、上記色差計で試験板の斜面の部位に関してE値(E)を測定した。
次に、E値の変化値を式:ΔE=(E)−(E)に基づいて求め、耐汚染性を評価した。
−試験条件−
南面30度、直接暴露(暴露地:大阪府吹田市/(株)日本触媒敷地内)
(評価基準)
◎:2.7以下
〇:2.7を超え、2.9以下
×:2.9を超える
ΔEが2.9以下であれば、良好である。
(3)カーボン汚染性試験
イオン交換水95部にガラスビーズ(直径:1mm)5部を加え、ホモディスパーで回転速度500rpmにて撹拌しながらカーボンブラック〔三菱ケミカル(株)製、商品名:MA−100〕を5部添加した。添加後、回転速度を2500rpmにて30分間分散させた。分散後、60メッシュ金網で濾過しガラスビーズを除去後、カーボン分散液として使用した。
白アクリル板〔日本テストパネル(株))製、縦:150mm、横:70mm、厚さ:2mm〕に上記クリヤー塗料を8milアプリケーターで塗布し、23℃で24時間乾燥させた。乾燥後、試験板に関して初期E値(E)を色差計〔日本電色工業(株)製、品番:ZE−6000〕で測定し、上記カーボン分散液を20milアプリケーターで塗布し、24時間乾燥させた。乾燥後、カーボンブラックを流水と刷毛〔豚毛、毛丈40mm〕を使用して洗い流し、上記色差計で試験板に関してE値(E)を測定した。
次に、E値の変化値を式:ΔE=(E)−(E)に基づいて求め、耐汚染性を評価した。
(評価基準)
◎:36以下
〇:36を超え、39以下
×:39を超える
ΔEが39以下であれば、良好である。
(4)耐候性試験
スレート板〔日本テストパネル(株)製、縦:150mm、横:150mm、厚さ:6mm〕に、溶剤系シーラー〔エスケー化研(株)製、商品名:EXシーラー)を150g/mになるようにエアスプレーにて塗装し、23℃にて24時間乾燥させた後、上記のエナメル塗料を10milアプリケーターにて塗装し、23℃で1週間養生した。養生後の試験板の側面、背面をアルミテープでシールし、試料が塗布された面の60°鏡面光沢を光沢計〔日本電色工業(株)製、品番:VG2000〕で測定し、さらに以下の条件にて200時間耐候性試験を行ない、前記光沢計で当該スレート板の塗装面の光沢を測定し、式:
[光沢保持率(%)]=〔[耐候性試験後の光沢]÷[耐候性試験前の光沢]〕×100
に基づいて求め、以下の評価基準に基づいて耐候性を評価した。
−試験条件−
試験機:メタルウェザー〔KU−R4型:ダイプラ・ウィンテス(株)製)
照射:気温65℃で相対湿度50%の雰囲気中で4時間照射(照射強度:80mW/cm
湿潤:気温35℃で相対湿度98%の雰囲気中で4時間
シャワー:湿潤前後に各30秒
(評価基準)
◎:90%以上
〇:80%以上、90%未満
△:70%以上、80%未満
×:70%未満
光沢保持率が80%以上であれば、良好である。
Figure 2020172613
Figure 2020172613
実施例1〜13の結果から、ウレタン系ポリマー成分及びアクリル系ポリマー成分を有するエマルション粒子、及び、所定の重量平均分子量の水溶性ポリマーを含む塗料用水性樹脂組成物は、耐汚染性と塗膜のクラック防止とを充分に両立できるものであった。一方、比較例1〜3の結果から、ウレタン系ポリマー成分のみからなるエマルション粒子を含む塗料用水性樹脂組成物は、低温伸び率は非常に優れるものの、水溶性ポリマーを添加しても、耐汚染性及び耐候性が充分に良好なものにはならなかった。また、比較例4、5の結果から、アクリル系ポリマー成分のみからなるエマルション粒子を含む塗料用水性樹脂組成物は、低温伸び率が充分ではなく、水溶性ポリマーを添加しても、耐汚染性が充分に良好なものにはならなかった。更に、比較例6、7の結果から、ウレタン系ポリマー成分及びアクリル系ポリマー成分を有するエマルション粒子を含む塗料用水性樹脂組成物であっても、所定の重量平均分子量の水溶性ポリマーを含まない場合は、耐汚染性が充分に良好なものではなかった。

Claims (11)

  1. 塗料用水性樹脂組成物であって、
    該組成物は、ウレタン系ポリマー成分及びアクリル系ポリマー成分を有するエマルション粒子、及び、重量平均分子量が1万〜20万の水溶性ポリマーを含む
    ことを特徴とする塗料用水性樹脂組成物。
  2. 前記組成物は、エマルション粒子と前記水溶性ポリマーとが架橋構造を形成し得るものである
    ことを特徴とする請求項1に記載の塗料用水性樹脂組成物。
  3. 前記エマルション粒子は、官能基(α)を有し、
    前記水溶性ポリマーは、官能基(β)を有し、
    前記組成物は、該官能基(α)と該官能基(β)との間で反応して架橋構造を形成し得る架橋剤(C)を含む
    ことを特徴とする請求項2に記載の塗料用水性樹脂組成物。
  4. 前記官能基(α)及び官能基(β)は、それぞれ、カルボニル基であり、前記架橋剤(C)は、ヒドラジン系架橋剤であるか、又は、
    前記官能基(α)及び官能基(β)は、それぞれ、カルボキシル基であり、前記架橋剤(C)は、オキサゾリン系架橋剤である
    ことを特徴とする請求項3に記載の塗料用水性樹脂組成物。
  5. 前記エマルション粒子は、官能基(α)を有し、
    前記水溶性ポリマーは、該官能基(α)と反応して架橋構造を形成し得る官能基(β)を有する
    ことを特徴とする請求項2に記載の塗料用水性樹脂組成物。
  6. 前記官能基(α)は、カルボキシル基であり、
    前記官能基(β)は、オキサゾリン基である
    ことを特徴とする請求項5に記載の塗料用水性樹脂組成物。
  7. 前記ウレタン系ポリマー成分と前記アクリル系ポリマー成分との質量割合は、1:90〜50:50の範囲内である
    ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の塗料用水性樹脂組成物。
  8. 前記水溶性ポリマーは、N−ビニル環状ラクタム由来の構成単位を50質量%以上有する
    ことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の塗料用水性樹脂組成物。
  9. 前記ウレタン系ポリマー成分は、カーボネート結合を有するウレタン系ポリマー成分である
    ことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の塗料用水性樹脂組成物。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の塗料用水性樹脂組成物を含む
    ことを特徴とする塗料。
  11. ウレタン系ポリマー成分及びアクリル系ポリマー成分を有するエマルション粒子、及び、重量平均分子量が1万〜20万の水溶性ポリマーを含む塗料用水性樹脂組成物の製造方法であって、
    該製造方法は、ウレタン系ポリマーの水分散体の存在下でアクリル系モノマーを乳化重合してエマルション粒子を得る工程を含む
    ことを特徴とする塗料用水性樹脂組成物の製造方法。
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