JP4911451B2 - 鉄を主成分として含む金属材料の表面改質方法 - Google Patents
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Description
さらに特開2005−147244号公報(特許文献1)には、ころ軸受用保持器に、浸炭熱処理を施した後、その表面に、焼戻し温度以下の温度において、ダイヤモンド状炭素膜を形成する表面改質方法が記載されている。
しかし、熱処理と、PVD又はCVDを利用する硬質膜の形成とを組み合わせて相乗効果を得るためには、熱処理された金属材料表面と、その上に形成された硬質膜との間に高い密着性を付与すること、及び熱処理と硬質膜形成との組み合わせが、簡便、かつ経済的に行われることが重要である。しかしながら、従来技術においては、熱処理された金属材料表面と、その上に形成された硬質膜との密着性が必ずしも満足できるものではなく、かつ、熱処理工程と、硬質膜形成工程とを、中間工程(例えば表面研磨、エッチングなど、或は異種金属による中間層の形成など)を必要とせずに、簡便に、かつ経済的に組み合わせることは、必ずしも十分に達成されていなかった。
また、窒化物を主成分として含む硬質膜の形成には、長時間を要するという問題がある。
野口慎一;日本鋳造工学会全国講演大会講演概要集、Vol.147th,Page 127(2005.10.11) 河田一喜;トライボコーティングの現状と将来シンポジウム予稿集、Vol.7th,Page 37−42(2005)
前記第1段炭素質被膜形成工程が、前記金属材料の表面の少なくとも1部分に、前記焼入れ工程の、焼入れ温度±200℃の範囲内にある温度において、炭化水素を含有するガスを用いる化学蒸着処理を施して、第1段炭素質被膜を形成することを含み、
前記焼入れ工程が、前記第1段炭素質被膜を担持している金属材料の温度を前記焼入れ工程の焼入れ温度に調整した後、これに焼入れを施すことを含み、
前記第2段炭素質被膜形成工程が、
前記焼入されかつ第1段炭素質被膜を担持している金属材料の表面の少なくとも1部分に対して、(1)前記焼戻し工程前に、或は(2)前記焼戻し工程中に、或は(3)前記焼戻し工程後に(焼戻し温度−300℃)〜(焼戻し温度+100℃)の範囲内の温度を有する炭化水素を含有するガスを用いる化学蒸着処理を施して第2段炭素質被膜を形成することを含む
ことを特徴とする、鉄を主成分として含む金属材料の表面改質方法である。
本発明方法において、前記第1段炭素質被膜形成工程に供される金属材料が、浸炭処理、又は浸炭窒化処理を施されたものであることが好ましい。
本発明方法において、前記第1段及び第2段炭素質被膜形成工程並びに前記焼入れ工程が、実質的に無酸素雰囲気内において行われることが好ましい。
本発明方法において、前記第1段及び第2段炭素質被膜形成工程のそれぞれにおいて用いられる炭化水素が、1〜3個の炭素原子を有する飽和炭化水素から選ばれることが好ましい。
本発明方法において、前記第1段及び第2段炭素質被膜形成工程のそれぞれにおいて形成された炭素質被膜が、グラファイト、ダイヤモンド、合成ダイヤモンド、フラーレン、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブから選ばれた少なくとも1種を含み、かつ、その厚さが0.001〜1μmの範囲内にあることが好ましい。
本発明方法において、前記焼入れ工程に用いられる実質的に無酸素雰囲気が、アルゴン、ヘリウム、窒素、代替フロン又は高沸点炭化水素ガス雰囲気であることが好ましい。
尚本発明方法は、鉄含有金属材料に、第1段及び第2段炭素質被膜の形成と、焼入れ、焼戻しなどの熱処理とを、連続して施すことも可能であり、それによって、金属材料の表面改質を高い効率をもって、実施することができる。
前記炭素質被膜を形成する工程は、前記焼入れ工程前に、焼入れ温度±200℃の範囲内、好ましくは(焼入れ温度−100℃)〜(焼入れ温度+50℃)の温度範囲内において、前記金属材料の表面の少なくとも1部分に、炭化水素を含有するガスを用いる化学蒸着処理を施して、第1段炭素質被膜を形成する工程、すなわち、第1段炭素質被膜形成工程を含むものである。
前記焼入れ工程は、前記第1段炭素質被膜形成工程において形成された第1段炭素質被膜を担持している金属材料に対して、その温度を、この金属材料に対する前記焼入れ温度の温度に調整した後に、施される。
また、前記焼戻し工程は、焼入れされた炭素質被膜担持金属材料に対して施される。
また、プラズマ発生手段において、プラズマ発生装置(電源装置)6の1端に連結されたプラズマ発生電極6aが、気密性容器1内に配置されている。また、プラズマ発生装置6の他端は、気密性容器1の一部に連結されている。
容器内の排気又はガス置換が終了した後、加熱手段を用いて、被処理材料を所望温度に加熱する。このとき、例えば真空ポンプを用いて容器内のガスを排出しながら、被処理材料の加熱を行ってもよく、或は容器内に炭化水素ガス又は不活性ガスで満たしながら、加熱を施してもよい。この加熱操作により、被処理材料の温度が所定温度に達し均一に加熱されたならば、この所定温度を保持するための加熱を継続する。
焼戻し処理は、化学蒸着用気密性容器内で施してもよく、或はそれとは異る装置内で施してもよい。焼戻し温度は、金属材料の材質及び使用目的に応じて、適宜設定することができるが、600℃以下であることが好ましく、150〜550℃であることがさらに好ましい。
上記の組織構造炭素質を含む被膜は、潤滑性、耐摩耗性、ガスバリヤー性、熱伝導性、耐食性、及び耐熱性などに優れているという作用効果を有する。また、炭素質被膜厚さが0.001μm未満であると、上記、作用効果が得られないという問題を生ずることがあり、またそれが1μmよりも大きくなると、炭素質被膜が剥離しやすくなるという問題を生ずることがある。
前記浸炭又は浸炭窒化処理は、炭素質被膜形成工程に用いられる化学蒸着装置を利用して行われることが好ましいが、他の装置(例えば真空熱処理装置、プラズマ熱処理装置など)を用いてもよい。浸炭又は浸炭窒化処理を施すには、金属材料を浸炭又は浸炭・窒化装置内に収容し、この金属材料を400〜1000℃の処理温度に加熱し、好ましくは、この温度に15分間以上、より好ましくは30〜60分間保持して、金属材料の温度分布を均一にする。その後、炭素供給源となる炭化水素含有ガス、例えば、メタン、エタン、プロパンなどを含むガスを、浸炭、又は浸炭窒化装置内に供給して、浸炭、又は浸炭窒化処理を金属材料に施す。
プラズマ法が用いられるときは、その前処理として、金属材料に、前記予備加熱保持処理を施した後、装置中に非酸化性ガス(例えばアルゴン又は水素ガス)からなる雰囲気を形成し、金属材料に、グロー放電プラズマによるスパッタリング処理を施して、金属材料用面を清浄化する。次に、装置内の上記非酸化性ガスを排気し、前記炭化水素含有ガスを送入し、金属材料に、浸炭処理条件(温度:400〜1000℃、圧力10〜2500MPa)下においてグロー放電プラズマ浸炭処理を施す。浸炭窒化処理を施すためには、前記、炭化水素含有ガスにアンモニア、窒素、或は窒素化合物を混合して送入し、浸炭窒化条件(温度400〜1000℃、圧力10〜3000Pa)下においてグロー放電プラズマ浸炭窒化処理を施す。
この冷却は、容器中に非酸化性ガスを導入して行ってもよく、或は、化学蒸着用ガス雰囲気中において自然冷却させ、容器内温度が80℃以下になったとき、化学蒸着用ガスを非酸化性ガスにより置換し、容器内圧力を大気圧に調整してもよい。
図1に記載の容器を用いて、鉄含有金属材料の表面改質を行った。金属材料として、寸法0.8mm×70mm×150mmの冷延鋼板を用いて、図1の被処理材料4の位置に配置した。ガス排出手段3として真空ポンプを用いて、容器1中の不要気体を排気しながら、加熱手段により容器内の温度を960℃まで60minかけて上昇させた。容器内温度が960℃に到達後、真空ポンプで排気しながら30min加熱保持処理を施して均熱した。その後、ガス供給手段2からArとH2をそれぞれ流量1l/minで導入しながら、プラズマ発生手段6により電極6aに400Vの電圧を印加してグロー放電プラズマによるスパッタリングにより金属材料の表面清浄を30min行なった。スパッタリング終了後、真空ポンプで1min排気した。ついでガス供給手段2からCH4とH2をそれぞれ流量1l/minで導入しながら、プラズマ発生手段6により600Vの電圧を電極6aに印加してグロー放電プラズマによるプラズマ浸炭処理を30min施した。その後、800℃まで冷却して、真空ポンプで排気しながらこの温度に120min保持した。次に、ガス供給手段2からN2ガスを6×105Pa(6bar)の圧力で添加して加圧冷却し、焼入れを施した。容器内温度が50℃以下となった時点で、容器内を大気圧にして、金属材料を取出した。取出した金属材料部材は、大気雰囲気下で160℃、1hr加熱保持して焼戻しを施した。この製品をグロー放電分光分析(GDS)に供した。測定結果を図3に示す。金属材料の最表面で酸素が強く検出されており、酸化物が形成されていることが確認された。
図1に記載の容器を用いて、鉄含有金属材料の表面改質を行った。金属材料として、寸法0.8mm×70mm×150mmの冷延鋼板を用いて、図1の被処理材料4の位置に配置した。ガス排出手段3として真空ポンプを用いて、容器中の気体を排気しながら、加熱手段5により容器内温度を960℃まで60minかけて上昇させた。容器内温度が960℃に到達後、真空ポンプで排気しながら金属材料に30min加熱保持処理を施して均熱した。その後、ガス供給手段2からArとH2をそれぞれ流量1l/minで容器中に導入しながら、プラズマ発生手段6により400Vの電圧を印加してグロー放電プラズマによるスパッタリングを施して金属材料の表面清浄を30min行なった。スパッタリング終了後、真空ポンプで1min排気した。次いでガス供給手段2からCH4とH2をそれぞれ流量1l/minで導入しながら、プラズマ発生手段6にて600Vの電圧を印加してグロー放電プラズマによるプラズマ浸炭処理を30min施した。その後、800℃まで冷却して、ガス供給手段2からCH4を流量4l/minで導入して炉圧799.932Pa(6torr)で435Vの電圧を120min印加保持して炭素質被膜を形成した。次にガス供給手段2からN2ガスを6×105Pa(6bar)の圧力で添加して加圧冷却し、焼入れを施した。容器内温度が50℃以下となった時点で、容器内を大気圧にして、焼入れ材料を取出した。取出した焼入れ材料に、大気雰囲気下で160℃、1hr加熱保持して焼戻しを施した。得られた製品をグロー放電分光分析(GDS)に供した。測定結果を図4に示す。最表面に高濃度の炭素が認められ、金属材料部材表面に炭素質被膜が形成されていることが確認された。また、酸素は、炭素膜の最表面で検出されており、金属材料の表面酸化が抑制されていることが明らかになった。
図1に記載の容器を用いて、鉄含有金属材料の表面改質を行った。金属材料として寸法φ35mm×20mmのSCM420を用い、これを図1の被処理材料4の位置に配置した。ガス排出手段3として真空ポンプを用いて、容器内の不要気体を排気しながら、加熱手段5により容器内温度を960℃まで60minかけて上昇させた。容器内温度960℃に到達後、これに真空ポンプで排気しながら30min加熱保持処理を施して均熱した。その後、ガス供給手段2からArとH2をそれぞれ流量1l/minで導入しながら、プラズマ発生手段6により400Vの電圧を印加してグロー放電プラズマによるスパッタリングを施して金属材料の表面清浄を30min行なった。スパッタリング終了後、真空ポンプで1min排気した。次いでガス供給手段2からCH4とH2をそれぞれ流量1l/minで導入しながら、プラズマ発生手段6により600Vの電圧を印加してグロー放電プラズマによるプラズマ浸炭処理を30min施した。その後、800℃まで冷却して、真空ポンプで排気しながらこの温度に120min保持し、その後に、ガス供給手段2からN2ガスを6×105Pa(6bar)の圧力で添加して加圧冷却し、焼入れを施した。容器内温度が50℃以下となった時点で、容器内を大気圧にして、金属材料を取出した。この試料を、Ball on Disk摩擦摩耗試験機で無潤滑条件下における摩擦係数の測定に供した。摺動相手材としてφ6mmのSUJ2を用い、負荷荷重:2N、周速300rpm、摺動半径10mm、摺動距離70mの条件で試験した。図5に試験結果を示す。摺動時の平均摩擦係数は0.45であった。
図1に記載の容器を用いて、鉄含有金属材料の表面改質を行った。金属材料として寸法φ35mm×20mmのSCM420を用い、これを図1の被処理材料4の位置に配置した。ガス排出手段3として真空ポンプを用い不要気体を排気しながら、加熱手段5により容器内温度を960℃まで60minかけて上昇させた。容器内温度が960℃に到達後、金属材料に真空ポンプで排気しながら30minの加熱保持処理を施して均熱した。その後、ガス供給手段2からArとH2をそれぞれ流量1l/minで導入しながら、プラズマ発生手段6により400Vの電圧を電極に印加してグロー放電プラズマによるスパッタリングを施して金属材料の表面清浄を30min行なった。スパッタリング終了後、真空ポンプで1min排気した。次いでガス供給手段2からCH4とH2をそれぞれ流量1l/minで導入しながら、プラズマ発生手段6により600Vの電圧を電極に印加してグロー放電プラズマによるプラズマ浸炭を30min行なった。その後、800℃まで冷却して、ガス供給手段2からCH4を流量0.5l/minで導入して炉圧1999.83Pa(15torr)で160Vの電圧を60min印加保持して炭素質被膜を形成した。次にガス供給手段2からN2ガスを6×105Pa(6bar)添加して加圧冷却し、焼入れを、容器内温度が50℃以下となった時点で、容器内を大気圧にして、得られた焼入れ材料を取出した。焼戻し工程を省略した。得られた製品の試料を、Ball on Disk摩擦摩耗試験機に供して無潤滑条件下におけるその摩擦係数を測定した。摺動相手材はφ6mmのSUJ2であり、負荷荷重2N、周速300rpm、摺動半径10mm、摺動距離70mの条件で試験した。図6に試験結果を示す。摺動開始直後に摩擦係数が1.0以上となったため試験を終了させた。
図1に記載の容器を用いて、鉄含有金属材料部材の表面改質を行った。金属材料として寸法φ35mm×20mmのSCM420を用い、これを図1の被処理材料4の位置に配置した。ガス排出手段3として真空ポンプを用いて不要気体を排気しながら、加熱手段5により容器内温度を960℃まで60minかけて上昇させた。容器内温度が960℃に到達後、真空ポンプで排気しながら30minの加熱保持処理を施して均熱した。その後、ガス供給手段2からArとH2をそれぞれ流量1l/minで容器内に導入しながら、プラズマ発生手段6により400Vの電圧を電極に印加してグロー放電プラズマによるスパッタリングを施して試料の表面清浄を30min行なった。スパッタリング終了後、真空ポンプで1min排気した。次いでガス供給手段2からCH4とH2をそれぞれ流量1l/minで容器内に導入しながら、プラズマ発生手段7にて600Vの電圧を印加してグロー放電プラズマによるプラズマ浸炭処理を30min施した。その後、800℃まで冷却して、ガス供給手段2からCH4を流量0.5l/minで容器内に導入して炉圧1999.83Pa(15torr)で160Vの電圧を60min印加保持して第1段炭素質被膜を形成した。次にガス供給手段2からN2ガスを6×105Pa(6bar)添加して加圧冷却し、焼入れを行なった。容器内温度が100℃以下となった時点で、容器内を真空ポンプで減圧雰囲気にした状態で加熱手段にて200℃まで昇温して30min焼戻しを施した。次にガス供給手段2からCH4を流量0.05l/minで容器内に導入して炉圧33.33Pa(0.25torr)で400Vの電圧を60min印加保持して第2段炭素質被膜を形成した。容器内にガス供給手段を用いてN2ガスを大気圧まで導入した後、製品を取出した。この製品の試料をBall on Disk摩擦摩耗試験機による無潤滑条件下における摩擦係数の測定に供した。摺動相手材はφ6mmのSUJ2であり、負荷荷重2N、周速300rpm、摺動半径10mm、摺動距離70mの条件で試験した。図7に試験結果を示す。摺動時の平均摩擦係数は0.2であった。
図1に記載の容器を用いて、鉄含有金属材料部材の表面改質を行った。金属材料として、寸法φ35mm×20mmのSCM420が用いられ、これを図1の被処理材料4の位置に配置した。ガス排出手段3として真空ポンプを用いて不要気体を排気しながら、加熱手段5により容器内温度を960℃まで60minかけて上昇させた。容器内温度が960℃に到達後、真空ポンプで排気しながら30minの加熱保持処理を施して均熱した。その後、ガス供給手段2からArとH2をそれぞれ流量1l/minで導入しながら、プラズマ発生手段6にて400Vの電圧を印加してグロー放電プラズマによるスパッタリングを施して、金属材料の表面清浄を30min行なった。スパッタリング終了後、真空ポンプで1min排気した。次いでガス供給手段2からCH4とH2をそれぞれ流量1l/minで容器内に導入しながら、プラズマ発生手段6にて600Vの電圧を印加してグロー放電プラズマによるプラズマ浸炭処理を30min施した。その後、800℃まで冷却して、この温度に60min保持後に、ガス供給手段2からN2ガスを6×105Paの圧力で(6bar)添加して加圧冷却し、焼入れを行なった。
容器内温度が100℃以下となった時点で、容器内を真空ポンプで減圧し、この雰囲気内において加熱手段5により200℃まで昇温して30min焼戻しを施した。次にガス供給手段2からCH4を流量0.05l/minで容器内に導入して炉圧33.33Pa(0.25torr)で400Vの電圧を60min印加保持して炭素膜の成膜を行なった。金属材料部材の取出しは、容器内にガス供給手段を用いてN2を大気圧まで導入して行なった。処理後の試料表面を金属顕微鏡で観察すると皮膜剥離部分が認められた。図8に比較例4の製品表面の金属顕微鏡観察写真を示す。
図1に記載の容器を用いて、鉄含有金属材料部材の表面改質を行った。金属材料として寸法φ35mm×20mmのSCM420を用い、これを図1の被処理材料部材4の位置に配置した。ガス排出手段3として真空ポンプを用いて容器内の不要気体を排気しながら、加熱手段5で容器内温度を960℃まで60minかけて上昇させた。容器内温度が960℃に到達後、真空ポンプで排気しながら30min加熱保持処理を施して均熱した。その後、ガス供給手段2からArとH2をそれぞれ流量1l/minで導入しながら、プラズマ発生手段6にて400Vの電圧を電極に印加してグロー放電プラズマによるスパッタリングを施して、金属材料の表面清浄を30min行なった。スパッタリング終了後、真空ポンプで1min排気した。次いでガス供給手段2からCH4とH2をそれぞれ流量1l/minで導入しながら、プラズマ発生手段6にて600Vの電圧を印加してグロー放電プラズマによるプラズマ浸炭を30min施した。その後、800℃まで冷却して、ガス供給手段2からCH4を流量0.5l/minで容器内に導入して炉圧1999.83Pa(15torr)で160Vの電圧を60min印加保持して、第1段炭素質被膜を形成し、ガス供給手段2からN2ガスを6×105Pa(6bar)の圧力で添加して加圧冷却し、焼入れを行なった。
容器内温度が100℃以下となった時点で、容器内を真空ポンプで減圧雰囲気にし、この状態で加熱手段により200℃まで昇温して30min焼戻しを施した。次にガス供給手段2からCH4を流量0.05l/minで容器内に導入して炉圧33.33Pa(0.25torr)で400Vの電圧を60min印加保持して第2段炭素質被膜を形成した。金属材料部材の取出しは、容器内にガス供給手段を用いてN2ガスを大気圧まで導入して行なった。処理後の製品試料表面を金属顕微鏡で観察したが皮膜剥離箇所はなかった。図9に実施例2の製品の金属顕微鏡観察写真を示す。
2 ガス供給手段
2a ガス供給口
3 ガス排出手段
3a ガス排出口
4 被処理材料
5 加熱手段
6 プラズマ処理手段
6a プラズマ発生電極
Claims (6)
- 鉄を主成分として含む金属材料に、第1段炭素質被膜を形成する工程と、焼入れを施す工程と、この焼入れ工程の後に焼戻しを施す工程と、第2段炭素質被膜を形成する工程とを含み、
前記第1段炭素質被膜形成工程が、前記金属材料の表面の少なくとも1部分に、前記焼入れ工程の、焼入れ温度±200℃の範囲内にある温度において、炭化水素を含有するガスを用いる化学蒸着処理を施して、第1段炭素質被膜を形成することを含み、
前記焼入れ工程が、前記第1段炭素質被膜を担持している金属材料の温度を前記焼入れ工程の焼入れ温度に調整した後、これに焼入れを施すことを含み、
前記第2段炭素質被膜形成工程が、
前記焼入されかつ第1段炭素質被膜を担持している金属材料の表面の少なくとも1部分に対して、(1)前記焼戻し工程前に、或は(2)前記焼戻し工程中に、或は(3)前記焼戻し工程後に(焼戻し温度−300℃)〜(焼戻し温度+100℃)の範囲内の温度を有する炭化水素を含有するガスを用いる化学蒸着処理を施して第2段炭素質被膜を形成することを含む
ことを特徴とする、鉄を主成分として含む金属材料の表面改質方法。 - 前記第1段炭素質被膜形成工程に供される金属材料が、浸炭処理、又は浸炭窒化処理を施されたものである、請求項1に記載の方法。
- 前記第1段及び第2段炭素質被膜形成工程並びに前記焼入れ工程が、実質的に無酸素雰囲気内において行われる請求項1又は2に記載の方法。
- 前記第1段及び第2段炭素質被膜形成工程のそれぞれにおいて用いられる炭化水素が、1〜3個の炭素原子を有する飽和炭化水素から選ばれる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記第1段及び第2段炭素質被膜形成工程のそれぞれにおいて形成された炭素質被膜が、グラファイト、ダイヤモンド、合成ダイヤモンド、フラーレン、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブから選ばれた少なくとも1種を含み、かつ、その厚さが0.001〜1μmの範囲内にある、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 前記焼入れ工程に用いられる実質的に無酸素雰囲気が、アルゴン、ヘリウム、窒素、代替フロン又は高沸点炭化水素ガス雰囲気である、請求項3に記載の方法。
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