JP2007131884A - 低摩擦摺動部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】高面圧に耐えると共に、耐摩耗性に優れ、摩擦係数が小さく、優れた摺動特性を長期に亘って発揮することができる摺動部材を安価に提供する。
【解決手段】摺動部材を構成する基材表面における少なくとも相手部材との摺接面に、望ましくは窒化層、浸硫層を介して、カーボンナノコイル、カーボンナノチューブ及びカーボンナノフィラメントから成る群から選ばれる少なくとも1種のナノカーボン類を含む炭素膜を被覆する。
【選択図】図3
【解決手段】摺動部材を構成する基材表面における少なくとも相手部材との摺接面に、望ましくは窒化層、浸硫層を介して、カーボンナノコイル、カーボンナノチューブ及びカーボンナノフィラメントから成る群から選ばれる少なくとも1種のナノカーボン類を含む炭素膜を被覆する。
【選択図】図3
Description
本発明は、例えば軸受やカム、カムフォロワなど、各種機械装置における摺動部位に適用される摺動部材に係わり、さらに詳しくは、その摺接面にカーボンナノチューブなどのナノカーボン類を含む炭素膜による被覆を施すことによって摺動特性を向上させた低摩擦摺動部材に関するものである。
近年、ナノテクノロジーを利用した技術開発によって、従来では実現できなかった性能や特性を備えた材料の開発が進んでいる。その中でも、カーボンナノチューブに代表される炭素系ナノ材料(ナノカーボン類)は、実用化が早く、幅広い分野での利用が期待されている。
これらナノカーボン類は、種々の優れた特性を有し、電気・電子的な特性のみならず機械的特性についても魅力的な性能を有している。特に、多層カーボンナノチューブは、π結合によって網目状のσ結合の構造が重なっていることから、黒鉛と同様に摺動特性が良好であることが期待されている。
これらナノカーボン類は、種々の優れた特性を有し、電気・電子的な特性のみならず機械的特性についても魅力的な性能を有している。特に、多層カーボンナノチューブは、π結合によって網目状のσ結合の構造が重なっていることから、黒鉛と同様に摺動特性が良好であることが期待されている。
このような観点から、カーボンナノファイバー(カーボンナノフィラメント)やカーボンナノチューブをフッ素樹脂に充填して軸受を形成することによって、カーボンナノファイバーやカーボンナノチューブの自己潤滑性による使用寿命の向上や、これらカーボンナノ材料の熱伝導性によって、摺動熱発生に基づく変形の抑制を図ることが提案されている(特許文献1参照)。
また、転がり軸受の軸受部品、すなわち軌道輪、転動体、保持器の1種以上をカーボンナノチューブを配合した樹脂組成物によって形成することが提案されている(特許文献2参照)。
特開2005−207482号公報
特開2004−308877号公報
また、転がり軸受の軸受部品、すなわち軌道輪、転動体、保持器の1種以上をカーボンナノチューブを配合した樹脂組成物によって形成することが提案されている(特許文献2参照)。
しかし、これら特許文献1,2に記載の軸受においては、いずれも炭素系ナノ材料を固体潤滑剤として樹脂材料中に分散させたものに過ぎなく、これら炭素系ナノ材料の特性が必ずしも十分に発揮されているとは言えない。また、基材が樹脂材料であることから、部品が受ける面圧など運転条件によっては、適用できないことがある。
一方、化学気相成長法によって、金属や窒化珪素などから成る基体上に、例えば1平方μmあたり5本以上のカーボンナノチューブを林立させた摺動部材が提案されている(特許文献3参照)。
特開2005−76756号公報
しかしながら、上記特許文献3に記載のカーボンナノチューブ摺動部材においては、金属製の基体表面にカーボンナノチューブのみを直接形成することができ、種々の部材への適用が可能ではあるものの、化学気相成長法の他、アーク放電法やレーザー蒸発法によって、上記カーボンナノチューブを高温下で合成することが必要であることから、基体が変形する惧れがあるばかりでなく、大量生産に不向きであると共に、製造設備も高価であるからして、製造コストが増大するという問題点がある。
本発明は、炭素系ナノ材料を相手部材との摺動面に適用した従来の摺動部材における上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、摩擦係数が小さく、高面圧に耐えると共に、耐摩耗性に優れ、このような摺動特性を長期に亘って発揮することができる摺動部材を安価に提供することを目的としている。
本発明者らは、上記課題を達成すべく、相手部材との摺接面の表面状態や、耐摩耗性物質による被覆、その成膜条件などについて鋭意検討を繰り返した結果、基材の摺接面にナノカーボン類を含む炭素膜を形成することによって、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに到った。
本発明は上記知見に基づくものであって、本発明の低摩擦摺動部材は、その基材における相手部材との摺接面に、カーボンナノコイル、カーボンナノチューブ及びカーボンナノフィラメントから成る群から選ばれる少なくとも1種のナノカーボン類を含む炭素膜を被覆したことを特徴とする。
また、本発明の低摩擦摺動部材における好適形態としては、上記基材と炭素膜の間に窒化層が形成されていること、さらに好適形態としては、上記炭素膜と窒化層の間に浸硫層が形成されていることを特徴としている。
また、本発明の低摩擦摺動部材における好適形態としては、上記基材と炭素膜の間に窒化層が形成されていること、さらに好適形態としては、上記炭素膜と窒化層の間に浸硫層が形成されていることを特徴としている。
本発明によれば、摺動部材を構成する基材の摺接面に、少なくとも1種のナノカーボン類を含む炭素膜を被覆したものであって、当該炭素膜は、上記したカーボンナノチューブやカーボンナノコイル、カーボンナノフィラメント(カーボンナノファイバーとも称する)といったナノカーボン類を含有していることから、耐摩耗性、耐食性、熱伝導性、摩擦特性などに優れ、摺動部材として極めて優れた性能を発揮する。
加えて、上記炭素膜は、これら繊維状のナノカーボンによるアンカー効果によって基材上に強固に密着するので、耐剥離性、耐脱落性に優れ、当該摺動部材の長期に亘る使用が可能になる。
加えて、上記炭素膜は、これら繊維状のナノカーボンによるアンカー効果によって基材上に強固に密着するので、耐剥離性、耐脱落性に優れ、当該摺動部材の長期に亘る使用が可能になる。
また、このような炭素膜は、大気圧の非酸化性ガス雰囲気の炉中に、アセチレンのような炭素源ガスを供給するだけで、300〜350℃という低温度でも生成されることから、設備費をさほど必要とせず、低い操業コストのもとに、摺動特性に優れた本発明の低摩擦摺動部材を効率良く、安価に製造することができる。
以下、本発明の低摩擦摺動部材について、その実施の形態や炭素膜の形成方法などと共に、さらに詳細に説明する。
本発明の低摩擦摺動部材は、上記したように、金属などから成る基材における相手部材との摺接表面に、カーボンナノコイル、カーボンナノチューブ若しくはカーボンナノフィラメント、又はこれらの2種以上を組み合わせから成るナノカーボン類を含む炭素膜を被覆したものであって、摺接面に形成された炭素膜に含まれるナノカーボン類の優れた機械的特性、熱伝導性、耐摩耗性、耐食性、摩擦特性などによって、優れた摺動特性を長期に亘って発揮するものである。
なお、上記炭素膜は、少なくとも相手部材との摺接面に形成されてさえいれば足りるものであるが、基材の摺接面以外に形成されていたとしても特に差し支えはなく、必ずしも成膜に際して摺接面以外をマスキングしたり、成膜後に除去したりする必要はない。
なお、上記炭素膜は、少なくとも相手部材との摺接面に形成されてさえいれば足りるものであるが、基材の摺接面以外に形成されていたとしても特に差し支えはなく、必ずしも成膜に際して摺接面以外をマスキングしたり、成膜後に除去したりする必要はない。
本発明の低摩擦摺動部材に用いる基材としては、代表的には金属が用いられ、カーボンナノコイル、カーボンナノチューブ、カーボンナノフィラメントといったナノカーボン類の成長の触媒として機能する遷移金属(Fe、Ni、Co)やこれらの化合物が含まれていることが望ましく、具体的には、鋳鉄、炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼、ニッケル基合金、コバルト基合金などを適用することができる。
また、上記した金属が含まれていれば、銅系合金も使用することができ、例えばモータの整流子やブラシ、給電装置や集電装置の各種コンタクタなど、通電を伴う摺動部材に適用することができる。
また、上記した金属が含まれていれば、銅系合金も使用することができ、例えばモータの整流子やブラシ、給電装置や集電装置の各種コンタクタなど、通電を伴う摺動部材に適用することができる。
さらに、基材としては、上記した各種金属から成る焼結材や発泡材などの多孔質金属を用いることもでき、当該基材の微細孔内に潤滑油を含浸させることによって、オイルレスベアリングに代表される自己給油型の摺動部材とすることができる。
このとき、上記のようなナノカーボン類が多孔質基材の微細孔内部にも成長することから、潤滑油と炭素膜との相乗効果による優れた摺動性能を長期に亘って発揮することができる。
このとき、上記のようなナノカーボン類が多孔質基材の微細孔内部にも成長することから、潤滑油と炭素膜との相乗効果による優れた摺動性能を長期に亘って発揮することができる。
上記基材に、上記ナノカーボン類を含む炭素膜を成膜するに際しては、雰囲気炉を使用し、当該雰囲気炉の加熱室内に基材を収納し、炉内を窒素ガスや水素ガス、あるいはアルゴンガスなどの非酸化性ガスに置換した後、加熱を開始し、加熱しながら、あるいは所定温度に昇温したのち、炭素源ガスとして、例えばアセチレンガス(C2H2)のような鎖式不飽和炭化水素ガスを供給することによって、当該炭化水素が基材表面において、炭素と水素に分解され、基材中に存在する上記金属(Fe,Ni,Co)の触媒作用によって、カーボンナノコイルやカーボンナノチューブ、カーボンナノフィラメントが成長し、これらナノカーボン類が混在する炭素膜が基材表面に形成されることになる。
このときの炉内圧力としては、基本的に大気圧でよいが、外気の流入を防止して、炉内雰囲気を適正に保持する観点から、大気圧よりも若干高い圧力に保持することが望ましい。
なお、上記炭素源ガスは、当該ガスを炉内に均一に分散させ、スーティングを防止するために、上記雰囲気ガスにより適当な濃度に希釈して供給することが望ましい。
なお、上記炭素源ガスは、当該ガスを炉内に均一に分散させ、スーティングを防止するために、上記雰囲気ガスにより適当な濃度に希釈して供給することが望ましい。
また、加熱温度としては、300〜700℃の温度範囲において、炭素膜の被覆処理が可能であるが、短時間で処理することを考慮すると、350℃以上とすることが望ましい。
なお、後述するように、炭素膜と基材の間に窒化層や浸硫層を形成するために、窒化処理や浸硫処理を同時に行なうためには、窒素の拡散を考慮して410℃以上の温度による処理が必要となる。
なお、後述するように、炭素膜と基材の間に窒化層や浸硫層を形成するために、窒化処理や浸硫処理を同時に行なうためには、窒素の拡散を考慮して410℃以上の温度による処理が必要となる。
本発明の低摩擦摺動部材においては、上記炭素膜と基材の間に窒化層が形成されていることが望ましい。
すなわち、このような窒化層がナノカーボン類生成の触媒機能を有しているので、ナノカーボン類の成長が促進されると共に、窒化による硬化によって基材の変形が防止され、炭素膜の密着性が増し、耐剥離性が向上して耐用寿命を延長することができる。
すなわち、このような窒化層がナノカーボン類生成の触媒機能を有しているので、ナノカーボン類の成長が促進されると共に、窒化による硬化によって基材の変形が防止され、炭素膜の密着性が増し、耐剥離性が向上して耐用寿命を延長することができる。
そして、このような窒化層を形成するには、雰囲気炉内に、上記した炭素源ガスと共に、アンモニアガス(NH3)のような窒化用ガスを供給することによって、炭素膜の成膜と窒化層の形成を並行して行なうことができる。
さらに、本発明の低摩擦摺動部材においては、上記炭素膜と窒化層の間に浸硫層を形成することが望ましく、浸硫層の存在によって、摩擦係数をさらに低下させることができるようになる。
そして、このような浸硫層を形成するには、雰囲気炉内に、上記した炭素源ガス(例えば、C2H2)及び窒化用ガス(例えば、NH3)と共に、例えば硫化水素(H2S)や二硫化炭素(CS2)のような浸硫用ガスを供給することによって、炭素膜及び窒化層の形成と浸硫層の形成をそれぞれ並行して行なうことができる。
このとき、硫化水素のような浸硫用ガスについても、炭素源ガスと同様に、雰囲気ガスで適当な濃度に希釈した状態で炉内に供給することが望ましい。
このとき、硫化水素のような浸硫用ガスについても、炭素源ガスと同様に、雰囲気ガスで適当な濃度に希釈した状態で炉内に供給することが望ましい。
本発明の低摩擦摺動部材は、摺動を伴う各種の機械部品、例えばすべり軸受や転がり軸受、各種カムやこれに摺接するカムフォロワ、ピストンリングやピストンピン、バルブリフター、リフターシムなどのエンジン部品など、広範囲に適用することができる。
また、上記ナノカーボン類が含まれる炭素膜は、電気伝導性にも優れていることから、上記したように、モータの整流子やブラシ、給電装置や集電装置における各種コンタクタなど、通電を伴う摺動部材にも広く用いることができる。
また、上記ナノカーボン類が含まれる炭素膜は、電気伝導性にも優れていることから、上記したように、モータの整流子やブラシ、給電装置や集電装置における各種コンタクタなど、通電を伴う摺動部材にも広く用いることができる。
図1は、本発明の低摩擦摺動部材を製造するに際して、基材表面に炭素膜を被覆するのに用いる雰囲気炉の構造例を示すものであって、図に示すピット型雰囲気炉1は、被処理品である基材を装入するレトルト2(加熱室)を中心に構成されており、レトルト2の周囲は断熱材3によって覆われ、該断熱材3の内面には、レトルト2内の基材を加熱するためのヒータ4が配設されている。
上記レトルト2の頂部には、攪拌によってレトルト2内の温度分布を均一化するためのファン2aが設けてあると共に、当該レトルト2の内部をパージしたり、内部雰囲気を制御したりするための各種配管が接続されている。
すなわち、レトルト2には、処理に先だってレトルト2内の空気をパージするために、当該レトルト2内を真空排気する真空ポンプ5が電磁バルブV1を介して接続されると共に、真空排気されたレトルト2内にN2ガスを供給するための復圧用窒素ボンベ6が電磁バルブV2を介して接続されている。
すなわち、レトルト2には、処理に先だってレトルト2内の空気をパージするために、当該レトルト2内を真空排気する真空ポンプ5が電磁バルブV1を介して接続されると共に、真空排気されたレトルト2内にN2ガスを供給するための復圧用窒素ボンベ6が電磁バルブV2を介して接続されている。
また、上記レトルト2には、キャリヤガスである窒素ガス(N2)が電磁バルブV3,V4、及び高精度の流量計M1を介して配管されていると共に、上記バルブV3及びV4の間から分岐された配管には、炭素源ガスとしてのアセチレンガス(C2H2)及び浸硫用ガスである硫化水素ガス(H2S)がそれぞれ流量計M2,M3及び電磁バルブV5,V6を介して接続されており、これら電磁バルブV4〜V6の調整によって、任意の濃度に希釈されたアセチレンガス及び硫化水素ガスを含む窒素ガスをレトルト内に供給できるようになっている。
さらに、窒化用ガスとしてのアンモニアガス(NH3)が流量計M4及び電磁バルブV7を介して上記レトルト2内に直接供給されるようになっている。
さらに、窒化用ガスとしてのアンモニアガス(NH3)が流量計M4及び電磁バルブV7を介して上記レトルト2内に直接供給されるようになっている。
また、断熱材3とレトルト2の間に形成される炉内空間は、断熱材を貫通して設けられた配管により、電磁バルブV8,V9を介してそれぞれ外気に連通しており、これらバルブV8,V9を開放した状態で、冷却ブロア10を作動させることによって、当該炉内空間に外気が導入され、レトルト2内を速やかに強制冷却することができるような構造となっている。
上記レトルト2は、排気管11および電磁バルブを介してアンモニア分解炉12に接続されており、レトルト2からの排出ガスを当該アンモニア分解炉12中に導き、この中で高温に保持したNi系のアンモニア分解用触媒と接触させることによって、消費されることなく排出ガスに含まれている余剰のアンモニアガスを窒素と水素に分解処理するようになっている。
さらに、アンモニア分解炉12は、配管13によってガスクーラー14に接続され、ここでアンモニア分解炉12からの排出ガスが一旦冷却されるようになっている。なお、排出ガス量の少ない小型の装置においては、排出ガスが配管13を通過する間に十分に冷却されることから、このようなガスクーラー14を省略することができる。
当該ガスクーラー14は、配管15を介して硫化水素分解装置16に接続されており、ガスクーラー14により冷却されたアンモニア分解炉12からの排出ガスを当該分解装置16中に充填された酸化鉄に接触させることによって、排出ガス中に含まれる残留硫化水素を硫化鉄と水に分解する。
そして、該硫化水素分解装置16には、排出管17を介して燃焼筒18が接続されており、当該燃焼筒18において、窒素,水素及び水蒸気を含む硫化水素分解装置16からの排出ガスを燃焼した上で、燃焼ガスを排気ブロア19によって屋外に排気するようになっている。
なお、上記雰囲気炉1のレトルト2には、必要に応じてキャリヤガス(非酸化雰囲気ガス)としての水素ガス(H2)やアルゴンガス(Ar)、ガス軟窒化用の炭酸ガス(CO2)等の配管を接続することもできる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこのような実施例のみに限定されるものではない。
(発明例)
基材として、SKD61材(合金工具鋼鋼材:JIS G4404)を使用し、焼入れ焼戻し熱処理によって硬さ40HRCに調整した径30mm、厚さ10mmの試験片を作製した。
基材として、SKD61材(合金工具鋼鋼材:JIS G4404)を使用し、焼入れ焼戻し熱処理によって硬さ40HRCに調整した径30mm、厚さ10mmの試験片を作製した。
そして、図1に示したピット型雰囲気炉1を使用し、上記試験片をレトルト2内の処理領域S内に収納したのち、真空ポンプ5の作動によってレトルト2内の空気をパージし、次いで電磁バルブV2を開放してレトルト2内に窒素ガスを供給することによって、炉内雰囲気を非酸化性のものとした。
次に、図2に示す処理サイクルに基づいて、電磁バルブV3〜V7を調整することによって、アンモニアガス、硫化水素ガス、アセチレンガス、及び窒素ガス(冷却過程のみ)を供給し、上記試験片にガス窒化処理、浸硫処理及び炭素膜の皮膜処理を施した。
処理温度は、図2に示したように480℃であり、各ガスの使用量は下記のとおりである。
アンモニアガス(NH3) :15 NL/min.
アセチレンガス(C2H2): 0.2 NL/min.
硫化水素ガス(H2S) : 0.3 NL/min.
窒素ガス(N2) :16 NL/min.(冷却時のみ)
処理温度は、図2に示したように480℃であり、各ガスの使用量は下記のとおりである。
アンモニアガス(NH3) :15 NL/min.
アセチレンガス(C2H2): 0.2 NL/min.
硫化水素ガス(H2S) : 0.3 NL/min.
窒素ガス(N2) :16 NL/min.(冷却時のみ)
上記処理を施した試験片について、その表面から内部にかけて断面の金属組織を顕微鏡観察した。
その結果、図3の光学顕微鏡写真(625倍、但し95mm×72mmの場合)に示すように、最表面に炭素膜及び浸硫層が2〜2.5μm程度の厚さに形成され(黒いため、埋込み樹脂との見分けが困難)、さらにその下に約3.5μmの化合物層と、約55μmの拡散層から成る窒化層が形成されていることが確認された。
その結果、図3の光学顕微鏡写真(625倍、但し95mm×72mmの場合)に示すように、最表面に炭素膜及び浸硫層が2〜2.5μm程度の厚さに形成され(黒いため、埋込み樹脂との見分けが困難)、さらにその下に約3.5μmの化合物層と、約55μmの拡散層から成る窒化層が形成されていることが確認された。
また、図4は、上記炭素膜を試験片の表面側から観察した電子顕微鏡写真であって、当該炭素膜中には、カーボンナノコイル、カーボンナノチューブ、カーボンナノフィラメントといったナノカーボン類が生成していることが確認された。
(比較例)
アンモニアガス+RXガス(50:50)の混合雰囲気中において、SKD61材から成る上記円板状試験片に、570℃×時間のガス軟窒化を施すことによって、後述する摩擦試験の比較試料とした。
アンモニアガス+RXガス(50:50)の混合雰囲気中において、SKD61材から成る上記円板状試験片に、570℃×時間のガス軟窒化を施すことによって、後述する摩擦試験の比較試料とした。
〔摩擦係数の測定〕
上記発明例及び比較例により処理した円板状試験片について、図5に示すようなボールオンディスク型摩擦摩耗試験を行い、摩擦係数をそれぞれ測定した。
すなわち、図5に示す試験装置のターンテーブルTの上に、上記発明例及び比較例の処理を施した円板状試験片Dを載置し、この試験片Dに直径6mmのボールBを相手部材として5Nの荷重で押し付け、大気中、室温下において無潤滑の状態で、125m/sの摩擦速度で摩擦係数の測定を実施した。
上記発明例及び比較例により処理した円板状試験片について、図5に示すようなボールオンディスク型摩擦摩耗試験を行い、摩擦係数をそれぞれ測定した。
すなわち、図5に示す試験装置のターンテーブルTの上に、上記発明例及び比較例の処理を施した円板状試験片Dを載置し、この試験片Dに直径6mmのボールBを相手部材として5Nの荷重で押し付け、大気中、室温下において無潤滑の状態で、125m/sの摩擦速度で摩擦係数の測定を実施した。
なお、相手部材であるボールBの材質については、SUJ2材(高炭素クロム軸受鋼鋼材:JIS G4805)及び炭化窒化(SiC)とし、両者それぞれについて摩擦係数を測定した。
ボールBがSUJ2材の場合を図6に、炭化窒化の場合を図7にそれぞれ示す。
ボールBがSUJ2材の場合を図6に、炭化窒化の場合を図7にそれぞれ示す。
その結果、ナノカーボン類を含む炭素膜を表面に形成した本発明の場合には、相手部材の材質がいずれのときも、0.2〜0.3程度の摩擦係数を示し、窒化処理だけで炭素膜の形成されていない比較例に比べて、大幅に低くなることが確認された。
Claims (4)
- 基材の相手部材との摺接面に、カーボンナノコイル、カーボンナノチューブ及びカーボンナノフィラメントから成る群から選ばれる少なくとも1種のナノカーボン類を含む炭素膜を被覆して成ることを特徴とする低摩擦摺動部材。
- 上記基材と炭素膜の間に窒化層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の低摩擦摺動部材。
- 上記炭素膜と窒化層の間に浸硫層が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の低摩擦摺動部材。
- 上記基材が多孔質材であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の低摩擦摺動部材。
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