JP2020122126A - 樹脂組成物及びその成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、導電性、滞留後の導電安定性及び屈曲特性に優れた樹脂組成物及びそれを含む成形体を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して、(B)カーボンブラック5〜30質量部、(C)オレフィン樹脂6〜10質量部、及び(D)エステル化合物0.05〜5質量部を少なくとも含み、(A)ポリアセタール樹脂を含むマトリックス中に、(C)オレフィン樹脂を含む分散粒子が分散している樹脂組成物であり、樹脂組成物を含む成形体の表面から深さ30μmに存在する分散粒子の平均長径が2μm以下であることを特徴とする、樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアセタール樹脂組成物及びそれを含む成形体に関する。
ポリアセタール樹脂は、機械的強度、耐薬品性及び摺動性のバランスに優れ、その加工が容易であることから、代表的エンジニアリングプラスチックとして、電気機器、自動車部品及びその他精密機械を含めた機構部品を中心に広範囲に用いられている。ただし、ポリアセタール樹脂自体は電気絶縁体であるため、摺動の際に発生する静電気の除去性能と導電性に劣り、特に高度な導電性を要求される用途には用いられにくい。
例えば、電気絶縁体であるポリアセタール樹脂に対して、カーボンブラック、その他の導電性フィラーによって導電性を付与させたポリアセタール樹脂組成物についての提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。また、導電性と靭性を向上させた導電性ポリアセタール樹脂を得る技術として、例えば、ポリアセタール樹脂に導電性カーボンブラックとポリウレタンエラストマーとを組み合わせる技術(例えば、特許文献1、2参照)やポリアセタール樹脂に導電性カーボンブラックとオレフィン樹脂とを組み合わせる技術(例えば、特許文献3参照)が提案されている。
特公平06−51822号公報 特表2001−503559号公報 特開2016−94577号公報
しかしながら、カーボンブラック、その他の導電性フィラーによって導電性を付与されたポリアセタール樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂が本来持つ靭性が大幅に低下し、応用範囲が限定されてしまうという問題を有している。また、ポリアセタール樹脂に導電性カーボンブラックとポリウレタンエラストマーとを組み合わせる技術や導電性カーボンブラックとオレフィン樹脂とを組み合わせる技術では、経時劣化に問題がある。
さらに、近年において、軽量化及び低コスト化を目的として、自動車を始め、電気電子機器等の分野においての金属部品の樹脂化が急速に進んでいる。これらの樹脂部品には、金属並みの導電性、滞留後の導電安定性、変形に対しても割れない靭性が要求される。
そこで、本発明は、導電性、滞留後の導電安定性及び屈曲特性に優れた樹脂組成物及びそれを含む成形体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上述した従来技術の課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリアセタール樹脂、カーボンブラック、オレフィン樹脂、及びエステル化合物を少なくとも含み、ポリアセタール樹脂を含むマトリックス中にオレフィン樹脂を含む分散粒子が分散した構造をもつ樹脂組成物において、オレフィン樹脂を含む分散粒子を特定の径に制御することで、上記従来課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本実施形態は以下の通りである。
[1]
(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して、(B)カーボンブラック5〜30質量部、(C)オレフィン樹脂6〜10質量部、及び(D)エステル化合物0.05〜5質量部を少なくとも含み、前記(A)ポリアセタール樹脂を含むマトリックス中に、前記(C)オレフィン樹脂を含む分散粒子が分散している樹脂組成物であり、前記樹脂組成物を含む成形体の表面から深さ30μmに存在する前記分散粒子の平均長径が2μm以下であることを特徴とする、樹脂組成物。
[2]
前記分散粒子の平均長径が1.5μm以下である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]
前記(C)オレフィン樹脂が6〜9質量部である、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4]
前記(B)カーボンブラックのフタル酸ジブチル吸油量が、100〜300mL/100gである、[1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5]
前記(B)カーボンブラックのよう素吸着法によるBET比表面積が、20〜100mg/gである、[1]〜[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]
前記(D)エステル化合物が、脂肪族ジエステル及び/又は脂肪族トリエステルである、[1]〜[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]
前記(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して、(E)エポキシ化合物0.1〜6質量部をさらに含む、[1]〜[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8]
[1]〜[7]のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物を含むことを特徴とする、成形体。
本発明の樹脂組成物によれば、導電性、滞留後の導電安定性及び屈曲特性を向上させることができる。
屈曲特性試験用の試験片を示す概略正面図である。 二軸押出機を模式的に示す概略構成図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に制限するものではない。本発明は、その要旨の範囲内で種々変化して実施することができる。
[ポリアセタール樹脂組成物]
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう。)は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して、(B)カーボンブラック5〜30質量部、(C)オレフィン樹脂6〜10質量部、(D)エステル化合物0.05〜5質量部を少なくとも含み、(A)ポリアセタール樹脂を含むマトリックス中に、(C)オレフィン樹脂を含む分散粒子が分散しており、当該樹脂組成物を含む成形体の表面から深さ30μmに存在する該分散粒子の平均長径が2μm以下である。
<(A)ポリアセタール樹脂>
本実施形態に係る(A)ポリアセタール樹脂(以下、単に「(A)成分」と称する場合がある。)としては、ポリアセタールホモポリマー及びポリアセタールコポリマーが挙げられ、公知のものを用いてもよい。
ポリアセタールホモポリマーは、ホルムアルデヒドの単量体又はその3量体(トリオキサン)及び4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーを単独重合して得られるものである。したがって、ポリアセタールホモポリマーは、実質的にオキシメチレン単位からなる。
ポリアセタールコポリマーは、ホルムアルデヒドの単量体又はその3量体(トリオキサン)及び4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマール等のグリコール又はジグリコールの環状ホルマール等の、環状エーテル又は環状ホルマールとを共重合させて得られるものである。また、ポリアセタールコポリマーとして、ホルムアルデヒドの単量体及び/又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、単官能グリシジルエーテルとを共重合させて得られる分岐を有するポリアセタールコポリマー、並びに、多官能グリシジルエーテルとを共重合させて得られる架橋構造を有するポリアセタールコポリマーを用いることもできる。
さらには、(A)ポリアセタール樹脂は、両末端又は片末端に水酸基等の官能基を有する化合物、例えばポリアルキレングリコール、の存在下、ホルムアルデヒドの単量体又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーを重合して得られるブロック成分を有するポリアセタールホモポリマーであってもよい。
同じく、(A)ポリアセタール樹脂は、両末端又は片末端に水酸基等の官能基を有する化合物、例えば水素添加ポリブタジエングリコール、の存在下、ホルムアルデヒドの単量体又はその3量体(トリオキサン)及び4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと環状エーテル又は環状ホルマールとを共重合させて得られるブロック成分を有するポリアセタールコポリマーであってもよい。
以上のように、本実施形態に係る(A)ポリアセタール樹脂として、ポリアセタールホモポリマー及びポリアセタールコポリマーのいずれも用いられ得る。また、これら(A)ポリアセタール樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。この場合、(A)ポリアセタール樹脂は、ポリアセタールコポリマーを50質量%以上含むものが好ましく、80質量%以上含むものがより好ましく、実質的にほぼすべて(95質量%以上)がポリアセタールコポリマーであることが最も好ましい。なお、ここでのパーセンテージは、(A)ポリアセタール樹脂の全体量を100質量%としたものに基づく。
ポリアセタールコポリマーを得る方法について、以下に詳細に述べる。
トリオキサンを用いてポリアセタールコポリマーを得る場合、上記1,3−ジオキソラン等のコモノマーは、一般的には、トリオキサン100mol%に対して0.1〜60mol%が好ましく、より好ましくは0.1〜20mol%、更に好ましくは0.13〜10mol%用いられる。
ポリアセタールコポリマーの重合に用いられる重合触媒としては、ルイス酸、プロトン酸及びそのエステル又は無水物等のカチオン活性触媒が好ましい。ルイス酸としては、例えば、ホウ酸、スズ、チタン、リン、ヒ素及びアンチモンのハロゲン化物が挙げられ、より具体的には、三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化リン、五塩化リン、五フッ化アンチモン及びその錯化合物又は塩が挙げられる。また、プロトン酸、そのエステル又は無水物の具体例としては、パークロル酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パークロル酸−3級ブチルエステル、アセチルパークロラート及びトリメチルオキソニウムヘキサフルオロホスフェートが挙げられる。これらの中でも、三フッ化ホウ素;三フッ化ホウ素水和物;及び、酸素原子又は硫黄原子を含む有機化合物と三フッ化ホウ素との配位錯化合物が好ましく、具体的には、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル及び三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテルが好適な例として挙げられる。
また、ポリアセタールコポリマーを得る際には、重合触媒に加えて、メチラール等の重合連鎖剤(連鎖移動剤)を適宜用いてもよい。さらにメチラールを用いる際、含有水分量が100質量ppm以下で含有メタノール量が1質量%以下のもの、より好ましくは、含有水分量が50質量ppm以下で含有メタノール量が0.7質量%以下のメチラールが好ましい。
ポリアセタールコポリマーは、従来公知の方法、例えば、米国特許第3027352号明細書、同第3803094号明細書、独国特許発明第1161421号明細書、同第1495228号明細書、同第1720358号明細書、同第3018898号明細書、特開昭58−98322号公報及び特開平7−70267号公報に記載の方法によって重合することができる。上記の重合により得られたポリアセタールコポリマーには、熱的に不安定な末端部(−(OCH2)n−OH基;以下、「不安定末端部」という。)が存在するため、そのままでは実用に供することは困難である。そこで、不安定末端部の分解除去処理(末端安定化)を実施することが好ましく、具体的には、以下に示す特定の不安定末端部の分解除去処理を行うことが好適である。すなわち、その特定の不安定末端部の分解除去処理では、下記一般式(1)で表される少なくとも1種の第4級アンモニウム化合物の存在下に、ポリアセタールコポリマーの融点以上260℃以下の温度で、ポリアセタールコポリマーに対して、それを溶融させた状態で加熱処理を施すことが好ましい。
[R1234N+]nn- (1)
ここで、式(1)中、R1、R2、R3及びR4は、各々独立して、炭素数1〜30の置換又は非置換のアルキル基;炭素数6〜20のアリール基;炭素数1〜30の置換又は非置換のアルキル基における少なくとも1個の水素原子が炭素数6〜20のアリール基で置換されたアラルキル基;又は、炭素数6〜20のアリール基における少なくとも1個の水素原子が炭素数1〜30の置換又は非置換のアルキル基で置換されたアルキルアリール基を示し、置換又は非置換のアルキル基は直鎖状、分岐状、若しくは環状である。上記置換アルキル基における置換基は、ハロゲン原子、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、又はアミド基であると好ましい。また、上記非置換のアルキル基、アリール基、アラルキル基及びアルキルアリール基において、水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1〜3の整数を示す。Xは水酸基、又は、炭素数1〜20のカルボン酸、ハロゲン化水素以外の水素酸、オキソ酸、無機チオ酸若しくは炭素数1〜20の有機チオ酸の酸残基を示す。
第4級アンモニウム化合物は、上記一般式(1)で表わされるものであれば特に制限はないが、本発明による上記効果をより有効かつ確実に奏する観点から、一般式(1)におけるR1、R2、R3及びR4が、各々独立して、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基であることが好ましい。具体的には、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム等の水酸化物;それらのアンモニウムの塩酸、臭酸、フッ酸等の水素酸塩;それらのアンモニウムの硫酸、硝酸、燐酸、炭酸、ホウ酸、塩素酸、よう素酸、ケイ酸、過塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、クロロ硫酸、アミド硫酸、二硫酸、トリポリ燐酸等のオキソ酸塩;それらのアンモニウムのチオ硫酸等のチオ酸塩;それらのアンモニウムの蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソ酪酸、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸、シュウ酸等のカルボン酸塩が挙げられる。これらの中でも、アンモニウムの水酸化物(OH-)、並びに、硫酸(HSO4 -、SO4 2-)、炭酸(HCO3 -、CO3 2-)、ホウ酸(B(OH)4 -)、及びカルボン酸の塩が好ましい。カルボン酸の中では、蟻酸、酢酸、プロピオン酸が特に好ましい。第4級アンモニウム化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。また、上記第4級アンモニウム化合物に加えて、公知の不安定末端部の分解促進剤であるアンモニアやトリエチルアミン等のアミン類を併用してもよい。
第4級アンモニウム化合物の使用量は、ポリアセタールコポリマーと第4級アンモニウム化合物との合計質量に対する下記式(2)で表わされる第4級アンモニウム化合物由来の窒素量に換算して、好ましくは0.05〜50質量ppm、より好ましくは1〜30質量ppmである。
P×14/Q (2)
ここで、式(2)中、Pは第4級アンモニウム化合物のポリアセタールコポリマーに対する濃度(質量ppm)を示し、14は窒素の原子量であり、Qは第4級アンモニウム化合物の分子量を示す。
第4級アンモニウム化合物の使用量が0.05質量ppm以上であると不安定末端部の分解除去速度の低下を抑制しやすくなり、50質量ppm以下であると不安定末端部の分解除去後のポリアセタールコポリマーの色調の悪化を抑制しやすくなる。
本実施形態に係る(A)ポリアセタール樹脂の不安定末端部は、融点以上260℃以下の温度でポリアセタールコポリマーを溶融させた状態で熱処理すると、分解除去されるので好ましい。この分解除去処理に用いる装置としては特に制限はないが、押出機、ニーダー等が好適である。分解により発生したホルムアルデヒドは通常、減圧下で除去される。第4級アンモニウム化合物をポリアセタールコポリマー中に存在させる方法には特に制約はなく、例えば、重合触媒を失活する工程において水溶液として添加する方法、重合により生成したポリアセタールコポリマーパウダーに吹きかける方法が挙げられる。いずれの方法を用いても、ポリアセタールコポリマーを加熱処理する工程において、そのコポリマー中に第4級アンモニウム化合物が存在していればよい。例えば、ポリアセタールコポリマーが溶融混練され押し出される押出機の中に第4級アンモニウム化合物を注入してもよい。あるいは、その押出機等を用いて、ポリアセタールコポリマーに充填剤や顔料を配合する場合、ポリアセタールコポリマーを含む樹脂ペレットに第4級アンモニウム化合物をまず添着し、その後の充填剤や顔料の配合時に不安定末端部の分解除去処理を行ってもよい。
不安定末端部の分解除去処理は、重合により得られたポリアセタールコポリマーと共存する重合触媒を失活させた後に行うことも可能であり、重合触媒を失活させずに行うことも可能である。重合触媒の失活処理としては、アミン類(例えば、トリエチルアミン)等の塩基性の水溶液中で重合触媒を中和失活する方法が挙げられる。重合触媒の失活を行わない場合、ポリアセタールコポリマーの融点以下の温度で不活性ガス雰囲気下にてそのコポリマーを加熱し、重合触媒を揮発により減少させた後、不安定末端部の分解除去操作を行うことも有効な方法である。
上述のような不安定末端部の分解除去処理により、不安定末端部がほとんど存在しない非常に熱安定性に優れたポリアセタールコポリマーを得ることができる。
また、本実施形態で用いる(A)ポリアセタール樹脂のメルトフローレート(以下、「MFR」ともいう。)(ISO1133準拠、190℃、2.16kg荷重)は、生産性と屈曲特性の観点から、好ましくは1〜50g/10分、より好ましくは1〜40g/10分、最も好ましくは2〜15g/10分の範囲である。
MFRが上記範囲内となる(A)ポリアセタール樹脂を得る方法として、具体的には、ポリアセタール樹脂の製造において、メチラール等に代表されるような連鎖移動剤の添加量を調節すること等が挙げられる。
本実施形態において、樹脂組成物100質量%中における(A)ポリアセタール樹脂の含有量は、
60質量%以上としてよく、好ましくは65質量%以上であり、より好ましくは68質量%以上である。
<(B)カーボンブラック>
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、(B)カーボンブラック(以下、単に「(B)成分」と称する場合がある。)を含む。
本実施形態の樹脂組成物における(B)カーボンブラックの含有量は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対し、5〜30質量部であり、好ましくは8〜30質量部であり、より好ましくは10〜25質量部である。5質量部以上であれば高い導電性が得られ、30質量部以下であれば成形体の割れを抑えられる。
本実施形態に用いられる(B)カーボンブラックは、超導電性カーボンブラックではなく、フタル酸ジブチル(DBP)吸油量が低く、かつよう素吸着法によるBET比表面積が低いことが好ましい。具体的には、フタル酸ジブチル吸油量が100〜300mL/100gであり、よう素吸着法によるBET比表面積が20〜100mg/gであることが好ましい。この範囲にあれば、成形体の割れを抑え、かつ寸法精度やMFRに優れたポリアセタール樹脂組成物を得ることができる。
(B)カーボンブラックのDBP吸油量は、より好ましくは120〜250mL/100gであり、さらに好ましくは150〜200mL/100gである。
(B)カーボンブラックのよう素吸着法によるBET比表面積は、より好ましくは30〜90mg/gであり、さらに好ましくは40〜80mg/gである。
なお、よう素吸着法によるBET比表面積はISO1304に基づいて測定される値であり、フタル酸ジブチル吸油量はISO4656に基づいて測定される値である。
上述のカーボンブラックは、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合せて用いてもよい。
(B)カーボンブラックの製法は、特に制限されず、オイルファーネス法、ランプブラック法、チャンネル法、ガスファーネス法、アセチレン分解法、サーマル法等のいずれでも構わない。
<(C)オレフィン樹脂>
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、(C)オレフィン樹脂(以下、単に「(C)成分」と称する場合がある。)を含む。
本実施形態における(C)オレフィン樹脂は、下記一般式(3)により表されるオレフィン化合物のホモ重合体、下記一般式(3)で表されるオレフィン化合物を全体のモノマー単位に対して60mol%以上の範囲で含む共重合体、及びそれらの変性体からなる群より選ばれる1種以上のオレフィン樹脂である。
Figure 2020122126
・・・(3)
上記式(3)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、カルボキシル基、2〜5個の炭素原子を含むアルキル化カルボキシ基、2〜5個の炭素原子を有するアシルオキシ基、又はビニル基を表す。
(C)オレフィン樹脂として、具体的には、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、ポリプロピレン−ブテン共重合体、ポリブテン、ポリブタジエンの水添物、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタアクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、エチレン−ブテン共重合体が好ましい。
(C)オレフィン樹脂として、変性されたもの(変性体)も適用できる。変性体として、具体的には、オレフィン樹脂を形成している重合体とは異なる他のビニル化合物の一種以上をグラフトさせたグラフト共重合体;α,β−不飽和カルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ナジック酸等)又はその酸無水物で(必要により過酸化物を併用して)変性したもの;オレフィン化合物と酸無水物を共重合したもの等が挙げられる。
ただし、本実施形態においては、(C)オレフィン樹脂は、(A)ポリアセタール樹脂の熱安定性や高導電性発現の観点からは、酸変性されていないオレフィン樹脂であることが好ましい。ここで「酸変性されていない」とは、オレフィン樹脂が、α,β−不飽和カルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ナジック酸)及び/又はその酸無水物等で(必要により過酸化物を併用して)変性されておらず、各種のオレフィン類と酸無水物を共重合したものでもないことを指す。
本実施形態の樹脂組成物における(C)オレフィン樹脂の含有量は、十分な屈曲特性及び滞留後の導電安定性を付与させたポリアセタール樹脂組成物を得るといった観点から、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対し、6〜10質量部であり、好ましくは6〜9質量部であり、より好ましくは6〜8質量部である。
<(D)エステル化合物>
本実施形態におけるポリアセタール樹脂組成物は、(D)エステル化合物(以下、単に「(D)成分」と称する場合がある。)を含む。(D)エステル化合物を含むことにより、押出加工時において(A)ポリアセタール樹脂中への(B)カーボンブラックの分散性が向上し、押出機からストランドが押し出される際に発生する異物(目ヤニ)の量を少量に抑えることができる。これにより、目ヤニの混入による導電性の低下を抑えることができる。これに加え、ポリアセタール樹脂組成物の成形時においても、金型と金型汚染の原因となる物質の間に(D)エステル化合物が介在するようになり、連続成形時の金型汚染を低いレベルに抑えることができ、汚染されても汚染物を容易に除去することができる。また、ポリアセタール樹脂組成物に(D)エステル化合物を含むことで、長期間の靱性保持性能も得ることができる。
本実施形態における(D)エステル化合物は、炭素数4〜30の脂肪酸と炭素数2〜30の脂肪族アルコールとからなるエステルであることが好ましい。これらの(D)エステル化合物の成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、(D)エステル化合物は成形加工時に液体であることが好ましい。
脂肪酸として、具体的にはは、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナンと酸、カプリル酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、ナノデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ステアロール酸等の一価の脂肪酸;コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸等の二価の脂肪酸等が挙げられる。これらの中では、二価の脂肪酸が好ましい。
脂肪族アルコールとして、具体的には、イソデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、セリルアルコール、ベヘニルアルコール、メリシルアルコール、ヘキシルデシルアルコール、オクチルドデシルアルコール、デシルミリスチルアルコール、デシルステアリルアルコール、ユニリンアルコール等の飽和又は不飽和アルコール;エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等のポリオール等が挙げられる。これらの中では、三価以上のポリオールが好ましい。
本実施形態において用いられる(D)エステル化合物としては、靱性の保持の観点から、脂肪族ジエステル及び脂肪族トリエステルからなる群から選択される1種又は2種のものが好ましい。例えば、アジピン酸ジイソデシル、トリメチロールプロパントリドデカン酸エステル等が挙げられる。
本実施形態の(D)エステル化合物として用いられる物質は、単一成分のものであっても、2種以上の物質の混合物であってもよい。
また、本実施形態の樹脂組成物における(D)エステル化合物の含有量は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して、0.05〜5.0質量部であり、好ましくは0.1〜3質量部、より好ましくは0.5〜2.5質量部である。このような範囲とすることで、連続成形時の金型汚染を抑制でき、かつ汚染されても汚染物を容易に除去することができる傾向にある。また、高い導電性を維持し、かつ高い靱性及び長期間の靱性を付与することができ、成形品の割れを抑えることができる傾向にある。
(D)エステル化合物の配合方法としては、少なくとも一部の(A)ポリアセタール樹脂と(D)エステル化合物とのマスターバッチを事前に作製し、当該マスターバッチを用いて本実施形態の組成物を二軸押出機等にて混練すると、より分散性が向上し、(D)エステル化合物配合による効果をより奏し、特に引張破壊呼び歪の向上をよりもたらす傾向にある。
<(E)エポキシ化合物>
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、(E)エポキシ化合物(以下、単に「(E)成分」と称する場合がある。)をさらに含むことが好ましい。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物における(E)エポキシ化合物の含有量は、長期連続成形時の金型汚染が少ないポリアセタール樹脂組成物を得るといった観点と、高い靱性及び長期間の靱性保持の観点とから、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対し、0.1〜10質量部であることが好ましく、0.1〜6質量部であることがより好ましく、0.5〜5質量部であることがより好ましい。
(E)エポキシ化合物として、具体的には、モノ又は多官能グリシジル誘導体、又は不飽和結合をもつ化合物を酸化してエポキシ基を生じさせた化合物等が挙げられる。
モノ又は多官能グリシジル誘導体として、具体的には、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、2−メチルオクチルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、ベヘニルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(エチレンオキシドのユニット;2〜30)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(プロピレンオキシドのユニット;2〜30)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等が挙げられる。
また、他のモノ又は多官能グリシジル誘導体としては、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ソルビタンモノエステルジグリシジルエーテル、ソルビタンモノエステルトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ジグリセリントリグリシジルエーテル、ジグリセリンテトラグリシジルエーテル、クレゾールノボラックとエピクロルヒドリンとの縮合物(エポキシ等量;100〜400、軟化点;20〜150℃)、グリシジルメタクリレート、ヤシ脂肪酸グリシジルエステル、大豆脂肪酸グリシジルエステル等が挙げられる。
不飽和結合をもつ化合物を酸化してエポキシ基を生じさせた化合物として、具体的には、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、1,2−エポキシ−4−(2−メチルオキシラニル)−1−メチルシクロヘキサン、リモネンオキサイド等が挙げられる。
上記エポキシ化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、(E)エポキシ化合物に加えて、エポキシ化合物硬化性添加剤をさらに含むことがより好ましい。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物におけるエポキシ化合物硬化性添加剤は、長期連続成形時の金型汚染が少ないポリアセタール樹脂組成物を得るといった観点と、高い靱性及び長期間の靱性保持の観点とから、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上10質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上5質量部以下であることがさらに好ましい。
エポキシ化合物硬化性添加剤としては、塩基性窒素化合物、塩基性リン化合物、その他のエポキシ硬化作用(効果促進作用を含む)を持つ化合物等が挙げられる。
エポキシ化合物硬化性添加剤として、具体的には、イミダゾール;1−ヒドロキシエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ヘプタデシルイミダゾール、1−ビニル−2−フェニルイミダゾール等の置換イミダゾール;オクチルメチルアミン、ラウリルメチルアミン等の脂肪族2級アミン;ジフェニルアミン、ジトリルアミン等の芳香族2級アミン;トリラウリルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルステアリルアミン、トリステアリルアミン等の脂肪族3級アミン;トリトリルアミン、トリフェニルアミン等の芳香族3級アミン;セチルモルホリン、オクチルモルホリン、P−メチルベンジルモルホリン等のモルホリン化合物;ジシアンジアミド、メラミン、尿素等へのアルキレンオキシド付加物(付加モル数1モル以上20モル以下)、トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン等のリン化合物等が挙げられる。
これらのエポキシ化合物硬化性添加剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<安定剤>
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、従来ポリアセタール樹脂組成物に使用されている各種安定剤を含むことができる。安定剤として、具体的には、下記の酸化防止剤、ホルムアルデヒド又はギ酸の捕捉剤等が挙げられる。これらは1種のみを単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。
酸化防止剤としては、ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤として、具体的には、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、1,4−ブタンジオール−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、トリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)等が挙げられる。
また、上記以外のヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、テトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネートメタン、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、N,N’−ビス−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プリピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−テトラメチレンビス−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニルジアミン、N,N’−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニル)ヒドラジン、N−サリチロイル−N’−サリチリデンヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、N,N’−ビス(2−(3−(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)オキシアミド等も挙げられる。
上述したヒンダードフェノール系酸化防止剤の中でも、ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、トリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、テトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタンが好ましい。
ホルムアルデヒド又はギ酸の捕捉剤として、具体的には、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む化合物及びその重合体、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、カルボン酸塩等が挙げられる。
ホルムアルデヒド反応性窒素を含む化合物及びその重合体として、具体的には、ジシアンジアミド、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドとの共縮合物、ナイロン4−6、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン6−12、ナイロン12、ナイロン6/6−6、ナイロン6/6−6/6−10、ナイロン6/6−12等のポリアミド樹脂、ポリ−β−アラニン、ポリアクリルアミド等が挙げられる。これらの中では、メラミンとホルムアルデヒドとの共縮合物、ポリアミド樹脂、ポリ−β−アラニン及びポリアクリルアミドが好ましく、ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、ポリアミド樹脂及びポリ−β−アラニンがより好ましい。
アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、及びカルボン酸塩として、具体的には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム若しくはバリウム等の水酸化物、上記金属の炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、硼酸塩、カルボン酸塩等が挙げられる。ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、カルシウム塩が好ましい。カルシウム塩として、具体的には、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、珪酸カルシウム、硼酸カルシウム、及び脂肪酸カルシウム塩(ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム等)等が挙げられ、これら脂肪酸は、ヒドロキシル基で置換されていてもよい。これらの中では、ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、脂肪酸カルシウム塩(ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム等)がより好ましい。
上述した各種安定剤の好ましい組み合わせは、ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、トリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)又はテトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタンに代表されるヒンダードフェノール系酸化防止剤と、ポリアミド樹脂及びポリ−β−アラニンに代表されるホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体と、脂肪酸カルシウム塩に代表されるアルカリ土類金属の脂肪酸塩との組合せである。
上述したそれぞれの安定剤の含有量は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対し、酸化防止剤として、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が0.1質量部以上2質量部以下、ホルムアルデヒドやギ酸の捕捉剤として、例えば、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体が0.1質量部以上3質量部以下、アルカリ土類金属の脂肪酸塩が0.1質量部以上1質量部以下の範囲であると好ましい。
<添加剤>
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、かつ所望の特性に応じて、従来ポリアセタール樹脂組成物に使用されている各種添加剤を含むことができる。添加剤として、具体的には、下記の無機充填剤、結晶核剤、導電剤、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、顔料等が挙げられる。これらは1種のみを単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。
無機充填剤として、具体的には、繊維状、粉粒子状、板状、中空状等の充填剤が用いられる。
繊維状充填剤として、具体的には、ガラス繊維、炭素繊維、シリコーン繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維;ステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属繊維等の無機質繊維等が挙げられる。また、繊維長の短いチタン酸カリウムウイスカー、酸化亜鉛ウイスカー等のウイスカー類等;芳香族ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂等の高融点有機繊維状物質等も挙げられる。
粉粒子状充填剤として、具体的には、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、クレー、珪藻土、ウォラストナイトのような珪酸塩、酸化鉄、酸化チタン、アルミナのような金属酸化物、硫酸カルシウム、硫酸バリウムのような金属硫酸塩、炭酸マグネシウム、ドロマイト等の炭酸塩、その他炭化珪素、窒化硅素、窒化硼素、各種金属粉末等が挙げられる。
板状充填剤として、具体的には、マイカ、フレーク状ガラス、各種金属箔等が挙げられる。
中空状の充填剤として、具体的には、ガラスバルーン、シリカバルーン、シラスバルーン、金属バルーン等が挙げられる。
これらの無機充填剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの無機充填剤は表面処理されたもの、未表面処理のもの、何れも使用可能であるが、ポリアセタール樹脂組成物を含む成形体の表面の平滑性、機械的特性の観点から、表面処理の施されたものが好ましい場合がある。
表面処理剤としては従来公知のものが使用可能であり、具体的には、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、ジルコニウム系等の各種カップリング処理剤等が挙げられる。
カップリング処理剤として、具体的には、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリスステアロイルチタネート、ジイソプロポキシアンモニウムエチルアセテート、n−ブチルジルコネート等が挙げられる。
無機充填剤は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上200質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上100質量部以下であることがより好ましく、1質量部以上50質量部以下であることがさらに好ましい。
結晶核剤として、具体的には、窒化ホウ素等が挙げられる。結晶核剤は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対し、0.001質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.003質量部以上7質量部以下であることがより好ましく、0.005質量部以上5質量部以下であることがさらに好ましい。
導電剤として、具体的には、上記(B)成分として挙げたもの以外のカーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛、炭素繊維、カーボンナノチューブ、金属粉末又は金属繊維等が挙げられる。
導電剤は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上100質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以上70質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上50質量部以下であることがさらに好ましい。
熱可塑性樹脂として、具体的には、上記(C)成分として挙げたもの以外のオレフィン樹脂等が挙げられ、より具体的には、上記一般式(3)により表されるオレフィン化合物を全体のモノマー単位に対して40mol%未満の範囲で含む共重合体、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。また、これらの変性物も挙げられる。
熱可塑性樹脂は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、0.1質量部以上200質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以上150質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上100質量部以下であることがさらに好ましい。
熱可塑性エラストマーとして、具体的には、スチレン系エラストマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレンープロピレンゴム、アクリルゴム、塩素化ポリエチレン等が挙げられる。
熱可塑性エラストマーは、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、0.1質量部以上200質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以上150質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上100質量部以下であることがさらに好ましい。
顔料として、具体的には、無機系顔料、有機系顔料、メタリック系顔料、蛍光顔料等が挙げられる。無機系顔料とは、樹脂の着色用として一般的に使用されているものをいい、具体的には、硫化亜鉛、酸化チタン、硫酸バリウム、チタンイエロー、コバルトブルー、燃成顔料、炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩;カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック等が挙げられる。有機系顔料として、具体的には、縮合ウゾ系、イノン系、フロタシアニン系、モノアゾ系、ジアゾ系、ポリアゾ系、アンスラキノン系、複素環系、ペンノン系、キナクリドン系、チオインジコ系、ベリレン系、ジオキサジン系、フタロシアニン系等の顔料が挙げられる。
顔料は、所望の色調に応じてその量を選択できるが、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対し、0.05質量部以上5質量部以下の範囲であることが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、(A)ポリアセタール樹脂を含むマトリックス中に、(C)オレフィン樹脂を含む分散粒子が分散しており、樹脂組成物を含む成形体の表面から深さ方向に30μmの位置に存在する該分散粒子の平均長径が2μm以下である。
分散粒子の上記平均長径は、好ましくは1.7μm以下、より好ましくは1.5μm以下、最も好ましくは1.4μm以下である。また、下限値は特に限定されないが、好ましくは0.3μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは0.7μm以上である。
かかる分散相としての(C)オレフィン樹脂を含む分散粒子のモルフォロジーとして、分散粒子の平均長径を2μm以下とすることで、滞留後の導電安定性や屈曲特性が向上する。これは、(C)オレフィン樹脂が適度に分散することで、(B)カーボンブラックの導通回路を阻害せず、導電が安定化するものと推測される(ただし、分散粒子の平均長径が2μm以下であることによる効果はこれに限らない)。
樹脂組成物中における(C)オレフィン樹脂の平均長径を2μm以下に制御する方法は、特に限定されないが、(C)オレフィン樹脂の含有量を調整する方法、溶融混練時のスクリュー回転速度を調整する方法等が挙げられ、(A)〜(D)成分をすべて含むブレンド物を溶融混練して機械的にせん断する方法が、経済的観点より好ましい。
なお本開示で、(C)オレフィン樹脂を含む分散粒子の平均長径は、以下の方法により求められる値である。
まず、本実施形態の樹脂組成物を含む成形体から試験片を切り出し、イオンスパッタによる表面の白金コーティングを行った後、試験片をエポキシ樹脂に包埋固定する。次に、観察面の切削断面を作製後、四酸化ルテニウムで染色し、走査型電子顕微鏡(SEM)で成形体の樹脂流動方向に対して垂直な面の観察を行う。なお、四酸化ルテニウム染色により、(C)オレフィン樹脂を含む分散粒子は黒色に観察され、(A)ポリアセタール樹脂を含むマトリックスは白色に観察される。
続いて、樹脂成形体の表面から深さ30μmに存在する分散粒子のうち、無作為に選んだ100個以上の粒子について長径を測定し、平均することにより求めることができる。具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
[体積固有抵抗率]
本実施形態の樹脂組成物は、体積固有抵抗率が、100〜102Ωcmであることが好ましく、100〜5×101Ωcmであることがより好ましい。
また、本実施形態の樹脂組成物は、30分間滞留後の体積固有抵抗率が、100〜102Ωcmであることが好ましく、100〜7×101Ωcmであることがより好ましい。
なお本開示で、体積固有抵抗率は、ISO294−1に準拠して成形された多目的試験片を用いて、JIS K7194に準拠して測定される値であり、具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
[屈曲特性]
本実施形態の樹脂組成物は、屈曲特性(破断又は剥離するまでの折り曲げサイクル数)が、6サイクル以上であることが好ましく、15サイクル以上であることがより好ましい。
なお本開示で、屈曲特性(破断又は剥離するまでの折り曲げサイクル数)は、図1に示す試験片(2mm厚み)の両端を持ち、手前側と反対側にほぼ180°まで各1回ずつ折り曲げて元に戻す動作を1サイクルとして測定した、破断又は剥離するまでのサイクル数であり、具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
図1は、上記試験片の概略正面図であり、幅L1は75mm、幅L2は25mm、幅L3は15mm、高さHは20mm、厚みは2mmである。
[ポリアセタール樹脂組成物の製造方法]
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、上述した(A)ポリアセタール樹脂、(B)カーボンブラック、(C)オレフィン樹脂、及び(D)エステル化合物と、必要に応じてその他の成分とを、溶融混練することにより製造できる。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物を製造する装置としては、一般に実用されている混練機が適用できる。当該混練機として、具体的には、一軸又は多軸混練押出機、ロール、バンバリーミキサー等が挙げられる。これらの中でも、減圧装置、及びサイドフィーダー設備を装備した二軸押出機が好ましい。
溶融混練の方法として、具体的には、すべての成分のブレンド物を押出機トップのフィーダー(以下、「トップフィーダー」と呼ぶ。)から連続的にフィードして溶融混練させる方法、(B)カーボンブラック以外の成分のブレンド物を押出機トップフィーダーから連続的にフィードして溶融混練させた後、押出機のサイドに設けられたフィーダー(以下、「サイドフィーダー」と呼ぶ。)から(B)カーボンブラックを連続的にフィードしてさらに溶融混練させる方法、(D)エステル化合物と少なくとも一部の(A)ポリアセタール樹脂とを事前に溶融混練させてマスターバッチ化し、該マスターバッチを用いてそれ以外は上記の溶融混練させる方法を用いる方法等が挙げられる。これらのうち、安定した性能発現の観点から、(D)エステル化合物と少なくとも一部の(A)ポリアセタール樹脂とを事前に溶融混練させてマスターバッチ化し、該マスターバッチを用いて、(B)カーボンブラック以外のブレンド物を押出機トップフィーダーから供給して溶融混練させた後、サイドフィーダーから(B)カーボンブラックを添加してさらに溶融混練させる方法が好ましい。
押出機の減圧度は、0MPa以上0.07MPa以下が好ましい。
溶融混練する際の押出機の設定温度は、用いる(A)ポリアセタール樹脂のJIS K7121に準じた示差走査熱量計(DSC)の測定で求められる融点より1℃以上100℃以下の範囲内で高い温度が好ましい。より好ましくは160℃以上240℃以下であるが、本発明の効果をより効果的に発現させるといった観点から、ポリアセタール樹脂組成物に用いる(B)カーボンブラックのフタル酸ジブチル吸油量が100mL/100g以上の場合には、押出機ダイに隣接した、全スクリュー長に対する少なくとも1/10の長さの領域を160℃以上180℃以下に設定することがさらに好ましい。
[成形体]
本実施形態の成形体は、上述のポリアセタール樹脂組成物を含む。そのためには、上述のポリアセタール樹脂組成物を成形することにより、本実施形態の成形体を得ることができる。
ポリアセタール樹脂組成物を成形する方法については特に制限されるものではなく、公知の成形方法を適用できる。具体的には、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、他材質成形、ガスアシスト射出成形、発泡射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)等の成形方法が挙げられる。
[成形体の用途]
本実施形態の成形体の用途としては、靭性と高い導電性とが要求される用途が好適である。具体的には、本実施形態の成形体は、導電性歯車、導電性フランジ、導電性ドラムギア、導電性軸受用途等により好適に用いられる。
また、一般的なポリアセタール樹脂の用途である、カム、スライダー、レバー、アーム、クラッチ、フェルトクラッチ、アイドラギアー、プーリー、ローラー、コロ、キーステム、キートップ、シャッター、リール、シャフト、関節、軸、軸受け、ガイド等に代表される機構部品;アウトサート成形の樹脂部品、インサート成形の樹脂部品、シャーシ、トレー、側板、プリンター、複写機に代表されるオフィスオートメーション機器用部品;VTR(Video Tape Recorder)、ビデオムービー、デジタルビデオカメラ、カメラ、デジタルカメラに代表されるカメラ又はビデオ機器用部品;カセットプレイヤー、DAT、LD(Laser Disk)、MD(Mini Disk)、CD(Compact Disk)〔CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R(Recordable)、CD−RW(Rewritable)を含む〕、DVD(Digital Video Disk)〔DVD−ROM、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RW、DVD−R DL、DVD+R DL、DVD−RAM(Random Access Memory)、DVD−Audioを含む〕、Blu−ray(登録商標) Disc、HD−DVD、その他光デイスクのドライブ;MFD、MO、ナビゲーションシステム、モバイルパーソナルコンピュータに代表される音楽、映像又は情報機器、携帯電話及びファクシミリに代表される通信機器用部品;電気機器用部品;電子機器用部品等が挙げられる。さらに、本実施形態の成形体は、自動車用の部品として、ガソリンタンク、フュエルポンプモジュール、バルブ類、ガソリンタンクフランジ等に代表される燃料廻り部品;ドアロック、ドアハンドル、ウインドウレギュレータ、スピーカーグリル等に代表されるドア廻り部品;シートベルト用スリップリング、プレスボタン等に代表されるシートベルト周辺部品;コンビスイッチ部品、スイッチ類、クリップ類等の部品;シャープペンシルのペン先、シャープペンシルの芯を出し入れする機構部品;洗面台、排水口、排水栓開閉機構部品;自動販売機の開閉部ロック機構、商品排出機構部品;衣料用のコードストッパー、アジャスター、ボタン;散水用のノズル、散水ホース接続ジョイント;階段手すり部、床材の支持具である建築用品;使い捨てカメラ、玩具、ファスナー、チェーン、コンベア、バックル、スポーツ用品、自動販売機、家具、楽器、住宅設備機器に代表される工業部品等も好適に用いられる。
以下、実施例及び比較例により本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、後述する実施例及び比較例に限定されるものではない。実施例及び比較例のポリアセタール樹脂組成物及び成形体に対する各種測定方法と、実施例及び比較例に用いたポリアセタール樹脂組成物及び成形体の原料成分とを以下に示す。
(1)体積固有抵抗率
東芝機械(株)製EC−75NII成形機を用いて、シリンダー温度を205℃、金型温度90℃に設定し、射出時間35秒、冷却時間15秒の射出条件で、実施例及び比較例で得られたポリアセタール樹脂組成物を成形することにより、ISOダンベル(ISO294−1に準拠して成形された多目的試験片)を得た。このISOダンベルの反ゲート側から30mm×20mm×4mmの平板を切り出し、この平板を体積固有抵抗率測定用のサンプルとした。
測定は、四探針ASPプローブ(ピン間5mm、ピン先0.37mmR×4、バネ圧210g/本、JIS K7194準拠)を、上記作製したサンプル(平板)に押し当て、三菱化学(株)製ロレスタ(登録商標)−GPにより測定電圧90Vで、上記サンプルの体積固有抵抗率(Ωcm)を測定した。
(2)滞留後の導電性(体積固有抵抗率)
東芝機械(株)製EC−75NII成形機を用いて、シリンダー温度を205℃、金型温度90℃に設定し、30分間滞留させた後、射出時間35秒、冷却時間15秒の射出条件で、実施例及び比較例で得られたポリアセタール樹脂組成物を成形することにより、ISOダンベル(ISO294−1に準拠して成形された多目的試験片)を得た。このISOダンベルの反ゲート側から30mm×20mm×4mmの平板を切り出し、この平板を体積固有抵抗率測定用のサンプルとして、上記(1)と同様に体積固有抵抗率(Ωcm)を測定した。
(3)屈曲特性
東芝機械(株)製EC−75NII成形機を用いて、シリンダー温度を205℃、金型温度90℃に設定し、実施例及び比較例で得られたポリアセタール樹脂組成物を成形することにより、図1に示す試験片(2mm厚み)を得た。図1は該試験片の概略正面図を示す。該試験片の幅L1は75mm、幅L2は25mm、幅L3は15mm、高さHは20mmとした。
このダンベル片の両端を持ち、両端が合わさるようにほぼ180°まで手前側と反対側に各1回ずつ折り曲げて元に戻す動作を1サイクルとし、破断又は剥離するまでのサイクル数を測定した。
(4)分散粒子の平均長径
上記(1)で得られたISOダンベル片の中央部から試験片を切り出し、イオンスパッタによる表面の白金コーティングを行った後、エポキシ樹脂に包埋固定した。次に、観察面の切削断面を作製後、四酸化ルテニウムで染色し、走査型電子顕微鏡(SEM)(SU8220、HITACHI社製)でISOダンベル片の樹脂流動方向に対して垂直な面の観察を行った。なお、四酸化ルテニウム染色により、(C)オレフィン樹脂を含む分散粒子は黒色に観察され、(A)ポリアセタール樹脂を含むマトリックスは白色に観察された。
(C)オレフィン樹脂を含む分散粒子の平均長径(μm)は、ISOダンベル型試験片の表面から深さ30μmに存在する分散粒子のうち、無作為に選んだ100個以上の粒子について長径を測定し、平均して求めた。
<(A)ポリアセタール樹脂>
(A−1)ポリアセタール樹脂
トリオキサン100mol%に対して、1,3−ジオキソラン1.5mol%を共重合成分として含む、MFR(条件: ISO1133準拠 190℃、2.16kg荷重)が30g/10分のポリアセタールコポリマー
(A−2)ポリアセタール樹脂
トリオキサン100mol%に対して、1,3−ジオキソラン1.5mol%を共重合成分として含む、MFR(条件: ISO1133準拠 190℃、2.16kg荷重)が10g/10分のポリアセタールコポリマー
(A−3)ポリアセタール樹脂
トリオキサン100mol%に対して、1,3−ジオキソラン1.5mol%を共重合成分として含む、MFR(条件: ISO1133準拠 190℃、2.16kg荷重)が3g/10分のポリアセタールコポリマー
<(B)カーボンブラック>
(B−1)DBP吸油量190mL/100g、よう素吸着法によるBET比表面積65mg/gのカーボンブラック
(B−2)DBP吸油量180mL/100g、よう素吸着法によるBET比表面積51mg/gのカーボンブラック
なお、上記のDBP吸油量及びよう素吸着法によるBET比表面積は、それぞれ、ISO4656及びISO1304に基づいて測定した。
<(C)オレフィン樹脂>
(C−1)1−ブテン含有率90質量%、エチレン含有率10質量%のオレフィン共重合体、JIS K7210(190℃、2.16kg荷重条件)に基づくMFRは40g/10分
<(D)エステル化合物>
(D−1)DIDA(大八化学工業(株)製、アジピン酸ジイソデシル)
<(E)エポキシ化合物>
(E−1)クレゾールノボラックとエピクロロヒドリンとの縮合物(軟化点=80℃)
<(F)マスターバッチ>
(A−2)ポリアセタール樹脂90質量部に、(D−1)エステル化合物10質量部を二軸混練機で混練し、(F−1)マスターバッチを得た。
(A−2)ポリアセタール樹脂50質量部に、(C−1)オレフィン樹脂30質量部、(D−1)エステル化合物20質量部を二軸混練機で混練し、(F−2)マスターバッチを得た。
〔ポリアセタール樹脂組成物の製造〕
本実施例及び比較例では、二軸押出機(東芝機械(株)製TEM−48SS押出機(L/D=58、ベント付き)を用いて、ポリアセタール樹脂組成物を製造した。図2に二軸押出機の概略構成図を示す。
図2の二軸押出機は、個々に独立している押出機のバレルゾーン1〜14を具備し、当該バレルゾーンの終端部をダイヘッド15に連結した。バレルゾーンの始端部は押出機モーター16に連結され、モーターの駆動により原料がバレルゾーン1〜14を移動するように設定した。バレルゾーン1にはトップ部の定量フィーダー17、バレルゾーン8にはサイド部の定量フィーダー18を設けた。バレルゾーン13には脱気ベント19を設けた。全てのバレルゾーンの温度を200℃に設定し、(B)成分以外の成分のブレンド物を定量フィーダー17より、(B)成分を定量フィーダー18よりそれぞれ供給して押出を行い、ポリアセタール樹脂組成物を得た。
〔実施例1〜4、6〜10、比較例1〜2〕
各成分を表1に示す割合で配合し、上述の製造方法により溶融混練を行った。吐出量200kg/時間、スクリュー回転数240rpmに設定した。
なお、実施例9及び10ではマスターバッチ(F−1)又は(F−2)を配合したが、最終的なの配合量の比較がしやすいように、表中では(A)〜(E)成分の最終的な割合も示した。
押出されたポリアセタール樹脂組成物は、ストランドカッターでペレットとした。得られたペレットを用いて、上述の方法により評価を行った。
測定及び評価結果を表1に示す。なお、いずれの実施例及び比較例においても(A)ポリアセタール樹脂を含むマトリックス、(C)オレフィン樹脂を含む分散粒子が観察された。
〔実施例5、11〕
吐出量200kg/時間、スクリュー回転数280rpmに設定した以外は、実施例1と同様に行った。
測定及び評価結果を表1に示す。なお、いずれの実施例においても(A)ポリアセタール樹脂を含むマトリックス、(C)オレフィン樹脂を含む分散粒子が観察された。
Figure 2020122126
本発明に係るポリアセタール樹脂組成物によれば、ポリアセタール樹脂組成物が好適に使用されてきた種々の分野において、特にコスト削減や軽量化のための金属代替として利用できるため、自動車、電機電子機器の精密部品、その他工業等の分野において産業上の利用可能性を有する。

Claims (8)

  1. (A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して、(B)カーボンブラック5〜30質量部、(C)オレフィン樹脂6〜10質量部、及び(D)エステル化合物0.05〜5質量部を少なくとも含み、前記(A)ポリアセタール樹脂を含むマトリックス中に、前記(C)オレフィン樹脂を含む分散粒子が分散している樹脂組成物であり、前記樹脂組成物を含む成形体の表面から深さ30μmに存在する前記分散粒子の平均長径が2μm以下であることを特徴とする、樹脂組成物。
  2. 前記分散粒子の平均長径が1.5μm以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記(C)オレフィン樹脂が6〜9質量部である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記(B)カーボンブラックのフタル酸ジブチル吸油量が、100〜300mL/100gである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  5. 前記(B)カーボンブラックのよう素吸着法によるBET比表面積が、20〜100mg/gである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  6. 前記(D)エステル化合物が、脂肪族ジエステル及び/又は脂肪族トリエステルである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  7. 前記(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して、(E)エポキシ化合物0.1〜6質量部をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物を含むことを特徴とする、成形体。
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