以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
(製造装置10)
本実施形態に係る製造装置10について説明する。図1には、本実施形態に係る製造装置10の構成が示されている。
製造装置10は、図2に示されるチューブ被覆ロール100を製造する装置である。具体的には、製造装置10は、図1に示されるように、容器20と、拡径部材50と、嵌合部材180と、吸引機構70と、を備えている。また、製造装置10は、搬送装置300(図5参照)と、供給部510(図3参照)と、下保持機構200(図11参照)と、上保持機構400(図12参照)と、塗布装置150(図15参照)と、を備えている。以下、チューブ被覆ロール100の具体的な構成、及び製造装置10の各部の具体的な構成について説明する。
(チューブ被覆ロール100)
製造装置10の製造対象であるチューブ被覆ロール100は、「筒体被覆部材」の一例である。チューブ被覆ロール100は、例えば、画像が形成された記録媒体を挟んで該画像を当該記録媒体に定着する定着ロール(加熱ロール又は加圧ロール)に用いられる。なお、チューブ被覆ロール100としては、記録媒体等の被搬送材を搬送する搬送ロールや、感光体を帯電させる帯電ロール等、その他のロールとして用いてもよい。
チューブ被覆ロール100は、具体的には、図2に示されるように、ロール体110と、ロール体110を被覆するチューブ120と、を有している。すなわち、チューブ被覆ロール100は、チューブ120でロール体110が被覆されて構成されたロールである。
ロール体110は、「芯体」の一例である。このロール体110は、円筒状又は円柱状の軸部112と、軸部112の外周に設けられた円筒状(管状)の弾性層114と、を有している。このように、ロール体110の外周には、弾性層114が形成されている。軸部112の両端部は、軸受に支持される被支持部116となっている。
チューブ120は、「筒体」の一例である。このチューブ120は、円筒状(管状)に形成されており、ロール体110の弾性層114を被覆する。具体的には、チューブ120は、接着剤130によって、ロール体110の弾性層114の外周面に接着されている。
ここで、接着剤130は、弾性層114の軸方向端部以外において、弾性層114とチューブ120との間に介在している。具体的には、接着剤130は、弾性層114の軸方向両端部以外において、弾性層114とチューブ120との間に介在している。したがって、チューブ120は、弾性層114の軸方向の中央側の部分(軸方向両端部以外の部分)において接着剤130で固定され、弾性層114の軸方向両端部において固定されていない状態で当該両端部を被覆している。
弾性層114の軸方向の両端部とは、例えば、軸方向の両端側における弾性層114の軸方向長さの1%以上5%以下の範囲をいう。なお、軸方向の両端側における弾性層114の軸方向長さの10%の範囲を、弾性層114の軸方向の両端部と把握してもよい。さらに、弾性層114を軸方向に三等分した場合の軸方向の両端側の範囲を、弾性層114の軸方向の両端部と把握してもよい。
なお、弾性層114の軸方向の両端部を、チューブ被覆ロール100がその機能を発揮しない部分であると把握してもよい。例えば、チューブ被覆ロール100が定着ロールとして用いられる場合は、定着機能を発揮しない領域、すなわち、定着対象である記録媒体が通過する範囲の外側の一部領域を弾性層114の軸方向の両端部としてもよい。
接着剤130としては、弾性層114に塗布された状態において、液状(流体)とされ、例えば、加熱により硬化する接着剤が用いられる。接着剤130の一例としては、東レ・ダウコーニング株式会社のSE−1714が用いられる。
軸部112には、一例として、金属材料が用いられている。弾性層114には、一例として、シリコンゴムなどのゴム材料が用いられている。チューブ120は、弾性(可撓性)を有しており、チューブ120には、一例として、PFAやPTFEなどのフッ素樹脂が用いられている。
(容器20)
容器20は、チューブ120を収容する容器である(図23参照)。具体的には、容器20は、図1及び図3に示されるように、胴部24と、胴部24の下側に配置された底部22と、胴部24の上側に配置された頂部30と、を有している。
胴部24は、軸方向両端部(上下端部)が開放された円筒状に形成されている。この胴部24は、頂部30における後述の側壁部32とで、容器20の側壁を構成している。さらに、胴部24には、吸引機構70における後述の吸引管76が接続される吸引口24Eが形成されている。
底部22は、円盤状に形成されている。この底部22は、胴部24の下端部に固定されている。これにより、底部22は、胴部24の下側の開放部分を閉鎖すると共に、容器20の底壁を構成している。
頂部30は、円筒状の側壁部32と、環状(リング状)の環状壁部34と、円筒状の周壁部38と、を有している。
環状壁部34は、具体的には、上下方向に厚みを有する板状をしており、平面視にて環状に形成された壁部である。この環状壁部34は、容器20の上壁を構成している。
側壁部32は、環状壁部34の外周縁から下側へ延び出るように形成されている。側壁部32の下端部は、胴部24の上端部に取り付けられている。
周壁部38は、環状壁部34の内周縁から上側へ立ち上がるように形成されている。周壁部38及び環状壁部34の内周側の内周空間が、容器20の開口20Aを構成している。そして、周壁部38は、図22に示されるように、チューブ120の上端部が保持される開口縁20Bを有している。なお、チューブ120の上端部は、「筒体の一端部」の一例である。
さらに、容器20の内部には、胴部24、底部22及び頂部30によって、開口20A及び吸引口24Eのみで開放された閉鎖空間が形成されている。
(拡径部材50)
拡径部材50は、図1及び図4に示されるように、ロール体110の下端部に装着される。ロール体110の下端部は、「芯体の挿入方向先頭側の端部」の一例である。具体的には、拡径部材50は、ロール体110の下側の被支持部116(軸部112)に装着される。さらに具体的には、拡径部材50は、当該被支持部116の外周にロール体110と同軸に装着される。
この拡径部材50は、チューブ120に対する挿入方向(下方)から反対方向(上方)にかけて徐々に大径化されてから徐々に小径化されている。すなわち、拡径部材50は、上下方向中央部で最大径となり、上下方向中央部から上方及び下方のそれぞれへいくにつれて先細りとなるテーパ形状に形成されている。
また、拡径部材50は、ロール体110の外径よりも大きい外径を有している。拡径部材50は、具体的には、チューブ120の被覆前においてロール体110に塗布された接着剤130を含めたロール体110の外径よりも外径が大きくなっている。
本実施形態では、拡径部材50の上下端での外径は、ロール体110の外径と同一径とされている。なお、拡径部材50は、上下端での外径を含めて、上下方向全体の外径が、ロール体110の外径よりも大きくされていてもよい。また、拡径部材50の上下端での外径が、ロール体110の外径よりも小さくてもよい。このように、拡径部材50としては、ロール体110の外径以下の外径を含んでいてもよく、少なくとも一部において、ロール体110の外径よりも大きい外径を有していればよい。
そして、本実施形態では、拡径部材50がチューブ120に挿入されることで、チューブ120が弾性域で拡径される。換言すれば、拡径部材50は、チューブ120の内部への挿入により、チューブ120を弾性域で拡径させる部材である。なお、拡径部材50には、一例として、フッ素樹脂などの樹脂材料が用いられている。
(嵌合部材180)
嵌合部材180は、図1及び図4に示されるように、ロール体110の上端部の外周にロール体110と同軸に装着される。具体的には、嵌合部材180は、ロール体110の上側の被支持部116(軸部112)に装着される。
この嵌合部材180は、チューブ120に対する挿入方向(下方)から反対方向(上方)にかけて徐々に大径化されている。すなわち、嵌合部材180は、上端部で最大径となり、下方へいくにつれて先細りとなるテーパ形状(円錐台状をした筒状)に形成されている。
嵌合部材180の下端部の外径は、ロール体110の外径以上とされている。嵌合部材180の軸方向中間部の外径は、周壁部38の内径よりも大径とされている。嵌合部材180は、チューブ120を保持した状態の周壁部38の開口縁20Bの内側に対して、保持状態のチューブ120の軸方向に沿って、周壁部38と同軸に嵌合される(図24参照)。なお、嵌合部材180は、一例として、ポリアミド合成樹脂などの樹脂材料が用いられている。
(内筒80)
図3に示される内筒80は、「他の容器」の一例である。この内筒80は、図3に示されるように、容器20の内部に設けられている。具体的には、内筒80は、軸方向両端部(上下端部)に開口部82、84を有する円筒状に形成されている。さらに具体的には、内筒80は、容器20の内部に容器20の同軸上に配置されている。さらに説明すると、内筒80は、上端が容器20の環状壁部34との間に隙間を有し、且つ、外周面が容器20の胴部24との間に円筒状の空間を有した状態で、容器20の内部に配置されている。すなわち、容器20内の内筒80の外周側の空間と、内筒80内の空間は、内筒80の上端部で通じている。
内筒80には、内筒80の上方側の開口部82を通じて、内筒80の内部にチューブ120が収容される(図16参照)。具体的には、容器20の開口縁20Bで上端部が保持されたチューブ120の下端側の部分が、開口部82から内筒80の内部に収容される(図23参照)。なお、上方側の開口部82は、「開口部」の一例である。
(支持部90)
支持部90は、図3に示されるように、容器20の内部に設けられている。具体的には、内筒80の軸方向に沿って容器20に対して移動可能に容器20の内部の下部に設けられている。すなわち、支持部90は、容器20に対して上下方向に移動可能とされている。支持部90は、駆動機構99により上下方向へ移動し、任意の位置で停止されるようになっている。駆動機構99としては、空気圧等により駆動されるシリンダや、アクチュエータが用いられる。
また、支持部90は、内筒80を着脱可能に支持している。具体的には、内筒80の下端部が、支持部90の上端部に対して取外可能に取り付けられている。内筒80は、具体的には、例えば、ねじ等の締結部材によって取外可能に取り付けられている。なお、内筒80は、例えば、下端部の外周又は内周に形成されたねじ溝(図示省略)が、当該ねじ溝に対応して支持部90に形成されたねじ溝(図示省略)にねじ込まれることで、取外可能に取り付けられていてもよい。
支持部90には、下保持機構200の後述の可動部214が取り付けられる取付孔92が形成されている。取付孔92は、支持部90を上下方向に貫通した円孔で構成されている。
また、支持部90には、容器20の径方向に沿って取付孔92から支持部90の外周へ貫通する通路94が形成されている。
さらに、支持部90には、例えば、取付孔92に対する通路94の反対側に供給路96が形成されている。供給路96は上下方向に支持部90を貫通している。供給路96の一端部(上端部)は、内筒80の内部と通じている。供給路96の他端部(下端部)は、供給部510と接続されている。
(吸引機構70)
吸引機構70は、「吸引部」の一例である。この吸引機構70は、容器20内及び内筒80内の空気(気体の一例)を吸引する機構である。具体的には、吸引機構70は、容器20内の内筒80の外周側の空間から空気を吸引することで、当該空間と上端部で通じている内筒80内の空気を吸引する。
さらに具体的には、吸引機構70は、図1に示されるように、吸引ポンプ72と、レギュレータ74と、吸引管76と、を有している。吸引管76は、一端部が吸引ポンプ72に接続され、他端部が吸引口24Eに接続されている。レギュレータ74は、吸引管76の中間部に配置されている。
吸引機構70では、吸引ポンプ72が駆動することで、吸引管76を通じて、容器20内の内筒80の外周側の空間から空気が吸引されて、容器20の内部及び内筒80の内部が減圧される。
レギュレータ74は、吸引機構70の吸引力を調整する機能を有している。レギュレータ74により、吸引機構70の吸引力が調整されることで、容器20内及び内筒80内の圧力を低負圧状態(例えば−25kPa)と、絶対値が低負圧状態よりも大きい高負圧状態(例えば−100kPa)と、に調整可能となっている。したがって、レギュレータ74は、容器20の内部及び内筒80の内部の圧力を調整する調圧機能を有しているともいえる。
なお、レギュレータ74に替えて、吸引管76に弁を介して接続された減圧タンクによって、吸引機構70の吸引力を調整する構成であってもよく、容器20の内部及び内筒80の内部の圧力を調整する機構は、他の機構を用いてもよい。
(搬送装置300)
搬送装置300は、チューブ120を容器20の内部へ搬送する装置である。搬送装置300は、具体的には、図5に示されるように、チューブ120の内側にその軸方向に沿って挿入される挿入体390と、吸引部382と、移動機構349と、を有している。
挿入体390は、上下方向(チューブ120に対する挿入方向)に沿って長さを有している。挿入体390の下端部391は、図6に示されるように、チューブ120に対する挿入方向(チューブ120の軸方向)に見た断面にて、円形に形成されている。また、下端部391は、図5に示されるように、挿入体390の長手方向に沿って外径が一定である一定部391Aと、徐々に先細りになる先細部391Bと、有している。一定部391Aは円柱状に形成されている。なお、一定部391Aは円筒状であってもよい。一定部391Aの外周(外周長)は、チューブ120の内周(内周長)よりも短くされている。
挿入体390における下端部391を除く上方側部分393は、図7に示されるように、チューブ120に対する挿入方向(チューブ120の軸方向)に見た断面にて、外周に形成された凹部392を有している。凹部392は、前述の断面にて、挿入体390の周方向に沿って等間隔で4つ(90度毎に)配置されている。これにより、上方側部分393は、前述の断面にて、略十字状に形成されている。また、挿入体390における凹部392(凹面)を含む周長が、チューブ120の内周よりも長くされている。なお、挿入体390における凹部392(凹面)を含まない周長(挿入体390の外縁で形成される最短距離の周長、すなわち一点鎖線392Sで示される周長)は、チューブ120の内周よりも短くされている。前述の断面にて、上方側部分393の中心393Cから挿入体390の外縁までの最長距離393Lと、下端部391の一定部391Aの半径とは、例えば、同じとされている。なお、当該半径と最長距離393Lとは異なる長さであってもよい。
上方側部分393には、凹部392で開口する孔394が形成されている。孔394は、上方側部分393の内部に挿入体390の長手方向に沿って形成された通路396と通じている。通路396は、上端部で吸引部382と通じている。挿入体390がチューブ120の内側に挿入された状態で、吸引部382が作動することで、孔394を通じて、チューブ120を吸引する。これにより、図8に示されるように、チューブ120が挿入体390の外周に吸着されて、チューブ120が挿入体390の外周に保持される。
移動機構349(図5参照)は、例えば、挿入体390を上下方向及び水平方向(左右方向)に移動させる三軸ロボットで構成されている。
(供給部510)
供給部510は、内筒80とチューブ120との間に内筒80の下端部から圧縮空気を供給する機能を有している。内筒80の下端部は、「開口部とは反対側の端部」の一例である。圧縮空気は、「加圧気体」の一例である。
供給部510は、支持部90に形成された供給路96の他端部(下端部)と通じている。図示を省略しているため、一例を具体的に説明する。容器20の底部22には、容器20の内と外を通じさせる貫通穴が形成されている。この貫通穴には、容器20の内側と外側において管(例えばエアーホース)の一端がそれぞれ接続されている。容器20の外側の管の他端は、供給部510に接続されている。また、容器20の内側の管の他端は、供給部510に接続されている。このような構成において、供給部510は、供給路96を通じて、内筒80の内部へ下端部から圧縮空気を供給する。これにより、内筒80とチューブ120との間に、圧縮空気が供給される。供給部510としては、例えば、圧縮空気を供給するコンプレッサ、その他のポンプ等が用いられる。供給部510が供給する気体としては、窒素等であってもよい。
(下保持機構200)
下保持機構200は、「保持部」の一例である。この下保持機構200は、容器20の内部に設けられ、チューブ120の下端部を保持する機構である。具体的には、下保持機構200は、図9、図10及び図11に示されるように、可動部214と、エアピッカー等の膨張部216と、ガイドコーン220(嵌合部)と、を有している。
可動部214は、円柱状に形成されており、上下方向に移動可能に支持部90に支持されている。換言すれば、可動部214は、支持部90とは独立して、容器20の軸方向に沿って移動可能とされている。さらに説明すると、支持部90が容器20に対して変位せずに、可動部214のみが容器20に対して上下方向移動可能となっている。
可動部214は、駆動機構217が有するロッド等の連結部217Aを介して、駆動機構217に連結されている。この駆動機構217の駆動力により、連結部217Aを介して可動部214を下方へ移動させる。駆動機構217としては、例えば、空気圧等により駆動されるシリンダや、アクチュエータが用いられる。
駆動機構217の連結部217Aは、可動部214が外力によって支持部90に対して上下方向に移動可能である自由状態と、可動部214が支持部90に対して任意の位置で固定される固定状態と、に切り替わるようになっている。
当該外力とは、具体的には、チューブ120への拡径部材50の挿入により、チューブ120が拡径されることに伴ってチューブ120が軸方向に縮んで、膨張部216を介して可動部214が上方へ引っ張る力である。固定状態では、当該引っ張る力では、可動部214は移動しない。
膨張部216は、平面視にて中央部に円孔216Aを有する環状(ドーナッツ状)に形成されている。膨張部216は、可動部214の上部を周方向に被覆するゴム等の弾性膜により構成されている。膨張部216の内周端部は、可動部214の上端部に固定され、膨張部216の外周端部は、可動部214の上部の周壁に固定されている。これにより、内部空間を有する袋状に構成されている。
可動部214には、一端部が可動部214の側部で開口し、且つ、他端部が可動部214の下端部で開口すると共に側断面視にて逆L字状とされた通路214Bが形成されている。この通路214Bの一端部は、膨張部216の内部と通じている。通路214Bの他端部(下端部)は、供給管215の一端部と通じている。供給管215は、チューブ等の管で構成されている。
供給管215の他端部には、空気を供給する供給部213が接続されている。図示を省略しているため、一例を具体的に説明する。容器20の底部22には、容器20の内と外を通じさせる貫通孔が形成されている。この貫通孔には、容器20の内側と外側において管(例えばエアーホース)の一端がそれぞれ接続されている。容器20の外側の管の他端は、供給部213に接続されている。また、容器20の内側の管の他端は、供給管215の他端部に接続されている。このような構成において、この供給部213が供給管215及び通路214Bを通じて、膨張部216の内部に空気を供給することで、図10及び図11に示されるように、膨張部216は膨張して、チューブ120の下端部の内周面を内側から保持する。
また、可動部214には、一端部が可動部214の上端部で開口し、且つ、他端部が可動部214の側部で開口すると共に側断面視にてL字状とされた通路214Aが形成されている。この通路214Aは、支持部90の通路94と通じている。なお、通路214Aは、通路214Bとは仕切られた通路である。
この通路214A、94は、膨張部216がチューブ120の下端部の内周面を内側から保持した状態においても、容器20の内部空間と、チューブ120の内部空間と、を通じさせる。なお、可動部214が上下方向に移動した場合でも、可動部214の通路214A及び支持部90の通路94は、通じた状態が維持される。すなわち、可動部214の移動範囲において、可動部214の通路214A及び支持部90の通路94は、通じた状態が維持される。したがって、吸引機構70により、容器20内が吸引されると、チューブ120内も下端部側から吸引される。
ガイドコーン220は、図11に示されるように、ロール体110における軸部112(被支持部116)の下端側(挿入方向先端側)の開口端112A(被嵌合部)に対して、膨張部216に下端部が保持された保持状態のチューブ120の軸方向に沿って嵌合する部材である。ガイドコーン220は、軸部112の開口端112Aに嵌合される嵌合部分222と、嵌合部分222から下方へ突出され可動部214の上端部に固定された固定軸部224と、を有している。
嵌合部分222は、開口端112Aの内側に嵌合される円筒面222Aと、円筒面222Aの上端から上方に行くにつれて徐々に外径が小さくなる円錐面222Bと、を有している。円筒面222Aの外径は、ロール体110の軸部112の内径と同じか、軸部112の内径よりも若干小さくされている。ガイドコーン220は、固定軸部224によって膨張部216と同軸に可動部214に固定されている。これにより、円筒面222Aと、膨張部216の外周面と、は同軸上に配置される。
なお、下保持機構200による具体的な保持動作は、後述する製造方法にて説明する。
(上保持機構400)
上保持機構400は、チューブ120の上端部を容器20とで保持する機構である。上保持機構400は、具体的には、図12及び図13に示されるように、複数(具体的には4つ)の吸着パッド410(吸着機構)と、複数(具体的には4つ)の爪部420と、を有している。
4つの吸着パッド410は、頂部30の上方において(図12参照)、周壁部38(チューブ120)の周方向に沿って、図13に示されるように、等間隔で90度毎に配置されている。吸着パッド410の吸引口412は、周壁部38の径方向内側に向けられている。吸着パッド410は、吸引口412を通じて吸引することで、容器20に収容された状態のチューブ120における周壁部38の開口からはみ出した上端部(一端部)の外周を吸着する。
また、吸着パッド410は、図12に示されるように、移動機構415により、矢印Yで示されるように、周壁部38の径方向内側及び径方向外側に移動可能となっている。移動機構415としては、例えば、シリンダが用いられる。
4つの爪部420は、頂部30の上方において(図12参照)、図13に示されるように、平面視にて、4つの吸着パッド410のそれぞれの間に配置されている。詳細には、4つの爪部420は、周壁部38の周方向に沿って等間隔で90度毎に配置されている。
4つの爪部420は、図12及び図14に示されるように、側面視にて、L字状に形成されている。各爪部420は、周壁部38の径方向内側へ延びる爪部本体422と、爪部本体422の当該径方向内側の端部から下方へ突出する先端部424と、を有している。
先端部424における径方向外側(爪部本体422側)の接触面423には、図14に示されるように、周壁部38(チューブ120)の周方向に沿った溝部427が複数形成されている。具体的には、溝部427は、例えば、三本が上下に配置されている。
また、爪部420は、図12に示されるように、移動機構425により、矢印Yで示されるように、周壁部38の径方向内側及び径方向外側に移動可能であり、且つ、上下方向に移動可能となっている。移動機構425としては、例えば、二軸ロボットが用いられる。そして、4つの爪部420は、チューブ120の上端部を容器20の周壁部38とで挟んで保持する。なお、上保持機構400による具体的な保持動作は、後述する製造方法にて説明する。
(塗布装置150)
図15に示される塗布装置150は、ロール体110の弾性層114に接着剤130を塗布する装置である。
塗布装置150では、ロール体110をその軸周りに回転させながら、ロール体110の弾性層114に対して軸方向に沿って接着剤130を滴下する。さらに、塗布装置150では、ロール体110の弾性層114に滴下した接着剤130をへら(図示省略)等でならす。このようにして、塗布装置150では、ロール体110の弾性層114に接着剤130を塗布する。本実施形態では、塗布装置150は、ロール体110の弾性層114の軸方向端部以外において、接着剤130を塗布する(後述の塗布工程参照)。具体的には、本実施形態では、塗布装置150は、ロール体110の弾性層114の軸方向両端部以外の部分に対して、接着剤130を塗布する。
なお、塗布装置としては、前述の構成に限られず、例えば、噴霧等により、ロール体110の弾性層114に接着剤130を塗布する装置であってもよく、他の塗布方法により塗布する塗布装置であってもよい。
(製造装置10のその他の構成)
製造装置10は、図24に示されるように、容器20に保持されたチューブ120にロール体110を挿入する挿入機構190を有している。挿入機構190は、例えば、ロール体110の上側の被支持部116を保持して、ロール体110を下降させることで、チューブ120にロール体110を挿入する。
(製造装置10を用いたチューブ被覆ロール100の製造方法)
次に、製造装置10を用いたチューブ被覆ロール100の製造方法について説明する。チューブ被覆ロール100は、一例として、画像が形成された記録媒体を挟んで該画像を当該記録媒体に定着する定着ロールである。
本製造方法は、準備工程と、塗布工程と、収容工程と、保持工程と、挿入工程と、嵌合工程と、被覆工程と、保持解除工程と、除去工程と、を有している。準備工程、塗布工程、収容工程、保持工程、挿入工程、嵌合工程、被覆工程、保持解除工程及び除去工程は、例えば、この順で行われる。以下、各工程について説明する。
(準備工程)
準備工程では、チューブ被覆ロール100を製造する前述の製造装置10を準備する。
(塗布工程)
塗布工程では、図15に示されるように、塗布装置150が、ロール体110の弾性層114の外周面に対して、チューブ120に挿入される前に接着剤130を塗布する。具体的には、塗布装置150は、ロール体110の弾性層114の軸方向端部以外において、接着剤130を塗布する。さらに具体的には、塗布装置150は、ロール体110の弾性層114の軸方向両端部以外において、接着剤130を塗布する。
さらに具体的には、定着ロールとしてのチューブ被覆ロール100において、記録媒体が通過する通過領域を含む範囲に接着剤130を塗布する。なお、塗布工程については、挿入工程の前に行われればよく、収容工程及び保持工程と同時に行ってもよく、収容工程及び保持工程の後に行われてもよい。
(収容工程)
収容工程は、チューブ120を内筒80の開口部82から内筒80の内部へ収容する工程である。具体的には、収容工程は、以下のように行われる。すなわち、収容工程では、図5に示されるように、まず、搬送装置300の挿入体390をチューブ120の内側に挿入した状態で搬送装置300の吸引部382を作動させる。これにより、チューブ120が挿入体390の外周に吸着され、チューブ120が挿入体390の外周に保持される(図8参照)。
次に、移動機構349により、挿入体390を容器20の開口縁20Bを通じて容器20の内部へ向けて降下する。さらに、移動機構349により、挿入体390を内筒80の開口部82から内筒80の内部へ降下する。これにより、図16に示されるように、チューブ120を開口部82から内筒80の内部へ収容する。具体的には、チューブ120は、下端部が挿入体390の下側にはみ出した状態で、容器20の内部へ収容され、当該はみ出した下端部の内周側に、下保持機構200の膨張部216が挿入される。
(保持工程)
保持工程は、チューブ120を保持する工程である。保持工程は、具体的には、下端部保持工程と、上端部保持工程と、を有している。以下、下端部保持工程及び上端部保持工程について説明する。
(下端部保持工程)
下端部保持工程は、チューブ120の下端部を保持する工程である。具体的には、図17に示されるように、下端部保持工程では、供給部213が供給管215及び通路214Bを通じて、膨張部216の内部に空気を供給する。これにより、膨張部216は膨張して、チューブ120の下端部の内周面を内側から保持する。なお、このとき、膨張部216が装着された可動部214は、支持部90に対して固定された固定状態となっている。
(上端部保持工程)
上端部保持工程は、チューブ120の上端部を容器20の開口縁20Bで保持する工程である。具体的には、上端部保持工程は、以下のように行われる。すなわち、上端部保持工程では、図17及び図18に示されるように、4つの吸着パッド410が、吸引口412を通じて吸引することで、チューブ120における周壁部38の開口からはみ出した上端部(一端部)の外周を吸着する。なお、吸着パッド410の吸引が開始されると、挿入体390での吸引部382による吸引が停止される。また、挿入体390では、吸引を停止する共に、孔394を通じて空気を噴出してもよい。これにより、挿入体390からチューブ120が離れやすくなる。
次に、図19に示されるように、挿入体390が上昇して、挿入体390がチューブ120から抜き出される。次に、4つの爪部420は、図19及び図13に示されるように、移動機構425により、4つの吸着パッド410で上端部の外周が吸着された状態のチューブ120の上方の位置から降下することで、チューブ120の上端部の内側に先端部424が差し込まれる。
さらに、4つの爪部420は、図20に示されるように、接触面423がチューブ120の内周に接触した状態で、移動機構425により、周壁部38の径方向外側へ移動する。これにより、チューブ120の上端部が拡径される。なお、4つの爪部420が周壁部38の径方向外側へ移動する際に、吸着パッド410は、移動機構415によって、周壁部38の径方向外側へ移動する。このため、吸着パッド410は、チューブ120と干渉しない。なお、吸着パッド410の移動は、例えば、爪部420の移動の前、又は同時に行われる。
その後、4つの爪部420は、図21に示されるように、周壁部38の外周側で、移動機構425により下方へ移動することで、チューブ120の上端部を折り返した後、図22に示されるように、周壁部38の径方向内側へ移動する。これにより、4つの爪部420によって、チューブ120の上端部が、周壁部38の外壁に押し付けられて、チューブ120の上端部が保持される。このように、4つの爪部420と容器20の周壁部38とでチューブ120の上端部を挟むことで、チューブ120の上端部が周壁部38の開口縁20Bで保持される。
(挿入工程)
挿入工程は、「維持工程」の一例である。この挿入工程は、上端部及び下端部が保持されたチューブ120にロール体110を挿入する工程である。具体的には、挿入工程は、以下のように行われる。すなわち、挿入工程では、まず、吸引機構70の吸引ポンプ72を駆動し、容器20の内部の空気の吸引を開始する。容器20の内部とチューブ120の内部とは、可動部214の通路214Aによって通じているため、チューブ120の内部の空気も吸引される。
ここで、膨張部216が装着された可動部214は、支持部90に対して上下方向に移動可能である自由状態となっている。この状態において、図23に示されるように、拡径部材50が下端部に装着されたロール体110を、挿入機構190(図24参照)によって、チューブ120に挿入する。
ロール体110がチューブ120の上端部に挿入され、チューブ120の上部開口を封止すると、チューブ120及び容器20の内部が減圧され、容器20の内外の圧力差によってロール体110に対して下方(挿入方向)へ引き込む力が作用する。本実施形態では、挿入機構190による押し込み力と、容器20の内外の圧力差による引き込み力と、重力と、によって、ロール体110が下降し、ロール体110がチューブ120の上端部から下端部へ挿入される。
拡径部材50がチューブ120の各部を通過すると、チューブ120は拡径されることで軸方向に縮む(図26参照)が、膨張部216が装着された可動部214は、自由状態であるので、チューブ120の下端部を保持した状態を維持したまま、上昇する。
ロール体110が下降すると、チューブ120は、拡径部材50が通過した部位が弾性域で拡径される。拡径された部位は、チューブ120の内外の圧力差によって、拡径状態が維持される(図24参照)。
このように、挿入工程では、吸引機構70の容器20内の空気の吸引により、ロール体110をチューブ120の上端部から下端側へ挿入しつつ、拡径部材50の通過により拡径されたチューブ120の部位をチューブ120の内外の圧力差によって、拡径状態を維持する。
なお、挿入工程では、容器20内の圧力が低負圧状態(例えば−25kPa)になるように、レギュレータ74により、吸引機構70の吸引力が調整される。
(嵌合工程)
嵌合工程は、ガイドコーン220をロール体110の下端部に嵌合し、嵌合部材180を容器20の開口縁20Bに嵌合する工程である。具体的には、嵌合工程では、チューブ120に挿入されたロール体110の下端部に対して、図24に示されるように、ガイドコーン220が嵌合する嵌合位置まで、ロール体110を下降させる。これにより、ロール体110における軸部112の下端側の開口端112Aに対して、ガイドコーン220の円筒面222Aが嵌合する。
また、この嵌合位置では、嵌合部材180は、チューブ120を保持した状態の周壁部38の開口縁20Bの内側に対して、保持状態のチューブ120の軸方向に沿って、周壁部38と同軸に嵌合する。
さらに、この嵌合位置にて、ロール体110の下降を停止する。なお、この嵌合位置では、ロール体110の下端部及び拡径部材50は、拡径部材50に対して隙間を有しており、拡径部材50に対して接触していない。
(被覆工程)
被覆工程は、供給部510による内筒80内への圧縮空気を供給することにより、容器20の内外の圧力差を解消して、チューブ120でロール体110を被覆する工程である。具体的には、被覆工程では、ガイドコーン220をロール体110の下端部に嵌合し、嵌合部材180を容器20の開口縁20Bに嵌合した状態で、ロール体110にチューブ120を被覆する。
さらに具体的には、以下のように行われる。すなわち、吸引機構70が、容器20内及び内筒80内の空気を吸引している状態において、供給部510が、供給路96を通じて、内筒80の内部へ下端部から圧縮空気を供給する。これにより、内筒80とチューブ120との間に圧縮空気が供給される。
内筒80とチューブ120との間に圧縮空気が供給されると、拡径部材50がチューブ120の下端部内にある状態で、チューブ120の内外の圧力差が解消されて、チューブ120が縮径する。このように、チューブ120が縮径することで、図25に示されるように、チューブ120でロール体110が被覆される。
ここで、本実施形態では、内筒80とチューブ120との間に下方側から圧縮空気が供給されるため、チューブ120の外側においてチューブ120の上端部から下端部へ高くなる圧力勾配が形成される。これにより、チューブ120は、ロール体110に対して下方側から徐々に被覆される。なお、図25において、チューブ120に向かう矢印は、チューブ120に作用する圧力の程度を矢印の大きさで示す。
また、被覆工程では、供給部510から圧縮空気を供給する際に、容器20内の圧力が高負圧状態(例えば−100kPa)になるように、レギュレータ74により吸引機構70の吸引力が調整される。これにより、吸引機構70の吸引力が、挿入工程における吸引力から増大される。
また、被覆工程では、供給部510からの圧縮空気の供給を、吸引機構70の吸引力の増大と同時か、吸引機構70の吸引力の増大より先に開始する。なお、圧縮空気の供給と、吸引力の増大との時間差は、例えば、1秒未満である。
さらに、被覆工程では、可動部214を、駆動機構217により下方へ移動させる。これにより、チューブ120の下端部に軸方向(下方)への張力を付与する。すなわち、チューブ120の下端部に軸方向(下方)への張力を付与した状態で、チューブ120をロール体110に被覆する。
被覆工程において、チューブ120でロール体110を被覆することで、ロール体110の弾性層114は、軸方向両端部において、接着剤130を介さずにチューブ120に接触する。換言すれば、被覆工程は、ロール体110の弾性層114を、軸方向両端部において、接着剤130を介さずにチューブ120に接触させる工程ともいえる。
(保持解除工程)
次に、吸引機構70の吸引、及び供給部510の圧縮空気の供給を停止する。そして、下保持機構200の膨張部216を萎ませて、下保持機構200によるチューブ120の下端部の保持を解除する。さらに、上保持機構400の4つの爪部420を移動機構425により、上端部保持工程における移動動作とは逆の移動動作を実行させる。これにより、上保持機構400によるチューブ120の上端部の保持を解除する。
(除去工程)
次に、ロール体110を容器20の内部から取り出し、チューブ120の余った下端部及び上端部(弾性層114よりも軸方向外側にはみ出した部分)を切断すると共に、拡径部材50及び嵌合部材180をロール体110から除去する。さらに、チューブ120が被覆されたロール体110の接着剤130を加熱硬化される。これにより、チューブ被覆ロール100が製造される。
(本実施形態の作用)
本実施形態では、前述のように、被覆工程において、内筒80とチューブ120との間に下方側から圧縮空気が供給されるため、チューブ120の外面に対して作用する圧力がチューブ120の上端部から下端部で大きくなる圧力勾配が形成される(図25参照)。これにより、チューブ120は、ロール体110に対して下方側から徐々に被覆される。
ここで、容器20に対する吸引機構70の吸引を停止するのみで、チューブ120内外の圧力差を解消してチューブ120でロール体110を被覆する構成(第一比較例)では、チューブ120の全体が一度にロール体110に被覆される。すなわち、チューブ120の上端部と下端部とが、時間差なくロール体110に対して被覆される。これにより、ロール体110とチューブ120との間に存在する空気を巻き込んで、チューブ120がロール体110に被覆される。このため、ロール体110とチューブ120との間に気泡が残留する場合がある。
これに対して、本実施形態では、チューブ120は、ロール体110に対して下方側から徐々に被覆され、ロール体110とチューブ120との間に存在する空気が上方から逃げるので、前述の第一比較例に比べ、ロール体110とチューブ120との間に存在する空気を巻き込みにくい。このため、前述の第一比較例に比べ、ロール体110とチューブ120との間に気泡が残留することが抑制される。
また、本実施形態では、被覆工程において、供給部510から圧縮空気を供給する際に、容器20内の圧力が高負圧状態(例えば−100kPa)になるように、レギュレータ74により吸引機構70の吸引力が調整される。これにより、吸引機構70の吸引力が、挿入工程における吸引力から増大される。
この構成では、吸引機構70の吸引力が常に一定である構成(第二比較例)に比べ、内筒80とチューブ120との間を流通する圧縮空気の流速が高まる。これにより、前述の第二比較例に比べ、前述の圧力勾配がさらに大きくなる。このため、前述の第二比較例に比べ、チューブ120の上端部と下端部とがロール体110に対して被覆される時間差が大きくなる。この結果、前述の第二比較例に比べ、ロール体110とチューブ120との間に気泡が残留することが抑制される。
また、本実施形態では、被覆工程において、供給部510からの圧縮空気の供給を、吸引機構70の吸引力の増大と同時か、吸引機構70の吸引力の増大より先に開始する。
供給部510からの圧縮空気の供給を、吸引機構70の吸引力を増大した後に開始する構成(第三比較例)では、前述の圧力勾配が形成されにくく、チューブ120の全体が一度にロール体110に被覆される。すなわち、チューブ120の上端部と下端部とが、時間差なくロール体110に対して被覆される。これにより、ロール体110とチューブ120との間に存在する空気を巻き込んで、チューブ120がロール体110に被覆される。このため、ロール体110とチューブ120との間に気泡が残留する場合がある。
これに対して、本実施形態では、被覆工程において、供給部510からの圧縮空気の供給を、吸引機構70の吸引力の増大と同時か、吸引機構70の吸引力の増大より先に開始するので、圧力勾配が形成される。これにより、チューブ120は、ロール体110に対して下方側から徐々に被覆される。したがって、本実施形態では、前述の第三比較例に比べ、ロール体110とチューブ120との間に存在する空気を巻き込みにくい。このため、前述の第三比較例に比べ、ロール体110とチューブ120との間に気泡が残留することが抑制される。
また、本実施形態では、支持部90は、内筒80を着脱可能に支持している。具体的には、内筒80の下端部が、支持部90の上端部に対して取外可能に取り付けられている。このため、チューブ120に挿入されるロール体110の軸方向長さに対応して、軸方向長さの異なる内筒80に付け替えられる。具体的には、例えば、A4サイズに対応した軸方向長さのロール体110にチューブ120を被覆した後に、A3サイズに対応した軸方向長さのロール体110にチューブ120を被覆する場合では、軸方向長さが長い内筒80に付け替えられる。
また、本実施形態では、支持部90は、移動機構99により、容器20に対して上下方向に移動可能とされている。このため、内筒80を長さの異なるものに付け替えた際に、内筒80の上下方向の位置が調整可能となる。例えば、内筒80の上下方向の位置が調整することで、内筒80を長さの異なるものに付け替えた際に、内筒80の上端と容器20との隙間が一定とされる。
ここで、内筒80の上端と容器20の環状壁部34との隙間の大きさによって、内筒80とチューブ120との間を流通する圧縮空気の流速が決まり、前述の圧力勾配が決まるため、内筒80の上端と容器20の環状壁部34との隙間が一定にすることで、前述の圧力勾配が一定になる。
また、本実施形態では、可動部214は、支持部90とは独立して、容器20の軸方向に沿って移動可能とされている。このため、チューブ120をロール体110に被覆する際に、可動部214が上方に変位した場合でも、支持部90が変位しない。これにより、支持部90が支持する内筒80の上端が容器20に衝突することが抑制される。
また、本実施形態では、前述のように、塗布工程において、塗布装置150は、ロール体110の弾性層114の軸方向端部以外において、接着剤130を塗布する。具体的には、塗布装置150は、ロール体110の弾性層114の軸方向両端部以外において、接着剤130を塗布する。このため、ロール体110に被覆されたチューブ120と、ロール体110の弾性層114の軸方向両端部との間に接着剤130が介在しないため、弾性層114の全体に接着剤130を塗布する場合(第四比較例)に比べ、接着剤130が硬化する前において、チューブ120が弾性層114の軸方向両端部で滑りにくい。
これにより、前述の第四比較例に比べ、弾性層114の両端部において、チューブ120が動きにくく、チューブ120にシワが発生することが抑制される。ここで、本実施形態では、保持解除工程において、上保持機構400によるチューブ120の上端部の保持を解除し、下保持機構200によるチューブ120の下端部の保持を解除するため、チューブ120の軸方向に作用していた張力が低下する。このため、チューブ120の上端部及び下端部が弾性層114に対して移動しようとするが、本実施形態ではチューブ120が動きにくいため、チューブ120にシワが発生することが抑制される。
また、本実施形態では、前述のように、塗布工程において、定着ロールとしてのチューブ被覆ロール100において、記録媒体が通過する通過領域に接着剤130を塗布する。このため、通過領域に接着剤130が塗布されていない場合に比べ、定着不良が抑制される。
また、本実施形態では、前述のように、被覆工程において、チューブ120でロール体110を被覆することで、ロール体110の弾性層114は、軸方向両端部において、接着剤130を介さずにチューブ120に接触する。換言すれば、被覆工程は、ロール体110の弾性層114を、軸方向両端部において、接着剤130を介さずにチューブ120に接触させる工程ともいえる。さらに換言すれば、被覆工程は、ロール体110の弾性層114を、軸方向両端部において、チューブ120に直接接触させる工程ともいえる。
このため、被覆工程において、ロール体110に被覆されたチューブ120に対して、弾性層114の両端部が接着剤130を介して接触する場合(第五比較例)に比べ、チューブ120が弾性層114の軸方向両端部で滑りにくい。
これにより、前述の第五比較例に比べ、弾性層114の両端部において、チューブ120が動きにくく、チューブ120にシワが発生することが抑制される。
また、本実施形態では、チューブ被覆ロール100は、チューブ120が、弾性層114の軸方向両端部において固定されていない状態で当該両端部を被覆している。このため、チューブ120が弾性層114の両端部が保護される。また、本実施形態では、接着剤130が弾性層114の両端部まで塗布されないので、接着剤130がはみ出すことが抑制される。
したがって、チューブ被覆ロール100によれば、チューブ120が弾性層114の両端部に固定された状態で両端部を被覆する構成に比べ、チューブ120が弾性層114の両端部を保護しつつ、接着剤130がはみ出すことが抑制される。また、本実施形態では、接着剤130が弾性層114の両端部まで塗布されないことで、接着剤130の塗布量が削減される。
(上保持機構400の変形例)
爪部420としては、図27及び図28に示されるように、爪部本体422の先端部(図27における周壁部38の径方向内側の端部)から下方へ突出する軸部450と、軸部450に対して回転可能に支持された従動ロール452と、を有する構成であってもよい。なお、従動ロール452が、爪部本体422に対して回転可能に支持されていてもよい。従動ロール452の外周面には、周方向に沿って溝部454が形成されている。具体的には、溝部454は、従動ロール452の全周に形成されている。
また、側面視にて、従動ロール452(軸部450)の軸方向は、爪部本体422の下面に対する角度θが、例えば、90度よりも若干小さい角度(鋭角)とされている。具体的には、角度θは、85度以上90度未満とされている。換言すれば、従動ロール452(軸部450)は、上端部に対して下端部が周壁部38の径方向外側に向く姿勢となるように、周壁部38(容器20)に対して傾斜している。なお、前述の角度θは、90度であってもよい。
この構成によれば、図27に示されるように、4つの爪部420の従動ロール452が、チューブ120の内周に接触した状態で、移動機構425により、周壁部38の径方向外側へ移動して、チューブ120の上端部が拡径される(図19に示す状態から図20に示す状態への動作)。
本構成では、従動ロール452の回転により、各従動ロール452の接触によってチューブ120に対して作用する張力が均一化される(差が小さくなる)。また、従動ロール452の外周面に周方向に沿って溝部454が形成されているので、チューブ120が従動ロール452から滑り落ちにくい。さらに、従動ロール452(軸部450)の軸方向は、爪部本体422の下面に対する角度θが、鋭角とされているので、さらに、チューブ120が従動ロール452から滑り落ちにくい。
(他の変形例)
前述した実施形態では、芯体として、軸部112と軸部112の外周に形成された円筒状の弾性層114とを有するロール体110を用いたが、これに限られない。芯体としては、例えば、軸部112のみであってもよい。
前述した実施形態では、筒体被覆部材の一例としてのチューブ被覆ロール100を製造していたが、製造対象である筒体被覆部材としては、これに限られない。例えば、筒体被覆部材としては、ベルト体がチューブ120で被覆されて構成されたチューブ被覆ベルトであってもよい。チューブ被覆ベルトの場合では、芯材と、芯材の外周に形成された円筒状のベルト体(管状体の一例)と、を有する芯体を用いる。すなわち、当該芯体を、前述のロール体110と同様に、チューブ120に挿入して、チューブ120でベルト体を被覆する。その後、チューブ120で被覆されたベルト体から芯材を抜くことで、チューブ被覆ベルトが製造される。ベルト体としては、ポリイミド等で形成された樹脂ベルト、金属ベルトなどが用いられる。
前述した製造方法では、吸引機構70の吸引ポンプ72を駆動して容器20の内部の空気の吸引を開始した後に、拡径部材50が下端部に装着されたロール体110をチューブ120の上端部に挿入したが、これに限られない。例えば、拡径部材50が下端部に装着されたロール体110をチューブ120の上端部に挿入した後に、吸引機構70の吸引ポンプ72を駆動して容器20の内部の空気の吸引を開始してもよい。
製造装置10では、チューブ120は上下方向に沿って配置される構成であったがこれに限られない。例えば、容器20を水平方向に沿って設置し、チューブ120が水平方向に沿って配置されるように構成してもよい。
本実施形態では、塗布工程において、塗布装置150は、ロール体110の弾性層114の軸方向両端部以外において、接着剤130を塗布していたが、これに限られない。例えば、塗布工程において、塗布装置150は、ロール体110の弾性層114の軸方向一端部以外において、接着剤130を塗布してもよい。すなわち、弾性層114の軸方向一端部においては、接着剤130を塗布してもよい。
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、その主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形、変更、改良が可能である。例えば、上記に示した変形例は、適宜、複数を組み合わせて構成してもよい。