以下、本発明の実施の形態を説明する。本実施の形態の画像形成方法は、樹脂層の表面に粉体を配置して画像を形成するための画像形成方法である。
[画像形成方法]
本発明の実施の形態は、記録媒体上に樹脂層を形成する工程と、上記樹脂層の表面に粉体を供給する工程と、を有する、上記樹脂層と上記粉体とが接触してなる加飾画像を形成する方法を有する。
また、本発明の別の実施の形態は、記録媒体と、上記記録媒体上に形成された樹脂層とを含む樹脂製画像が有する上記樹脂層を軟化する工程と、上記樹脂層の表面に粉体を供給する工程と、を有する。
本実施のいずれの形態においては、上記樹脂層の表面に粉体を供給する工程の後に、上記供給された粉体を配向させる工程をさらに有してもよい。また、上記配向させる工程の後に、上記樹脂層に付着しなかった粉体を回収する工程をさらに有してもよい。
(樹脂層を形成する工程)
本実施形態の画像形成方法は、上記記録媒体上に樹脂層を形成することができれば特に制限されない。記録媒体上に樹脂層を形成する工程は、後述する記録媒体上に粉体を供給する工程の前に行われても後に行われてもよい。
上記記録媒体上に形成される樹脂層は、樹脂を含む層であれば特に制限されず、公知の樹脂から適宜に選ぶことができる。また、樹脂層は、着色剤、分散剤、界面活性剤、可塑剤、離型剤、酸化防止剤等の他の成分を含んでいてもよい。
上記樹脂層は、熱可塑性樹脂または熱溶融性樹脂を含むことが好ましい。
熱可塑性樹脂または熱溶融性樹脂の例には、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、オレフィン樹脂(環状オレフィン樹脂を含む)、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ハロゲン含有樹脂(ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂など)、ポリスルホン樹脂(ポリエーテルスルホン、ポリスルホンなど)、セルロース誘導体(セルロースエステル類、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類など)、シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなど)、ポリビニルエステル樹脂(ポリ酢酸ビニルなど)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリビニルアルコール樹脂およびこれらの誘導体樹脂、ゴムまたはエラストマー(ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ウレタンゴムなど)などが含まれる。上記熱可塑性樹脂および熱溶融性樹脂は、単独でもまたは2種以上組み合わせても使用することができる。なお、本明細書中、「(メタ)アクリル」とは、「アクリルおよび/またはメタクリル」を示すものである。
また、熱可塑性樹脂および熱溶融性樹脂は、共重合体であってもよい。熱可塑性樹脂が共重合体である場合の共重合体の形態は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、交互共重合体のいずれでもよい。
上記樹脂の中でも、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレン−アクリル樹脂およびポリエステル樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、スチレン−アクリル樹脂を含むことがより好ましい。本発明でいうスチレン−アクリル樹脂とは、少なくともスチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを用いて、重合を行うことにより形成されるものである。ここで、スチレン単量体には、CH2=CH−C6H5の構造式で表されるスチレンの他、スチレン構造中に公知の側鎖や官能基を有する構造のものも含まれる。
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体とは、エステル結合を有する官能基を側鎖に有するものである。(メタ)アクリル酸エステル単量体の例には、CH2=CHCOOR(Rはアルキル基)で表されるアクリル酸エステル単量体の他、CH2=C(CH3)COOR(Rはアルキル基)で表されるメタクリル酸エステル単量体などのビニル系エステル化合物が含まれる。
また、スチレン−アクリル樹脂の例には、上記スチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体のみで形成された共重合体の他に、一般のビニル単量体(オレフィン類、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、ビニルケトン類、N−ビニル化合物類など)をさらに用いて形成される共重合体が含まれる。さらに、スチレン−アクリル樹脂の例には、スチレン単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体およびその他の一般のビニル単量体の他、多官能性ビニル単量体や、側鎖にイオン性解離基(カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基など)を有するビニル単量体を用いて形成される共重合体も含まれる。ビニル単量体の例には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などが含まれる。
樹脂層に含まれる樹脂のガラス転移温度(Tg)は、特に制限されないが、35〜70℃の範囲が好ましく、40〜60℃の範囲がより好ましい。熱により樹脂層の表面状態が制御しやすくなり、加飾表現の質感の調節が容易になるという利点がある。なお、樹脂のガラス転移温度(Tg)は、実施例に記載の方法により測定することができる。
樹脂のガラス転移温度(Tg)は、樹脂を構成する単量体の種類の選択や、単量体の共重合比(質量比)および分子量の調節等によって、制御することができる。たとえば、スチレン−アクリル樹脂においては、単量体全体に対し、ガラス転移温度の低いn−ブチルアクリレートの共重合比(質量比)を大きくすることによりガラス転移温度(Tg)を低くすることができる。また、ガラス転移温度の高いスチレンの共重合比(質量比)を大きくすることにより、ガラス転移温度(Tg)を高くすることができる。
樹脂層に含まれる樹脂の重量平均分子量は特に制限されないが、2,000〜1,000,000であることが好ましく、5,000〜100,000であることがより好ましく、10,000〜50,000であることが特に好ましい。
また、樹脂層中における樹脂の含有量は特に制限されないが、熱により樹脂層の表面を軟化させ、樹脂層の表面状態を制御しやすくするという観点から、樹脂層の総質量に対して60〜97質量%であることが好ましく、70〜95質量%であることがより好ましい。
一方、樹脂層が樹脂と共に他の成分(例えば、着色剤、離型剤等)を含む場合、当該他の成分の含有量は特に制限されないが、熱により樹脂層の表面を軟化させ、樹脂層の表面状態を制御しやすくするという観点から、樹脂層の総質量に対して3〜40質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましい。
樹脂層は、着色剤を含むことが好ましい。着色剤は、特に制限されず、公知の染料および顔料を用いることができる。着色剤の例には、以下のような着色剤が含まれる。ただし、これらに制限されるものではない。
イエロートナー用のイエロー着色剤としては、染料としてC.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162等、また、顔料としてC.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185等が使用可能で、これらの混合物も使用可能である。
マゼンタトナー用のマゼンタ着色剤としては、染料としてC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122等、顔料としてC.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222等が使用可能で、これらの混合物も使用可能である。
シアントナー用のシアン着色剤としては、染料としてC.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等、顔料としてC.I.ピグメントブルー1、同7、同15:3、同18:3、同60、同62、同66、同76等が使用可能である。
オレンジトナー用のオレンジ着色剤としては、染料としてC.I.ソルベントオレンジ63、同68、同71、同72、同78等、顔料としてC.I.ピグメントオレンジ16、同36、同43、同51、同55、同59、同61、同71等が使用可能である。
グリーントナー用のグリーン着色剤としては、染料としてC.I.ソルベントグリーン3、同5、同28等、顔料としてC.I.ピグメントグリーン7等が使用可能である。
ブラックトナー用の着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、鉄・チタン複合酸化物ブラック等が使用可能であり、カーボンブラックとしては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等が使用可能である。また、磁性体としてはフェライト、マグネタイトなどが使用可能である。
白色トナー用の着色剤としては、無機顔料(例えば、チタンホワイト、ジンクホワイト、チタンストロンチウムホワイト、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、サチンホワイト、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、ホワイトカーボン、カオリン、焼成カオリン、デラミネートカオリン、アルミノケイ酸塩、セリサイト、ベントナイト、スメクサイト等)、又は有機顔料(例えば、ポリスチレン樹脂粒子、尿素ホリマリン樹脂粒子等)が挙げられる。
また、上記他の成分としての離型剤は、特に制限されず、公知の離型剤を用いることができる。離型剤としては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス;マイクロクリスタリンワックスなどの分枝鎖状炭化水素ワックス;パラフィンワックス、サゾールワックスなどの長鎖炭化水素系ワックス;ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス;カルナウバワックス、モンタンワックス、ベヘニルベヘネート、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1、18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス;エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックス等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。これらは、1種類のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
樹脂層は、乾式および湿式の電子写真やインクジェットなどの公知の画像形成方法によって形成することができる。
上記樹脂層は、電子写真方式で形成されたトナー画像からなる層であり、記録媒体に定着されたトナー粒子により構成された樹脂層であることが好ましい。トナー粒子であれば、電子写真方式による画像形成方法を利用することができるので、樹脂層の形成が容易である。また、トナー粒子は熱可塑性を有するので、トナー粒子により構成された樹脂層は熱で軟化することができ、軟化した状態で粉体を供給して付着することが容易である。
また、樹脂層は、記録媒体に定着された複数種のトナー粒子により構成された樹脂層であることが好ましい。複数種のトナー粒子により樹脂層を構成することで、樹脂層と粉体との組み合わせで、様々な加飾画像を形成することができる。上記複数種のトナー粒子は、例えば、含有する色材により呈される色が異なる複数種のトナー粒子とすることができる。トナー粒子の例には、ブラックトナー粒子、白色トナー粒子、クリアトナー粒子、シアントナー粒子、イエロートナー粒子、マゼンタトナー粒子などが含まれる。上記トナー粒子の中では、画像の見栄えをよくする観点から、白色トナー粒子を含むことが好ましい。
上記記録媒体は、上記樹脂層を担持可能な物体から適宜選択することができる。上記記録媒体は、通常、シート状の形状を有するが、形状は限定されない。また、上記記録媒体の色は限定されず、例えば、形成すべき最終画像に応じて適宜に決めればよい。
摺擦時において、記録媒体の表面の凹凸による影響を低減する観点から、上記記録媒体は、その表面をより平滑にしやすい樹脂フィルムであることが好ましい。
上記樹脂フィルムの例には、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、セルローストリアセテートフィルム、ナイロンフィルム、ポリ乳酸フィルムおよび上記フィルムを積層したフィルム支持体などが含まれる。上記樹脂フィルムの中でも、入手しやすく、印刷適性を有する観点から、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリエステルフィルムが好ましい。また、ポリエステルフォルムの中でも樹脂層が溶融する温度であっても溶融しない耐熱性を有する、ポリエチレンテレフタレートフィルムがより好ましい。
上記樹脂フィルムの厚さは、用途に応じて適宜選択することができるが、10〜250μmであることが好ましく、20〜100μmであることがより好ましい。厚さを10μm以上とすることで、フィルムの剛性が向上してトナー像の形成が容易となる。一方、厚さを250μm以下とすることで、フィルムの剛性が抑えられ、折り曲げられた際に当該フィルム上に形成されるトナー層が割れにくくなる。また、上記厚さを有することにより、樹脂層が加熱された際に、熱による変形が生じにくい。
上記記録媒体の表面の算術平均高さ(Sa)は、0.001μm以上0.8μm以下が好ましく、0.001μm以上0.5μm以下であることがより好ましい。上記範囲内の表面の算術平均高さ(Sa)であれば、樹脂層の厚さが薄い場合であっても、軟化した樹脂層(記録媒体上に配置されている)の表面に供給された粉体を摺擦する際に、記録媒体の表面状態の影響を受けることなく粉体を所望する方向に配向することができるため、よりミラー調/パール調〜グリッター調までの広い範囲で、メタリック感を制御できる。ここで、「摺擦」とは、記録媒体上の樹脂層の表面に接触しながら上記表面に沿って相対的に移動することをいう。また、「押圧」とは、樹脂層の表面に対して交差する方向(例えば垂直方向)に樹脂層の表面を押すことを言う。
上記算術平均高さ(Sa)は、レーザー顕微鏡を用いて画像全領域を撮影することで測定することができる。上記算術平均高さSaは、キーエンス社製のレーザー顕微鏡VK−250を用い、対物レンズ50倍で撮影した画像全領域を用いて算出した値を用いる。
また、記録媒体が樹脂フィルムである場合には、樹脂層を軟化する温度に調整する際に、樹脂フィルムもある程度軟化することから、摺擦時に樹脂層が記録媒体から剥離することを抑制できる。また、後述する摺擦時の樹脂層の表面への押圧力による樹脂層の変形にも追従しやすいため、押圧力を小さくしても、樹脂層の表面に供給された粉体の方向を揃えることができる。
また、フィルムは平滑性が高いので、非常に光沢感の強いミラー調/パール調の加飾が可能であり、したがって、より光沢感の強いミラー調/パール調〜グリッター調まで、メタリック感を非常に広い範囲で制御できる。
また、樹脂フィルムは、延伸処理が施されていても良い。延伸処理方法としては、押出成膜法等で樹脂を溶融押出してシート状にした後、同時二軸延伸または逐次二軸延伸を行うことが一般的である。また、逐次二軸延伸の場合は、始めに縦延伸処理を行い、次に横延伸を行うことが一般的である。具体的には、ロール間の速度差を利用した縦延伸と、テンターを用いた横延伸とを組み合わせる方法が多く用いられる。
また、フィルム表面には必要に応じて、火炎処理やコロナ放電処理等の各種表面処理が施されていても良いし、オーバーコート層が設けられていても良い。
上記樹脂層は、記録媒体である樹脂フィルム上に配置される。ここで、前記記録媒体と、前記樹脂層と、が積層されている部分における透過率は、70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましく、50%以下であることがさらに好ましい。上記透過率は、記録媒体の色調および樹脂層の色調により任意に調整することができる。透過率を上記範囲にすることにより、記録媒体の裏側からの入射する光が遮断されることから、粉体により反射される光をより際立たせることができるので見栄えのよい画像を得ることができる。ここで「透過率」とは、光学および分光法において、特定の波長の入射光が試料を通過する割合のことをいう。
上記樹脂層と上記記録媒体と、が積層されている部分における透過率は、次のように平均透過率を求め、その値から算出することができる。
平均光透過率の値は下記式(1)のようにして求めることができる。具体的には、平均光透過率の値は、コニカミノルタ製CM−3600dにて、記録媒体と樹脂とを含有する層を合わせた画像の透過スペクトルを測定し、得られた分光波長400〜700nmの波長領域における光透過率の平均値である。
上記式(1)において、T400は光波長400nmにおける光透過率の値(%)、T410は光波長410nmにおける光透過率の値(%)、・・・をそれぞれ示す。本発明では、記録媒体と樹脂を含有する層とで構成される画像の任意の10箇所について、上記平均光透過率を求め、さらにその算術平均値をとったものを、「透過率」とする。
(粉体を供給する工程)
本実施形態の画像形成方法は、樹脂層の表面に粉体を供給する工程を含んでもよい。
上記樹脂層を軟化させる方法の例には、樹脂層が配置された記録媒体を画像面が上になるように、ホットプレート上に配置させて記録媒体の下側から加熱する方法、画像面側(上側)からヒータで加熱する方法、樹脂層を軟化させる軟化剤を樹脂層の表面に付与する方法、および記録媒体の上側または下側から光照射により軟化させる方法などがある。
上記樹脂層を加熱により軟化させる場合には、上記樹脂層が軟化して上記粉体が付着する温度(以下、「付着温度」とも言う)で行う。
上記付着温度は、常温の上記樹脂層の温度を徐々に上げていき、所期の画像が得られる温度、例えば、ミラー調の画像であれば上記層の表面に上記粉体が貼り付き始める温度を検出することによって求めることが可能であり、さらに温度を上げてグリッター調の画像が得られる温度を検出することによっても求めることが可能である。
上記方法で決定した付着温度は、樹脂層の軟化状態を変えることにより質感の異なるメタリック感(ミラー調/パール調〜グリッター調)を得るという観点から、70〜150℃であることが好ましい。上記温度は、例えば、使用する記録媒体である樹脂フィルムの種類、樹脂フィルムの厚さ、樹脂層の軟化のし易さなどによって適宜選択することができる。また、所望する質感(光沢)に合わせて、上記温度を適宜選択することができる。
また、画像面側(上側)からヒータで加熱する方法においても、上記方法と同様にして、付着温度を決めることができる。
上記樹脂層の表面に上記軟化剤を付与する方法の場合には、付着温度が、記録媒体の温度が当該記録媒体に変形が生じる温度より低くなるように、または粉体の温度が当該粉体に劣化、変色もしくは変形が生じる温度よりも低い温度となるようにする。上記樹脂層の加熱は、粉体が供給された後に行われてもよいし、粉体が供給される前に行われてもよいし、粉体の供給と同時に行われてもよい。
上記軟化剤は、樹脂層を軟化させることができれば特に制限されない。軟化剤の例には、有機溶剤、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、またはそれらを含む溶液などが含まれ、具体的には、アジピン酸イソブチル、テトラヒドロフラン、またはそれらを含む溶液などが含まれる。軟化剤を樹脂層の表面に付与すると、樹脂層を構成する樹脂が部分的に溶解するか、または、樹脂が膨潤することにより、樹脂層が軟化すると考えられる。
上記軟化剤の付与は、軟化剤を樹脂層の表面に付与できれば、特に制限されない。軟化剤を付与する方法の例には、スプレー塗布、インクジェット方式、ディスペンサーによる塗布などが含まれる。軟化剤は、粉体を供給する前に付与されてもよいし、粉体を供給した後に付与されてもよいし、粉体の供給と同時に付与されてもよい。上記軟化剤の付与量は、特に制限されず、樹脂層、粉体、所望の加飾効果等に応じて任意に調整されればよく、樹脂層を十分に軟化させる程度でも、樹脂層が接着能を持ちはじめる程度でもよい。
上記樹脂層を光照射により軟化させる場合には、上記樹脂層を変色または劣化させない方法であれば、特に限定されない。光照射の例には、紫外線照射、可視光照射、赤外線照射、レーザー照射などが含まれる。上記光照射の中でも、取り扱いが容易で、樹脂層を十分な速度で軟化させることができるという観点から紫外光を用いることが好ましい。特に、樹脂層がトナー像である場合、異なる色のトナーを含む樹脂層を容易に軟化できるという観点で、光照射は、紫外光で行うことが好ましい。
上記粉体は、上記軟化された樹脂層の表面に供給することができる。
上記粉体は粉体粒子が集合したものである。上記粉体は、例えば、メタリック感のある加飾効果を得たい場合、金属粉または金属酸化物粉を含むものであることが好ましい。粉体粒子の例には、金属粒子、樹脂粒子、熱応答性材料を含む粒子、磁性粒子、非磁性粒子などが含まれる。また、粉体粒子は異なる2種以上の材料からなるものであってもよい。粉体粒子の形状は、球形粒子であってもよいし、非球形粒子であってもよい。粉体は、合成品であってもよいし市販品であってもよい。粉体は、異なる二種以上の粉体粒子の混合品であってもよい。なお、粉体はトナーではない。
上記粉体粒子は、被覆されていてもよい。たとえば、金属粒子は、当該金属とは異なる金属、金属酸化物または樹脂で被覆されたものでもよいし、樹脂またはガラス等の表面を金属、金属酸化物で被覆したものでもよい。また、金属粒子は金属酸化物粒子であってもよく、当該金属酸化物とは異なる金属酸化物、金属または樹脂で被覆されたものでもよい。また、金属粒子は、金属または金属酸化物を板状に延展させて粉砕したものやそれを種々の材料で被覆したもの、フィルムやガラスに金属または金属酸化物を蒸着または湿式コーティングしたものでもよい。メタリック画像を得るためには、金属粒子は金属または金属酸化物を含有することが好ましいが、金属または金属酸化物の含有量は0.2〜100wt%が好ましい。
上記粉体は、真球ではない形状を有する粉体(非球形粉体)、例えば、扁平な粒子形状を有することが、上記表面層の表面に沿って粉体を配向させて付着させる観点から好ましい。上記粉体の「扁平な粒子形状」とは、粉体の粒子における最大長さを長径、当該長径に直交する方向における最大長さを短径、上記長径に直交する方向の最少長さを厚み、とするときに、厚みに対する短径の比率が5以上である形状であること、をいう。
上記粉体の厚みは、粉体の配向した付着による外観効果を十分に発現させる観点から、0.2〜10μmであることが好ましく、0.2〜3.0μmであることがより好ましい。上記厚みが小さすぎると、上記樹脂層の表面に付着した粉体の上記長径方向および上記短径方向を含む粉体の平面方向が上記樹脂層の表面方向に実質的に沿う粉体の良好な配向状態が十分に形成されないことがある。上記厚みが大きすぎると、画像をこすった時に粉体が取れてしまうことがある。
上記粉体の例には、メタシャイン(日本板硝子株式会社製、「メタシャイン」は同社の登録商標)、サンシャインベビー クロムパウダー、オーロラパウダー、パールパウダー(いずれも株式会社GGコーポレーション製)、ICEGEL ミラーメタルパウダー(株式会社TAT製)、ピカエース MCシャインダスト 、エフェクトC(株式会社クラチ製、「ピカエース」は同社の登録商標)、PREGEL マジックパウダー、ミラーシリーズ(有限会社プリアンファ製、「PREGEL」は同社の登録商標)、Bonnailシャインパウダー(株式会社ケイズプランイング製、「BON NAIL」は同社の登録商標)、エルジーneo(尾池工業株式会社製、「エルジーneo」は同社の登録商標)、アストロフレーク(日本防湿工業株式会社製、岡崎一の登録商標)、アルミニウム顔料(東洋アルミニウム株式会社製)が含まれる。
上記熱応答性材料は、熱による刺激をきっかけに膨張、収縮、変形などの形状の変化、顕色、消色、変色などの色の変化を起こす材料である。熱応答性材料を含む粒子の例には、熱膨張性マイクロカプセル、感温カプセルなどが含まれる。熱膨張性マイクロカプセルの例には、マツモトマイクロスフェアー(松本油脂製薬株式会社製)、クレハマイクロスフェアー(株式会社クレハ製)などが、感温カプセルの例には、感温染料カプセル(株式会社日本カプセルプロダクツ製)などが含まれる。
上記粉体の供給は、公知の手段を用いることができ、例えば、特開2013−178452号公報に開示されている粉末供給手段を用いることができる。
本実施の形態では、軟化された樹脂層に供給された粉体を接着させる。これにより、樹脂層と粉体とが接触してなる加飾画像が形成される。
上記工程では、上記粉体の供給は、上記樹脂層を形成した後、その表面に上記粉体を供給しているが、上記樹脂層を形成する工程は、上記粉体を供給する工程の後に行われてもよい。
このとき、樹脂層の軟化状態を変更することなどにより、紛体粒子の配向の度合いを変化させることができる。また、軟化状態は、例えば加熱温度で変更することができる。
図1A〜図1Cを用いて、配向と光沢感の関係を説明する。
図1A〜図1Cは、粉体供給時の樹脂層100の軟化状態を変えたときの粉体200の配向状態を模式的に示した図である。
図1Aは、樹脂層があまり軟化していない状態で粉体を供給した場合であり、図1Bは、樹脂層が図1Aより軟化した状態で粉体を供給した場合であり、図1Cは、樹脂層が図1Bよりさらに軟化した状態で、粉体を供給した場合である。
図1Aは、樹脂層上の粉体は、樹脂層表面に沿うように配向しやすくなり、光の反射分布が狭くなる傾向がある(乱反射少ない)。その結果、乱反射の少ないパール調、ミラー調の光沢感となる。一方、図1Cは、樹脂層に付着する粉体の配向が不規則となり、光の反射分布が広がる傾向がある(乱反射が多い)。その結果、乱反射の多いグリッター調の光沢感となる。図1Bは、図1Aと図1Cの中間の光沢感である。
上記配向をより制御しやすくするという観点で、摺擦工程を含むことが好ましい。摺擦を行うと、得られる加飾画像の光沢感の制御範囲を広くすることができる。
粉体供給および摺擦する際の温度を低く設定し、上記樹脂層の表面に粉体が接着する程度の粘着性を上記層が呈する温度(「最低付着温度」ともいう)である場合では、図1Aに示されるように、上記樹脂層の表面上に供給された粉体が摺擦によって、より平らに配向する。また、摺擦工程がある場合は、ない場合に比べ、より低い温度でも、粉体を付着させることができるので、より平らに配向させることができ、ミラー調/パール調の強い外観を呈する画像が形成される。
一方、粉体供給および摺擦する際の温度を高く設定し、上記樹脂層が軟化した状態である場合は、図1B、図1Cに示すように、粉体がより樹脂層に内部に押し込まれる。そして、より温度の高い方が図1Cに示すように、より内部に押し込まれ、かつ、押し込まれている粒子の量が多い状態となる。また、摺擦工程がある場合は、ない場合に比べ、内部への押し込まれ方が強く、またその比率が高い状態まで、制御できる。その結果、より強いグリッター調の外観を呈する画像が形成される。
上記摺擦は、粉体200が供給された樹脂層100の表面に接触した摺擦部材を当該表面に対して相対的に移動させることを意味する。摺擦には押圧が伴うことが、樹脂層100の表面に粉体200を配向させる観点、および樹脂層100に対する粉体の接着を強める観点から好ましい。「押圧」とは、樹脂層100の表面に対して交差する方向(たとえば垂直方向)に樹脂層100の表面を押すことを意味する。
上記摺擦は、樹脂層100に対する摺擦装置における摺擦部分の相対的な速度は、遅すぎると樹脂層100の表面に沿う粉体200の配向が不十分となり、速すぎると粉体200の付着が不十分となることがあり、最終画像における光沢(ミラー調/パール調またはグリッター調)の所期の外観の明瞭さが低下することがある。ここで、樹脂層100の表面における粉体200の付着と配向とを十分に行う観点から、上記摺擦部分の相対的な速度は、5〜500mm/秒であることが好ましく、70〜130mm/秒であることがより好ましい。
また、上記摺擦において、樹脂層100の表面における上記摺擦部分の接触幅は、狭すぎると上記摺擦部分が樹脂層100の表面に沿って移動する際に粉体200の向きのばらつきが生じやすく、樹脂層に付着する粉体の配向が不十分になることがある。反対に、上記接触幅が広すぎると、記録媒体の搬送が難しくなる。ここで、樹脂層の表面に付着する粉体の所期の配向性および記録媒体の搬送性を十分に実現する観点から、上記接触幅は、樹脂層に対する上記摺擦部分の移動方向の長さで、1〜200mmであることが好ましい。
また、上記摺擦は、押圧力が低すぎると、粉体の付着強度が弱くなることがあり、高すぎると、樹脂層自体が乱れることがあり、また、記録媒体を搬送する際のトルクが高くなることがある。記録媒体の搬送の円滑な実現かつ省力化の観点、樹脂層に形成されている画像の保持の観点、および、粉体の付着強度を高める観点から、押圧力は、樹脂層の表面に対して1〜30kPaであるが好ましく、7〜13kPaであることがより好ましい。
上記摺擦部材は、樹脂層の表面を押圧しながら樹脂層に対して相対的に異なる方向へ移動自在に構成されていればよい。
上記摺擦部材は、回転部材であってもよいし、往復運動する部材または固定されている部材のような非回転部材であってもよい。摺擦部材は、略水平な表面を有する樹脂層の表面に接して水平方向に、当該表面に対して相対的に移動可能な部材であってもよいし、略水平な表面を有する樹脂層100の表面に接して、当該表面に対して垂直な方向を回転軸として相対的に回転する部材であってもよいし、樹脂層100の表面に接する回転自在なローラであってもよい。
上記摺擦部材は、樹脂層を押圧しながらその表面が樹脂層100の表面に対して相対的に移動自在に構成される。摺擦部材による摺擦は、例えば、樹脂層100が形成された記録媒体が搬送されているときに、固定された摺擦部材で摺擦することによって、あるいは、搬送されているときに、搬送速度よりも遅い速度で回転するローラで摺擦することによって、あるいは、搬送されているときに搬送方向とは逆の方向に回転するローラで摺擦することによって、あるいは、搬送方向に対してその回転軸が斜めとなる向きに配置された回転自在なローラで摺擦することによって、あるいは、樹脂層100が形成された記録媒体の表面上を往復運動する部材で摺擦することによって、あるいは、樹脂層100が形成された記録媒体の表面に垂直な方向を回転軸として回転する部材で摺擦することによって行うことが可能である。
上記摺擦部材は、柔軟性を有することが好ましい。摺擦部材の柔軟性は、例えば、押圧時に、樹脂層100の表面の形状に追従可能な程度に摺擦部材の表面が変形する程度の柔らかさ(変形追従性)である。このような柔軟性を有する摺擦部材の例には、スポンジおよびブラシが含まれる。
上記画像形成装置は、本実施の形態の効果が得られる範囲において、上記粉体供給装置および摺擦装置以外の他の構成をさらに有していてもよい。当該他の構成の例には、温度調整装置および粉体回収装置が含まれる。
(温度調整装置)
上記温度調整装置は、上記摺擦装置で摺擦される樹脂製画像110の温度を調整するための装置である。温度調整装置は、加熱装置であってもよいし、冷却装置であってもよいし、その両方の機能を有する装置であってもよい。当該温度調整装置には、公知の装置を利用することができ、その例には、ホットプレート、オーブンおよび送風装置が含まれる。
上記樹脂製画像が上記付着温度よりも十分に高い温度を有している状態から上記画像形成装置に供給される場合には、温度調整装置は、樹脂製画像の温度が上記摺擦装置に搬送されたときに上記付着温度となる速度または経路で樹脂製画像を、粉体供給装置を経て摺擦装置へ搬送するための搬送装置であってもよい。
(粉体回収装置)
上記粉体回収装置は、上記層の表面に供給された粉体を回収するための装置である。上記粉体回収装置は、摺擦装置で摺擦された後の樹脂製画像の表面に残留する粉体を回収する装置であることが、余剰の粉体による最終画像の汚染を防止する観点、および粉体の再利用を可能とする観点、から好ましい。粉体回収装置の例には、上記表面に当接するスポンジやブラシ、ブレードなどの弾性部材、上記表面に対向して配置される吸引装置、および、上記表面から落下する余剰の粉体を収容するための容器、が含まれる。上記粉体回収装置は、上記摺擦装置における上記押圧部材であってもよい。
本実施の形態における画像形成方法は、上記樹脂製画像の上記樹脂層の表面に上記粉体を供給する工程と、上記粉体が供給されかつ上記付着温度に調整されている上記樹脂製画像を上記層側から摺擦する工程とを含む画像形成方法によって行うことができる。また、本実施の形態における画像形成方法は、上記記録媒体と、上記記録媒体上に形成された樹脂層とを含む樹脂製画像の表面に粉体を供給する工程と、上記粉体が供給されかつ上記付着温度に調整されている上記樹脂製画像を上記層側から摺擦する工程とを含む画像形成方法によっても行うことができる。この画像形成方法は、前述した本実施の形態の画像形成装置を用いて行うことが可能である。
上記画像形成方法は、本実施の形態の効果が得られる範囲において、上記の粉体供給工程および摺擦工程以外の他の工程をさらに含んでいてもよい。当該他の工程の例には、上記トナー画像を形成する工程、上記トナー画像の温度を上記層が軟化する温度に調整する工程、が含まれる。上記トナー画像を形成する工程は、通常の電子写真方式の画像形成方法によって行うことが可能である。上記温度調整工程は、前述した温度調整装置を用いて好適に行うことが可能である。
本発明の別の実施形態に係る画像形成装置について図2を用いて説明する。画像形成装置1は、図2に示されるように、樹脂製画像形成部60と表面処理部70とを有する。樹脂製画像形成部60は、記録媒体とその上に配置されている樹脂層とを含む樹脂製画像110を作製する部分である。表面処理部70は、樹脂製画像形成部60で形成された樹脂製画像110の表面を処理して加飾する部分である。
樹脂製画像形成部60は、公知のカラープリンタと同様の構成を有している。樹脂製画像形成部60は、画像読取部、画像形成部、フィルム搬送部、給フィルム部、データ受付部、制御部および定着部27を有する。
画像読取部は、光源11、光学系12、撮像素子13、および画像処理部14を有する。
画像読取部は、光源11から照射された光は、読取面に載置された原稿に照射され、その反射光は光学系12のレンズおよび反射鏡を介して、読取り位置に移動した撮像素子13に結像する。撮像素子13は、原稿からの反射光の強度に応じて電気信号を生成する。生成された電気信号は、画像処理部14において、アナログ信号からディジタル信号に変換された後、補正処理、フィルター処理、画像圧縮処理等が施され、画像データとして画像処理部14のメモリに記憶される。こうして、画像読取部は、原稿の画像を読み取り、画像データを記憶する。
画像形成部は、イエロー(Y)トナーからなる画像を形成する画像形成部、マゼンタ(M)トナーからなる画像を形成する画像形成部、シアン(C)トナーからなる画像を形成する画像形成部、ブラック(K)トナーからなる画像を形成する画像形成部、および、中間転写ベルト26を有する。なお、Y、M、CおよびKは、トナーの色を表している。
画像形成部は、回転体としての感光体ドラム21、ならびにその周囲に配置された帯電部22、光書込部23、現像装置24およびドラムクリーナー25を有している。中間転写ベルト26は、複数のローラにより巻回され、走行可能に支持されている。
感光体ドラム21は、ドラムモーターにより所定の速度で回転する。帯電部22は、感光体ドラム21の表面を所望の電位に帯電させ、光書込部23は、画像データに基づいて、画像情報信号を感光体ドラム21に書き込み、感光体ドラム21に画像情報信号に基づく潜像を形成する。そして潜像は現像装置24により現像され、感光体ドラム21上に可視画像であるトナー像が形成される。このようにして、YMCKの各画像形成部の感光体ドラム21に、それぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの未定着のトナー画像が形成される。こうして、画像形成部は、電子写真方式の画像形成プロセスを用いてトナー画像を形成する。
YMCKの各画像形成部により形成された各色のトナー画像は、走行する中間転写ベルト26上に一次転写部により逐次転写される。こうして、中間転写ベルト26上に、イエロー、マゼンタ、シアン、およびブラックの各色のトナー層が重畳したカラートナー画像が形成される。
フィルム搬送部では、フィルムSは、送り出しローラ31およびさばきローラ32によって給フィルム部の給フィルムトレイ41、42、43から一枚ずつ搬送経路に送り出される。搬送経路に送り出されたフィルムSは、搬送ローラ33によって搬送経路に沿ってループローラ34およびレジストローラ35を経て2次転写ローラに搬送される。そして、フィルムS上に中間転写ベルト26上のカラートナー画像が転写される。
カラートナー画像が転写されたフィルムSに、定着部27にて熱と圧力とが加えられることにより、フィルムS上のカラートナー画像がカラートナー層としてフィルムSに定着される。こうして、フィルムS上に形成された樹脂層100を含む樹脂製画像110が作製される。フィルムS上に形成された樹脂層100を含む樹脂製画像110、排フィルムローラ36を経て表面処理部70に送られる。
なお、定着がなされたフィルムSをフィルム反転部37に導いてフィルムSの表裏を反転して排出することができる。これにより、フィルムSの両面に画像を形成することができる。
制御部は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、およびROM(Read Only Memory)を有する。CPUは、ROMに記憶されたプログラムにしたがって、画像読取部、画像形成部、フィルム搬送部、給フィルム部、および表面処理部を制御し、演算結果などをRAMに記憶する。また、制御部は、外部から受信された印刷データを解析して、ビットマップ形式の画像データを生成し、画像データに基づく画像をフィルムS上に形成する制御を行う。上記プログラムには、表面処理部における軟化剤供給量を調整するためのプログラム、および、摺擦条件を設定するためのプログラムが含まれている。
また、制御部は、不図示の通信部を介して、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続された外部の装置(例えばパーソナルコンピューター)との間で、各種データの送受信を行う。制御部は、例えば、外部の装置から送信された画像データ、または、データ受付部が受け付けた、形成すべき加飾画像に関する入力されたデータを受信し、この画像データ(入力画像データ)に基づいてフィルムSに画像を形成させる。通信部は、例えばLANカード等の通信制御カードで構成される。
樹脂製画像形成部60によって形成された樹脂製画像110は、表面処理部70に搬送され加飾される。
図3に示されるように、表面処理部70は、粉体供給手段として粉体供給部98、摺擦ローラ74、ヒータ75、および粉体回収部99を有する。
ヒータ75は、例えば、粉体供給部98に対向する位置、摺擦ローラ74に対向する位置、摺擦ローラ74の後の位置などに設けられる。ヒータ75は、例えば、ホットプレートである。ヒータ75は、加熱により、樹脂層100を軟化させたり、プロセス速度を上げたり、樹脂製画像110の表面に供給された熱応答性材料を加熱するなどの種々の目的のために、記録媒体、粉体の耐熱性に配慮した範囲で用いられることがある。
粉体供給部98は、樹脂製画像110に粉体を供給する。粉体供給手段は、公知の手段を用いることができ、例えば、特開2013−178452号公報に記載されている粉末供給手段を用いることができる。
粉体供給部98は、粉体200を収容するための容器98aと、容器98aの開口部まで粉体200を搬送するための搬送スクリュー98bと、粉体200を容器98aから取り出すためのブラシローラ98cと、ブラシローラ98cに保持される粉体200を弾き飛ばすためのフリッカー98dとを有する。粉体200は、例えば、前述した扁平な粒子形状を有する非球形粉体である。
また、粉末供給部98は、容器98aに収容されている粉体200が搬送スクリュー98bによってブラシローラ98cまで搬送される。ブラシローラ98cは、例えば、反時計回りに回転し、かつ粉体200を捕捉する。ブラシローラ98cに捕捉された粉体200はフリッカー98dによって弾き飛ばされ、フィルムSおよび樹脂層100上に散布される。
容器98aの開口部は、ブラシローラ98cに保持される粉体200の量を規制するために、ブラシローラ98cのブラシの先端に接触する大きさに形成されている。フリッカー98dは、板状の部材であり、ブラシローラ98cと接触する位置に配置されている。ブラシローラ98cへのフリッカー98dの食い込み量は、例えば、粉体200の供給量やブラシの偏摩耗などを考慮して決めることができ、ブラシローラ98cのブラシ毛長やブラシ密度は、例えば、粉体200の供給量やそのボタ落ちなどを考慮して決めることができる。
フリッカー98dは、ブラシローラ98cと接触する位置に固定されていてもよいし、ブラシローラ98cの停止時にフリッカー98dがブラシローラ98cから離間するように、フリッカー98dが移動可能に構成されていてもよい。
フィルムS上に形成された樹脂層100を含む樹脂製画像110は、ヒータ75によってフィルムSの裏面から加熱される。この加熱により、樹脂製画像110が適度に軟化し、樹脂製画像110の表面に粘着力が生じる。
摺擦部材である摺擦ローラ74は、フィルムSに向けて付勢されているとともに、図中の矢印方向に回転している。摺擦ローラ74は、フィルムSの搬送方向とは反対の向きに回転している。摺擦ローラ74は、トナー画像100上の粉体200を適度な力(例えば10kPa程度)で押圧しつつ回転し、よって摺擦ローラ74の表面は、粉体200が供給されているトナー画像100の表面を摺擦する。トナー画像100の表面は、粘着性を有し、かつ粉体200が供給され、かつ摺擦ローラ74で摺擦されることから、トナー画像100の表面には、この表面に沿う方向に粉体200が配列して付着する。摺擦ローラ74は、例えば、円筒状の芯金と、その外周面上に配置されている樹脂製のスポンジなどの弾性層とを有している。摺擦ローラ74の軸方向の長さは、フィルムSの幅よりも長い。
より詳しくは、粉体200は、樹脂製画像110の表面に供給された状態では、配向していない。しかしながら、粉体200は、扁平な粒子形状を有している。このため、長軸と短軸とを含む平面(厚さ方向に直交する平面)に沿って配列しやすい。加えて、樹脂製画像110上の粉体200は、摺擦ローラ74によって適度に押圧されながら摺擦される。
なお、摺擦部材は図3においては摺擦ローラ74として示されているが、摺擦部材は摺擦ができれば特に制限されず、往復運動する部材であってもよいし、樹脂製画像110の表面に対して垂直な方向を回転軸として回転する部材であってもよいし、固定されている部材であってもよい。
また、樹脂製画像110に直接接触しない部分は、摺擦ローラ74の摺擦によって、トナー画像100の表面から除去される。このため、粉体200は、図1Aに示されるように、樹脂製画像110の表面に沿って、当該表面上に配列して付着する。こうして粉体200が供給された樹脂製画像110は、例えば、室温まで冷却され、粉体200は、樹脂製画像110上に固定され、その結果、フィルムS上に形成された樹脂層100を含む樹脂製画像110、および粉体200の層をこの順で有する画像が最終的に形成される。
なお、フィルムS上に散布された粉体200のうち、樹脂製画像110が形成されていない部分に存在する余剰の粉体200は、集粉器による空気の流れにより集粉器に吸引され、フィルムS、樹脂製画像110および上記搬送路から除去される。
粉体回収部99は、例えば、粉体供給部98から供給された粉体200のうちの余剰の粉体粒子200を吸引するための集粉器である。集粉器は、フィルムSの搬送路から適当な高さの位置で吸引口が開口するように配置されており、例えば、粉体200を吸引するがフィルムSを吸引しない適度な出力で運転するように構成されている。
なお、樹脂層を形成する工程の前に、粉体を供給する工程を有する実施態様に用いる画像形成装置は、樹脂製画像形成部の前に粉体を供給する装置を有する。
このように、上記摺擦によって粉体200が樹脂製画像110の表面に倒れ、粉体200の平面方向と上記表面とが実質的に平行になり、中でも、樹脂製画像110の粘着性による接着力が発揮される粉体200のみが樹脂製画像110に付着して上記表面上に残る。
こうして、粉体200は、摺擦によって実質的に一層で樹脂製画像110の表面に付着する。樹脂製画像110の表面は、粉体200によってその全てが覆われることはない。たとえば、当該表面における粉体200による隠蔽率は、60%程度である。
したがって、最終画像では、粉体200の層による視覚効果と、フィルムSおよびトナー層による画像(下地画像)の視覚効果とが合わさった外観として、ミラー調/パール調またはグリッター調の外観が得られる。
最終画像の外観は、粉体の形状や外観と下地画像の彩度との組み合わせによって制御される。たとえば、上記粉体が金属光沢を有する上記非球形粉体である場合では、下地画像の彩度が低いとミラー調の外観を呈し、下地画像の彩度が高いとパール調の外観を呈する傾向にある。また、例えば、上記粉体が金属光沢以外の外観、例えば、虹彩光沢を有する上記非球形粉体である場合には、下地画像の彩度に関わらずパール調の外観を呈する傾向にある。また、摺擦条件を強めることにより、グリッター調の外観を呈する傾向にある。
金属光沢の非球形粉体を用いる場合の下地画像の彩度の、最終画像の外観を決定する境界値は、画像の大きさや、下地画像における非球形粉体が付着している部分に隣接する部分の色などの諸条件に影響を受けることがあるため、一概には言えないが、概ね、下地画像の彩度が30以上であると最終画像の外観はパール調になり、30未満であるとミラー調になる傾向がある。なお、下地画像の彩度は、以下の測定条件によって測定することができる。
[測定条件]
測定装置:コニカミノルタ製FD−7
光源:D50
背景:ホワイトバック
なお、上記画像形成装置は、図示の実施形態では、電子写真方式のカラープリンタと合体しているが、上記画像形成装置のみから構成されていてもよい。あるいは、上記画像形成装置は、上記カラープリンタ内に組み込まれ、当該カラープリンタと一体的に構成されていてもよい。
また、上記画像形成は、樹脂層を形成する工程と粉体を供給する工程を連続で行ってもよいし、最初に樹脂層を形成し、別の装置で粉体を供給してもよい。
これまでは、樹脂製画像形成部、表面処理部の順番で配置されている画像形成装置を説明してきたが、上記順番は特に限定されない。すなわち、表面処理部、樹脂製画像形成部の順番で配置されていてもよい。
以下、本実施形態の具体的な実施例を比較例とともに説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
[非晶性樹脂粒子分散液(VD−1)の作製]
非晶性樹脂粒子分散液(VD−1)を、以下の手順で作製した。
(樹脂粒子(1H)の調製)
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入装置を取り付けた反応容器(以下、「反応容器」とする)に、ドデシル硫酸ナトリウム(0.65質量部)をイオン交換水(95質量部)に溶解させたドデシル硫酸ナトリウム水溶液を投入し、窒素気流気下において、撹拌しながら内温を80℃に昇温させた。このときの撹拌速度は230rpmであった。昇温後、過硫酸カリウム(0.47質量部)をイオン交換水(18質量部)に溶解させた過硫酸カリウム水溶液を添加し、再び内温を80℃とした。最後に、下記モノマー混合液1を1時間かけて滴下した後、80℃で2時間重合させることにより、樹脂粒子(1H)を得た。
<モノマー混合液1>
スチレン 30 質量部
アクリル酸n−ブチル 7 質量部
メタクリル酸 2 質量部
(モノマー混合液3の調製)
下記モノマー混合液2を撹拌しながら90℃に加熱し、この混合液に離型剤(W−1)としてパラフィンワックス(HNP−51:日本精蝋株式会社製)50質量部、およびエステルワックス(ニッサンエレクトールWEP−3:日油株式会社製)18質量部を溶解させ、離型剤を含有したモノマー混合液3を得た。
<モノマー混合液2>
スチレン 268 質量部
アクリル酸n−ブチル 90 質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 5.0 質量部
(非晶性樹脂粒子分散液(VD−1)の調製)
反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム溶液(ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム(5質量部)をイオン交換水(780質量部)に溶解させたもの)を投入した後、当該溶液を98℃に加熱して、モノマー混合液3を添加し、循環経路を有する機械式分散機(CLEARMIX;エム・テクニック株式会社、「CLEARMIX」は同社の登録商標)で1時間混合分散させ、乳化粒子(油滴)を含む分散液を得た。
次に、反応容器に、上記分散液を投入後、樹脂粒子(1H)39質量部(固形分換算)とイオン交換水(1000質量部)を添加し、82℃で撹拌した。このときの撹拌回転数は90rpmであった。この分散液に、過硫酸カリウム(4.55質量部)をイオン交換水(87質量部)に溶解させた開始剤溶液を添加し、82℃で1時間重合させることにより、樹脂粒子(1HM)を得た。
さらに、過硫酸カリウム(6.07質量部)をイオン交換水(120質量部)に溶解させた過硫酸カリウム水溶液を添加し、次いで、下記成分で構成されるモノマー混合液4を82℃で、1時間かけて滴下した。滴下終了後、82℃で2時間撹拌して重合させた後、28℃まで冷却して、離型剤とビニル樹脂粒子とを含有するビニル樹脂粒子分散液(VD−1)を得た。得られたビニル樹脂粒子分散液(VD−1)中のビニル樹脂粒子の分散径は、体積基準のメジアン径で182nmであり、ガラス転移点(Tg)は50℃であり、重量平均分子量(Mw)は34000であった。
<モノマー混合液4>
スチレン 226 質量部
アクリル酸n−ブチル 58 質量部
2−エチルへキシルアクリレート 23 質量部
メタクリル酸 16 質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 4.4 質量部
ビニル樹脂粒子分散液(VD−1)の分散径はマイクロトラックUPA−150(日機装株式会社製)で測定した。
(ガラス転移温度(Tg)の測定方法)
結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用いて測定した。
測定試料(樹脂)3.0mgをアルミニウム製パンに封入し、「ダイヤモンドDSC」のサンプルホルダーにセットした。リファレンスは空のアルミニウム製パンを使用した。そして、昇温速度10℃/分で0から200まで昇温する第1昇温過程、冷却速度10℃/分で200から0まで冷却する冷却過程、および昇温速度10℃/分で0から200まで昇温する第2昇温過程をこの順に経る測定条件(昇温・冷却条件)によってDSC曲線を得た。この測定によって得られたDSC曲線に基づいて、その第2昇温過程における第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1のピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線を引き、その交点をガラス転移温度(Tg)とした。
(重量平均分子量(Mw)の測定方法)
結着樹脂の重量平均分子量(Mw)は、装置「HLC−8320GPC」(東ソー株式会社製)およびカラム「TSKguardcolumn」1本および「TSKgelSuperHZ−M」3本(いずれも東ソー株式会社製)を連結したものを用いて測定した。
カラム温度を40に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2mL/分で流した。測定試料(樹脂)は、濃度1mg/mLになるようにテトラヒドロフランに溶解させた。当該溶液の調製は、超音波分散機を用いて、室温にて5分間処理を行うことにより行った。次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して試料溶液を得、この試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒とともに装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出した。単分散のポリスチレン標準粒子を用いて作成された検量線に基づいて、測定試料の分子量分布を算出した。検量線は、東ソー株式会社製「polystylene標準試料TSKstandard」:「A−500」、「F−1」、「F−10」、「F−80」、「F−380」、「A−2500」、「F−4」、「F−40」、「F−128」、「F−700」の10サンプルから作製した。なお、試料解析におけるデータ収集間隔は300msとした。
[着色剤粒子分散液の調製]
(黒色用着色剤粒子分散液)
ドデシル硫酸ナトリウム(90質量部)をイオン交換水(1600質量部)に攪拌して溶解し、カーボンブラック(リーガル330R;キャボット社、「リーガル」は同社の登録商標)(420質量部)を徐々に添加した。次いで、攪拌装置(クリアミックスWモーションCLM−0.8;エム・テクニック株式会社製、「クレアミックス」は同社の登録商標)を用いて分散処理することにより、着色剤粒子を分散した黒色用の着色剤粒子分散液を調製した。黒色用の着色剤粒子分散液中の着色剤粒子(カーボンブラック)の分散径を、マイクロトラックUPA−150(日機装株式会社製)を用いて下記測定条件で測定したところ、体積基準のメジアン径で117nmであった。
(測定条件)
サンプル屈折率:1.59
サンプル比重 :1.05(球状粒子換算)
溶媒屈折率 :1.33
溶媒粘度 :0.797(30℃)、1.002(20℃)
0点調整 :測定セルにイオン交換水を投入し調整した。
(シアン用分散液の調製)
カーボンブラックをC.I.Pigment Blue 15:3に変更した以外は、着色剤粒子分散液1と同様にしてシアン用の着色剤粒子分散液を得た。シアン用の着色剤粒子分散液中の着色剤粒子(C.I.Pigment Blue 15:3)の分散径を測定したところ、体積基準のメジアン径で152nmであった。
(白色用分散液の調製)
ドデシル硫酸ナトリウム(90質量部)をイオン交換水(1600質量部)に添加して溶解し、ルチル型酸化チタン(石原産業株式会社製)(700質量部)を撹拌しながら徐々に添加した。次いで、攪拌装置を用いて分散処理することにより、白色用の着色剤粒子分散液3を得た。白色用の着色剤粒子分散液中の着色剤粒子(ルチル型酸化チタン)の分散径を測定したところ、体積基準のメジアン径で208nmであった。
[トナーの作製]
(ブラックトナー(K))
(A.凝集・融着工程)
攪拌装置、冷却管および温度センサーを備えた容量5Lのステンレス製反応器に、非晶性樹脂粒子分散液(VD−1)500質量部(固形分換算)と、黒色用の着色剤粒子分散液(40質量部(固形分換算))と、を投入し、さらにイオン交換水(380質量部)を投入して、攪拌しながら水酸化ナトリウム水溶液(5モル/L)を用いてpHを10に調整した。次いで、攪拌しながら、塩化マグネシウム水溶液(塩化マグネシウム・六水和物(40質量部)をイオン交換水(40質量部)に溶解したもの)を10分間かけて滴下した。内温を75℃まで昇温させた後、Multisizer3(ベックマン・コールター株式会社製、アパチャー径;50μm)を用いて粒径を測定し、体積基準のメジアン径で6.0μmに到達した時点で、塩化ナトリウム水溶液(塩化ナトリウム(160質量部)をイオン交換水(640質量部)に溶解させたもの)を加えた。さらに、加熱攪拌を続けて、フロー式粒子像測定装置(FPIA−2100;シスメックス株式会社製)を用い、平均円形度が0.960になった時点で10℃/分の冷却速度で内温を25℃まで冷却し、トナー母体粒子Kの分散液を得た。
(B.洗浄・乾燥工程)
凝集・融着工程にて生成したトナー母体粒子Kの分散液を、バスケット型遠心分離機を用いて、固液分離し、トナー母体粒子Kのウェットケーキを形成した。このウェットケーキを、上記バスケット型遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで35℃のイオン交換水で洗浄した後、フラッシュジェットドライヤー(株式会社セイシン企業製)に移し、水分量が1.0質量%となるまで乾燥して、トナー母体粒子Kを得た。
(C.外添処方剤添加工程)
トナー母体粒子K(100質量部)に対して、外添処方剤を添加し、ヘンシェルミキサーで混合して、ブラックトナー(K)を得た。
(シアントナー)
黒色用の着色剤粒子分散液をシアン用の着色剤粒子分散液に変更した以外は、Kトナーと同様にして、シアントナー(C)を得た。
(白色トナー)
黒色用の着色剤粒子分散液を白色用の着色剤粒子分散液(165質量部(固形分換算))に変更した以外は、Kトナーと同様にして、白色トナー(W)を得た。
[試験1]
「AccurioPressC2060」(コニカミノルタ株式会社製、「AccurioPress」は同社の登録商標)の改造機にブラックトナー(K1)および記録媒体としてOHPフィルム(VF−1411N;コクヨ株式会社製)を収容し、当該改造機を用いて2cm×2cmの正方形のパッチ画像をOHPフィルム上に形成し、OHPフィルム上に当該パッチ画像を有する定着されたトナー画像を出力し、黒色(ブラック)を呈する、樹脂製画像を得た。上記樹脂製画像(ブラック)を分光光度計(CM−3600d、コニカミノルタ株式会社製)で測定したところ、その透過率は70%であった。
80℃に加熱したホットプレートの上に上記樹脂製画像を、上記パッチ画像(以下、画像面ともいう)を上に向けて置き、上記樹脂製画像上に、粉体(メタシャイン)を供給した。樹脂製画像をホットプレートから外し、室温に冷却した後、刷毛によって余分な粉体を樹脂製画像の表面から除去した。これにより、ミラー調(目視では実質的な乱反射が認められず、像が明確に投影される)を呈する加飾画像を得た。
試験1で得られた加飾画像について、変角光度計「GP−5」(株式会社村上色彩技術研究所製)を用い、入射角度20°における反射光量を反射光(受光)の角度を変えながら測定した。当該測定は、−10〜50°の受光角度の範囲で行い、ピークの半値幅を求めたところ、その半値幅は、9.9°であった。なお、上記半値幅が小さいほどより明確な(画像をより明確に投影する)ミラー調であることを意味する。
試験1と同様に、表1に示した条件で、試験2〜7の加飾画像を得た。なお、各試験における樹脂製画像の透過率は、トナーの付着量を変えて調整した。
[試験8]
「AccurioPressC2060」(コニカミノルタ株式会社製、「AccurioPress」は同社の登録商標)の改造機にシアントナー(C1)および記録媒体としてOHPフィルム(VF−1411N;コクヨ株式会社製)を収容し、当該改造機を用いて2cm×2cmの正方形のパッチ画像をOHPフィルム上に形成し、OHPフィルム上に当該パッチ画像を有する定着されたトナー画像を出力し、ブルー色(シアン)を呈する樹脂製画像を得た。上記樹脂製画像(シアン)を分光光度計で測定したところ、その透過率は50%であった。
70℃に加熱したホットプレートの上に上記樹脂製画像を、上記画像面を上に向けて置き、上記樹脂製画像上に、粉体(メタシャイン)を供給した後、スポンジローラで摺擦した。摺擦時の押圧力は、約10kPaである。上記樹脂製画像をホットプレートから外し、室温に冷却した後、刷毛によって余分な粉体を樹脂製画像の表面から除去した。これにより、パール調を呈する加飾画像を得た。また、試験8で得られた加飾画像のピークの半値幅は5.7であった。
試験8と同様にして、表1に示す条件で、試験9〜17の加飾画像を形成した。なお、各試験における樹脂製画像の透過率は、トナーの付着量を変えて調整した。
[試験18]
OHPフィルム上に、OHPフィルム側から白色トナー、シアントナーの順でトナーによる樹脂層が形成されるようにし、上記OHPフィルムと上記樹脂層と、を合わせた樹脂製画像の透過率が20%になるようにし、ホットプレートの温度を105℃に変更した以外は、試験8と同様にして、加飾画像を形成した。
なお、白色トナーとシアントナーの付着量については、シアントナーの付着量を試験8と同量の付着量とし、白色トナーの付着量を調整して、記録媒体と樹脂層と、を合わせた透過率が20%になるように樹脂製画像を形成した。
[試験19]
白色トナーの付着量を調整して、透過率が5%になるようにし、ホットプレートの温度を140℃にした以外は、試験18と同様にして、加飾画像を得た。
[試験20]
記録媒体として、カラークリヤーホルダー(品番F−78EC、株式会社LIHITLAB.社製)の黄色に用いられている色付きのフィルムを用い、樹脂層にはシアントナーを用いて樹脂製画像を形成した。上記色付きフィルムと樹脂層と、を合わせた透過率が20%になるようにし、ホットプレートの温度を105℃にした以外は、試験8と同様にして、加飾画像を得た。
[試験21]
試験20と同様の色付きのフィルムを用いた以外は、試験19と同様にして、樹脂製画像を得た。なお、上記色付きのフィルムと樹脂層を合わせた透過率が5%となるようにトナー画像を形成した。
試験1〜21で得られた画像の光沢感の評価および画像の見栄えの評価を下記条件で行った。
(光沢感の評価)
試験1〜21で得られた樹脂製画像について、変角光度計「GP−5」(株式会社村上色彩技術研究所製)を用い、入射角度20°における反射光量を反射光(受光)の角度を変えながら測定した。また、当該測定において、−10〜50°の受光角度の範囲で行い、ピークの半値幅を求めた。
光沢感の評価基準を以下に示す。
(評価基準)
A:半値幅が7以下であり、ミラー調またはパール調を呈する
B:半値幅が7〜12であり、やや乱反射のあるミラー調またはパール調を呈する
(グリッター様のミラー調またはパール調)
C:半値幅が12〜17であり、かなり乱反射のあるミラー調またはパール調を呈
する(ミラー様またはパール様のグリッター調)
D:半値幅が17以上であり、グリッター調を呈する
(画像評価)
試験1〜21で得られた画像の外観は、熟練の技術者10名によって目視で観察し、判定した。
(評価基準)
下記に示す評価者10人のうち5人以上が優れていると評価した△以上を合格とした。
◎:評価者10人中9〜10人が優れていると評価
○:評価者10人中7〜8人が優れていると評価
△:評価者10人中5〜6人が優れていると評価
×:評価者10人中4人以下が優れていると評価
上記試験1〜21の光沢感および見栄えの評価結果を表1に示す。なお、表1に記載の記号は以下のとおりである。
K:ブラックトナー
C:シアントナー
W:白色トナー
表1の試験1〜21から明らかなように、樹脂層を軟化させる温度を変更することにより、使用する粉体を切り替えることなく、ミラー調/パール調〜グリッター調までの外観を呈する加飾画像を得ることができた。
また、記録媒体と記録媒体上に配置された樹脂層と、を合わせた透過率を50%以下にすることにより、より見栄えのよい画像が得られることがわかった。これは、記録媒体の裏側から入射する光を遮光することにより、粉体の反射がより際立つからであると考えられる。また、白色トナーを使用すると、最も見栄えがよくなることがわかった。これは、白色は光を吸収することなく反射するため、粉体の光沢感もより強調されたためであると考えられる。
また、着色されたフィルムを用いた場合であっても、白色トナーを用いることにより、フィルム自体の色の影響を受けることなく、見栄えのよい画像を得ることができる。
また、摺擦工程を含む方が、光沢感の制御範囲を広くすることができることがわかった。