JP2018106089A - 加熱装置及び画像形成装置 - Google Patents

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【課題】 本発明は、回転体と支持体との間の摺動抵抗を低減することが可能な加熱装置を提供する。【解決手段】 定着フィルム22が加圧ローラ24によりフランジ部材40に対して回転駆動される際に、CPU51(判定手段)の判定結果に基づいて、定着フィルム22のセラミックヒータ23により加熱される温度及び加圧ローラ24により駆動される回転速度の少なくとも何れかを制御するCPU51(制御手段)を有することを特徴とする。【選択図】 図8

Description

本発明は、複写機、プリンタ及びファクシミリ装置等の画像形成装置に設けられる加熱装置に関する。
複写機、プリンタ及びファクシミリ装置等の画像形成装置では、未定着トナー像を記録材に熱定着する定着装置を備えている。定着装置の一例としては、フィルムガイドに沿って回転する定着フィルムと、定着フィルム内に設けられた加熱源と、アルミニウムや鉄の芯金に耐熱弾性層を形成した加圧ローラとを備るものがある。
このような定着装置では、定着フィルムがバネ等により加圧ローラに圧接されている。その圧接により形成される圧接幅の定着ニップ部を未定着トナーを担持する記録材が通過する際に加熱及び加圧することにより未定着トナーが熱溶融して記録材に熱定着される。
定着フィルムの軸方向両端部には、フランジ部材が設けられている。このフランジ部材には、定着フィルムの軸方向のずれを規制する第一規制部と、ユーザによる記録材のジャム処理時に定着フィルムの変形を防ぐために定着フィルム内側で変形を防ぐ第二規制部とを有しているものがある。
しかし、定着フィルムの変形を内側で規制するフランジ部材の第二規制部は、定着フィルムの回転駆動が開始する際に、定着フィルムの内周面と強く接触して、接触抵抗が発生してしまい、定着フィルムの回転速度が遅延してしまう恐れがある。
定着フィルムの回転速度の遅延により加圧ローラの回転速度と、定着フィルムの回転速度との間で速度差が発生する。定着フィルムの外周面に付着している記録材に含まれた炭酸カルシウム粒子を定着フィルムの回転速度よりも速い加圧ローラの回転により定着フィルムの外周面を擦る。これにより定着フィルムの外周面に傷が発生してしまう。未定着トナー像を担持した記録材が定着フィルムの外周面の傷部分を通過すると、この傷の内部にトナーが付着する。これにより後続する記録材に傷の形をした汚れが転写されてしまい、定着オフセットが発生する。
定着フィルムの表層にフッ素コーティングを施しているものもある。フッ素コーティングの材料は以下の材料が採用される。PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)とポリテトラフルオロエチレン(PTFE;Polytetrafluoroethylene)とを混合した樹脂剤が採用される。更に、純正のPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)の樹脂剤の方がより主流になっている。
そして、純正のPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)の樹脂剤は強度が弱い。即ち、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)とポリテトラフルオロエチレン(PTFE;Polytetrafluoroethylene)とを混合した樹脂剤と比べると強度が弱い。このため定着フィルムの外周面に発生した傷による定着オフセットがより発生し易くなる。このため定着装置の交換が早期に必要となり、定着装置の交換回数が増えてきている。
定着フィルムの外周面の傷の発生を防止するために特許文献1では、フランジ部材と定着フィルムの内周面との接触抵抗を低減するためにフランジ部材の定着フィルムの内周面との接触面に凹凸形状を持たせて定着フィルムの内周面との接触抵抗を低減している。更に、特許文献2では、定着ニップ部の記録材Pの搬送方向の上流側にグリス保持部を設ける。そして、保持部からグリスを常に供給することで、定着フィルムの内周面とニップ板との接触部に常にグリスを潤滑させるようにして定着フィルムの内周面とニップ板との接触抵抗を抑えている。
特開2014−002306号公報 特開2012−233973号公報
しかしながら、グリス等の潤滑剤による定着フィルムと接触部との間の潤滑状態は、温度による潤滑剤の粘度の変化以外にも、潤滑剤の介在状態によっても変化する。このため潤滑剤の粘度だけではなく介在状態も最適化しないと、定着フィルムと接触部の間の摩擦係数が上昇する。摩擦係数が上昇すると、定着フィルムの外周面に傷が発生しやすくなることで定着オフセットが早期に発生してしまい、定着装置の寿命が短縮されてしまう。
本発明は前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、回転体と支持体との間の摺動抵抗を低減することが可能な加熱装置を提供するものである。
前記目的を達成するための本発明に係る加熱装置の代表的な構成は、回転体と、前記回転体を回転可能に支持する支持体と、前記回転体を加熱する加熱手段と、前記回転体を前記支持体に対して回転駆動させる駆動手段と、前記回転体と前記支持体の間に介在する潤滑剤の状態を判定する判定手段と、前記回転体が前記駆動手段により前記支持体に対して回転駆動される際に、前記判定手段の判定結果に基づいて、前記回転体の前記加熱手段により加熱される温度及び前記駆動手段により駆動される回転速度の少なくとも何れかを制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、回転体と支持体との間の摺動抵抗を低減することができる。
本発明に係る加熱装置を備えた画像形成装置の構成を示す断面説明図である。 定着装置の構成を示す断面説明図である。 定着フィルムの構成を示す断面説明図である。 (a)は、本実施形態の定着装置を記録材の搬送方向の上流側から見た斜視説明図である。(b)は、本実施形態の定着装置を記録材の搬送方向下流側から見た斜視説明図である。 潤滑剤の粘度と相対速度との積と、摩擦係数との関係を示す図である。 (a)は、フランジ部材の第二規制部の構成を示す断面説明図である。(b)は、定着フィルムが停止状態から等速度回転に至るまでのフランジ部材の第二規制部と定着フィルムとの位置関係を示す断面説明図である。(c)は、定着フィルムが等速度回転中のフランジ部材の第二規制部と定着フィルムとの位置関係を示す断面説明図である。(d)は、定着フィルムが等速度回転状態から停止するまでのフランジ部材の第二規制部と定着フィルムとの位置関係を示す断面説明図である。 画像形成装置の制御系の構成を示すブロック図である。 本発明に係る加熱装置を備えた画像形成装置の第1実施形態の動作を説明するフローチャートである。 (a)は、比較例の定着フィルムと加圧ローラとの速度推移を示す図である。(b)は、第1実施形態の定着フィルムと加圧ローラとの速度推移を示す図である。 第1実施形態の加圧ローラの周速度に対する定着フィルムの周速度の低下比率を示す。更に、加圧ローラが回転を開始してから定着フィルムの周速度が等速度回転に至るまでの間における加圧ローラの周速度と、定着フィルムの周速度との速度差の積分値を示す。更に、定着フィルムの外周面に発生した長さが20mm以上の傷の有無との関係を示す図である。 本発明に係る加熱装置を備えた画像形成装置の第2実施形態の動作を説明するフローチャートである。 比較例と、第1、第2実施形態の実験結果を示す図である。
図により本発明に係る加熱装置を備えた画像形成装置の一実施形態を具体的に説明する。
<第1実施形態>
先ず、図1〜図10を用いて本発明に係る加熱装置を備えた画像形成装置の第1実施形態の構成について説明する。
<画像形成装置>
先ず、図1を用いて本発明に係る加熱装置を備えた画像形成装置の第1実施形態の構成について説明する。図1は、本発明に係る加熱装置を備えた画像形成装置の構成を示す断面説明図である。図1に示す画像形成装置12は、転写式で電子写真プロセス方式を採用したレーザプリンタの一例である。
図1に示す画像形成装置12において、1は、像担持体としての回転ドラム型の電子写真感光体からなる感光ドラムである。感光ドラム1は、図1の時計回り方向に所定の周速度で回転する。感光ドラム1は、OPC(Organic Photo Conductor;有機光半導体)やアモルファスシリコン(a−Si)等の感光材料をアルミニウムやニッケル等のシリンダ状の基板上に形成して構成される。
図1の時計回り方向に回転する感光ドラム1の表面は、帯電手段となる帯電ローラ2が接触回転することにより均一に帯電される。一様に帯電された感光ドラム1の表面に対して、像露光手段としてのレーザスキャナ3から画像情報に対応して変調されたレーザ光Lが出射されて走査露光される。これにより感光ドラム1の表面上に画像情報に対応した静電潜像が形成される。感光ドラム1の表面上に形成された静電潜像に対して現像手段となる現像装置4に設けられた現像剤担持体となる現像ローラ4aによりトナー(現像剤)が供給されてトナー像として現像される。
一方、給送カセット5内に収容された記録材Pは、給送ローラ6により繰り出され、図示しない分離手段との協働により一枚ずつ分離給送される。給送ローラ6により給送される記録材Pの先端部が一旦停止しているレジストローラ7のニップ部に付き当てられ、該記録材Pの腰の強さにより扱かれて斜行が補正される。
その後、記録材Pは、レジストローラ7により挟持されて感光ドラム1の表面上に形成されたトナー像と同期を取って搬送路8aを経由して感光ドラム1の表面と、転写手段となる転写ローラ9とにより形成される転写ニップ部Tに搬送される。転写ローラ9(転写手段)は、感光ドラム1の表面上(像担持体上)に形成されたトナー像を記録材P(シート)に転写する。感光ドラム1の表面上に形成されたトナー像の先端部と記録材Pの先端部とが転写ニップ部Tに到達するタイミングが同じになるようにレジストローラ7の回転駆動が制御される。
レジストローラ7により挟持搬送されて転写ニップ部Tに導入された記録材Pは、転写ニップ部Tにおいて感光ドラム1の表面と転写ローラ9とにより挟持搬送される。その過程において、図示しない転写バイアス電源からトナーと逆極性の転写バイアスが転写ローラ9に印加される。これにより感光ドラム1の表面上に形成されたトナー像が静電的に記録材P上に転写される。
転写ニップ部Tにおいてトナー像が転写された記録材Pは、感光ドラム1の表面から分離されて搬送路8bを経由して定着手段となる定着装置11に搬送される。未定着トナー像を担持した記録材Pは、定着装置11に設けられた回転体となる無端状フィルムからなる定着フィルム22と、該定着フィルム22の外周面に接触して該定着フィルム22を回転する駆動手段となる加圧ローラ24とにより挟持搬送される。その過程において、加熱及び加圧される。これにより未定着トナー像が熱溶融して記録材P上に熱定着される。定着装置11を出た記録材Pは、搬送路8cを経由して排出ローラ15により排出口13から排出トレイ14上に排出される。
転写ローラ9により感光ドラム1の表面から記録材Pにトナー像が転写された後に、該感光ドラム1の表面上に残留した残トナーや記録材Pから出た紙粉は、クリーニング手段となるクリーニング装置10により掻き取られて除去される。これにより感光ドラム1の表面を清浄し、繰り返して作像に使用される。尚、図1に示す画像形成装置12は、一例であり、本発明が本実施形態の画像形成装置12に限定されるものではない。
<定着装置>
次に、図2〜図6を用いて本実施形態の定着手段となる定着装置11(加熱装置)の構成について説明する。図2は、本実施形態の定着装置11の構成を示す断面説明図である。図3は、本実施形態の定着フィルム22の構成を示す断面説明図である。図4(a)は、本実施形態の定着装置11を記録材Pの搬送方向の上流側から見た斜視説明図である。図4(b)は、本実施形態の定着装置11を記録材Pの搬送方向下流側から見た斜視説明図である。
図5は、潤滑剤の粘度ηと相対速度Vsとの積と、摩擦係数μとの関係を示す図である。図6(a)は、本実施形態のフランジ部材40の構成を示す断面説明図である。図6(b)〜(d)は、本実施形態のフランジ部材40の外周を定着フィルム22が回転する際の該フランジ部材40と定着フィルム22との位置関係を示す断面説明図である。
図2に示す定着装置11は、フィルムユニット20と、加圧部材となる加圧ローラ24(駆動手段)とを有している。フィルムユニット20は、定着フィルム22(回転体)を加熱する加熱手段となるセラミックヒータ23と、記録材Pを加熱するための定着フィルム22と、フィルムガイド21と、検出手段となるサーミスタ25とを有している。
加圧ローラ24(駆動手段)が定着フィルム22(回転体)の外周面に接触して該定着フィルム22の回転を加速する。サーミスタ25(検出手段)は、その間の図4(b)に示す該定着フィルム22の内周面と、定着フィルム22(回転体)を回転可能に支持する支持体となるフランジ部材40の第二規制部40bの凹凸部40b1との接触部27に設けられた潤滑剤となるグリスの温度Aを検出する。図4(a),(b)に示すフランジ部材40(支持体)は、定着フィルム22(回転体)を回転可能に支持する。加圧ローラ24(駆動手段)は、定着フィルム22(回転体)をフランジ部材40(支持体)に対して回転駆動させる。
<加熱手段>
加熱手段となるセラミックヒータ23は、図2に示すように、セラミック基板29上に発熱ペーストを印刷した熱源となる発熱体26と、発熱体26の保護と絶縁性を確保するためのガラスコーティング層28とを有する。セラミックヒータ23は、図7に示す制御手段となるCPU(Central Processing Unit;中央演算装置)51により駆動制御される電源からなるヒータ駆動部19から発熱体26に電力制御された交流電流が供給されることで発熱する。セラミック基板29の定着フィルム22の内周面側の表面には、ポリイミドからなるコーティング層30が塗布されている。これにより定着フィルム22の内周面の摺動性を確保している。
フィルムガイド21には、長手方向(図2の紙面手前側から奥側)に沿って複数のリブが設けられている。これによりフィルムガイド21の外周を回転する定着フィルム22の内周面との間の摩擦抵抗を抑えながら該定着フィルム22を回転可能に支持する。図2に示すように、フィルムガイド21の上側で長手方向の全域に亘って鋼板からなるステー31が配置されている。
セラミック基板29の加圧ローラ24とは反対側に設けられたサーミスタ25は、セラミックヒータ23の温度変化を検出する。サーミスタ25により検出した検出結果に基づいてセラミックヒータ23の目標温度を決定する。図7に示す制御手段となるCPU51により図7に示すヒータ駆動部19を制御してセラミックヒータ23への電力制御を行う。
<駆動手段>
図2に示す駆動手段となる加圧ローラ24は、芯金からなる回転軸24aを中心に回転可能である。加圧ローラ24は、回転軸24aの外周面上に1×10Ω・cm程度の体積抵抗率を有する弾性層からなる導電性シリコンゴム24bを被覆している。更に、導電性シリコンゴム24bの外周面上に約60μmの表層となる絶縁チューブ24cを被覆して形成されている。
加圧ローラ24は、図示しない付勢手段となるバネにより図2の方向に付勢されて定着フィルム22を介在してセラミックヒータ23に対して所定の圧接力により圧接されている。これにより図2の矢印a方向で示す記録材Pの搬送方向において8mm〜10mmの定着ニップ部Nを形成している。フィルムガイド21の上側で長手方向の全域に亘って設けられたステー31により加圧ローラ24を定着フィルム22を介在してセラミックヒータ23に対して加圧する加圧力を均一に加えることができる。
図7に示すように、CPU51により駆動制御されるモータ16により加圧ローラ24が回転駆動される。加圧ローラ24の回転に従動して記録材Pを介在して定着フィルム22が回転する。これにより定着ニップ部Nに導入された記録材Pを定着フィルム22の外周面と密着させた状態で該定着フィルム22の外周面と加圧ローラ24とにより挟持搬送する。記録材Pが定着ニップ部Nに搬送されることで、記録材P上に担持された未定着のトナー17が、セラミックヒータ23の熱と定着ニップ部Nの圧力とにより熱溶融して記録材Pに熱定着される。
<回転体>
次に、図3を用いて回転体として無端状フィルムからなる定着フィルム22の構成について説明する。図3に示す定着フィルム22は、厚さが約35μm、外径が30mmの円筒形状で構成される。図3に示す定着フィルム22は、ステンレス製の基層20cと、表層となるフッ素樹脂層20aと、該フッ素樹脂層20aを基層20cに接着するための接着層となるプライマ層20bとからなる三層構造を有して構成されている。これにより定着フィルム22は、図2に示すセラミックヒータ23からの熱を効率良く記録材P上のトナー17に伝えることができる。
本実施形態の接着層となるプライマ層20bは、以下の材料で構成される。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE;Polytetrafluoroethylene)とPFA(テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)とを混合した樹脂剤で構成される。プライマ層20bの厚みは5μmである。また、表層となるフッ素樹脂層20aは、純正のPFA(テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)からなる樹脂剤で構成される。フッ素樹脂層20aの厚みは10μmのものを使用している。
尚、本実施形態では表層となるフッ素樹脂層20aに純正のPFA(テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)を使用している。しかし、表層となるフッ素樹脂層20aは、純正のPFA(テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)に限定されるものではない。また、本実施形態の基層20cはステンレス製を使用しているが、ポリイミド等の樹脂剤でも良く、基層20cはステンレス製に限定されるものではない。
<支持体>
次に、図4を用いて定着フィルム22の長手方向両端部にそれぞれ設けられる支持体となるフランジ部材40の構成について説明する。図4(a),(b)に示すように、定着フィルム22の長手方向(図4(a),(b)の左右方向)の両端部22a,22bには、一対のフランジ部材40が設けられている。
フランジ部材40は、定着フィルム22の軸方向(図4(a),(b)の左右方向)の移動(位置ズレ)を規制するフランジ面からなる第一規制部40aを有する。第一規制部40aは、定着フィルム22(回転体)の両端部22a,22b(軸方向端面)に当接する。更に、フランジ部材40は、定着フィルム22(回転体)の内周面(周面)に当接して該定着フィルム22の周方向の回転形状の変形を規制する第二規制部40bとを有して構成される。
図6(b)〜(d)に示すように、定着フィルム22は、第二規制部40bの外周に遊嵌されて回転可能に設けられる。そして、該定着フィルム22の長手方向(図4(a),(b)の左右方向)の両端部22a,22bは、第一規制部40aに当接して軸方向(図4(a),(b)の左右方向)のずれが規制される。
定着フィルム22と加圧ローラ24とにより形成された図2に示す定着ニップ部Nにおいて記録材Pのジャムが発生したときを考慮する。その際には、ユーザが該定着ニップ部Nで挟持されている記録材Pを該定着ニップ部Nから引き抜く。その際に、第二規制部40bにより定着フィルム22の周方向の変形を防止する。第二規制部40bは、外周形状が略円形状で構成されている。
尚、フランジ部材40の第二規制部40bの外周面には、定着フィルム22の内周面との不要な接触抵抗を防止するために該第二規制部40bの周方向全域に亘って均一に潤滑剤となるグリスを80mg程度塗布している。図6(b)〜(d)に示すように、第二規制部40bの少なくとも記録材Pの搬送方向の上流側(図6(b)〜(d)の右側)には、凹凸部40b1が設けられている。この凹凸部40b1の凹部40b2内(凹部内)に潤滑剤となるグリスが保持されている。
本実施形態では、図4(a)及び図6(b)〜(d)に示すように、第二規制部40bの周方向において凹凸部40b1は、以下の部分に設けられている。図6(b)に示すように、定着フィルム22の回転が停止した状態から加圧ローラ24に従動回転する定着フィルム22が等速度回転に至るまでの間に定着フィルム22の内周面と接触する位置に凹凸部40b1が設けられている。更に、図6(d)に示すように、等速度回転する定着フィルム22が停止するまでの間に定着フィルム22の内周面と接触しない部分に凹凸部40b1が設けられている。
この凹凸部40b1の凹部40b2内にグリス(潤滑剤)を保持させる。これによりグリスの保持能力を高くしている。本実施形態の凹凸部40b1は、図4(a)に示すように、第二規制部40bの軸方向(図4(a)の左右方向)に平行で且つ該第二規制部40bの周方向に沿って所定ピッチで設けられた複数の線状溝を有する凹凸形状で構成される。
図6(b)〜(d)に示すように、第二規制部40bの記録材Pの搬送方向の上流側(図6(b)〜(d)の右側)に凹凸部40b1を設けた。そして、該凹凸部40b1の凹部40b2内にグリス(潤滑剤)を保持させる。これにより図6(b)に示すように、定着フィルム22の回転が停止した状態から該定着フィルム22が等速度回転に至るまでに該定着フィルム22の内周面と接触するフランジ部材40の第二規制部40bの凹凸部40b1に常にグリスを保持できる。
フランジ部材40の第二規制部40bの凹凸部40b1の定着フィルム22の内周面との接触部に常にグリスが介在する。これにより定着フィルム22の内周面とフランジ部材40の第二規制部40bの凹凸部40b1との接触抵抗を低減することができる。
尚、本実施形態では、グリスの保持能力を高めるために第二規制部40bの記録材Pの搬送方向の上流側(図6(b)〜(d)の右側)に凹凸部40b1を設けた。他に、グリスの保持能力を高めることができる形状であれば以下の形状でも良い。図4(a)に示すように、第二規制部40bの軸方向(図4(a)の左右方向)に平行で且つ該第二規制部40bの周方向に沿って所定ピッチで設けられた複数の線状の凹凸部40b1以外の種々の形状でも良い。
本実施形態では、図6(b)に示すように、定着フィルム22の回転が停止した状態から該定着フィルム22が等速度回転に至るまでの間に該定着フィルム22の内周面と第二規制部40bの凹凸部40b1とが接触する。更に、図6(d)に示すように、等速度回転する定着フィルム22が停止するまでの間に定着フィルム22の内周面と第二規制部40bの凹凸部40b1とは接触しない。第二規制部40bの凹凸部40b1は、図6(b)〜(d)に示す記録材Pの搬送方向の上流側(図6(b)〜(d)の右側)に設けられる。
また、図6(a)に示すように、フランジ部材40の第二規制部40bの周方向を考慮する。そして、定着ニップ部Nの記録材Pの搬送方向における中心点から記録材Pが定着ニップ部Nに突入してくる記録材Pの搬送方向の上流側に向かって該第二規制部40bの周方向を考慮する。そして、定着ニップ部Nの180°反対側(図6(a)の上側)の点までの間の領域を本実施形態における記録材Pの搬送方向の上流側としている。
<接触領域>
次に、図6を用いてフランジ部材40の第二規制部40bの周方向の部分と定着フィルム22の内周面との接触領域について説明する。図6(a)は、フランジ部材40の第二規制部40bの構成を示す断面説明図である。図6(b)は、定着フィルム22が停止状態から等速度回転に至るまでのフランジ部材40の第二規制部40bと定着フィルム22との位置関係を示す断面説明図である。
図6(c)は、定着フィルム22が等速度回転中のフランジ部材40の第二規制部40bと定着フィルム22との位置関係を示す断面説明図である。図6(d)は、定着フィルム22が等速度回転状態から停止するまでのフランジ部材40の第二規制部40bと定着フィルム22との位置関係を示す断面説明図である。
本実施形態では、図6(b)に示すように、加圧ローラ24の回転に従動回転する定着フィルム22の周速度Vfが停止状態から等速度回転に至るまでの加速動作を行う間を考慮する。更に、図6(c)に示すように、定着フィルム22の周速度Vfが等速度回転中の間を考慮する。更に、図6(d)に示すように、定着フィルム22の周速度Vfが等速度回転から停止するまでの減速動作を行う間を考慮する。このように、図6(b)〜(d)に示す三パターンで区分している。
画像形成装置12が印刷ジョブを受け付けて、印刷動作が開始すると、CPU51により駆動制御されるモータ16により加圧ローラ24の回転動作が開始する。加圧ローラ24の回転に従動して定着フィルム22が回転する。定着フィルム22の回転が開始して該定着フィルム22の周速度Vfが等速度回転に至るまでの間は、図6(b)に示すように、記録材Pの搬送方向の上流側で定着フィルム22の内周面がフランジ部材40の第二規制部40bの凹凸部40b1に接触摺動する。
図6(b)に示すように、定着フィルム22が停止状態から等速度回転に至るまでの加速動作を行う間は、定着フィルム22が記録材Pの搬送方向下流側(図6(b)の左側)に引っ張られるように変形する。これにより記録材Pの搬送方向の上流側の第二規制部40bの凹凸部40b1に対して定着フィルム22の内周面が積極的に接触摺動する。
加圧ローラ24に従動回転する定着フィルム22の周速度Vfが等速度回転しているときは、図6(c)に示すように、定着ニップ部Nで定着フィルム22が支えられる。これにより定着フィルム22の内周面がフランジ部材40の第二規制部40bに接触する領域は、定着ニップ部N以外には無い。尚、加圧ローラ24が停止しているときも図6(c)に示すと同様に、定着ニップ部Nで定着フィルム22が支えられる。これにより定着フィルム22の内周面がフランジ部材40の第二規制部40bに接触する領域は、定着ニップ部N以外には無い。
定着フィルム22が等速度回転から停止するまでの減速動作を行う。その間は、図6(d)に示すように、記録材Pの搬送方向下流側(図6(d)の左側)で定着フィルム22の内周面がフランジ部材40の第二規制部40bの平滑面からなる円弧部40b3に対して積極的に接触摺動する。
<潤滑剤>
本実施形態では、図6(b)〜(d)に示すように、第二規制部40bの記録材Pの搬送方向の上流側(図6(b)〜(d)の右側)に凹凸部40b1を設けた。そして、該凹凸部40b1の凹部40b2内に潤滑剤となるグリスを保持させる。
本実施形態で使用する潤滑剤は、グリス(grease)を用いている。グリスは、油よりも粘度ηが高く流動性が無い。このため常温では半固体または半流動性を呈する。一例としては、液状潤滑油にカルシウム・ナトリウム・リチウム・アルミニウムの石鹸(脂肪酸の塩)等の増稠剤(ぞうちょうざい)を均一に拡散させ、半固体状または固体状にしたものである。
本実施形態で使用する潤滑剤は、図5の境界潤滑領域R2及び混合潤滑領域R3で示すように、潤滑剤の粘度ηと加圧ローラ24(駆動手段)の回転速度(駆動速度)との積の値が小さい範囲(図5の左側)では、該積の値が大きくなるにつれて摩擦係数μが小さくなる。また、該積の値が大きい範囲(図5の右側)では、該積の値が大きくなるにつれて摩擦係数μが大きくなる特性を有するものを使用している。その一例がグリス(grease)である。
潤滑剤の粘度ηは、潤滑剤の温度Aや耐久条件により変化する。例えば、摩擦学において、相対運動する二つの物体間に潤滑剤がある場合では、潤滑状態により図5の横軸で示す「粘度ηと相対速度Vsとの積」の値と、図5の縦軸で示す「摩擦係数μ」との関係は変化する。
潤滑剤として軟化したグリスにより定着フィルム22の内周面と、フランジ部材40の第二規制部40bの凹凸部40b1とが隔てられる状態がある。その状態では、図5に示す流体潤滑領域R1では、グリスの粘度ηが高いと、定着フィルム22の内周面と、フランジ部材40の第二規制部40bの凹凸部40b1との間のグリスのせん断応力が増す。これにより定着フィルム22の内周面と、フランジ部材40の第二規制部40bの凹凸部40b1との間の摩擦係数μが高くなる。
一方、グリスの粘度ηが低いと、定着フィルム22の内周面と、フランジ部材40の第二規制部40bの凹凸部40b1との間のグリスのせん断応力が減る。これにより定着フィルム22の内周面と、フランジ部材40の第二規制部40bの凹凸部40b1との間の摩擦係数μが低くなる。
一方、図5に示す境界潤滑領域R2と混合潤滑領域R3では、グリスの粘度ηが高いと、定着フィルム22の内周面と、フランジ部材40の第二規制部40bの凹凸部40b1との間の摩擦係数μが低くなる。また、グリスの粘度ηが低いと、定着フィルム22の内周面と、フランジ部材40の第二規制部40bの凹凸部40b1との間の摩擦係数μは高くなる。つまり、図5の横軸で示す「粘度ηと相対速度Vsとの積」の値と、図5の縦軸で示す「摩擦係数μ」との関係が流体潤滑領域R1と逆転する領域が存在する。
このように潤滑剤の潤滑状態により図5の横軸で示す「粘度ηと相対速度Vsとの積」の値と、図5の縦軸で示す「摩擦係数μ」との関係は変化する。このため潤滑剤の潤滑状態に応じて潤滑剤(グリス)の粘度ηと相対速度Vs(本実施形態では定着フィルム22の内周面の移動速度)とを最適化する。これにより摩擦係数μの上昇を抑える。
次に、図7及び図8を用いて本実施形態の画像形成装置12の制御系の構成と制御動作について説明する。図7は、本実施形態の画像形成装置12の制御系の構成を示すブロック図である。図8は、本実施形態の画像形成装置12の動作を説明するフローチャートである。
<制御部>
図7に示すように、制御手段となるCPU(Central Processing Unit;中央演算装置)51には、記憶手段となるメモリ18が接続されている。メモリ18には、潤滑剤となるグリスの温度Aと、該グリスの粘度ηとの関係が関係式やデータテーブル等により記憶されている。更に、メモリ18には、グリス(潤滑剤)の粘度ηと加圧ローラ24(駆動手段)の回転速度(駆動速度)との積が記憶される。そして、その積の値と、定着フィルム22(回転体)の内周面とフランジ部材40(支持体)の第二規制部40bの凹凸部40b1との接触部27の摩擦係数μとの関係が関係式やデータテーブル等により記憶されている。
また、CPU51には、検出手段となるサーミスタ25が接続されている。加圧ローラ24(駆動手段)が定着フィルム22(回転体)の外周面に接触して該定着フィルム22(回転体)の回転を加速する。サーミスタ25は、その間のグリス(潤滑剤)の温度Aを検出する。更に、該サーミスタ25の検出温度に応じてCPU51により駆動制御されるヒータ駆動部19により温調制御されるセラミックヒータ23が接続されている。また、CPU51には、加圧ローラ24を回転駆動するモータ16が接続されている。
<制御動作>
図8のステップS1において、画像形成装置12に設けられた図示しない印刷ボタンをユーザが押すことにより画像形成装置12の印刷動作が開始する。すると、ステップS2において、CPU51によりセラミックヒータ23がONされて発熱体26が発熱する。
CPU51は、サーミスタ25により検出されるセラミックヒータ23の温度に応じてヒータ駆動部19によりセラミックヒータ23の温調制御を開始する。ステップS3において、サーミスタ25により検出されるセラミックヒータ23及びグリス(潤滑剤)の温度Aは、随時、CPU51に送られる。
次に、ステップS4において、CPU51は、メモリ18に記憶されたサーミスタ25により検出されるグリス(潤滑剤)の温度Aと、グリスの粘度ηとの以下の数1式で示す関係式からグリスの粘度ηを算出する。
[数1]
η=328.93e−0.03A
即ち、CPU51は、サーミスタ25(検出手段)により検出されたグリス(潤滑剤)の温度Aに基づいて、メモリ18(記憶手段)に記憶されたグリス(潤滑剤)の粘度ηを算出する。
ここで、グリスの粘度ηは、温度Aが高くなるほど低下する。グリスの粘度ηが低下すると、定着フィルム22の内周面と、フランジ部材40の第二規制部40bの凹凸部40b1との接触部27の摺動抵抗が低下する。しかしながら、グリスの粘度ηが低くなり過ぎると、定着フィルム22の内周面と、フランジ部材40の第二規制部40bの凹凸部40b1との接触部27にグリスが保たれない。これにより定着フィルム22の内周面と、フランジ部材40の第二規制部40bの凹凸部40b1との接触部27の摺動抵抗が増加する。
即ち、サーミスタ25により検出されるグリス(潤滑剤)の温度Aが高くなる。すると、定着フィルム22の内周面と、フランジ部材40の第二規制部40bの凹凸部40b1との接触部27に設けられたグリス(潤滑剤)の粘度ηが低下する。これにより該接触部27にグリスを保持することができない。これにより定着フィルム22の内周面と、フランジ部材40の第二規制部40bの凹凸部40b1との接触部27の摩擦抵抗が増加する。このため図7に示すモータ16により回転駆動される加圧ローラ24の周速度Vrと、該加圧ローラ24の表面が接触して接触抵抗により従動回転する定着フィルム22の周速度Vfとの間に速度差ΔVが生じる。
次に、ステップS5において、メモリ18に記憶されたグリスの粘度ηと相対速度Vsとの積と、摩擦係数μとの以下の数2式で示される関係式から前記数1式を用いて、流体潤滑領域R1、境界潤滑領域R2、混合潤滑領域R3のどの潤滑状態にあるかの判定と摩擦係数μの算出が成される。
[数2]
μ=η×Vs=328.93e−0.03A×Vs
ここで、相対速度Vsとは、加圧ローラ24の回転に従動回転する定着フィルム22の内周面の移動速度と、固定されたフランジ部材40の第二規制部40bの凹凸部40b1との間の相対速度Vsである。従って、本実施形態では、定着フィルム22の内周面の移動速度が相対速度Vsに対応する。
次に、ステップS6において、CPU51は、前記ステップS5で算出した摩擦係数μが予め設定した閾値X以下か否かを判定する。前記ステップS5で算出した摩擦係数μが閾値X以下の場合は、ステップS7に進んで、CPU51は、図7に示すモータ16の駆動をONして加圧ローラ24を通常の周速度で回転駆動する。その後、ステップS8に進んで、CPU51は、記録材Pの搬送動作を開始する。その後、前述した印刷動作を実行した後、ステップS9に進んで印刷動作を終了する。
前記ステップS6において、前記ステップS5で算出した摩擦係数μが予め設定した閾値Xよりも大きい場合がある。その場合には、ステップS31に進んで、CPU51は、潤滑状態の判別を行う。そして潤滑状態が流体潤滑領域R1の場合には、ステップS10に進んで、CPU51は、セラミックヒータ23への通電をOFFする。そして、該セラミックヒータ23の温度を下げた後、前記ステップS6に戻る。前記ステップS31において、潤滑状態が境界潤滑領域R2、混合潤滑領域R3の場合には、ステップS32に進んで、CPU51は、セラミックヒータ23への通電をONする。そして、該セラミックヒータ23の温度を上げた後、前記ステップS6に戻る。
前記ステップS31において、潤滑状態が流体潤滑領域R1の場合には、セラミックヒータ23の温度を下げることでグリス(潤滑剤)の温度Aが下がり、該グリス(潤滑剤)の粘度ηが上昇する。これにより定着フィルム22の内周面と、フランジ部材40の第二規制部40bの凹凸部40b1との接触部27のグリス(潤滑剤)が保たれる。そして、定着フィルム22の内周面と、フランジ部材40の第二規制部40bの凹凸部40b1との接触部27の摺動抵抗が減少する。前記ステップS6、S31、S10を繰り返して、CPU51は、前記ステップS5で算出した摩擦係数μが予め設定した閾値X以下になるまでセラミックヒータ23への通電をOFFする。
前記ステップS31において、潤滑状態が境界潤滑領域R2、混合潤滑領域R3の場合には、セラミックヒータ23の温度を上げることで、定着フィルム22の内周面と、フランジ部材40の第二規制部40bの凹凸部40b1との接触部27の摺動抵抗が減少する。
本実施形態では、予め設定した摩擦係数μの閾値Xを0.01に設定している。また、セラミックヒータ23への通電をOFFして、グリスの温度Aが180℃以下となったとき、前記ステップS5で算出した摩擦係数μが予め設定した閾値X(0.01)以下になる。即ち、CPU51(制御手段)は、メモリ18(記憶手段)に記憶されたグリス(潤滑剤)の粘度ηと加圧ローラ24(駆動手段)の回転速度(駆動速度)との積を考慮する。そして、該積に応じて摩擦係数μが所定の閾値X(0.01)以下(閾値以下)になるようにセラミックヒータ23(加熱手段)の温調温度を制御する。
即ち、本実施形態では、図6(b)に示すように、加圧ローラ24(駆動手段)が定着フィルム22(回転体)の外周面に接触して該定着フィルム22の回転を加速する。その間のグリス(潤滑剤)の粘度ηに基づいて、CPU51(制御手段)は、セラミックヒータ23(加熱手段)の温調温度を制御する。その後、CPU51は、図7に示すモータ16を駆動制御して加圧ローラ24を回転駆動する。
CPU51は、定着フィルム22(回転体)とフランジ部材40(支持体)との間に介在するグリス(潤滑剤)の状態を判定する判定手段を兼ねる。そして、CPU51(制御手段)は、定着フィルム22(回転体)が加圧ローラ24(駆動手段)によりフランジ部材40(支持体)に対して回転駆動される際に、該CPU51(判定手段)の判定結果に基づいて定着フィルム22(回転体)のセラミックヒータ23(加熱手段)により加熱される温度を制御する。
このように前記ステップS5で算出した摩擦係数μが予め設定した摩擦係数μの閾値X(0.01)以下の場合は、図7に示すモータ16が駆動されない。このとき、図6(c)に示すと同様に定着ニップ部Nで定着フィルム22が支えられる。これにより定着フィルム22の内周面がフランジ部材40の第二規制部40bに接触する領域は、定着ニップ部N以外には無い。
このため定着フィルム22の内周面と、フランジ部材40の第二規制部40bとの接触抵抗を抑えることができ、定着フィルム22の回転の初動が遅延することがない。その結果、加圧ローラ24の周速度Vrと、これに従動回転する定着フィルム22の周速度Vfとの間に生じる速度差ΔVを低減して定着フィルム22の外周面に傷を付けることが無い。これにより定着フィルム22の外周面に発生した傷による定着オフセットの発生を抑えることで、定着装置11の寿命を延命することができる。
<比較実験>
次に、図9(a),(b)を用いて比較例と本実施形態とを比較実験した結果について説明する。図9(a)に示す比較例は、図6(a)〜(d)に示すフランジ部材40の第二規制部40bの記録材Pの搬送方向の上流側に示された凹凸部40b1を設けていない。そして、第二規制部40bの外周面全体が平滑面からなる円弧部40b3で構成される。そして、該円弧部40b3の外周面にグリスを塗布したものである。一方、図9(b)に示す本実施形態は、図6(a)〜(d)に示すフランジ部材40の第二規制部40bの記録材Pの搬送方向の上流側に凹凸部40b1を設け、該凹凸部40b1の凹部40b2内にグリスを保持したものである。
図9(a)は、比較例の定着フィルム22と加圧ローラ24との速度推移を示す図である。図9(a)の周速度Vrcは、比較例の加圧ローラ24の速度推移を示し、周速度Vfcは、比較例の定着フィルム22の速度推移を示す。図9(b)は、本実施形態の定着フィルム22と加圧ローラ24との速度推移を示す図である。図9(b)の周速度Vreは、本実施形態の加圧ローラ24の速度推移を示し、周速度Vfeは、本実施形態の定着フィルム22の速度推移を示す。
図9(a),(b)に示す定着フィルム22と加圧ローラ24との速度推移は以下の通りである。図7に示すCPU51によりモータ16を駆動制御して加圧ローラ24が回転を開始してからの該加圧ローラ24の周速度Vrの推移を考慮する。そして、該加圧ローラ24に従動回転する定着フィルム22の周速度Vfの推移とを比較したものである。このときの定着装置11は、A4サイズの記録材Pが10枚連続して定着ニップ部Nを通過する動作が1000回繰り返された後の状態である。
図9(a)に示す比較例では、停止状態にある定着フィルム22が加圧ローラ24に従動して回転を開始する。加圧ローラ24は、時刻t1(<0.7秒)で周速度Vrcが等速度回転に至る。一方、定着フィルム22の周速度Vfcは、加圧ローラ24の回転が開始してから0.7秒後に等速度回転に至る。そして、定着フィルム22の周速度Vfcが等速度回転に至るまでの加速動作を行う。その間に、図6(b)に示すように、フランジ部材40の第二規制部40bの記録材Pの搬送方向の上流側の図示しない平滑面からなる円弧部40b3と、定着フィルム22の内周面とが積極的に接触する。
図9(a)に示す比較例では、定着フィルム22の内周面と、フランジ部材40の第二規制部40bの記録材Pの搬送方向の上流側の図示しない平滑面からなる円弧部40b3との接触面に大きな接触抵抗が発生する。これにより定着フィルム22の回転方向とは反対向きの力が発生する。このため瞬間的に定着フィルム22の回転方向の力よりも接触抵抗による回転方向とは反対向きの力が上回る。そのため図9(a)に示すように、定着フィルム22の周速度Vfcは、加圧ローラ24の周速度Vrcに対して30%程度遅くなる。このため図9(a)に示す比較例では、加圧ローラ24の周速度Vrcと、定着フィルム22の周速度Vfcとの間に速度差ΔVcが生じる。
加圧ローラ24が回転を開始してから定着フィルム22の周速度Vfcが等速度回転に至る。このとき速度差ΔVcの積分値は、それまでの間における図9(a)に示す加圧ローラ24の周速度Vrcのグラフと、定着フィルム22の周速度Vfcのグラフとの間に形成される面積で表わされる。本比較例では、速度差ΔVcの積分値は、1500mm/sec程度となる。尚、本比較例では、加圧ローラ24の回転が開始してから0.7秒後に該定着フィルム22の周速度Vfcが等速度回転に至る直前の時刻t3で該定着フィルム22の周速度Vfcの回転加速度が大きくなる。
定着フィルム22は、加圧ローラ24に従動回転する。このため本来であれば定着フィルム22の加速度は、加圧ローラ24の加速度と同じ加速度になる。ところが、図9(a)に示す定着フィルム22の周速度Vfcのグラフにおける時刻t3までは、定着フィルム22の内周面とフランジ部材40の表面との摩擦係数μが大きい。このため定着フィルム22の回転速度が加圧ローラ24の回転速度に追従しない。しかし、図9(a)に示すように、加圧ローラ24の回転が開始してから0.7秒後には定着装置11の加熱によりグリスによる潤滑膜が定着フィルム22の内周面とフランジ部材40の表面との間に均一に広がり、摩擦係数μが小さくなる。摩擦係数μが小さくなると加圧ローラ24に当接して従動回転する定着フィルム22の回転摩擦抵抗が小さくなるため定着フィルム22の加速度が加圧ローラ24の加速度にならい始める。
一方、図9(b)に示す本実施形態では、停止状態にある定着フィルム22が加圧ローラ24に従動して回転を開始する。加圧ローラ24は、時刻t1(<0.7秒)で周速度Vreが等速度回転に至る。一方、定着フィルム22の周速度Vfeは、加圧ローラ24の回転が開始してから時刻t2(t1<t2<0.7秒)で等速度回転に至る。定着フィルム22の周速度Vfcが等速度回転に至るまでの間に、図6(b)に示すように、フランジ部材40の第二規制部40bの記録材Pの搬送方向の上流側に設けられた凹凸部40b1と、定着フィルム22の内周面とが積極的に接触する。
このとき、フランジ部材40の第二規制部40bの記録材Pの搬送方向の上流側に設けられた凹凸部40b1と、定着フィルム22の内周面との接触領域のグリスの摩擦係数μは、図8のステップS6で示す予め設定された閾値X(0.01)以下になっている。このためフランジ部材40の第二規制部40bの記録材Pの搬送方向の上流側に設けられた凹凸部40b1と、定着フィルム22の内周面との接触抵抗は低減される。これにより図9(b)に示すように、加圧ローラ24の周速度Vreと、定着フィルム22の周速度Vfeとの速度差ΔVeは低減される。そのため定着フィルム22の周速度Vfeは、加圧ローラ24の周速度Vreに対して10%程度しか遅くならない。
このため加圧ローラ24が回転を開始してから定着フィルム22の周速度Vfeが等速度回転に至る。図9(b)の本実施形態の速度差ΔVeの積分値は、それまでの間における加圧ローラ24の周速度Vreのグラフと、定着フィルム22の周速度Vfeのグラフとの間に形成される面積で表わされる。本実施形態では、速度差ΔVeの積分値は、500mm/sec程度まで低減することができる。
本実施形態では、図10に示すように、加圧ローラ24(駆動手段)の周速度Vre(駆動速度)に対する定着フィルム22(回転体)の周速度Vfe(回転速度)の低下比率が10%以下になる。そのように、該定着フィルム22の内周面と、フランジ部材40の第二規制部40bの凹凸部40b1との接触部27の摩擦係数μの閾値が設定される。
図10は、加圧ローラ24の周速度Vrに対する定着フィルム22の周速度Vfの低下比率を示す。更に、図9(a),(b)に示す加圧ローラ24が回転を開始してから定着フィルム22の周速度Vfが等速度回転に至る。それまでの間における加圧ローラ24の周速度Vrのグラフと、定着フィルム22の周速度Vfのグラフとの間に形成される面積を考慮する。その面積で表わされる加圧ローラ24の周速度Vrと、定着フィルム22の周速度Vfとの速度差ΔVの積分値を示す。更に、定着フィルム22の外周面に発生した長さが20mm以上の傷の有無との関係を示す図である。
図10に示す定着フィルム22の外周面に発生した長さが20mm以上の傷の有無は、加圧ローラ24の回転動作と停止動作とを500回程度繰り返したときに定着フィルム22の外周面に長さが20mm以上の傷が発生したか否かを示す。
図10に示すように、加圧ローラ24の周速度Vrに対して定着フィルム22の周速度Vfが30%程度遅い。すると、図9(a)に示す比較例のように、加圧ローラ24が回転を開始してから定着フィルム22の周速度Vfcが等速度回転に至る。それまでの間における加圧ローラ24の周速度Vrcのグラフと、定着フィルム22の周速度Vfcのグラフとの間に形成される面積を考慮する。その面積で表わされる加圧ローラ24の周速度Vrcと、定着フィルム22の周速度Vfcとの速度差ΔVcの積分値が1500mm/sec以上になる。
図9(a)に示す比較例のように、加圧ローラ24が回転を開始してから該加圧ローラ24の表面と定着フィルム22の外周面との間の接触抵抗により該加圧ローラ24に従動回転する定着フィルム22の周速度Vfcが等速度回転に至る。それまでの間に加圧ローラ24の周速度Vrcと、定着フィルム22の周速度Vfcとが速度差ΔVcを有した状態で加圧ローラ24の回転動作と停止動作とが繰り返される。
すると、定着フィルム22の外周面に発生する傷は徐々に長くなっていく。加圧ローラ24の回転動作と停止動作とが500回以上繰り返されたとき、定着フィルム22の外周面に発生する傷の長さは20mm以上になる。そして、定着フィルム22の外周面に発生した傷の内部にトナーが付着したまま残り、そのトナーが記録材Pに転写されて傷状の汚れが載った画像不良が発生する。
一方、図9(b)に示す本実施形態では、加圧ローラ24の回転動作と停止動作とが繰り返されたとしても定着フィルム22の周速度Vfeは、加圧ローラ24の周速度Vreに対して10%程度しか遅くならない。このため図10に示すように、加圧ローラ24が回転を開始してから定着フィルム22の周速度Vfeが等速度回転に至る。それまでの間における加圧ローラ24の周速度Vreのグラフと、定着フィルム22の周速度Vfeのグラフとの間に形成される面積を考慮する。その面積で表わされる加圧ローラ24の周速度Vreと、定着フィルム22の周速度Vfeとの速度差ΔVeの積分値が500mm/secである。
このため加圧ローラ24の回転動作と停止動作とが500回以上繰り返されたときに、定着フィルム22の外周面に発生した傷の長さは、20mm以上になることはない。このため定着フィルム22の外周面に発生した傷の内部にトナーが付着したまま残り、そのトナーが記録材Pに転写されて傷状の汚れが載った画像不良が発生することはなかった。
このように図8のステップS6において、前記ステップS5で算出した摩擦係数μが予め設定した摩擦係数μの閾値X(0.01)以下の場合は、図7に示すモータ16が駆動されない。このとき、図6(c)に示すと同様に定着ニップ部Nで定着フィルム22が支えられる。これにより定着フィルム22の内周面がフランジ部材40の第二規制部40bに接触する領域は、定着ニップ部N以外には無い。
このため定着フィルム22の内周面と、フランジ部材40の第二規制部40bとの接触抵抗を抑えることができ、定着フィルム22の回転の初動が遅延することがない。その結果、加圧ローラ24の周速度Vrと、これに従動回転する定着フィルム22の周速度Vfとの間に生じる速度差ΔVを低減して定着フィルム22の外周面に傷を付けることが無い。これにより定着フィルム22の外周面に発生した傷による定着オフセットの発生を抑えることで、定着装置11の寿命を延命することができる。
定着フィルム22の内周面と、フランジ部材40の第二規制部40bの凹凸部40b1との接触部27における潤滑状態が変化しても定着フィルム22の内周面と、フランジ部材40の第二規制部40bとの摩擦抵抗の増加を防止することができる。これにより定着フィルム22の内周面と、フランジ部材40の第二規制部40bとの接触抵抗を低減することができる。これにより定着フィルム22の外周面と加圧ローラ24の表面との間の摩擦により定着フィルム22の外周面に傷が発生することを防止することができる。これにより定着オフセット等の画像不良の発生を防止することができ、定着装置11の寿命を延命させることができる。
<第2実施形態>
次に、図11及び図12を用いて本発明に係る加熱装置を備えた画像形成装置の第2実施形態の構成について説明する。尚、前記第1実施形態と同様に構成したものは同一の符号、或いは符号が異なっても同一の部材名を付して説明を省略する。
<制御動作>
図11を用いて本実施形態の画像形成装置12の制御動作について説明する。図11は、本実施形態の画像形成装置12の動作を説明するフローチャートである。尚、図11のステップS11〜S19は、前記第1実施形態の図8のステップS1〜S9と同様であるため重複する説明は省略する。
前記第1実施形態では、図8のステップS6において、前記ステップS5で算出した摩擦係数μが予め設定した閾値Xよりも大きい場合には、前記ステップS31に進んで、潤滑状態を判別し、潤滑状態が流体潤滑領域R1の場合には、前記ステップS10に進む。前記ステップS10において、CPU51は、セラミックヒータ23への通電をOFFして、該セラミックヒータ23の温度を下げる制御を行った。一方、前記ステップS31において、潤滑状態が境界潤滑領域R2、混合潤滑領域R3の場合には、前記ステップS32に進む。前記ステップS32において、CPU51は、セラミックヒータ23への通電をONして、該セラミックヒータ23の温度を上げる制御を行った。
本実施形態では、図11のステップS16において、ステップS15で算出した摩擦係数μが予め設定した閾値Xよりも大きい場合には、ステップS41に進んで、CPU51は、潤滑状態を判別し、潤滑状態が流体潤滑領域R1の場合には、ステップS20に進む。前記ステップS20において、CPU51は、前記ステップS15で算出した摩擦係数μが予め設定した閾値X以下となるまで図7に示すモータ16の回転数を増加させて加圧ローラ24(駆動手段)の回転速度(駆動速度)を加速する。即ち、加圧ローラ24(駆動手段)が定着フィルム22(回転体)の外周面に接触して該定着フィルム22の回転を加速する。その間の潤滑剤(グリス)の粘度ηに基づいて、CPU51(制御手段)は、加圧ローラ24(駆動手段)の回転速度(駆動速度)を制御する。
CPU51は、定着フィルム22(回転体)とフランジ部材40(支持体)との間に介在するグリス(潤滑剤)の状態を判定する判定手段を兼ねる。そして、CPU51(制御手段)は、定着フィルム22(回転体)が加圧ローラ24(駆動手段)によりフランジ部材40(支持体)に対して回転駆動される際に、該CPU51(判定手段)の判定結果に基づいて加圧ローラ24(駆動手段)により駆動される定着フィルム22(回転体)の周速度Vf(回転速度)を制御する。
図11のステップS11において、画像形成装置12に設けられた図示しない印刷ボタンをユーザが押すことにより印刷動作が開始される。すると、ステップS12において、セラミックヒータ23がONされる。ステップS13において、サーミスタ25により検出された温度データは、CPU51により読み取られる。CPU51は、サーミスタ25により検出される温度に基づいてセラミックヒータ23の温度を制御する。
ステップS14において、CPU51は、予めメモリ18に記憶されたサーミスタ25により検出される温度Aと、グリスの粘度ηとの前記数1式で示す関係式からグリスの粘度ηを算出する。次に、ステップS15において、CPU51は、予めメモリ18に記憶されたグリスの粘度ηと相対速度Vsとの積と、摩擦係数μとの前記数2式で示す関係式から前記数1式を用いて摩擦係数μを算出する。
次に、ステップS16において、前記ステップS15で算出された摩擦係数μが予め設定された閾値X以下の場合は、ステップS17に進んで、CPU51は、図7に示すモータ16の駆動をONにして通常の回転数で回転駆動する。その後、ステップS18に進んで、CPU51は、記録材Pの搬送動作を開始する。その後、前述した印刷動作を実行した後、ステップS19に進んで印刷動作を終了する。
前記ステップS16において、前記ステップS15で算出した摩擦係数μが予め設定した閾値Xよりも大きい場合には、ステップS41に進んで、CPU51は、潤滑状態の判別を行う。そして潤滑状態が流体潤滑領域R1の場合には、ステップS20に進んで、CPU51は、図7に示すモータ16の回転数を通常の回転数よりも増加させて回転駆動する。即ち、CPU51(制御手段)は、メモリ18(記憶手段)に記憶されたグリス(潤滑剤)の粘度ηと加圧ローラ24(駆動手段)の回転速度(駆動速度)との積に応じて以下の制御を行う。摩擦係数μが所定の閾値X(0.01)以下(閾値以下)になるように加圧ローラ24(駆動手段)の回転速度(駆動速度)を制御する。その後、前記ステップS16に戻る。
前記ステップS41において、潤滑状態が境界潤滑領域R2、混合潤滑領域R3の場合には、ステップS42に進んで、CPU51は、図7に示すモータ16の回転数を低減させて回転駆動を減速する。その後、前記ステップS16に戻る。CPU51は、前記ステップS15で算出した摩擦係数μが予め設定した閾値Xとなるまで、前記ステップS16、S41、S20、S42を繰り返す。
本実施形態では、予め設定された摩擦係数μの閾値Xを0.01に設定している。そして、前記ステップS15で算出した摩擦係数μが予め設定した閾値X(0.01)以下となるまで、図7に示すモータ16の回転数を増加して加圧ローラ24の周速度Vrを通常の350mm/secから500mm/secに加速する。
<実験結果>
次に、図12を用いて比較例と、第1、第2実施形態の実験結果について説明する。図12は、比較例と、第1、第2実施形態の実験結果を示す図である。図12において、定着フィルム22の外周面に発生した長さが20mm以上の傷の有無は、加圧ローラ24の回転動作と停止動作とを500回程度繰り返したときに定着フィルム22の外周面に発生した長さが20mm以上の傷の有無を示す。
比較例では、加圧ローラ24の回転に従動して定着フィルム22が回転を開始し、通常の周速度Vfで等速度回転に至るまでの加速動作を行う。その間に、フランジ部材40の第二規制部40bの記録材Pの搬送方向の上流側の図示しない平滑面からなる円弧部40b3と定着フィルム22の内周面とが積極的に接触する。
比較例では、定着フィルム22の内周面と、フランジ部材40の第二規制部40bの記録材Pの搬送方向の上流側の図示しない平滑面からなる円弧部40b3との接触面における接触抵抗が大きい。このため定着フィルム22の回転方向に対して反対向きの力が発生する。そして、瞬間的に定着フィルム22の回転方向の力よりも接触抵抗による反対向きの力が上回る。これにより比較例では、加圧ローラ24の周速度Vrcと、定着フィルム22の周速度Vfcとの速度差ΔVcが発生する。
加圧ローラ24の周速度Vrcと、定着フィルム22の周速度Vfcとの間に速度差ΔVcを有した状態で加圧ローラ24の回転動作と停止動作とが500回程度繰り返されると、定着フィルム22の外周面に発生する傷の長さは徐々に長くなっていく。加圧ローラ24の回転動作と停止動作とが500回以上繰り返されたときに定着フィルム22の外周面に発生した傷は20mm以上の長さになる。そして、定着フィルム22の外周面に発生した傷の内部にトナーが付着して、定着ニップ部Nを通過する記録材Pに傷状の汚れが転写されて画像不良が発生する。
一方、第2実施形態では、図11のステップS16において、前記ステップS15で算出された摩擦係数μが予め設定された閾値X(0.01)よりも大きい場合がある。その場合は、前記ステップS15で算出された摩擦係数μが予め設定された閾値X(0.01)以下となるまで図7に示すモータ16の回転数を増加して回転駆動する。
図5に示す境界潤滑領域R2で、加圧ローラ24の回転速度がゼロの場合は、定着装置11の加熱も行えない。このためグリスが溶けず、定着フィルム22の内周面とフランジ部材40の表面との間に潤滑膜が均一に形成できない。そのため定着フィルム22の内周面とフランジ部材40の表面との間で、より頻繁な固体接触がおこり、部分流体潤滑膜(グリス)により支えられている部分は極端に少ない。そのため加圧ローラ24の回転速度がゼロの場合は、摩擦係数μが大きい。
一方、モータ16を回転駆動して加圧ローラ24の回転速度がゼロから加速すると、駆動開始により定着装置11の加熱も行うことができる。このため定着装置11の加熱によりグリスも溶けて定着フィルム22の内周面とフランジ部材40の表面とが連続した潤滑膜(グリス)で隔たれるようになり、潤滑膜の厚さは定着フィルム22の内周面とフランジ部材40の表面粗さに比べてかなり大きい。定着フィルム22の内周面とフランジ部材40の表面との間の直接接触が起きないので摩耗が小さく、摩擦係数μも小さくなる。
加圧ローラ24の回転に従動して定着フィルム22が回転を開始し、等速度回転になる。それまでの間に、図6(b)に示すように、フランジ部材40の第二規制部40bの記録材Pの搬送方向の上流側の凹凸部40b1と、定着フィルム22の内周面との接触部27で積極的に接触する。
第2実施形態でも前記第1実施形態と同様に、凹凸部40b1の凹部40b2内にグリスが保持されている。このため記録材Pの搬送方向の上流側の接触領域のグリスの摩擦係数μは閾値X(0.01)以下になっている。これにより図6(b)に示す記録材Pの搬送方向の上流側の凹凸部40b1と、定着フィルム22の内周面との接触抵抗は低減される。これにより第2実施形態でも前記第1実施形態と同様に、加圧ローラ24の周速度Vreと、定着フィルム22の周速度Vfeとの速度差ΔVeは低減される。
第2実施形態においては、加圧ローラ24の回転動作と停止動作とを500回以上繰り返しても加圧ローラ24の周速度Vreと、定着フィルム22の周速度Vfeとの速度差ΔVeは小さい。このため加圧ローラ24の回転動作と停止動作とを500回以上繰り返したときに定着フィルム22の外周面に発生した傷は20mm以上の長さになることはない。このため定着フィルム22の外周面に発生した傷内にトナーが付着して、定着ニップ部Nを通過する記録材Pに傷状の汚れが転写されて画像不良が発生することはなかった。
前記第1実施形態においても第2実施形態と同様の効果が得られる。前記第1実施形態では、図8のステップS10において、前記ステップS5で算出された摩擦係数μが予め設定された閾値X以下になるまでにセラミックヒータ23のOFF時間が1秒必要となる。このとき図7に示すモータ16は駆動されない。このため、その分だけ印刷時間が長くなる。
これに対して、第2実施形態では、図11のステップS20において、前記ステップS15で算出された摩擦係数μが予め設定された閾値X以下になるまでセラミックヒータ23をOFFすることはない。そして、図7に示すモータ16の回転数を通常の回転数よりも増加させる。このためセラミックヒータ23のOFF時間は必要なく、図7に示すモータ16は継続して回転駆動されるため印刷時間が長くなることはない。
本実施形態では、図11のステップS16において、前記ステップS15で算出された摩擦係数μが予め設定された閾値X(0.01)よりも大きい場合がある。その場合は、前記ステップS15で算出された摩擦係数μが予め設定された閾値X(0.01)以下となるまで図7に示すモータ16の回転数を増加して回転駆動する。これにより印刷時間が長くなることがない。
また、フランジ部材40の第二規制部40bの記録材Pの搬送方向の上流側の凹凸部40b1と、定着フィルム22の内周面との接触抵抗を抑えることができる。これにより定着フィルム22の外周面の傷による定着オフセットの発生を抑えることができる。これにより定着装置11の寿命を延命することができる。他の構成は前記第1実施形態と同様に構成され、同様の効果を得ることが出来る。
尚、本実施形態では、図7に示すモータ16の回転数を通常の回転数よりも増加させて回転駆動することで、摩擦係数μが閾値以下となるようにした。他に、図8のステップS10に示すように、セラミックヒータ23をOFFし、更に、図11のステップS20に示すように、モータ16の回転数を通常の回転数よりも増加させて回転駆動する制御を組み合わせても良い。
22…定着フィルム(回転体)
23…セラミックヒータ(加熱手段)
24…加圧ローラ(駆動手段)
40…フランジ部材(支持体)
51…CPU(制御手段;判定手段)

Claims (8)

  1. 回転体と、
    前記回転体を回転可能に支持する支持体と、
    前記回転体を加熱する加熱手段と、
    前記回転体を前記支持体に対して回転駆動させる駆動手段と、
    前記回転体と前記支持体の間に介在する潤滑剤の状態を判定する判定手段と、
    前記回転体が前記駆動手段により前記支持体に対して回転駆動される際に、前記判定手段の判定結果に基づいて、前記回転体の前記加熱手段により加熱される温度及び前記駆動手段により駆動される回転速度の少なくとも何れかを制御する制御手段と、
    を有することを特徴とする加熱装置。
  2. 前記潤滑剤の温度と前記潤滑剤の粘度との関係と、
    前記潤滑剤の粘度と前記駆動手段の駆動速度との積と、前記回転体と前記支持体との接触部の摩擦係数との関係と、
    を記憶する記憶手段を有し、
    前記制御手段は、
    前記記憶手段に記憶された前記潤滑剤の粘度と前記駆動手段の駆動速度との積に応じて、前記摩擦係数が所定の閾値以下になるように前記加熱手段の温調温度と、前記駆動手段の駆動速度との少なくとも何れかを制御することを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
  3. 前記閾値は、前記駆動手段の駆動速度に対する前記回転体の駆動速度の低下比率が10%以下になる前記摩擦係数に設定されたことを特徴とする請求項2に記載の加熱装置。
  4. 前記支持体は、
    前記回転体の軸方向端面に当接して該回転体の軸方向の移動を規制する第一規制部と、
    前記回転体の周面に当接して該回転体の形状を規制する第二規制部と、
    を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の加熱装置。
  5. 前記第二規制部の少なくとも記録材の搬送方向の上流側に凹凸部を設け、該凹凸部の凹部内に前記潤滑剤を保持したことを特徴とする請求項4に記載の加熱装置。
  6. 前記駆動手段が前記回転体の外周面に接触して該回転体を加速している間の前記潤滑剤の温度を検出する検出手段を有し、
    前記制御手段は、
    前記検出手段により検出された前記潤滑剤の温度に基づいて、前記記憶手段に記憶された前記潤滑剤の粘度を算出することを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の加熱装置。
  7. 前記潤滑剤は、
    前記潤滑剤の粘度と前記駆動手段の駆動速度との積の値が小さい範囲では、該積の値が大きくなるにつれて摩擦係数が小さくなり、
    前記積の値が大きい範囲では、該積の値が大きくなるにつれて摩擦係数が大きくなる特性を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の加熱装置。
  8. トナー像を表面に担持する像担持体と、
    前記像担持体上の前記トナー像をシートに転写する転写手段と、
    前記トナー像が転写されたシートに熱と圧力を加えて前記トナー像をシートに定着させる定着手段と、
    を有し、
    前記定着手段における加熱手段として請求項1〜7のいずれか1項に記載の加熱装置を有することを特徴とする画像形成装置。
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JP2020079880A (ja) * 2018-11-13 2020-05-28 京セラドキュメントソリューションズ株式会社 定着装置および当該定着装置を備えた画像形成装置

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