以下、本発明の第1の実施形態を、図1乃至図5を参照して説明する。図1に示された塗膜形成装置1Aは、コピー機などの画像形成装置を構成する定着ベルト2(図4に示す。)のプライマ(接着剤)層3(図5に示す)と弾性層5とが形成された被塗装物としての基体4に塗膜としての離型層6を形成する装置である。
定着ベルト2は、図4に示すように、無端状に形成されている。定着ベルト2は、図5に示すように、ポリイミドやNi等の合成樹脂で構成された無端ベルト状の基体4と、プライマ(接着剤)層3と、シリコーンゴム等の耐熱性ゴムで構成された弾性層5と、プライマ(接着剤)層3と、フッ素樹脂で構成された離型層6とが順に積層されて構成されている。
弾性層5の厚みは、100〜300μm程度に形成されている。離型層6の厚みは、15〜30μm程度に形成されている。前述した離型層6が形成される前の被塗装物としての基体4の前述したプライマ層3と合わせた厚みは、200μm〜400μm程度に形成されている。即ち、前述した基体4は、全体として比較的薄肉で変形し易くなっている。
また、プライマ層3と弾性層5と離型層6は、基体4の長手方向の一端部(塗膜形成装置1Aによって後述の塗料7が塗布される際には上端部)4aと、基体4の長手方向の他端部(塗膜形成装置1Aによって塗料7が塗布される際には下端部)4bとに亘って形成されている。前述した定着ベルト2は、加熱されてトナーを転写紙に押圧して、該トナーを転写紙に定着させる。
そして、塗膜形成装置1Aは、表面にプライマ層3と弾性層5とが形成された基体4(特許請求の範囲の被塗装物に相当)の外表面即ち前述したプライマ層3上に、前述したフッ素樹脂と周知の溶媒などを含んだ塗料7(図1又は図2に示す)を塗布して、前述した離型層6を形成する。なお、前記塗料7は、流動させると粘度が低下し、流動させるのを止めると粘度が元に戻る性質(チキソトロピー性)を有する塗料であれば良い。
塗膜形成装置1Aは、図1に示すように、塗料供給部としての塗料供給ユニット10と、塗布ユニット11と、制御装置12とを備えている。
塗料供給ユニット10は、工場のフロア上などに設置され且つ塗料7を収容する塗料収容タンク13と、該塗料収容タンク13内に外気を取り込むための細長い管状の通気管14と、図示しない攪拌用モータと、塗料供給管15と、ポンプ16等を備えている。
攪拌用モータは、塗料収容タンク13に固定され且つ該塗料収容タンク13内に位置付けられた出力軸に羽根車が取り付けられている。攪拌モータは、収容タンク13内の塗料7を攪拌して、該塗料7の粘度にむらが生じることを防止する。塗料供給管15は、細長い管状に形成されており、塗料収容タンク13と後述する塗布ヘッド20のヘッド本体40とを連通して塗料7を通す。
ポンプ16は、塗料収容タンク13内の塗料7を塗料供給管15内を通して後述する塗布ヘッド20のヘッド本体40内に送り出すとともに、該ヘッド本体40内の塗料7を塗料供給管15内を通して塗料収容タンク13内に回収する。前記ポンプ16は、特許請求の範囲に記載の塗料回収部に相当する。
そして、前述した塗料供給ユニット10は、ポンプ16が塗料収容タンク13内の塗料7を塗布ヘッド20のヘッド本体40内に送り出すことで、該ヘッド本体40内に塗料7を供給するとともに、ポンプ16がヘッド本体40内の塗料7を塗料収容タンク13内に回収する。
塗布ユニット11は、図1に示すように、装置本体17と、支持部18と、移動部19と、塗布ヘッド20とを備えている。装置本体17は、工場のフロア上などに設置される台部21と、該台部21から上方に向かって延在した板状の延在板22とを備えている。台部21は、表面が水平方向と平行に配置されている。延在板22は、長手方向が鉛直方向と平行に配置されている。
支持部18は、図1に示すように、マンドレル23と、一対の保持部材24と、一つのチャックシリンダ25と、を備えている。
マンドレル23は、一対の円盤部材26と、一つの軸部材27とを備えている。一対の円盤部材26は、それぞれ、外径が基体4の内径よりも若干大きく且つ厚手の円盤状に形成されている。軸部材27は、円柱状に形成され且つ外径が円盤部材26の外径及び基体4の内径より小さく形成されている。軸部材27は、一対の円盤部材26と同軸に配置されて該一対の円盤部材26同士を連結しているとともに、両端部27a,27bが円盤部材26から突出している。そして、マンドレル23は、前述した基体4内に圧入されて、円盤部材26が基体4の両端4a,4bを内側から支持することとなる。
一対の保持部材24は、それぞれ、軸芯が鉛直方向と平行に配置された円柱状の本体部28と、該本体部28の外周に設けられた円筒状のマスク29とを備えている。本体部28には、表面から凹の凹部28aが設けられている。マスク29は、弾性材料で構成され、内径が本体部28の外径と略等しく形成されている。
前述した一対の保持部材24は、各々の凹部28a内にマンドレル23の軸部材27の両端部27a,27bがそれぞれ圧入されて、マンドレル23と同軸に配置される。そして、一方の保持部材24aが、チャックシリンダ25の後述する固定部材32に固定されているとともに、他方の保持部材24bが、本体部28が台部21から立設した状態で該台部21に固定されている。
チャックシリンダ25は、シリンダ本体30と、該シリンダ本体30から凸没自在なロッド31とを備えている。シリンダ本体30は、鉛直方向に沿って下方に向かってロッド31が伸長する状態で、連結部材30aによって前述した延在板22に取り付けられている。ロッド31は、円柱状に形成され且つ軸芯が鉛直方向と平行に配置されているとともに、その下端部に円盤状の固定部材32が設けられている。この固定部材32には前述した一方の保持部材24aが固定される。ロッド31は、鉛直方向に沿って、他方の保持部材24bと間隔をあけて相対する位置(他方の保持部材24bと同軸となる位置)に配されている。
そして、前述したチャックシリンダ25は、ロッド31が伸長することで、一対の保持部材24a,24bを互いに近づく方向に押圧して、該一対の保持部材24a,24bが互いの間に挟んだマンドレル23を押圧する。
前述した構成の支持部18は、チャックシリンダ25のロッド31の固定部材32に固定された一方の保持部材24aと、台部21に固定された他方の保持部材24bとの間に、内側にマンドレル23が圧入された基体4を配置して、チャックシリンダ25のロッド31を伸長させることで、各保持部材24a,24bの凹部28a内にマンドレル23の軸部材27の両端部27a,27bがそれぞれ圧入される。こうして、支持部18は、一対の保持部材24a,24bの間にマンドレル23を挟むことで、基体4の両端部4a,4bを内側から保持して、前記基体4を鉛直方向に支持する。
そして、前述した支持部18が、一対の保持部材24a,24b及びマンドレル23によって軸芯P(図1中に一点鎖線で示す)が鉛直方向と平行な状態で基体4を保持すると、該基体4の外周面4cが円筒面状(軸芯Pに直交する方向の断面形が円弧状)となる。また、支持部18は、チャックシリンダ25のロッド31を伸長して、一対の保持部材24a,24b及びマンドレル23を介して基体4を保持するとともに、チャックシリンダ25のロッド31を縮小して、一対の保持部材24a,24b及びマンドレル23を介して基体4を着脱自在とする。さらに、支持部18は、基体4を保持する際には、勿論、基体4の外周面4cを露出させる。
移動部19は、図1に示すように、リニアアクチュエータ34と、リニアエンコーダ35と、支持ベース36と、クランプ部37などを備えている。リニアアクチュエータ34は、長手方向が鉛直方向と平行な状態で延在板22に取り付けられたレール34aと、該レール34aの長手方向即ち鉛直方向に沿ってレール34aに対し移動するスライダ34bとを備えている。スライダ34bには、支持ベース36とクランプ部37とが取り付けられている。
リニアアクチュエータ34は、支持ベース36を介して塗布ヘッド20を昇降させる。即ち、リニアアクチュエータ34は、支持部18と支持ベース36即ち塗布ヘッド20とを前述した基体4の軸芯Pに沿って相対的に移動させる。リニアエンコーダ35は、前述したスライダ34bに取り付けられた支持ベース36即ち塗布ヘッド20の位置を検出して、該塗布ヘッド20の位置に応じた情報を制御装置12に向けて出力する。
支持ベース36は、円環状に形成され且つリニアアクチュエータ34のスライダ34bに取り付けられている。支持ベース36は、その両表面が水平方向と平行に配置されている。即ち、支持ベース36の表面は、前述した基体4の軸芯Pに対して直交する方向に沿って平坦に形成されている。支持ベース36は、表面上に塗布ヘッド20を設置して該塗布ヘッド20を支持している。即ち、支持ベース36は、塗布ヘッド20の下方に配置されている。
クランプ部37は、クランプ部本体38と、一対の接離ロッド39とを備えている。クランプ部本体38即ちクランプ部37は、支持ベース36の下方に配されてリニアアクチュエータ34のスライダ34bに取り付けられている。一対の接離ロッド39は、それぞれ、棒状に形成され、互いに間隔をあけて平行に配置されているとともに、互いに接離自在となっている。一対の接離ロッド39は、互いの間に塗布ヘッド20内を通される基体4や保持部材24を位置付ける位置に配されている。クランプ部37は、一対の接離ロッド39同士を互いに近づけることで、該一対の接離ロッド39間に保持部材24を挟む。
このように、前述した構成の移動部19は、支持ベース36を昇降させることで、支持部18に支持された基体4と塗布ヘッド20とを該基体4の軸芯Pに沿って相対的に移動させる。
塗布ヘッド20は、図1又は図2に示すように、ヘッド本体40と、シール部材44と、カバー部45とを備えている。ヘッド本体40は、円盤状の底板部41と、該底板部41の外周部から立設した円筒状の外周壁42とを備えている。底板部41には、略中央部に開口部43が設けられており、この開口部43の内径は、前述した基体4の外径よりも大きく形成されている。また、開口部43には、当該開口部43の内縁の全周に亘ってシール部材44が取り付けられる。
シール部材44は、ゴムなどの弾性変形自在な合成樹脂で構成されており、円環状に形成されている。シール部材44は、厚みが周方向に一定に形成されているとともに、表面がヘッド本体40の底板部41の表面と略面一となるように設けられている。シール部材44は、ヘッド本体40と同軸に配置されており、当該シール部材44の弾性変形していない中立の状態での内径は、基体4の外径よりも小さい。
そして、シール部材44は、ヘッド本体40の開口部43内に通された基体4に当接して、該基体4を通すことができる状態まで弾性変形する。シール部材44は、前述したように弾性変形すると、基体4の外周面4cを該基体4の径方向に沿って内側に押圧するとともに、該基体4の外周面4cとの間を水密に保つ。即ち、シール部材44は、基体4との間からヘッド本体40内の塗料7が該ヘッド本体40外に漏れることを防止する。
カバー部45は、円環状の本体部46と、内周壁47とを備えている。本体部46は、内外径がヘッド本体40の底板部41と略等しく形成されている。内周壁47は、本体部46の内周部から底板部41即ちヘッド本体40に向かって突出して、円筒状に形成されている。内周壁47は、本体部46から離れた端部47bが底板部41の開口部43の内縁と間隔をあけているとともに、該端部47bがヘッド本体40内に供給された塗料7に浸入するように設けられている。
また、内周壁47は、内径が前述した基体4の外径よりも大きく形成されて、内周面47aが基体4の外周面4cと所定の間隔をあけている。前記所定の間隔とは、内周壁47と基体4との間の塗料7にせん断力が作用する2mm〜3mm程度である。
前述したカバー部45は、本体部46の外縁部がヘッド本体40の外周壁42に重ねられて、該ヘッド本体40の上面に取り付けられる。すると、内周壁47の端部47bが底板部41の開口部43の内縁と間隔をあけて配される。このため、塗布ヘッド20は、その内周側が全周に亘って内外を連通して開口している。そして、カバー部45は、ヘッド本体40内の塗料7の溶媒などが揮発することを防止するとともに、該ヘッド本体40内の塗料7にゴミなどの異物が侵入することを防止する。
前述した構成の塗布ヘッド20は、ヘッド本体40とカバー部45とに囲まれる空間48に前述した塗料供給ユニット10によって塗料7が供給されて、該塗料7をヘッド本体40内に収容する。そして、塗布ヘッド20は、ヘッド本体40の開口部43内に基体4を通すことで、該基体4の外周面4cをヘッド本体40内の塗料7に浸漬させて、外周面4cに塗膜としての離型層6を形成する。
制御装置12は、周知のRAM、ROM、CPUなどを備えたコンピュータである。制御装置12は、図1に示すように、塗料供給ユニット10と、塗布ユニット11の支持部18及び移動部19とに接続しており、これらを制御して、塗膜形成装置1A全体の制御を司る。即ち、制御装置12には、移動部19のリニアエンコーダ35からの情報が入力するとともに、リニアエンコーダ35からの情報などに基づいて、各部位を制御する。
前述した構成の塗膜形成装置1Aは、以下のように、基体4の外周面4cに離型層6を形成する。まず、制御装置12がチャックシリンダ25のロッド31を縮小させて、移動部19に塗布ヘッド20を最も上方に位置付けさせる。このとき、塗布ヘッド20の開口部43内に一方の保持部材24aを通して、クランプ部37の一対の接離ロッド39同士を近づけて該一対の接離ロッド39で一方の保持部材24aを挟んでおく。
次に、塗布ヘッド20が最も上方に位置付けられた状態で、マンドレル23が圧入された基体4を一方の保持部材24aと他方の保持部材24bとの間に位置付ける。そして、制御装置12がチャックシリンダ25のロッド31を伸長させる。すると、ロッド31の固定部材32に固定された一方の保持部材24aと台部21に固定された他方の保持部材24bとの間にマンドレル23を挟むことで、支持部18が基体4を軸芯が鉛直方向と平行な状態で指示する。さらに、制御装置12がチャックシリンダ25の一対の接離ロッド39同士を互いに離す。
その後、制御装置12が、移動部19に塗布ヘッド20を降下させるとともに、リニアエンコーダ35からの情報に基づいて、塗布ヘッド20が開口部43内に一方の保持部材24aのマスク29を通す位置に位置付けられたと判定すると、当該移動部19を停止する。そして、制御装置12が塗料供給ユニット10に所定の量(1回の塗布に必要な量)の塗料7を塗布ヘッド20のヘッド本体40内に供給させる。このとき、シール部材44が一方の保持部材24aのマスク29との間を水密に保つこととなるので、一方の保持部材24aに塗料7が付着することなく、また、塗布ヘッド20と一方の保持部材24aのマスク29との間から塗料7が漏れることがない。
続いて、制御装置12が、移動部19に塗布ヘッド20を徐々に降下させるとともに、塗料供給ユニット10に塗布ヘッド20のヘッド本体40内の塗料7を一定の速度で回収させる。すると、基体4の外周面4cに上端部4aから下端部4bに向かって順に塗料7が塗布されて、離型層6が形成される。
このとき、塗布ヘッド20のカバー部45の内周壁47の内周面47aと基体4の外周面4cとが相対的に移動することで、図3(a)に示すように、内周壁47と基体4との間の塗料7に上昇流Uと下降流Dとが発生して、図3(b)に示すように、内周壁47と基体4との間の塗料7にせん断力Sが作用するため、前記塗料7の粘度が一時的に低下して、基体4の外周面4cへの塗料7の塗布速度を速くすることができる。
また、ヘッド本体40内の塗料7の液面7aを一定速度で低下させながら、塗布ヘッド20を徐々に降下させることで、図3(b)に示すように、塗布ヘッド20のカバー部45の内周壁47の内周面47aと基体4の外周面4cとの相対的な移動により、これら内周壁47と基体4との間の塗料7に作用するせん断力Sが増大するため、前記塗料7の粘度を一時的により低下させることができる。
そして、制御装置12が、移動部19に塗布ヘッド20をさらに降下させるとともに、リニアエンコーダ35からの情報に基づいて、塗布ヘッド20が開口部43内に他方の保持部材24bのマスク29を通す位置に位置付けられたと判定すると、当該移動部19を停止する。
最後に、制御装置12がチャックシリンダ25のロッド31を縮小する。そして、離型層6が形成された基体4と、基体4を支持したマンドレル23とが取り除かれた後、制御装置12が、移動部19に塗布ヘッド20を上昇させて、前述した工程と同様に、基体4を塗装する。
このように、前述した塗膜形成装置1Aの制御装置12は、支持部18のマンドレル23に保持された基体4の上端部4aと相対した塗布ヘッド20の内周側から塗料7を塗出させながら、該塗布ヘッド20が基体4の下端部4bに向かって移動するように、移動部19を制御するとともに、塗布ヘッド20のヘッド本体40内の塗料7を一定の速度で回収するように、塗料供給ユニット10を制御する。
本実施形態によれば、カバー部45の内周壁47の内周面47aと基体4の外周面4cとの間に所定の間隔が設けられているので、塗布ヘッド20が基体4の軸芯Pに沿って移動して該基体4の外周面4cに塗料7を塗布する際に、内周壁47の内周面47aと基体4の外周面4cとが相対的に移動することで、内周壁47と基体4との間の塗料7にせん断力Sが作用して、該塗料7の粘度を一時的に低下させることができる。このため、基体4の外周面4cへの塗料7の塗布速度を速くすることができ、塗装時間を短縮することができる。よって、生産性の向上を図ることができる。
また、基体4の外周面4cに塗料7を塗布する際に、ヘッド本体40内の塗料7の液面7aを低下させる液面低下手段が設けられているので、塗料7のヘッド本体40内への戻り力を増大させることができる。このため、基体4の外周面4cに塗料7を塗布する際に、内周壁47の内周面47aと基体4の外周面4cとの相対的な移動により、該内周壁47と基体4との間の塗料7に作用するせん断力Sを増大させることができ、該塗料7の粘度を一時的により低下させることができる。したがって、基体4の外周面4cへの塗料7の塗布速度をさらに速くすることができ、よって、塗装時間をさらに短縮することができる。
さらに、前記液面低下手段がヘッド本体40内の塗料7を塗料供給ユニット10の塗料収容タンク13内に回収するポンプ16で構成されているので、ポンプ16にヘッド本体40内の塗料7を塗料収容タンク13内へ回収させて、ヘッド本体40内の塗料7の液面7aを低下させる、簡単な機構とすることで、装置の小型化を図るとともに装置のコストを抑制することができる。また、ヘッド本体40内の塗料7と塗料収容タンク13内の塗料7との循環を行うことができるので、メンテナンス等の長時間に亘って装置が停止する場合でも、ヘッド本体40内の塗料7の濃度を均一に保つことができる。よって、塗装ムラや異物の付着などを防止することができる。
次に、本発明の第2の実施形態に係る塗膜形成装置1Bを、図6乃至図8を参照して説明する。なお、前述した第1の実施形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、図6に示すように、塗布ヘッド20のヘッド本体40内から塗料7を排出する塗料排出部50をさらに備えている。塗料排出部50は、塗料排出容器51と、塗料排出管52と、バルブ53と、密閉ユニット54と、を備えている。
塗料排出容器51は、工場のフロア上などに設置され且つ塗布ヘッド20のヘッド本体40内から排出した塗料を貯留する。塗料排出管52は、細長い管状に形成されており、塗料排出容器51と塗布ヘッド20のヘッド本体40と塗を連通して塗料7を通す。バルブ53は、開くことで、ヘッド本体40から塗料排出容器51に塗料7が排出されることを許容する。
密閉ユニット54は、内部に流体が圧入されることで膨張するバルーン55と、該バルーン55に加圧した気体を供給する加圧気体供給部56とを備えている。
バルーン55は、ゴムなどの弾性変形自在な材料で構成されて、袋状に形成されている。バルーン55は、円環状に形成されて、カバー部45の本体部46の内周部の表面に取り付けられているとともに、該カバー部45と同軸に配置されている。そして、バルーン55は、加圧気体供給部56により加圧気体が供給されると膨張して、塗布ヘッド20のカバー部45の内周壁47と基体4との間の空間を密閉する。
加圧気体供給部56は、図示しない加圧気体供給源と、レギュレータ57と、加圧気体通気管58aと、バルブ59と、気体排出管58bとを備えている。レギュレータ57は、加圧気体供給源から送り出された加圧気体の圧力を調整する。加圧気体通気管58aは、細長い管状に形成されており、バルーン55と加圧気体供給源(図示せず)とをレギュレータ57及びバルブ59を介して連通して、加圧気体供給源(図示せず)から送り出された加圧気体を通す。
バルブ59は、レギュレータ57からバルーン55への加圧気体の供給と、バルーン55内からの加圧気体の排出とを切り替える。気体排出管58bは、細長い管状に形成されており、バルブ59に接続されてバルーン55内から排出された加圧気体を通す。
前述した構成の加圧気体供給部56は、加圧気体供給源及びレギュレータ57から供給された加圧気体を、加圧気体連通管58aを通してバルーン55内に供給して、この加圧気体によりバルーン55を膨張させる。そして、バルブ59を切り替えることで、バルーン55内の加圧気体を気体排出管58bを通して外部に排出する。
また、本実施形態では、図6に示すように、前述した塗膜形成装置1Aの塗料供給ユニット10が、前述したポンプ16の代わりに、塗料収容タンク13からヘッド本体40への塗料の供給量を調整するバルブ60と、塗料収容タンク13内に気体を供給するレギュレータ61と、を備えている。レギュレータ61は、外気を前述した通気管14内を通して塗料収容タンク13内に出し入れする。バルブ60は、開くことで、塗料収容タンク13からヘッド本体40に塗料7が供給されることを許容する。
前述した構成の塗料排出部50と塗料供給ユニット10のバルブ60及びレギュレータ61とは、以下のように、制御装置12により制御される。制御装置12が、リニアエンコーダ35からの情報に基づいて、塗布ヘッド20が開口部43内に一方の保持部材24aのマスク29を通す位置に位置付けられたと判定すると、バルブ60を開くとともにレギュレータ61に外気を塗料収容タンク13へ供給させるのと連動して、加圧気体供給部56にバルーン55内に加圧気体を供給させる。
すると、塗料収容タンク13内が加圧されて、該塗料収容タンク13から塗料供給管15を通して所定の量(1回の塗布に必要な量)の塗料7が塗布ヘッド20のヘッド本体40内に供給されるとともに、バルーン55が膨張して、塗布ヘッド20のカバー部45の内周壁47と基体4との間の空間が密閉される。
そして、制御装置12が、リニアエンコーダ35からの情報に基づいて、塗布ヘッド20が基体4の上端部4aに位置付けられたと判断して、移動部19に塗布ヘッド20を徐々に降下させるのと連動して、加圧気体供給部56にバルーン55内の加圧気体を外部に排出させるとともに、バルブ53を開く。すると、加圧気体の排出によりバルーン55が収縮して、塗布ヘッド20のカバー部45の内周壁47と基体4との間の空間が開放されて、ヘッド本体40内の塗料7が塗料排出管52を通って塗料排出容器51に排出される。
このように、前述した塗膜形成装置1Bの制御装置12は、塗布ヘッド20が一方の保持部材24aのマスク29と相対する位置に位置付けられた際に、塗料収容タンク13内に外気を供給して該塗料収容タンク13内の空気Eを加圧することで、塗料収容タンク13から所定の量(1回の塗布に必要な量)の塗料7を塗布ヘッド20のヘッド本体40内に供給するように、塗料供給ユニット10のバルブ60とレギュレータ61とを制御する。
また、前述した塗膜形成装置1Bの制御装置12は、塗布ヘッド20が一方の保持部材24aのマスク29と相対する位置に位置付けられた際に、加圧気体供給部56にバルーン55内に加圧気体を供給させて該バルーン55を膨張させることで、塗布ヘッド20のカバー部45の内周壁47と基体4との間の空間が密閉するように、塗料排出部50を制御する。
さらに、前述した塗膜形成装置1Bの制御装置12は、塗布ヘッド20が基体4と相対する位置に位置付けられた際に、移動部19に塗布ヘッド20を徐々に降下させるのと連動して、加圧気体供給部56にバルーン55内の加圧気体を外部に排出させて該バルーン55を収縮させるとともに、バルブ53を開くことで、塗布ヘッド20のカバー部45の内周壁47と基体4との間の空間が開放して、ヘッド本体40内の塗料7が塗料排出管52を通って塗料排出容器51に排出するように、塗料排出部50を制御する。
こうして、前述した塗膜形成装置1Bの制御装置12は、塗料排出部50を制御することで、バルーン55を収縮させるとともにバルブ53を開いて、塗布ヘッド20のカバー部45の内周壁47と基体4との間の空間が開放して、ヘッド本体40内の塗料7が塗料排出管52を通って塗料排出容器51に排出するため、ヘッド本体40内の塗料7の液面7aをスムーズに低下させることができる。
本実施形態によれば、塗料排出部50にヘッド本体40内の塗料7を塗料排出管52から排出させることで、ヘッド本体40内の塗料7の液面7aをスムーズに低下させることができる。このため、基体4の外周面4cに塗料7を塗布する際に、ヘッド本体40内の塗料7の液面7aを一定の速度で低下させることができ、そのために、内周壁47の内周面47aと基体4の外周面4cとの相対的な移動により、該内周壁47と基体4との間の塗料7に作用するせん断力Sを一定に保つことができる。したがって、基体4の外周面4cへの塗料7の塗布速度を速くするとともに、均一な厚みの離型層6を形成することができる。
次に、本発明の第3の実施形態に係る塗膜形成装置1Cを、図9乃至図13を参照して説明する。なお、前述した第1の実施形態及び第2の実施形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、図10に示すように、塗布ヘッド20のカバー部45は、内周壁47に隣接して設けられた突出壁49を備えている。突出壁49は、本体部46からヘッド本体40の底板部41に向かって突出した円筒状に形成され且つ内周壁47と隣接して設けられている。突出壁49は、カバー部45及び内周壁47と同軸に配置されている。突出壁49は、本体部46から離れた側の端部が底板部41と間隔をあけている。突出壁49の本体部46からの高さは、内周壁47の本体部46からの高さよりも高い。
そして、突出壁49は、塗料供給ユニット10によって塗料7が供給される際などに、ヘッド本体40内の塗料7に生じた気泡と干渉して、該気泡が基体4側に移動して該基体4に付着することを防止する。
さらに、本実施形態では、図9に示すように、前述した塗膜形成装置1Bの塗料排出部50の代わりに、塗布ヘッド20のヘッド本体40内に空気を給排可能な気体給排部65を備えている。この気体給排部65は、電空レギュレータ66と、気体供給管67と、バルブ68と、気体排出管69とを備えている。
電空レギュレータ66は、制御装置12からの信号に基づいて空気の圧力を調整して、該空気E(図11に示す)を気体供給管67内を通して塗布ヘッド20内へ送り出す。気体供給管67は、細長い管状に形成されており、塗布ヘッド20内の空間48と電空レギュレータ66とをバルブ68を介して連通して、電空レギュレータ66から送り出された空気Eを通す。バルブ68は、電空レギュレータ66から塗布ヘッド20内への空気Eの供給と、塗布ヘッド20内の空気Eの排出とを切り替える。気体排出管69は、細長い管状に形成されており、バルブ68に接続されて塗布ヘッド20内から排出された空気Eを通す。
前述した構成の気体給排部65は、電空レギュレータ66から供給された空気Eを、気体供給管67を通して塗布ヘッド20内の空間48に供給して、該空間48を加圧する。そして、バルブ68を切り替えることで、塗布ヘッド20内の空間48から空気Eを気体排出管69を通して外部に排出して、該空間48を減圧する。
前述した構成の気体給排部65は、以下のように、制御装置12により制御される。制御装置12が、リニアエンコーダ35からの情報に基づいて、塗布ヘッド20が基体4の上端部4aに位置付けられたと判断して、塗料供給ユニット10に塗料収容タンク13から所定の量(1回の塗布に必要な量)の塗料7を塗布ヘッド20のヘッド本体40内に供給させた後に、移動部19に塗布ヘッド20を徐々に降下させるのと連動して、電空レギュレータ66に塗布ヘッド20内の空間48へ空気Eを供給させる。すると、塗布ヘッド20内の空間48が加圧されて、ヘッド本体40内の塗料7の液面7aが低下する。
そして、制御装置12が、リニアエンコーダ35からの情報に基づいて、塗布ヘッド20が他方の保持部材24bのマスク29と相対する位置に位置付けられたと判断すると、移動部19に塗布ヘッド20の降下を停止させるのと連動して、バルブ68を切り替えて塗布ヘッド20内の空間48から空気Eを外部に排出させる。すると、塗布ヘッド内の空間48が外気圧まで減圧されて、基体4と内周壁47との間の塗料7がヘッド本体40内に戻る(移動する)。
このように、前述した塗膜形成装置1Cの制御装置12は、塗布ヘッド20が基体4の上端部4aに位置付けられた際に、塗料供給ユニット10に塗布ヘッド20のヘッド本体40内に塗料7を供給させた後に、移動部19に塗布ヘッド20を徐々に降下させるのと連動して、電空レギュレータ66に塗布ヘッド20内の空間48へ空気Eを供給させて該塗布ヘッド20内の空間48を加圧させることで、ヘッド本体40内の塗料7の液面7aが低下するように、気体給排部65を制御する。
また、前述した塗膜形成装置1Cの制御装置12は、塗布ヘッド20が他方の保持部材24bのマスク29と相対する位置に位置付けられた際に、移動部19に塗布ヘッド20を停止させるのと連動して、バルブ68を切り替えて塗布ヘッド20内の空間48から空気Eを外部に排出させて該塗布ヘッド20内の空間48を外気圧まで減圧させることで、基体4と内周壁47との間の塗料7がヘッド本体40内に戻る(移動する)ように、気体給排部65を制御する。
こうして、前述した塗膜形成装置1Cの制御装置12は、気体給排部65を制御することで、塗布ヘッド20内へ空気Eを供給又は該塗布ヘッド20内から空気Eを排出させて、塗布ヘッド20内への空気Eの供給量を調整可能であるため、ヘッド本体40内の塗料7の液面7aの高さを微細に変更することができる。
本実施形態によれば、気体給排部65に塗布ヘッド20内へ空気Eを供給又は該塗布ヘッド20内から空気Eを排出させることで、塗布ヘッド20内への空気Eの供給量を調整することができるので、ヘッド本体40内の塗料7の液面7aの高さを微細に変更することができる。
このため、基体4の外周面4cに塗料7を塗布する際に、ヘッド本体40内の塗料7の液面7aを一定の速度で低下させることができ、そのために、内周壁47の内周面47aと基体4の外周面4cとの相対的な移動により、該内周壁47と基体4との間の塗料7に作用するせん断力Sを一定に保つことができる。したがって、基体4の外周面4cへの塗料7の塗布速度を速くするとともに、均一な厚みの離型層6を形成することができる。
次に、本発明の第4の実施形態に係る塗膜形成装置1Dを、図14乃至図16を参照して説明する。なお、前述した第1の実施形態乃至第3の実施形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、図14に示すように、前述した塗膜形成装置1Cの気体給排部65の代わりに、塗布ヘッド20のヘッド本体40内の塗料7を収容可能な容積を変更自在な容積変更手段70を備えている。この容積変更手段70は、ヘッド本体40内に配置され且つ内部に流体が圧入されることで膨張するバルーン71と、該バルーン71に加圧した気体を供給する加圧気体供給部72とを備えている。
バルーン71は、ゴムなどの弾性変形自在な材料で構成されて、袋状に形成されている。バルーン71は、円環状に形成されて、ヘッド本体40内に該ヘッド本体40と同軸に配置されている。バルーン71は、加圧気体供給部72により内部に流体としての加圧気体が供給される。バルーン71は、内部に加圧気体が供給されると膨張するとともに、該加圧気体の圧力が高くなるのにしたがってより膨張する。
加圧気体供給部72は、図示しない加圧気体供給源と、レギュレータ73と、加圧気体通気管74と、バルブ75と、気体排出管76とを備えている。レギュレータ53は、加圧気体供給源から送り出された加圧気体の圧力を調整する。加圧気体通気管74は、細長い管状に形成されており、バルーン71と加圧気体供給源(図示せず)とをレギュレータ73及びバルブ75を介して連通して、加圧気体供給源(図示せず)から送り出された加圧気体を通す。
バルブ75は、レギュレータ73からバルーン71への加圧気体の供給と、バルーン71内からの加圧気体の排出とを切り替える。気体排出管76は、細長い管状に形成されており、バルブ75に接続されてバルーン71内から排出された加圧気体を通す。
前述した構成の加圧気体供給部72は、加圧気体供給源及びレギュレータ73から供給された加圧気体を、加圧気体連通管74を通してバルーン71内に供給して、この加圧気体によりバルーン71を膨張させる。そして、バルブ75を切り替えることで、バルーン71内から加圧気体を気体排出管76を通して外部に排出する。
前述した構成の容積変更手段70は、以下のように、制御装置12により制御される。
制御装置12が、リニアエンコーダ35からの情報に基づいて、塗布ヘッド20が開口部43内に一方の保持部材24aのマスク29を通す位置に位置付けられたと判定すると、加圧気体供給部72にバルーン71内に加圧気体を供給させる。すると、バルーン71が膨張して、ヘッド本体40内の塗料7を収容可能な容積(ヘッド本体40内に収容できる塗料7の量)を減少させる。
そして、制御装置12が、リニアエンコーダ35からの情報に基づいて、塗布ヘッド20が基体4の上端部4aに位置付けられたと判断して、塗料供給ユニット10に塗料収容タンク13から所定の量(1回の塗布に必要な量)の塗料7を塗布ヘッド20のヘッド本体40内に供給させた後に、移動部19に塗布ヘッド20を徐々に降下させるのと連動して、加圧気体供給部72にバルーン71内から加圧気体を排出させる。すると、バルーン71が収縮して、ヘッド本体40内の塗料7を収容可能な容積(ヘッド本体40内に収容できる塗料7の量)を増加させる。
このように、前述した塗膜形成装置1Dの制御装置12は、塗布ヘッド20が一方の保持部材24aのマスク29と相対する位置に位置付けられた際に、加圧気体供給部72にバルーン71内に加圧気体を供給させて該バルーン71を膨張させることで、ヘッド本体40内の塗料7を収容可能な容積(ヘッド本体40内に収容できる塗料7の量)が減少するように、容積変更手段70を制御する。
また、前述した塗膜形成装置1Dの制御装置12は、塗布ヘッド20が基体4と相対する位置に位置付けられた際に、塗料供給ユニット10に塗布ヘッド20のヘッド本体40内へ塗料7を供給させた後、移動部19に塗布ヘッド20を徐々に降下させるのと連動して、加圧気体供給部72にバルーン71内から加圧気体を排出させて該バルーン71を収縮させることで、ヘッド本体40内の塗料7を収容可能な容積(ヘッド本体40内に収容できる塗料7の量)が増加するように、容積変更手段70を制御する。
こうして、前述した塗膜形成装置1Dの制御装置12は、容積変更手段70を制御することで、バルーン71を膨張又は収縮させて、塗布ヘッド20のヘッド本体40内の塗料7を収容可能な容積を変更自在であるため、ヘッド本体40内の塗料7の液面7aの高さを微細に変更できる。
本実施形態によれば、基体4の外周面4cに塗料7を塗布する際に、容積変更手段70にヘッド本体40内の容積を増大させることで、該ヘッド本体40内の塗料7の液面7aを低下させることができ、塗料7のヘッド本体40内への戻り力を増大させることができる。
このため、基体4の外周面4cに塗料7を塗布する際に、内周壁47の内周面47aと基体4の外周面4cとの相対的な移動により、該内周壁47と基体4との間の塗料7に作用するせん断力Sを増大させることができ、該塗料7の粘度を一時的により低下させることができる。したがって、基体4の外周面4cへの塗料7の塗布速度をさらに速くすることができ、よって、塗装時間をさらに短縮することができる。
また、バルーン71を膨張及び収縮させることで、ヘッド本体40内の塗料7の液面7aの高さを微細に変更できるので、基体4の外周面4cに塗料7を塗布する際に、ヘッド本体40内の塗料7の液面7aを一定の速度で低下させることができる。このため、基体4の外周面4cに塗料7を塗布する際に、内周壁47の内周面47aと基体4の外周面4cとの相対的な移動により、該内周壁47と基体4との間の塗料7に作用するせん断力Sを一定に保つことができる。したがって、基体4の外周面4cへの塗料7の塗布速度を速くするとともに、均一な厚みの離型層6を形成することができる。
次に、本発明の発明者は、第1の実施形態(実施例1)、第2の実施形態(実施例2)、第3の実施形態(実施例3)、第4の実施形態(実施例4)と、実施例5と、比較例1及び比較例2とについて、後述する試験を行い、本発明の効果を確認した。その結果を図17乃至図19に示す。
(実施例1)
第1の実施形態の塗膜形成装置1Aは、塗布ヘッド20のカバー部45の内周壁47が、アルミで構成され且つ内径65.6mm(基体4の外周面4cとの間の距離が約2.65mm)のものとした。そして、ポンプ16にはチューブポンプを使用し、流量を調整して、塗布ヘッド20内の塗料7の液面低下速度が0mm/sec,0.1mm/sec,0.2mm/secとなる条件でそれぞれ塗装を行った。
(実施例2)
第2の実施形態の塗膜形成装置1Bは、塗料排出管52の内径が4mmのものとした。そして、バルブ53の開度を調整して、塗布ヘッド20内の塗料7の液面低下速度が0mm/sec,0.1mm/sec,0.2mm/secとなる条件でそれぞれ塗装を行った。その他の条件については実施例1記載の条件と同等である。
(実施例3)
第3の実施形態の塗膜形成装置1Cは、突出壁49の直径が80mm、突出壁49の塗料が通過する底板部41との間隔が1±0.05mmとした。そして、電空レギュレータ66の設定圧が8kPaで且つ塗布時の液面低下時の設定圧を1〜3kPaに設定して、塗布ヘッド20内の塗料7の液面低下速度が0mm/sec,0.1mm/sec,0.2mm/secとなる条件でそれぞれ塗工を行った。その他の条件については実施例1記載の条件と同等である。
(実施例4)
第4の実施形態の塗膜形成装置1Dは、バルーン71の容積が5cm3のものとし、加圧気体連通管74の内径が4mmのものとした。そして、バルブ75の開度を調整して、塗布ヘッド20内の塗料7の液面低下速度が0mm/sec,0.1mm/sec,0.2mm/secとなる条件でそれぞれ塗工を行った。その他の条件については実施例1の条件と同等である。
(実施例5)
実施例5の塗膜形成装置(図示せず)は、前述した第3の実施形態(実施例3)の塗膜形成装置1Cの塗布ヘッド20のカバー部45の内周壁47の表面にフッ素樹脂(FEP)コーティングが施された構成である。
(比較例1)
比較例1の塗膜形成装置(図示せず)は、前述した第1の実施形態の塗膜形成装置1Aと同じ構成である。そして、塗布ヘッド20内の塗料7の液面低下速度を0mm/sとした条件である。
(比較例2)
比較例2の塗膜形成装置(図示せず)は、前述した第1の実施形態の塗膜形成装置1Aの塗布ヘッド20のカバー部45の内周壁47を有していない構成である。即ち、塗布ヘッド20の内周側が内外を連通して開口した構成である。そして、比較例1と同様に、塗布ヘッド20内の塗料7の液面低下速度を0mm/sとした条件である。
(試験1)
前述した第1の実施形態(実施例1)の塗膜形成装置1A、第2の実施形態(実施例2)の塗膜形成装置1B、第3の実施形態(実施例3)の塗膜形成装置1C、第4の実施形態(実施例4)の塗膜形成装置1D、実施例5の塗膜形成装置、比較例1の塗膜形成装置、及び、比較例2の塗膜形成装置を用い、且つ、塗料7として粘度が360cpのPFAディスパージョン(水分散系)、及び、被塗装物としてポリイミド(以下PI)で構成された外径60mm、長さ370mm、厚さ70μmの円筒状の基材の外周に、膜厚150μmのゴム層を形成し、その表面にプライマ(接着剤)が塗布された無端状ベルトを用いて、この無端状ベルトへの離型層の形成を行った。なお、焼成後に要求するPFD膜厚は、18±1.5μm(定着ベルトに要求される良好な画像品質を得るための規格)である。
そして、前述したそれぞれの条件において、無端状ベルトへの塗料7の塗布速度が5mm/s,10mm/s,15mm/sで塗装したものの平均膜厚を評価し、平均膜厚が18μmとなる塗布速度を算出した。この算出した結果から液面低下速度と平均膜厚が18μm一定となる塗装速度の関係を調べた。その結果を第1の実施形態乃至第4の実施形態、実施例5、比較例1及び比較例2との比較を図17乃至図19のグラフに示す。
図17のグラフによれば、第1の実施形態(実施例1)と比較例1及び比較例2とを比較すると、液面低下速度が上昇するに従って塗布速度は向上することが確認できる。また、膜厚品質(平均膜厚と膜厚偏差)の結果を、図18及び図19のグラフに示す。なお、膜厚は定着ベルト1本あたり、軸方向上端、中央、下端の3箇所、円周方向3箇所の計9箇所を測定した。平均膜厚はこの9箇所の平均値、膜厚偏差は最大と最小の差を示している。第1の実施形態(実施例1)では、比較例1及び比較例2に対して、平均膜厚は同等だが、膜厚偏差は大きくなっている。これはポンプの脈動により液面低下速度にバラつきがあったためであるが、比較的脈動の小さい小容量のチューブポンプを使用したことにより、規格内には収まる結果を得ている。
第2の実施形態(実施例2)の塗布速度に関しては、図17のグラフに示す通り、実施例1と同等の結果となった。平均膜厚に関しても図18のグラフに示す通り、従来と同等の結果が得られた。膜厚偏差に関しても図19のグラフに示す通り、実施例1と同等の結果が得られている。
第3の実施形態(実施例3)の塗布速度に関しては、図17のグラフに示す通り、実施例1と同等の結果となった。平均膜厚に関しても図18のグラフに示す通り、従来と同等の結果が得られた。膜厚偏差に関しては、図19のグラフに示す通り、実施例1よりも膜厚偏差が小さく、従来と同等の結果が得られている。これは実施例3の構成では気体の給排気を利用することで液面を一定速度で下降させることを特徴としており、実施例1のような液面低下速度のバラつきの影響が無かったためである。
第4の実施形態(実施例4)の塗布速度に関しては、図17のグラフに示す通り、実施例1と同等の結果となった。平均膜厚に関しても図18のグラフに示す通り、従来と同等の結果が得られた。膜厚偏差に関しては、図19のグラフに示す通り、実施例3と同等の結果が得られている。これはバルーン71の膨張又は収縮を利用しているため、実施例3と同様に液面低下速度が一定となるためである。
実施例5の塗布速度に関しては、図17のグラフに示す通り、実施例1及び実施例2よりもさらに塗布速度が向上する結果が得られた。膜厚品質(平均膜厚及び膜厚偏差)に関しても、図18及び図19のグラフに示す通り、比較例1、比較例2及び実施例2と同等の結果が得られた。
前述した実施形態では、定着ベルト2の離型層6を形成する場合を示しているが、本発明は、定着ベルト2に限ることなく種々の無端ベルトに塗膜を形成しても良いことは勿論である。
また、前述した実施形態では、支持部18によって基体4を固定して、移動部19の支持ベース36を移動させている。しかしながら、本発明では、支持ベース36を固定して、基体4を移動させても良く、支持ベース36と基体4との双方を移動させても良い。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。即ち、塗布ユニット11の支持部18と移動部19と制御装置12等は、実施形態に記載された構成及び配置に限定されることなく、種々の構成及び配置にしても良い。