JP2009222207A - 軸受および軸受を有するポンプ - Google Patents
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Abstract
【課題】摩擦係数の低減を促進することができ、熱変形に対する耐久性を向上させることができる軸受を提供する。
【解決手段】ポンプの軸受11の固定側摺接体20の材質は、熱変形温度が100℃以上で且つガラス転移温度が100℃以上の樹脂であるポリエーテルエーテルケトンからなる基材と、カーボン繊維と、カーボンナノファイバーとを含み、基材が20質量%以上含まれ、カーボン繊維が10質量%以上含まれ、カーボンナノファイバーが5質量%以上含まれ、且つ、カーボン繊維とカーボンナノファイバーとの合計が80質量%以下である。
【選択図】図2
【解決手段】ポンプの軸受11の固定側摺接体20の材質は、熱変形温度が100℃以上で且つガラス転移温度が100℃以上の樹脂であるポリエーテルエーテルケトンからなる基材と、カーボン繊維と、カーボンナノファイバーとを含み、基材が20質量%以上含まれ、カーボン繊維が10質量%以上含まれ、カーボンナノファイバーが5質量%以上含まれ、且つ、カーボン繊維とカーボンナノファイバーとの合計が80質量%以下である。
【選択図】図2
Description
本発明は、軸受、および、この軸受を有するポンプに関する。
従来、樹脂を用いた軸受としては、例えば図5に示すように、ポンプの回転軸61にスリーブ62が設けられ、回転するスリーブ62と固定された軸受63とが摺接する軸受64がある。上記軸受63は、フッ素樹脂を母材とし、この母材にカーボンナノチューブ(又はカーボンナノファイバー)を充填材として充填して形成されている。尚、このような軸受64は下記特許文献1に開示されている。
また、下記特許文献2には、軸受け部材が、外周部を形成する軸受け本体と、軸受け本体の内側に設けられた表面層とで構成されている軸受が記載されている。上記軸受け本体は黒鉛質カーボンやセラミック或いは金属を素材としている。また、表面層は、上記軸受け本体の素材とカーボンナノチューブとが混合した混合層である点が記載されている。
特開2005−207482
特開2003−239977
一般に、樹脂を用いた軸受については、摩擦係数を低減させることや、熱変形に対する耐久性を向上させることが求められている。これに対して、上記図5に示した特許文献1の軸受64では、軸受63の材質であるフッ素樹脂とカーボンナノチューブとの割合には言及していない。同様に、上記特許文献2のものでは、軸受け部材の表面層の材質である黒鉛質カーボン(又はセラミック或いは金属)とカーボンナノチューブとの割合には言及していない。このため、当業者と言えども摩擦係数の低減を促進したり或いは熱変形に対する耐久性を向上させることは困難であった。
本発明は、摩擦係数の低減を促進することができ、さらに、熱変形に対する耐久性を向上させることができる軸受およびこの軸受を有するポンプを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本第1発明における軸受は、熱変形温度が100℃以上でガラス転移温度が100℃以上の樹脂又は熱変形温度が100℃以上でガラス転移温度を持たない樹脂を少なくとも1種類含む基材を用い、前記基材を20質量%以上含み、直径1μm以上の繊維を10質量%以上含み、カーボンナノフィラーを5質量%以上含み、前記繊維とカーボンナノフィラーとの合計量を80質量%以下にした材料を摺動材に用いたものである。
これによると、基材は熱変形温度とガラス転移温度とがそれぞれ100℃以上の樹脂又は熱変形温度が100℃以上で且つガラス転移温度を持たない樹脂を含有しているため、摺動材が熱変形を起こすまでの耐久時間が長くなり、摺動材の熱変形に対する耐久性が良好になる。
また、カーボンナノフィラーは熱伝導性が良好であり潤滑性もあるため、摺動材の温度上昇が抑制され、摺動材の摩擦係数が低下する。
また、直径1μm以上の繊維が10質量%以上含まれることで、基材の樹脂の強度が強化される。
また、直径1μm以上の繊維が10質量%以上含まれることで、基材の樹脂の強度が強化される。
また、基材の樹脂は添加物(繊維、カーボンナノフィラー)のバインダーとしての役割も果たしており、基材が20質量%以上含まれることで、摺動中に、摺動材に割れや欠け或いは上記添加物の脱落が起こり難くなる。
また、本第2発明における軸受は、基材がポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリベンゾイミダゾール樹脂の少なくともいずれか1つを含み、前記繊維としてカーボン繊維を15〜35質量%含み、カーボンナノフィラーを10〜25質量%含むものである。
また、本第3発明における軸受は、固体潤滑材を2〜20質量%含み、前記繊維とカーボンナノフィラーと固体潤滑材との合計量を80質量%以下にしたものである。
これによると、固体潤滑材は潤滑性が良好であるため、摺動後の摩擦係数が低下し、且つ、水かけ後の摩擦係数も安定化する。尚、このような効果は固体潤滑材が2質量%未満では薄れてしまう。また、固体潤滑材が20質量%を超えると、基材の樹脂の強度が低下して摩擦特性が不安定になってしまうため、固体潤滑材を2〜20質量%の範囲にすることで、摩擦特性が安定する。
これによると、固体潤滑材は潤滑性が良好であるため、摺動後の摩擦係数が低下し、且つ、水かけ後の摩擦係数も安定化する。尚、このような効果は固体潤滑材が2質量%未満では薄れてしまう。また、固体潤滑材が20質量%を超えると、基材の樹脂の強度が低下して摩擦特性が不安定になってしまうため、固体潤滑材を2〜20質量%の範囲にすることで、摩擦特性が安定する。
また、本第4発明における軸受は、固体潤滑材がポリテトラフルオロエチレンであるものである。
これによると、ポリテトラフルオロエチレンは特に潤滑性が良好であるため、摩擦係数が低下する。
これによると、ポリテトラフルオロエチレンは特に潤滑性が良好であるため、摩擦係数が低下する。
また、本第5発明における軸受は、固体潤滑材がグラファイトであり、グラファイトを5〜20質量%含むものである。
これによると、グラファイトは潤滑性が良好であるため、摩擦係数が低下する。尚、このような効果は5質量%未満ではやや薄れてしまうため、5質量%以上にすることが望ましい。
これによると、グラファイトは潤滑性が良好であるため、摩擦係数が低下する。尚、このような効果は5質量%未満ではやや薄れてしまうため、5質量%以上にすることが望ましい。
また、本第6発明は、上記第1発明から第5発明のいずれか1項に記載の軸受を有するポンプであって、
羽根車を回転駆動する主軸が軸受によって回転自在に支持されているものである。
羽根車を回転駆動する主軸が軸受によって回転自在に支持されているものである。
これによると、摩擦係数が小さく、熱変形に対する耐久性のある軸受を備えたポンプを実現できる。
また、本第7発明におけるポンプは、羽根車が回転して水を吸い上げる排水運転と、羽根車が回転しているが水を吸い上げない気中運転との少なくとも2つの運転パターンで運転できるものである。
また、本第7発明におけるポンプは、羽根車が回転して水を吸い上げる排水運転と、羽根車が回転しているが水を吸い上げない気中運転との少なくとも2つの運転パターンで運転できるものである。
これによると、吸水位が低い時に気中運転を行い、その際には、軸受がドライ状態で摺動し、排水運転開始時に突然に水が侵入して温度が急激に変動したり水に混入した固形物が侵入するといった過酷な条件で使用される先行待機型のポンプにおいても、摩擦係数が小さく、熱変形に対する耐久性のある軸受を備えたポンプを実現できる。
以上のように、本発明によると、摺動材が熱変形を起こすまでの耐久時間が長くなり、摺動材の熱変形に対する耐久性が良好になる。また、摺動材の摩擦係数の低下を促進することができる。さらに、基材の樹脂の強度が強化され放熱性も向上する。また、基材を20質量%以上含むことで、摺動中に、摺動材に割れや欠け或いは添加物の脱落が起こり難くなる。
以下、本発明における第1の実施の形態を図面を参照して説明する。
軸受を有するポンプとしては、例えば図1〜図3に示すように、先行待機運転が可能な立軸斜流ポンプ1がある。このポンプ1のポンプケーシング2の下端には吸込口3が形成されている。ポンプケーシング2内には回転自在な主軸4が挿通されており、主軸4の下端に羽根車5が設けられている。上記主軸4は上下複数の軸受11によって回転自在に支持されている。これら軸受11はそれぞれ、ポンプケーシング2内に固定された円筒状の固定部材6に設けられている。また、上記吸込口3に空気を吸気する吸気管14が設けられ、この吸気管14は気水切替装置10(弁等)によって開閉される。尚、上記立軸斜流ポンプ1は、羽根車5が回転してピット32内の水を吸い上げる排水運転と、羽根車5が回転しているが水を吸い上げない気中運転との少なくとも2つの運転パターンで運転できる。
軸受を有するポンプとしては、例えば図1〜図3に示すように、先行待機運転が可能な立軸斜流ポンプ1がある。このポンプ1のポンプケーシング2の下端には吸込口3が形成されている。ポンプケーシング2内には回転自在な主軸4が挿通されており、主軸4の下端に羽根車5が設けられている。上記主軸4は上下複数の軸受11によって回転自在に支持されている。これら軸受11はそれぞれ、ポンプケーシング2内に固定された円筒状の固定部材6に設けられている。また、上記吸込口3に空気を吸気する吸気管14が設けられ、この吸気管14は気水切替装置10(弁等)によって開閉される。尚、上記立軸斜流ポンプ1は、羽根車5が回転してピット32内の水を吸い上げる排水運転と、羽根車5が回転しているが水を吸い上げない気中運転との少なくとも2つの運転パターンで運転できる。
尚、前記のようなポンプ1では、軸受11は、気中運転時においてドライ状態で摺動し、排水運転開始時に突然に水が侵入して温度が急激に変動したり水に混入した固形物が侵入するといった過酷な条件で使用される。
上記軸受11は、主軸4を回転自在に保持する円筒状の軸受体15と、軸受体15の径方向外側に配置された円筒状のハウジング16とを有している。軸受体15はハウジング16に嵌め込まれており、軸受体15とハウジング16との間には円筒状のゴム製の緩衝部材17が設けられている。
上記軸受体15は、金属製の円筒状のシェル21と、シェル21の内周側に嵌め込まれて一体的に取付けられた円筒状の固定側摺接体20(摺動材の一例)とで構成されている。ハウジング16は固定部材6に設けられている。ハウジング16のフランジ部16aは、固定部材6と、軸受体15の上方を覆うカバー部材25との間に挟まれており、複数のボルト26によってカバー部材25と共に固定部材6に取付け固定されている。
また、シェル21の鍔部21aとカバー部材25との間には一方の滑り板22aが介在し、さらに、上記鍔部21aとハウジング16との間には他方の滑り板22bが介在している。
また、主軸4には円筒状のスリーブ29が外嵌され、スリーブ29の外周部には円筒状の軸側摺接部30が形成されている。固定側摺接体20は、軸側摺接部30の周囲に配置され、軸側摺接部30に摺接する。
これによると、主軸4を回転させることにより、羽根車5が回転するとともに、主軸4と一体に軸側摺接部30が回転し、軸側摺接部30と固定側摺接体20とが摺接する。
ピット32内の水位33が排水開始水位Aよりも低い場合、気水切替装置10で吸気管14を開き、吸気管14からポンプケーシング2内に吸気することにより、気中運転を行うことができる。気中運転を行っている場合、上記軸受11は無注水のドライ状態で使用されている。
ピット32内の水位33が排水開始水位Aよりも低い場合、気水切替装置10で吸気管14を開き、吸気管14からポンプケーシング2内に吸気することにより、気中運転を行うことができる。気中運転を行っている場合、上記軸受11は無注水のドライ状態で使用されている。
また、ピット32内の水位33が排水開始水位Aに達すると、気水切替装置10で吸気管14を閉じて吸気管14からポンプケーシング2内への吸気を遮断することにより、排水運転を行うことができる。排水運転を行っている場合、上記軸受11は、水没し、水によって潤滑される注水状態で使用される。尚、ここでは、前記2つの運転パターンを切り替える気水切替方式の先行待機運転ポンプについて説明しているが、水と空気の両方を吸い込んで排水する運転パターン(排水運転の一例)でも運転を行う気水混合方式の先行待機運転ポンプであっても同様である。
ここで、上記固定側摺接体20の材質を下記表1に示す。尚、下記表1において、実施例1〜実施例5が本発明における実施の形態のものであり、上記実施例1〜実施例5に対する比較例として比較例1〜比較例3を記載している。
また、上記表1中のカーボン繊維の物性および形状を下記表2に、カーボンナノファイバーの物性および形状を下記表3に示す。
また、摩擦特性の測定は下記のような条件で行った。
・試験装置:ジャーナル摩擦磨耗試験機
・軸受/スリーブ29の呼びサイズ:Φ30mm
・主軸4の周速度:3m/秒
・軸受面圧:3kgf/cm2
また、スラリー磨耗特性の測定は下記のような条件で行った。
・試験装置:スラリー試験装置
・軸受/スリーブ29の呼びサイズ:Φ30mm
・運転時間:8号珪砂混合水(1000ppm)中で100時間
・回転速度:3560rpm
・主軸4の周速度:5.7m/秒
尚、上記表1中の組成の欄の数値の単位は質量%であるが、重量%でもよく、この場合、数値は変わらない。
・試験装置:ジャーナル摩擦磨耗試験機
・軸受/スリーブ29の呼びサイズ:Φ30mm
・主軸4の周速度:3m/秒
・軸受面圧:3kgf/cm2
また、スラリー磨耗特性の測定は下記のような条件で行った。
・試験装置:スラリー試験装置
・軸受/スリーブ29の呼びサイズ:Φ30mm
・運転時間:8号珪砂混合水(1000ppm)中で100時間
・回転速度:3560rpm
・主軸4の周速度:5.7m/秒
尚、上記表1中の組成の欄の数値の単位は質量%であるが、重量%でもよく、この場合、数値は変わらない。
また、上記表1中の摩擦特性については、ジャーナル摩擦磨耗試験機を用いて、軸受/スリーブの呼びサイズがΦ30mmの試験体にて、軸周速度が3.0m/秒、軸受面圧が3kgf/cm2で試験を実施した。
また、スラリー磨耗特性は、スラリー試験装置を用いて、軸受/スリーブの呼びサイズがΦ30mmの試験体にて、8号珪砂混合水(1000ppm)中で回転速度が3560回転/分、軸周速度が5.7m/秒の条件で100時間運転した後、固定側摺接体20の内径の増加量をmm単位で示したものである。尚、この値が2未満であれば○、2以上であれば×という判定をすることとした。
また、初期摩擦係数はドライ状態での値であり、試験開始直後は、表面粗さ等の材料組成以外の要因もあって異常値を示すことがあるので、試験開始30秒後の動摩擦係数を初期摩擦係数とし、0.3以下であれば○、0.3より大きい場合は×という判定をすることとした。
また、定常摩擦係数はドライ状態での値であり、試験開始後3分間(なじみ時間)が経過した時点から試験終了までの平均の摩擦係数であり、0.3以下であれば○、0.3より大きい場合は×という判定をすることとした。
また、ドライ状態での摩擦係数安定性は、試験開始後3分間(なじみ時間)を除いて、摺動中の摩擦係数の最大値と最小値との差を評価値として、その差が0.20以上で×、0.15以上0.20未満で△、0.05以上0.15未満で○、0.05未満で◎とした。
また、水かけ後の摩擦係数安定性は、水が乾いた後の、3分後と8分後との摩擦係数の差が、0.15以上で×、0.05以上0.15未満で△、0.02以上0.05未満で○、0.02未満で◎とした。
尚、前記各評価項目について、前記評価が△、○、◎のいずれかであれば当該項目について合格と判定し、×を不合格とした。そして、総合評価は、全ての評価項目が合格であれば総合評価も○、1つでも不合格があれば総合評価を×と判定している。
先ず、上記表1中に記載の比較例1〜比較例3について説明する。
比較例1の固定側摺接体20はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を基材樹脂とし、比較例2の固定側摺接体20はPPS(ポリフェニレンサルファイド)を基材樹脂とし、比較例3の固定側摺接体20はPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)を基材樹脂としている。
比較例1の固定側摺接体20はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を基材樹脂とし、比較例2の固定側摺接体20はPPS(ポリフェニレンサルファイド)を基材樹脂とし、比較例3の固定側摺接体20はPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)を基材樹脂としている。
上記比較例1のように基材樹脂にPTFEを用いたものでは、ドライ摩擦係数が高く且つ不安定である。これは、摩擦試験での摺動面の最高温度が100℃であるのに対して、PTFEの熱変形温度が55℃と低く、且つ、ガラス転移温度も20℃と低いためであると考えられる。
また、上記比較例2のように基材樹脂にPPSを用いたものでは、摩擦係数が高く且つ5分間で熱変形してしまう。これは、摩擦試験での摺動面の最高温度が180℃を越えており、PPSの熱変形温度は230℃と高いものの、ガラス転移温度が90℃と低いことが影響しているためであると考えられる。
また、上記比較例3のように基材樹脂にPEEKを用いたものでは、熱変形温度が152℃と高く、且つ、ガラス転移温度も143℃と高いため、上記比較例1,2に比べてかなり改善されるが、初期摩擦係数が0.35と高い。
次に、下記表1中に記載の実施例1〜実施例5について説明する。
(1)実施例1について
実施例1の固定側摺接体20は熱可塑性樹脂の一例であるPEEKを基材樹脂とし、このPEEKを60質量%、カーボン繊維(直径1μm以上の繊維の一例)を25質量%、カーボンナノファイバー(カーボンナノフィラーの一例)を15質量%含んでいる。
(1)実施例1について
実施例1の固定側摺接体20は熱可塑性樹脂の一例であるPEEKを基材樹脂とし、このPEEKを60質量%、カーボン繊維(直径1μm以上の繊維の一例)を25質量%、カーボンナノファイバー(カーボンナノフィラーの一例)を15質量%含んでいる。
これによると、基材樹脂の熱変形温度が152℃(≧100℃)で且つガラス転移温度が143℃(≧100℃)であるため、熱変形を起こすまでの耐久時間が比較例2よりも長くなり、これにより、固定側摺接体20の熱変形に対する耐久性が良好になる。
また、カーボンナノファイバーは熱伝導性が良好であり潤滑性もあるため、カーボンナノファイバーを15質量%(≧5質量%)含むことによって、摩擦係数が比較例1〜比較例3に比べて低下する。また、軸受11をドライ状態で使用している際に発生する摩擦熱を十分に放散させることができる。尚、本実施例1と同程度の摩擦係数を得るためには、カーボンナノファイバーが5質量%以上必要である。
また、直径1μm以上のカーボン繊維が25質量%(≧10質量%)含まれることで、基材樹脂の強度が強化され放熱性も向上する。
また、基材樹脂は添加物(カーボン繊維、カーボンナノファイバー)のバインダーとしての役割も果たしており、基材樹脂が60質量%(≧20質量%)含まれることで、摺動中に、固定側摺接体20に割れや欠け或いは上記添加物の脱落が起こり難くなる。
また、基材樹脂は添加物(カーボン繊維、カーボンナノファイバー)のバインダーとしての役割も果たしており、基材樹脂が60質量%(≧20質量%)含まれることで、摺動中に、固定側摺接体20に割れや欠け或いは上記添加物の脱落が起こり難くなる。
(2)実施例2について
実施例2の固定側摺接体20は上記実施例1のものにPTFE(固体潤滑材の一例)を5質量%加えるとともに、基材樹脂のPEEKを55質量%に減らしたものである。
実施例2の固定側摺接体20は上記実施例1のものにPTFE(固体潤滑材の一例)を5質量%加えるとともに、基材樹脂のPEEKを55質量%に減らしたものである。
これによると、PTFEは潤滑性が良好であるため、定常摩擦係数を上記実施例1よりも低下させることができる。そして、摺動面の最高温度を前記実施例1の150℃から、PEEKのガラス転移温度143℃より低い119℃に低下させることができている。また、水かけ後の摩擦係数を安定化させることも可能である。
尚、PTFEが2質量%未満になると、上記のような効果は薄れるため、2質量%以上必要である。但し、PTFEが20質量%を超えると基材樹脂の強度が低下して摩擦係数が不安定になるため、20質量%以下に抑える必要がある。
その他の効果は上記実施例1と同様である。
(3)実施例3について
実施例3の固定側摺接体20は上記実施例1のものにグラファイト(固体潤滑材の一例)を15質量%加えるとともに、基材樹脂のPEEKを45質量%に減らし、カーボン繊維とカーボンナノファイバーとグラファイトとの合計を55質量%(≦80質量%)にしたものである。
(3)実施例3について
実施例3の固定側摺接体20は上記実施例1のものにグラファイト(固体潤滑材の一例)を15質量%加えるとともに、基材樹脂のPEEKを45質量%に減らし、カーボン繊維とカーボンナノファイバーとグラファイトとの合計を55質量%(≦80質量%)にしたものである。
これによると、グラファイトは潤滑性が良好であるため、初期の摩擦係数と定常摩擦係数とをそれぞれ上記実施例1よりも低下させることができる。尚、グラファイトが5質量%未満になると、上記のような効果がやや薄れるため、5質量%以上加えることが望ましい。また、前記実施例2のPTFEと同様に、グラファイトが20質量%を超えると基材の強度が低下して摩擦係数が不安定になるため、20質量%以下に抑える必要がある。
その他の効果は上記実施例1と同様である。
(4)実施例4について
実施例4の固定側摺接体20は、上記実施例1の基材樹脂を熱可塑性樹脂の一例であるPBI(ポリベンゾイミダゾール)に変えたものである。
(4)実施例4について
実施例4の固定側摺接体20は、上記実施例1の基材樹脂を熱可塑性樹脂の一例であるPBI(ポリベンゾイミダゾール)に変えたものである。
これによると、基材樹脂の熱変形温度が435℃(≧100℃)で且つガラス転移温度が427℃(≧100℃)であるため、熱変形を起こすまでの耐久時間が比較例2よりも長くなり、これにより、固定側摺接体20の熱変形に対する耐久性が良好になる。
また、この構成による試験の摺動面の最高温度は193℃であり、PBIのガラス転移温度427℃より低い値に抑えることができる。
その他の効果は上記実施例1とほぼ同様である。
その他の効果は上記実施例1とほぼ同様である。
(5)実施例5について
実施例5の固定側摺接体20は、上記実施例1の基材樹脂を熱可塑性樹脂の一例であるPI(ポリイミド)に変えたものである。
実施例5の固定側摺接体20は、上記実施例1の基材樹脂を熱可塑性樹脂の一例であるPI(ポリイミド)に変えたものである。
これによると、基材樹脂の熱変形温度が238℃(≧100℃)で且つガラス転移温度が250℃(≧100℃)であるため、熱変形を起こすまでの耐久時間が比較例2よりも長くなる。
また、この構成による試験の摺動面の最高温度は173℃であり、PIのガラス転移温度250℃より低い値に抑えることができる。
尚、下記表1の最下欄に付記された参考例は、PEEKとPBIとを混合した基材樹脂を用いたものであり、カーボン繊維の代わりにRBCを含み、固体潤滑材としてBNを含んでいる。
尚、下記表1の最下欄に付記された参考例は、PEEKとPBIとを混合した基材樹脂を用いたものであり、カーボン繊維の代わりにRBCを含み、固体潤滑材としてBNを含んでいる。
これによると、複数種類の樹脂を混合した基材を用いても、上記実施例1〜実施例5とほぼ同等な効果を得ることが可能である。
上記実施例1〜実施例3では、基材樹脂の熱変形温度が152℃で且つガラス転移温度が143℃であるが、熱変形温度およびガラス転移温度がそれぞれ100℃以上の熱可塑性樹脂であればよい。上記実施例4では、基材樹脂の熱変形温度が435℃で且つガラス転移温度が427℃であるが、熱変形温度およびガラス転移温度がそれぞれ100℃以上の熱可塑性樹脂であればよい。尚、このとき、摺動面の最高温度が基材樹脂の熱変形温度より低くなる条件で使用することが望ましい。上記実施例5では、基材樹脂の熱変形温度が238℃で且つガラス転移温度が250℃であるが、熱変形温度およびガラス転移温度がそれぞれ100℃以上の熱可塑性樹脂であればよい。そして、摺動面の最高温度が基材樹脂の熱変形温度およびガラス転移温度より低くなる条件で使用することが望ましい。尚、上記のように熱変形温度およびガラス転移温度がそれぞれ100℃以上の熱可塑性樹脂としては、例えば下記表4(a)に示すものがあり、これらのものを使用してもよい。
上記実施例1〜実施例3では、基材樹脂の熱変形温度が152℃で且つガラス転移温度が143℃であるが、熱変形温度およびガラス転移温度がそれぞれ100℃以上の熱可塑性樹脂であればよい。上記実施例4では、基材樹脂の熱変形温度が435℃で且つガラス転移温度が427℃であるが、熱変形温度およびガラス転移温度がそれぞれ100℃以上の熱可塑性樹脂であればよい。尚、このとき、摺動面の最高温度が基材樹脂の熱変形温度より低くなる条件で使用することが望ましい。上記実施例5では、基材樹脂の熱変形温度が238℃で且つガラス転移温度が250℃であるが、熱変形温度およびガラス転移温度がそれぞれ100℃以上の熱可塑性樹脂であればよい。そして、摺動面の最高温度が基材樹脂の熱変形温度およびガラス転移温度より低くなる条件で使用することが望ましい。尚、上記のように熱変形温度およびガラス転移温度がそれぞれ100℃以上の熱可塑性樹脂としては、例えば下記表4(a)に示すものがあり、これらのものを使用してもよい。
上記実施例4では、基材樹脂としてPBIを60質量%含んでいるが、20質量%以上含んでいればよい。尚、基材樹脂に適度な粘りを与え、所定量の添加物を含ませるためには、40〜65質量%の範囲とすることが望ましい。
上記実施例5では、基材樹脂としてPIを60質量%含んでいるが、20質量%以上含んでいればよい。尚、基材樹脂に適度な粘りを与え、所定量の添加物を含ませるためには、40〜65質量%の範囲とすることが望ましい。
上記実施例1〜実施例5では、カーボン繊維を25質量%含んでいるが、10質量%以上(好ましくは15〜35質量%)含んでいればよい。
上記実施例1〜実施例5では、カーボンナノファイバーを15質量%含んでいるが、5質量%以上(好ましくは10〜25質量%)含んでいればよい。
上記実施例1〜実施例5では、カーボンナノファイバーを15質量%含んでいるが、5質量%以上(好ましくは10〜25質量%)含んでいればよい。
上記実施例1,2,4,5では、カーボン繊維とカーボンナノファイバーとの合計を40質量%にしているが、80質量%以下であればよい。
上記実施例2では、PTFEを5質量%含んでいるが、PTFEを2〜20質量%含んでいればよい。
上記実施例2では、PTFEを5質量%含んでいるが、PTFEを2〜20質量%含んでいればよい。
上記実施例3では、グラファイトを15質量%含んでいるが、5〜20質量%含んでいればよい。また、カーボン繊維とカーボンナノファイバーとグラファイトとの合計を55質量%にしているが、80質量%以下であればよい。
尚、上記実施例2および実施例3では、固体潤滑剤の一例としてPTFE又はグラファイトを用いたが、その他の固体潤滑剤として、窒化ホウ素、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、二硫化チタン、二硫化ニオブ、ダイヤモンド、フッ化カルシウム、フッ化バリウムのいずれか1種類又は複数種類を用いてもよい。
上記実施例1〜実施例5では、カーボンナノフィラーの一例としてカーボンナノファイバーを用いたが、カーボンナノチューブやカーボンナノホーン、カーボンフラーレンなどを用いてもよい。また、繊維としてカーボン繊維を用いたが、直径1〜200μmのガラス繊維やSiC繊維などを用いてもよい。
上記実施例1〜実施例5では、熱変形温度およびガラス転移温度がそれぞれ100℃以上の熱可塑性樹脂を基材樹脂に用いたが、熱変形温度が100℃以上で且つガラス転移温度を持たない熱硬化性樹脂を基材樹脂に用いてもよい。このような熱硬化性樹脂としては、例えば上記表4(b)に示すものがあり、これらのものを使用してもよい。
上記第1の実施の形態では、図2に示すように、摺動材の一例として固定側摺接体20を上記表1の実施例1〜実施例5に記載された材質にしているが、摺動材の一例として軸側摺接部30を実施例1〜実施例5に記載された材質にしてもよい。また、固定側摺接体20と軸側摺接部30との両者を実施例1〜実施例5に記載された材質にしてもよい。
また、上記第1の実施の形態では、図2に示すように、軸側摺接部30をスリーブ29に形成しているが、軸側摺接部30を形成せず、スリーブ29を固定側摺接体20に摺接させてもよい。この場合、摺動材の一例としてスリーブ29を実施例1〜実施例5に記載された材質にしてもよい。
上記第1の実施の形態では、図3に示すように、固定側摺接体20が円筒状に形成されているが、第2の実施の形態として、図4に示すように、固定側摺接体20が周方向に所定間隔をあけて配置された複数のセグメント20aからなるものであってもよい。
上記各実施の形態では、先行待機運転可能に構成された立軸斜流ポンプ1に設けられた軸受11を挙げたが、立軸斜流ポンプ1に限定されるものではなく、他の形式のポンプに設けられた軸受であってもよい。また、ポンプ1以外の機器に使用される軸受であってもよい。
1 ポンプ
4 主軸
5 羽根車
11 軸受
20 固定側摺接体(摺動材)
4 主軸
5 羽根車
11 軸受
20 固定側摺接体(摺動材)
Claims (7)
- 熱変形温度が100℃以上でガラス転移温度が100℃以上の樹脂又は熱変形温度が100℃以上でガラス転移温度を持たない樹脂を少なくとも1種類含む基材を用い、前記基材を20質量%以上含み、直径1μm以上の繊維を10質量%以上含み、カーボンナノフィラーを5質量%以上含み、前記繊維とカーボンナノフィラーとの合計量を80質量%以下にした材料を摺動材に用いたことを特徴とする軸受。
- 基材がポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリベンゾイミダゾール樹脂の少なくともいずれか1つを含み、前記繊維としてカーボン繊維を15〜35質量%含み、カーボンナノフィラーを10〜25質量%含むことを特徴とする請求項1に記載の軸受。
- 固体潤滑材を2〜20質量%含み、前記繊維とカーボンナノフィラーと固体潤滑材との合計量を80質量%以下にしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の軸受。
- 固体潤滑材がポリテトラフルオロエチレンであることを特徴とする請求項3に記載の軸受。
- 固体潤滑材がグラファイトであり、グラファイトを5〜20質量%含むことを特徴とする請求項3に記載の軸受。
- 上記請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の軸受を有するポンプであって、
羽根車を回転駆動する主軸が軸受によって回転自在に支持されていることを特徴とするポンプ。 - 羽根車が回転して水を吸い上げる排水運転と、羽根車が回転しているが水を吸い上げない気中運転との少なくとも2つの運転パターンで運転できることを特徴とする請求項6に記載のポンプ。
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