近年の先行待機運転ポンプの状況により、背景技術の一例を説明する。近年、都市化の進展により、緑地の減少及び路面のコンクリート化又はアスファルト化の拡大が進むことでヒートアイランド現象が発生し、いわゆるゲリラ豪雨と呼ばれる局所的な集中豪雨が都市部で頻発している。局所的な大量の降雨は、コンクリート化又はアスファルト化した路面では、地中に吸収されることなくそのまま水路に導かれる。その結果、大量の雨水が、短時間のうちに排水機場に流入する。
頻発するこのような集中豪雨によってもたらされる大量の雨水の速やかな排水に備えるために、排水機場に設置する排水ポンプでは、ポンプの始動遅れによる浸水被害が生じないよう、雨水が排水機場に到達する前に予めポンプを始動させておく先行待機運転が行われている。
図1は、先行待機運転を行う立軸ポンプを示す模式図である。排水機場の水槽100には、縦方向に配置された回転軸122の先端に羽根車120を備えた立軸ポンプが配置されている。この立軸ポンプは、羽根車120に水と共に空気を吸い込ませることにより、水槽100の水位が最低運転水位LWL以下であっても運転(先行待機運転)を継続することができる。回転軸122はすべり軸受135,145によって回転自在に支持されている。吸込ベルマウス110の側面部には貫通孔105が設けられており、この貫通孔105には、外気に接する開口106aを備えた空気管106が取付けられている。これにより、この立軸ポンプでは貫通孔105を介して立軸ポンプ内に供給する空気の供給量を水位に応じて変化させ、最低運転水位LWL以下で立軸ポンプの排水量がコントロールされる。
先行待機運転の運転状態について説明する。例えば大都市の雨水排水用として、吸込水位に関係なく降雨情報等により予め立軸ポンプを始動しておく(気中運転)。低水位の状態から水位が上昇するに従って、羽根車120の位置まで水位が達し、立軸ポンプは空運転(気中運転)から羽根車120で水を撹拌する運転(気水撹拌運転)に移行する。さらに立軸ポンプは貫通孔105を経て供給される空気を水と共に吸い込ませつつ水量を徐々に増やす運転(気水混合運転)を経て100%水の排出を行う全量運転(定常運転)へ移行する。また、高水位から水位が低下するときは、立軸ポンプは全量運転から貫通孔105を経て供給する空気を水と共に吸い込ませつつ水量を徐々に減らす運転(気水混合運転)へ移行する。水位がLLWLの近くに至ると、立軸ポンプは水を吸い込まず排水もしない運転(エアロック運転)へ移行する。これら5つの特徴ある運転を総称して先行待機運転という。なお、ポンプ始動は、吸込ベルマウス110の下端よりも低い水位LLLWLから開始する。
図1に示す立軸ポンプは、ポンプ起動時には大気中で運転される。すなわち、すべり軸受135,145は液体の潤滑のないドライ条件で回転軸122に固定されたスリーブ111(図2参照)にすべり接触する。ここでドライ条件とは、ポンプ運転中のすべり軸受135,145の雰囲気が、液体の潤滑がない大気中である条件をいい、ドライ運転とはその条件で運転することをいう。また、すべり軸受135,145はすべり軸受135,145に通水した排水条件でもスリーブ111にすべり接触する。ここで、排水条件とは
、ポンプ運転中のすべり軸受135,145の雰囲気が、土砂等の異物(スラリー)が混入した水中である条件をいい、排水運転とはその条件で運転すること、例えば気水混合運転、全量運転、エアロック運転等をいう。このような条件下ですべり軸受135,145が使用される。
ここで、図1に示されるような排水機場で用いられるポンプ等は、先行待機運転の場合には、大気中での運転と水中での運転が繰り返される。大気中での運転の場合には、すべり軸受135,145のすべり面(回転軸122又は回転軸122の外周に設けられたスリーブと接触するすべり軸受135,145の面)が、ドライ条件で低摩擦であることが求められる。この要求に鑑みてすべり軸受135,145に樹脂材料が用いられた場合、考慮すべき点がある。
樹脂材料の熱伝導率はセラミックスより小さく、線膨張係数はセラミックスより大きい。ポンプが駆動すると、すべり軸受135,145のすべり面に摩擦熱が発生する。すべり軸受135,145が水中に没しているときは、水によってすべり面が冷却されるのですべり面の温度が低く保たれるが、空気中で運転するドライ運転時では、樹脂軸受であるがゆえに、セラミックスにはない現象が生じる。樹脂材料のすべり軸受135,145の熱伝導率はセラミックスよりさらに小さいのですべり面の摩擦熱が拡散せず、すべり軸受135,145の温度はセラミックスよりさらに上昇する。これに加えて、樹脂材料のすべり軸受135,145の線膨張係数がセラミックスに比べて2桁程度大きいので、すべり軸受135,145の温度の上昇に伴ってすべり軸受135,145が熱膨張したときに、すべり軸受135,145と回転軸122(又はスリーブ)との隙間が小さくなり、摩擦によりすべり面が焼きついたり、回転軸122に樹脂材料が抱きつく虞がある。さらに、樹脂材料のすべり軸受135,145は、ガラス転移点温度を有する。このガラス転移点は、PTFEで125℃、PEEKで140℃程度の比較的低い温度である。すべり軸受135,145の温度がこの温度を越えると、膨張、流動化が激しくなり、冷却しても元の形状に戻らなくなる。ひどい場合には回転軸122に樹脂材料がかじり付いたり、回転軸122に樹脂材料が抱きつく虞がある。
近年は、ゲリラ豪雨により大量の排水をする必要があるため、ポンプの回転数を大きくしたり、ポンプの口径を大きくしたりする傾向がある。そのため、摺動部分における摺動負荷が増大し、すべり軸受135,145に生じる摩擦熱が増加する傾向にある。すべり軸受135,145が樹脂軸受である場合には、多大な摩擦熱により、すべり軸受135,145の温度がその樹脂のガラス転移温度に達する虞がある。すべり軸受135,145の温度が一旦ガラス転移温度に達すると、樹脂は流動化して、回転軸122とのクリアランスに沿って軸方向に延びて流出してしまう。流出した樹脂は、再び元のすべり軸受135,145に戻ることはないので、その後はすべり軸受135,145として回転軸122を支持することはできなくなってしまう。
また、すべり軸受135,145がスリーブ111にすべり接触する際に、接触部で多大な摩擦熱が発生しやすくなり、そこで局所的に高温となる虞がある。図2は、すべり軸受135,145とスリーブ111との接触部の状態を示す模式的断面図である。図2において、網掛け部分は局所的に高温になる部分である。
このようなスリーブ111の局所的な高温化によって、回転軸122は局所的に膨張し、結果的に回転軸122がわずかに曲がる虞がある。それによりポンプの回転部分と固定部分の干渉による振動や、軸受荷重の増加が起こりやすくなる。すなわち、回転体のアンバランス方向において回転部分と固定部分とが接触し、この接触部が発熱することにより回転軸122の軸断面に温度分布が生じ、部分的な熱膨張により回転軸122が曲がる。この際、回転軸122の曲がりにより回転体の重心がずれるので、回転体全体のアンバラ
ンスが徐々に大きくなっていく。また、回転軸の曲がりにより、回転軸122とすべり軸受135,145との接触態様が変化し、各すべり軸受135,145の温度勾配が変化する場合もある。
さらに、回転軸122の曲がりによる変位が、スリーブ111とすべり軸受135,145との隙間より大きくなると、図2に示すように、スリーブ111とすべり軸受135,145とが逆位相の2点において接触する状態となり、曲げ変位が拘束される。この状態で回転軸122が回転し続けると、さらに熱膨張が続き、すべり軸受135,145に対する押付荷重が上昇する。すべり軸受135,145に加わる押付荷重が上昇すると、発熱量が増加する。発熱量の増加により回転軸122の熱曲がりが加速し、その結果すべり軸受135,145に加わる押付荷重がさらに上昇する。このような悪循環に陥り、加速度的に回転軸122、スリーブ111、及びすべり軸受135,145の温度が上昇する。結果として、すべり軸受135,145が焼き付いてしまい、最悪の場合、すべり軸受135,145が損傷してしまう。
特許文献2は、このような問題点の解決のため、すべり軸受の温度上昇を抑制することができる軸受組立体を提案している。すなわち、特許文献2における軸受組立体は、すべり軸受と、すべり軸受の外周面に接触する金属リングと、金属リングを保持する軸受ケースと、金属リングと軸受ケースとの間に挟まれた弾性リングと、金属リングと軸受ケースの両方に接触する金属ブリッジとを備えている。
このように、金属ブリッジは金属リングと軸受ケースの両方に接触しているので、すべり軸受で発生した熱(摩擦熱)は金属リング、さらに、金属ブリッジを介して軸受ケースに伝達され、金属ブリッジ及び軸受ケースの両方から放出されるので、すべり軸受の温度上昇を抑制することができるようになった。
ところで、先行待機運転を行う立軸ポンプには、図3に示すように、複数の短管が、直列に接続してケーシングをなし、それに応じて複数のすべり軸受で回転軸を支える構造を有するものがある。図3は、複数のすべり軸受で回転軸を支持する立軸ポンプ3の縦断面図である。図3に示すように、立軸ポンプ3は、ポンプ設置床に設置固定される吐出エルボ30と、この吐出エルボ30の下端に複数の短管29A、29Bが、直列に接続されて形成されるケーシング29と、ケーシング29の下端に接続されるとともにインペラ22を内部に格納する吐出ボウル28と、吐出ボウル28の下端に接続されるとともに水を吸い込むための吸い込みベル27とを備えている。吸い込みベル27の下端から吐出エルボ30の吐出端部までをポンプケーシングと呼ぶ。
インペラ22の入口側の吸い込みベル27の側面部には貫通孔5が設けられており、この貫通孔5には、外気に接する開口6aを備えた空気管6が取り付けられている。これにより、この立軸ポンプ3は、貫通孔5を介して立軸ポンプ3内に供給する空気の供給量を水位に応じて変化させ、立軸ポンプ3の排水量がコントロールされる。
立軸ポンプ3のケーシング29、吐出ボウル28、及び吸い込みベル27の径方向略中心部、すなわちポンプケーシング内部には、回転軸10が配置されている。回転軸10も、ケーシング29と同じように、複数の短軸10A,10B、10C、10Dを直列に接続して形成されており、回転軸10の一端側(吸い込みベル27側)には、水をポンプ内に吸い込むためのインペラ22が接続されている。
ケーシング29は、両端にフランジ35を備えた複数の短管29A、29Bが、互いのフランジ35で締結されて直列に接続されている。また、複数の短軸10A,10B、10C、10Dの互いの軸端部分が軸継手36で直列に接続されて、回転軸10が形成され
ている。そして、回転軸10は、軸方向の各フランジ35の接続部分の位置ごとに支持部材を介してフランジ35に固定されているすべり軸受装置32と、吐出ボウル28の内筒に支持部材を介して固定されているすべり軸受装置33によって支持されている。
回転軸10の上端側は、吐出エルボ30に設けられた孔を通って立軸ポンプ3の外部へ延び、インペラ22を回転させる図示しないエンジンやモータ等の駆動機へ接続される。回転軸10と吐出エルボ30に設けられた孔との間には、フローティングシール、グランドパッキン又はメカニカルシール等の軸シール34が設けられており、立軸ポンプ3が扱う水が立軸ポンプ3のケーシング外部に流出することを防止する。
駆動機は、保守点検を容易に行うことができるように陸上に設けられる。駆動機の回転は回転軸10に伝達され、インペラ22を回転させることができる。インペラ22の回転によって水が吸い込みベル27から吸い込まれ、吐出ボウル28、ケーシング29を通過して吐出エルボ30から吐出される。
以下、本発明に係る立軸ポンプ、及びそれに用いるすべり軸受装置の実施形態を、図面を参照して説明する。同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。本明細書において、「上部」及び「下部」とは、立軸ポンプが移送する液体の下流側(図示において「吐出」側)及び上流側(図示において「吸込」側)をそれぞれ意味するものとして説明する。
図3は、本実施形態に係るすべり軸受装置32を備えた立軸ポンプ3の縦断面図である。立軸ポンプ3はポンプケーシング内にポンプの揚水対象の水がない状態で回転軸10を運転することがあるポンプである。立軸ポンプ3にはそのような状態で管理運転を行うものや、先行待機運転において、気中運転を行うものもある。図3では先行待機運転を行う立軸ポンプ3を例示している。なお、管理運転とは、降水が稀な季節のためポンプの停止状態が継続している時期に、ポンプが正常に運転できるかどうかを点検するための運転であって、ポンプケーシング内がドライな状態で行う運転である。その運転時間は、十数分から数十分になる場合もある。
図3に示すように、立軸ポンプ3は、ポンプ設置床に設置固定される吐出エルボ30と、この吐出エルボ30の下端に複数の短管29A、29Bが、直列に接続されて形成されるケーシング29と、ケーシング29の下端に接続されるとともにインペラ22を内部に格納する吐出ボウル28と、吐出ボウル28の下端に接続されるとともに水を吸い込むための吸い込みベル27とを備えている。吸い込みベル27の下端から吐出エルボ30の吐出端部までをポンプケーシングと呼ぶ。
インペラ22の入口側の吸い込みベル27の側面部には貫通孔5が設けられており、この貫通孔5には、外気に接する開口6aを備えた空気管6が取り付けられている。これにより、この立軸ポンプ3は、貫通孔を介して立軸ポンプ3内に供給する空気の供給量を水位に応じて変化させ、立軸ポンプ3の排水量がコントロールされる。
立軸ポンプ3のケーシング29、吐出ボウル28、及び吸い込みベル27の径方向略中心部、すなわちポンプケーシング内部には、回転軸10が配置されている。回転軸10も、ケーシング29と同じように、複数の短軸10A,10B、10C、10Dを直列に接続して形成されており、回転軸10の一端側(吸い込みベル27側)には、水をポンプ内に吸い込むためのインペラ22が接続されている。
ケーシング29は、両端にフランジ35を備えた複数の短管29A、29Bが、互いのフランジ35で締結されて直列に接続されている。また、複数の短軸10A,10B、10C、10Dの互いの軸端部分が軸継手36で直列に接続されて、回転軸10が形成されている。そして、回転軸10は、軸方向の各フランジ35の接続部分の位置ごとに支持部材を介してフランジ35に固定されているすべり軸受装置32と、吐出ボウル28の内筒
に支持部材を介して固定されているすべり軸受装置33によって支持されている。すべり軸受装置32,33は、大気運転時に摺動面が大気雰囲気にある状態で使用されるすべり軸受装置である。
回転軸10の上端側は、吐出エルボ30に設けられた孔を通って立軸ポンプ3の外部へ延び、インペラ22を回転させる図示しないエンジンやモータ等の駆動機へ接続される。回転軸10と吐出エルボ30に設けられた孔との間には、フローティングシール、グランドパッキン又はメカニカルシール等の軸シール34が設けられており、立軸ポンプ3が扱う水が立軸ポンプ3の外部に流出することを防止する。
駆動機は、保守点検を容易に行うことができるように陸上に設けられる。駆動機の回転は回転軸10に伝達され、インペラ22を回転させることができる。インペラ22の回転によって水が吸込みベル27から吸い込まれ、吐出ボウル28、ケーシング29を通過して吐出エルボ30から吐出される。
図4は、図3に示した立軸ポンプ3に備えられるすべり軸受装置32の一実施形態を示す断面図である。すべり軸受装置32は、回転軸10の周囲に配置されたすべり軸受41と、すべり軸受41が固定された軸受ケーシング42とを備えている。すべり軸受41は円筒形状を有しており、その外周面41bと内周面41aの面の互いが描く軸芯が許容範囲内に位置している。尚、本明細書において、互いの軸芯が許容範囲内にある状態とは、説明の便宜上、同軸であるという。すべり軸受41の外周面41bは軸受ケーシング42の円筒部42aの内周面に接触し、固定及び支持されている。回転軸10はすべり軸受41によって回転自在に支持されている。
すべり軸受41は耐熱性の高い樹脂材料から構成されている。すべり軸受41に適用される樹脂材料の例として、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)が挙げられる。或いは、すべり軸受41の摺動部材(樹脂)の成分に、炭素を主成分とする有機化合物が50%以上含まれており、BN(ボロンナイトライド、窒化ホウ素)が固体潤滑剤として添加されていることが好ましい。軸受ケーシング42は、すべり軸受41よりも高い熱伝導率を有する材料から構成されている。例えば、軸受ケーシング42は金属から構成されている。一実施形態では、軸受ケーシング42は、高い耐久性を有し、かつ高い熱伝導率を有する金属や合金、銅合金、アルミ合金から選択され得る。
すべり軸受41は、回転軸10を囲むように配置されている。尚、回転軸10は、その外周面に固定された円筒状のスリーブをさらに備えている場合が多いが、説明の便宜上スリーブを省略して説明する。回転軸10に固定されたスリーブは、回転軸10の一部として取り扱われ得る。すべり軸受41の内周面41aと回転軸10の外周面との間には僅かな隙間が形成されている。すべり軸受41の内周面41aは、回転軸10の外周面にすべり接触する支持面を構成している。すべり軸受41の外周面41bは軸受ケーシング42の内周面に接触している。この場合、すべり軸受41の外周面全面が軸受ケーシング42の内周面に接触していることが好ましいが、外周面全面の少なくとも80%以上が接触していればよい。
軸受ケーシング42は、円筒部42aと、円筒部42aから径方向外側に突出するフランジ部42bとを有している。円筒部42aは回転軸10の軸方向に延びている。円筒部42aの内周面と外周面は互いに同軸である。
軸受ケーシング42は、そのフランジ部42bで、短管29Bの内側に固定された支持部材43に、脱着可能なボルトなどの締結部材44(第1の締結部材の一例に相当する)
により固定されている。フランジ部42bと支持部材43との接触面に対して、円筒部42aの内周面及び外周面の軸方向の角度は、許容角度範囲内で直角である。尚、本明細書において、ある面(線)と別の面(線)がなす角度が許容角度範囲内で直角であることを、説明の便宜上、直角であるという。
一方、支持部材43は、短管29Bの内側に固定される梁43bと、梁43bに支持されるとともに、軸受ケーシング42のフランジ部42bと接続する円筒状部分43aからなる。円筒状部分43aのフランジ部42bとの接触面と、円筒状部分43aの内周面の軸方向とは直角である。
短管29Bのフランジ35Bの内周面と、支持部材43の円筒状部分43aの内周面(及び外周面)は同軸になるように、すべり軸受装置32が加工されている。短管29Bは、フランジ35Bにおいて、別の短管29Aのフランジ35Aとボルト及びナットなどの締結部材により締結される。短管29Aと短管29Bは図中部分Aのように、インローが形成されて、互い短管の軸芯が同軸になるように組み上げられる。
軸受ケーシング42の円筒部42aの外周面と支持部材43の円筒状部分43aの内周面の間に、ゴム等の弾性材料で形成された弾性リング45(第3の防振部材の一例に相当する)と、金属製のガイドスペーサ46が備えられている。弾性リング45及びガイドスペーサ46は円筒状で、各々の内周面と外周面の軸芯が同軸になっている。軸受ケーシング42の円筒部42aの外周面に弾性リング45の内周面が接触する。弾性リング45の外周面にガイドスペーサ46の内周面が接触する。ガイドスペーサ46の外周面に支持部材43の円筒状部分43aの内周面が接触する。本実施形態では、隣接して互いに接する部品が同軸であるので、短管29Aと短管29Bの内面と、すべり軸受41の同軸性が保たれる。
図4において、すべり軸受装置32は、フランジ部42bと円筒状部分43aを締結する締結部材44と、位置決め部材と、防振部材とを備えている。締結部材44として、例えば金属ボルト44等の剛性材が使用される。位置決め部材として、金属ボルト44の外周に、金属等の剛性材で形成される略円筒管形状の金属スペーサ50(第1の位置決め部材の一例に相当する)が設けられる。防振部材として、金属スペーサ50の外周に、略円筒形状のゴム等の弾性材で形成されるゴムブッシュ51(第1の防振部材の一例に相当する)が設けられる。これらは、互いに適当な遊び(隙間)を有している。金属ボルト44は、フランジ部42bに備えられた貫通孔を通って、円筒状部分43aに備えられた対応するネジ穴に締結されている。
金属スペーサ50の軸方向の一方の端部は、外径方向にフランジ状に広がり、金属ボルト44の頭に接触する。金属スペーサ50の他端は、円筒状部分43aに接触している。このため、金属ボルト44を締めたとき(金属ボルト44の締結作用)の締結力に対抗して、金属スペーサ50から金属ボルト44に反作用力が与えられ、金属ボルト44の締結を保持することができる。金属ボルト44の頭に接触する金属スペーサ50のフランジ部の裏面は、ゴムブッシュ51と接している。
ゴムブッシュ51の円筒部の外面はフランジ部42bの貫通孔の内面と接触し、ゴムブッシュ51の円筒部の内面は金属スペーサ50円筒部の外面と接触している。このような構造により、金属ボルト44は、金属スペーサ50の長さまでしか締めることはできず、また金属ボルト44による締結力を損なうことはない。即ち、金属スペーサ50は、金属ボルト44の締結量、即ち位置を決定することができる。また、ゴムブッシュ51は、金属ボルト44の締め付け前までは、フランジ部42bの貫通孔とゴムブッシュ51の外周との間の遊び、及び金属スペーサ50と金属ボルト44との間の遊びの範囲での移動が可
能である。このため、短管29Bのフランジ35Bの内周面又は支持部材43の円筒状部分43aの内周面と、すべり軸受41の内周面とが同軸となるように調整することは可能である。
そして、軸受ケーシング42の円筒部42aの内周面及び外周面が、短管29Bのフランジ35Bの内周面、支持部材43の円筒状部分43aの内周面、及びすべり軸受41の内周面41aと同軸になるように調整した位置で、金属ボルト44が締め付けられる。これにより、ゴムブッシュ51は、フランジ部42bの貫通孔内面、フランジ部42bの上面、又は円筒状部分43aの上面に密着され、金属ボルト44の締め付けに対するゴムブッシュ51の反発力により、軸受ケーシング42は、その同軸が調整された位置で固定される。
また、すべり軸受装置32が組み上げられた状態における弾性リング45の径方向の厚みは、剛性材であるガイドスペーサ46の径方向の厚みより大きい。ガイドスペーサ46の下端部は、弾性リング45の下方への脱落を防ぐために内側に延びたストッパ46bを備えてもよい。金属製のガイドスペーサ46は、そのストッパ46bも含めて軸受ケーシング42の外周面と円筒状部分43aの内周面とに接触することのないように、軸受ケーシング42との間に隙間(遊び)を有する。
以上のように、図4に示した実施形態によれば、1)ケーシングの短管29Bのフランジ35Bの内周面と、円筒状部分43aの内周面とが同軸であり、軸受ケーシング42と接続する円筒状部分43aの接続面は、円筒状部分43aの内周面と直角であり、軸受ケーシング42の円筒部42aの内周面とフランジ部42bの円筒状部分43aとの接続面が直角であり、軸受ケーシング42の円筒部42aの内周面に接触するすべり軸受41の外周面41bとすべり軸受41の内周面41aが同軸であり、円筒部42aの外周面と円筒状部分43aの内周面の間にそれらと同軸の弾性リング45及びガイドスペーサ46が収納される。
また、図4に示した実施形態によれば、2)ガイドスペーサ46は、軸受ケーシング42の外周面と円筒状部分43aの内周面に接触することのないように、軸受ケーシング42との間に隙間(遊び)を有する。さらに、3)金属ボルト44と、金属ボルト44の外周に設けられた略円筒形状の金属スペーサ50と、金属スペーサ50の外周に設けられた略円筒形状のゴムなどの弾性材料で形成されるゴムブッシュ51とにより軸受ケーシング42と円筒状部分43aを締結される。
これらにより、軸受ケーシング42の円筒部42aの外周面と支持部材43の円筒状部分43aの内周面の間に、ゴム等の弾性リング45を備えても、すべり軸受41の内周面41aと支持部材43の円筒状部分43aの内周面とが同軸になるようにすべり軸受41を配置して固定することができる。その結果、ゴム等の弾性リング45の径方向の寸法誤差の影響が少なくなり、すべり軸受41と円筒状部分43aの各内周面及び外周面が互いに同軸に配置できるようになった。
そして、以上で説明した構造を有するすべり軸受装置32は、すべり軸受41にかかるラジアル荷重の作用による振動吸収、すなわち径方向の振動だけでなく、回転方向の振動の成分の吸収に優れた効果を発揮する。言い換えれば、軸受ケーシング42の円筒部42aの外周面と支持部材43の円筒状部分43aの内周面との間に備えられた弾性リング45により、主に、径方向の振動成分が吸収される。また、すべり軸受41、弾性リング45、及び円筒状部分43aが同軸状に配置されるので、振動吸収の異方性が少なくなり、回転軸10がどの方向に振れてすべり軸受41に接触しても均等な振動吸収が可能となった。さらに、ゴムブッシュ51により、主に、回転方向の振動成分が吸収される。
尚、弾性リング45は回転方向の振動成分の吸収に全く寄与しないというわけではなく、ゴムブッシュ51は径方向の振動成分の吸収に全く寄与しないというわけではない。また、弾性リング45又はゴムブッシュ51の径方向の厚み等によって、各振動方向の振動成分の吸収の寄与の大小は影響される。
また、以上で説明した構造を有するすべり軸受装置32は、回転軸10とすべり軸受41の摺動により生ずる摩擦熱によるすべり軸受41の摺動面(内周面41a)の温度上昇を抑制することにも優れた効果を発揮する。すべり軸受41を構成する樹脂材料の熱伝導率が金属の熱伝導率に比べて2桁近く小さいことから、すべり軸受41の径方向の厚さは、金属製の回転軸10の直径又は軸受ケーシング42の内径の100分の1オーダーの厚みであることが好ましいが、摺動負荷などの力学的負荷を考慮すると、5mmから15mmの厚みが必要になる。
ドライ運転時には、すべり軸受41と回転軸10との間に水による潤滑がなく、また大気雰囲気に晒されるので、すべり軸受41と回転軸10の摺動による摩擦熱の周辺雰囲気への放熱は、排水運転時に比べて極端に悪くなる。そのため、回転軸10と摺動して摩擦熱が発生するすべり軸受41の内周面41aは、次第に高温化していく。すべり軸受41の熱伝導率と、内周面41aと外周面41bとの温度差δTとにより決定されるすべり軸受41の外周側に放熱させる熱流量が、摺動部に発生する摩擦熱に均衡するようになると、すべり軸受41の内周面41aの温度は安定する。
すなわち、すべり軸受41の内周面41aの温度をより低い温度で安定させるためには、すべり軸受41の外周面41bの温度を余り上昇させることなく、摩擦熱を速やかに外周側に放散することが必要である。このような考えに基づいて、すべり軸受41の外周面41bに接触する軸受ケーシング42は、熱を速やかに外部に移送するための熱流路の役割を有する。
軸受ケーシング42の熱流路の役割を説明する。図4に示すように、軸受ケーシング42のフランジ部42bは、支持部材43の円筒状部分43aと、互いの金属面で接触している。具体的には、フランジ部42bの下面が、円筒状部分43aの上面と面接触している。このため、ドライ運転時における回転軸10とすべり軸受41の内周面41aとの間で生じる摩擦熱は、すべり軸受41を伝導してその外周面41bに至り、金属製の軸受ケーシング42を通ってフランジ部42bから支持部材43の円筒状部分43aに拡散される。
また、軸受ケーシング42の上下には、すべり軸受41を上下方向から固定する金属製の略円盤状の上側支持板48及び下側支持板49が、ボルト等の締結部材44´等により締結されている。下側支持板49は、更に支持部材43の円筒状部分43aに向かって外周に延びて、ガイドスペーサ46の下面に接し、ガイドスペーサ46が下方に脱落しないように支えている。しかし、下側支持板49とガイドスペーサ46は互いに固定されていない。一方で、下側支持板49とガイドスペーサ46は熱伝達部材として機能する。具体的には、下側支持板49とガイドスペーサ46は、軸受ケーシング42から円筒状部分43aまでの熱流路として機能する。すなわち、軸受ケーシング42と上側支持板48との接触、軸受ケーシング42と下側支持板49との接触、及び下側支持板49とガイドスペーサ46との接触、ガイドスペーサ46と円筒状部分43aとの接触により、熱伝達が十分できるようにそれぞれの部材が互いに密着している。また、熱伝達部材(下側支持板49及びガイドスペーサ46)の熱伝導率は、軸受ケーシング42や円筒状部分43aと同等なオ−ダーである。
このような構造をすべり軸受装置32が有するので、ドライ運転時において回転軸10とすべり軸受41の内周面との間で生じる摩擦熱は、すべり軸受41を熱伝導してその外周面41bに至り、そこで密着する金属製の軸受ケーシング42を通って、下側支持板49及びガイドスペーサ46を経由して支持部材43の円筒状部分43aに拡散される。特に、ガイドスペーサ46の外周面と円筒状部分43aの内周面が接触するので、伝熱面を大きくとることができ、放熱が効率良く行われる。
図示のように、ガイドスペーサ46の内側に弾性リング45が設けられ、弾性リング45は、ガイドスペーサ46と軸受ケーシング42の円筒部42aに接触し、ガイドスペーサ46は支持部材43の円筒状部分43aに接触している。弾性リング45の線膨張係数が金属のそれよりも1桁から2桁大きい。このため、回転軸10とすべり軸受41との摩擦熱の影響で弾性リング45の温度が上昇すると、弾性リング45の膨張によりガイドスペーサ46が円筒状部分43aに向かって押される。さらに、弾性リング45とガイドスペーサ46とが互いに膨張することで、ガイドスペーサ46の外周面と支持部材43の円筒状部分43aの内周面との密着性が高まる。これにより、ガイドスペーサ46から円筒状部分43aに放熱する熱流路が増加し、放熱量が増加する。
ところで、前述のように、すべり軸受41と回転軸10との接触により、すべり軸受41にはラジアル荷重が作用する。軸受ケーシング42の下側支持板49は、ガイドスペーサ46に面接触しているが、固定されていない。したがって、軸受ケーシング42がラジアル荷重をすべり軸受41から受けたときに、軸受ケーシング42はその半径方向に移動することができる。
以上で説明したように、本実施形態におけるすべり軸受装置32の構造は、ドライ運転時における回転軸10との摺動によるすべり軸受41の振動の吸収機能と、摩擦熱の放散機能を向上させるとともに、すべり軸受41の軸芯の寸法精度を確保できる。
なお、図4において、下側支持板49は、径方向内側に延びてすべり軸受41を下方から支持する機能と、径方向外側に延びてガイドスペーサ46の脱落防止と熱的接触を担う機能を有しているが、これらの両機能を別々の部品で達成してもよい。また、図4のすべり軸受装置32において、各部品を上下反転させても、同様の効果を奏することは明らかである。
図5は、図4に示した実施形態の変形例を示す。なお、図4の実施形態に関して既に説明したことと同等の内容は省略される。また、図5中の符号に関しても、図4と同一の番号は同じ意味の範囲で解釈される。
図5に示す実施形態では、下側支持板49は、軸受ケーシング42の円筒部42aの下面と、支持部材43の円筒状部分43aの下面の両方に面接触し、これらの下面の少なくとも一方と締結部材44(第2の締結部材の一例に相当する)又は締結部材44´により締結されている。このとき、円筒状部分43aの上面と下面は平行であり、軸受ケーシング42の円筒部42aの下面とフランジ部42bの下面は平行である。また、円筒状部分43aの上面と下面との間の距離は、円筒部42aの下面とフランジ部42bの下面との間の距離と等しい。
下側支持板49には、締結部材44,44´が通過するための孔が設けられる。軸受ケーシング42の円筒部42aの下面には、締結部材44´を締結するネジ穴が設けられる。円筒状部分43aには、締結部材44を締結するネジ穴が設けられる。下側支持板49は、軸受ケーシング42の円筒部42aの下面又は円筒状部分43aの下面に、締結部材44,44´により固定される。
下側支持板49を、円筒状部分43a(又は軸受ケーシング42の円筒部42a)の下面に、締結部材44(又は締結部材44´)により締結固定し、軸受ケーシング42の円筒部42a(又は円筒状部分43a)の下面と、下側支持板49の上面が接触するように構成される。これにより、図4で説明した実施形態と同様に、短管29Bのフランジ35Bの内周面、支持部材43の円筒状部分43aの内周面、及びすべり軸受41の内周面を互いに同軸となるように調整することができる。
そして、図4に示した実施形態と同様に、軸受ケーシング42の円筒部42aの外周面と支持部材43の円筒状部分43aの内周面の間に備えられた弾性リング45と、締結部材44の外周に配置されたゴムブッシュ51(第2の防振部材の一例に相当する)により、すべり軸受41にかかるラジアル荷重の作用による振動吸収、すなわち径方向の振動だけでなく、回転方向の振動の成分の吸収に優れた効果を発揮する。
また、図5の実施形態における熱流路について説明する。軸受ケーシング42の円筒部42aの下面と下側支持板49の上面とが接触し、下側支持板49の上面と支持部材43の円筒状部分43aの下面とが接触している。このため、ドライ運転時における回転軸10とすべり軸受41の内周面41aとの間で生じる摩擦熱は、すべり軸受41を熱伝導してその外周面41bに至り、金属製の軸受ケーシング42を通って下側支持板49から直接支持部材43の円筒状部分43aに放熱することができる。
下側支持板49の熱流路を、軸受ケーシング42のフランジ部42bの熱流路と同等の熱的なコンダクタンスとすることで、すべり軸受41や弾性リング45の各々の部品の軸方向の温度分布が均等にすることができるので、すべり軸受41の軸方向に偏った変形や摩耗、弾性リング45の軸方向に偏った振動吸収性能が生じることを防ぐことができる。
尚、下側支持板49を、円筒状部分43aの下面と軸受ケーシング42の円筒部42aの下面の両方に対して、締結部材44及び締結部材44´により固定することもできる。この場合、締結部材44及び締結部材44により、短管29Bのフランジ35Bの内周面、支持部材43の円筒状部分43aの内周面、及びすべり軸受41の内周面が、互いに同軸となるように調整することができる。また、この場合、締結部材44のゴムブッシュ51による締結箇所が増え、金属面の接触が強固となるので、振動吸収性能及びすべり軸受41の摺動摩擦熱の放熱性能については、下側支持板49を円筒状部分43aの下面又は軸受ケーシング42の円筒部42aの下面に締結部材44又は締結部材44´により固定する場合と同等以上の性能を発揮する。
図6は、図4及び図5に示した実施形態の変形例を示す。具体的には、図6に示す実施形態は、図4又は図5に示した実施形態において、弾性リング45とガイドスペーサ46を取り除いたものに相当する。なお、図4及び図5の実施形態に関して既に説明したことと同等の内容は省略される。また、図6中の符号に関しても、図4及び図5と同一番号のものは同じ意味の範囲で解釈される。図5で説明した変形例は、図6において破線で記載された部分まで拡張される。
図4及び図5に示した実施形態のように、ケーシングの短管29Bのフランジ35Bの内周面と、軸受ケーシング42と接続する円筒状部分43aの内周面とが同軸になるように締結部材44で調整した後に、弾性リング45とガイドスペーサ46を取り外してもよい。或いは、締結部材44は軸受ケーシング42の位置決め調整が可能なので、予め、弾性リング45とガイドスペーサ46を取り外した状態で、締結部材44で短管29Bとフランジ35Bとが同軸になるように調整してもよい。このようにしても、締結部材44のゴムブッシュ51が弾性材料なので、すべり軸受41にかかるラジアル荷重の作用による
振動吸収に、すなわち、径方向の振動だけでなく、回転方向の振動の成分の吸収に対応可能である。熱の伝達に関しては図4及び図5と同等の性能を発揮する。
図7は、図4に示した実施形態の別の変形例を示す。なお、図4の実施形態に関して既に説明したことと同等の内容の説明は省略される。図7中の符号に関しても、図4と同一番号のものは同じ意味の範囲で解釈される。
図7の実施形態は、図4の実施形態において、弾性スペーサ47(第4の防振部材の一例に相当する)が、軸受ケーシング42のフランジ部42bの下面と、支持部材43の円筒状部分43aの上面の間に挟まれたものに相当する。弾性スペーサ47は、ゴム製のパッキン、金属の細片を加熱・加圧して多孔質状に加工することで弾性性能を備えた多孔質金属素材の防振材のパッキン、又は金属板を波板加工すること等により弾性性能を備えさせた弾性構造金属のパッキンも含む。
図7に示す実施形態によれば、すべり軸受41にかかるラジアル荷重の作用による振動吸収に、すなわち、径方向の振動だけでなく、回転方向の振動の成分の吸収に、更に優れた効果を発揮する。すなわち、軸受ケーシング42の円筒部42aの外周面と支持部材43の円筒状部分43aの内周面の間に備えられた弾性リング45により、主に、径方向の振動成分が吸収され、ゴムブッシュ51により、主に、回転方向の振動成分が吸収される。さらに、弾性スペーサ47により、径方向の振動と回転方向の振動の両方の成分の吸収が吸収できる。
図7に示す実施形態においても、図4で説明した実施形態と同様に、短管29Bのフランジ35Bの内周面、支持部材43の円筒状部分43aの内周面、及びすべり軸受41の内周面を互いに同軸となるように調整することができる。
また、図4で説明したように、図7のすべり軸受装置32は、軸受ケーシング42の下面に締結されている金属製の略円盤状の下側支持板49を備え、その下側支持板49はガイドスペーサ46の下面に接し、ガイドスペーサ46は円筒状部分43aに接している。このため、すべり軸受41に生じる摺動摩擦熱は、下側支持板49及びガイドスペーサ46を通じて、支持部材43の円筒状部分43aに放散することができる。
また、弾性リング45として、前述した弾性性能を備えた多孔質金属素材の防振材のパッキン、又は弾性性能を備えさせた弾性構造金属のパッキンを用いることで、すべり軸受41で生じる摺動摩擦熱を、軸受ケーシング42のフランジ部42b側から、弾性リング45を通じて支持部材43の円筒状部分43aに放散することができる。
図8は、図6に示した実施形態のさらなる変形例である。なお、図6の実施形態に関して既に説明したことと同等の内容の説明は省略される。また、図8中の符号に関しても、図6と同一番号のものは同じ意味の範囲で解釈される。
図8の実施形態は、図6の実施形態において、弾性スペーサ47が、軸受ケーシング42のフランジ部42bの下面と、支持部材43の円筒状部分43aの上面の間に挟まれたものに相当する。弾性スペーサ47は、ゴム製のパッキン、金属の細片を加熱・加圧して多孔質状に加工することで弾性性能を備えた多孔質金属素材の防振材のパッキン、又は金属板を波板加工すること等により弾性性能を備えさせた弾性構造金属のパッキンも含む。
弾性スペーサ47がゴム製のパッキンである場合には、軸受ケーシング42のフランジ部42bから支持部材43の円筒状部分43aに通過する熱量は極端に制限される。このため、下側支持板49は、軸受ケーシング42の円筒部42aの下面と、支持部材43の
円筒状部分43aの下面の両方に面接触し、少なくとも一方と締結部材44(44´)により締結されている。これにより、すべり軸受41で生じる摺動摩擦熱を軸受ケーシング42の下面から下側支持板49を介して支持部材43の円筒状部分43aの下面に伝達し、放熱することが可能である。なお、下側支持板49を、軸受ケーシング42の円筒部42a下面と、支持部材43の円筒状部分43aの両方に対して、締結部材44及び締結部材44´により締結してもよい。
弾性スペーサ47として、前述した弾性性能を備えた多孔質金属素材の防振材のパッキン、又は弾性性能を備えさせた弾性構造金属のパッキンを用いる場合には、軸受ケーシング42のフランジ部42bから支持部材43の円筒状部分43aに通過する熱量をある程度確保できる。このため、軸受ケーシング42の円筒部42aの下面と、支持部材43の円筒状部分43aの下面の両方に対して、下側支持板49を取り付けなくてもよい。
図8の実施形態によれば、図6の実施形態と同様に、短管29Bのフランジ35Bの内周面、支持部材43の円筒状部分43aの内周面、及びすべり軸受41の内周面を互いに同軸となるように調整することができる。また、図8の実施形態によれば、締結部材44に備えられたゴムブッシュ51により主に回転方向の振動成分が吸収され、軸受ケーシング42のフランジ部42bの下面と、支持部材43の円筒状部分43aの上面の間に挟んだ弾性スペーサ47により、径方向の振動と回転方向の振動の両方の成分が吸収される。
図9は、図5に示した実施形態のさらなる変形例を示す。なお、図5の実施形態に関して既に説明したことと同等の内容の説明は省略される。また、図9中の符号に関しても、図5と同一番号のものは同じ意味の範囲で解釈される。
図9の実施形態は、図5の実施形態において、弾性スペーサ47が、軸受ケーシング42のフランジ部42bの下面と、支持部材43の円筒状部分43aの上面の間に挟まれたものに相当する。弾性スペーサ47は、ゴム製のパッキン、金属の細片を加熱・加圧して多孔質状に加工することで弾性性能を備えた多孔質金属素材の防振材のパッキン、又は金属板を波板加工すること等により弾性性能を備えさせた弾性構造金属のパッキンも含む。
ゴムの熱伝導率は金属等に比べて2桁ほど小さいので、弾性スペーサ47がゴム製のパッキンである場合には、軸受ケーシング42のフランジ部42bから支持部材43の円筒状部分43aに通過する熱量は極端に制限される。このため、下側支持板49は、軸受ケーシング42の円筒部42aの下面と、支持部材43の円筒状部分43aの下面の両方に面接触し、少なくとも一方と締結部材44(44´)により締結されている。これにより、すべり軸受41で生じる摺動摩擦熱を軸受ケーシング42の下面から下側支持板49を介して支持部材43の円筒状部分43aの下面に伝達し、放熱することが可能である。なお、下側支持板49を、軸受ケーシング42の円筒部42a下面と、支持部材43の円筒状部分43aの両方に対して、締結部材44及び締結部材44´により締結してもよい。
弾性スペーサ47として、前述した弾性性能を備えた多孔質金属素材の防振材のパッキン、又は弾性性能を備えさせた弾性構造金属のパッキンを用いる場合には、軸受ケーシング42のフランジ部42bから支持部材43の円筒状部分43aに通過する熱量をある程度確保できる。このため、軸受ケーシング42の円筒部42aの下面と、支持部材43の円筒状部分43aの下面の両方に対して、下側支持板49を取り付けなくてもよい。
図9の実施形態によれば、図5の実施形態と同様に、短管29Bのフランジ35Bの内周面、支持部材43の円筒状部分43aの内周面、及びすべり軸受41の内周面を互いに同軸となるように調整することができる。また、図9の実施形態によれば、締結部材44に備えられたゴムブッシュ51により、主に回転方向の振動成分が吸収され、軸受ケーシ
ング42のフランジ部42bの下面と、支持部材43の円筒状部分43aの上面の間に挟んだ弾性スペーサ47により、径方向の振動と回転方向の振動の両方の成分が吸収される。
以上で説明したように、図4から図9に示した実施形態のように、すべり軸受装置32の構造は、すべり軸受41の軸芯の寸法精度を確保できるとともに、ドライ運転時における回転軸10との摺動によるすべり軸受41の振動の吸収機能と、摩擦熱の放散機能を向上させることができる。
なお、既に述べたように、図4から図9の実施形態においては、下側支持板49は、径方向内側に延びてすべり軸受41を下方から支持する機能と、径方向外側に延びてガイドスペーサ46の脱落防止と熱的接触を担う機能を有しているが、これらの両機能を別々の部品で行ってもよい。図10は、リテイニング部材48´49´を備えたすべり軸受装置32の概略断面図である。例えば、図10に示すように、上側支持板48及び下側支持板49に代えて、略中空円盤状のリテイニング部材48´,49´によりすべり軸受41を支持してもよい。軸受ケーシング42の円筒部42aの内周面には、軸方向に離間してリテイニング部材48´,49´を嵌め込む溝が形成されている。溝に嵌め込まれたリテイニング部材48´,49´によって、すべり軸受41が支えられているので、すべり軸受41が脱落することはない。図10の例では、軸受ケーシング42からの伝熱部材として、軸受ケーシング42に締結された伝熱部材49´´を用いているが、すべり軸受41で生じる摺動摩擦熱を、軸受ケーシング42から十分に放射できる場合には、破線で示されるように、熱的接触を担う機能をもたせた伝熱部材49´´を省略してもよい。
以上、すべり軸受41が、円筒状の樹脂材料で成形された場合について説明した。しかしながら、回転軸10の径が大きいほど、すべり軸受41を円筒状に成形するために大きな型を特別に用意する必要がある。また、すべり軸受41の厚みも大きくする必要があるので、樹脂の均質性や寸法精度を保つことがより困難であるし、コストも増加する。
そこで、本実施形態では、断面が円弧状であり且つ軸方向に短冊状の複数の樹脂部品を軸受ケーシング42の内周面に取り付けることで、すべり軸受41を全体として円筒状のすべり軸受41を形成している。
図11は、本実施形態に係るすべり軸受41の概略横断面図である。図11において、すべり軸受41を構成する樹脂部品の円弧の内周と外周が、軸芯Oから半径Riと半径Roで規定される。この樹脂部品の厚み(Ro−Ri)は、すべり軸受41に必要な厚さを備えている。軸受ケーシング42はその内周面に複数の内凸部42cを有し、樹脂部品を円弧の両端から挟んで保持する。
すべり軸受41を軸受ケーシング42に組み込んだ状態で、又はすべり軸受41が組み込まれた軸受ケーシング42を支持部材43の円筒状部分43aに組み込んだ状態で、すべり軸受41の内周面が、軸受ケーシング42の円筒部42aの外周面42d(図中破線)と、又は円筒状部分43aの外周面と同軸となるように、すべり軸受41を加工することができる。
また、軸受ケーシング42の円筒部42aの外周に弾性リング45を装着し、更にその外周にガイドスペーサ46を取り付けた状態で、すべり軸受41の内周面がガイドスペーサの外周面と同軸となるように、すべり軸受41を加工することができる。これにより、大きな型を特別に用意する必要がなくなり、樹脂の均質性や寸法精度を保ちながら、厚みも大きくすることができる。
図12は、図11に示したすべり軸受41を構成する樹脂部品のドライ運転時における熱流束を破線で示した概略図である。図示のように、すべり軸受41の円弧の端部41cが軸受ケーシング42の内凸部42cに面接触しているので、同一の厚みの円筒状の樹脂製すべり軸受を用いた場合に比べ、すべり軸受41の内周面に生じたドライ運転時の摩擦熱を速やかに軸受ケーシング42に伝えることができる。
以上の実施形態に例示したすべり軸受装置32は、特に、複数のすべり軸受が直列に配置された立軸ポンプに好適である。実施形態で例示したすべり軸受装置32を、図3に示した立軸ポンプ3に搭載することで、回転軸の偏角、偏心を抑えることができ、立軸ポンプ3のドライ運転時に、すべり軸受41の回転軸10との摺動による振動が吸収され且つ抑制される。その結果、すべり軸受41の偏摩耗又は偏摩擦が抑制され、また、摺動摩擦熱によるすべり軸受41の温度上昇が抑えられるようになった。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、又は、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲及び明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、又は省略が可能である。