JP5315834B2 - 塗膜形成装置、定着手段及び画像形成装置 - Google Patents
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Description
従来、この基材として用いられるポリイミドの無端状ベルトは遠心成型法で製作されていたが、型代などのコストが掛かり、値段が高く、また、型成型のため容易に径が変更できないなどの不具合があった。そこで、安価にこのポリイミドの無端状ベルトを製作する方法として、市販のシート状のポリイミドを接合して無端状ベルト形状を作り出す接合方法が開発されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
上記の特許文献1乃至3の場合、円筒形状物の内側に塗装し塗膜を形成する必要があり、従来は内面を塗装するための長尺のスプレーノズルによるスプレー塗装や浸漬塗装(ディッピング)が多く用いられてきた。
スプレー塗装の場合、内面を塗装するための特殊なノズル(特許文献3、内面塗装用スプレー装置(扶桑精機)参照)を用いることで塗装することは可能であるが、ここで課題とする対象物の定着ベルト基材の場合、A3対応の複写機及びプリンタの場合、全長が350mm前後となり、これを塗装するためにはノズルの長さも同等の350mm程度必要となる。そのため外面を塗装する通常のスプレー塗装よりミストの微粒化が難しいため、塗料のレベリング性が悪化し、最終的な塗膜の表面性(粗さ、うねり)が悪くなるのが一般的である。
これを解決するために、被塗装物の下端をゴム風船などでシールし、内部に塗料を溜め、その後被塗装物内部の塗料を液面が一定速度で下がるように塗料を抜くことで浸漬塗装と同じ原理で塗装することができる塗装方法も開発されている。
一方、浸漬塗装を少量の塗料で行う方法としてリングコート工法が知られている。この方法は少量の塗料で効率よく塗装できるものの、ここでも円筒体の外側を塗装することは可能であるが、内面を塗装することは不可能であった。
このように、従来技術では、スプレー塗装にて内面を塗装するもので、後述するように塗装面の表面性状が劣っている。スプレー式よりは表面性状が良くなることは期待できるが、大型の液槽に塗料を溜め、循環することが必要となり、1本の被塗装物を塗装する際にも大量の塗料が必要となる。円筒状物の外周を塗装するものであり、装置構成及びその動作が異なる。
そこで、本発明の目的は、上述した実情を考慮して、少量の塗料を用いて効率よく、円筒形状の被塗装物内面を均一かつ滑らかな表面性状で塗装することが可能な塗膜形成装置、及びこの塗膜形成装置で製造された定着ベルトを使用する画像形成装置を提供することにある。
また、請求項2に記載の発明は、前記被塗装物を外周から保持する前記保持具が前記被塗装物の外径より僅かに大きな内径の保持具である請求項1記載の塗膜形成装置を特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、前記被塗装物を外周から保持する前記保持具には、前記被塗装物をエアで吸引するためのエア孔が、少なくとも1個以上空いている請求項2記載の塗膜形成装置を特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、定着部材と加圧部材とによって構成されかつ記録媒体に転写されたトナー像を該記録媒体上に熱定着させる定着手段において、前記定着部材が定着ベルトであり、該定着ベルトが請求項1乃至3のいずれか1項記載の塗膜形成装置で内面に塗膜を形成した定着ベルトである定着手段を特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、記録媒体に転写されたトナー像を定着手段で前記記録媒体上に熱定着させる画像形成装置において、前記定着手段として請求項4記載の定着ベルトを使用する画像形成装置を特徴とする。
本発明を用いた塗膜形成装置及びこの塗膜形成装置を用いて加工したポリイミド基材を用いて製作した定着ベルトの実施の形態を図1及び図2を参照して説明する。図1の円内を示す断面図は定着ベルト30を無端状ベルト形状にする前の平らな状態として示している。
定着ベルト30(被塗装物)の基材1は、樹脂(ポリイミド、ポリアミドイミドなど)からなる材質で無端状ベルト形状をしている。その上に弾性層であるシリコンゴム2、離型層であるフッソ樹脂3(PFA、PTFEなど)がそれぞれプライマ層(接着層)4を介して構成されている。
また、この基材1のポリイミド樹脂はユーピレックス(商品名):宇部興産(50μm厚)を図に示すように接着層6を介して接合することで無端状ベルト形状を形成している。
基材1自体には導電性がないので、この基材1の円筒体内側(図1の断面図では下側)には本定着ベルトに導電性を持たせるための、カーボン分散液を塗布した導電層5が形成されている。本発明の塗膜形成装置はこの導電層5を塗装するためのものである。
本定着ベルトの加工順番は、まず、基材1を接合して円筒形状にした後に本発明の塗膜形成装置を用いて、導電層5を形成し、その後、基材1の円筒体外側(図1の断面図では内側)にプライマ層4、シリコンゴム層2、プライマ層4、離型層3の順に積層して塗装していく。この外側の層の塗装には、例えば、特許文献2に記載の塗膜形成装置や従来からのスプレーによる塗装などを用いて層を形成することが可能である。
被塗装物が無端状ベルト基材1の場合に、外周からこの無端状ベルト基材1を保持する保持具であるマンドレル7を具備しているので、不定形ベルト形状の被塗装物を真円に保持することが可能となり、少量の塗料で浸漬塗装にて表面性状がよく、被塗装物の内面に塗膜を形成することが可能である。
外周から基材1を保持するマンドレル7にエア(空気)で吸引するためのエア孔(空気)22が、少なくとも1個以上空いている。被塗装物である基材1をエア吸引することで、軸方向にずれないようにより強固に固定することが可能となる。
従って、被塗装物30の寸法が変化しても、少量の塗料で浸漬塗装にて、表面性状がよく被塗装物の内面に塗膜を形成することが可能である。図中、被塗装物30の内側には形成された塗膜20、エア孔22にはエア発生源(図示せず)に接続されるエア配管23が示してある。
液槽10の上には蓋部材13があり、この蓋部材13の役割は塗料11が揮発したり、外部から塗料11内部に汚染物(コンタミネーション)が混入するのを防ぐことである。蓋部材13には垂下壁14が設けられており、これらの垂下壁14によりできる空間15は塗料11中に気泡が発生した場合に気泡が上昇し、この空間15に溜まることで、気泡をトラップすることが可能となる。
液面の高さは変位センサ18で測定しており(本実施の形態では超音波式のセンサを用いることで液面の高さも位置情報として検出することが可能である)、この変位センサ18の信号出力を図示してない本塗膜形成装置全体を制御する制御ユニットに送り、先述の定量供給装置を制御することで、塗料11により形成される液面の高さを任意の位置に制御することが可能となる。
液槽10はこの液槽10の上下に配置されるクランプ16で固定又は開放自在な構造となっており、クランプ16は上シャフト17A、下シャフト17Bに締結されており、直線運動案内機構19(本実施の形態ではリニアブッシュ)により案内され、上シャフト17A、下シャフト17Bのいずれのシャフトも上下に可動自在な構造となっている。
この上シャフト17A及び下シャフト17Bは図示されていない1軸直動アクチュエータで可動することができる。また、直線運動案内機構19は直線運動を案内する機械部品であり、シャフトの回りに配置したベアリングのごとき球体19aでシャフトの運動を案内している。
初めに、図4(a)において、液槽10はシャフト17Aに取り付けられたクランプ16により上部に持ち上げられた状態になっており、この時、塗料11は溢れないようにシール12より下の位置に液面がくる状態になっている。
この状態で被塗装物30を形成する定着ベルト用基材1を受け部材8上に載せてセットする。この定着ベルト用基材1は不定形の無端状ベルト形状をしており、これ自体では形状を保持することができないために、マンドレル7に挿入され、基材1自体の戻ろうとする力でマンドレル7の内面に固定されている。
マンドレル7の内径は基材1の外径と同等から20〜30μmマイナスした公差で製作されているので、基材1が前述の復元力で張り付くと、この基材1の外面とマンドレル7内面の摩擦力によりこれらは簡単には動かないようになっている。
これは塗装に使用する塗料11の粘度にもよるが、あまりずれると4〜5cP程度の低粘度の塗料は漏れが生ずるためである。そしてマンドレル7が固定された後に受け部材8は下降し、液槽10の移動準備が完了する。受け部材8は図示していないが、エアシリンダなどの駆動源で上昇又は下降の動作をすることができる。
次いで、下シャフト17Bが図示していない1軸アクチュエータによって上昇し、下シャフト17Bの先端に設けられたクランプ16により、液槽10を下側から把持して固定する。液槽10が下側から保持されたら、上シャフト17Aに設けられたクランプ16は開放され、図4(c)の状態となる。
次に、図4(c)において、液槽10は図示位置まで移動し、ここで液槽10の液面高さは変位センサ18によりに計測され、その信号により制御ユニットが図示されていないポンプを運転し塗料11を補充し、所望の液面高さになった時点で塗料11の供給を停止する。
この時、塗料11中に気泡が存在する場合には、この気泡は塗料11中を上昇し、空間15に溜まることで気泡をトラップすることが可能となる。蓋部材13にある垂下壁14より外側に気泡がくることはないため、基材1に気泡が付着して、外観異常を発生することはない。
塗膜20の厚さは、この時の液槽10の移動速度と塗料11の粘度により一義的に決定される。また、下シャフト17Bは直線運動案内機構19により、案内されているため、液槽10は前述の同軸度0.2mmを保ったまま下降することが可能である。
次に、図4(e)において、液槽10の図示位置で塗装は終了し、先程とは逆に液槽10内の塗料11を図示されていないポンプで回収し、液面をシール12より低い位置まで回収する。その後受け部材8が上昇し、チャック機構9を解除してマンドレル7を開放して取り出す。
定着ベルト基材1はこのマンドレル7にセットした状態で乾燥炉などを用いて乾燥した後に、マンドレル7から取り出す。その際、前述のように摩擦力で保持されているので、端部を一部剥がし、きっかけを作り、そこに図3に関連して上述したエアを流し込むことで、マンドレル7と基材1との間に空気層が設けられ、容易に外すことができる。塗膜形成装置は次の被塗装物を塗装するために、塗装開始のポジションまで戻る必要がある。
図4(f)に示すように、今度は上シャフト17Aが下降して、先端に固定されたクランプ16で液槽10を把持し、下シャフト17Bのクランプ16を解除した後に、上シャフト17Aが上方向に移動することで塗装開始前の位置である図4(g)に戻ることとなる。
次には、再び、図4(a)に戻り、次の被塗装物を塗装することができる。以上が本発明の塗膜形成措置を用いて被塗装物の内面を塗装する際の一連の動作である。
比較例1は内面塗装用ノズルを用いて塗装した。比較例2は容器の中に被塗装物を浸した後に一定速度で引き上げる浸漬塗装にて塗装した場合、実施例は本発明の請求項1〜3を反映した塗膜形成装置にて塗装した場合の例である。
図5より、比較例1では表面性状が、本発明と比較して悪くなり、比較例2では表面性状は同等であるが、塗装に必要な塗料の量が多いことが解かり、これらを両立する上で本発明が有効であることが解かる。
本発明により製造された内面に塗膜を形成しているベルト状基体は、画像形成装置に用いられる定着ベルトとして、基材の表層に弾性層や離型層を形成する際に、内面の表面性状に影響されず、均一な塗膜を形成することができる。
この静電潜像は現像手段24の現像ローラ29上のトナーによって顕像化され、図示してない給紙手段からレジストローラ26に搬送された記録媒体Pがタイミングを合わせてレジストローラ26から感光体ドラム21と転写ローラ25とのニップに送られ、記録媒体P上に感光体ドラム21上のトナー像が転写される。
記録媒体P上に転写されたトナー像は、次に、熱と圧力でトナー像を記録媒体P上に定着させる定着手段27に送られる。この定着手段27は定着ベルト30と加圧ローラ31からなり、この定着ベルト30として本発明の塗膜形成装置を用いて製造された定着ベルト30を使用する。
Claims (5)
- 円筒状基材からなる被塗装物の内面に対して塗膜を形成する塗膜形成装置において、
前記被塗装物の外周を保持する保持具と、
該保持具を外周面で保持するチャック機構と、
前記被塗装物の内径より小さく、該被塗装物の内側を通過することが可能でかつ前記被塗装物と同心円状に配置された液槽と、
該液槽の上下に配置されて当該液槽を固定又は開放自在に保持するクランプ機構と、
該クランプ機構で保持した前記液槽を前記被塗装物の軸方向に平行に移動するための駆動機構と、
前記液槽と前記被塗装物との間からの塗料漏れを防止するためのシール部材と、
を有することを特徴とする塗膜形成装置。 - 前記被塗装物を外周から保持する前記保持具が前記被塗装物の外径より僅かに大きな内径の保持具であることを特徴とする請求項1記載の塗膜形成装置。
- 前記被塗装物を外周から保持する前記保持具には、前記被塗装物をエアで吸引するためのエア孔が、少なくとも1個以上空いていることを特徴とする請求項2記載の塗膜形成装置。
- 定着部材と加圧部材とによって構成されかつ記録媒体に転写されたトナー像を該記録媒体上に熱定着させる定着手段において、前記定着部材が定着ベルトであり、該定着ベルトが請求項1乃至3のいずれか1項記載の塗膜形成装置で内面に塗膜を形成した定着ベルトであることを特徴とする定着手段。
- 記録媒体に転写されたトナー像を定着手段で前記記録媒体上に熱定着させる画像形成装置において、前記定着手段として請求項4記載の定着ベルトを使用することを特徴とする画像形成装置。
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