JP2009222208A - 軸受および軸受を有するポンプ - Google Patents
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Abstract
【課題】摩擦係数が低減でき、熱変形に対する耐久性が良好な軸受を提供する。
【解決手段】ポンプの軸受11の固定側摺接体20の材質は、熱変形温度が100℃以上で且つガラス転移温度を持たない樹脂であるフェノールからなる基材と、RBCとを含み、基材が20質量%以上含まれ、RBCが10質量%以上含まれている。
【選択図】図2
【解決手段】ポンプの軸受11の固定側摺接体20の材質は、熱変形温度が100℃以上で且つガラス転移温度を持たない樹脂であるフェノールからなる基材と、RBCとを含み、基材が20質量%以上含まれ、RBCが10質量%以上含まれている。
【選択図】図2
Description
本発明は、軸受、および、この軸受を有するポンプに関する。
従来、図5に示すように、スリーブ50と、スリーブ50に挿通された軸51とで構成される水中用のスリーブ軸受52がある(下記特許文献1参照)。軸51の材質には、ステンレス鋼系の合金が用いられている。
スリーブ50は、RBCの微粉末を合成樹脂中に均一に分散した合成樹脂組成物で作られている。合成樹脂としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂が使用されている。RBC:合成樹脂の質量比は、10〜70:90〜30である。
これによると、スリーブ軸受52は、水中用であるため、常時水中に水没した状態で使用されている。したがって、スリーブ50に発生した摩擦熱は周囲の水によって奪われるため、スリーブ50が熱変形を起こす心配はなかった。
また、下記特許文献2には、ミシンの摺動部位などに用いる摺動部材であって、熱可塑性樹脂にRBCを含有させてなる摺動部材用組成物が開示されている。熱可塑性樹脂としてはポリアセタールを用い、RBC:樹脂の質量比が10〜50:90〜50となるように配合されている。
特開2004−3611
特開2002−30222
しかしながら上記図5に示した従来形式では、スリーブ軸受52を無注水のドライ状態で使用した場合、摩擦熱よってスリーブ50が熱変形を起こし易いといった虞れがある。
また、上記特許文献2に記載された従来形式では、摺動部材は空気中で使用するものであるが、ポリアセタールを用いていることから、摺動部材に加わる圧力や異物混入等の使用条件として、過酷なものは想定されていないと推察される。従って、摺動条件がより過酷な条件下で使用する場合、その耐久性の点で問題を生じる虞れがあった。
また、上記特許文献2に記載された従来形式では、摺動部材は空気中で使用するものであるが、ポリアセタールを用いていることから、摺動部材に加わる圧力や異物混入等の使用条件として、過酷なものは想定されていないと推察される。従って、摺動条件がより過酷な条件下で使用する場合、その耐久性の点で問題を生じる虞れがあった。
本発明は、摩擦係数が低減でき、さらに、熱変形に対する耐久性が良好な軸受および軸受を有するポンプを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本第1発明における軸受は、熱変形温度が100℃以上でガラス転移温度が100℃以上の樹脂又は熱変形温度が100℃以上でガラス転移温度を持たない樹脂を少なくとも1種類含む基材を用い、前記基材を20質量%以上含み、RBセラミックスを10質量%以上含む材料を摺動材に用いたものである。
これによると、基材は熱変形温度とガラス転移温度とがそれぞれ100℃以上の樹脂又は熱変形温度が100℃以上で且つガラス転移温度を持たない樹脂を含有しているため、摺動材が熱変形を起こすまでの耐久時間が長くなり、摺動材の熱変形に対する耐久性が良好になる。
また、RBセラミックスを含むことにより、摺動材の摩擦係数が低下する。
また、基材の樹脂は添加物(RBセラミックス)のバインダーとしての役割も果たしており、基材が20質量%以上含まれることで、摺動中に、摺動材に割れや欠け或いは上記添加物の脱落が起こり難くなる。
また、基材の樹脂は添加物(RBセラミックス)のバインダーとしての役割も果たしており、基材が20質量%以上含まれることで、摺動中に、摺動材に割れや欠け或いは上記添加物の脱落が起こり難くなる。
また、本第2発明における軸受は、カーボンナノフィラーを5質量%以上含むものである。
これによると、カーボンナノフィラーは熱伝導性が良好であり潤滑性もあるため、摺動材の温度上昇が抑制され、摩擦係数が低下する。
これによると、カーボンナノフィラーは熱伝導性が良好であり潤滑性もあるため、摺動材の温度上昇が抑制され、摩擦係数が低下する。
また、本第3発明における軸受は、固体潤滑材を2〜20質量%含むものである。
これによると、固体潤滑材は潤滑性が良好であるため、摩擦係数が低下し、且つ、水かけ後の摩擦係数も安定化する。尚、このような効果は固体潤滑材が2質量%未満では薄れてしまう。また、固体潤滑材が20質量%を超えると、基材の樹脂の強度が低下して摩擦特性が不安定になってしまうため、固体潤滑材を2〜20質量%の範囲にすることで、摩擦特性が安定する。
これによると、固体潤滑材は潤滑性が良好であるため、摩擦係数が低下し、且つ、水かけ後の摩擦係数も安定化する。尚、このような効果は固体潤滑材が2質量%未満では薄れてしまう。また、固体潤滑材が20質量%を超えると、基材の樹脂の強度が低下して摩擦特性が不安定になってしまうため、固体潤滑材を2〜20質量%の範囲にすることで、摩擦特性が安定する。
また、本第4発明における軸受は、固体潤滑材がポリテトラフルオロエチレン又は窒化ホウ素であるものである。
これによると、ポリテトラフルオロエチレンと窒化ホウ素はそれぞれ潤滑性が良好であるため、摩擦係数が低下する。
これによると、ポリテトラフルオロエチレンと窒化ホウ素はそれぞれ潤滑性が良好であるため、摩擦係数が低下する。
また、本第5発明における軸受は、基材を20質量%以上50質量%未満含むものである。
これによると、適度な粘りを持った摺動材となり、RBセラミックスや他の添加物を必要に応じて含有させることができる。
これによると、適度な粘りを持った摺動材となり、RBセラミックスや他の添加物を必要に応じて含有させることができる。
また、本第6発明における軸受は、直径1μm以上の繊維を10〜30質量%含むものである。
これによると、基材の樹脂の強度が強化される。
これによると、基材の樹脂の強度が強化される。
また、本第7発明における軸受は、基材がポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリベンゾイミダゾール樹脂の少なくともいずれか1つを含み、直径1μm以上の繊維としてカーボン繊維を含むものである。
これによると、カーボン繊維は熱伝導率が大きいので、放熱性が向上する。
また、本第8発明における軸受は、基材がポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリベンゾイミダゾール樹脂とを含み、RBセラミックスを20〜60質量%、ポリテトラフルオロエチレン又は窒化ホウ素を2〜20質量%含むものである。
また、本第8発明における軸受は、基材がポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリベンゾイミダゾール樹脂とを含み、RBセラミックスを20〜60質量%、ポリテトラフルオロエチレン又は窒化ホウ素を2〜20質量%含むものである。
また、本第9発明は、上記第1発明から第8発明のいずれか1項に記載の軸受を有するポンプであって、羽根車を回転駆動する主軸が軸受によって回転自在に支持されているものである。
これによると、摩擦係数が小さく、熱変形に対する耐久性のある軸受を備えたポンプを実現できる。
また、本第10発明におけるポンプは、羽根車が回転して水を吸い上げる排水運転と、羽根車が回転しているが水を吸い上げない気中運転との少なくとも2つの運転パターンで運転できるものである。
また、本第10発明におけるポンプは、羽根車が回転して水を吸い上げる排水運転と、羽根車が回転しているが水を吸い上げない気中運転との少なくとも2つの運転パターンで運転できるものである。
これによると、吸水位が低い時に気中運転を行い、その際には、軸受がドライ状態で摺動し、排水運転開始時に突然に水が侵入して温度が急激に変動したり水に混入した固形物が侵入するといった過酷な条件で使用される先行待機型のポンプにおいても、摩擦係数が小さく、熱変形に対する耐久性のある軸受を備えたポンプを実現できる。
以上のように、本発明によると、摺動材が熱変形を起こすまでの耐久時間が長くなり、摺動材の熱変形に対する耐久性が良好になる。また、RBセラミックスを含むことにより、摺動材の摩擦係数が低下する。
また、基材が20質量%以上含まれることで、摺動中に、摺動材に割れや欠け或いは添加物の脱落が起こり難くなる。
以下、本発明における第1の実施の形態を図面を参照して説明する。
軸受を有するポンプとしては、例えば図1〜図3に示すように、先行待機運転が可能な立軸斜流ポンプ1がある。このポンプ1のポンプケーシング2の下端には吸込口3が形成されている。ポンプケーシング2内には回転自在な主軸4が挿通されており、主軸4の下端に羽根車5が設けられている。上記主軸4は上下複数の軸受11によって回転自在に支持されている。これら軸受11はそれぞれ、ポンプケーシング2内に固定された円筒状の固定部材6に設けられている。また、上記吸込口3に空気を吸気する吸気管14が設けられ、この吸気管14は気水切替装置10(弁等)によって開閉される。尚、上記立軸斜流ポンプ1は、羽根車5が回転してピット32内の水を吸い上げる排水運転と、羽根車5が回転しているが水を吸い上げない気中運転との少なくとも2つの運転パターンで運転できるものである。
軸受を有するポンプとしては、例えば図1〜図3に示すように、先行待機運転が可能な立軸斜流ポンプ1がある。このポンプ1のポンプケーシング2の下端には吸込口3が形成されている。ポンプケーシング2内には回転自在な主軸4が挿通されており、主軸4の下端に羽根車5が設けられている。上記主軸4は上下複数の軸受11によって回転自在に支持されている。これら軸受11はそれぞれ、ポンプケーシング2内に固定された円筒状の固定部材6に設けられている。また、上記吸込口3に空気を吸気する吸気管14が設けられ、この吸気管14は気水切替装置10(弁等)によって開閉される。尚、上記立軸斜流ポンプ1は、羽根車5が回転してピット32内の水を吸い上げる排水運転と、羽根車5が回転しているが水を吸い上げない気中運転との少なくとも2つの運転パターンで運転できるものである。
尚、前記のようなポンプ1では、軸受11は、気中運転時においてドライ状態で摺動し、排水運転開始時に突然に水が侵入して温度が急激に変動したり水に混入した固形物が侵入するといった過酷な条件で使用される。
上記軸受11は、主軸4を回転自在に保持する円筒状の軸受体15と、軸受体15の径方向外側に配置された円筒状のハウジング16とを有している。軸受体15はハウジング16に嵌め込まれており、軸受体15とハウジング16との間には円筒状のゴム製の緩衝部材17が設けられている。
上記軸受体15は、金属製の円筒状のシェル21と、シェル21の内周側に嵌め込まれて一体的に取付けられた円筒状の固定側摺接体20(摺動材の一例)とで構成されている。ハウジング16は固定部材6に設けられている。ハウジング16のフランジ部16aは、固定部材6と、軸受体15の上方を覆うカバー部材25との間に挟まれており、複数のボルト26によってカバー部材25と共に固定部材6に取付け固定されている。
また、シェル21の鍔部21aとカバー部材25との間には一方の滑り板22aが介在し、さらに、上記鍔部21aとハウジング16との間には他方の滑り板22bが介在している。
また、主軸4には円筒状のスリーブ29が外嵌され、スリーブ29の外周部には円筒状の軸側摺接部30が形成されている。固定側摺接体20は、軸側摺接部30の周囲に配置され、軸側摺接部30に摺接する。
これによると、主軸4を回転させることにより、羽根車5が回転するとともに、主軸4と一体に軸側摺接部30が回転し、軸側摺接部30と固定側摺接体20とが摺接する。
ピット32内の水位33が排水開始水位Aよりも低い場合、気水切替装置10で吸気管14を開き、吸気管14からポンプケーシング2内に吸気することにより、気中運転を行うことができる。気中運転を行っている場合、上記軸受11は無注水のドライ状態で使用されている。
ピット32内の水位33が排水開始水位Aよりも低い場合、気水切替装置10で吸気管14を開き、吸気管14からポンプケーシング2内に吸気することにより、気中運転を行うことができる。気中運転を行っている場合、上記軸受11は無注水のドライ状態で使用されている。
また、ピット32内の水位33が排水開始水位Aに達すると、気水切替装置10で吸気管14を閉じて吸気管14からポンプケーシング2内への吸気を遮断することにより、排水運転を行うことができる。排水運転を行っている場合、上記軸受11は、水没し、水によって潤滑される注水状態で使用される。尚、ここでは、前記2つの運転パターンを切り替える気水切替方式の先行待機運転ポンプについて説明しているが、水と空気の両方を吸い込んで排水する運転パターン(排水運転の一例)でも運転を行う気水混合方式の先行待機運転ポンプであっても同様である。
ここで、上記固定側摺接体20の材質を下記表1に示す。尚、下記表1において、実施例1〜実施例7が本発明における実施の形態のものであり、上記実施例1〜実施例7に対する比較例として比較例1〜比較例3を記載している。
また、上記表1中のカーボン繊維の物性および形状を下記表2に、カーボンナノファイバーの物性および形状を下記表3に示す。
また、摩擦特性の測定は下記のような条件で行った。
・試験装置:ジャーナル摩擦磨耗試験機
・軸受/スリーブ29の呼びサイズ:Φ30mm
・主軸4の周速度:3m/秒
・軸受面圧:3kgf/cm2
また、スラリー磨耗特性の測定は下記のような条件で行った。
・試験装置:スラリー試験装置
・軸受/スリーブ29の呼びサイズ:Φ30mm
・運転時間:8号珪砂混合水(1000ppm)中で100時間
・回転速度:3560rpm
・主軸4の周速度:5.7m/秒
尚、上記表1中の組成の欄の数値の単位は質量%であるが、重量%でもよく、この場合、数値は変わらない。
・試験装置:ジャーナル摩擦磨耗試験機
・軸受/スリーブ29の呼びサイズ:Φ30mm
・主軸4の周速度:3m/秒
・軸受面圧:3kgf/cm2
また、スラリー磨耗特性の測定は下記のような条件で行った。
・試験装置:スラリー試験装置
・軸受/スリーブ29の呼びサイズ:Φ30mm
・運転時間:8号珪砂混合水(1000ppm)中で100時間
・回転速度:3560rpm
・主軸4の周速度:5.7m/秒
尚、上記表1中の組成の欄の数値の単位は質量%であるが、重量%でもよく、この場合、数値は変わらない。
また、上記表1中の摩擦特性については、ジャーナル摩擦磨耗試験機を用いて、軸受/スリーブの呼びサイズがΦ30mmの試験体にて、軸周速度が3.0m/秒、軸受面圧が3kgf/cm2で試験を実施した。
また、スラリー磨耗特性は、スラリー試験装置を用いて、軸受/スリーブの呼びサイズがΦ30mmの試験体にて、8号珪砂混合水(1000ppm)中で回転速度が3560回転/分、軸周速度が5.7m/秒の条件で100時間運転した後、固定側摺接体20の内径の増加量をmm単位で示したものである。尚、この値が2未満であれば○、2以上であれば×という判定をすることとした。
また、初期摩擦係数はドライ状態での値であり、試験開始直後は、表面粗さ等の材料組成以外の要因もあって異常値を示すことがあるので、試験開始30秒後の動摩擦係数を初期摩擦係数とし、0.3以下であれば○、0.3より大きい場合は×という判定をすることとした。
また、定常摩擦係数はドライ状態での値であり、試験開始後3分間(なじみ時間)が経過した時点から試験終了までの平均の摩擦係数であり、0.3以下であれば○、0.3より大きい場合は×という判定をすることとした。
また、ドライ状態での摩擦係数安定性は、試験開始後3分間(なじみ時間)を除いて、摺動中の摩擦係数の最大値と最小値との差を評価値として、その差が0.20以上で×、0.15以上0.20未満で△、0.05以上0.15未満で○、0.05未満で◎とした。
また、水かけ後の摩擦係数安定性は、水が乾いた後の、3分後と8分後との摩擦係数の差が、0.15以上で×、0.05以上0.15未満で△、0.02以上0.05未満で○、0.02未満で◎とした。
尚、前記各評価項目について、前記評価が△、○、◎のいずれかであれば当該項目について合格と判定し、×を不合格とした。そして、総合評価は、全ての評価項目が合格であれば総合評価も○、1つでも不合格があれば総合評価を×と判定している。また、総合評価◎は、全ての評価が○以上で且つ◎が2つの場合である。
先ず、上記表1中に記載の比較例1〜比較例3について説明する。
比較例1の固定側摺接体20はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を基材樹脂とし、比較例2の固定側摺接体20はPPS(ポリフェニレンサルファイド)を基材樹脂とし、比較例3の固定側摺接体20はPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)を基材樹脂としている。
比較例1の固定側摺接体20はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を基材樹脂とし、比較例2の固定側摺接体20はPPS(ポリフェニレンサルファイド)を基材樹脂とし、比較例3の固定側摺接体20はPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)を基材樹脂としている。
上記比較例1のように基材樹脂にPTFEを用いたものでは、ドライ摩擦係数が高く且つ不安定である。これは、摩擦試験での摺動面の最高温度が100℃になるのに対して、PTFEの熱変形温度が55℃と低く、且つ、ガラス転移温度も20℃と低いためであると考えられる。
また、上記比較例2のように基材樹脂にPPSを用いたものでは、摩擦係数が高く且つ5分間で熱変形してしまう。これは、摩擦試験での摺動面の最高温度が100℃を越えており、PPSの熱変形温度は230℃と高いものの、ガラス転移温度が90℃と低いことが影響しているためであると考えられる。
また、上記比較例3のように基材樹脂にPEEKを用いたものでは、熱変形温度が152℃と高く、且つ、ガラス転移温度も143℃と高いため、上記比較例1,2に比べてかなり改善されるが、初期摩擦係数が0.35と高い。
次に、上記表1中に記載の実施例1〜実施例7について説明する。
(1)実施例1について
実施例1の固定側摺接体20は、熱硬化性樹脂の一例であるフェノールを基材樹脂とし、このフェノールを25質量%、RBCを75質量%含んでいる。
(1)実施例1について
実施例1の固定側摺接体20は、熱硬化性樹脂の一例であるフェノールを基材樹脂とし、このフェノールを25質量%、RBCを75質量%含んでいる。
これによると、基材樹脂の熱変形温度が200℃(≧100℃)で且つガラス転移温度を持たないため、固定側摺接体20が熱変形を起こすまでの耐久時間が比較例2よりも長くなり、固定側摺接体20の熱変形に対する耐久性が良好になる。
また、RBCは摩擦係数が小さいため、RBCを含むことによって、固定側摺接体20の摩擦係数が低下する。尚、この効果はRBCが10質量%を下回ると薄れるため、10質量%以上必要である。
また、基材樹脂は添加物(RBC)のバインダーとしての役割も果たしており、基材樹脂が25質量%(≧20質量%)含まれることで、摺動中に、固定側摺接体20に割れや欠け或いは上記添加物の脱落が起こり難くなる。この構成による試験の摺動面の最高温度は127℃であり、基材樹脂であるフェノールの熱変形温度200℃以下に抑えることができている。
尚、上記表1中の最下欄に付記された参考例は、基材樹脂を0質量%にし且つRBCを100質量%にした場合を示しており、この場合、基材樹脂の粘りが無いため、スラリー磨耗特性が悪くなる。したがって、基材樹脂は20質量%以上必要である。
(2)実施例2について
実施例2の固定側摺接体20は熱可塑性樹脂の一例であるPEEKを基材樹脂とし、このPEEKを30質量%、RBCを50質量%、カーボンナノファイバー(カーボンナノフィラーの一例)を15質量%、PTFE(固体潤滑材の一例)を5質量%含んでいる。
実施例2の固定側摺接体20は熱可塑性樹脂の一例であるPEEKを基材樹脂とし、このPEEKを30質量%、RBCを50質量%、カーボンナノファイバー(カーボンナノフィラーの一例)を15質量%、PTFE(固体潤滑材の一例)を5質量%含んでいる。
これによると、基材樹脂の熱変形温度が152℃(≧100℃)で且つガラス転移温度が143℃(≧100℃)であるため、熱変形を起こすまでの耐久時間が比較例2よりも長くなり、固定側摺接体20の熱変形に対する耐久性が良好になる。
また、カーボンナノファイバーは熱伝導性が良好であり潤滑性もあるため、カーボンナノファイバーを15質量%(≧5質量%)含むことによって、摩擦係数が比較例1〜比較例3に比べて低下する。また、軸受11をドライ状態で使用している際に発生する摩擦熱を十分に放散させることができる。尚、このような効果はカーボンナノファイバーが5質量%未満になるとなくなるため、5質量%以上必要である。
また、カーボンナノファイバーが10質量%未満になると、PTFEを添加した方が良い結果を得ることができる。この場合、PTFEは2質量%以上必要であるが、PTFEが20質量%を超えると基材樹脂の強度が低下して摩擦特性が不安定になる。これにより、PTFEを2質量%〜20質量%の範囲内で加えるのが好適である。この構成による試験の摺動面の最高温度は65℃であり、基材樹脂であるPEEKのガラス転移温度143℃以下に抑えることができている。
(3)実施例3について
実施例3の固定側摺接体20は上記実施例2のものにカーボン繊維を15質量%加えたものである。
実施例3の固定側摺接体20は上記実施例2のものにカーボン繊維を15質量%加えたものである。
これによると、カーボン繊維を加えることにより、基材樹脂の強度が強化され放熱性も向上する。また、初期摩擦係数および摺動後摩擦係数は低く、さらに、ドライ摩擦係数安定性および水かけ後の摩擦係数の安定性も非常に優れている。且つ、スラリー磨耗特性も非常に優れており、各実施例の中で総合的に優れている。尚、このような効果はカーボン繊維が5質量%未満になるとなくなるため、5質量%以上必要である。また、カーボン繊維の直径は1μm以上であればよい。この構成による試験の摺動面の最高温度は80℃であり、基材樹脂であるPEEKのガラス転移温度143℃以下に抑えることができている。
(4)実施例4について
実施例4の固定側摺接体20は上記実施例2のものにカーボン繊維を15質量%加えたものであり、上記実施例3と同様な効果が得られる。この構成による試験の摺動面の最高温度は90℃であり、基材樹脂であるPEEKのガラス転移温度143℃以下に抑えることができている。
実施例4の固定側摺接体20は上記実施例2のものにカーボン繊維を15質量%加えたものであり、上記実施例3と同様な効果が得られる。この構成による試験の摺動面の最高温度は90℃であり、基材樹脂であるPEEKのガラス転移温度143℃以下に抑えることができている。
(5)実施例5について
実施例5の固定側摺接体20は、上記実施例3,4に比べて、RBCを15質量%まで減らし、その分、カーボン繊維を25質量%まで増やすとともにカーボンナノファイバーを15質量%まで増やしたものである。
実施例5の固定側摺接体20は、上記実施例3,4に比べて、RBCを15質量%まで減らし、その分、カーボン繊維を25質量%まで増やすとともにカーボンナノファイバーを15質量%まで増やしたものである。
これによると、RBCが上記実施例3,4に比べて少ないため、初期摩擦係数および摺動後摩擦係数が若干高くなっている。また、この構成による試験の摺動面の最高温度は138℃であり、基材樹脂であるPEEKのガラス転移温度143℃以下に抑えることができている。
(6)実施例6について
実施例6の固定側摺接体20は、基材樹脂を、上記実施例1のフェノールの代わりに、熱可塑性樹脂の一例であるPEEKとPBI(ポリベンゾイミダゾール)とを混合したものに変えている。PEEKとPBIとはそれぞれ22.5質量%ずつ含まれており、RBCを50質量%まで減らしている。また、固体潤滑材として、BNを5質量%加えている。
実施例6の固定側摺接体20は、基材樹脂を、上記実施例1のフェノールの代わりに、熱可塑性樹脂の一例であるPEEKとPBI(ポリベンゾイミダゾール)とを混合したものに変えている。PEEKとPBIとはそれぞれ22.5質量%ずつ含まれており、RBCを50質量%まで減らしている。また、固体潤滑材として、BNを5質量%加えている。
これによると、異なる2種類の樹脂を混合して基材樹脂としても、基材樹脂の熱変形温度が152℃以上で且つガラス転移温度が143℃以上になるため、固定側摺接体20の熱変形に対する耐久性を良好にすることができ、また、固定側摺接体20の摩擦係数を低下させることができる。この構成による試験の摺動面の最高温度は77℃であり、基材樹脂(PEEK+PBI)のガラス転移温度143℃以下に抑えることができている。
また、BNを加えることによって、固定側摺接体20の潤滑性と磨耗特性とが向上する。尚、このような効果を得るにはBNが2質量%以上必要であるが、20質量%を超えると固定側摺接体20が脆くなり、また、固定側摺接体20が相手方の軸側摺接部30を傷付け易くなる。したがって、BNを2〜20質量%の範囲内で加えるのが好適である。
尚、実施例6では固体潤滑材の一例としてBNを用いたが、BNの代わりにPTFEを用いてもよい。
(7)実施例7について
実施例7の固定側摺接体20は、上記実施例6と同様に、基材樹脂を、PEEKとPBIとの異なる2種類の材質で構成しているものである。PEEKは36質量%、PBIは9質量%含まれている。
(7)実施例7について
実施例7の固定側摺接体20は、上記実施例6と同様に、基材樹脂を、PEEKとPBIとの異なる2種類の材質で構成しているものである。PEEKは36質量%、PBIは9質量%含まれている。
これによると、粘りと潤滑性に優れたPEEKの含有量が多いため、上記実施例6よりも総合的に優れている。この構成による試験の摺動面の最高温度は69℃であり、基材樹脂(PEEK+PBI)のガラス転移温度143℃以下に抑えることができている。
尚、実施例7では固体潤滑材の一例としてBNを用いたが、BNの代わりにPTFEを用いてもよい。
上記実施例1では、基材樹脂の熱変形温度が200℃で且つガラス転移温度を持たないが、熱変形温度が100℃以上で且つガラス転移温度を持たない熱硬化性樹脂を基材樹脂に用いてもよい。このような熱硬化性樹脂としては、例えば下記表4(a)に示すものがあり、これらのものを使用してもよい。尚、上記実施例1で示したように、摺動面の最高温度が基材樹脂の熱変形温度より低くなる条件で使用することが望ましい。
上記実施例1では、基材樹脂の熱変形温度が200℃で且つガラス転移温度を持たないが、熱変形温度が100℃以上で且つガラス転移温度を持たない熱硬化性樹脂を基材樹脂に用いてもよい。このような熱硬化性樹脂としては、例えば下記表4(a)に示すものがあり、これらのものを使用してもよい。尚、上記実施例1で示したように、摺動面の最高温度が基材樹脂の熱変形温度より低くなる条件で使用することが望ましい。
上記実施例2〜実施例7では、基材樹脂の熱変形温度が152℃以上で且つガラス転移温度が143℃以上であるが、熱変形温度およびガラス転移温度がそれぞれ100℃以上の熱可塑性樹脂を基材樹脂に用いてもよい。このような熱可塑性樹脂としては、例えば下記表4(b)に示すものがあり、これらのものを使用してもよい。尚、上記実施例で示したように、摺動面の最高温度が基材樹脂の熱変形温度およびガラス転移温度より低くなる条件で使用することが望ましい。
上記実施例2〜実施例5では、基材樹脂としてPEEKをそれぞれ30質量%又は40質量%含んでいるが、20質量%以上含んでいればよく、好ましくは20質量%以上50質量%未満含むのがよい。
上記実施例6および実施例7では、基材樹脂としてPEEKとPBIとの混合物を45質量%含んでいるが、20質量%以上含んでいればよく、好ましくは20質量%以上50質量%未満含むのがよい。
尚、上記各実施例において、基材樹脂の含有量を20質量%以上50質量%未満にすることで、固定側摺接体20が適度な粘りを有し、RBセラミックスや他の添加物を必要に応じて含有させることができる。
上記実施例1〜実施例7では、RBCを15〜75質量%の範囲で含んでいるが、10質量%以上含んでいればよい。
上記実施例2〜実施例5では、カーボンナノファイバーを10質量%又は15質量%含んでいるが、5質量%以上含んでいればよい。
上記実施例2〜実施例5では、カーボンナノファイバーを10質量%又は15質量%含んでいるが、5質量%以上含んでいればよい。
上記実施例2〜実施例5では、PTFEを5質量%含んでいるが、2〜20質量%含んでいればよい。
上記実施例6および実施例7では、BNを5質量%含んでいるが、2〜20質量%含んでいればよい。また、BNの代わりにPTFEを2〜20質量%含んでもよい。
上記実施例6および実施例7では、BNを5質量%含んでいるが、2〜20質量%含んでいればよい。また、BNの代わりにPTFEを2〜20質量%含んでもよい。
上記実施例3〜実施例5では、カーボン繊維を15質量%又は25質量%含んでいるが、10〜30質量%含んでいればよい。
上記実施例6および実施例7では、RBCを50質量%含んでいるが、10質量%以上、好ましくは20〜60質量%含むのがよい。
上記実施例6および実施例7では、RBCを50質量%含んでいるが、10質量%以上、好ましくは20〜60質量%含むのがよい。
尚、上記実施例2〜実施例7では、固体潤滑剤の一例としてPTFE又はBNを用いたが、その他の固体潤滑剤として、グラファイト、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、二硫化チタン、二硫化ニオブ、ダイヤモンド、フッ化カルシウム、フッ化バリウムのいずれか又は複数を用いてもよい。
上記実施例2〜実施例5では、カーボンナノフィラーの一例としてカーボンナノファイバーを用いたが、カーボンナノチューブやカーボンナノホーン、カーボンフラーレンなどを用いてもよい。また、繊維としてカーボン繊維を用いたが、直径1〜200μmのガラス繊維やSiC繊維などを用いてもよい。
上記第1の実施の形態では、図2に示すように、摺動材の一例として固定側摺接体20を上記表1の実施例1〜実施例7に記載された材質にしているが、摺動材の一例として軸側摺接部30を実施例1〜実施例7に記載された材質にしてもよい。また、固定側摺接体20と軸側摺接部30との両者を実施例1〜実施例7に記載された材質にしてもよい。
また、上記第1の実施の形態では、図2に示すように、軸側摺接部30をスリーブ29に形成しているが、軸側摺接部30を形成せず、スリーブ29を固定側摺接体20に摺接させてもよい。この場合、摺動材の一例としてスリーブ29を実施例1〜実施例7に記載された材質にしてもよい。
上記第1の実施の形態では、図3に示すように、固定側摺接体20が円筒状に形成されているが、第2の実施の形態として、図4に示すように、固定側摺接体20が周方向に所定間隔をあけて配置された複数のセグメント20aからなるものであってもよい。
上記各実施の形態では、先行待機運転可能に構成された立軸斜流ポンプ1に設けられた軸受11を挙げたが、立軸斜流ポンプ1に限定されるものではなく、他の形式のポンプに設けられた軸受であってもよい。また、ポンプ1以外の機器に使用される軸受であってもよい。
1 ポンプ
4 主軸
5 羽根車
11 軸受
20 固定側摺接体(摺動材)
4 主軸
5 羽根車
11 軸受
20 固定側摺接体(摺動材)
Claims (10)
- 熱変形温度が100℃以上でガラス転移温度が100℃以上の樹脂又は熱変形温度が100℃以上でガラス転移温度を持たない樹脂を少なくとも1種類含む基材を用い、前記基材を20質量%以上含み、RBセラミックスを10質量%以上含む材料を摺動材に用いたことを特徴とする軸受。
- カーボンナノフィラーを5質量%以上含むことを特徴とする請求項1に記載の軸受。
- 固体潤滑材を2〜20質量%含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の軸受。
- 固体潤滑材がポリテトラフルオロエチレン又は窒化ホウ素であることを特徴とする請求項3に記載の軸受。
- 基材を20質量%以上50質量%未満含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の軸受。
- 直径1μm以上の繊維を10〜30質量%含むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の軸受。
- 基材がポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリベンゾイミダゾール樹脂の少なくともいずれか1つを含み、繊維としてカーボン繊維を含むことを特徴とする請求項6に記載の軸受。
- 基材がポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリベンゾイミダゾール樹脂とを含み、RBセラミックスを20〜60質量%、ポリテトラフルオロエチレン又は窒化ホウ素を2〜20質量%含むことを特徴とする請求項1に記載の軸受。
- 上記請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の軸受を有するポンプであって、
羽根車を回転駆動する主軸が軸受によって回転自在に支持されていることを特徴とするポンプ。 - 羽根車が回転して水を吸い上げる排水運転と、羽根車が回転しているが水を吸い上げない気中運転との少なくとも2つの運転パターンで運転できることを特徴とする請求項9に記載のポンプ。
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- 2008-03-19 JP JP2008070503A patent/JP2009222208A/ja active Pending
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