JP2009068608A - 無段変速機用プーリー及び無段変速機 - Google Patents

無段変速機用プーリー及び無段変速機 Download PDF

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Abstract

【課題】ベルトからの繰返し負荷及びベルトとの摺動発熱による、プーリーの摺動面の疲労亀裂を抑制することにより、摺動面の耐摩耗性を向上させることができる無段変速機用プーリーを提供する。
【解決手段】金属ベルトに少なくとも一部が巻きつけられ、前記金属ベルトに摺動する摺動面を少なくとも有し、素材の鋼としてJIS G 4053に規定されているクロム鋼又はクロムモリブデン鋼から選択した材料を用いた無段変速機用プーリーであって、前記摺動面が、最大谷深さRv2.0μm以下の表面粗さであり、前記炭素の含有する濃度が、0.65〜1.40質量%の範囲にあり、前記摺動面のビッカース硬さをH、前記窒素の含有する濃度N質量%としたときに、H≧−320×N+700の関係を満たしてなる。
【選択図】図4

Description

本発明は、無段変速機用プーリー及び無段変速機に係り、特に耐久性に優れた無段変速機用プーリー及び無段変速機に関する。
従来の車両のベルト式無段変速機は、図6(a)に示すように、入力プーリー1と、出力プーリー2と、無端状に形成され入力プーリー1及び出力プーリー2に巻き掛けられた金属製のベルト3と、を備えたものが一般的である。この入力プーリー1または出力プーリー2は、ベルト3の巻き付け径を制御して変速比を変化させながら、入力プーリー1の回転トルクをベルト3を介して出力プーリー2に伝達するようになっている。
具体的には、図6(b)(図6(a)のA部拡大図)に示すように、ベルト3は、2つの無端状のスチールバンド3a,3aを並置し、この2つのバンド3a,3aの対向する周縁に、エの字状のブロック(金属エレメント)3bをバンド周方向に沿って複数枚嵌め込んだ構造である。また、ベルト3に巻き付けられた入力プーリー1及び出力プーリー2は、図6(c)に示すように(図は出力プーリー2の断面図)、2つの入れ子式の円錐状のシーブ2A,2Bを備えている。そして、先に示したベルト3の巻き付け径の制御は、プーリーの回転軸に沿って2つの円錐状のシーブを移動させることにより行われる。この際、ベルト3のエッジと摩擦接触するシーブ2A,2Bの円錐周面(シーブ面)は、ベルト3の回転及びベルト3の巻付け径の制御に伴い、ベルト3のエッジが摺動する摺動面2aとなる。そして、プーリー1,2に巻付けられるベルト3の張力は高く、さらにベルト3そのものはスチールからなるので、プーリー1,2の摺動面は摩耗し易い。
よって、無段変速機用プーリー及び無段変速機の耐久性を持続させるためには、プーリーの摺動面の摩耗を抑制することが望ましい。このような課題を鑑みて、例えば、ベルトと摩擦接触するする摺動面の表面粗さを中心線平均粗さで0.1〜0.5μmとし、該摺動面の表面硬さをビッカース硬さでHv850以上としたベルト式無段変速機用プーリーが提案されている(特許文献1参照)。
特開2000−130527号公報
しかし、特許文献1に記載のプーリーは、前記中心線平均粗さの摺動面を有することにより、ベルトとの摩擦力を一定のレベルまで低減することが可能であるが、前記粗さ範囲の摺動面を有したプーリーを用いた場合であっても、ベルトからの繰返し負荷に伴い、プーリーの摺動面に疲労亀裂を伴う摩耗が発生する場合があり、ピッチング、微小クラックなどの損傷が生じることがあった。
さらに、プーリーの摺動面のビッカース硬さを前記範囲にする場合には、表面に熱処理が施されることが一般的であるが、プーリーの摺動面は、ベルトのエッジとの摺動発熱により焼き戻されて、摺動面の表面硬さが低下してしまうこともあり、前記磨耗をさらに助長する場合もあった。
本発明は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ベルトからの繰返し負荷及びベルトとの摺動発熱による、プーリーの摺動面の疲労亀裂を抑制することにより、摺動面の耐摩耗性を向上させることができる無段変速機用プーリー及び無段変速機を提供することにある。
前記課題を解決すべく、発明者らは鋭意検討を重ねた結果、プーリーの摺動面の表面粗さを中心線平均粗さRaで規定した場合には、該表面粗さは、表面の凹凸を平均化した指標であるため、前記摺動面の凹凸が大きい場合であっても、前記表面粗さの規定条件を満たす場合があると考えた。そして、摺動面の凹凸の山部が高く谷部が深い場合には、使用に伴い山部は初期摩耗により摩滅するが、特に深い谷部は摩滅することなく残存する。この結果、残存した谷部に繰返し応力が作用し、該谷部を起点とした疲労による亀裂が生じるおそれがあると考えた。そこで、発明者らは、谷部の深さを規定する指標として、最大谷深さRvに着眼した。そして、発明者らは、前記最大谷深さRvが所定の範囲を満たし、さらに、所定濃度の炭素と、所定の表面硬さになるように摺動面に所定濃度の窒素を含有させて、摺動発熱による軟化を抑制することにより、画期的にプーリーの耐摩耗性を向上させることができるとの新たな知見を得た。
本発明は、前記新たな知見に基づくものであり、本発明に係る無段変速機用プーリーは、金属ベルトに少なくとも一部が巻きつけられ、前記金属ベルトに摺動する摺動面を少なくとも有し、素材の鋼としてJIS G 4053に規定されているクロム鋼又はクロムモリブデン鋼から選択した材料を用いた無段変速機用プーリーであって、前記摺動面が、最大谷深さRv2.0μm以下の表面粗さであり、前記少なくとも摺動面において含有する炭素の濃度が、0.65〜1.40質量%の範囲にあり、前記摺動面のビッカース硬さをH、前記摺動面において含有する窒素の濃度をN質量%としたときに、H≧−320×N+700の関係を満たすことを特徴とする。
本発明に係る無段変速機用プーリーによれば、前記摺動面の最大谷深さRvを前記範囲にすることにより、摺動面の山部が摩滅し、谷部が残存した場合であっても、前記炭素濃度、及び、前記窒素濃度と硬さとの関係を満たすことにより、残存する谷部を起点とした疲労亀裂の発生を抑制することができる。この結果、ベルトとの繰返し負荷による疲労、及び、摺動発熱による表面硬さの低下に伴う摺動面の亀裂の発生を抑制することができ、摺動面の耐摩耗性を抑制することができる。
また、前記ビッカース硬さHは、Hv500以上であることが好ましい。この範囲よりも小さい場合には、表面の変形やプーリーの剛性が確保できなくなるからである。また、前記ビッカース硬さHは、より高いほうが望ましいが、極端な硬さの向上はコスト増に繋がるため、コスト面を考慮した表面処理が必要である。
本発明に係る前記無段変速機用プーリーは、前記摺動面を加熱することにより熱処理された熱処理硬化層を有しており、前記熱処理硬化層の有効硬化層深さは、少なくとも0.5mm以上であることがより望ましい。
本発明に係る無段変速機用プーリーを構成する材料は、浸炭浸窒処理(浸炭窒化処理)に適した材料であることが必要であり、従来から広く用いられているJIS G 4053で規定されているクロム鋼またはクロムモリブデン鋼を用いるのがよい。なお、クロム鋼、クロムモリブデン鋼とは、規格にSCr,SCMという記号で記載された鋼のことを意味する。このような材料は浸炭浸窒性が良く、浸炭浸窒性処理により容易に表面硬度を高めたプーリーを製造することができる。
また、本発明に係る無段変速機用プーリーで用いる素材としては、前記したJIS G 4053で規定されているクロム鋼又はクロムモリブデン鋼の含有するSi,Mn,Moのうち少なくとも一種についてさらに増量し、以下の(a)〜(c)のうち少なくとも一種の条件を満足する範囲の成分を含有する鋼を用いることもできる。(a)Si:0.35質量%を超え、かつ、1.0質量%以下、(b)Mn:前記選択した材料において前記JIS規格で規定されているMnの含有量の上限値を超え、かつ、1.5質量%以下、(c)Mo:前記選択した材料において前記JIS規格で規定されているMoの含有量の上限値を超え、かつ、0.8質量%以下である。本発明によれば、前記(a)〜(c)のうち少なくとも一種の元素を、JIS G 4053で規定の鋼に比べて増量することにより、摺動面の耐摩耗性をさらに向上させることができる。
すなわち、Siは、焼戻し軟化抵抗性を向上させるために有用であり、前記選択した材料において前記JIS規格(JIS G 4053)で規定されているSiの含有量の上限値0.35質量%を超えて含有させることにより、更に焼き戻し軟化抵抗性を向上させることができる。しかしながら、1.0質量%よりも多い場合には、材料の靭性が低下するおそれがある。
Mnは、材料の焼入れ性を確保するために有用であり、前記選択した材料において前記JIS規格(JIS G 4053)で規定されているMnの含有量の上限値を超えて含有させることにより、更に焼入れ性を向上させることができる。しかしながら、1.5質量%よりも多い場合には、粒界酸化を招くおそれがある。
Moは、Mnと同様に材料の焼入れ性を確保するために有用であり、前記選択した材料において前記JIS規格(JIS G 4053)で規定されているMoの含有量の上限値を超えて含有させることにより、更に焼入れ性を向上させることができる。しかしながら、0.8質量%よりも多い場合には、材料の加工性を低下させるおそれがある。
尚、Mn及びMoの下限値を、JIS規格(JIS G 4053)で規定されている含有元素(Mn,Mo)の含有量の上限値を超えるとしたのは、選択した材料によって前記JIS規格により規定される含有元素の含有量の上限値が異なっていることを考慮したものである。例えば、前記選択した材料がSCM420である場合には、JIS規格(JIS G 4053)で規定されているSCM420のMoの含有量の上限値は0.25質量%であることから、前記(c)に示す「前記選択した材料において前記JIS規格により規定されるMoの含有量の上限値を超え」とは、この場合「0.25質量%超え」を意味する。
また、本発明に係る前記無段変速機用プーリーで用いる素材の鋼としては、さらに、以下の(d)〜(g)のうち少なくとも一種の条件を満足する範囲の元素を、追加添加することにより、摺動面の耐摩耗性をさらに向上させることができる。(d)Nb:0.005〜0.2質量%、(e)Ti:0.005〜0.2質量%、(f)Ni:0.05〜3.0質量%、(g)B:0.0005〜0.005質量%である。
すなわち、Nbは、Nb(C,N)を形成し、材料の結晶粒粗大化防止に有用であり、0.005質量%よりも少ない場合には、この効果が期待できない。また、0.2質量%よりも多い場合であっても、その効果は飽和してしまい、それ以上の効果は期待できない。
Tiは、Ti(C,N)を形成し、材料の結晶粒粗大化防止に有用であり、0.005質量%よりも少ない場合には、この効果を得ることが難しい。また、0.2質量%よりも多い場合であっても、その効果は飽和してしまい、それ以上の効果は期待できない。
Niは、材料の焼入れ性を確保するために有用であり、0.05質量%よりも少ない場合には、この効果が期待できない。また、3.0質量%よりも多い場合には、硬さの上昇を招き、材料の加工性を低下させることになる。
Bは、材料の焼入れ性を確保するために有用であると共に粒界強度を向上させるために有用であり、0.0005質量%よりも少ない場合には、この効果が期待できない。また、0.005質量%よりも多い場合であっても、前記効果は飽和してしまい、それ以上の効果は期待できない。
Nb、Ti、Ni、Bは、前述のとおり、材料に含有させることで、それぞれ有用な特性を得ることができるため、目的とする特性に合わせて、前述の含有範囲内で材料に含有させることができる。
さらに、本発明に係る無段変速機は、上述したプーリーを入力プーリー及び出力プーリーのいずれか一方又は双方に備え、かつ、該入力プーリー及び出力プーリーに巻き掛けられた金属ベルトを少なくとも備えている。このようなプーリーを用いることにより、プーリーの耐摩耗性を向上させることができる。
本発明に係る無段変速機用プーリーによれば、ベルトからの繰返し負荷及びベルトとの摺動発熱による、プーリーの摺動面の疲労亀裂を抑制することにより、摺動面の耐摩耗性を向上させることができる。
以下に、本発明を実施例により説明する。
(実施例1)
<試験体>
図1に示すように、クロムモリブデン鋼(JIS規格:SCM420)を準備し、図6(c)に示す無段変速機用プーリーの形状に、機械加工を行った。次に、図2に示すように、機械加工後のプーリーに対して浸炭浸窒処理を行った。具体的には、機械加工後のプーリーを加熱炉内に投入し、950℃、カーボンポテンシャル(C.P.)0.9体積%の雰囲気下で6時間保持した後、840℃、カーボンポテンシャル(C.P.)0.8体積%、アンモニア(NH)ガス1体積%〜10体積%の雰囲気下で4時間保持し、その後60℃で油焼入れした後、160℃で80分焼き戻しを行った。このようにして、少なくとも摺動面において含有する炭素の濃度が、0.74質量%(0.65〜1.40質量%の範囲にあり)であり、摺動面のビッカース硬さがHv698であり、摺動面において含有する窒素の濃度が0.4質量%であり、摺動面のビッカース硬さをH、前記摺動面において含有する窒素の濃度をN質量%としたときに、H≧−320×N+700の関係を満たす、無段変速機用プーリーを得た。なお、前記機械加工及び浸炭浸窒処理後の仕上げ研磨により、摺動面の最大谷深さRv0.8μm(Rv2.0μm以下)の表面粗さにした。
<摩耗試験>
製作した試験体(無段変速機用プーリー)を搭載した無段変速機を、入力トルクを任意に変更できる装置に取付け、摩耗試験を行った。プーリーの使用環境条件として最も摩耗が厳しいとされる変速比が最大となるアンダードライブ側に、ベルトの巻き付け位置を固定した条件(γmax)において、プライマリプーリー(入力プーリー)に入力するトルク、シーブとベルト狭圧を過負荷のかかる状態にして、摩擦試験を実施した。
具体的には、入力トルクTin=300Nm、プライマリプーリーへの入力回転数Nin=3400rpm、変速比γmax固定、油温150℃環境下において、17時間運転後のシーブ面(摺動面)の摩耗量(摩耗深さ)を測定した。この結果を図3に示す。また、摺動面のビッカース硬さと、摺動面において含有する窒素の濃度との関係を図4に示す。
なお、図3に示す「Rv値」は、最大谷深さの値(μm)を示し、「C濃度%」は、摺動面において含有する炭素の濃度の値(質量%)を示し、「N濃度%」は、摺動面において含有する窒素の濃度の値(質量%)を示し、「H値」は、N濃度%の値を用いて−320×N+700に代入した下限表面硬さ相当値を示しており、「硬さHv」は、摺動面のビッカース硬さの測定値を示しおり、「摩耗量」は、摩耗試験したときのプーリーの摩耗深さの値(μm)を示している。
(実施例2〜16)
実施例1と同じようにして、実施例2〜16の無段変速機用プーリーを製作した。実施例2〜8が、実施例1と相違する点は、図1及び3に示す鋼材(素材)を用いた点である。また、実施例9〜10が、実施例1と相違する点は、浸炭処理条件、浸窒処理条件を変化させ、更に、図3の最大谷深さとなるように、機械加工時の切削速度及び送り速度、または研削時の仕上げ用砥石の粗さを変化させた点である。
なお、実施例2〜16が実施例1と共通する点は、いずれも、図3に示すように、摺動面が、最大谷深さRv2.0μm以下の表面粗さであり、少なくとも摺動面において含有する炭素の濃度が、0.65〜1.40質量%の範囲にあり、摺動面のビッカース硬さをH、摺動面において含有する窒素の濃度をN質量%としたときに、H≧−320×N+700の関係を満たすように、試験体(無段変速機用プーリー)を製作した点である。そして、実施例1と同じように、摩擦試験を行った。この結果を、図3に示す。また、摺動面のビッカース硬さと、摺動面において含有する窒素の濃度との関係を図4に示す。
(比較例1〜7)
実施例1と同じようにして、試験体を製作した。比較例1〜7が、実施例1と相違する点は浸炭浸窒処理条件を変化させ、更に、図3の最大谷深さとなるように、機械加工時の切削速度及び送り速度、または研削時の仕上げ用砥石の粗さを変化させた点である。
具体的には、比較例1〜3は、摺動面において含有する炭素濃度が0.65質量%以下であって、さらに、摺動面のビッカース硬さをH、前記摺動面において含有する窒素の濃度をN質量%としたときに、H≧−320×N+700の関係を満たさないように浸炭浸窒処理を行い、試験体(無段変速機用プーリー)を製作した点が実施例1と相違する。
また、比較例4,5は、摺動面のビッカース硬さをH、前記摺動面において含有する窒素の濃度をN質量%としたときに、H≧−320×N+700の関係を満たさないように、試験体を製作した点が実施例1と相違する。
さらに、比較例6,7は、摺動面が、最大谷深さRv2.0μmよりも大きい表面粗さとなるように試験体を製作した点が実施例1と相違する。そして、実施例1と同じように、摩擦試験を行った。この結果を、図3に示す。また、摺動面のビッカース硬さと、摺動面において含有する窒素の濃度との関係を図4に示す。
[結果]
実施例1〜16は、全て摩耗量が10μm以下であったのに対して、比較例1〜7の摩耗量は、10μmを超えていた。
[考察]
比較例1〜3の摩耗量の値が、実施例1〜16のものに比べて大きくなったのは、摺動面に含有する炭素の濃度が低く、さらに、図4に示すように、摺動面のビッカース硬さをH、前記摺動面において含有する窒素の濃度をN質量%としたときに、H≧−320×N+700の関係を満たしていないからであると考えられる。
また、比較例4,5の摩耗量の値が、実施例1〜16のものに比べて大きかったのは、図4に示すように、摺動面のビッカース硬さをH、前記摺動面において含有する窒素の濃度をN質量%としたときに、H≧−320×N+700の関係を満たしていないからであると考えられる。
さらに、比較例6,7の摩耗量の値が、実施例1〜16のものに比べて大きかったのは、最大谷深さが、2.0μmよりも大きい表面粗さであり、表面の凹部を起点とした疲労亀裂により摺動面の摩耗が進行したものと考えられる。
以上のことから、図5に示すメカニズムで摩耗が進行すると考えられる。まず、(1)摺動面の最大山高さRpにあたる凸部(山部)は、摺動初期の段階で、ベルトと摺動し摩滅する。しかし(2)最大谷深さRvにあたる凹部は摩滅せず残存するので、ベルトの繰返し応力により疲労亀裂の起点に成りやすい。一方、(3)表面の凹部(谷部)の先端は、硬さが高い方が亀裂が発生し難く、表面に近いほど、加工硬化量も大きい。(1)〜(3)を考慮すると、摺動面の最大谷深さRvは小さいほどよく、摺動面の最大谷深さRv2.0μm以下の表面粗さであれば、摺動面の疲労亀裂起因の摩耗を抑制することができると考えられる。
さらに、この条件に加え、摺動面において含有する炭素の濃度が、0.65〜1.40質量%の範囲にあり、摺動面のビッカース硬さをH、前記摺動面において含有する窒素の濃度をN質量%として、H≧−320×N+700の関係を満たしたときに、ベルトとの摺動発熱による摺動面の硬さの低下を抑制し、プーリーの摺動面の疲労亀裂を抑え、プーリーの耐摩耗性を向上させることができると考えられる。
なお、図3,4に示すように、実施例6の試験体は、0.005〜0.2質量%の範囲を満たすニオブを含有しており、実施例7の試験体は、0.005〜0.2質量%の範囲を満たすチタンを含有しており、実施例8の試験体は、0.05〜3.0質量%の範囲を満たすニッケルを含有しており、実施例9の試験体は、0.0005〜0.005質量%の範囲を満たすホウ素を含有している。前記範囲内で、さらに元素が添加された場合であっても、図3に示すように、摺動面の耐摩耗性は確保されると考えられる。
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更があっても、それらは本発明に含まれるものである。
実施例1〜16及び比較例1〜7の無段変速機用プーリーの組成を示した図。 実施例1の浸炭浸窒処理の条件を説明するための図。 実施例1〜16及び比較例1〜7の特性と摩耗試験の結果を示した図。 実施例1〜16及び比較例1〜7の摺動面のビッカース硬さと、摺動面において含有する窒素の濃度との関係を示した図。 摺動面における最大谷深さと摩耗の関係を説明するための図。 従来の無段変速機の要部模式図であり、(a)は、無段変速機の要部斜視図、(b)は、(a)のA部の部分拡大図、(c)は、出力プーリーの模式断面図。
符号の説明
1:入力プーリー、2:出力プーリー、2A,2B:シーブ、2a:摺動面、3:ベルト

Claims (6)

  1. 金属ベルトに少なくとも一部が巻きつけられ、前記金属ベルトに摺動する摺動面を少なくとも有し、素材の鋼としてJIS G 4053に規定されているクロム鋼又はクロムモリブデン鋼から選択した材料を用いた無段変速機用プーリーであって、
    前記摺動面が、最大谷深さRv2.0μm以下の表面粗さであり、
    前記摺動面において含有する炭素の濃度が、0.65〜1.40質量%の範囲にあり、
    前記摺動面のビッカース硬さをH、前記摺動面において含有する窒素の濃度をN質量%としたときに、
    H≧−320×N+700
    の関係を満たすことを特徴とする無段変速機用プーリー。
  2. 前記無段変速機用プーリーは、少なくとも前記摺動面を加熱することにより熱処理された熱処理硬化層を有しており、前記熱処理硬化層の有効硬化層深さは、少なくとも0.5mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の無段変速機用プーリー。
  3. 請求項1又は2に記載の無段変速機用プーリーについて、前記素材の鋼に含有するSi,Mn,Moについてさらに増量し、以下の(a)〜(c)の少なくとも一種の条件を満足する範囲の成分を含有する鋼を用いたことを特徴とする無段変速機用プーリー。
    (a)Si:0.35質量%を超え、かつ、1.0質量%以下
    (b)Mn:前記選択した材料において前記JIS規格で規定されているMnの含有量の上限値を超え、かつ、1.5質量%以下
    (c)Mo:前記選択した材料において前記JIS規格で規定されているMoの含有量の上限値を超え、かつ、0.8質量%以下
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の無段変速機用プーリーについて、素材として用いる鋼にさらに、Nb,Ti,Ni,Bを追加添加し、以下の(d)〜(g)の少なくとも一種の条件を満足する範囲の元素が添加された鋼を素材として用いたことを特徴とする無段変速機用プーリー。
    (d)Nb:0.005〜0.2質量%
    (e)Ti:0.005〜0.2質量%
    (f)Ni:0.05〜3.0質量%
    (g)B:0.0005〜0.005質量%
  5. 前記請求項1〜4のいずれかに記載の無段変速機用プーリーを備えた無段変速機。
  6. 金属ベルトに少なくとも一部が巻きつけられ、前記金属ベルトに摺動する摺動面を少なくとも有し、クロム鋼又はクロムモリブデン鋼からなる無段変速機用プーリーであって、
    前記摺動面が、最大谷深さRv2.0μm以下の表面粗さであり、
    前記摺動面において含有する炭素の濃度が、0.65〜1.40質量%の範囲にあり、
    前記摺動面のビッカース硬さをH、前記摺動面において含有する窒素の濃度をN質量%としたときに、
    H≧−320×N+700
    の関係を満たすことを特徴とする無段変速機用プーリー。
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