JP2000008121A - 耐高面圧部品の製造方法および耐高面圧部品 - Google Patents

耐高面圧部品の製造方法および耐高面圧部品

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JP2000008121A
JP2000008121A JP10173524A JP17352498A JP2000008121A JP 2000008121 A JP2000008121 A JP 2000008121A JP 10173524 A JP10173524 A JP 10173524A JP 17352498 A JP17352498 A JP 17352498A JP 2000008121 A JP2000008121 A JP 2000008121A
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manufacturing
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carbonitriding
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Noriko Uchiyama
山 典 子 内
Keizo Otani
谷 敬 造 尾
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Nissan Motor Co Ltd
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Nissan Motor Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 局所面圧が3GPaを超えるような高面圧を
受ける場合においても十分な耐摩耗性と面疲労強度を有
する耐高面圧部品を提供する。 【解決手段】 耐高面圧部品を製造するに際して、重量
%で、少なくともC:0.15〜0.4%、Si:0.
15〜0.6%、Mn:0.2〜0.8%、S:0.0
5〜0.15%、Cr:0.2〜3.5%を含み、P:
0.015%以下、O:20ppm以下に規制し、残部
Feおよび不純物からなる機械構造用鋼を素材として所
望の部品形状に加工した後、プラズマ浸炭もしくはプラ
ズマ浸炭窒化法で浸炭もしくは浸炭窒化処理を行ない、
この浸炭もしくは浸炭窒化処理に続いてプラズマCVD
法で硬質皮膜形成を行ない、これらの処理を連続して行
った後、焼き入れ焼き戻しを行なう。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高面圧下で用いら
れる自動車の変速用歯車、トロイダル式無段変速機用転
動体、ベルト式無段変速機用プーリ、などの耐高面圧
(駆動)部品の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車に用いられる変速用歯車、トロイ
ダル式無段変速機用転動体、ベルト式無段変速機用プー
リ、などの駆動部品は、一般に、JIS G 4104
のSCr420、JIS G 4105のSCM420
等に代表されるはだ焼用機械構造用鋼を素材とし、浸炭
または浸炭窒化処理等の表面硬化処理を施して使用して
いる。
【0003】近年、自動車の小型軽量化に伴って、これ
ら駆動部品の小型化が進み、高面圧で用いられる場合が
増えてきている。これらの部品を高面圧下で用いる場合
には、高い荷重に耐え得るような耐摩耗性に優れ、面疲
労強度が高いことが要求される。
【0004】例えば、歯車を例にすると、ヘルツ面圧が
3GPaを超えるような高面圧で使用される場合には、
歯車において、繰り返しの応力とすべりに伴って、ピッ
ト状の剥離が発生するピッティングや、スコーリングと
いった摩耗による剥離が発生し、目標とする寿命が得難
いといった問題点があった。
【0005】耐摩耗性や面疲労強度を向上させるために
は、例えば、特公昭62−24499号公報などに開示
されているように、浸炭処理時のカーボンポテンシャル
を高めに設定し、Ac点を通過させる球状化処理によ
り、鋼の表面付近の炭化物を積極的に析出させる高濃度
(過剰)浸炭処理を適用する方法がある。
【0006】これは、歯面が繰り返し応力や表面に発生
するすべりのため、歯面温度が上昇し、母材の硬度が低
下するため、摩耗したり、ピッティングが発生したりす
るものと考えられる。
【0007】例えば、歯車のピッティング寿命と300
℃×3時間焼き戻しした場合の硬度との関係をみると、
図1に示すように、焼き戻し硬度が高くなるほど、ピッ
ティング寿命が向上することが確認された。
【0008】従って、部品の最表面から当該部品使用時
の最大面圧で規定される最大せん断応力深さまでの焼き
戻し硬度を高めることが、耐摩耗性やピッティング寿
命、すなわち面疲労強度を向上するのに有効と考えられ
る。
【0009】一方、摺動部材についてみると、工具や金
型の耐摩耗性を向上させるために、TiCやTiN等の
硬質皮膜をコーティングすることが一般的であるが、例
えば、特開平5−44059号公報などに開示されてい
るように、機械構造用低合金鋼に浸炭焼き入れした後高
温焼き戻しを行ない、続いて硬質皮膜を形成している例
もある。
【0010】これは、TiCやTiN等の硬質皮膜をコ
ーティングすることによって、膜自体の硬度がHV20
00〜3000と高いことから、熱影響を受けても軟化
しないうえ、表面の摩擦係数を低下させることから、摩
耗を小さくする。
【0011】従って、熱影響を受けても軟化しないこ
と、表面の摩擦係数が低下すること、などといった理由
から、歯車のピッティング剥離やスコーリングといった
摩耗を抑制するためには、機械構造用鋼を浸炭焼き入れ
した後焼き戻しを行い、続いて硬質皮膜を形成すること
が有効である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うに機械構造用鋼に浸炭焼き入れした後焼き戻しを行
い、続いて硬質皮膜を形成すると、皮膜形成処理温度が
少なくとも300℃を超えてしまうことから、図2の比
較例に示すように、母材全体が軟化し、母材の強度が低
下してしまううえ、硬質膜の密着性が低下し、膜と母材
の界面から亀裂が発生進展し、剥離しやすいという問題
点があった。
【0013】
【発明の目的】本発明は、このような従来の課題にかん
がみてなされたものであって、局所面圧が3GPaを超
えるような高面圧下においても十分な耐摩耗性と面疲労
強度を確保することができる高面圧部材を提供すること
を目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明に係わる耐高面圧
部品の製造方法は、請求項1に記載しているように、機
械構造用鋼を素材として所望の部品形状に加工した後、
浸炭もしくは浸炭窒化処理に続いて硬質皮膜を形成し、
次いで焼き入れ焼き戻しを行なうようにしたことを特徴
としている。
【0015】そして、本発明に係わる耐高面圧部品の製
造方法の実施態様においては、請求項2に記載している
ように、機械構造用鋼は、重量%で、少なくともC:
0.15〜0.4%、Si:0.15〜0.6%、M
n:0.2〜0.8%、S:0.005〜0.015
%、Cr:0.2〜3.5%を含み、P:0.015%
以下、O:20ppm以下に規制し、残部Feおよび不
純物からなるものであるようにしたことを特徴としてい
る。
【0016】同じく、本発明に係わる耐高面圧部品の製
造方法の実施態様においては、請求項3に記載している
ように、浸炭もしくは浸炭窒化処理は、プラズマ浸炭も
しくはプラズマ浸炭窒化法で行ない、硬質皮膜形成は、
プラズマCVD法で行ない、連続して行なうようにした
ことを特徴としている。
【0017】同じく、本発明に係わる耐高面圧部品の製
造方法の実施態様においては、請求項4に記載している
ように、硬質皮膜形成は、浸炭もしくは浸炭窒化処理に
ひき続き、750〜890℃の温度で行なうようにした
ことを特徴としている。
【0018】同じく、本発明にに係わる耐高面圧部品の
製造方法の実施態様においては、請求項5に記載してい
るように、浸炭もしくは浸炭窒化処理によって、母材の
表面から50μm以内の炭素濃度を0.8%以上とし、
残留オーステナイト量を30%以下とすることによっ
て、硬度をHV750以上とするようにしたことを特徴
としている。
【0019】同じく、本発明に係わる耐高面圧部品の製
造方法の実施態様においては、請求項6に記載している
ように、硬質皮膜は、1〜30μmの厚さにするように
したことを特徴としている。
【0020】同じく、本発明に係わる耐高面圧部品は、
請求項7に記載しているように、請求項1ないし6のい
ずれかに記載の製造方法で作られたものであることを特
徴としている。
【0021】また、本発明に係わる耐高面圧(駆動)部
品としての変速用歯車は、請求項8に記載しているよう
に、請求項1ないし6のいずれかに記載の製造方法で作
られたものであることを特徴としている。
【0022】さらに、本発明に係わる耐高面圧(駆動)
部品としてのトロイダル式無段変速機用転動体は、請求
項9に記載しているように、請求項1ないし6のいずれ
かに記載の製造方法で作られたものであることを特徴と
している。
【0023】さらに、本発明に係わる耐高面圧(駆動)
部品としてのベルト式無段変速機用プーリは、請求項1
0に記載しているように、請求項1ないし6のいずれか
に記載の製造方法で作られたものであることを特徴とし
ている。
【0024】
【発明の作用】本発明に係わる耐高面圧部品の製造方法
は、機械構造用鋼を素材として所望の部品形状に加工し
た後、浸炭もしくは浸炭窒化すると共にひき続いて硬質
皮膜を形成し、次いで焼き入れ焼き戻しを行なうように
したため、母材が軟化することなく、接触面で繰り返し
の応力やすべりをうけても高硬度が確保できるうえ、な
おかつ表面の摩擦係数も低下することから、耐摩耗性お
よび面疲労強度が飛躍的に向上する。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明による耐高面圧(駆
動)部品の製造方法について詳細に説明する。
【0026】本発明で使用する機械構造用鋼のより好ま
しい化学組成(重量%)の限定理由は次のごとくであ
る。
【0027】C:0.15〜0.4% Cは芯部強度を確保するために0.15%以上とするこ
とが望ましいが、多く含有すると靭性を低下させること
となるので、靭性の低下を防止するために0.4%以下
とすることが望ましい。
【0028】Si:0.15〜0.6% Siは鋼溶製時の脱酸剤として有用であり、このために
は0.15%以上とすることが望ましいが、多すぎると
靭性を低下させることとなるので0.6%以下とするこ
とが望ましい。
【0029】Mn:0.2〜0.8% Mnは鋼溶製時の脱酸および脱硫剤として有用であると
共に、焼き入れ性を確保するために有用であり、このた
めには0.2%以上とすることが望ましいが、多すぎる
と粒界酸化を招くことから0.8%以下とすることが望
ましい。
【0030】S:0.005〜0.015% SはMnと結合してMnSを形成し、部品母材の被削性
を向上する。そして、このような被削性向上の作用を得
るためには0.005%以上含有させることが望ましい
が、MnSは展伸性を有しているものの亀裂発生の起点
となることがありうることからその生成量は適度に抑え
る必要があり0.015%以下とすることが望ましい。
【0031】Cr:0.2〜3.5% Crは焼き入れ性の向上に有用な元素であり、このよう
な作用を得るためには0.2%以上とすることが望まし
い。また、炭化物、炭窒化物を形成し、焼き戻し硬度を
向上させることから、ピッティング強度を向上させるの
に有用な元素である。しかし、多量に含有させても被削
性を低下させまたコスト高になることから、3.5%以
下とすることが望ましい。
【0032】P:0.015%以下、O:20ppm以
下 Pは粒界を脆化させ、Oはアルミナを主体とする酸化物
系介在物を生成させ、それらが、疲労破壊の原因ともな
りうるので、Pは0.015%以下、Oは20ppm以
下とするのが望ましい。
【0033】また、浸炭もしくは浸炭窒化処理は、プラ
ズマ浸炭もしくはプラズマ浸炭窒化法で行ない、硬質皮
膜形成は、プラズマCVD法で行ない、連続して行なう
ことが望ましいのは、浸炭もしくは浸炭窒化したのち、
焼き入れをする前の段階で硬質皮膜を形成することによ
って、母材が軟化し、強度が低下するのを防ぐためであ
る。
【0034】この場合のプラズマ浸炭もしくはプラズマ
浸炭窒化は、真空中に浸炭もしくは窒素ガスを導入し、
直流電圧を印加した際に得られるグロー放電を利用し
て、浸炭もしく浸炭窒化する方法である。
【0035】一方、プラズマCVD法は、プラズマ浸炭
と同様、反応ガスをプラズマ状態にして基板上に薄膜を
形成する方法であるが、グロー放電を利用する方法が最
も良く使用されている。
【0036】従って、浸炭もしくは浸炭窒化処理は、プ
ラズマ浸炭もしくはプラズマ浸炭窒化法で行ない、硬質
皮膜形成は、プラズマCVD法で行なうことによって、
両処理を連続して行うことが可能となる。
【0037】一方、硬質皮膜形成は、浸炭もしくは浸炭
窒化処理にひき続き、750〜890℃の温度で行なう
ことが望ましいのは、皮膜形成処理後、直ちに焼き入れ
を行い、母材の硬度を確保するためであり、750℃を
下回ると、母材の焼きが入らないため、強度が低下し、
目標寿命が得られ難い。また、890℃を超えると、母
材の残留オーステナイト量が30%を超えてしまうた
め、母材の硬度が低く、膜の密着性が低下してしまう傾
向となる。
【0038】また、浸炭もしくは浸炭窒化処理によっ
て、母材の表面から50μm以内の炭素濃度を0.8%
以上とし、残留オーステナイト量を30%以下とするこ
とによって、硬度をHV750以上とすることが望まし
いのは、母材の硬度がHV750を下回ると、また、母
材の表面から50μm以内の炭素濃度が0.8%を下回
ると、そしてまた、残留オーステナイト量が30%を超
えると、膜の密着性が低下してしまううえ、母材の塑性
変形が大きくなるため、膜と母材の界面から亀裂が発
生、進展、剥離しやすくなり、目標寿命が得られ難くな
る。
【0039】また、硬質皮膜は、1〜30μmの厚さに
することが望ましいのは、皮膜の厚さが1μm未満にな
ると、相手材との摩耗で早期に摩滅し、寿命が短くなる
からであり、30μmを超えると、基材との界面で割れ
が発生し、皮膜が剥離しやすくなるためである。
【0040】
【発明の効果】本発明による耐高面圧部品の製造方法に
よれば、請求項1に記載しているように、機械構造用鋼
を素材として所望の部品形状に加工した後、浸炭もしく
は浸炭窒化処理に続いて硬質皮膜を形成し、次いで焼き
入れ焼き戻しを行なうようにしたから、母材が軟化する
ことなく、耐摩耗性やピッティングなどの面疲労強度が
飛躍的に向上し、局所面圧が3GPaを超えるような高
面圧の環境下においても長期間使用することができる耐
高面圧部品を製造することが可能であるという著しく優
れた効果がもたらされる。
【0041】そして、請求項2に記載しているように、
機械構造用鋼は、重量%で、少なくともC:0.15〜
0.4%、Si:0.15〜0.6%、Mn:0.2〜
0.8%、S:0.005〜0.015%、Cr:0.
2〜3.5%を含み、P:0.015%以下、O:20
ppm以下に規制し、残部Feおよび不純物からなるも
のであるようになすことによって、芯部強度が大で、靭
性に優れ、切削等による加工性にも優れ、焼き入れ性も
良好であって、耐摩耗性やピッティングなどの面疲労強
度にも優れている耐高面圧部品を製造することが可能で
あるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0042】また、請求項3に記載しているように、浸
炭もしくは浸炭窒化処理は、プラズマ浸炭もしくはプラ
ズマ浸炭窒化法で行ない、硬質皮膜形成は、プラズマC
VD法で行ない、連続して行なうようになすことによっ
て、浸炭もしくは浸炭窒化したのち、焼き入れをする前
に硬質皮膜を形成することによって、母材が軟化し、強
度が低下するのを防止して、耐摩耗性やピッティングな
どの面疲労強度に優れた耐高面圧部品を製造することが
可能であるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0043】さらにまた、請求項4に記載しているよう
に、硬質皮膜形成は、浸炭もしくは浸炭窒化処理にひき
続き、750〜890℃の温度で行なうようになすこと
によって、母材の強度や硬度が高く、皮膜の密着性も良
好である超寿命の耐高面圧部品を製造することが可能で
あるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0044】さらにまた、請求項5に記載しているよう
に、浸炭もしくは浸炭窒化処理によって、母材の表面か
ら50μm以内の炭素濃度を0.8%以上とし、残留オ
ーステナイト量を30%以下とすることによって、硬度
をHV750以上とするようになすことによって、皮膜
の密着性を良好なものとし、母材の塑性変形を防止して
皮膜と母材との界面で亀裂が発生、進展、剥離しにくい
超寿命の耐高面圧部品を製造することが可能であるとい
う著しく優れた効果がもたらされる。
【0045】さらにまた、請求項6に記載しているよう
に、硬質皮膜は、1〜30μmの厚さにするようになす
ことによって、相手材との摩耗で皮膜が早期に摩滅する
ことがなく、また、皮膜と母材との界面で割れや剥離が
生じがたい超寿命の耐高面圧部品を製造することが可能
であるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0046】本発明による耐高面圧部品は、請求項7に
記載しているように、請求項1ないし6のいずれかに記
載の製造方法で作られたものであるから、高面圧下であ
っても十分な耐摩耗性とピッティングなどの面疲労強度
を有する耐久性の良い耐高面圧部品を提供することが可
能であるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0047】本発明による変速用歯車は、請求項8に記
載しているように、請求項1ないし6のいずれかに記載
の製造方法で作られたものであるから、高面圧下であっ
ても十分な耐摩耗性とピッティングなどの面疲労強度を
有する耐久性の良い変速用歯車を提供することが可能で
あるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0048】本発明によるトロイダル式無段変速機用転
動体は、請求項9に記載しているように、請求項1ない
し6のいずれかに記載の製造方法で作られたものである
から、高面圧下であっても十分な耐摩耗性とピッティン
グなどの面疲労強度を有する耐久性の良いトロイダル式
無段変速機用転動体を提供することが可能であるという
著しく優れた効果がもたらされる。
【0049】本発明に係わるベルト式無段変速機用プー
リは、請求項10に記載しているように、請求項1ない
し6のいずれかに記載の製造方法で作られたものである
から、高面圧下であっても十分な耐摩耗性とピッティン
グなどの面疲労強度を有する耐久性の良いベルト式無段
変速機用プーリを提供することが可能であるという著し
く優れた効果がもたらされる。
【0050】
【実施例】以下、本発明を実施例によってさらに詳述す
るが、本発明はこのような実施例によって限定されるも
のではない。
【0051】(実施例1〜5)素材として表1に示す材
質の機械構造用鋼を使用し、次いで、図3に示すローラ
ーピッティング試験片の小ローラー1を機械加工によっ
て作製した。
【0052】次に、図4〜6に示す熱処理条件で、プラ
ズマ浸炭(図4)もしくはプラズマ浸炭窒化(図5)も
しくはプラズマ高濃度浸炭(図6)にひき続いて850
℃×1時間でTiNまたはTiCの硬質皮膜を形成した
後、焼き入れ・焼き戻しを実施し、長径d=26m
m,短径d=24mm,長径部分の幅w=28m
m,短径部分の片幅w=51mmの小ローラー1を得
た。
【0053】相手材にはSCM420を素材として使用
し、機械加工によって図3に示すローラーピッティング
試験片の相手材である大ローラー2を作成した。その
後、図7に示すプラズマ浸炭焼き入れ焼き戻し処理を行
ない、表面を研磨加工して仕上げて、直径D=130
mm,幅W=18mmの大ローラー2を得た。
【0054】(実施例1〜5の評価)このようにして得
たローラーピッティング試験片の小ローラー1の断面に
ついてSEMで膜厚を観察し、EPMAで母材表面の炭
素濃度分布を測定した後、ビッカース硬度計で硬度分布
を測定した。また、X線回折法で母材の表面から50μ
m深さ位置の残留オーステナイト量を測定した。
【0055】さらに、焼き戻し軟化抵抗を調査するた
め、300℃×3時間焼き戻し処理を行ない、断面の硬
度分布をビッカース硬度計で測定した。
【0056】母材の表面から50μm深さ位置を母材表
面として炭素濃度、残留オーステナイト量、硬度を測定
した結果を表2,表3および図2に示す。
【0057】上記各実施例について、ローラーピッティ
ング試験機を使用して表4に示す条件で、剥離が発生す
るまでのn=3における累積破損確率L50%までの回
数を求め、試験終了後、小ローラー摺動部の最大摩耗深
さを測定した。この結果を表3および図10に示す。
【0058】(比較例1)素材として表1に示す材質の
機械構造用鋼を使用して小ローラー1を機械加工により
作製した後、図7に示す熱処理条件で、プラズマ浸炭焼
き入れ焼き戻しを実施し、表面研磨で仕上げ加工を行っ
た。
【0059】(比較例2)素材として表1に示す材質の
機械構造用鋼を使用して小ローラー1を機械加工により
作製した後、図8に示す熱処理条件で、プラズマ浸炭焼
き入れ焼き戻し後、600℃×2時間でTiNの硬質皮
膜を形成して小ローラ1を作成した。
【0060】(比較例3)素材として表1に示す材質の
機械構造用鋼を使用して小ローラー1を機械加工により
作製した後、図4に示す熱処理条件(ただし、成膜温度
および成膜時間を除く)で、プラズマ浸炭にひき続いて
950℃×40分でTiNの硬質皮膜を形成した後、焼
き入れ焼き戻しを行って小ローラ1を作成した。
【0061】(比較例4)素材として表1に示す材質の
機械構造用鋼を使用して小ローラー1を機械加工により
作製した後、図4に示す熱処理条件(ただし、成膜時間
を除く)で、プラズマ浸炭にひき続いて850℃×6時
間でTiNの硬質皮膜を形成した後、焼き入れ焼き戻し
を行って小ローラ1を作成した。
【0062】(比較例5)素材として表1に示す材質の
機械構造用鋼を使用して小ローラー1を機械加工により
作製した後、図9に示す熱処理条件で、プラズマ浸炭に
ひき続いて850℃×1時間でTiNの硬質皮膜を形成
した後、焼き入れ焼き戻しを行って小ローラ1を作成し
た。
【0063】(比較例1〜5の評価)各比較例のように
作成した小ローラー1は、実施例と同様、相手材には、
SCM420を素材として、図7に示すプラズマ浸炭焼
き入れ焼き戻し処理を行ない、表面を研磨加工して仕上
げた大ローラー2を用いて、表4に示した条件でローラ
ーピッティング試験を実施し、剥離が発生するまでのn
=3における累積破損確率L50%までの回数を求め、
試験終了後、小ローラー摺動部の最大摩耗深さを測定し
た。この結果を表3および図10に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】
【0068】表1ないし表3および図10に示した結果
より明らかなように、比較例1のごとく浸炭焼き入れ焼
き戻しのままでは、早期にピッティング剥離が発生する
のに対し、実施例1,2のごとく機械構造用鋼にプラズ
マ浸炭に続いて硬質皮膜を形成し、次いで焼き入れ焼き
戻しを行なうことによって、母材表面炭素濃度0.8%
以上、硬度HV750以上、残留オーステナイト量30
%以下が得られ、剥離発生寿命が大幅に向上し、なおか
つ、摩耗量が大幅に低減することが確かめられた。
【0069】また、実施例3のごとくプラズマ浸炭窒化
処理にひき続いて硬質皮膜を形成した場合、硬質皮膜と
の密着性がさらに向上し、母材の軟化抵抗性が向上する
ことから、長寿命となることが確認された。
【0070】さらに、実施例4のごとくプラズマ高濃度
浸炭にひき続いて硬質皮膜を形成した場合、母材の軟化
抵抗性が向上することから、長寿命となることが確認さ
れた。
【0071】さらにまた、実施例5のごとく硬質皮膜を
TiCとした場合、TiNに比較して膜硬度が高くなる
ことから、さらに寿命が向上することが確認された。
【0072】これに対し、比較例2のごとくプラズマ浸
炭焼き入れ焼き戻しを行い、その後硬質皮膜を形成した
場合、母材が硬質皮膜形成時に焼き戻され、硬度がHV
570程度に低下することから、接触後母材が塑性変形
し、皮膜が剥がれ、早期に剥離が発生して、図10に示
すようにピッティング寿命は短いものであった。
【0073】また、比較例3のごとく皮膜処理温度が高
温になると、母材の残留オーステナイトが30%を超え
てしまい、母材の硬度が低下することから、早期に界面
から皮膜が剥がれ、剥離が発生した。
【0074】さらに、比較例4のごとく皮膜の厚さが3
0μmを超えた場合、早期に界面から皮膜が剥がれ、早
期に剥離が発生した。
【0075】さらにまた、比較例5のごとく母材の炭素
濃度が0.8%を下回ると、母材の硬度が低くなるた
め、皮膜との密着性が低下してしまい、早期に剥離が発
生した。
【図面の簡単な説明】
【図1】歯車のピッティング寿命と300℃×3時間焼
き戻しした場合の硬度との関係を例示するグラフであ
る。
【図2】本発明実施例No.2および比較例No.2に
おける表面からの距離と硬度との関係を示すグラフであ
る。
【図3】ローラーピッティング試験要領を示す斜面説明
図である。
【図4】本発明実施例No.1,2,5で採用した熱処
理パターンにおける時間経過による温度の変化を示す説
明図である。
【図5】本発明実施例No.3で採用した熱処理パター
ンにおける時間経過による温度の変化を示す説明図であ
る。
【図6】本発明実施例No.4で採用した熱処理パター
ンにおける時間経過による温度の変化を示す説明図であ
る。
【図7】比較例No.1で採用した熱処理パターンにお
ける時間経過による温度の変化を示す説明図である。
【図8】比較例No.2で採用した熱処理パターンにお
ける時間経過による温度の変化を示す説明図である。
【図9】比較例No.5で採用した熱処理パターンにお
ける時間経過による温度の変化を示す説明図である。
【図10】熱処理パターンによるピッティング寿命への
影響を例示したグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F16H 1/00 F16H 1/00 4K042 9/12 9/12 A 4K044 15/38 15/38 55/06 55/06 // C22C 38/00 301 C22C 38/00 301Z 38/18 38/18 Fターム(参考) 3J009 DA16 EB08 FA07 3J030 BC03 BC10 3J050 AA02 BA02 CD09 DA02 3J051 AA03 BA03 BB02 BD02 BE09 CA07 CB04 EC08 FA02 4K028 BA02 BA03 BA12 BA22 4K042 AA18 AA20 BA01 BA03 BA04 CA06 DA01 DA02 DA06 DC02 DC05 4K044 AA02 AB04 AB10 BA02 BA18 BB02 BC05 BC06 CA02 CA14 CA42 CA62

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 機械構造用鋼を素材として所望の部品形
    状に加工した後、浸炭もしくは浸炭窒化処理に続いて硬
    質皮膜を形成し、次いで焼き入れ焼き戻しを行なうこと
    を特徴とする耐高面圧部品の製造方法。
  2. 【請求項2】 機械構造用鋼は、重量%で、少なくとも
    C:0.15〜0.4%、Si:0.15〜0.6%、
    Mn:0.2〜0.8%、S:0.005〜0.015
    %、Cr:0.2〜3.5%を含み、P:0.015%
    以下、O:20ppm以下に規制し、残部Feおよび不
    純物からなるものであることを特徴とする請求項1に記
    載の耐高面圧部品の製造方法。
  3. 【請求項3】 浸炭もしくは浸炭窒化処理は、プラズマ
    浸炭もしくはプラズマ浸炭窒化法で行ない、硬質皮膜形
    成は、プラズマCVD法で行ない、連続して行なうこと
    を特徴とする請求項1または2に記載の耐高面圧部品の
    製造方法。
  4. 【請求項4】 硬質皮膜形成は、浸炭もしくは浸炭窒化
    処理にひき続き、750〜890℃の温度で行なうこと
    を特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の耐高
    面圧部品の製造方法。
  5. 【請求項5】 浸炭もしくは浸炭窒化処理によって、母
    材の表面から50μm以内の炭素濃度を0.8%以上と
    し、残留オーステナイト量を30%以下とすることによ
    って、硬度をHV750以上とすることを特徴とする請
    求項1ないし4のいずれかに記載の耐高面圧部品の製造
    方法。
  6. 【請求項6】 硬質皮膜は、1〜30μmの厚さにする
    ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の
    耐高面圧部品の製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項1ないし6のいずれかに記載の製
    造方法で作られたことを特徴とする耐高面圧部品。
  8. 【請求項8】 請求項1ないし6のいずれかに記載の製
    造方法で作られたことを特徴とする変速用歯車。
  9. 【請求項9】 請求項1ないし6のいずれかに記載の製
    造方法で作られたことを特徴とするトロイダル式無段変
    速機用転動体。
  10. 【請求項10】 請求項1ないし6のいずれかに記載の
    製造方法で作られたことを特徴とするベルト式無段変速
    機用プーリ。
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